説明

ヘチマ製クレンジングパッド

【課題】 古来から垢すり具などとして広く使用されてきた乾燥ヘチマ繊維の応用技術に関し、とくに、銀の殺菌作用や、金や白金の箔や微粉を人肌に接触させることによって発現されると期待されている抗酸化作用や美容作用をとりいれたヘチマ製クレンジングパッドを提供する。
【解決手段】 複数枚のヘチマ繊維シートを積層した積層体を主体とするものである。ヘチマ繊維シートは、ヘチマ繊維の立体組織が偏平に圧縮加工されたものである。ヘチマ繊維シート積層体は、周囲が縫合されて一体化されている。ヘチマ繊維シート積層体のシート間には、銀箔または銀粉がヘチマ繊維シートに接着した状態で存在する。ヘチマ繊維シート積層体の表面には、金箔または白金箔が付着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、古来から垢すり具などとして広く使用されてきた乾燥ヘチマ繊維の応用技術に関し、とくに、銀の殺菌作用や、金や白金の箔や微粉を人肌に接触させることによって発現されると期待されている抗酸化作用や美容作用をとりいれたヘチマ製クレンジングパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀イオンの優れた殺菌作用は周知のとおりである。人肌に金箔や金粉を接触させることによって発現されると期待されている抗酸化作用や美容作用については、たとえば、特開昭63−225699号公報「金箔を分散含有する化粧石ケンおよびその製造方法」、特開2000−256178号公報「カプセル型入浴剤」、特開2004−73964号公報「金コロイド溶液及びその製造方法」にいろいろな観点から叙述されている。白金は高価であるが、金と同様な抗酸化作用や美容作用が期待されている。
【0003】
ヘチマの実の形態を残した素朴な乾燥ヘチマ繊維を加工してあらたな用途開発をすることについては、たとえば、特開平5−163606号公報「ヘチマ繊維素材及びその製造方法」、特開平5−339860号公報「ヘチマ繊維成形体の製造方法」、特開平7−308252号公報「ヘチマクッションシーツ」、特開2001−40559号公報「ヘチマ繊維の成型品とその製造方法」にいろいろな観点から叙述されている。
とくに、上記の特開平5−163606号公報の段落0015にはヘチマ繊維の立体組織をプレス成形することにより平板状に加工することが記載されている。
【発明の開示】
【0004】
この発明に係るヘチマ製クレンジングパッドは、複数枚のヘチマ繊維シートを積層した積層体を主体とするものである。このヘチマ繊維シートは、ヘチマ繊維の立体組織が偏平に圧縮加工されたものである。このヘチマ繊維シート積層体は、周囲が縫合されて一体化されている。このヘチマ繊維シート積層体のシート間には、銀箔または銀粉が挟み込まれている。さらには、ヘチマ繊維シート積層体の表面には、金箔または白金箔が付着されている。
【0005】
この発明に係るヘチマ製クレンジングパッドは、ヘチマ繊維シート積層体の内部に銀箔または銀粉が存在しているので、使用によりヘチマ繊維シート積層体が水分を含んで放置されても、銀イオンの殺菌作用によりヘチマ繊維自体の腐敗が抑制され、悪臭を発したり繊維が変質することがなく、長期間きれいな状態に保たれる。
【0006】
この発明に係るヘチマ製クレンジングパッドは、素朴なヘチマ繊維立体組織のようにかさばらないだけでなく、圧縮加工の際に繊維が適度に砕かれることによって素朴なヘチマ繊維立体組織に比して柔軟な繊維組織体となっており、肌触りが柔らかく優しくなる。使用に際してヘチマ製クレンジングパッドを湯に浸すと、繊維組織が水分を含んで適度に膨潤し、さらにいっそう肌触りが柔らかくなり、顔の皮膚を擦るのにもなんら抵抗を感じなくなる。もちろん洗顔石けんと一緒に使用してもよい。
【0007】
この発明に係るヘチマ製クレンジングパッドで上述のように顔肌を擦ると、よく汚れが落ちるだけでなく、当該パッドの表面や内部に存在している金・銀・白金の箔や微粉が皮膚に接触し、これら貴金属の一部は皮膚に付着する。これによって抗酸化作用や美容作用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】原材料となるヘチマ繊維立体組織の概略図である。
【図2】圧縮加工したヘチマ繊維シートの概略図である。
【図3】円形に裁断したヘチマ繊維シートの概略図である。
【図4】2枚重ねの実施例の概略図である。
【図5】3枚重ねの実施例の概略図である。
【図6】飾り紐のついた実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===ヘチマ繊維シートの製造方法===
古来から使用されているヘチマの実の形態を残した素朴な乾燥ヘチマ繊維の立体組織を図1(A)に示している。これは、外形の全体を形作っている筒状組織1と、筒状組織1の中空部の中心に存在する芯状組織2と、芯状組織2と筒状組織1とを結合しているリブ状組織3からなる。なお周知の乾燥ヘチマの製造方法については説明しない。
【0010】
図1(B)に示すのは、図1(A)に示した普通のヘチマ繊維から芯状組織2とリブ状組織3を切除して筒状組織1だけにしたものである。図1(C)に示すのは、芯状組織2とリブ状組織3を切除した図1(B)の筒状組織1に切れ目を入れて筒を切り開いて板状にしたものである。
【0011】
この発明の美容用ヘチマシートの原材料としては、図1(A)(B)(C)に示した3種類のヘチマ繊維のいずれをも使用することができる。これらのヘチマ繊維を以下に詳述するように偏平に圧縮加工して図2に示すようなごく薄いヘチマ繊維シート4を得るのであるが、結論的には、芯状組織2とリブ状組織3を内包した図1(A)の普通のヘチマ繊維から加工したシートがいちばん厚いものとなり、図1(B)のものを加工したシートは少し薄いものとなり、図1(C)のものを加工したシートはかなり薄くなる。
【0012】
ヘチマ繊維の圧縮加工には、金箔の製造やあぶらとり紙の製造に古くから使用されている機械ハンマー(箔打機と呼ばれる)を用いる。原材料となるヘチマ繊維を被覆シート材で挟んで機械ハンマーの台座に置き(台座にもハンマーにもヘチマ繊維が直接触れないように被覆シート材をあてがう)、ヘチマ繊維を機械ハンマーにより繰り返し打ち付ける。打ち付け回数が増えるにつれてヘチマ繊維の立体組織は偏平になり、繊維組織が徐々に砕かれ、繊維の軟化が促進される。
【0013】
機械ハンマーによる打ち付け時に使用する被覆シート材は重要な役割を担っている。被覆シート材がないと、ヘチマ繊維が機械ハンマーの金属部材に直接打ち付けられることになり、この場合、ヘチマ繊維と金属部材との接触面の滑りが悪いことと打ち付け衝撃が強すぎることにより、繊維の破壊が過度に進む一方で展延性が悪く、良好な性状のヘチマシートは得難い。
【0014】
望ましい被覆シート材は、金箔またはあぶらとり紙の製造における機械ハンマー打ち付け工程にて使用した打ち紙である。典型的な打ち紙は手漉きの雁皮紙などの和紙である。とくに金箔またはあぶらとり紙の製造工程で使い古したものがよい。また、グラシン紙などの洋紙でもよく、金箔またはあぶらとり紙の製造工程で使い古したものがよい。
【0015】
こうした被覆シート材で図1(A)(B)(C)に示すヘチマ繊維の立体組織を挟んだ状態で機械ハンマーにより繰り返し打ち付けて偏平に圧縮し、図2に示すヘチマ繊維シートを得る。この場合、ヘチマ繊維の展延性が良好で、過度な繊維破壊を来すことなく薄くて柔らかなヘチマ繊維シートを成形することができる。とくに、被覆シート材に接していたヘチマ繊維シートの表面部分がきわめて滑らかに仕上がる。
【0016】
===ヘチマ繊維シートの裁断===
以上の方法により2ミリメートルほどの厚さのヘチマ繊維シートを製造し、これを裁断することにより、図3に例示するように、6〜12センチメートルほどの直径の円形のヘチマ繊維シートを得る。もちろん、厚みや直径の数値は望ましい例示であり、円形に裁断することも望ましい例示にすぎない。
【0017】
===ヘチマ繊維シートの積層と縫合===
金・銀・白金の添加プロセスについては後述することとし、このプロセスを飛ばして、ヘチマ繊維シートの積層と縫合のプロセスについて先に説明する。
第1実施例としては、図4に示すように、円形に裁断した2枚のヘチマ繊維シート5と6を外形を揃えて重ね、その全周を糸で縁かがり縫いして一体的に縫い合わせる。第2実施例としては、図5に示すように、円形に裁断した3枚のヘチマ繊維シート7、8、9を外形を揃えて重ね、その全周を糸で縁かがり縫いして一体的に縫い合わせる。もちろん縁かがり縫いに限定されるものではない。たとえば一針ごとに糸を緩く縛って糸を切っていく縫合方法など、いろいろな方法を採用することができる。縫い糸を緩くすることで、ヘチマ繊維シート積層体の周縁部の拘束を緩やかにすることができる。
【0018】
===シート間への銀箔や銀粉の添加===
図4に示した2枚重ねの実施例においては、縫合プロセスの前に、一方のヘチマ繊維シート5の一面(重ね合わせる面)に銀箔10を接着させておく。銀箔10を接着させるのには接着材を使用する。接着材としては、アロエベラ抽出成分、ヒアルロン酸、コラーゲンを適宜に配合した天然材料を用いたゼリーを使用するのが望ましい。たとえばアロエベラの葉肉から抽出したアロエベラゼリーを用いる。
【0019】
ヘチマ繊維シートにアロエベラゼリーを塗布し、アロエベラゼリー塗布面に銀箔を貼りつけたり、銀箔細片や銀粉をふりかけて分散させた後、アロエベラゼリーを乾燥させる。乾燥工程ではアロエベラゼリーを塗布したヘチマ繊維シートを加熱してもよい。乾燥したアロエベラゼリーは接着材として機能し、ヘチマ繊維シートに添付された銀箔・銀箔細片・銀粉がヘチマ繊維に絡みつくように接着される。
【0020】
銀箔や銀粉をヘチマ繊維シートに接着させるのに上記のような接着材は必須ではない。ヘチマ繊維の立体組織を機械ハンマーで繰り返し打ち付けて偏平に圧縮加工する途中途中において、銀箔や銀粉をヘチマ繊維に塗しながら圧縮加工を進めることにより、銀箔や銀粉を迷路のようなヘチマ繊維の間に紛れ込ませて繊維表面に圧着させて定着させることができる。
【0021】
図4に示すように、一方のヘチマ繊維シート5の一面(重ね合わせる面)に銀箔10を接着させ、これに他方のヘチマ繊維シート6を重ねて縫合することで、ヘチマ繊維シート積層体のシート間に銀箔や銀粉がヘチマ繊維に接着した状態で存在することなる。
【0022】
===金箔や金粉の添加===
上記のように、ヘチマ繊維シート積層体のシート間に銀箔や銀粉をヘチマ繊維に接着した状態で存在させることに加えて、上記したのと同様な方法で、シート間に金箔細片や金粉・白金箔細片や白金粉をシート間においてヘチマ繊維に接着した状態で存在させてもよい。
【0023】
===積層体表面への金や白金の添加===
図4に示した2枚重ねの実施例においては、縫合プロセスの前に、ヘチマ繊維シート6の一面(積層体の表面になる)にハートマークを象った金箔11を接着している。接着の方法は、アロエベラゼリー等を用いた上述の方法と同じでよい。積層体表面への金箔の添加は、縫合プロセスの後でも実施することができる。
【0024】
また、金箔や金粉に加えて、あるいは代えて、白金箔や白金粉を上記と同様な方法によってヘチマ繊維シート積層体の表面に接着してもよいし、さらに加えて、銀箔や銀粉を積層体表面に接着してもよい。図3のハートマークの金粉11に例示しているように、金・銀・白金の箔や箔細片や微粉を適宜に用い、各種の工芸品に見られる技法を模して、ヘチマ繊維シート積層体の表面を華麗に装飾するのことが望ましい。もちろん、積層体の両面に箔や粉による装飾を施すことが望ましいが、コスト面で片面装飾となることもやむをえない。
【0025】
===3枚重ねの実施例===
図5に示した3枚重ねの実施例においては、真ん中のヘチマ繊維シート8はその両面とも積層体の中に埋もれて表面に現れない点が図3の2枚重ねの実施例と相違するところ、ヘチマ繊維シート積層体のシート間に銀箔または銀粉をヘチマ繊維に接着した状態で存在させること、ヘチマ繊維シート積層体の表面に金箔または白金箔が接着されていることについて、これまで説明した製法と格別に相違する製法が必要とされるものではない。
【0026】
3枚重ねの場合、真ん中に挟まれるヘチマ繊維シート8の両面に銀箔や銀粉を接着しておけば(金箔や金粉あるいは白金箔や白金粉を接着してもよい)、これを挟む2枚のヘチマ繊維シート7と9の内面側には銀を添加しなくともよい。
【0027】
===シート間の銀添加の補足説明===
シート間に添加する銀箔や銀粉(金箔や金粉あるいは白金箔や白金粉も同じ)については、これをヘチマ繊維に接着させるのに、上述したアロエベラゼリー等の接着材を用いることは必須ではない。シート間に添加する銀箔や銀粉はヘチマ繊維シートの内側に隠れて存在するので、接着材を用いなくとも、使用を重ねても脱離しにくいのでほとんど問題ない。
【0028】
===飾り紐をつける===
図6に示す実施例においては、ヘチマ繊維シート積層体の周辺部分に小さな貫通孔12が形成され、この貫通穴に飾り紐13(リボン)が結ばれいてる。これによりヘチマ製クレンジングパッドとしての装飾性がいっそう高くなるのに加えて、洗面所や浴室にて水に濡れたヘチマ製クレンジングパッドをぶら下げて保管するのに便利である。
【0029】
===作用効果の追加説明===
この発明に係るヘチマ製クレンジングパッドを初めて湯に浸すと、ヘチマ繊維が水分を吸収して膨潤し、パッドの厚みが十倍ほどにもなる。その後に再び乾燥しても、元の厚さには戻らずに膨らんだまま乾燥する。そのように膨らんだ形態は、手先でつまむように取り扱うのに適しており、体を大きく擦ったり、顔の細部を丁寧に擦ったりするのにきわめて勝手がよい。
【0030】
接着材としてアロエベラの葉肉抽出成分やヒアルロン酸やコラーゲンを含ませたものでは、これらの成分が皮膚に及ぼす美容効果も期待できる。また、金・銀・白金の箔細片や金粉をヘチマ繊維の迷路のような組織に絡ませて、あるいは紛れ込ませるようにして存在させるので、顔や身体の洗浄に上記のように使用される際、金・銀・白金の箔細片や金粉がいっきにヘチマシートから脱離してしまうことがなく、使用のたびに少しずつ脱離して皮膚に転移する。したがって人肌に金箔や金粉などを接触させるという効果の点において長持ちする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぎの事項(1)〜(4)により特定されるヘチマ製クレンジングパッド。
(1)複数枚のヘチマ繊維シートを積層した積層体を主体とすること
(2)ヘチマ繊維シートは、ヘチマ繊維の立体組織が偏平に圧縮加工されたものであること
(3)ヘチマ繊維シート積層体は、周囲が縫合されて一体化されていること
(4)ヘチマ繊維シート積層体のシート間には、銀箔または銀粉が挟み込まれていること
【請求項2】
つぎの事項(1)〜(5)により特定されるヘチマ製クレンジングパッド。
(1)複数枚のヘチマ繊維シートを積層した積層体を主体とすること
(2)ヘチマ繊維シートは、ヘチマ繊維の立体組織が偏平に圧縮加工されたものであること
(3)ヘチマ繊維シート積層体は、周囲が縫合されて一体化されていること
(4)ヘチマ繊維シート積層体のシート間には、銀箔または銀粉が挟み込まれていること
(5)ヘチマ繊維シート積層体の表面には、金箔または白金箔が接着されていること
【請求項3】
ヘチマ繊維シートには、金・銀・白金のいずれかの箔小片または微粉が繊維の間に分散して接着されている
請求項1または2に記載のヘチマ製クレンジングパッド。
【請求項4】
ヘチマ繊維シート積層体の表面に接着された金箔または白金箔は、広がりをもった装飾図案化されたパターンを形成している
請求項2または3に記載のヘチマ製クレンジングパッド。
【請求項5】
金や銀や白金の箔や微粉は、接着材によりヘチマ繊維シートに接着されている
請求項2〜4に記載のヘチマ製クレンジングパッド。
【請求項6】
接着材は、アロエベラの葉肉抽出成分を含んでいる
請求項5に記載のヘチマ製クレンジングパッド。
【請求項7】
接着材は、ヒアルロン酸を含んでいる
請求項5に記載のヘチマ製クレンジングパッド。
【請求項8】
ヘチマ繊維シート積層体の周辺部分に小さな貫通孔が形成され、この貫通穴に紐が結ばれいてる
請求項1〜7のいずれかに記載のヘチマ製クレンジングパッド。
【請求項9】
ヘチマ繊維シートは、その圧縮加工工程において、金箔またはあぶらとり紙の製造における機械ハンマー打ち付け工程にて使用した打ち紙に挟まれた状態で、機械ハンマーにより繰り返し打ち付けられて偏平に圧縮されたものである
請求項1〜8のいずれかに記載のヘチマ製クレンジングパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24895(P2011−24895A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175654(P2009−175654)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(397017755)箔座株式会社 (5)
【Fターム(参考)】