説明

ベーカリー生地、及び、該生地を外生地とした包餡生地。

【課題】食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であるベーカリー製品を得るためのベーカリー生地、及び、該生地を外生地に使用した、上記特徴に加え、保型性が良好で、形状の揃った包餡食品を得るための包餡生地を提供すること。
【解決手段】破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地。このような生地は、例えば小麦粉主体のドウと可塑性油脂組成物から得られる積層状生地を、層状構造を視認できない状態にまでミキシングを行なうことにより得られる。また、該生地を外生地とした包餡生地は保型性が良好で、形状の揃った包餡食品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であるベーカリー製品を得るための、ベーカリー生地、及び、該生地を外生地に使用した、上記特徴に加え、保型性が良好で、形状の揃った包餡食品を得るための包餡生地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯切れと口溶けが良好であるベーカリー製品を得るためのベーカリー生地は大きく分けると練り生地と折り生地に分類することができる。
【0003】
練り生地は、油脂をシュガーバッター法やフラワーバッター法でクリーミング後、液状成分や、その他の成分を添加混合することによって得られたペースト状〜可塑性の生地であり、その生地を焼成して得られたベーカリー製品は、食感が脆すぎる反面、歯切れと口溶けが良好なものである。
【0004】
一方、折り生地は、油脂を小片状やシート状にして生地に添加し、折り畳み操作を加えて得られる積層状生地であり、その生地を焼成して得られたベーカリー製品は、サクサクした食感を楽しむため、食感は程よく脆いものの、歯切れと口溶けがやや練り生地に比べ劣るものである。
【0005】
そこで、この練り生地と折り生地の中間の食感を目指し、折り生地の生地や油脂に酵素や乳化剤を添加する方法(例えば特許文献1及び特許文献2参照)が行なわれてきたが、これらによって得られたベーカリー製品はあくまで、折り生地の食感を残したものであった。
【0006】
また、パイ饅頭やパイシュー等の、層状生地を外生地として使用する包餡食品は、普通はその形状を安定させるため、シート状のロールイン油脂を使用した折リパイ方式、又は小片状のロールイン油脂を使用した練りパイ方式で得られた積層状生地を、薄いシート状に成形したのち、中央部に餡やシュー生地等の内生地を積置した後に四方より折り畳み、巾着包みのようにして包み込んだ包餡生地を、必要に応じホイロをとった後、焼成又はフライを行なうことによって得られる。しかしこのような包餡生地を用いた方法では、形状の揃った包餡食品を得ることは難しかった。
【0007】
そこで、形状の揃った包餡食品を作成するために、小片状のロールイン油脂を生地中に分散させた後、強度のミキシングを行なった、いわゆるミーリーパイ生地を外生地とした包餡生地、及び該包餡生地を使用した包餡食品を製造することが行われるようになった。さらに、最近は生産効率向上の面から、この強度のミキシングと包餡成形を同時に行なう自動包餡機を使用して製造されることが多くなってきている。
【0008】
なお、この自動包餡機用の外包材生地製造の際には、均質な外生地を作るため、通常のミーリーパイの製法ではなく、まず水分の多い生地を製造(1次ミキシング)後、十分に冷却し、次の日にブレークダウンするまで生地を混捏(2次ミキシング)し、そこに小片状のロールイン油脂を投入して低速で0.5〜数分ミキシングした、特殊な練りパイ生地を用いる。
【0009】
この時点では小片状のロールイン油脂はその形状が視認できる状態であるが、自動包餡機の生地送り装置(スクリュー)や、生地の均質化ミキシング装置(アジテーター)によりミキシングされ、包餡生地において、小片状のロールイン油脂は視認できない状態となる。
【0010】
ところが、このような包餡生地は、ブレークダウンした生地を使用するため、焼成中の腰持ちが悪いため、得られた包餡食品の保型性が悪く、また食感が脆すぎる問題もあった。また、生地製造に長時間を要するため、生産効率が大変悪いという問題があった。
【0011】
ここで層状生地を外生地として使用する包餡食品の食感や保型性を改良するために、ジグリセリドとアスコルビン酸を特定量含有する生地を使用する方法(例えば特許文献3参照)が行なわれてきたが、特許文献1記載の方法は、保型性に対する効果が見られるものの、ヒキが強い食感になり、また、包餡食品の形状が揃わない問題に加え風味が悪いという問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開平05−45号公報
【特許文献2】特開2000−253816号公報
【特許文献3】特開平11−187808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であるベーカリー製品を得るためのベーカリー生地、及び、該生地を外生地に使用した、上記特徴に加え、保型性が良好で、形状の揃った包餡食品を得るための包餡生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、意外にも、積層状生地に強度のミキシングを加えた生地が、上記目的を達成できることを知見した。
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地、該生地を外生地とした包餡生地、冷凍包餡生地、及び該包餡生地を焼成、及び/又はフライして得られるベーカリー製品、又は包餡食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって得られたベーカリー生地は、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であるベーカリー製品を得ることができ、該生地を外生地に使用した包餡生地は、上記特徴に加え、保型性が良好で、形状の揃った包餡食品を得ることができる。また、自動包餡機を使用することで生産効率も高めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のベーカリー生地について詳述する。
本発明のベーカリー生地は、破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地である。
【0017】
破砕されたグルテン構造とは、いったん形成されたグルテン構造を破砕したものであり、もともとグルテン構造のできないようにして製造する練り生地とも、また、層状のグルテン構造を有する折り生地とも、また、ブレークダウンした生地とも異なる新しい概念のベーカリー生地である。
このような破砕されたグルテン構造は、例えば、あるベーカリー生地に含まれるグルテンの遊離SH基とSS結合の量の比の変化や、ファリノグラフの変化曲線や、アルべオグラフ測定値の変化などにより簡単に確認することができる。
このような破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地は、例えば、小麦粉主体のドウと可塑性油脂組成物から得られる積層状生地を、層状構造を視認できない状態にまでミキシングを行なうことにより簡単に得ることができる。
【0018】
本発明で使用する小麦粉主体のドウとは、小麦粉に、水と、必要に応じて小麦粉以外の穀粉、油脂、卵、粉乳、食塩、糖類、呈味剤、イースト菌、膨張剤等を加えて練り上げたものであり、例えば、パイ生地、デニッシュ生地、クロワッサン生地、ドーナツ生地、イーストドーナツ生地、タルト生地等が挙げられる。本発明では、良好な層状構造でありながら、層剥れがおきにくく、また焼成時やフライ時の油脂もれが少ない点においてデニッシュ生地、クロワッサン生地、イーストドーナツ生地等のイーストを含有する生地であることが好ましい。なお上記生地名称はロールイン油脂をロールインする前の生地をさす。
【0019】
本発明で使用する可塑性油脂組成物は、一般のパイやデニッシュ・ペストリー等の層状生地の製造で使用するバターや水中油型マーガリン、油中水型マーガリン、ショートニング等であり、折り畳み作業に適したシート状、ブロック状、あるいは小片状の一般的なロールイン用の可塑性油脂組成物を使用することができる。
【0020】
上記可塑性油脂組成物に使用する原料の油脂としては、特に限定されないが、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
【0021】
本発明においてはこれらの油脂を単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、本発明で使用する可塑性油脂組成物は、上記の原料油脂の他に、必要により、副原料として、水、糖類、糖アルコール類、乳化剤、食塩、香料、着色料、酸化防止剤、各種呈味材料等を使用することができる。そして、原料油脂やその他の副原料を用いて常法に従い、ショートニングタイプやマーガリンタイプのシート状、ブロック状、あるいは小片状の可塑性油脂組成物とする。
【0022】
本発明で使用する積層状生地とは、上記小麦粉主体のドウに対し、上記可塑性油脂組成物をロールインすることによって得られるものである。
ここで可塑性油脂組成物のロールイン量は、上記の小麦粉主体のドウ100質量部に対して、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは15〜70質量部、より好ましくは30〜60質量部である。可塑性油脂組成物が5質量部よりも少ないと、得られるベーカリー製品が層状を呈さないものになるおそれがあるため好ましくなく、また可塑性油脂組成物が40質量部よりも多いと、得られるベーカリー製品がぽろつき、層が剥れやすく、油っぽい食感となってしまう上に焼成時に油脂漏れが発生するおそれもある。
【0023】
また、積層状生地の好ましい層数は3〜512層、より好ましくは16〜256層である。層数が3層よりも少ないと得られるベーカリー製品が油っぽい食感となってしまう上に焼成時に油脂漏れが発生するおそれもある。また層数が512層よりも多いと、得られるベーカリー製品が層状を呈さないものになるおそれがある。
【0024】
上記ロールインの方法としては、シート状の可塑性油脂組成物を使用した折パイ方式であっても、小片状の可塑性油脂組成物を使用した練りパイ方式であってもよいが、より良好な食感と均質な層状構造の包餡食品が得られる点で、シート状の可塑性油脂組成物を使用した折パイ方式で得られたものであることが好ましい。ここで使用するシート状の可塑性油脂組成物とは厚さ2〜30mmのもので、成形済みのものでもよいし、ブロック状の可塑性油脂組成物をバターポンプ等で送りだし、連続的に生地上にシート状に合わせていく方法によるものでもよい。
【0025】
層状構造を視認できない状態にまでのミキシングとは、通常の練パイ生地製造の際に行なうような、小片状の可塑性油脂組成物の形状が残った状態とする軽いミキシングと異なり、きわめて長くミキシングすることにより、小片状の可塑性油脂組成物がまったく視認できない状態となるまでミキシングすることを指す。
本発明においてはこの操作こそが白眉であり、もちろん一般にはこれまで、積層状生地を更にミキシングするという発想はみられなかった。
【0026】
このような強度のミキシングは、もちろん積層状生地の層状構造を破壊することになる。この強度のミキシングを行なう点はミーリーパイの製造方法と全く同じであるが、ミーリーパイ生地ではグルテン構造が未発達であるため、食感のもろく、浮きの劣った、保型性の乏しい層状食品となる。しかし、ここで、積層状生地を使用して強度のミキシングをおこなうと、もともとロールイン前の生地はグルテン構造のできあがった生地であり、さらに、折り工程の際の加工硬化によりさらにグルテンが強化されているため、強度のミキシングをしても破砕されたグルテン構造が残存することにより、グルテンの強さが残る点においてミーリーパイ生地とは根本的に異なる。そのため、ミーリーパイに比べ、十分な浮きを示す上に、油脂の漏れが少なく、保型性が良好で食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好な食感のベーカリー製品を得ることが可能となった。
【0027】
なお、ここで、この層状構造を視認できない状態にまでのミキシングには、公知の各種のミキシング機械を使用することができる。例えば、竪型ミキサー、横型ミキサーなどの製菓・製パン機械、ミートチョッパー、リボンミキサー、アジテーター、スクリューミキサーなどが挙げられる。
【0028】
以下、本発明の包餡生地について詳述する。
本発明の包餡生地は、上記のような小麦粉主体のドウと可塑性油脂組成物からなる積層状生地を、層状構造を視認できない状態にまでミキシングを行なった生地のような、破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地を外生地として使用するものである。
【0029】
本発明の包餡生地は、このようにして得られた生地を外生地として、各種内生地を包餡成形することによって得られる。また、勿論、本発明の包餡生地は、内生地を2種以上使用する多重包餡生地であってもよい。
【0030】
ここで、本発明の包餡生地では、外生地と内生地の比率は、外生地100質量部に対し、内生地は10〜200質量部であることが好ましい。10質量部以下であると、火抜けが悪く、均質な外観の包餡食品が得られないおそれがあり、200質量部を超えると包餡成形が困難なことに加え、焼成中、あるいはフライ中に内生地が突沸したり、漏れ出してきれいな外観の包餡食品が得られず、商品価値が著しく損なわれてしまうおそれがある。
【0031】
上記内生地としては、餡、フラワーペースト、ジャムなどの一般的な製菓・製パン用フィリングは勿論、シュー生地、ケーキ生地、クッキー生地などのベーカリー生地も用いることができる。特に内生地と外生地の接合面に空隙ができにくく、また、2種の食感が楽しめる点において、ベーカリー生地を使用することが好ましく、なかでもシュー生地を用いると内生地の膨張性がきわめて高いため外観が特徴的であるため特に好ましい。
【0032】
なお、包餡生地全体の重量は好ましくは2g〜200g、より好ましくは5g〜100g、さらに好ましくは5g〜60gである。
【0033】
上記包餡成形方法はとくに制限はなく、例えば生地を薄いシート状に成形したのち、中央部に餡やシュー生地等の内生地を積置した後に四方より折り畳み、巾着包みをする方法でもよいし、これを型にいれてもよいし、勿論あんパンのように外生地で内生地を完全に包む方法でもよいし、一部内生地が露出するような成形をおこなってもよい。
【0034】
ここで、この包餡成形の際に、アジテーター、スクリューの両方がついている自動包餡機を使用することが、この層状構造を視認できない状態にまでのミキシングと包餡成形を同時に行なうことができる点において特に効率的であり好ましい。
このような自動包餡機としては、例えばレオン自動機製のCN200、CN208、CN500等が挙げられる。
なお、このような自動包餡機を使用する場合の好ましいスクリュー回転数は5〜20回転/分であり、好ましいアジテーターの回転数は30〜100回転/分である。
【0035】
上記包餡生地は勿論冷凍することが可能である。
一般の積層状冷凍生地は、冷凍・解凍することでグルテンネットワークが脆弱化し、浮きが悪化する問題がある。そこで、生地を強化する酸化剤などの冷凍生地改良剤を使用すると、浮きの問題は解決されるものの、生地が縮みやすく、焼成後の形態が安定しないという問題がある。
本発明の冷凍包餡生地は、破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地を使用するため、生地の縮みが少なく、焼成後の形態も安定するという特徴を有する上に、冷凍生地とすることで、各種の外生地や内生地を用いた包餡生地を、必要分だけ解凍して使用することができ、計画生産が可能となるメリットも併せ持つ。
【0036】
次に、本発明のベーカリー製品、及び包餡食品について述べる。
本発明のベーカリー製品は、上記ベーカリー生地を、必要に応じ圧延、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、焼成、及び/又はフライして得られたものであり、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好なものである。
【0037】
また、本発明の包餡食品は、上記包餡生地を、必要に応じ圧延、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、焼成、及び/又はフライして得られたものであり、外生地に層状生地を使用しながら、保型性が良好で、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好で、形状の揃ったものである。
【0038】
上記ベーカリー生地や包餡生地を焼成する場合、ホイロについては、イーストを含まない生地を使用する場合は必要なく、イーストを配合した場合のみ必要であり、体積の大きく、層剥れの少ないベーカリー製品を得るためには、好ましくは温度25〜40℃、相対湿度50〜80%で20〜90分、さらに好ましくは32℃〜38℃、相対湿度50〜80%で30〜60分である。
【0039】
焼成方法は、通常のベーカリー製品同様、160℃〜250℃、好ましくは170℃〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると火どおりが悪く、また良好な層状構造や食感が得られない。また、250℃を超えると焦げを生じ、食味が悪くなる。
【0040】
フライする場合、ラックタイムはとくに有効であり、生地の水分を飛ばし、表面を固化させることができ、結果として生地水分減少とフライ操作時の吸油を減少させることができるため、この操作を加えることが望ましく、時間にして10〜40分、相対湿度50%以下の環境中で静置することにより好ましい効果が得られる。
フライ操作は、通常のドーナツ等と同様、160℃〜250℃、好ましくは170℃〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると吸油が多く、良好な食感が得られない。250℃を超えると焦げを生じ、食味が悪くなる。
【0041】
フライ用油脂は特に制限がなく用いることができ、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
本発明においてこれらの油脂を単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。なかでも、食味と、酸化安定性、食感の点から、パーム油の水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施し、融点を25〜36℃とした加工油脂を70%以上含有する油脂が好ましく使用される。
【0042】
なお、上記焼成とフライを併用する場合は、フライした後焼成しても、焼成した後にフライしてもよい。
【実施例】
【0043】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1.5質量部、脱脂粉乳3質量部、練り込み油脂(マーガリン)5質量部、水54質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングした後、5℃の冷蔵庫内でこの生地を4時間リタードした。この生地にロールイン用油脂80質量部を積置し、リバースシーターを用いて常法によりロールイン(4つ折り4回)し、縦300mm、横300mm、厚さ35mmに成形し、小麦粉を主体とするドウ100質量部に対し可塑性油脂組成物を48質量部含み、層数が256層である積層状生地とした。
この積層状生地をニーダ−に投入し、5分間ミキシングし、層状構造が視認できない状態の生地とした。
この生地をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
この生地をリバースシーターを用いて厚さ3mmまで圧延し、直径40mmの円形に打抜き成形した後、ピケ穴をあけ、20℃で60分リタードした後、200℃の固定窯で12分焼成し、パフパイを得た。
このパフパイを、焼成2時間後、試食すると断面は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であった。
【0045】
〔実施例2〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1.3質量部、砂糖2質量部、脱脂粉乳3質量部、練り込み油脂(マーガリン)5質量部、水54質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングした後、5℃の冷蔵庫内でこの生地を4時間リタードした。この生地にロールイン用油脂80質量部を積置し、リバースシーターを用いて常法によりロールイン(4つ折り4回)し、縦300mm、横300mm、厚さ35mmに成形し、小麦粉を主体とするドウ100質量部に対し可塑性油脂組成物を48質量部含み、層数が256層である積層状生地とした。
この積層状生地をニーダ−に投入し、5分間ミキシングし、層状構造が視認できない状態の生地とした。
この生地をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
この生地を外包材、小倉餡を内包材とし、手包みで、内生地:外生地=20:20、合計重量=40gの包餡生地を得た。この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分に層状構造は視認できなかった。この包餡生地を軽く押しつぶし、20℃で60分リタードした後、200℃の固定窯で25分焼成し、パイ饅頭を得た。
このパイ饅頭は、焼成時の油脂漏れもなく、形状の揃ったものであり、焼成後の保型性も良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であった。
【0046】
〔実施例3〕
実施例2で使用した積層状生地を外包材、小倉餡を内包材とし、自動包餡機(レオン自動機製CN500、スクリュー回転数10回転/分、アジテーター回転数30回転/分、外包材ノズル口径35mm、内包材ノズル口径27mm)を用いて、内生地:外生地=20:20、合計重量=40gの包餡生地を得た。この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分に層状構造は視認できなかった。
また、この外生地部分をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
この包餡生地を軽く押しつぶし、20℃で60分リタードした後、200℃の固定窯で25分焼成し、パイ饅頭を得た。
このパイ饅頭は、焼成時の油脂漏れもなく、形状の揃ったものであり、焼成後の保型性も良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であった。
【0047】
〔実施例4〕
リバースシーターの代わりにラミネーターを使用し、且つ、層数を48層とした以外は実施例3と同様にして、包餡生地、及びパイ饅頭を得た。この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分に層状構造は視認できなかった。
また、この外生地部分をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
この包餡生地を軽く押しつぶし、20℃で60分リタードした後、200℃の固定窯で25分焼成し、パイ饅頭を得た。
このパイ饅頭は、実施例3で得られたパイ饅頭に比べ焼成時の油脂漏れが若干多かったものの、形状の揃ったものであり、焼成後の保型性は良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であった。
【0048】
〔実施例5〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、生イースト2質量部、食塩1.3質量部、砂糖2質量部、脱脂粉乳3質量部、練り込み油脂5質量部、水53質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングした後、5℃の冷蔵庫内でこの生地を4時間リタードした。この生地にロールイン用油脂80質量部を積置し、リバースシーターを用いて常法によりロールイン(4つ折り4回)し、縦300mm、横300mm、厚さ35mmに成形し、小麦粉を主体とするドウ100質量部に対し可塑性油脂組成物を48質量部含み、層数が256層である積層状生地とした。
この積層状生地を外包材、小倉餡を内包材とし、自動包餡機(レオン自動機製CN500、スクリュー回転数10回転/分、アジテーター回転数30回転/分、外包材ノズル口径35mm、内包材ノズル口径27mm)を用いて、内生地:外生地=20:20、合計重量=40gの包餡生地を得た。この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分に層状構造は視認できなかった。
また、この外生地部分をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
この包餡生地を32℃で60分ホイロをとった後、200℃の固定窯で25分焼成し、イーストパイ饅頭を得た。
このイーストパイ饅頭は、焼成時の油脂漏れもなく、形状の揃ったものであり、焼成後の保型性は良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、実施例3で得られたパイ饅頭に比べ更に食感がしっかりしており、歯切れと口溶けが良好であった。
【0049】
〔実施例6〕
実施例3で得られた包餡生地を200℃のナタネ油で4分フライし、フライドパイ饅頭を得た。
このフライドパイ饅頭は、形状の揃ったものであり、フライ後の保型性も良好であった。
なお、フライ2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、油っぽさもなく、歯切れと口溶けが良好であった。
【0050】
〔実施例7〕
実施例3で使用した積層状生地を外包材、実施例2で用いた小倉餡のかわりに下記のシュー生地を内包材として、自動包餡機(レオン自動機製CN500、スクリュー回転数10回転/分、アジテーター回転数30回転/分、外包材ノズル口径35mm、内包材ノズル口径27mm)を用いて、内生地:外包材=20:20、合計重量=40gの包餡生地を得た。この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分に層状構造は視認できなかった。
また、この外生地部分をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
この包餡生地を200℃の固定窯で25分焼成し、シューパイを得た。
このシューパイは焼成時の油脂漏れもなく形状の揃ったものであり、焼成後の保型性は良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると、外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であった。

シュー生地配合:シューマーガリン140質量部、水140質量部、薄力粉100質量部、全卵(正味)210質量部、重炭安1質量部
シュー生地製法:水、シューマーガリンをミキサーボウルに投入し軽く混合後、加熱し沸騰させたところに、小麦粉を加え、木へらで1分練りながら、十分に糊化させた。竪型ミキサーにこのミキサーボウルをセットし、ビーターを使用し、高速2分ミキシングした。さらに全卵を3回に分けて投入し、投入毎に中速1分ミキシングし、シュー生地を得た。なお、重炭安は、3回目の全卵投入の際に、該全卵に溶解して加えた。このシュー生地を5℃の冷蔵庫で一晩冷却した。
【0051】
〔実施例8〕
アジテーター回転数を100回転/分とした以外は実施例7と同様にして、包餡生地、及びシューパイを得た。
包餡生地は割れもなく良好な形状であり、この外生地部分をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含むことが確認された。
またシューパイは、焼成時の油脂漏れもなく形状の揃ったものであり、焼成後の保型性は良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると、外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、実施例7で得られたシューパイに比べ、更に歯切れと口溶けが良好であった。
【0052】
〔実施例9〕
実施例7で得られた包餡生地をいったん−20℃で7日間冷凍保管した後、5℃の冷蔵庫で10時間解凍後、200℃の固定窯で20分焼成し、シューパイを得た。
包餡生地は解凍時の油脂もれもなく、また、得られたシューパイは、実施例7で得られたシューパイ同様に焼成時の油脂漏れもなく、形状の揃ったものであり、焼成後の保型性は良好であった。
なお、焼成2時間後、試食すると、実施例7で得られたシューパイ同様に外生地部分は層状を呈しており、食感が脆すぎることなく、歯切れと口溶けが良好であった。
【0053】
〔比較例1〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1.5質量部、脱脂粉乳3質量部、水50質量部、小片状のロールイン油脂100質量部をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにて低速3分、中速7分ミキシングし、ミーリーパイ生地を得た。この時点で小片状のロールイン油脂を視認できない状態であった。
この生地をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含まないことが確認された。
この生地をリバースシーターを用いて厚さ3mmまで圧延し、直径40mmの円形に打抜き成形した後、ピケ穴をあけ、20℃で60分リタードした後、200℃の固定窯で12分焼成し、比較例1のパフパイを得た。
このパフパイを、焼成2時間後、試食すると、断面は層状を呈しているが、食感が脆く、ぱらつく、不良な食感であった。
【0054】
〔比較例2〕
比較例1で得られたミーリーパイ生地を外包材として使用した以外は実施例3と同様にして、比較例2の包餡生地及びパイ饅頭を得た。
この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分においては、層状構造は視認できなかった。
なお、この生地をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含まないことが確認された。
このパイ饅頭は、焼成時に若干の油脂漏れ、及び、若干の焼き落ちがあり、形状の揃ったものであるが、保型性は実施例3のパイ饅頭よりも悪かった。
なお、焼成2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、歯切れと口溶けも良好であったが、食感が脆く、ぱらつく、不良な食感であった。
【0055】
〔比較例3〕
下記のパイ生地配合と製法で得られた練りパイ生地を外包材として使用した以外は実施例3と同様にして、比較例1の包餡生地及びパイ饅頭を得た。
この包餡生地は割れもなく良好な形状であり、包餡生地の外生地部分においては、層状構造は視認できなかった。
また、この生地をファリノグラフを使用して測定したところ、その変化曲線から破砕されたグルテン構造を含まないことが確認された。
このパイ饅頭は、焼成時に若干の油脂漏れ、及び、若干の焼き落ちがあり、形状の揃ったものであるが、保型性は実施例3のパイ饅頭よりも悪かった。
なお、焼成2時間後、試食すると外生地部分は層状を呈しており、歯切れと口溶けも良好であったが、食感が脆く、ぱらつく、不良な食感であった。

練りパイ生地配合:強力粉40質量部、薄力粉60質量部、食塩1質量部、練込油脂(マーガリン)5質量部、全卵(正味)5質量部、モルト1質量部、水50質量部、小片状のロールイン油脂100質量部
練りパイ生地製法:小片状のロールイン油脂以外の全原料をミキサーボウルに投入し、竪型ミキサーにセットし、フックを使用して、低速4分、中速5分ミキシングし、得られた生地をバットに入れ、袋掛け後、5℃の冷蔵庫で一晩リタードした。この生地を再びミキサーボウルに投入、竪型ミキサーにセットし、フックを使用し、低速4分、中高速10分ミキシングした。ここで小片状のロールイン油脂を投入して低速30秒ミキシングした。この時点で小片状のロールイン油脂は形状をそのまま残しており、はっきり視認できる状態であった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕されたグルテン構造を含む非積層状であるベーカリー生地。
【請求項2】
小麦粉主体のドウと可塑性油脂組成物から得られる積層状生地を、層状構造を視認できない状態にまでミキシングを行なうことにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載のベーカリー生地。
【請求項3】
上記小麦粉主体のドウがイーストを含むことを特徴とする請求項2記載のベーカリー生地。
【請求項4】
上記積層状生地が、小麦粉主体のドウ100質量部に対し可塑性油脂組成物5〜80質量部からなるものである請求項2又は3記載のベーカリー生地。
【請求項5】
上記積層状生地の層数が3〜512層である請求項2〜4のいずれかに記載のベーカリー生地。
【請求項6】
上記積層状生地が折りパイ方式で得られたものであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のベーカリー生地。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のベーカリー生地を外生地とした包餡生地。
【請求項8】
外生地100質量部に対して、内生地を10〜200質量部包餡したことを特徴とする請求項7記載の包餡生地。
【請求項9】
上記内生地が菓子生地であることを特徴とする請求項7又は8記載の包餡生地。
【請求項10】
上記菓子生地がシュー生地であることを特徴とする請求項9記載の包餡生地。
【請求項11】
自動包餡機を使用したことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の包餡生地。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の包餡生地を冷凍したことを特徴とする冷凍包餡生地。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかで得られたベーカリー生地を焼成、及び/又は、フライしたことを特徴とするベーカリー製品。
【請求項14】
請求項7〜12のいずれかで得られた包餡生地を焼成、及び/又は、フライしたことを特徴とする包餡食品。


【公開番号】特開2006−20529(P2006−20529A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199429(P2004−199429)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】