説明

ベーカリー用配合材

【課題】配合素材部分の食感とベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感がなく、また配合素材部分の食感が軽い食感で、経日的な食感の変化がなく、また、配合素材がパンの表面に出た部分に焦げが生じないパンを得ることができる、ベーカリー用配合材を提供すること。
【解決手段】含気泡食品に対し水相糖濃度が50%以上である液状組成物を含浸させたベーカリー用配合材を使用することにより上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパン生地やケーキ生地等のベーカリー生地に配合されるベーカリー用配合材に関する。
【背景技術】
【0002】
食パン、菓子パン、デニッシュ等のパン類の内相に、呈味部分が点在するパン類はバラエティブレッドといわれ、その製造方法としては、焼成後にもそのままの形状で残るドライフルーツやチョコチップ等の呈味素材を、ベースとなるパン生地に混合する方法が一般に行なわれてきた。特にレーズン等の乾燥果実やチョコレートチップ等の油脂性菓子をベースとなるパン生地に分散させ、焼成して得られるバラエティブレッドは、その呈味素材の視認性が高く、風味を認識しやすいことから、古くから親しまれてきた。
【0003】
しかし、これらの乾燥果実や油脂性菓子は、それ自体硬い食感であることに加え、パン生地の表面に出ていた場合、焦げついてしまったり、焼成により硬化したりするため、その呈味部分の食感と、ベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感を生じ、一体感に欠ける食感のバラエティブレッドになってしまう問題があった。
【0004】
そこで、食した際にその呈味部分の食感がソフトとなるような食品素材を使用したバラエティブレッドの製造方法が各種提案されている。
例えば、呈味物質を含有する小片状のマーガリンやショートニング等の油脂組成物を使用する方法(例えば、特許文献1を参照)、シュー生地やケーキ生地等の焼成前の生地を配合する方法(例えば、特許文献2を参照)、小片状のフラワーペーストを使用する方法(例えば、特許文献3及び4を参照)、パイ生地等の生地で呈味素材をロールインした層状生地素材を使用する方法(例えば、特許文献5及び6を参照)、冷凍した菓子生地を使用する方法(例えば、特許文献7を参照)、シャリ感のあるハードキャンディーを使用する方法(例えば、特許文献8を参照)、キャラメルを使用する方法(例えば、特許文献9を参照)、油脂と澱粉類の混合物を小片状としたベーカリー用配合材を使用する方法(例えば、特許文献10を参照)等が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、クラムに油脂に起因する孔があいてしまう問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、添加するシュー生地やケーキ生地は極めて軟らかいため、ミキシングによってベースとなるパン生地に均質に練り込まれてしまい、呈味素材の視認性が悪いという問題があった。また、特許文献3〜6に記載の方法では、ミキシングによって呈味素材が生地に練り込まれやすいことに加え、呈味素材自体由来の糊化澱粉の粘つく食感が残ってしまうため、クラムの食感との間に違和感を生じてしまうという問題があった。さらに特許文献7に記載の方法では、風味が乏しくなってしまうことに加え、混合時にベースとなるパン生地の温度が低下し、製造時間が長くなってしまい、得られるパンの品質も大きく低下する問題があり、特許文献8に記載の方法では、水分含量が少ないクッキー等の焼菓子に使用する場合は良好な結果を示すが、水分含量が比較的高いパンに使用した場合は焼成当初ざらついた食感が残ることに加え、経日的に食感が変化してしまう問題があり、特許文献9に記載の方法では、呈味部分が経日的にべたついた食感になってしまうという問題があり、特許文献10に記載の方法では、配合材中の澱粉類の糊化がすすみにくく、そのため呈味部分が粉っぽい食感になりやすいという問題があった。
【0006】
一方、食パン、菓子パン、デニッシュ等のパン類の内部に、呈味部分が包餡されている包餡食品は、フラワーペーストや餡、あるいはカレーフィリング等の呈味素材を、ベースとなるパン生地で包餡する方法が一般に行なわれ、特に餡やフラワーペースト等の澱粉を主体とするペースト状食品をベースとなるパン生地に分散させ、焼成して得られるクリームパン、アンパン、カレーパン等の菓子パンは、以前より広く親しまれてきた。
しかし、これらのペースト状フィリングは、それ自体大量の水を含むため、突沸して展板上に流れ出たり、突沸しないまでもパンの内部に空洞を生じやすく、また、耐熱保形性のために多量の澱粉や増粘剤が使用されているため、重い食感で風味が損なわれやすい問題があった。
【0007】
そのため、澱粉類や蛋白質成分の配合に特徴を持たせた包餡用フィリング(例えば特許文献11、12)、一部が液晶状態の乳化剤を添加することを特徴とするフィリング材(特許文献13)等が提案されている。しかしこれらの方法は耐熱保形性や空洞の生成改善に一定の効果はあるが、ペースト状のフィリングであることには変わりはないため重い食感になってしまうことについては解決されるものではなかった。
【0008】
ここで、これらのバラエティブレッドや包餡食品において、使用する呈味素材として、スポンジクラムやパンクラスト等の焼成品を使用したフィリング材が、廃棄物の削減の面からも注目され、各種提案されている。
たとえば、スポンジに油脂類を含浸させたもの(例えば特許文献14参照)、スポンジに水分含量が50〜100質量%の液状食品を含浸させたもの(例えば特許文献15参照)、スポンジ様生地の焼成物に風味素材を加えて混合・練り上げて製造する新規フィリング(特許文献16参照)、パンのクラスト(例えば特許文献17参照)等が提案されている。しかし、特許文献14の方法は、呈味部分が油性感が高すぎ、特許文献15の方法は呈味部分がべとついた食感であり、特許文献17の方法はパンのクラストがヒキのある食感として残ってしまうなど、共にベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感を生じ、一体感に欠ける食感のバラエティブレッドになってしまう問題があり、特に特許文献15の方法は、表面に出た部分が焦げついてしまう問題もあった。また、特許文献16記載の方法はペースト状のフィリングであることには変わりはないため重い食感になってしまうことについては解決されるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−233649号公報
【特許文献2】特開昭61−128846号公報
【特許文献3】特開2001−145454号公報
【特許文献4】実開平07−028383号公報
【特許文献5】特開平09−149755号公報
【特許文献6】特開2001−269111号公報
【特許文献7】特開2006−129816号公報
【特許文献8】特開2006−280323号公報
【特許文献9】特開2008−253144号公報
【特許文献10】特開2008−253143号公報
【特許文献11】特開2002−330702号公報
【特許文献12】特開平06−46758号公報
【特許文献13】特開2006−271289号広報
【特許文献14】特開2007−228913号公報
【特許文献15】特開2007−228912号公報
【特許文献16】特開平10−117691号公報
【特許文献17】特開平08−038029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、配合材部分の食感とベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感がなく、また配合材部分の食感が軽い食感で、経日的な食感の変化がなく、また、配合材がパンの表面に出た部分に焦げが生じないパンを得ることができる、ベーカリー用配合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく種々検討した結果、従来多用されてきたペースト状のフィリングではなく、特定の水相糖濃度の液状組成物をパンやケーキに代表される含気泡食品に含浸させたものを使用した場合、上記課題をすべて解決できることを知見した。
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、含起泡食品に対し水相糖濃度が50%以上である液状組成物を含浸させたベーカリー用配合材を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配合材部分の食感とベースとなるパンのクラムの食感との間に違和感がなく、また配合材部分の風味が良好で、食感が軽い食感であり、経日的な食感の変化がなく、また、配合材がパンの表面に出た部分に焦げが生じないバラエティブレッドや、突沸がなく空洞が生じにくい包餡パンなどのベーカリー食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のベーカリー用配合材について詳述する。
本発明のベーカリー用配合材は、含起泡食品に対し水相糖濃度が50%以上である液状組成物を含浸させたものである。
【0014】
まず、本発明で使用する含気泡食品について述べる。
本発明で使用する含気泡食品とは、具体的には、内部に気泡を持つ食品であればよく、具体的にはパン、ケーキ、クッキー、ビスケット等のベーカリー食品、蒸菓子、米菓、ふ、凍結乾燥食材、米パフ、ポップコーン、メレンゲ、エアインチョコなどが挙げられる。本発明ではなかでも基本骨格が澱粉骨格であり液状組成物を含浸させた場合に良好な食感になることから、ベーカリー食品であることが好ましく、なかでも、澱粉骨格の膜が薄く液状組成物の浸透性が高いことからパン又はケーキであることが好ましく、特にひきのない良好な食感が得られる点でケーキであることが特に好ましい。
【0015】
なお、上記パンとしては食パン、菓子パン、フランスパン、ライ麦パン、デニッシュ・ペストリー、イングリッシュマフィン、コーヒーケーキ、ブリオッシュ、シュトーレン、パネトーネ、クロワッサン、イーストパイ、パフパイ、ピタ、ナン、ピザ、マフィンなどがあげられ、また、これらを乾燥させたラスクを用いることもできる。
本発明ではひきのない良好な食感とすることができることから、パンのクラム部分のみを使用することが好ましい。
また、上記ケーキとしては、スポンジケーキ、カステラ、バターケーキ、シフォンケーキ等があげられ、また、これらを乾燥させたラスクを用いることもできる。
本発明では、より糖分や呈味成分の保持性が高く、しっとりとした口溶けと良好な食感を得られる点で、スポンジケーキ及び/または、カステラを使用することが好ましい。
【0016】
次に、本発明で使用する液状組成物について述べる。
本発明で使用する液状組成物は常温で液状、加温して液状、どちらでも問題なく、要は含気泡食品に含浸させることが可能な程度の粘度の流動状であればよい。具体的な粘度としては、含浸させる際の粘度が、5000mPa・s以下、好ましくは3000mPa・s以下である。
【0017】
上記液状組成物は糖と水を必須成分として含有し、水相の糖の濃度が50%以上であることが必要であるが、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。なお、上限については、結晶析出がおきない濃度であればよく、そのため、糖の種類や、糖以外の溶質の含有量によっても変化するため一概にはいえないが、おおむね90質量%以下である。
なお、水相糖濃度といった場合は、純粋な糖の固形分の濃度を指し、糖以外の混合物等は算入しないものとする。
【0018】
液状組成物の水相糖濃度が50%以上であることで、本発明のベーカリー配合材を使用したベーカリー食品において、水分含量が少なくても焼成時にベーカリー配合材部分の水の蒸散が抑制され、しっとりした食感のまま残りやすく、また、そのことにより、特に生地表面にベーカリー配合材が露出した場合にこげにくいという特徴を有する。ここで、水相糖濃度が50%未満であると、ベーカリー配合材表面の水分は容易に蒸散し乾いた食感となる一方で、内部はべちゃついた食感となりやすいという問題があり、さらには経日的に食感が悪くなりやすい。また、生地表面にベーカリー配合材が露出した場合にこげを生じやすい。また、生地との結着性が低下するため、成形時に生地からの剥がれを生じやすく、また、焼成中や焼成後にも配合材部分が剥離しやすく、とくに包餡成形した場合は空洞が生じやすい。
【0019】
なお、上記液状組成物に使用することができる糖の種類は、水溶性であればとくに問題はなく、例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、蜂蜜、メイプルシュガー、糖蜜、モラセス等があげられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
なかでも本発明では、保水性が高い点で構成糖組成において、単糖、2糖類及び3糖類の含量が50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。また、バラエティブレッド等、配合材部分が表面に出る成形を行うベーカリー食品用として使用することを考慮する場合は、配合材部分に焦げが生じにくい点で、還元澱粉糖化物、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール等の糖アルコールや、ステビア、アスパルテーム等の高甘味度甘味料を使用することが好ましい。
【0021】
上記液状組成物は、より好ましい風味を付与できる点で呈味成分を含有することが好ましい。通常、呈味成分を含有させるとこげが生じやすくなったり、焼成時に蒸散してしまい風味が感じられなくなるという問題がある。しかし、本発明においては、呈味成分を含有した場合であっても蒸散やこげを抑え、好ましい風味を保持することができる。
【0022】
上記呈味成分としては、甘味、辛味、苦味、酸味、旨み等の呈味を有する食品素材や、香料、香辛料等を使用することができるが、糖の甘味とのマッチング性や水溶性が良好である点で、コーヒー、茶類、及び、果物類のうちの1種又は2種以上の食品素材を使用することが好ましい。
具体的には、上記茶類としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶、プアール茶等が挙げられ、上記果物類としては、キウイフルーツ、パパイヤ、マンゴー、日向夏、ヘベス、金柑、オレンジ、メロン、ドラゴンフルーツ、スターフルーツ、パッションフルーツ、ざくろ、パイナップル、イチジク、オレンジ、レモン、アップル、アプリコット、チェリー、ブドウ、ラズベリー、ストロベリー、ブルーベリー、クランベリー、プラム、プルーン等が挙げられる。
【0023】
これらの呈味成分の添加量は特に制限されず、求める風味によって適宜決定される。
なお、上記呈味成分は、液状組成物に溶解使用することが好ましいのはもちろんであるが、水に不溶性であっても分散液が、浸漬可能な液状の物性を保つ範囲において、微粉末状にして分散させることも可能である。
また、上記呈味成分が糖を含む場合は、上記水相糖濃度に、呈味成分中の糖の含有量を合算して算出する。
また、呈味成分を含む液状組成物として、上記呈味成分に糖を添加した飲料やジャムの形で使用することももちろん可能である。
【0024】
上記液状組成物は、よりしっとりとした食感を付与できる点で、油脂を含むものであることが好ましい。
なお、上記液状組成物が油脂を含有する組成物である場合、油分含量は、25〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがさらに好ましい。油分が90質量%を超えると、得られるベーカリー食品がべとついた食感となりやすく、また油分が25質量%よりも少ないと、得られるベーカリー食品にしとり感が弱くなりやすい。
【0025】
なお、上記液状組成物が油脂を含有する組成物である場合、乳化形態は水中油型であっても油中水型であっても多重乳化であってもよいが、水中油型乳化物であることが、使用する油脂の融点に係わらず加熱せずとも液状〜流動状の組成物とすることが可能である点で好ましい。
【0026】
なお、液状組成物は、糖類、水、油脂以外に、本発明の効果に影響のない範囲において、例えば、乳化剤、酸化防止剤、無機塩及び有機酸塩、ゲル化剤、増粘安定剤、着色料、保存料、pH調整剤、その他食品素材や食品添加物を使用することができる。
【0027】
なお、上記液状組成物中の水分含量は、50%以下であるが、好ましくは5〜49%、さらに好ましくは5〜45%である。水分含量が50%超であると、ベーカリー用配合材内部の水分が残りべちゃついた食感となりやすく、また包餡成形の場合に、ベーカリー製品の内部に空洞が生じやすい。
【0028】
また、上記液状組成物中の糖分含量は、好ましくは5〜49%、さらに好ましくは5〜45%である。糖分含量が50%超であると、こげが発生しやすく、糖分含量が5%未満であると、ベーカリー用配合材表面の水分が容易に蒸散し乾いた食感となりやすく、また包餡成形の場合に、ベーカリー製品の内部に空洞が生じやすい。
【0029】
次に、本発明のベーカリー用配合材について詳述する。
本発明のベーカリー配合材は、上記含起泡食品に対し、上記水相糖濃度が50%以上である液状組成物を含浸させたものである。
上記含浸方法は、特に限定されるものではないが、塗布、浸漬、スプレー等の方法によって、上記液状組成物を含気泡食品に含浸させることができる。塗布する場合は、例えば、含気泡食品の片面に塗布する、さらに裏返してもう片面にも塗布する、又は表面全体に塗布することができる。浸漬する場合は、例えば、液状組成物を入れたバットに、含気泡食品を、片面だけ又は両面漬ける、あるいは完全にどぶ漬けすることができる。
【0030】
なお、上記液状組成物を含浸させる際は、液状組成物を、必要に応じ加温することで粘度を下げることが可能である。
また、上記液状組成物を含浸させる際は、減圧下で含浸させる方法や、遠心法を使用することも可能である。
【0031】
本発明の液状組成物の含浸量は、特に限定されるものではないが、含気泡食品100質量部に対し、好ましくは30〜300質量部、さらに好ましくは40〜200質量部、最も好ましくは50〜120質量部である。25質量部未満であると、得られたベーカリー食品の食感が硬いラスク状になりやすい。また、100質量部を超えると、配合材の物性が軟らかくなりすぎ、得られるベーカリー食品が水っぽい食感となりやすいことに加え、保存性も悪化しやすくなる。
なお、含浸の際に、上記液状組成物以外に、その他の成分、例えば、シナモン、香辛料等を別途付着させてもよい。
【0032】
本発明のベーカリー配合材は、小片状であることが好ましい。
小片状であることにより、ベーカリー製品製造時に、計量が容易になり、また、ベーカリー生地製造時に直ちに生地製造することが可能であり、特にバラエティブレッド製造時には生地中への分散性を高めることができる。
【0033】
なお、小片状とする方法は、上記含気泡食品をあらかじめ小片状に成形しておく方法と、液状組成物を含浸後に小片状にする方法があり、そのどちらでも可能であるが、含浸効率を考えると、液状食品との接触面を大きくとることが可能である点で、上記含気泡食品をあらかじめ小片状に成形しておく方法が好ましい。
【0034】
上記小片状とは、立方体状、直方体状、角柱状、円柱状、半円柱状、球状、薄片状、そぼろ状、塊状などの形状で、その大きさが、立方体状または直方体状のものは一辺の長さが2mm以上60mm以下程度、角柱状のものは断面となる多角形の一辺が2mm以上60mm以下で長さが2mm以上100mm以下程度、円柱状または半円柱状のものは直径が2mm以上60mm以下で長さが2mm以上100mm以下程度、球状のものは直径が2mm以上60mm以下程度、薄片状のものは厚さが0.5mm以上5mm以下程度、そぼろ状や塊状の場合はその平均粒径が2mm以上30mm程度のものである。該範囲外であると、ベースとなるベーカリー生地への分散性が悪化するおそれがある。
【0035】
本発明のベーカリー生地は、前述の液状組成物を含浸させた含気泡食品をベーカリー用配合材として使用したものである。
ベーカリー用配合材とは、澱粉類やバタークリームをはじめ、通常のベーカリー素材が完全に均一に混合して使用するのに対し、ベーカリー食品で視認できる状態とするために使用するベーカリー素材のことである。
すなわち、ベーカリー生地に使用する際には完全に均一になるまで練込使用するのではなく、その存在を視認できる程度に残すことを必要とする。
【0036】
なお、ベーカリー食品で視認できる状態を得るには、ベーカリー生地の段階で視認できる状態であればよく、例えば、ベースとなる生地に、分散させる工程、巻き込む工程、包餡する工程、挟む工程、積載する工程のうちの1種または2種以上の工程を行うことにより得られる。
なお、ベースとなるベーカリー用生地に分散させる工程は、例えば、ベースとなるパン生地製造のミキシング途中で本発明のベーカリー用配合材を添加し、軽く混合することにより行なうことができる。
また、ベースとなるベーカリー用生地に巻き込む工程は、例えば、ベースとなるベーカリー生地を成形するときに、本発明のベーカリー用配合材をベースとなるパン生地上に散布し、これを巻き込むことにより行なうことができる。
【0037】
なお、上記製造方法で用いる本発明のベーカリー用配合材は、1種でもよいが、2種以上を同時に、または、別々に添加してもよい。その具体的な方法としては、例えば、本発明のベーカリー用配合材を分散させたバラエティブレッド生地を成形するときに本発明のベーカリー用配合材を巻き込む方法や、ベースとなるパン生地を成形するときに、2種の本発明のベーカリー用配合材をベースとなるパン生地上に数条の帯状に散布し、これを巻き込む方法などが挙げられる。
【0038】
本発明のベーカリー生地は、上記本発明のベーカリー用配合材を、ベースとなるベーカリー生地100質量部に対して、好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部、最も好ましくは20〜30質量部含有するものである。
ここで、上記ベースとなるベーカリー生地としては、通常のベーカリー生地を問題なく使用することができ、例えば、パン生地、パイ生地、イーストドーナツ生地、ケーキドーナツ生地、ケーキ生地、蒸ケーキ生地などが挙げられるが、中でも特に、パン生地を用いることが好ましい。
【0039】
次に、本発明のベーカリー製品について述べる。
本発明のベーカリー製品は、上記本発明のベーカリー生地を加熱処理することにより得ることができる。該加熱処理としては焼成、フライ、蒸すなどが挙げられ、その温度条件についてはベースとなるベーカリー生地の一般的な加熱条件とほぼ同様の条件で行なうことができる。
【0040】
以下、バラエティブレッドを例に挙げて述べる。
上記バラエティブレッドは、上記のバラエティブレッド生地を使用したものであり、その具体的な製法としては、上記のバラエティブレッド生地を通常のバラエティブレッド生地と同様に、必要に応じ、丸めたり、延展したり、さらに打抜くなどの成形、型入れ、ホイロなどを行なった後、焼成、フライ、蒸すなどの加熱工程に供することにより、得ることができる。
【0041】
また、本発明のバラエティブレッド生地は、ホイロをとらずに冷凍または冷蔵しても良いし、ホイロをとった後に冷凍または冷蔵しても良い。ホイロをとらずに冷凍または冷蔵したものも、ホイロをとった後に冷凍または冷蔵したものも、常法に従い、焼成してバラエティブレッドとすることができる。
また、本発明のバラエティブレッド生地を焼成などの加熱工程に供して得られたバラエティブレッドは、冷凍保存することが可能であり、冷凍保存した該バラエティブレッドは、電子レンジで解凍調理することが可能である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例および比較例をあげて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0043】
〔スポンジケーキ(含気泡組成物)の製造〕
卵130質量部、上白糖120質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ワイヤーホイッパーを使用して、低速10秒混合後、高速3分ホイップし、比重が0.30の起泡した生地を得た。ここへ小麦粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部を添加し、低速30秒混合、中速10秒混合しスポンジケーキ生地を得た。7号のスポンジケーキ型に底紙と側紙をあて、ここに得られたスポンジケーキ生地450gを流しいれ、固定オーブンを使用し、180℃で30分焼成し、スポンジケーキを得た。
【0044】
〔菓子パン生地(ベースとなるベーカリー用生地)の製造〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、砂糖18質量部、食塩1.3質量部、脱脂粉乳3質量部、卵10質量部、イースト5質量部、イーストフード0.1質量部、水50質量部をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で3分、中速で4分混捏した後、練込用マーガリン10質量部を加えてフックを使用し、低速で3分、中速で4分混捏した。得られた生地はフロアタイムを30分とったのち、60gに分割し、菓子パン生地を得た。
【0045】
(実施例1)
スポンジケーキを3cm角のダイス状にカットし、液状組成物として蜂蜜(水分20質量%、油分0質量%、水相糖濃度80%)をスポンジケーキ1質量部に対して液状組成物が2質量部となるようにどぶ漬けにより含浸させ、本発明のベーカリー用配合材Aを得た。次に、上記菓子パン生地60gを外生地とし、本発明のベーカリー用配合材A20gを包餡成形し、ベーカリー生地とした。このベーカリー生地を天板に並べ、温度38℃、相対湿度85%のホイロで60分発酵させた後、200℃に設定した固定窯で12分焼成し、本発明のベーカリー製品Aを得た。
【0046】
(実施例2)
パーム油90質量部、ナタネ油8質量部を65℃に加温溶解し、ここに、HLB4のヘキサグリセリン脂肪酸エステル2.0質量部を添加、溶解混合、急冷可塑化しショートニングを得た。このショートニング75質量部に転化糖液糖(水分40質量%)25質量部を添加、軽く混合し、サンドクリームを得た。
実施例1のうち、液状組成物として蜂蜜2質量部の代わりに上記サンドクリーム(水分10質量%、油分75質量%、水相糖濃度60質量%)2質量部を45℃に加温溶解して使用した以外は実施例1と同様にしてベーカリー用配合材B及びベーカリー製品Bを得た。
【0047】
(実施例3)
パームステアリン、パームオレインのエステル交換油、大豆液状油を25:50:35の質量比で混合した配合油88質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.5質量部及びレシチン0.5質量部を混合溶解した油相と、食塩1質量部を、0.02質量%クエン酸水溶液10質量部に溶解した水相とを定法に従い予備乳化し、急冷可塑化後、5℃で1週間調温し、油中水型乳化油脂組成物を得た。
実施例1のうち、液状組成物として蜂蜜2質量部の代わりに、45℃に加温溶解した、蜂蜜と上記油中水型乳化油脂組成物を1:3で混合した自家立てマーガリン(水分13質量%、油分66質量%、水相糖濃度62質量%)2質量部を45℃に加温溶解して使用した以外は実施例1と同様にしてベーカリー用配合材C及びベーカリー製品Cを得た。
【0048】
(実施例4)
パームスーパーオレインのランダムエステル交換油2.3質量部、パームスーパーオレイン2.3質量部、パーム核硬部油10.5質量部、バター由来の乳脂20質量部、キサンタンガム0.01質量部、グァーガム0.03質量部、脱脂粉乳6質量部、トータルミルクプロテイン(TMP)1質量部、モノグリセリド0.04質量部、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル0.1質量部、レシチン0.15質量部、及びソルビタン脂肪酸エステル0.15質量部を混合し、油相とした。一方、水26質量部とショ糖脂肪酸エステル0.1質量部、液糖(水分20質量%)47質量部を混合し、水相とした。上記水相と上記油相を混合し、乳化し、予備乳化物を調製した。
予備乳化後30MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機で140℃、4秒間殺菌し、再度30MPaの圧力で均質化後5℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で24時間エージングを行い、乳脂含有水中油型乳化物を得た。
実施例1のうち、液状組成物として蜂蜜2質量部の代わりに上記乳脂含有水中油型乳化物(水分30質量%、油分31質量%、水相糖濃度51質量%)2質量部を使用した以外は実施例1と同様にしてベーカリー用配合材D及びベーカリー製品Dを得た。
【0049】
(実施例5)
水41.0質量部を50℃に昇温して攪拌しながらクリーム(油分47質量%、水分49質量%)15質量部を添加して調製した水相と、50℃に調温したパーム油4.7質量部とを予備乳化し、予備乳化物を調製した。そして、この予備乳化物にリン酸架橋馬鈴薯澱粉3.5質量部、ショ糖49.0質量部、キサンタンガム0.1質量%、ローカストビーンガム0.1質量部、卵黄2.0質量部を添加し、混合した。
次いで、上記予備乳化物をクレハ式超高温瞬間殺菌装置を用いて139℃まで加熱殺菌し、これを60℃まで冷却し、充填温度60℃でバッグインボックス型容器に無菌充填し、これを冷蔵庫中で5℃まで冷却して、カスタード風味のフラワーペーストを得た。
実施例1のうち、液状組成物として蜂蜜2質量部の代わりに上記カスタード風味のフラワーペースト(水分36質量%、油分26質量%、対水糖濃度51%)2質量部を使用した以外は実施例1と同様にしてベーカリー用配合材E及びベーカリー製品Eを得た。
【0050】
(実施例6)
スポンジケーキを1cm角のダイス状にカットし、スポンジケーキ1質量部に対して、液状組成物として(実施例3)で使用した自家立てマーガリンが2質量部となるようにどぶ漬けにより含浸させ、本発明のベーカリー用配合材Fを得た。
次に、上記菓子パン生地100質量部に上記ベーカリー用配合材F35質量部を添加し、さらに低速で1分混合し、バラエティブレッドタイプのベーカリー生地とした。ここで、フロアタイムを30分とった後、70gに分割・丸目を行ない、次いでベンチタイムを20分とった後、成形した。38℃、相対湿度85%で60分ホイロをとった後、クープを入れ、200℃に設定した固定窯に入れ、蒸気を入れ、12分焼成して、本発明のベーカリー製品Fを得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1のうち、液状組成物として蜂蜜2質量部の代わりに無糖練乳(水分73質量%、油分8質量%、対水糖濃度15質量%)2質量部を使用した以外は実施例1と同様にしてベーカリー用配合材G及びベーカリー製品Gを得た。
【0052】
(比較例2)
スポンジケーキを1cm角のダイス状にカットし、液状組成物として無糖練乳(水分73質量%、油分8質量%、対水糖濃度15質量%)をスポンジケーキ1質量部に対して液状組成物が2質量部となるようにどぶ漬けにより含浸させ、本発明のベーカリー用配合材Hを得た。
次に、上記菓子パン生地100質量部に上記ベーカリー用配合材H35質量部を添加し、さらに低速で1分混合し、バラエティブレッドタイプのベーカリー生地とした。ここで、フロアタイムを30分とった後、70gに分割・丸目を行ない、次いでベンチタイムを20分とった後、成形した。38℃、相対湿度85%で60分ホイロをとった後、クープを入れ、200℃に設定した固定窯に入れ、蒸気を入れ、12分焼成して、ベーカリー製品Hを得た。
【0053】
得られたベーカリー製品A〜Hについて、以下の評価基準に従って、食感、配合材とベースとなるパンの一体感、配合材の焦げ及び2日後の食感について下記の評価基準で評価を行なった。結果を表1に記した。
【0054】
(評価基準)
・食感
◎ 軽い食感で、非常に後味が良い。
○ 軽い食感で後味が良い。
△ 重い食感で後味が悪い。
× 重い食感で非常に後味が悪い。
【0055】
・ 配合材とベースとなるパンの一体感
◎:配合材とパンの食感において違和感がなく、非常に良好である。
○:配合材とパンの食感においてほとんど違和感がなく、良好である。
△:配合材とパンの食感においてやや違和感がある。
×:配合材とパンの食感において非常に違和感がある。
【0056】
・ 配合材の焦げ
○:焼色が良く、苦味を感じない。
×:焦げが生じ、苦味を感じる。
【0057】
・2日後の食感
◎:きわめて良好である。
○:良好である。
△:ややぱさついた食感である。
×:ぱさついた食感である。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
含気泡食品に対し水相糖濃度が50%以上である液状組成物を含浸させたベーカリー用配合材。
【請求項2】
含気泡食品がパン又はケーキであることを特徴とする請求項1記載のベーカリー用配合材。
【請求項3】
上記液状組成物が呈味成分を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のベーカリー用配合材。
【請求項4】
小片状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーカリー用配合材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のベーカリー用配合材を使用してなるベーカリー生地。
【請求項6】
請求項5記載のベーカリー生地を焼成したベーカリー製品。
【請求項7】
含気泡食品に対し水相糖濃度が50%以上である液状組成物を含浸させたベーカリー用配合材を、ベースとなる生地に、分散させる工程、巻き込む工程、包餡する工程、挟む工程、積載する工程のうちの1種または2種以上の工程を行うことを特徴とするベーカリー生地の製造方法。