説明

ヘスペリジン類を含有してなる心拍変動調整剤

【課題】心拍変動調整し精神的あるいは情緒的に良好な状態にできなかった点をヘスペリジン類を含有してなる心拍変動調整剤の摂取により可能とする方法を提供する。
【解決手段】ヘスペリジン類を、一回摂取時にヘスペレチン換算で20mgから5000mg摂取する心拍変動調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍変動調整剤とその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心拍変動とは、心拍の時間間隔の変化のことで、精神的あるいは情緒的な状態を反映している。
ヘスペリジン類は主に柑橘類に含まれるフラボノイドであるが、これまでヘスペリジン類の効果として、神経機能調節剤の報告(特許文献1)がある。この報告の適用例では、神経症、メニエール症、神経衰弱といった神経機能失調者に2ヶ月以上の服用で改善された事例は記載されているが、心拍変動の調整効果は無い。さらに、慢性的な機能障害の改善であり、急性的な改善効果ではない。また、健常者の精神または情緒的な状態を改善した事例は無い。
【特許文献1】特開平11-255655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、これまで、心拍変動調整し精神的あるいは情緒的に良好な状態にできなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の心拍変動は、心拍のR波間隔を周波数解析で得られる心拍変動性指標(以下、HRV)により評価する。このHRVは、周波数解析でえられた低周波(LF)成分(0.04〜0.15Hzの周波数成分)、高周波(HF)成分(0.15〜2.00Hzの周波数成分)のピークパワー値等を用い、精神状態の定量化を行う手法ならびに評価指標で、医学的に検討価値の高い指標として知られている。
【0005】
LF成分値は精神的緊張の増大などにより増加し、HF成分値は、安静状態や睡眠中に高い値を示し緊張度の増大により消失する。
【0006】
実際には、HF成分値が高くなる、または、LF/HF成分の数値が低くなることで、精神的に安定であると評価する。
【0007】
ヘスペリジン類は主に柑橘類に含まれるフラボノイドで、アグリコンであるヘスペレチン、これに糖鎖が結合したヘスペリジン、さらにサイクロデキストリン合成酵素などで糖を付加させた酵素処理ヘスペリジン(あるいは糖転移ヘス
ペリジン)などがあげられる。本発明では、どのヘスペリジン類を用いても有効である。
【0008】
本発明での有効成分はヘスペリジン類であり、その有効な摂取量は、一回摂取時にヘスペレチン換算で、20mgから5000mgの摂取が好ましい。これらの範囲よりも少ない摂取量の場合、有効成分が少なくなるため、効果が期待できない。また、これらの範囲よりも多い場合は、日常に摂取できる範囲を超え、さらに適切な摂取形態をなさない。
【0009】
有効量のヘスペリジン類を摂取後、6時間以内で急性的に効果が発現する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、心拍変動調整し精神的あるいは情緒的に良好な状態にする利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ヘスペリジン類組成物は、ヘスペリジン類単独で構成されたものでもよいが、これ以外に、食品素材、食品添加物、医薬品素材と混合した複合の組成物でもよい。
【0012】
ヘスペリジン類組成物は、どのような形態でもよく、例えば、固形、粉末または液状などの飲食品形態、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの製剤形態、飼料形態などが挙げられる。
【実施例】
【0013】
次に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
(実施例1)
18歳から22歳の健康な女子学生11名を対象に実施した。温度22℃湿度50%の室内で、60℃に温めた酵素処理ヘスペリジン500mg(ヘスペレチン換算190mg)配合した200mlの飲料(試験品)と配合していない飲料(対照品)をダブルブラインド
クロスオーバーで摂取させ、心拍変動を計測し、心拍変動はHF成分とLF/HF成分の数値を求めた。その結果、試験品摂取時には、対照品摂取時と比べ、摂取70分後まで、HF成分が高く(図1)、LF/HF成分は低く(図2)、心拍変動調整効果が認められた。
【0014】
(比較例1)
18歳から22歳の健康な女子学生11名を対象に実施した。温度22℃湿度50%の室内で、37℃に温めたヘスペレチン19mg配合した200mlの飲料(試験品)と配合していない飲料(対照品)をダブルブラインド
クロスオーバーで摂取させ、心拍変動を計測し、心拍変動はHF成分とLF/HF成分の数値を求めた。その結果、試験品と対照品間で、HF成分(図3)、LF/HF成分(図4)とも、有意な差は無く、ヘスペレチン19mgでは少量のため効果が無かった。
【産業上の利用可能性】
【0015】
ヘスペリジン類を含有してなる心拍変動調整剤の摂取により心拍変動調整し精神的あるいは情緒的に良好な状態にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
実施例1のHF成分(図1)とLF/HF成分(図2)の経時的変動を11名平均で示した。
比較例1のHF成分(図3)とLF/HF成分(図4)の経時的変動を11名平均で示した。




【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペリジン類を含有してなる心拍変動調整剤
【請求項2】
ヘスペリジン類が、ヘスペレチン、ヘスペリジン、および配糖体化されたヘスペリジンである請求項1の心拍変動調整剤
【請求項3】
ヘスペリジン類を、一回摂取時にヘスペレチン換算で20mgから5000mg摂取する心拍変動調整方法


【公開番号】特開2010−59097(P2010−59097A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226545(P2008−226545)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】