説明

ペット用食器

【課題】片方の手で犬を支えた状態であっても他方の手で労力を要することなく保持して口先に差し出すペット用食器を提供する。
【解決手段】凹状に湾曲する食器本体2と、食器本体2に設けられた略逆L字状の把手3とからなり、把手3を介して手に懸吊するとともに、食器本体2の外面を手の掌で支えることを特徴とするペット用食器1である。これにより、片方の手で犬を支えた状態であっても他方の手で労力を要することなく保持して口先に差し出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペット用食器、特に、犬に好適なペット用食器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全国で飼育されている犬は1000万頭といわれている。犬は、人間に比較して老齢に達するのが早く、老齢期(シニア期)と呼ばれるのは、個体差もあるが、10歳前後である。一方、飼育知識やペットフードの普及、医療技術をはじめとする獣医学の進歩、薬品の開発などによって、犬の平均寿命が大幅に延びている。これに伴い、人間と同様に、犬の高齢化が進んでいる。犬が老齢化すると、視力や聴力の衰えに加え、前足を踏ん張る力が弱くなって食事の姿勢を保ち難くなる他、舌の力が弱くなるので、食べこぼしやすくなる一方、歯や顎が弱まって噛み砕く力が弱くなるとともに、消化吸収能力が弱まるため、一度の食事で量が摂れなくなるなどの症状が見られるようになる。また、高齢化に伴って寝たきりの状態になる犬も増加しつつある。
【0003】
犬が寝たきりになると、食事の姿勢を維持することができなくなるため、餌を食べることができなくなる。このため、楽な姿勢で食事できるように、飼い主が犬を支える必要がある。すなわち、一方の手で犬を支えながら、他方の手で餌を入れた食器を口先に差し出す必要がある。
【0004】
ペット用食器としては、例えば、特許文献1に示されるように、重りを付設して移動しにくくしたもの、特許文献2に示されるように、餌が食べやすいように傾斜状態と保持するものなどが提案されている。
【特許文献1】特開平8−116816号公報
【特許文献2】実用新案登録第3104152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したペット用食器は、成犬を対象としたものであり、寝たきりの犬に対しては、その縁を指先間で摘んで口許に持っていかざるを得ず、飼い主がその姿勢を長時間にわたって保持することは容易ではない。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、片方の手で犬を支えた状態であっても他方の手で労力を要することなく保持して口先に差し出すことのできるペット用食器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、凹状に湾曲する食器本体と、食器本体に設けられた略逆L字状の把手とからなり、把手を介して手に懸吊するとともに、食器本体の外面を手の掌で支えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、餌を入れた食器本体と把手との間に手を差し込んで手に懸吊する一方、指および掌で食器本体の外面を包み込むようにして支えるとともに、親指によって把手をしっかりと保持することができる。したがって、一方の手で犬を支持したとしても、他方の手で労力を要することなく食器を保持して犬の口先に差し出すことができる。このため、寝たきりの犬に対しても、楽に給餌することができる。
【0009】
本発明において、前記食器本体の外面には、底面が同一水平面上に位置するように複数個の脚部が設けられ、各脚部には、ゴムなどからなる滑り止めパッドが着脱自在に設けられることが好ましい。これにより、ペットフードを食する際に、舌が食器本体に対して押し動かすような力を与えたとしても、食器がずり動くことを確実に防止することができる。
【0010】
本発明において、前記食器本体は、把手と対向する側の上端縁が把手が設けられた側の上端縁よりも高さが低く、かつ、底面が把手が設けられた側の直下位置が最も低く設定されるとともに、任意の位置から把手が設けられた側の直下位置に向かって下り勾配の傾斜面に形成されることが好ましい。これにより、ペットフードを食する際に食器本体に対して口先を楽な姿勢を保ちながら突っ込むことができる。また、ペットフードは、食器本体の底面の勾配により、把手が設けられた側の直下位置に集まることから、食べ易く、食べ残しもないものとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、片方の手で犬を支えた状態であっても他方の手で労力を要することなく保持して口先に差し出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1乃至図4には、本発明のペット用食器1の一実施形態が示されている。
【0014】
この食器1は、凹状に湾曲する浅い皿状の食器本体2と、食器本体2に設けられた略逆L字状の把手3と、から構成されており、プラスチック、例えば、衛生的で安全性が高く、また、フードが冷めにくく、傷が付き難い特性を有するメラミン樹脂によって犬の鼻口部を入れることができる十分な大きさに成形されている。
【0015】
食器本体2は、把手3が設けられた側の上端縁よりも把手3と対向する側の上端縁が若干低く設定されるとともに、その上端縁が把手3を設けた側から把手3と対向する側に向かって緩やかな下り勾配に形成されている。そして、食器本体2の底面は、把手3が設けられた側の直下位置が最も低く設定されており、任意の位置から把手3が設けられた側の直下位置に向かって緩やかな下り勾配に形成されている。また、食器本体2の上端縁と底面とを結ぶ周壁は、把手3が設けられた側の直下位置から把手3が設けられた側の上端縁に向かって急勾配で立ち上げられる一方、把手3が設けられた側から把手3と対向する側へと周方向に離れるにしたがって高さが低くなるとともに、勾配が徐々に緩やかになるように形成されて、把手3が設けられた側の直下位置に向かって緩やかな下り勾配に形成された底面と滑らかな曲面にて連続されている。すなわち、把手3と対向する側において、周壁の高さが最も低く、かつ、周壁の勾配が最も緩やかに設定されている。
【0016】
さらに、食器本体2の外面には、図4に詳細に示すように、周方向に間隔をおいて複数個の脚部4が設けられている。これらの脚部4は、その底面が同一水平面上に位置するように設定されており、床に配置した際に、食器本体2の、把手3が設けられた側の上端縁よりも把手3と対向する側の上端縁が若干低くなるように高さが設定されている。また、各脚部4には、ゴムやプラスチックなどからなる滑り止めパッド5が着脱自在に取り付けられており、食器1をずり動かすような力に対して摩擦抵抗を増大させて移動に抗することができる。
【0017】
一方、把手3は逆L字状に形成されて、食器本体2の上端縁との間に手の掌と甲との間の厚みに相当する間隔を有しており、手の掌および指によって食器本体2の、把手3が設けられた側の外面を包み込むように支えつつ、把手3を介して手に懸吊することができる。この際、親指によって手に懸吊された把手3を押さえることにより、食器2を移動しないように保持することができる。
【0018】
次に、このように構成されたペット用食器1の使用方法について説明する。
【0019】
まず、食器本体2に適量のペットフードを投入した後、一方の手に把手3を引っ掛けて食器1を懸吊するとともに、把手3を親指との間で挟み込む。次いで、他方の手を寝たきりの犬の首に回して支えることにより、食道を確保した後、その口先に食器1を差し出せば、犬は、視力や聴力が衰えたとしても、嗅覚によって餌を確認することができ、ペットフードを食することができる(図5参照)。
【0020】
ここで、食器1は、手に懸吊されていることから、指先と指先との間で摘み続けるような力は不要であり、長時間にわたって給餌を介助することができる。また、食器本体2は、全体として浅い皿状に形成されるとともに、その上端縁が把手3を設けた側から把手3と対向する側に向かって緩やかな下り勾配に形成されているため、口先を食器本体2上に差し込んでも、顎などが上端縁と干渉することがなく、楽な姿勢でペットフードを食することができる(図6参照)。さらに、食器本体2は、任意の位置から把手3が設けられた側の最も低く設定された直下位置に向かって緩やかな下り勾配の底面を有する一方、把手3が設けられた側から把手3と対向する側へと周方向に離れるにしたがって高さが低くなるとともに、勾配が徐々に緩やかになるように形成された周壁を有することにより、ペットフードは、把手3が設けられた側の直下位置、すなわち、勾配が最も急で、最も高い周壁の近傍に集まることになる。したがって、ペットフードを舌で口の中に容易に絡めとることができ、余すことなく食することができるとともに、食器1の周囲にペットフードをこぼし落とすこともないものとなる(図7参照)。
【0021】
なお、犬が寝たきりになって歯や顎の力が弱まり、固形のペットフードを噛み砕くことができないような場合には、ウエットフードを与えることになるが、ウエットフードの場合であってもかまわない。
【0022】
ところで、前述した実施形態においては、寝たきりの犬に対する給餌要領について説明したが、成犬の給餌に際しても使用することができる。すなわち、食器本体2に適量のペットフードを投入して犬の口先に差し出せば、犬は、食器本体2の中に口先を突っ込み、舌を利用してペットフードを口の中に絡めとり、ペットフードを噛み砕いて食することができる。
【0023】
この場合も、図6および図7に示したように、口先を食器本体2上に差し込んでも、顎などが上端縁と干渉することがなく、楽な姿勢でペットフードを食することができるととともに、底面の最も低い位置である把手3が設けられた側の直下位置に集まったペットフードを舌で口の中に容易に絡めとることができ、余すことなく食することができるとともに、食器1の周囲にペットフードをこぼし落とすこともない。
【0024】
この際、ペットフードを舌で絡めとるとき、ペットフードを周壁に押し付けることから、食器1をずり動かすような力が作用するが、ずり動かす力に対して滑り止めパッド5が摩擦力を増加して抗することができ、食器1の移動を確実に防止することができる。
【0025】
なお、給餌が終了すれば、食器1を熱湯などを利用して洗浄すればよい。この際、メラミン樹脂によって形成されているため、熱による影響はない。
【0026】
ところで、小型犬に用いる食器1は、大型犬や中型犬の場合に比べて容量が小さくなる。したがって、中型犬や大型犬に用いる食器1の場合には、指や手の掌によって食器本体2を包み込むように支えることができるものの、小型犬の場合には、手が余ることになる。このため、図8に示すように、把手3を設ける側の容器本体2の上端縁を上方に若干立ち上げ、立ち上げた上端縁に把手3を設けるようにすれば、手の掌の上部が食器本体2の上端縁から突出する分、食器本体2の、把手3がわの外面を容易に保持することができる。
【0027】
なお、食器1の材質としては、プラスチックに限るものではなく、例えば、ステンレスや陶器など、他の材料を採用してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように本発明のペット用食器によれば、片方の手で犬を支えた状態であっても他方の手で労力を要することなく保持して口先に差し出すことができ、パートナーとして愛犬を最後まで看取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のペット用食器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のペット用食器の側面図である。
【図3】図1のペット用食器の把手を含む垂直面での縦断面図である。
【図4】図1のペット用食器の脚部に対する滑り止めパッドの嵌入状態を説明する底面側から見た斜視図である。
【図5】寝たきりの犬に対する給餌要領を示す説明図である。
【図6】犬が給餌する状態を説明する断面図である。
【図7】ペットフードの集まり状態を説明する縦断面図である。
【図8】本発明のペット用食器の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ペット用食器
2 食器本体
3 把手
4 脚部
5 滑り止めパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状に湾曲する食器本体と、食器本体に設けられた略逆L字状の把手とからなり、把手を介して手に懸吊するとともに、食器本体の外面を手の掌で支えることを特徴とするペット用食器。
【請求項2】
前記食器本体の外面には、底面が同一水平面上に位置するように複数個の脚部が設けられ、各脚部には、ゴムなどからなる滑り止めパッドが着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1記載のペット用食器。
【請求項3】
前記食器本体は、把手と対向する側の上端縁が把手が設けられた側の上端縁よりも高さが低く、かつ、底面が把手が設けられた側の直下位置が最も低く設定されるとともに、任意の位置から把手が設けられた側の直下位置に向かって下り勾配の傾斜面に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のペット用食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−159421(P2007−159421A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356348(P2005−356348)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(591009255)株式会社ヤマヒサ (70)
【Fターム(参考)】