説明

ペットハウス

【課題】本発明は、電力を消費することなくペットにとって快適な温度環境を実現することができるペットハウスを提供することを目的とするものである。
【解決手段】ペットハウス1には、床部2でU字状に折り返して側壁部3を通り屋根部4でU字状に折り返すように複数回往復させて配管された細管の両端を接続して閉ループ状に形成された流路に作動流体を封入した一対の自励振動ヒートパイプからなる冷却部6を備えている。一対の自励振動ヒートパイプは、互いに対向する側壁部3を細管が通るように設定されて床部2全体に互い違いに細管が配管されるとともに屋根部4の両側に細管がそれぞれ配管されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットとして飼育されている動物を収容するペットハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬、猫、ウサギ、ハムスターといった様々な動物をペットとして飼育することが一般家庭に普及してきており、それに対応したペット関連商品が製造販売されている。こうしたペット関連商品では、ペットを家族の一員として取り扱うことを前提とする商品に対する需要が高まってきており、それに対応する商品開発が求められている。
【0003】
ペットとして飼育される動物は四足歩行の動物が多く、人間よりも地表に近い環境の中で日常生活を送っている。そのため、近年の温暖化による気温の上昇傾向が強まる中、地表面からの熱を受けてペットが熱中症のような症状を呈することが増加している。
【0004】
こうした暑さ対策としては、人間と同様に、冷房装置の使用、保冷剤や濡れタオルによる冷却等が一般的であるが、室内を冷房するエアコンを使用することは人間にとって快適な環境となってもペットによっては快適な環境とならない場合も多く、室内温度の調整が難しい。また、ペット専用のエアコンを設けることも考えられるが、電気代等のコスト負担が大きいといった欠点がある。保冷剤等の使用については冷却効果が一時的であり、冷却効果を継続的に発揮できないといった難点がある。
【0005】
ペットの暑さ対策については、例えば、特許文献1では、ペットの巣箱や飼育ケースの床面に当接して熱を伝導させる熱伝導板と、外部に配置されて熱を放熱する放熱板と、熱伝導板に対して吸熱側の部分を取り付けるとともに放熱板に対して放熱側の部分を取り付けたぺルチェ素子と、ぺルチェ素子の駆動装置とを備えた冷暖房装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献2では、加熱部から冷却部へ熱を移動させる方法として、加熱部と冷却部との間を複数回往復する流路に作動流体を封入してなる自励振動ヒートパイプを用いた方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−291165号公報
【特許文献2】特開2004−003807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、ペットの巣箱や飼育ケースに冷暖房装置を設けてペットの暑さ対策を行う点が記載されているが、ぺルチェ素子を用いて冷暖房を行うために消費電力が生じて電気代等のコスト負担が大きくなる。また、床面に敷設される熱伝導板全体から均一に熱を放熱板に移動させることは難しく、熱伝導板の温度ムラが生じるとペットに対して十分な冷却効果が得られない欠点がある。また、冷暖房に電気を使用しているため、ペットが電源コード等の配線を不用意に噛んで感電するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、電力を消費することなくペットにとって快適な温度環境を実現することができるとともに感電事故を防止するペットハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るペットハウスは、少なくとも床部を備えるとともに動物を収容可能な居住空間が形成されたペットハウスであって、前記床部の少なくとも一部にはペットが寝そべることができる受熱部を設け、前記床部の外側には放熱部を設け、前記受熱部と前記放熱部とを複数回往復するように自励振動ヒートパイプが配設されている。さらに、前記放熱部には、放熱促進部材が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような構成を備えることで、電力を消費することなくペットにとって快適な温度環境を実現することができ、従来技術のように電気を使用する場合に発生するおそれのあるペットの感電事故を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。
【図2】屋根部、側壁部及び床部に関する断面図である。
【図3】冷却部の自励振動ヒートパイプに関する外観斜視図である。
【図4】放熱促進部材及び熱伝導部材を設けた実施形態に関する外観斜視図である。
【図5】放熱促進部材を配置した屋根部及び熱伝導部材を敷設した床部に関する概略断面図である。
【図6】放熱促進部材の変形例に関する斜視図である。
【図7】図6の放熱促進部材に関する断面図である。
【図8】自励振動ヒートパイプの設置形状の変形例に関する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて詳しく説明する。図1は、本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。ペットハウス1は、矩形状の床部2の周縁において3つの辺部に対してそれぞれ平板状の側壁部3が組み付けられて囲むように立設しており、残りの辺部には入り口用の開口部が形成された枠体部5が組み付けられている。そして、側壁部3及び枠体部5の上端部には、矩形状の一対の屋根部4が組み付けられて、ペットハウス1には、犬等のペットとなる動物が収容可能な居住空間が形成されている。
【0014】
床部2、側壁部3及び屋根部4は、板材等の公知の構造部材を組み合せて構築されており、床部2の内面並びに側壁部3及び屋根部4の外面には一対の自励振動ヒートパイプからなる冷却部6の細管(図1では点線で表示)が配置されている。冷却部6の自励振動ヒートパイプは、1本の金属製細管が床部2でU字状に折り返すように形成されて側壁部3を上下方向に沿って通り、屋根部4でU字状に折り返すように形成されて、床部2から屋根部4にかけて複数回往復するように配管されており、細管内には所定量の作動流体が封入されている。
【0015】
図2は、床部2、側壁部3及び屋根部4の細管に直交する平面で切断した断面図であり、図2(a)は屋根部4、図2(b)は側壁部3、図2(c)は床部2にそれぞれ関するものである。この例では、図2(a)に示すように、屋根部4の構造部材40の外面に沿うように配置された自励振動ヒートパイプの外側を覆うようにアルミニウム等の放熱特性に優れた材料からなる放熱促進部材41が配置されており、図2(b)に示すように、側壁部3の構造部材30の外面に沿うように配置された自励振動ヒートパイプの外側を覆うように放熱特性に優れた材料からなる放熱促進部材31が配置されている。また、図2(c)に示すように、床部2の構造部材20の内面に沿うように配置された自励振動ヒートパイプの内側を覆うように熱伝導性の優れた材料からなる熱伝導部材21が配置されている。
【0016】
図3は、冷却部6の自励振動ヒートパイプに関する外観斜視図である。冷却部6は、1対の自励振動ヒートパイプ60及び61からなり、それぞれ1本の金属製細管の両端部を接続して閉ループ状の流路が形成されている。そして、自励振動ヒートパイプを構成する細管の内部は、真空状態に設定されているとともに所定量の作動流体が封入されている。作動流体としては、ヒートパイプの使用温度において動粘性係数が小さく飽和蒸気圧が大きい作動流体を用いることが望ましい。具体的には、イソブタンが挙げられる。
【0017】
自励振動ヒートパイプ60は、床部2から屋根部4にかけて複数回往復するように細管がU字状に折り返して形成されている。そして、床部2では、U字状に折り返した細管部分60aが床面全体に平行に配列するように設定されており、床部2から一方の側壁部3に上方に折り曲げるように延設される細管部分60bについても側壁面全体に上下方向に平行に配列するように設定されている。一方の側壁部3から屋根部4に延設される細管部分60cでは、一方の屋根面にU字状に折り返した細管部分が屋根面全体に平行に配列されている。そして、細管の両端部は、側壁部3の下縁に沿って配列された細管部分60dにより接続されて全体が閉ループ状に形成されている。なお、自励振動ヒートパイプの細管を予め金属板に取り付けておき、金属板を屋根部や側壁部に固定することで細管を配設するようにしてもよい。
【0018】
自励振動ヒートパイプ60では、受熱部(蒸発部)である床部2と放熱部(凝縮部)である側壁部3及び屋根部4との間に、作動流体を封入した1本の細管を複数回往復させて閉ループ状に形成された構造となっている。細管内に封入された作動流体では気相部分及び液相部分が交互に存在する状態となり、受熱部である床部2において、液相の作動流体では熱を吸収して温度が上昇することで沸騰して断続的に蒸気泡を発生すると同時に圧力が上昇するようになる。一方、放熱部である側壁部3及び屋根部4において、作動流体に対して冷却作用が生じることで蒸気泡の収縮又は凝縮により蒸気圧力及び温度の低下が生じるようになる。こうして床部2(受熱部)並びに側壁部3及び屋根部4(放熱部)の間に自励的に圧力振動が発生し、細管の内部に封入された作動流体の気相部分及び液相部分が床部2(受熱部)並びに側壁部3及び屋根部4(放熱部)の間を振動するようになる。床部2にペットである動物が横たわっている場合には、作動流体の振動に伴い動物から発生する熱は継続的に側壁部3及び屋根部4から放熱されるようになる。そのため、床部2に横たわる動物に対して冷却作用が生じる。以上のような自励振動ヒートパイプの受熱部及び放熱部の間の熱輸送については既に知られた熱力学的な現象である。なお、自励振動ヒートパイプに用いる細管としては、金属製細管以外に合成樹脂製の細管を用いることもできる。この例では、自励振動ヒートパイプとしてループ型のものを使用しているが、これ以外にも両端閉止型や逆止弁型といった公知のものを使用することもできる。
【0019】
自励振動ヒートパイプ61も自励振動ヒートパイプ60と同様に床部2から屋根部4にかけて複数回往復するように細管がU字状に折り返して形成されている。そして、床部2では、U字状に折り返した細管部分61aが自励振動ヒートパイプ60の細管部分60aの間に交互に組み合わされるように床面全体に配列されており、床部2から他方の側壁部3に上方に折れ曲るように延設される細管部分61bは、自励振動ヒートパイプ60の細管部分60bと対向する側壁部に上下方向に平行に配列されている。また、側壁部3から屋根部4に延設される細管部分61cは、自励振動ヒートパイプ60の細管部分60cに隣接するように他方の屋根面全体にU字状に折り返して平行に配列されている。そして、細管の両端部は、側壁部3の下縁に沿って配列された細管部分61dにより接続されて全体が閉ループ状に形成されている。
【0020】
自励振動ヒートパイプ60及び61が以上説明したように配管されているので、床部2の床面全体に均一な冷却作用を及ぼすことができる。すなわち、自励振動ヒートパイプ60の細管部分60a及び自励振動ヒートパイプ61の細管部分61aが床面全体に高い密度で均一に配列されているため、動物が床面のどの位置に横たわっていても同じような冷却作用を及ぼすことが可能となる。また、ペットハウス内部の空気を冷暖房装置により強制的に冷却することがないので、動物に応じて快適な温度環境を実現することができる。さらに、電力を消費することなく継続的に冷却作用を及ぼすことができるので、電気代等のコスト負担がなくなり、電力消費がなく節電効果の高いペットハウスを得ることが可能となる。
【0021】
また、放熱部となる側壁部3に設置された細管部分60b及び61b並びに屋根部4に設置された細管部分60c及び61cは、側壁部3及び屋根部4の全面にわたってペットハウスの両側に配置されており、効率よく放熱することができるようになっている。そのため、受熱部である床部2において受熱面積を大きく設定できるとともに放熱部である側壁部3及び屋根部4においても放熱面積を大きく設定することができ、受熱部から放熱部へ熱が効率よく輸送されて冷却作用を高めることが可能となる。
【0022】
受熱部から放熱部への熱輸送を高めるためには、受熱部と放熱部との間の温度差を大きくすることが望ましい。そのためには、受熱部の温度に対して放熱部の温度が低くなるように設定すればよい。例えば、図4の外観斜視図に示すように、屋根部4に設置された細管部分60c及び61cに当接するように放熱作用を高めた別の放熱促進部材7を配置するとともに床部2に設置された細管部分60a及び61a上を覆うように熱伝導作用を高めた熱伝導部材8を敷設すればよい。
【0023】
放熱促進部材7は、図5(a)の概略断面図に示すように、細管部分60c及び61cに当接した状態に配置されて細管部分60c及び61cから熱を奪って外気に放出するように作用する。放熱促進部材7としては、多孔質材料からなる板材に水を含浸させた部材を用い、含浸した水が蒸発する際に気化熱を細管部分60c及び61cから奪うことで放熱効率を高めることができる。多孔質材料としては、毛細管現象を生じる微細構造を備えたものが好ましく、焼結金属材料、素焼の焼き物、金網、織物といったものが挙げられる。放熱促進部材7には、適宜霧吹き等で水分を供給したり、一端を水に浸漬した状態にすることで放熱作用を持続させるようにしてもよい。また、タオルのような高吸水性の繊維材料を用いて水を含浸した状態で細管部分を覆うようにし、乾燥したら取り外して再度水を含浸させて細管部分を覆うようにすれば放熱作用を持続させることができる。こうした放熱促進部材は、側壁部3に配置された細管部分60b及び61bに当接させて配設するようにしてもよい。
【0024】
熱伝導部材8は、図5(b)の概略断面図に示すように、シート状に形成されて細管部分60a及び61a全体を覆うように敷設されて動物から細管部分60a及び61aに熱を効率よく伝えるように作用する。熱伝導部材8としては、良好な熱伝導特性を有するアルミニウム等の材料を用いたものが挙げられる。
【0025】
図6は、放熱促進部材の変形例に関する斜視図である。この例では、屋根部4に設置された細管部分60c及び61cに対して直交方向に細幅で板状の放熱フィン90を備えた放熱促進部材9が敷設されている。図7の断面図に示すように、放熱フィン90は、細管部分に直接接続されており、細管部分の熱が効率よく放熱フィン90に伝わり、外気に放出されるようになる。なお、放熱促進部材としては、ジェル状の保冷剤等を予め冷却した状態で用いるようにしてもよい。
【0026】
なお、以上説明した例では、一対の自励振動ヒートパイプを用いているが、自励振動ヒートパイプは片方だけ設置してもよく、また、自励振動ヒートパイプを側壁部までの高さに設定することもできる。
【0027】
図8は、自励振動ヒートパイプの設置形状の変形例に関する斜視図である。図8(a)では、複数回往復するように形成した自励振動ヒートパイプをL字状に形成して水平部分を床部に設置し、垂直部分を片側の側壁部に設置するようにしている。また、図8(b)では、自励振動ヒートパイプをコ字状に形成して水平部分を床部に設置し、両側の垂直部分を両側の側壁部に設置するようにしている。また、図8(c)では、自励振動ヒートパイプを平面状に形成して一方の側のみ床部に設置し、他方の側を床部から外側に突出して設置するようにしている。いずれの場合でも床部が受熱部となり、側壁部又は外側への突出部が放熱部となって床部から熱が放熱部に輸送されて冷却作用を発揮するようになる。
【実施例】
【0028】
市販の合成樹脂製の犬小屋に、銅製の細管(内径1.2mm、外径1.6mm)をU字状に34回折り返して17回往復するように成形する。そして、図1に示すように、屋根部から側壁部の外面に沿って配置し、側壁部の下端に形成されたスリットに挿入して床部の内面に沿って配置して細管部分を互いに平行に配列した。細管内に作動流体としてイソブタンを容量の約50%の量を封入して細管の両端を接続し、閉ループ状に形成して自励振動ヒートパイプとした。
【0029】
床部の内面に配置した細管部分の内側にはアルミニウムからなる薄板で覆うように敷設し、側壁部の外面に沿って配置した細管部分の外側にはアルミニウムの薄板を介して素焼の板材で覆うように配設した。
【0030】
床部の床面にラバーヒータを設置して熱源とし、自励振動ヒートパイプに作動流体を封入した状態で床部をヒータで10Wの熱付加を与えながら床面の温度を測定して冷却作用の有効性を評価した。比較例として、自励振動ヒートパイプに作動流体を封入しない場合についても同様にヒータで加熱して床面の温度を測定した。その結果、作動流体を封入した場合には、封入しない場合に比べて床面の温度が47℃から42℃に5℃低下し、自励振動ヒートパイプの冷却作用を確認できた。また、側壁部に設置した板材に水分を供給して放熱促進部材として機能させたところ、作動流体を封入しない場合に比べて床面の温度が47℃から38℃に9℃低下し、十分な放熱促進効果を確認できた。
【0031】
以上の結果をみれば、動物が床部に横たわった状態では自励振動ヒートパイプの冷却作用により犬小屋の内部を快適な温度環境にすることができ、また、従来技術のように電気を使用することがないので、感電事故を防止することが可能となった。
【符号の説明】
【0032】
1・・・ペットハウス、2・・・床部、3・・・側壁部、4・・・屋根部、5・・・枠体部、6・・・冷却部、60・・・自励振動ヒートパイプ、61・・・自励振動ヒートパイプ、7・・・放熱促進部材、8・・・熱伝導部材、9・・・放熱促進部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも床部を備えるとともに動物を収容可能な居住空間が形成されたペットハウスであって、前記床部の少なくとも一部にはペットが寝そべることができる受熱部を設け、前記床部の外側には放熱部を設け、前記受熱部と前記放熱部とを複数回往復するように自励振動ヒートパイプが配設されているペットハウス。
【請求項2】
前記放熱部には、放熱促進部材が設けられている請求項1に記載のペットハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−42680(P2013−42680A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181067(P2011−181067)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(506087163)タイヨー電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】