説明

ペット用タイルマット

【課題】洗濯機での丸洗いが可能であり、軽量で形態安定性に優れたペット用タイルマットを提供する。
【解決手段】マット10を、基布11aにポリプロピレン繊維からなる表皮パイル11bを植設してなる表皮材11と、ポリオレフィン系樹脂発泡体からなる裏材12とを、熱可塑性樹脂からなる接着層13を介して一体化することで形成した。裏材12がポリオレフィン系樹脂発泡体からなり、軽量で、洗濯機で丸洗いでき、かつ、曲げても折れじわのできにくい適度な剛軟度を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度な剛軟度を有しており、洗濯機で丸洗い可能であり、かつ、形態安定性に優れたペット用タイルマットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化や単身世帯の増加、社会的ストレスの増大などを背景に、ペットをコンパニオン・アニマル(伴侶動物)として家族同様に扱い、ペットに癒しを求める傾向が強まっている。特に、屋内でペットと共生する愛好家も増えてきているが、通常のフローリングでは、ペットが足を滑らせる、あるいは、ペットの爪痕により住まいを痛めるなどの理由から、床材としてカーペットやマットなどを敷くことが多くなっている。この場合、最も問題となるのが、ペットの排泄物であり、これら床材に消臭機能を付与したものが多数提案されている。(特許文献1、2参照)
【0003】
また、マット表面の水切り性および床への漏れ防止を特徴としたものも提案されている。(特許文献3参照)
しかし、ペットがマット上で排泄後、速やかに拭き取ればよいが、時間経過後では、これら提案では、衛生上問題となる。故に、ペット用タイルマットの機能としては、丸洗い可能であることは必須である。特に、その利便性を考慮すれば、家庭用洗濯機で洗えるものが好ましいものとなる。
一方、基布に切り込みを入れ、切り込み部より折りたたむことができ洗濯機で洗濯可能なタイルカーペットの提案がある。(特許文献4参照)
この場合、切り込み部より汚物が堆積し、かえって不衛生なことになる場合がある。
衛生面と洗濯利便性を両立するペット用タイルマットへの要望は強く、その開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−238761号公報
【特許文献2】特開2008−229235号公報
【特許文献3】特開2006−223206号公報
【特許文献4】特開平9−276117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の解決すべき課題は、適度な剛軟度を有しており、洗濯機で丸洗い可能であり、形態安定性に優れたペット用タイルマットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のペット用タイルマットとして、表皮パイルがポリプロピレン繊維、裏材がポリオレフィン系樹脂発泡体から構成され、45°カンチレバー法による剛軟度が170mm以上、250mm以下である構成を採用したのである。
かさ高性が2.8cm/g以上であるのが好ましい。パイルがカットパイルであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗濯機で丸洗い可能であり、かつ、形態安定性に優れたペット用タイルマットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のペット用タイルマットの断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すように、実施形態のペット用タイルマット10は、表皮材11と裏材12とを接着層13により熱接着して一体化することにより形成されたものである。
【0011】
本発明のペット用タイルマット10は、45°カンチレバー法による剛軟度が170mm以上、250mm以下である。
剛軟度が250mm以下であることにより、洗濯機に挿入できるサイズにマットを容易に丸めることができる。剛軟度が250mmより大きいと洗濯機に挿入できず、無理に丸めようとすると折れじわの原因となる。
一方、剛軟度が170mmより小さい場合でもより、コシがなく、ペーパーライクでしわが発生しやすいため好ましくない。
詳しくは、表皮材11は、基布11aに表皮パイル11bをタフティングして形成された一般的なパイル織物であり、基布11aの裏面には、パイル11bの抜け止めのためにゴム製の抜け止め層11cが積層されている。
【0012】
ここで、基布11aの材質は、特に限定されないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、が例示できる。
表皮パイル糸11bの材質は軽量、疎水性の観点からポリプロピレン繊維である。その態様は特に限定されないが、遊毛を抑える為にはフィラメント糸が好ましく、毛倒れの防止、ハリコシ、バルキー性を鑑み、BCFを使用するのがさらに好ましい。
さらに表皮パイル糸11bの繊度も特に限定されないが、900〜4000デシテックス、単位面積当たりのパイル重量が200〜2500g/mが一般的である。
また、表皮パイル糸11bは、特に限定されないが、ペットの爪による引っ掛かりを防ぐ観点からカットパイルが好ましい。
【0013】
一方、裏材12は、ポリオレフィン系樹脂とガスとの混合体であるポリオレフィン系樹脂発泡体である。
裏材12は樹脂発泡体であるため、摩擦抵抗が大きく、また吸盤効果による床面への密着性も良好であるため、マット10に良好な滑り止め性能を付与している。
【0014】
その製造方法は特に限定されないが、押出発泡法、常圧発泡法、プレス発泡法が例示できる。
裏材12の厚みも特に限定されないが、厚みが小さいほうが軽量化および小型化が図られる一方、厚みが小さすぎるとクッション性に劣るため、その均衡上0.5〜20mmが好ましく、1〜5mmがさらに好ましい。
【0015】
さらに裏材12の、床面への対向面には、エンボス加工が施されて凹凸12aが形成されている。この凹凸12aにより裏材12の摩擦抵抗がさらに大きくなることから、滑り止め効果が一層向上している。
【0016】
ここで裏材12のポリオレフィン系樹脂の種類は特に限定されないが、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数が4〜12のα−オレフィンとを共重合した直鎖状のポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が例示できる。
裏材12にさらなる滑り止め効果を付与するためには、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。このうち、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が硬度、コスト等の観点から特に好ましい。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂発泡体の、耐熱性や機械的強度を向上するため各種架橋方法を用いても良い。その架橋方法は特に限定されないが、電子線架橋法、化学架橋法、シラン架橋法が例示できる。必要に応じて架橋特性を改善するジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋助剤を用いてもよい。
またポリオレフィン系樹脂発泡体のクッション性および滑り止め性を損なわない範囲で、各種添加剤を添加してもよい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂発泡体の見掛け密度は25〜250kg/mが好ましく、更には33〜200kg/mが好ましい。
見掛け密度が25kg/mより小さい場合、圧縮硬さや厚み回復性が低下し、置物等による長期荷重で極端に厚みが薄くなる場合や、薄くなった厚みが回復せず窪みとなる場合があるからである。
一方見かけ密度が250kg/mを超える場合、剛性が増加し適度なクッション性を付与することが困難な場合があるからである。
ここで示す見掛け密度とは、JIS K 7222(2001年版)に準じた測定方法で測定した数値を示す。また、該ポリオレフィン系樹脂発泡体の厚みは0.5〜20mmが好ましく、更には1〜5mmが好ましい。厚みが0.5mm未満であれば底付感による適度なクッション性が阻害される場合があり、一方厚みが20mmを超えると重量増加による取扱い不良や過大なクッション性で不快感を生じ、居住空間においては、ドアなどの開閉の妨げになると考えられる場合があるからである。ここで示す厚みとは、JIS K 7222(2001年版)に準じた測定方法で測定した数値を示す。
【0019】
表皮材11と裏材12を接着する接着層13は、熱可塑性樹脂からなる。
表皮材11と裏材12とを直接貼りあわせるのではなく、熱可塑性樹脂からなる接着層13を介在させて熱接着しているため、良好な接着性能が付与されている。
【0020】
この接着層13の形成態様は特に限定されないが、押出接着法、噴霧接着法が例示できる。
接着層13は、表皮材11の裏面に熱可塑性樹脂を塗布し、熱セットすることにより形成するのが好ましい。
接着層13の厚みは特に限定されないが、0.2mm〜2.0mmであることが好ましく、さらには軽量化および小型化の要請と、接着性能の担保との均衡上、0.3〜0.7mmが好ましい。
【0021】
接着層13の熱可塑性樹脂は、熱接着性の観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、クロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン、およびポリイソブチレンのうちの少なくとも一つを含むのが好ましい。
【0022】
本発明のペット用タイルマットはかさ高性が2.8cm/g以上であることが好ましい。かさ高性は、パイルの長さ、目付に依存するものの、2.8cm/g未満では軽量感を得られなかったり、風合いも底突き感があったりするなど十分なクッション性を得ることができない。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
<45°カンチレバー法による剛軟度(mm)>
20mm×300mmの試験片をウェール方向及びコース方向にそれぞれ採取し、一端が45°の斜面を持つ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせ、表皮が上となるように置く。次に、適切な方法によって試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央が斜面と接したとき他端の位置をスケールによって読む。剛軟度は、試験片が移動した長さ(mm)で示され、ウェール方向、コース方向5回ずつ測定し、それぞれの平均値を算出する。
【0025】
<かさ高性(cm/g)>
JIS−L−1096(2010)「織物及び編物の生地試験方法」の「8.5」に記載の試験法に準じる。測定回数を2回とし、その平均値を算出した。
【0026】
実施例のマットの裏材に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡体として、以下の発泡体を準備した。
低密度ポリエチレン樹脂(東ソー社製:ペトロセン342)65.5%と、エチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製:エバフレックス V421)28%と、発泡剤アゾジカルボンアミド(永和化成工業社製:ビニホールAC#3)3.5%と、酸化防止剤(BASF社製:IRGANOX 1010)3%を、170℃に加熱した加圧式ニーダで溶融混練した後、押出機を介してペレット形状のチップを得た。このチップをTダイを設置した45mφベント式単軸押出機を用いて150℃の温度で押出し、1mm厚みのシート状組成物を得た。該シート状組成物に40kGy電離性を照射して架橋した後、240℃に過熱した熱風オーブンで発泡させ冷却ロールで平滑化して実施例の裏材に用いる、フォーム厚み1.5mm、見掛け密度140kg/m、独立発泡率87%の発泡体を得た(以下、上記発泡体という)。
【0027】
[実施例1]
基布としてポリエステル不織布、表皮パイルとして1375デシテックスのポリプロピレンBCF(藤井撚糸(株)製)2本をZ方向に180T/mで合撚、125℃で10分間スチームセットしたものを用い、1/10ゲージタフト機を用いて、パイル高さ5.0mm、目付700g/mのカットパイル表皮材を作成した。
【0028】
得られた表皮材と上記発泡体との間に熱可塑性樹脂からなる接着層を介在させて熱接着して、マットを作成した。熱接着については、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体の混合体、樹脂量230〜320g/mの押出接着法による。
【0029】
上記マットをタテ84cm、ヨコ42cmに裁断し、ペット用タイルマットとした。
得られたペット用タイルマットの45°カンチレバー法による剛軟度およびかさ高性を表1に示す。
【0030】
[実施例2]
表皮材および上記発泡体は実施例1と同一のものを用い、接着法のみを以下に変えてマットを作成した。熱接着については、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体の混合体、樹脂量160〜190g/mの噴霧接着法による。
上記マットを実施例1同様にタテ84cm、ヨコ42cmに裁断し、ペット用タイルマットとした。
【0031】
得られたペット用タイルマットの45°カンチレバー法による剛軟度およびかさ高性を表1に示す。
【0032】
[実施例3]
基布としてポリエステル不織布、表皮パイルとして1375デシテックスのポリプロピレンBCF(藤井撚糸(株)製)3本をZ方向に145T/mで合撚、125℃で10分間スチームセットしたものを用い、1/10ゲージタフト機を用いて、パイル高さ5.0mm、目付840g/mのカットパイル表皮材を作成した。
【0033】
上記発泡体および熱接着法は実施例1と同様に実施し、マットを作成した。
得られたマットを実施例1同様にタテ84cm、ヨコ42cmに裁断し、ペット用タイルマットとした。
【0034】
得られたペット用タイルマットの45°カンチレバー法による剛軟度およびかさ高性を表1に示す。
【0035】
[比較例1]
実施例1と同一の表皮材を用い、裏材にポリエチレン発泡シートにポリエチレン系樹脂をラミネートしたものを用いたマットを作成した。
得られたマットを実施例1同様にタテ84cm、ヨコ42cmに裁断し、ペット用タイルマットとした。
【0036】
得られたペット用タイルマットの45°カンチレバー法による剛軟度およびかさ高性を表1に示す。
【0037】
[比較例2]
実施例1と同一の表皮材を用い、裏材に不織布の裏面にアクリル樹脂を適量噴霧したものを用いたマットを準備した。
得られたマットを実施例1同様にタテ84cm、ヨコ42cmに裁断し、ペット用タイルマットとした。
【0038】
得られたペット用タイルマットの45°カンチレバー法による剛軟度およびかさ高性を表1に示す。
【0039】
[比較例3]
上記発泡体のフォーム厚さを2.5mmに変更する以外は、実施例1と全く同一の条件でマットを準備した。
得られたマットを実施例1同様にタテ84cm、ヨコ42cmに裁断し、ペット用タイルマットとした。
【0040】
得られたペット用タイルマットの45°カンチレバー法による剛軟度およびかさ高性を表1に示す。
【0041】
【表1】

【符号の説明】
【0042】
10 実施形態のマット
11 表皮材
11a 基布
11b 表皮パイル
11c 抜け止め層
12 裏材
12a 凹凸
13 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮パイルがポリプロピレン繊維、裏材がポリオレフィン系樹脂発泡体から構成され、45°カンチレバー法による剛軟度が170mm以上、250mm以下であるペット用タイルマット。
【請求項2】
かさ高性が2.8cm/g以上である、請求項1に記載のペット用タイルマット。
【請求項3】
パイルがカットパイルである、請求項1または2に記載のペット用タイルマット。

【図1】
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【公開番号】特開2013−85541(P2013−85541A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231598(P2011−231598)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(591004456)東和織物株式会社 (3)
【Fターム(参考)】