説明

プロジェクタ装置

【課題】レーザ光源を用いた安価なプロジェクタ装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源2の出射光を、赤色蛍光を発する赤色蛍光体4、緑色蛍光を発する緑色蛍光体5、青色蛍光を発する青色蛍光体6のそれぞれに入射し、各蛍光体4〜6の蛍光光を光学系7で偏向して投光面21に投光するプロジェクタ装置1において、レーザ光源2の出射光を、入力画像信号に規定された色、及び画素位置に応じて、赤色蛍光体4、緑色蛍光体5、及び青色蛍光体6のいずれかの所定の位置に入射する可動ミラー3を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源を用いたプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ装置用の光源としては、超高圧水銀ランプが主に使用されている。しかしながら、水銀は環境負荷物質であるため、LED等の半導体発光光源に期待が高まっている。ただし、LEDは輝度の点で超高圧水銀ランプに比べて劣っており、同等の光量を得るには、多数のLEDを使用する必要があり、さらに光学効率が低いために装置が大型化してしまう。
そこで従来、光源に、指向性が高く非常に優れた光学効率を有するレーザ光源、例えばLD(半導体レーザ)を用いたプロジェクタ装置が知られている。しかしながら、人の目に対する安全性の観点から、レーザの高指向性、狭いスペクトラル幅は問題であり、大光量化が困難となっている。
【0003】
そこで、レーザ光を直接外部に出さずに蛍光体で波長変換・インコヒーレント化することにより、安全性を高めたプロジェクタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このプロジェクタ装置では、レーザ光を蛍光体の一点に集光させ、蛍光体で色変換した光を集光して、DMD(Digital Mirror Device:商標登録)でデータに応じて各色の光を時分割表示し、カラー画像を形成して投影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−198805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、高価なDMDを用いるため、装置が高額になるという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、レーザ光源を用いた安価なプロジェクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、レーザ光源の出射光を、赤色蛍光を発する赤色蛍光体、緑色蛍光を発する緑色蛍光体、青色蛍光を発する青色蛍光体のそれぞれに入射し、各蛍光体の蛍光光を光学系で偏向して投光面に投光するプロジェクタ装置において、前記レーザ光源の出射光を、入力画像信号に規定された色、及び画素位置に応じて、前記赤色蛍光体、前記緑色蛍光体、及び前記青色蛍光体のいずれかの所定の位置に入射する可動ミラーを備える、ことを特徴とする。
【0007】
上記構成において、前記レーザ光源は、青色波長域以下の光を放射してもよい。
上記構成において、前記赤色蛍光体、前記緑色蛍光体、及び前記青色蛍光体は反射型であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動ミラーが蛍光体上に走査するため、高価なDMDが不要になり、プロジェクタ装置を低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の本実施の形態に係るプロジェクタ装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】プロジェクタ装置の投影動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るプロジェクタ装置の構成を模式的に示す図である。
プロジェクタ装置1は、レーザ光源2と、可動ミラー3と、赤色蛍光体4と、緑色蛍光体5と、青色蛍光体6と、プリズム7と、投影レンズ群8と、制御部10と、を備えている。
レーザ光源2は、制御部10の制御の下、青色波長域以下の光(本実施の形態では、紫外光)を出射する光源であり、レーザ光源2には例えばLD(半導体レーザ)を用いることができる。レーザ光源2の出射光は、可動ミラー3との間に設けられた反射鏡11で反射され可動ミラー3に入射する。
【0011】
可動ミラー3は、制御部10の制御の下、光を入射する蛍光体4〜6を選択し、選択した蛍光体4〜6のいずれかにレーザ光源2の出射光を走査する。具体的には、可動ミラー3は、振動により光を走査するミラー、例えば2次元MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナミラーを用いて構成されるとともに、矢印Aに示すように、駆動機構3Aによって角度が調整されるように構成されており、制御部10の制御の下、レーザ光源2の出射光を蛍光体4〜6のいずれかに一画素毎に描画する。
本実施の形態では、可動ミラー3と赤色蛍光体4との間には、ダイクロイックミラー13Rが設けられており、可動ミラー3からの光はダイクロイックミラー13Rで反射され赤色蛍光体4に入射する。また、可動ミラー3と蛍光体5,6との間には、それぞれ反射鏡12G,12B及びダイクロイックミラー13G,13Bが設けられており、可動ミラー3からの光は反射鏡12G,12B及びダイクロイックミラー13G,13Bで反射され蛍光体5,6に入射する。
【0012】
蛍光体4〜6は、それぞれ紫外光を入射して赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の三原色をそれぞれ発光する。蛍光体4〜6は、例えば樹脂製のベース基板の表面4A〜6Aに蛍光体材料を塗布して構成されている。紫外光により励起され発光する蛍光体材料として、例えば、赤色蛍光体4にはYS:Euを、緑色蛍光体5にはZnS:Cu、Alを、青色蛍光体6にはZnS:Agを使用することができる。
本実施の形態の蛍光体4〜6は、蛍光体4〜6の表面4A〜6Aから発光する蛍光光のみがプリズム7に入射するように配置された反射型の蛍光体であり、蛍光体4〜6を透過した光がプリズム7に向かわないようになっている。また、蛍光体4〜6の裏面4B〜6Bは鏡面に仕上げられており、裏面4B〜6Bへの光を反射させることにより発光効率を向上させている。
【0013】
プリズム7は、蛍光体4〜6の蛍光光を偏向する光学系である。本実施の形態では、プリズム7にクロスダイクロイックプリズムを用いており、プリズム7の3面の各面に1つずつ蛍光体4〜6を対向配置している。蛍光体4〜6から発光された蛍光光は、ダイクロイックミラー13R,13G,13Bを透過してプリズム7に入射し、投影レンズ群8に向けて出射する。
投影レンズ群8は、プリズム7から出射した光を、本プロジェクタ装置1の正面に配置されたスクリーン20の投光面21に向けて拡大投影するものであり、R、G、Bの各色光における色収差等によって投影画像が不鮮明になるのを防止すべく複数の集光素子を光軸方向に配置した組レンズとして構成されている。
【0014】
制御部10は、可動ミラー3の角度を制御する角度制御機能と、レーザ光源2の点灯を制御する点灯制御機能と、可動ミラー3の走査を制御する走査制御機能とを有している。角度制御では、制御部10は、プロジェクタ装置1に接続されたコンピュータ30(デジタルビデオカメラ等の画像出力機能を備えた他の電子機器であっても良い)から出力される画像データ(入力画像信号)に基づいて、駆動機構3Aに対して角度制御信号S1を出力して、可動ミラー3の角度を調整する。発光制御では、制御部10は、入力画像信号に基づいて、レーザ光源2に対し点灯制御信号S2を出力し、レーザ光源2の出射光の点灯を制御するとともに輝度を調整する。走査制御では、制御部10は、入力画像信号に基づいて、可動ミラー3に対して走査制御信号S3を出力して、レーザ光源2の射出光を蛍光体4〜6上に走査させる。
【0015】
次に、本実施の形態の動作について説明する。なお、以下の説明では、プロジェクタ装置1が毎秒あたりに表示する画像のフレーム数は60フレームであるものとする。
図2は、プロジェクタ装置1の投影動作を示すタイミングチャートである。
プロジェクタ装置1は、1フレームの画像投影の際に、この画像がR、G、Bの各色に分解されてなるRプレーン、Gプレーン、Bプレーンを1フレーム(1/60秒)の間に時分割でスクリーン20に順次投影し、人間にはそれぞれの画像がカラー合成されて視認されるようにしている。
【0016】
具体的には、1フレームが3分割されてR期間Tr、G期間Tg、及びB期間Tbが設けられており、制御部10は、R期間Trにおいて角度制御信号S1を駆動機構3Aに供給して、赤色蛍光体4に向けて可動ミラー3の角度を変更し、これと同様にして、G期間Tgにおいては緑色蛍光体5、B期間Tbにおいては青色蛍光体6に向けて可動ミラー3を変更する。
【0017】
R期間Trにおいては、角度制御信号S1の供給に続いて、制御部10が各画素に要求される明るさに応じて所定電圧または所定のPWM制御がなされた点灯制御信号S2をレーザ光源2に供給し、レーザ光源2の出力を調整する。これにより、R発光期間Terにおいては赤色光が発光し、これと同様にして、G発光期間Tegにおいては緑色光、B発光期間Tebにおいては青色光が時分割に発光する。したがって、これらR、G、Bの各色の光が1フレームの3倍の周期(1/180秒)で順次発光される。
【0018】
一方、R期間Trにおいては、角度制御信号S1の供給に続いて、制御部10が投影すべき画像データのR成分を示すRプレーンに基づいて走査制御信号S3を駆動機構3Aに出力しており、これにより、R発光期間TerにおいてはR成分のみの画像がスクリーン20上に投影される。また、これと同様にして、G発光期間TegにおいてはG成分のみの画像、B発光期間TebにおいてはB成分のみの画像が投影される。この結果、1フレームの間には、R、G、Bの各色成分の画像が順次投影され、人間にはそれぞれの色成分の画像がカラー合成されて視認される。
なお、投影画像の輝度を調整する場合には、制御部10がレーザ光源2に供給する点灯制御信号S2の電圧値またはPWM制御値(パルス幅など)を変更することで、レーザ光源2が射出する光量を制御する。
【0019】
以上説明したように、本実施の形態によれば、レーザ光源2の出射光を、入力画像信号に規定された色、及び画素位置に応じて、赤色蛍光体4、緑色蛍光体5、及び青色蛍光体6のいずれかの所定の位置に入射する可動ミラー3を備える構成とした。この構成により、可動ミラー3が蛍光体4〜6上に走査するため、高価なDMDが不要になり、プロジェクタ装置1を低コスト化できる。従来のDMDを用いた光学系の場合、画素毎の輝度調整をするために、余分な光を捨てていたが、本実施の形態では、レーザ光源2の出力を制御することにより、各画素に位置する蛍光体4〜6の発光強度を調整することができるため、捨てる光を出力せずに輝度調整が可能であり、省エネルギー性に優れる。また、レーザ光源2の出力を抑えるとともに、余分な光を出射しないため、プロジェクタ装置1に設けられる冷却機構の省エネルギー化も図ることができる。
【0020】
また、レーザ光源2は複数設けても良いが、1つのレーザ光源2を用い、レーザ光をR,G,Bの各色の光に波長変換することで、例えば色毎にレーザ光源を設ける場合に比べ、プロジェクタ装置1を低コスト化できるとともに、省エネルギー化が図られる。
しかも、蛍光体4〜6にレーザ光を一画素毎に照射するため、光学効率を高めるためにレーザ光を蛍光体の一点に集光させる従来の構成に比べ、蛍光体4〜6の熱負荷を軽減でき、蛍光体4〜6を長寿命化できる。
【0021】
また、本実施の形態によれば、レーザ光源2は青色波長域以下の光を放射するため、1つのレーザ光源2でR、G、Bの各色を発光させることができる蛍光体材料を容易に選定できる。
【0022】
また、本実施の形態によれば、赤色蛍光体4、緑色蛍光体5、及び青色蛍光体6は反射型であるため、蛍光体4〜6が損傷したり外れたりしても、プロジェクタ装置1からレーザ光が出射されることがない。また、蛍光体4〜6を反射型とすることで、蛍光体4〜6の裏面4B〜6Bに冷却機構を配置することができ、蛍光体4〜6を容易に冷却できる。
【0023】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、蛍光体は反射型であったが、可動ミラーからの光を蛍光体で透過させてプリズムに入射させる透過型であってもよい。
また、上記実施の形態では、可動ミラーは、MEMSスキャナミラーであったが、これに限定されず、ガルバノミラーであってもよい。
【0024】
また、上記実施の形態では、レーザ光源は、青色波長域以下の光を出射する光源としたが、これに限定されるものではなく、その他の波長域の光を出射するものであってもよい。この場合、その他の波長域の光でR、G、Bの各色を発光させることができる蛍光体材料を選定すればよい。
また、上記実施の形態では、赤色、緑色、及び青色の3色の蛍光体を使用する場合について説明したが、これらの色に限定されず、2色の2種類の蛍光体を使用してもよいし、3色以上の3種類以上の蛍光体を使用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 プロジェクタ装置
2 レーザ光源
3 可動ミラー
4 赤色蛍光体
5 緑色蛍光体
6 青色蛍光体
7 プリズム(光学系)
21 投光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源の出射光を、赤色蛍光を発する赤色蛍光体、緑色蛍光を発する緑色蛍光体、青色蛍光を発する青色蛍光体のそれぞれに入射し、各蛍光体の蛍光光を光学系で偏向して投光面に投光するプロジェクタ装置において、
前記レーザ光源の出射光を、入力画像信号に規定された色、及び画素位置に応じて、前記赤色蛍光体、前記緑色蛍光体、及び前記青色蛍光体のいずれかの所定の位置に入射する可動ミラーを備える、
ことを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項2】
前記レーザ光源は、青色波長域以下の光を放射することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項3】
前記赤色蛍光体、前記緑色蛍光体、及び前記青色蛍光体は反射型であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−37252(P2013−37252A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174483(P2011−174483)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】