説明

ペ−スト状黒ごま、及びその製造方法

【課題】本発明は、従来に比べて分離・沈殿がより生じにくく、さらに固形分がより硬化しにくいペ−スト状黒ごま、及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】黒ごまを原料としてペ−スト状に微粉砕せしめたペ−スト状黒ごまであって
、該ペ−スト状黒ごまは35℃における粘度が20〜80Pa・s、固形分の50%以上の粒子径が0.01〜20μmであることを特徴とするものである。そして、上記ペ−スト状黒ごまは、適度に粗粉砕せしめたペ−スト状の黒ごま原料をビ−ズミルにより35℃における粘度が20〜80Pa・s、固形分の50%以上の粒子径が0.01〜20μmに微粉砕せしめ、ペ−スト状に生成せしめるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペ−スト状黒ごま、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごまは、焙煎することによって香ばしい香りを放つようになり、その独特の香り、風味
および食感により、また栄養価が高いことが知られ、健康によい食品として古くから食さ
れてきた。ごまは加工方法により、焙煎しただけの煎りごま、すり鉢などで適度に擂られ
たすりごま、十分に擂り潰されたペ−スト状ごまがあり、用途によって使い分けられてい
る。そして、例えば、ペ−スト状ごまはドレッシング、つけダレ、胡麻豆腐、乳製品、菓
子、飲料等の食材に幅広く利用されていることが多い。
【0003】
ところで、上記のペ−スト状ごまは、通常、原料となるごま種子を精選、洗浄、焙煎し
た後、一般的に知られているコロイドミル、ロ−ルミル、ボ−ルミルなどと呼ばれる粉砕
機を用いて擂り潰すことにより製造される(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、
ごまは50%程度の脂質を含み、ぺ−スト状にすることによってごまに含まれている油分
がにじみ出るため、油(いわゆるごま油)と固形分からなる濃度の高い懸濁液になるが、
長時間保存しておくと油分と固形分の分離が起こり、固形分が沈殿してしまうものである
。このため、食材として用いる際には撹拌して元の均一な状態に戻してから使用されるこ
とが多く、非常に手間がかかるものである。また、その沈殿物は時間と共に硬化するため
、そのような状態から元の状態に戻すにはより手間と時間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、ペ−スト状ごまの分離を防ぎ沈殿を生じないようにするための手法が数多く提
案されている。例えば、ペ−スト状ごま(一般には、ねりごまと呼ばれる)に適量のエタ
ノ−ルを添加したねりごま調合品(例えば、特許文献2参照)、乳化剤を添加したねりご
ま含有食品(例えば、特許文献1、3、4参照)、ねりごまに多糖類を含有する天然糊料
を添加したもの(例えば、特許文献5参照)、大きな粒子の固形分を多く含み、硬化油ま
たはショ−トニングを含有させたごまペ−スト(例えば、特許文献6参照)などが挙げら
れる。
【0005】
従来のペ−スト状ごまは、上述の如く、ごま以外の添加物を加えて油分と固形分の分離
や固形分の沈殿を抑制する手法が数多く開示されているが、ごまのみを用いて抑制する有
効な方法は殆んど知られていない。近年の健康ブ−ムの中では、食品は無添加のものを嗜
好する傾向にあるものであって、添加物を含む食品は避けられる傾向にあるのみならず、
風味を著しく損ねたりする。
【0006】
一方、固形分の粒子を細かくすることによって、油分と固形分との分離や固形分の沈殿
を遅くすることが知られている。従来の石臼状粉砕機等を用いる場合、石臼の目を段階的
に細かくして繰り返し粉砕処理を行い、粒子を細かくする手法がよく用いられる。しかし
ながら、本発明者らの経験では、石臼状の粉砕機では分離・沈殿を十分に抑制する程度ま
で細かくすることは非常に困難である。
そこで、ペ−スト状ごまなどの固形分を微粒子化する粉砕機としてビ−ズミルが有効で
ある。ビ−ズミルは、粗粉砕せしめたペ−スト状ごまにジルコニア、アルミナ、ガラス、
ステンレスなどからなるビ−ズと呼ばれる小球を混合して高速撹拌し、摩擦させたり衝突
させたりしてペ−スト状に微粉砕せしめるものであり、ペ−スト状ごまの粒度分布を規定
し、ビ−ズミルを用いて製造する手法も開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【特許文献1】特開2000−14337公報
【特許文献2】特開2006−25658号公報
【特許文献3】特開平11−290036号公報
【特許文献4】特開平10−313817号公報
【特許文献5】特公平2−31943号公報
【特許文献6】特開2005−204568号公報
【特許文献7】特開2004−159606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、原料としてごまだけを用いたペ−スト状ごまの油分と固形分の沈殿を
抑制する方法として、固形分の粒子径を小さくする手法が開示されているが、固形分の粒
子径を小さくするだけではまだ十分な効果が得られず、さらに沈殿した固形分は硬くなり
やすいものである。
上記のような問題点に鑑み、本発明の目的は、従来に比べて分離・沈殿がより生じにく
く、さらに固形分がより硬化しにくいペ−スト状黒ごま、及びその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明は、黒ごまを原料としてペ−
スト状に微粉砕せしめたペ−スト状黒ごまであって、該ペ−スト状黒ごまは35℃におけ
る粘度が20〜80Pa・s、固形分の50%以上の粒子径が0.01〜20μmである
ことを特徴とする、ペ−スト状黒ごまを要旨とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、原料黒ごまが双皮性(ダブルハスク)品種の黒ごま、または/
あるいは他の品種の黒ごまの混合物であることを特徴とする、請求項1記載のペ−スト状
黒ごまを要旨とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、適度に粗粉砕せしめたペ−スト状の黒ごま原料をビ−ズミルに
より35℃における粘度が20〜80Pa・s、固形分の50%以上の粒子径が0.01
〜20μmに微粉砕せしめ、ペ−スト状に生成せしめることを特徴とする、ペ−スト状黒
ごまの製造方法を要旨とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、適度に粗粉砕せしめたペ−スト状の黒ごま原料が双皮性(ダブ
ルハスク)品種の黒ごま、または/あるいは他の品種の黒ごまの混合物であることを特徴
とする、請求項3記載のペ−スト状黒ごまの製造方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く構成された本発明のペ−スト状黒ごまは、従来より油分と固形分の分離がよ
り抑制されて固形分が沈殿しにくく、また沈殿物が生じてもその沈殿物がより硬くなりに
くいものであって、ひいては、食材として用いる際には容易に撹拌でき、さらに撹拌する
ことによって容易に油分と固形分が充分に均一に混ざり合った本来のペ−スト状態に戻す
ことが出来るものである。
また、本発明の製造方法を用いることにより、上述の如き本発明のペ−スト状黒ごまを
生成せしめることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
【0014】
本発明は黒ごまを原料とし、かかる黒ごま種子を公知の方法により精選工程、洗浄(水
洗)工程、及び焙煎工程等を経た後、最終的にペ−スト状に加工処理せしめるペ−スト状
黒ごま、及びその製造方法に関する。
【0015】
そして、上記の黒ごまとしては、双皮性(ダブルハスク)、あるいは/または他の品種
の黒ごまとの混合物を用いる。黒ごまは、一般にダブルハスクと呼ばれる双皮性品種とシ
ングルハスクと呼ばれる品種に分けることができ、双皮性品種の皮は脆いが硬く、それが
影響してかペ−スト状に加工した場合、沈殿した固形分は他のペ−スト状ごまに比べて硬
くなりやすいことが知られているが、本発明のペ−スト状黒ごまにあっては分離・沈殿が
抑制されるだけでなく、硬くなりにくいものである。
【0016】
本発明に係るペ−スト状黒ごまの粘度は、35℃において20〜80Pa・s、好まし
くは40〜60Pa・sである。ペ−スト状黒ごまの粘度が20Pa・s以下の場合は粒子径を小さくしても十分に固形分の沈殿を抑制する効果が得られないものであり、80Pa・s以上の場合は硬くなりすぎてスプ−ンなどで取りにくくなり、他の食材と混ぜにくくなって取扱いが非常に困難となるものである。また、ペ−スト状黒ごまは、その固形分の50%以上の粒子径が0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μmである。そして、かかる粒子径が0.01μm以下の場合は現実問題としてねりごま、あるいは食品としての機能を果たさないものと考えられるものであり、20μm以上の場合には粒子径の大きな固形分の割合が多くなり、粒子径の大きな固形分は沈殿しやすく、固形分の沈殿を抑制する十分な効果が得られないものである。
【0017】
ここで、本発明の背景として、剛体球が液体中を重力により沈殿するときの液体から受
ける剛体球の抵抗を論理的に導き出したスト−クスの法則(式A)から導き出される定常
状態における剛体球の沈降速度(一定の速度に落ち着いたときの剛体球の速度)の式(式
B)があり、ペ−スト状黒ごまの固形分の粒子が剛体球に対応し、液体が油分に対応する
。ただし、式Aや式Bはあくまで理想状態における理論式であり、ペ−スト状黒ごまの固
形分の粒子は剛体球とは考えにくく、外力によって変形したりするなどあくまで参考とし
て用いられている。
F=6π・η・a・v −−−−A
上式中、Fは抵抗、ηは液体の粘度、aは剛体球の半径、vは剛体球の速度を表す。
vs=2・a・a・g・(ρ−ρ0)/(9・η0) −−−−B
上式中、vsは沈降速度、aは剛体球の半径、gは重力加速度、ρは剛体球の密度、
ρ0は液体の密度、η0は液体の粘度を表す。
【0018】
式Bを参考にすると、ペ−スト状黒ごまの固形分の粒子径は小さければ小さいほど沈降
速度が遅くなることが推察される。さらに、本来ペ−スト状黒ごまの油分の粘度が液体の
粘度に相当するが、ペ−スト状黒ごま全体の粘度と置き換えて考えると、ペ−スト状黒ご
まの粘度が高ければ高いほど、沈殿速度が遅くなることも同様に推察される。本発明者ら
は、鋭意検討の結果、ペ−スト状黒ごまの粘度を35℃において20〜80Pa・s、か
つ、その固形分の50%以上を0.01〜20μmの粒子径とすることによって、分離・
沈殿を抑制でき、十分実用に耐えるペ−スト状黒ごまを提供できることを見出したもので
ある。
【0019】
次に、本発明に係る製造方法について説明する。
本発明のペ−スト状黒ごまの好適な製造方法として、黒ごま種子を公知の方法により精
選工程、洗浄(水洗)工程、及び焙煎工程などを経た後、一般的に知られるコロイドミル
、ボ−ルミルなどと呼ばれる粉砕機を用いて粗粉砕せしめたペ−スト状の黒ごまを原料と
する。セラミックなどの材質でできた0.5〜2mm程度の適当な大きさのビ−ズを50
〜90%程度ビ−ズミルの原料加工処理室に充填し、そこに粗粉砕せしめたペ−スト状黒
ごま原料を混合して、具備された回転子を1000rpm程度以上の速度で回転させ、原
料とビ−ズを同時に高速撹拌することにより、出来上がりのペ−スト状黒ごまの内の固形
分の50%以上を0.01〜20μmの粒子径になるまでペ−スト状黒ごまを微粉砕せし
め、かつ、35℃における粘度を20〜80Pa・sになるように微粉砕せしめる。
【0020】
ここで、原料として用いる粗粉砕されたペ−スト状黒ごまの粒度や粘度に特に制限はな
く、ごま粒が目視で細かく粉砕され、油分が適度ににじみ出て一般的なペ−スト状になっ
ていればよい。さらに、ビ−ズミルを用いて微粉砕せしめる際、ペ−スト状黒ごまは回転
による摩擦などによる温度上昇を避けることが困難であるため、温度上昇を抑制するため
に冷却水を流すなど冷却機能を付加しておくことが好ましい。さらに、原料加工処理室内
に隙間があり、そこに酸素が存在するとペ−スト状黒ごまの油分などが酸化されやすくな
るため、原料加工処理室内に隙間がある場合には窒素やアルゴンなどの不活性ガスを常に
充填させた状態にしておくことが望ましい。また、原料加工処理室の形状として、ペ−ス
ト状黒ごまとビ−ズの混合物を撹拌する回転子と原料加工処理室の壁との間隔を狭く設計
しておく方が好ましく、回転子を複数具備する場合は回転子同士の間隔も狭い方が好まし
い。
【0021】
次に、上記の製造方法の具体例として、粗粉砕されたダブルハスク品種のペ−スト状黒
ごまを原料として製造せしめる際の一実施例について説明する。
実施例1
【0022】
直径1.0mmのジルコニアでできたビ−ズを原料加工処理室に87.5%充填したビ
−ズミルにおいて、回転子を2000rpmの速度で回転させながら、あらかじめ粗粉砕
せしめたペ−スト状黒ごま5Kgを、0.5Kg/分程度の速度で原料加工処理室に順次
導入し、微粉砕せしめた。また、2回目の微粉砕加工処理として、その内の3Kgを同ビ
−ズミルに同じ条件で導入し微粉砕せしめた。さらに、5回目まで順次同じ操作を繰り返
し行なった。この操作の内で1回目の後、および5回目の後のペ−スト状黒ごまをサンプ
ルとして採取した。なお、微粉砕の際に水温が12℃程度の冷却水を常時流すことにより
ペ−スト状黒ごまの温度上昇を抑制し、実際の5回目微粉砕のペ−スト状黒ごまの温度は
80℃程度であった。
実施例2
【0023】
直径0.8mmのジルコニアでできたビ−ズを原料加工処理室に87.5%充填した実
施例1と同じビ−ズミルにおいて、回転子を1850rpmの速度で回転させながら、実
施例1と同じあらかじめ粗粉砕せしめたペ−スト状黒ごま5Kgを、0.5Kg/分程度
の速度で原料加工処理室に順次導入し、微粉砕せしめた。また、2回目の微粉砕加工処理
として、その内の3Kgを同ビ−ズミルに同じ条件で導入し微粉砕せしめた。さらに、5
回目まで順次同じ操作を繰り返し行なった。この操作の内で1回目の後、3回目の後およ
び5回目の後のペ−スト状黒ごまをサンプルとして採取した。なお、微粉砕の際に水温が
12℃程度の冷却水を常時流し、5回目微粉砕のペ−スト状黒ごまの温度は65℃程度で
あった。
実施例3
【0024】
直径0.5mmのジルコニアでできたビ−ズを原料加工処理室に87.5%充填した実
施例1と同じビ−ズミルにおいて、回転子を1900rpmの速度で回転させながら、実
施例1と同じあらかじめ粗粉砕せしめたペ−スト状黒ごま5Kgを、0.25Kg/分程
度の速度で原料加工処理室に順次導入し、微粉砕せしめた。また、2回目の微粉砕加工処
理として、その内の3Kgを同ビ−ズミルに同じ条件で導入し微粉砕せしめた。さらに、
3回目まで同じ操作を繰り返し行なった。この操作の内で1回目の後、2回目の後、およ
び3回目の後のペ−スト状黒ごまをサンプルとして採取した。なお、微粉砕の際に水温が
12℃程度の冷却水を常時流し、3回目微粉砕のペ−スト状黒ごまの温度は93℃程度で
あった。
比較例1
【0025】
上記実施例1〜3と同じく、あらかじめ粗粉砕せしめたペ−スト状黒ごま1.2Kgを
バッチ式高速撹拌粉砕機を用いて、60分間微粉砕加工処理せしめ、ペ−スト状黒ごまを
製造し、比較サンプルとした。
【0026】
次に、実施例1〜3により得られたサンプル8種類、粗粉砕せしめたペ−スト状原料黒
ごま、及び比較例1より得られた比較サンプルをレ−ザ回折・散乱式粒度分布測定装置
(日機装(株)製MT3100)を用いて測定した粒子径に対する頻度確率の積算値を図
1〜図4に示す。
【0027】
図1〜図4から明らかな通り、粗粉砕状態のペ−スト状原料黒ごまは10μm以下の粒
子径となる固形分が35%程度であるのに対して、実施例1〜3及び比較例1のペ−スト
状黒ごまはすべて、10μm以下の粒子径となる固形分が50%以上であった。また、実
施例1〜3において、繰り返し処理することによって粒子が細かくなっていた。
【0028】
次に、実施例1〜3により得られたサンプル8種類、粗粉砕せしめたペ−スト状原料黒
ごま、及び比較例1により得られた比較サンプルを、遠心分離機(アズワン製CN−81
0)を用いて回転速度3500rpm程度で3〜9時間遠心分離して強制的に油分と固形
分に分離し、その油分の重量割合を測定した。また、それらペ−スト状黒ごまの粘度を各
々回転式粘度計(FUNGILAB S.A.製VISCOSTAR plus)を用いて
、回転子の回転速度20rpmで温度35℃の条件下で測定した。その測定結果を表1に
示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1から明らかな通り、実施例1〜3のペ−スト状黒ゴマの油分割合は、粗粉砕状態の
原料黒ごまの油分割合より大きくなっていたが、繰り返し処理せしめたサンプル間にはほ
とんど差はなかった。また、比較例1のペ−スト状黒ごまの油分割合も同様に粗粉砕状態
の原料黒ごまの油分割合よりも大きくなっていた。粘度に関しては、実施例1〜3のペ−
スト状黒ごまは粗粉砕状態の原料黒ごまより高くなっており、さらに処理を繰り返すこと
によって粘度はより高くなっていた。逆に、比較例1のペ−スト状黒ごまは粗粉砕状態の
原料黒ごまより低くなっていた。
【0031】
次に、油分と固形分の分離・沈殿について、実施例1〜3のサンプル、粗粉砕せしめた
ペ−スト状原料黒ごま、及び比較例1のサンプルをそれぞれ180g採取し、一定の大き
さの透明容器に入れて35℃の恒温槽に静置し、経日的に分離した油分比率を図5〜図8
に示す。ここで、分離した油分比率は、容器の底から分離した油分を含めたペ−スト状黒
ごまの最上部までの高さに対する分離した上澄みの油分のみの高さを百分率で表した。
【0032】
図5〜7から明らかな通り、粗粉砕状態のペ−スト状原料黒ごまに比べて実施例1〜3
の分離した油分比率は明らかに小さく、約300日後で比較すると粗粉砕状態のペ−スト
状原料黒ごまの油分比率の20〜50%程度であった。特に繰り返し処理することによっ
て、油分比率はより小さくなっていた。また、図8から比較例1のペ−スト状黒ごまも5
0%程度の油分分離度であった。
【0033】
さらに、ここで用いた分離・沈殿したサンプルを20℃程度まで温度を下げた状態で、
スプ−ンを用いて手により撹拌したところ、実施例1〜3の沈殿物が最も軟らかく、容易
に撹拌でき、油分と固形分が均一に混ざり合った本来のペ−スト状態に戻りやすかった。
【0034】
ここで、表1及び図1〜8を総合的にみて判断すると、比較例1のペ−スト状黒ごま粒
度は非常に細かくなっているが粘度はかなり低く、一方、例えば実施例3で得られた3回
繰り返し処理を行なったペ−スト状黒ごまでは、粒度は少し粗いが粘度が比較例1の5倍
以上高くなっており、分離した油分比率も約300日後で比較すると比較例1の40%以
下と非常に分離しにくくなっていることがわかる。即ち、ペ−スト状黒ごまにおける分離
・沈殿を抑制する効果は粒度より粘度の方が寄与率が高いことが理解できる。
以上のことからも、本発明は解決しようとする課題を克服し、優れた効果を得ることが
理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1において直径1.0mmのビ−ズを用いて1回、5回処理せしめたペ−スト状黒ごま、及び粗粉砕状態のペ−スト状黒ごまの粒子径に対する頻度確率の積算値を示す図である。
【図2】実施例2において直径0.8mmのビ−ズを用いて1回、3回、5回処理せしめたペ−スト状黒ごま、及び粗粉砕状態のペ−スト状黒ごまの粒子径に対する頻度確率の積算値を示す図である。
【図3】実施例3において直径0.5mmのビ−ズを用いて1回、2回、3回処理せしめたペ−スト状黒ごま、及び粗粉砕状態のペ−スト状黒ごまの粒子径に対する頻度確率の積算値を示す図である。
【図4】比較例1においてバッチ式高速撹拌粉砕機を用いて60分間処理せしめたペ−スト状黒ごまの粒子径に対する頻度確率の積算値を示す図である。
【図5】実施例1において処理せしめたペ−スト状黒ごまの分離した油分の比率を経日的に示す図である。
【図6】実施例2において処理せしめたペ−スト状黒ごまの分離した油分の比率を経日的に示す図である。
【図7】実施例3において処理せしめたペ−スト状黒ごまの分離した油分の比率を経日的に示す図である。
【図8】比較例1において処理せしめたペ−スト状黒ごまの分離した油分の比率を経日的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒ごまを原料としてペ−スト状に微粉砕せしめたペ−スト状黒ごまであって、該ペ−ス
ト状黒ごまは35℃における粘度が20〜80Pa・s、固形分の50%以上の粒子径が
0.01〜20μmであることを特徴とする、ペ−スト状黒ごま。
【請求項2】
原料黒ごまが双皮性(ダブルハスク)品種の黒ごま、または/あるいは他の品種の黒ご
まの混合物であることを特徴とする、請求項1記載のペ−スト状黒ごま。
【請求項3】
適度に粗粉砕せしめたペ−スト状の黒ごま原料をビ−ズミルにより35℃における粘度
が20〜80Pa・s、固形分の50%以上の粒子径が0.01〜20μmに微粉砕せし
め、ペ−スト状に生成せしめることを特徴とする、ペ−スト状黒ごまの製造方法。
【請求項4】
適度に粗粉砕せしめたペ−スト状の黒ごま原料が双皮性(ダブルハスク)品種の黒ごま
、または/あるいは他の品種の黒ごまの混合物であることを特徴とする、請求項3記載の
ペ−スト状黒ごまの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−220276(P2008−220276A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63778(P2007−63778)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(301004765)カタギ食品株式会社 (2)
【Fターム(参考)】