説明

プロテクトフィルム及びその製造方法

【課題】 剛性、透明性、耐引き裂き性のいずれもが優れるプロテクトフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のプロテクトフィルムは、メルトフローレートが2〜20g/10分のポリプロピレンブロック共重合体20〜40質量%と、ホモポリプロピレン80〜60質量%とを含有するプロピレン樹脂組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の保護に利用されるプロテクトフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板等の光学用部品、電子機器、精密機器などの製品を移送あるいは保管する際には、それらの保護を目的としてプロテクトフィルムを貼着することがある。プロテクトフィルムとしては、曲面に対する追従性などの点から、様々なプラスチックフィルムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−41205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロテクトフィルムにおいては、剛性、特に高温領域での剛性、透明性、耐引き裂き性に優れることが求められる。
プロテクトフィルムの剛性が高い場合には、プロテクトフィルムを製品に貼着した後に高温状態になったときでも、製品に密着していない部分でプロテクトフィルムが垂れることがなく、製品を充分に保護できる。これに対し、剛性が低い場合には、高温状態になったときに、製品に密着していない部分でプロテクトフィルムが垂れてしまい、製品を充分に保護できないことがある。
また、プロテクトフィルムの透明性が高ければ、プロテクトフィルムを貼着したまま製品を目視で検査できる。
さらに、プロテクトフィルムの耐引き裂き性が優れていれば、プロテクトフィルムを製品から剥離する際にプロテクトフィルムが引き裂かれることはないが、耐引き裂き性が低いと、プロテクトフィルムが引き裂かれて剥離作業の作業性が低くなる。
しかし、これまでに、上述した要求特性のすべてを同時に満足するプロテクトフィルムは提供されていなかった。
【0004】
さらには、プロテクトフィルムにおいてはフィッシュアイが少ないことが求められる。フィッシュアイはプロテクトフィルムの外観を損ね、その結果、プロテクトフィルムを製品に貼着した際に製品の外観まで損ねるからである。しかも、フィッシュアイは突起物となっているため、製品に接触した際に製品を傷つけることもある。そのようなことから、フィッシュアイの少ないプロテクトフィルムの製造方法が求められている。
【0005】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、剛性、透明性、耐引き裂き性のいずれもが優れるプロテクトフィルムを提供することが目的とする。さらには、剛性、特に高温領域での剛性、透明性、耐引き裂き性に優れる上に、フィッシュアイの少ないプロテクトフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)メルトフローレートが2〜20g/10分のポリプロピレンブロック共重合体20〜40質量%と、ホモポリプロピレン80〜60質量%とを含有するプロピレン樹脂組成物からなるプロテクトフィルムである。
(2)メルトフローレートが2〜20g/10分のポリプロピレンブロック共重合体20〜40質量%と、ホモポリプロピレン80〜60質量%とを含有するプロピレン樹脂組成物を溶融し、その溶融状態のプロピレン樹脂組成物をろ過精度30μm以下の金属繊維ろ過フィルターに通して溶融ろ過するろ過工程と、
ろ過工程にてろ過したプロピレン樹脂組成物をフィルム状に押し出し、温度40〜60℃の冷却ロールで冷却するフィルム化工程とを有するプロテクトフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプロテクトフィルムは、剛性、透明性、耐引き裂き性のいずれもが優れる。
本発明のプロテクトフィルムの製造方法によれば、剛性、特に高温領域での剛性、透明性、耐引き裂き性に優れる上に、フィッシュアイの少ないプロテクトフィルムを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のプロテクトフィルムについて説明する。
本発明のプロテクトフィルムは、ポリプロピレンブロック共重合体とホモポリプロピレンとを含有するプロピレン樹脂組成物からなるものである。
【0009】
ポリプロピレンブロック共重合体とは、ポリプロピレン成分とエラストマー成分とを構成成分として含有するものである。
ポリプロピレンブロック共重合体におけるポリプロピレン成分は、プロピレン単独重合体又はプロピレン単位を95質量%以上含有するプロピレン単位とエチレンなどのオレフィンとの共重合体である。
ポリプロピレンブロック共重合体におけるエラストマー成分は、プロピレン単位と、エチレン単位及び/又は炭素数4〜12のα−オレフィン単位とからなる共重合体であって、プロピレン単位が95質量%未満の共重合体である。エラストマー成分におけるα−オレフィンとしては、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのエチレン及びα−オレフィンは1種類で使用してもよいし2種類以上を混合して使用することもできる。
【0010】
上記エラストマー成分中のプロピレン単位含有量は40〜70質量%であることが好ましく、45〜65質量%であることがより好ましい。エラストマー成分中のプロピレン単位含有量が40質量%未満であると剛性が低くなる傾向にある。また、エラストマー成分中のプロピレン単位含有量が70質量%を超えると、耐引き裂き性や透明性が低下することがある。
【0011】
上記エラストマー成分は極限粘度[η]が1.5〜3.5g/dlであることが好ましい。エラストマー成分の極限粘度[η]が1.5g/dl未満であると剛性、耐引き裂き性が低くなる傾向にある。また、エラストマー成分の極限粘度[η]が3.5g/dlを超えると、透明性が低くなることがある。
ここでいう極限粘度[η]は、デカヒドロナフタレン中、135℃において測定した値である。
【0012】
ポリプロピレンブロック共重合体におけるエラストマー成分の含有量は3〜25質量%であることが好ましく、4〜15質量%であることがより好ましい。エラストマー成分の含有量が5質量%未満では、耐引き裂き性や透明性が低下することがあり、25質量%を超えると、剛性が低下する傾向にある。
【0013】
このポリプロピレンブロック共重合体はメルトフローレート(以下、MFRという。)が2〜20g/10分であり、好ましくは3〜18g/10分である。ポリプロピレンブロック共重合体のMFRが2g/10分未満であると、透明性が低くなり、MFRが20g/10分を超えると、剛性、耐引き裂き性が低くなる。
なお、本発明においてMFRとは、全てJIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定した値である。
【0014】
プロピレン樹脂組成物に含まれるホモポリプロピレンとは、ほぼプロピレン単位からなるプロピレン重合体である。ホモポリプロピレンとしては、プロピレン単位のみからなるホモポリプロピレンが最も好ましいが、本発明に支障のない範囲、具体的には、2質量%以下でエチレンが共重合されていてもよい。
また、ホモポリプロピレンのMFRは、2〜20g/10分であることが好ましく、3〜18g/10分であることがより好ましい。
【0015】
プロピレン樹脂組成物においては、ポリプロピレンブロック共重合体が20〜40質量%、ホモポリプロピレンが80〜60質量%の比率で含まれる。さらに、ポリプロピレンブロック共重合体が25〜35質量%、ホモポリプロピレンが75〜65質量%の比率で含まれることが好ましい。プロピレン樹脂組成物中のポリプロピレンブロック共重合体含有量が20質量%未満である(すなわち、ホモポリプロピレンが80質量%を超える)と耐引き裂き性が低くなる。また、ポリプロピレンブロック共重合体含有量が40質量%を超える(すなわち、ホモポリプロピレンが60質量%未満である)と剛性が不足する。
【0016】
上記プロピレン樹脂組成物からなるプロテクトフィルムは、厚さが20〜120μmであることが好ましい。プロテクトフィルムの厚さが20μm未満であると、剛性、耐引き裂き性及び耐熱性が低くなる傾向にあり、120μmを超えると透明性が低下する傾向にある。
【0017】
このプロテクトフィルムはコロナ処理が施されても構わない。また、片面に粘着剤が塗布されていても構わない。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン粘着剤などが挙げられる。
【0018】
次に、本発明のプロテクトフィルムの製造方法の一例について説明する。
このプロテクトフィルムの製造方法では、まず、ろ過工程にて、上記プロピレン樹脂組成物を溶融し、その溶融状態のプロピレン樹脂組成物をろ過精度30μm以下の金属繊維ろ過フィルターに通して溶融ろ過する。
【0019】
プロピレン樹脂組成物を溶融する方法としては押出機を用いる方法が挙げられる。押出機の温度としては220〜280℃であることが好ましい。押出機は単軸押出機であってもよいし、二軸押出機であってもよい。
【0020】
溶融状態のプロピレン樹脂組成物をろ過する際に使用する金属繊維ろ過フィルターとしては、例えば、金網フィルター、焼結金網フィルター、ポーラスメタルフィルター、金属ファイバ焼結フィルター及びこれらのフィルターを適宜組み合わせたものが挙げられる。
金属繊維ろ過フィルターは、JIS B8356に準拠して測定されるろ過精度が30μm以下であり、20μm以下であることが好ましい。ろ過精度が30μm以下であることにより、得られるプロテクトフィルムのフィッシュアイを低減できる。これに対し、ろ過精度が30μmを超えるとフィッシュアイの低減効果が乏しい。
【0021】
金属繊維ろ過フィルターの形状としては、チューブ型フィルター、プリーツ型円筒フィルター、リーフディスクフィルター、フラット型円筒フィルター等が挙げられる。これらの中でもリーフディスクフィルターがフィッシュアイの低減効果、耐圧力およびろ過面積の点で好ましい。金属繊維ろ過フィルターは、日本精線株式会社より「商品名:ナスロンフィルター」及び富士フィルター工業株式会社より「商品名:フジメタルファイバー」として市販されており、これらを好適に用いることができる。
【0022】
この金属繊維ろ過フィルターは押出機とフィルム成形用ダイとの間に設置される。押出機後に設置された金属繊維ろ過フィルターの温度としては200〜280℃が好ましく、210〜270℃がさらに好ましく、220〜260℃が特に好ましい。温度が200℃未満では、押出し圧力の上昇を伴い好ましくない。一方、280℃を超えると樹脂の劣化を起こし好ましくない。
【0023】
次いで、フィルム化工程にて、ろ過工程にてろ過したプロピレン樹脂組成物をフィルム成形用ダイからフィルム状に押し出す。プロピレン樹脂組成物をフィルム状に押し出す方法としては、例えば、インフレーション成形法、Tダイ成形法などフィルム成形機を用いる方法が挙げられる。
そして、押し出した溶融状態のフィルムを、温度40〜60℃の冷却ロールにより冷却してプロテクトフィルムを得る。冷却ロールの温度が40℃未満であると剛性及び耐熱性が低くなることがあり、60℃を超えると透明性が低くなることがある上に、耐引き裂き性が低くなる傾向にある。
【0024】
以上説明したプロテクトフィルムの製造方法では、特定のプロピレン樹脂組成物からポリプロピレンフィルムを得るため、剛性、透明性、耐引き裂き性に優れる。特に、特定の温度の冷却ロールで溶融状態のフィルムを冷却するから、耐引き裂き性がより優れる。また、ろ過工程を有するから、プロテクトフィルムのフィッシュアイを少なくできる。
なお、本発明のプロテクトフィルムは、本発明のプロテクトフィルムの製造方法以外の方法でも製造できる。例えば、溶融ろ過を省略しても製造できるし、冷却ロールの温度を40〜60℃にしなくても製造できる。ただし、溶融ろ過を省略した場合には、フィッシュアイを少なくできないことがあり、冷却ロールの温度を40〜60℃にしない場合には耐引き裂き性または耐熱性、透明性が低くなることがある。
【実施例】
【0025】
以下の例において用いた樹脂を以下に示す。
BPP1;JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRが10.0g/10分、エチレン−プロピレン共重合体からなるエラストマー成分の割合が15.5質量%、エラストマー中のプロピレン含有量が55質量%、エラストマー成分の極限粘度が2.5dl/gであるポリプロピレンブロック共重合体
BPP2;JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRが1.0g/10分、エチレン−プロピレン共重合体からなるエラストマー成分の割合が18質量%、エラストマー中のプロピレン含有量が50質量%、エラストマー成分の極限粘度が2.0dl/gであるポリプロピレンブロック共重合体
HPP;JIS K 7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRが7.0g/10分のホモポリプロピレン
【0026】
(製造例1)
30質量%のBPP1と、70質量%のHPPとをタンブラーミキサで混合し、それにより得られた混合物を二軸押出機(神戸製鋼所社製、KTX37型)を用いてペレットにした。
得られたペレットを、口径65mmφの押出機を用いてペレットを溶融させ、押出機出口に設置した日本精線株式会社製「商品名:ナスロンフィルター(濾過精度20μm)」に通して溶融ろ過した。そして、ろ過したポリプロピレン樹脂組成物をTダイ(温度250℃)に供給して溶融状態のフィルムを成形し、その溶融状態のフィルムを温度50℃の冷却ロールに接触させて冷却し、厚み40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
【0027】
(製造例2)
冷却ロールの温度を20℃にしたこと以外は製造例1と同様にして厚さ40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
(製造例3)
冷却ロールの温度を70℃にしたこと以外は製造例1と同様にして厚さ40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
【0028】
(製造例4)
溶融ろ過を省略したこと以外は製造例1と同様にして厚さ40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
【0029】
(製造例5)
30質量%のBPP2と70質量%のHPPとをタンブラーミキサで混合し、それにより得られた混合物からポリプロピレンフィルムを作製したこと以外は製造例1と同様にして厚さ40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
【0030】
(製造例6)
10質量%のBPP1と90質量%のHPPとをタンブラーミキサで混合し、それにより得られた混合物からポリプロピレンフィルムを作製したこと以外は製造例1と同様にして厚さ40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
【0031】
(製造例7)
50質量%のBPP1と50質量%のHPPとをタンブラーミキサで混合し、それにより得られた混合物からポリプロピレンフィルムを作製したこと以外は製造例1と同様にして厚さ40μmのポリプロピレンフィルムを作製した。
【0032】
製造例1〜7のポリプロピレンフィルムを以下の通りに評価した。評価結果を表1に示す。
ヘイズ(透明性):JIS K 7105に準拠し、スガ試験機社製HGM−2DP型ヘイズメーターを使用しヘイズを測定した。
引張特性(剛性):JIS K 7127に準じてオリエンテック社製UCT−500を用い、引張り速度2mm/分にて弾性率を測定した。
引き裂き強度:JIS P 8116に準拠し、MDのエルメンドルフ引き裂き強度を測定した。
フィッシュアイ数:30cm×30cmの面積のフィルムに観察されるフィッシュアイの個数を目視にて数えた。
【0033】
【表1】

【0034】
特定のプロピレン樹脂組成物からなる製造例1のポリプロピレンフィルムは、ヘイズ(透明性)、剛性、耐引き裂き性のいずれもが優れていた。また、フィッシュアイの数も少なかった。
冷却ロール温度が20℃の製造例2では剛性が、冷却ロール温度が70℃の製造例3では引き裂き強度が、それぞれ製造例1より若干劣り、剛性と耐引き裂き性とのバランスが悪かったが実用上問題はない。
また、溶融ろ過を省略した製造例4ではフィシュアイの個数が製造例1より多かった。
MFRが2g/10分未満のポリプロピレンブロック共重合体を用いた製造例5のポリプロピレンフィルムはヘイズ(透明性)が高かった(透明性が低かった)。
ポリプロピレンブロック共重合体の含有量が20質量%未満であった製造例6のポリプロピレンフィルムは耐引き裂き性とヘイズ(透明性)が劣っていた。
ポリプロピレンブロック共重合体含有量が40質量%を超えていた製造例7のポリプロピレンフィルムはヘイズ(透明性)が高く、剛性が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレートが2〜20g/10分のポリプロピレンブロック共重合体20〜40質量%と、ホモポリプロピレン80〜60質量%とを含有するプロピレン樹脂組成物からなることを特徴とするプロテクトフィルム。
【請求項2】
メルトフローレートが2〜20g/10分のポリプロピレンブロック共重合体20〜40質量%と、ホモポリプロピレン80〜60質量%とを含有するプロピレン樹脂組成物を溶融し、その溶融状態のプロピレン樹脂組成物をろ過精度30μm以下の金属繊維ろ過フィルターに通して溶融ろ過するろ過工程と、
ろ過工程にてろ過したプロピレン樹脂組成物をフィルム状に押し出し、温度40〜60℃の冷却ロールで冷却するフィルム化工程とを有することを特徴とするプロテクトフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−328156(P2006−328156A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151290(P2005−151290)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】