説明

ベルト伝動装置

【課題】ローラチェーン用のスプロケットに対応する環状ベルトを有するベルト伝動装置を提供すること。
【解決手段】可撓性を有する材料で形成した環状ベルト110と、この環状ベルトと噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されているベルト伝動装置100において、環状ベルト110が、スプロケットの歯底部122と接触する湾曲部113およびスプロケットの歯部121と係合する穴部114をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部113が、ベルト長手方向にコ字の開いた口を向けて設けた複数のコ字型スリット111により形成された複数の舌片112を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部114が、コ字型スリット111により切り欠いた箇所に形成されているベルト伝動装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、この環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対の内リンクプレートと左右一対の外リンクプレートとを交互に連結ピンでチェーン長手方向に多数連結してローラをスプロケットと噛み合わせるチェーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−094660号公報(図1参照)
【特許文献2】特開平8−42645号公報(図1参照)
【特許文献3】特開2003−44242号公報(図1、図2参照)
【特許文献4】実開平6−82452号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来のチェーンは、複数の部品から構成され厳しい寸法精度が要求されるとともに組み立てが必要とされるため、コストが高くなるという問題があった。
そこで、チェーンに換えてベルトを用いたベルト伝動装置が考えられる(例えば、特許文献2乃至特許文献4参照)。
【0005】
しかしながら、上述した従来のベルト伝動装置のベルトが長手方向に平坦であり、かつ、等間隔に形成された穴または単に突部を有する構造であったため、ローラチェーン用のスプロケットに換えてベルト専用のスプロケットを用いなくてはならないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、ローラチェーン用のスプロケットに対応する環状ベルトを有するベルト伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本請求項1に係る発明は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、前記環状ベルトが、前記スプロケットの歯底部と接触する湾曲部および前記スプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、前記湾曲部が、前記ベルト長手方向にコ字の開いた口を向けて設けた複数のコ字型スリットにより形成された複数の舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記コ字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項2に係る発明は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、前記環状ベルトが、前記スプロケットの歯底部と接触する湾曲部および前記スプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、前記湾曲部が、前記ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して一のH字型スリットにより形成された第1舌片と該一のH字型スリットに隣接する他のH字型スリットにより形成された第2舌片とにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記H字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
本請求項3に係る発明は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、前記環状ベルトが、前記スプロケットの歯底部と接触する湾曲部および前記スプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、前記湾曲部が、前記ベルト長手方向にN字の2つの開いた口を向けて設けた複数のN字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して一のN字型スリットにより形成された第1舌片と該一のN字型スリットに隣接する他のN字型スリットにより形成された第2舌片とにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記N字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0010】
本請求項4に係る発明は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルト内周側と噛み合う歯部および歯底部を有する第1スプロケットと、前記環状ベルト外周側と噛み合う歯部および歯底部を有する第2スプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、前記環状ベルトが、前記第1スプロケットの歯底部と接触する第1湾曲部と、前記第2スプロケットの歯底部と接触する第2湾曲部と、前記第1スプロケットおよび第2スプロケットの歯部と係合する穴部とをベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、前記第1湾曲部が、前記ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片のうちの第1舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成され、前記第2湾曲部が、前記第2舌片を環状ベルト外周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記H字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係る発明のベルト伝動装置は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、この環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、環状ベルトが、スプロケットの歯底部と接触する湾曲部およびスプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部が、ベルト長手方向にコ字の開いた口を向けて設けた複数のコ字型スリットにより形成された複数の舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部が、コ字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、湾曲部がローラチェーンのローラ部分の役割を果たすため、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルトでローラチェーン用のスプロケットに対応することができる。
【0012】
本請求項2に係る発明のベルト伝動装置は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、この環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、環状ベルトが、スプロケットの歯底部と接触する湾曲部およびスプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部が、ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して一のH字型スリットにより形成された第1舌片とこの一のH字型スリットに隣接する他のH字型スリットにより形成された第2舌片とにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部が、H字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、湾曲部がローラチェーンのローラ部分の役割を果たすため、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルトでローラチェーン用のスプロケットに対応することができる。
さらに、湾曲部が長手方向前後で第1舌片および第2舌片により同じ形状となるため、スプロケットの正逆の両方向の駆動に対応できる。
【0013】
本請求項3に係る発明のベルト伝動装置は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、この環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、環状ベルトが、スプロケットの歯底部と接触する湾曲部およびスプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部が、ベルト長手方向にN字の2つの開いた口を向けて設けた複数のN字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して一のN字型スリットにより形成された第1舌片とこの一のN字型スリットに隣接する他のN字型スリットにより形成された第2舌片とにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部が、N字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、湾曲部がローラチェーンのローラ部分の役割を果たすため、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルトでローラチェーン用のスプロケットに対応することができる。
【0014】
また、湾曲部が長手方向前後で第1舌片および第2舌片により同じ形状となるため、スプロケットの正逆の両方向の駆動に対応できる。
さらに、スプロケットと噛み合ったときに第1舌片および第2舌片のそれぞれの先端が歯底部の中央と対向しない位置となるため、請求項2に係る発明の構成と比べて強い力に耐えることができる。
また、湾曲部の第1舌片と第2舌片との合わせ口の向きが環状ベルトの幅方向に対して斜めになり側視切れ目のない円弧となるため、スプロケットが高回転である場合であっても環状ベルトとスプロケットとの噛み合いを請求項2の係る発明の構成と比べてスムーズにすることができる。
【0015】
本請求項4に係る発明のベルト伝動装置は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、この環状ベルト内周側と噛み合う歯部および歯底部を有する第1スプロケットと、環状ベルト外周側と噛み合う歯部および歯底部を有する第2スプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、環状ベルトが、第1スプロケットの歯底部と接触する第1湾曲部と、第2スプロケットの歯底部と接触する第2湾曲部と、第1スプロケットおよび第2スプロケットの歯部と係合する穴部とをベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、第1湾曲部が、ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片のうちの第1舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成され、第2湾曲部が、第2舌片を環状ベルト外周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部が、H字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることにより、第1湾曲部がローラチェーンのローラ部分の役割を果たすため、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルトでローラチェーン用の第1スプロケットに対応することができる。
【0016】
さらに、第2湾曲部が環状ベルトにおける第1湾曲部と反対の面側にあり、第2湾曲部もローラチェーンのローラ部分の役割を果たすため、環状ベルトを基準として第1スプロケットと反対側に設けられたローラチェーン用の第2スプロケットにも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例のベルト伝動装置の環状ベルトを示す斜視図。
【図2】本発明の第1実施例のベルト伝動装置の環状ベルトを示す平面図および側面図。
【図3】本発明の第1実施例のベルト伝動装置を示す斜視図。
【図4】本発明の第1実施例のベルト伝動装置を示す側面図。
【図5】本発明の第2実施例のベルト伝動装置の環状ベルトを示す平面図および側面図。
【図6】本発明の第3実施例のベルト伝動装置の環状ベルトを示す平面図および側面図。
【図7】本発明の第4実施例のベルト伝動装置の環状ベルトを示す平面図、側面図およびベルト伝動装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のベルト伝動装置は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、この環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、環状ベルトが、スプロケットの歯底部と接触する湾曲部およびスプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部が、ベルト長手方向に設けた複数のスリットにより形成された複数の舌片を環状ベルトの少なくとも内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部が、スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることによって、湾曲部がローラチェーンのローラ部分の役割を果たすものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0019】
例えば、環状ベルトの材料は、金属や樹脂等の可撓性を有するもの、すなわち、製造工程で曲げ加工を施すことができる性質を有し、かつ、スプロケットに掛け回して使用する際に体積弾性ではなく、形状弾性を有するものであれば如何なるものであっても構わない。
例えば、環状ベルトは、金属製の鋼帯であることが望ましい。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明の第1実施例であるベルト伝動装置100について、図1乃至図4に基づいて説明する。
【0021】
ここで、図1は、本発明の第1実施例のベルト伝動装置100の環状ベルト110を示す斜視図であり、図2(A)は、本発明の第1実施例のベルト伝動装置100の環状ベルト110のコ字型スリット111によって形成される舌片112を曲げ加工する前の環状ベルト110の状態を示す平面図であり、図2(B)は、本発明の第1実施例のベルト伝動装置100の環状ベルト110の舌片112を曲げ加工して湾曲部113が形成された状態を示す側面図であり、図3は、本発明の第1実施例のベルト伝動装置100の環状ベルト110とスプロケット120とが噛み合っている様子を示す斜視図であり、図4は、図3の側面図である。
【0022】
本発明の第1実施例であるベルト伝動装置100は、図1乃至図4に示すように、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト110と、この環状ベルト110と噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されている。
ここで、スプロケット120は、従来のベルト用のものではなく、ローラチェーン用の一般的なものであって歯部121および歯底部122によって側視円弧を形成してローラチェーンのローラと噛み合うものである。
【0023】
そして、環状ベルト110が、スプロケット120の歯底部122と接触する湾曲部113およびスプロケット120の歯部121と係合する穴部114をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有している。
さらに、湾曲部113が、ベルト長手方向にコ字の開いた口を向けて設けた複数のコ字型スリット111により形成された複数の舌片112を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部114が、コ字型スリット111により切り欠いた箇所に形成されている。
これにより、環状ベルト110の湾曲部113がローラチェーンのローラ部分R(図4に示す仮想線)の役割を果たす。
つまり、環状ベルト110がローラチェーン用のスプロケット120と噛み合う。
【0024】
なお、スプロケット120が駆動する場合の駆動方向は、図4における反時計方向である。
これにより、スプロケット120の歯部121が環状ベルト110の湾曲部113を形成する舌片112の撓みにくい根元近傍に対して力を付与するため、湾曲部113を殆ど撓ませずに力を伝達することができる。
【0025】
さらに、湾曲部113の曲率半径を、歯部121および歯底部122によって形成される側視円弧の大きさに対応させた大きさにするのが望ましい。
これにより、環状ベルト110がスプロケット120と噛み合う際、湾曲部113が歯部121の先端側から歯底部122へスムーズに案内されるため、静かに、かつ、スムーズに噛み合うことができる。
【0026】
また、噛み合ったとき、歯部121が穴部114と係合するため、環状ベルト110の幅方向の位置をスプロケット120に対して安定させることができる。
さらに、環状ベルト110を製造する際にベルト材にコ字型スリット111を設けるだけでその他の無駄な部分がないため、環状ベルト110における材料の歩留まり率を略100%とすることができる。
【0027】
また、環状ベルト110を製造する際、ベルト材にコ字型スリット111を設ける工程、舌片112を曲げ加工して湾曲部113を形成する工程、必要に応じて環状ベルト110が無端となるようにベルト材の両端をつなぎ合わせる工程だけでよいため、ローラチェーンの製造と比べて製造コストを著しく低減することができる。
さらに、環状ベルト110に湾曲部113を設けてスプロケット120と噛合わせるため、従来のローラチェーンと比べて厚みを薄くして省スペース化を図ることができる。
【0028】
このようにして得られた第1実施例であるベルト伝動装置100は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト110と、この環状ベルト110と噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されているベルト伝動装置100において、環状ベルト110が、スプロケット120の歯底部122と接触する湾曲部113およびスプロケット120の歯部121と係合する穴部114をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部113が、ベルト長手方向にコ字の開いた口を向けて設けた複数のコ字型スリット111により形成された複数の舌片112を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部114が、コ字型スリット111により切り欠いた箇所に形成されていることにより、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルト110でローラチェーン用のスプロケット120に対応することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0029】
続いて、本発明の第2実施例であるベルト伝動装置200について、図5に基づいて説明する。
【0030】
ここで、図5(A)は、本発明の第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210のH字型スリット211によって形成される第1舌片212aおよび第2舌片212bを曲げ加工する前の環状ベルト210の状態を示す平面図であり、図5(B)は、本発明の第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210の第1舌片212aおよび第2舌片212bを曲げ加工して湾曲部213が形成された状態を示す側面図である。
【0031】
第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210は、第1実施例のベルト伝動装置100の環状ベルト110のコ字型スリット111をH字型スリット211として隣接する第1舌片212aおよび第2舌片212bによって1つの湾曲部213を形成する構成としたものであり、多くの要素について第1実施例のベルト伝動装置100の環状ベルト110と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
なお、図示しない第2実施例のスプロケットは、第1実施例のスプロケット120と同じであるので、同じ符号を用いることとする。
【0032】
本発明の第2実施例であるベルト伝動装置200は、図5(A)および図5(B)に示すように、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト210と、この環状ベルト210と噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されている。
そして、環状ベルト210が、スプロケット120の歯底部122と接触する湾曲部213およびスプロケット120の歯部121と係合する穴部214をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有している。
【0033】
さらに、湾曲部213が、ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリット211により形成された複数の第1舌片212aおよび第2舌片212bを環状ベルト内周側に曲げ加工して一のH字型スリット211により形成された第1舌片212aとこの一のH字型スリット211に隣接する他のH字型スリット211により形成された第2舌片212bとにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部214が、H字型スリット211により切り欠いた箇所に形成されている。
これにより、環状ベルト210の湾曲部213がローラチェーンのローラ部分R(図4に示す仮想線)の役割を果たす。
さらに、湾曲部213が長手方向前後で第1舌片212aおよび第2舌片212bにより同じ形状となる。
【0034】
このようにして得られた第2実施例であるベルト伝動装置200は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト210と、この環状ベルト210と噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されているベルト伝動装置200において、環状ベルト210が、スプロケット120の歯底部122と接触する湾曲部213およびスプロケット120の歯部121と係合する穴部214をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部213が、ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリット211により形成された複数の第1舌片212aおよび第2舌片212bを環状ベルト内周側に曲げ加工して一のH字型スリット211により形成された第1舌片212aとこの一のH字型スリット211に隣接する他のH字型スリット211により形成された第2舌片212bとにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部214が、H字型スリット211により切り欠いた箇所に形成されていることにより、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルト210でローラチェーン用のスプロケット120に対応することができるとともに、スプロケット120の正逆の両方向の駆動に対応できるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0035】
続いて、本発明の第3実施例であるベルト伝動装置300について、図6に基づいて説明する。
【0036】
ここで、図6(A)は、本発明の第3実施例のベルト伝動装置300の環状ベルト310のZ字型スリットによって形成される第1舌片312aおよび第2舌片312bを曲げ加工する前の環状ベルト310の状態を示す平面図であり、図6(B)は、本発明の第3実施例のベルト伝動装置300の環状ベルト310の第1舌片312aおよび第2舌片312bを曲げ加工して湾曲部313が形成された状態を示す側面図である。
【0037】
第3実施例のベルト伝動装置300の環状ベルト310は、第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210のH字型スリット211をN字(Z字)型スリット311としたものであり、多くの要素について第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
なお、図示しない第3実施例のスプロケットは、第1実施例のスプロケット120と同じであるので、同じ符号を用いることとする。
【0038】
本発明の第3実施例であるベルト伝動装置300は、図6(A)および図6(B)に示すように、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト310と、この環状ベルト310と噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されている。
そして、環状ベルト310が、スプロケット120の歯底部122と接触する湾曲部313およびスプロケット120の歯部121と係合する穴部314をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有している。
【0039】
さらに、湾曲部313が、ベルト長手方向にN字の2つの開いた口を向けて設けた複数のN字型スリット311により形成された複数の第1舌片312aおよび第2舌片312bを環状ベルト内周側に曲げ加工して一のN字型スリット311により形成された第1舌片312aとこの一のN字型スリット311に隣接する他のN字型スリット311により形成された第2舌片312bとにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部314が、N字型スリット311により切り欠いた箇所に形成されている。
これにより、環状ベルト310の湾曲部313がローラチェーンのローラ部分R(図4に示す仮想線)の役割を果たす。
また、湾曲部313が長手方向前後で第1舌片312aおよび第2舌片312bにより同じ形状となる。
さらに、スプロケット120と噛み合ったときに第1舌片312aおよび第2舌片312bのそれぞれの先端が歯底部122の中央と対向しない位置となる。
また、湾曲部313の第1舌片312aと第2舌片312bとの合わせ口の向きが環状ベルト310の幅方向に対して斜めになり側視切れ目のない円弧となる。
【0040】
このようにして得られた第3実施例であるベルト伝動装置300は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト310と、この環状ベルト310と噛み合う歯部121および歯底部122を有するスプロケット120とで構成されているベルト伝動装置300において、環状ベルト310が、スプロケット120の歯底部122と接触する湾曲部313およびスプロケット120の歯部121と係合する穴部314をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、湾曲部313が、ベルト長手方向にN字の2つの開いた口を向けて設けた複数のN字型スリット311により形成された複数の第1舌片312aおよび第2舌片312bを環状ベルト内周側に曲げ加工して一のN字型スリット311により形成された第1舌片312aとこの一のN字型スリット311に隣接する他のN字型スリット311により形成された第2舌片312bとにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部314が、N字型スリット311により切り欠いた箇所に形成されていることにより、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルト310でローラチェーン用のスプロケット120に対応することができるとともに、スプロケット120の正逆の両方向の駆動に対応でき、第2実施例の構成と比べて強い力に耐えることができ、さらに、スプロケット120が高回転である場合であっても環状ベルト310とスプロケット120との噛み合いを第2実施例の構成と比べてスムーズにすることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例4】
【0041】
続いて、本発明の第4実施例であるベルト伝動装置400について、図7に基づいて説明する。
【0042】
ここで、図7(A)は、本発明の第4実施例のベルト伝動装置400の環状ベルト410のH字型スリット411によって形成される第1舌片412aおよび第2舌片412bを曲げ加工する前の環状ベルト410の状態を示す平面図であり、図7(B)は、本発明の第4実施例のベルト伝動装置400の環状ベルト410の第1舌片412aおよび第2舌片412bを曲げ加工してそれぞれ第1湾曲部413aおよび第2湾曲部413bが形成された状態を示す側面図であり、図7(C)は、本発明の第4実施例のベルト伝動装置400の概略側面図である。
【0043】
第4実施例のベルト伝動装置400の環状ベルト410は、第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210のH字型スリット211によって形成される第1舌片212aおよび第2舌片212bをそれぞれ反対側へ曲げ加工して第1湾曲部413aおよび第2湾曲部413bを形成したものであり、多くの要素について第2実施例のベルト伝動装置200の環状ベルト210と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する400番台の符号を付すのみとする。
【0044】
本発明の第4実施例であるベルト伝動装置400は、図7(A)乃至図7(C)に示すように、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト410と、この環状ベルト内周側と噛み合う歯部421および歯底部422を有する第1スプロケット420と、環状ベルト外周側と噛み合う歯部431および歯底部432を有する第2スプロケット430とで構成されている。
【0045】
そして、環状ベルト410が、第1スプロケット420の歯底部422と接触する第1湾曲部413aと、第2スプロケット430の歯底部432と接触する第2湾曲部413bと、第1スプロケット420の歯部421および第2スプロケット430の歯部431と係合する穴部414とをベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有している。
【0046】
さらに、第1湾曲部413aが、ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリット411により形成された複数の第1舌片412aおよび第2舌片412bのうちの第1舌片412aを環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成され、第2湾曲部413bが、第2舌片412bを環状ベルト外周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部414が、H字型スリット411により切り欠いた箇所に形成されている。
これにより、環状ベルト410の第1湾曲部413aがローラチェーンのローラ部分R(図4に示す仮想線)の役割を果たすとともに、第1湾曲部413aと反対の面側にある第2湾曲部413bもローラチェーンのローラ部分R(図4に示す仮想線)の役割を果たす。
【0047】
なお、第1スプロケット420が駆動し第2スプロケット430が従動回転する場合の第1スプロケット420の駆動方向は、図7(C)における反時計方向である。
これにより、第1スプロケット420の歯部421が環状ベルト410の第1湾曲部413aを形成する第1舌片412aの撓みにくい根元近傍に対して力を付与するため、第1湾曲部413aを殆ど撓ませずに力を伝達することができる。
【0048】
さらに、環状ベルト410の第2湾曲部413bを形成する第2舌片412bの撓みにくい根元近傍が第2スプロケット430の歯部431に対して力を付与するため、第2湾曲部413bを殆ど撓ませずに力を第1スプロケット420から第2スプロケット430へ伝達することができる。
【0049】
また、第1湾曲部413aの曲率半径と第2湾曲部413bの曲率半径とを同じ大きさにしてもよいし、異なる大きさにしてもよい。
第1湾曲部413aの曲率半径と第2湾曲部413bの曲率半径とを異なる大きさにすることにより、第2スプロケット420の歯形を第1スプロケット430の歯形と異なる形状にすることができる。
【0050】
このようにして得られた第4実施例であるベルト伝動装置400は、可撓性を有する材料で形成した環状ベルト410と、この環状ベルト内周側と噛み合う歯部421および歯底部422を有する第1スプロケット420と、環状ベルト外周側と噛み合う歯部431および歯底部432を有する第2スプロケット430とで構成されているベルト伝動装置400において、環状ベルト410が、第1スプロケット420の歯底部422と接触する第1湾曲部413aと、第2スプロケット430の歯底部432と接触する第2湾曲部413bと、第1スプロケット420の歯部421および第2スプロケット430の歯部431と係合する穴部414とをベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、第1湾曲部413aが、ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリット411により形成された複数の第1舌片412aおよび第2舌片412bのうちの第1舌片412aを環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成され、第2湾曲部413bが、第2舌片412bを環状ベルト外周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、穴部414が、H字型スリット411により切り欠いた箇所に形成されていることにより、部品点数が少なく、かつ、廉価な環状ベルト410でローラチェーン用の第1スプロケット420に対応することができるとともに、環状ベルト410を基準として第1スプロケット420と反対側に設けられたローラチェーン用の第2スプロケット430にも対応することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0051】
100、 200、 300、 400 ・・・ ベルト伝動装置
110、 210、 310、 410 ・・・ 環状ベルト
111 ・・・ コ字型スリット
211 411 ・・・ H字型スリット
311 ・・・ N字型スリット
112 ・・・ 舌片
212a、312a、412a ・・・ 第1舌片
212b、312b、412b ・・・ 第2舌片
113、 213、 313 ・・・ 湾曲部
413a ・・・ 第1湾曲部
413b ・・・ 第2湾曲部
114、 214、 314、 414 ・・・ 穴部
120 ・・・ スプロケット
121 ・・・ 歯部
122 ・・・ 歯底部
420 ・・・ 第1スプロケット
421 ・・・ 歯部
422 ・・・ 歯底部
430 ・・・ 第2スプロケット
431 ・・・ 歯部
432 ・・・ 歯底部
R ・・・ 仮想ローラの線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、
前記環状ベルトが、前記スプロケットの歯底部と接触する湾曲部および前記スプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、
前記湾曲部が、前記ベルト長手方向にコ字の開いた口を向けて設けた複数のコ字型スリットにより形成された複数の舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記コ字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることを特徴とするベルト伝動装置。
【請求項2】
可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、
前記環状ベルトが、前記スプロケットの歯底部と接触する湾曲部および前記スプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、
前記湾曲部が、前記ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して一のH字型スリットにより形成された第1舌片と該一のH字型スリットに隣接する他のH字型スリットにより形成された第2舌片とにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記H字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることを特徴とするベルト伝動装置。
【請求項3】
可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルトと噛み合う歯部および歯底部を有するスプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、
前記環状ベルトが、前記スプロケットの歯底部と接触する湾曲部および前記スプロケットの歯部と係合する穴部をベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、
前記湾曲部が、前記ベルト長手方向にN字の2つの開いた口を向けて設けた複数のN字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して一のN字型スリットにより形成された第1舌片と該一のN字型スリットに隣接する他のN字型スリットにより形成された第2舌片とにより側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記N字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることを特徴とするベルト伝動装置。
【請求項4】
可撓性を有する材料で形成した環状ベルトと、該環状ベルト内周側と噛み合う歯部および歯底部を有する第1スプロケットと、前記環状ベルト外周側と噛み合う歯部および歯底部を有する第2スプロケットとで構成されているベルト伝動装置において、
前記環状ベルトが、前記第1スプロケットの歯底部と接触する第1湾曲部と、前記第2スプロケットの歯底部と接触する第2湾曲部と、前記第1スプロケットおよび第2スプロケットの歯部と係合する穴部とをベルト長手方向に等間隔でそれぞれ有し、
前記第1湾曲部が、前記ベルト長手方向にH字の2つの開いた口を向けて設けた複数のH字型スリットにより形成された複数の第1舌片および第2舌片のうちの第1舌片を環状ベルト内周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成され、前記第2湾曲部が、前記第2舌片を環状ベルト外周側に曲げ加工して側視凸となる円弧に形成されているとともに、前記穴部が、前記H字型スリットにより切り欠いた箇所に形成されていることを特徴とするベルト伝動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−113365(P2013−113365A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259378(P2011−259378)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】