説明

ヘルメットの内装体係止具

【課題】簡単な操作でヘルメット内面に着脱することが可能であり、且つ、経時使用による劣化を防止することが可能なヘルメットの内装体係止具を提供する。
【解決手段】ヘルメット12の縁部近傍の内側に設けられ、所定の隙間距離を隔てて配置された一対のブラケット13,14と、正面視M字形状をなし中央谷部pを下方に押圧することにより、爪部34a,34bが内側に弾性変形する弾性変形体34を有する差込部材15と、を備える。そして、爪部どうしの間隔は、隙間距離よりも若干長く形成され、差込部材15を各ブラケット13,14間に係止する際には、各爪部をブラケットの隙間に無理嵌めして爪部をブラケットに係止させる。また、差込部材15の係止を解除する際には、中央谷部pを下方に押圧し、側面部を内側に変形させて、爪部による係止を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの内面側に設けられ、内装体を係止する係止具に係り、特に、簡単な操作で着脱可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の頭部を保護するヘルメットは、ボウル形状の帽体と、該帽体の内面側に設けられ、使用者の頭部に直接触れる内装体を備えており、該内装体は、帽体内部に設けられる係止具によって取り付けられる。
【0003】
従来におけるヘルメット用の内装体係止具として、例えば、特開2009−68151号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、ヘルメットの内面側に一対の掛け止めブラケットを設け、更に、左右にそれぞれつまみ部を有する差込片をブラケット間に挿入することにより、差込片とブラケットとの着脱を行うようにしている。
【0004】
即ち、差込片は左右にそれぞれ爪部を有し、ヘルメットの使用者がつまみ部をつまんで該つまみ部を弾性変形させることにより、爪部による係合、解除を切り替えることにより、差込片の着脱を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−68151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、左右に設けられる2つのつまみ部を弾性変形させる構成であり、該つまみ部は、根本が1つの点で差し込み片に連結する構成であるので、経時使用により劣化が進み、破損する等の問題が発生する。そこで、何とか寿命を長くすることが可能な内装体係止具の考案が望まれていた。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な操作でヘルメット内面に着脱することが可能であり、且つ、経時使用による劣化を防止することが可能なヘルメットの内装体係止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、ヘルメットの内側に内装体を装着する内装体係止具において、前記ヘルメットの縁部近傍の内側に設けられ、所定の隙間距離を隔てて配置された一対のブラケットと、2つの側面部、及び中央谷部を有する正面視M字形状をなし、前記中央谷部を下方に押圧することにより、前記各側面部が内側に弾性変形する弾性変形体を有する差込部材と、を備え、前記差込部材の各側面部の外側にはそれぞれ係止用の爪部が形成され、各爪部どうしの間隔は、前記隙間距離よりも若干長く形成され、前記差込部材を前記各ブラケット間に係止する際には、前記各爪部を前記ブラケットの隙間に無理嵌めして前記爪部をブラケットに係止させ、前記差込部材の係止を解除する際には、前記差込部材の中央谷部を下方に押圧し、前記側面部を内側に変形させて、前記爪部による係止を解除することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記差込部材は、該差込部材の差込方向に沿って延びるガイド部材を備え、前記各ブラケットは、前記ガイド部材の着脱方向をガイドするガイド溝を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記差込部材は、前記弾性変形体の中央谷部から上方に延びる縦部材、及び該縦部材の先端部に直交する方向に形成される横部材からなる、正面視T字形状の押圧部材を備え、前記押圧部材を下方に押圧することにより、前記差込部材の係止を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、一対のブラケットの間に差込部材を挿入すると、爪部が各ブラケットの隙間部分に無理嵌めされて、各ブラケットに係止される。従って、簡単な操作で差込部材をブラケットに固定することができる。また、ブラケットを取り外す場合には、差込部材の中央谷部を下方に押し付けることにより、2つの爪部の間隔が狭まるので、簡単な操作で、差込部材をブラケットから取り外すことができる。
【0012】
請求項2の発明では、各ブラケットに設けられるガイド溝にそって、差込部材のガイド部材をスライドさせることができるので、差込部材をブラケットに係止させる操作を容易に行うことができる。
【0013】
請求項3の発明では、差込部材の中央谷部に正面視T字形状の押圧部材が設けられるので、使用者はこの押圧部材を下方に押圧するという簡単な操作で、ブラケットに係止されている差込部材を取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘルメットの内装体係止具の構成を示す斜視図であり、差込部材がブラケットに係合している状態を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘルメットの内装体係止具の構成を示す斜視図であり、差込部材をブラケットに係合する前の状態を示す。
【図3】本発明の一実施形態に係るヘルメットの内装体係止具の正面図であり、差込部材がブラケットに係合している状態を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係るヘルメットの内装体係止具の正面図であり、差込部材をブラケットに係合する前の状態を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る内装体係止具がヘルメットに取り付けられる様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るヘルメット12の内装体係止具11が係合した状態を示す斜視図、図2は、内装体係止具11が係合する前の様子を示す斜視図、 図3は、本発明の一実施形態に係るヘルメット12の内装体係止具11が係合した状態を示す正面図、図4は、内装体係止具11が係合する前の様子を示す正面図、図5は、ヘルメット12の内面に内装体係止具11が取り付けられる様子を示す説明図である。なお、図1,図2は、内装体係止具11をヘルメット12の外面側から透視した図を示している。
【0016】
図5に示すように、ヘルメット12の内面には、ヘルメット12の内面に対して、ヘッドバンド、ハンモック等の内装体を取り付けるための内装体係止具11が設けられている。そして、該内装体係止具11を操作することにより、ヘルメット12の内面に、内装体を装着することや、取り外すことができるようになっている。
【0017】
図2,図4に示すように、本実施形態に係る内装体係止具11は、ヘルメット12の内面に形成されたブラケット13,14(一対のブラケット)と、該ブラケット13,14に対して着脱が可能とされた差込部材15を備えており、ハンモックやヘッドバンド等の内装体を差込部材15に取り付けた状態で、該差込部材15をブラケット13,14に差し込むことにより、ヘルメット12内に内装具を容易に装着することができる。
【0018】
ヘルメット12の内面に形成される各ブラケット13,14は、互いに対象な形状をなしており、それぞれ上端面21,22を有し、各上端面21,22にはL字状の切り欠き部21a,22aが形成されている。更に、各上端面21,22の下方には、ガイド溝23,24が形成されている。また、各ブラケット13,14の中央には、差込部材15を着脱する際に、該差込部材15のスライド移動をガイドするガイド片16が形成されている。
【0019】
また、差込部材15の左右双方には、内装体を係止するための、樹脂等で形成された係止部31,32が取り付けられ、更に、下部には係止部33が取り付けられている。これらの係止部31〜33を用いて、ヘッドバンド等の内装体を装着することができる。
【0020】
更に、差込部材15の中央には、正面視M字形状の弾性変形体34が設けられており、該弾性変形体34の中央谷部pには、正面視T字形状の押圧片35(押圧部材)が設けられている。即ち、中央谷部pには、該中央谷部pから上方に延びる縦部材、及び該縦部材の先端部に直交する方向に形成される横部材からなる正面視T字形状の押圧片35が設けられている。
【0021】
また、弾性変形体34の左右の側面部には、爪部34a,34bが形成されている。そして、弾性変形体34は、樹脂等の変形可能な材料で構成されているので、押圧片35を下方に押圧することにより、各爪部34a,34bは、内側に弾性変形することになる。即ち、各爪部34a,34bの間の距離が狭まる方向に弾性変形することになる。
【0022】
各爪部34a,34bの間隔は、前述したブラケット13,14間の間隔よりも若干長くなるように設定されている。即ち、図4に示す爪部間の距離L2は、ブラケット間の距離L1(所定の隙間距離)よりも若干長くなっている。
【0023】
また、図2に示すように、差込部材15の左右側方には、該差込部材15の差込方向に沿って延びるガイド部材41,42が設けられており、更に、各ブラケット13,14には、このガイド部材41,42を差込部材15の着脱方向に案内するガイド溝23,24が形成されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る内装体係止具11の作用について説明する。初めに、差込部材15をブラケット13,14に装着する際の操作について説明する。差込部材15をブラケット13,14に装着する際には、ガイド部材41,42をガイド溝23,24内に挿入した状態で、差込部材15を徐々に上方にスライド移動させる。すると、ガイド部材41,42がガイド溝23,24に案内されて上方に向けてスライドし、更に、弾性変形体34の爪部34a,34bが各ブラケット13,14の側辺(L字状に切り替えた部分)と接触する。そして、この状態で更にガイド部材41,42を上方に押し込むと、弾性変形体34の側面部が内側に向けて弾性変形し、爪部34a,34bがブラケット13,14の上端面21,22間に無理嵌めされる。
【0025】
そして、爪部34a,34bがブラケット13,14の上端面21,22の側辺を乗り越えると、図1,図3に示すように、爪部34a,34bがブラケット13,14の上端面21,22に係止され、差込部材15が各ブラケット13,14にて固定される。即ち、差込部材15がヘルメット12の内面に堅固に固定されることになり、この状態で差込部材15に取り付けられる内装体をヘルメット12内に装着することが可能となる。
【0026】
次に、差込部材15を各ブラケット13,14から取り外す際の操作について説明する。使用者が図1,図3に示す押圧片35を指で下方(図1,図3に示すY1の方向)に向けて押圧すると、M字形状をなす弾性変形体34の中央谷部pが下方に押されることになり、この力により弾性変形体34の側面が内側(図中矢印Y2の方向)に弾性変形することになる。これに伴って、爪部34a,34bもやはり内側に弾性変形し、2つの爪部34a,34bの間隔が狭まる。そして、この間隔がブラケット13,14間の距離L1よりも短くなると、ブラケット13,14による爪部34a,34bの係止が外れ、そのまま差込部材15はガイド部材41,42とガイド溝23,24とに案内されて下方にスライド移動する。やがては、差込部材15はブラケット13,14から外れることになる。
【0027】
即ち、使用者は押圧片35を下方に押すという操作を行うことにより、この押圧力によって爪部34a,34bの係合が解除され、その後、同一の方向への押圧を継続することにより、差込部材15をブラケット13,14から取り外すことが可能となる。
【0028】
このようにして、本実施形態に係るヘルメットの内装体係止具11では、差込部材15に正面視M字形状をなす弾性変形体34を設け、該弾性変形体34の左右の側面に爪部34a,34bを設ける。そして、差込部材15を取り付ける場合には、爪部34a,34bをブラケット13,14に係止させて、差込部材15を固定し、取り外す場合には、弾性変形体34の中央谷部pを下方に押圧することにより、弾性変形体34を弾性変形させて爪部34a,34bとブラケット13,14との係合を解除する。従って、簡単な操作で差込部材15をヘルメット12の内側に着脱することが可能となる。
【0029】
また、左右の各爪部34a,34bは、一体化された弾性変形体34に設けられており、該弾性変形体34は、2点で差込部材15と連結されているので、従来のように1点支持の構成と対比して、強度的に堅固となり、長期間に亘る使用による劣化を防止でき、破損する等の問題の発生を軽減することが可能となる。
【0030】
更に、差込部材15を取り外す際には、押圧片35を下方向に押圧することにより、爪部34a,34bの係合が解除され、更に、この方向に差込部材15がスライド移動してブラケット13,14から外れるので、使用者は押圧片35を同一方向に押すという簡単な操作で、差込部材15を取り外すことが可能となる。
【0031】
以上、本発明のヘルメットの内装体係止具を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ヘルメットに装着する内装体の着脱を容易に実行することに利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 内装体係止具
12 ヘルメット
13,14 ブラケット
15 差込部材
16 ガイド片
21,22 上端面
21a,22a 切り欠き部
23,24 ガイド溝
31,32 係止部
33 係止部
34 弾性変形体
34a,34b 爪部
35 押圧片
35a 縦部材
35b 横部材
41,42 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの内側に内装体を装着する内装体係止具において、
前記ヘルメットの縁部近傍の内側に設けられ、所定の隙間距離を隔てて配置された一対のブラケットと、
2つの側面部、及び中央谷部を有する正面視M字形状をなし、前記中央谷部を下方に押圧することにより、前記各側面部が内側に弾性変形する弾性変形体を有する差込部材と、を備え、
前記差込部材の各側面部の外側にはそれぞれ係止用の爪部が形成され、各爪部どうしの間隔は、前記隙間距離よりも若干長く形成され、
前記差込部材を前記各ブラケット間に係止する際には、前記各爪部を前記ブラケットの隙間に無理嵌めして前記爪部をブラケットに係止させ、
前記差込部材の係止を解除する際には、前記差込部材の中央谷部を下方に押圧し、前記側面部を内側に変形させて、前記爪部による係止を解除すること
を特徴とするヘルメットの内装体係止具。
【請求項2】
前記差込部材は、該差込部材の差込方向に沿って延びるガイド部材を備え、前記各ブラケットは、前記ガイド部材の着脱方向をガイドするガイド溝を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヘルメットの内装体係止具。
【請求項3】
前記差込部材は、前記弾性変形体の中央谷部から上方に延びる縦部材、及び該縦部材の先端部に直交する方向に形成される横部材からなる、正面視T字形状の押圧部材を備え、
前記押圧部材を下方に押圧することにより、前記差込部材の係止を解除することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のヘルメットの内装体係止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−112914(P2013−112914A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261436(P2011−261436)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】