説明

ペルチェ素子用配線基板、該配線基板を備えるペルチェモジュール及びペルチェモジュールを搭載するヒートシンク

【課題】複数のペルチェ素子を容易に結線することができると共に複数のペルチェ素子を容易に且つ正確に位置決めすることができ、加えて作業コストの増大を防止することができるペルチェ素子用配線基板、ペルチェモジュール及びペルチェモジュール搭載ヒートシンクを提供する。
【解決手段】ペルチェモジュール6は、ペルチェ素子20a,20b,20c,20dと、ペルチェ素子20a,20b,20c,20dを電気的に接続するペルチェ素子用配線基板10とを備える。ペルチェ素子用配線基板10は、ペルチェ素子20a,20b,20c,20dが夫々挿入固定される孔部15a,15b,15c,15d(複数の孔部)が所定配列で設けられた枠体11と、枠体11上に形成され、孔部15a,15b,15c,15dの所定配列に応じた回路パターンを有する導体群12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルチェ素子用配線基板、該配線基板を備えるペルチェモジュール及びペルチェモジュールを搭載するヒートシンクに関し、特に、複数のペルチェ素子を挿入固定して電気回路を形成するペルチェ素子固定用配線基板、該配線基板を備えるペルチェモジュール及びペルチェモジュールを搭載するヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペルチェ素子を用いたヒートシンク等の熱交換器において、冷却効果を向上させるために複数のペルチェ素子を有するペルチェモジュールを使用するものがある。
【0003】
図6は、従来のペルチェモジュールの構成を示す断面図である。
【0004】
図6において、熱電変換モジュールは、四角柱状の複数の貫通孔が設けられたセラミックス製型枠601と、該型枠601の貫通孔に交互に配列されたそれぞれ四角柱状のp型熱電素子610及びn型熱電素子611と、該p型熱電素子と該n型熱電素子とを電気的に直列に接続する溶射電極613とから構成されており、p型熱電素子610、n型熱電素子611及び溶射電極613は、セラミックス製型枠601に一体的に固着されている。p型熱電素子610には、該p型熱電素子と外部を電気的に接続するリード線612が接合されている(特許文献1参照)。
【0005】
図7は、従来の熱交換器の構成を示す平面図である。
【0006】
図7において、冷却装置700は、一側セラミック基板720、ペルチェモジュール730及び他側セラミック基板740を備えている。一側セラミック基板720は、その表面にて、ヒートシンク710の裏面に熱伝導性に優れた高温用接着剤により強固に接着されている。一側電極部731及び他側電極部732に対する半導体部N及び半導体部P(ペルチェ素子730a,730b)の接合は、半田付けによりなされている。一側電極部731及び他側電極部732は、共に、銅等の電極材料からなる電極板で形成されている。一側電極部731は他側セラミック基板740に高温用接着剤により接着され、一方、他側電極部732は一側セラミック基板720に高温用接着剤により接着されている(特許文献2参照)。
【0007】
図8は、従来の他の熱交換器の構成を示す平面図である。
【0008】
図8に示すように、放熱板となる良熱伝導性の平面基板(ベース)801の上にペルチェ素子802が載置され、さらにペルチェ素子802の上に良熱伝導性平板のヒートシンク803が載置されてペルチェ冷却積層体801−802−803が構成されている。ヒートシンク803の表面は、この積層体を互いに密着させるための弾性押圧部材804aの一端により押圧され、弾性押圧部材804aの他端は固定部材804bによりベース801に固定されている。この弾性押圧部804により、ペルチェ素子802の吸熱発熱両面はヒートシンク803、ベース801にそれぞれ押圧接触固定される(特許文献3参照)。
【0009】
ここで、特許文献1の技術では、型枠に交互に配列されたp型及びn型熱電素子に溶射マスクを介して金属を溶射し、p型及びn型熱電素子の上面に溶射電極を形成する。よって、故障等により熱電素子の1つ又複数を交換する必要がある場合に、交換された熱電素子の上面に新たに溶射電極を形成するのは容易ではなく、熱電素子の結線作業が煩雑となり、作業コストの増大を招く。
【0010】
また、特許文献2の技術では、一側及び他側電極部は、銅等の電極材料からなる電極板で形成されており、ペルチェ素子の上面及び下面に半田により接合される。よって、故障等によりペルチェ素子の1つ又複数を交換する必要がある場合に、交換されたペルチェ素子の上面及び下面に新たに電極部を形成するのは容易ではなく、ペルチェ素子の結線作業が煩雑となり、作業コストの増大を招く。
【0011】
また、特許文献3の技術では、ペルチェ素子がヒートシンク3及びベース1に夫々押圧接触固定されるので、ペルチェ素子が故障した場合であってもペルチェ素子を容易に取り外して交換することが可能であるものの、本特許文献3では複数のペルチェ素子を結線する構成についての記載はない。
【0012】
上記のような問題を解消するべく、複数のペルチェ素子を結線するリード線を所定の形状と長さに調整し、このリード線にて複数のペルチェ素子を電気的に接続し、その後、リード線で接続された複数のペルチェ素子を、シリコーングリース等の熱伝導剤が塗布された放熱側又は冷却側ヒートシンクの所定位置に位置決めして固定する技術が提案されている。これによれば、ペルチェ素子の交換の際に、交換されたペルチェ素子のリード線のみを再結線すればよいため、ペルチェ素子の結線作業が比較的容易となり、作業コストの増大を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−108976号公報
【特許文献2】特開2009−195455号公報
【特許文献3】特開2001−349636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、複数のペルチェ素子がリード線で結線されたペルチェモジュールを製造する際には、複数のペルチェ素子の結線作業が非常に煩雑となる。また、この場合、複数のペルチェ素子はリード線で結線された後にヒートシンク上で位置決めされる。よって、1つのペルチェ素子をヒートシンク上で移動して位置決めする際にリード線の弾性によって他のペルチェ素子がずれる場合があり、全てのペルチェ素子を正確に位置決めするのは困難である。
【0015】
本発明の目的は、複数のペルチェ素子を容易に結線することができると共に複数のペルチェ素子を容易に且つ正確に位置決めすることができ、加えて作業コストの増大を防止することができるペルチェ素子用配線基板、該配線基板を備えるペルチェモジュール及びペルチェモジュールを搭載するヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係るペルチェ素子用配線基板は、複数のペルチェ素子が夫々挿入固定される複数の孔部が所定配列で設けられた枠体と、前記枠体上に形成され、前記複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記複数の孔部は、前記枠体にマトリックス状に配列され、前記導体群は、マトリックス状に配列された前記複数の孔部を囲うように配設される。
【0018】
また、前記導体群は、マトリックス状に配列された前記複数の孔部の近傍且つ前記枠体の外周部に形成される。
【0019】
また、前記導体群は、複数の導体部で構成され、前記導体部は、前記複数の孔部のうち隣接して設けられた2つの孔部に挿入固定される2つのペルチェ素子を電気的に接続する。
【0020】
さらに、前記導体部は、第1の方向に延在する第1導体及び前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第2導体の少なくとも一方で構成される。
【0021】
さらに、ペルチェ素子用配線基板は、前記導体部の端部と前記導体部の近傍に設けられた孔部に挿入固定されるペルチェ素子とを電気的に接続する導線を更に有する。
【0022】
また、前記枠体は、電気絶縁性を有する一層の型枠構造である。
【0023】
また、本発明に係るペルチェモジュールは、複数のペルチェ素子と、前記複数のペルチェ素子を電気的に接続するペルチェ素子用配線基板とを備え、前記ペルチェ素子用配線基板は、複数のペルチェ素子が夫々挿入固定される複数の孔部が所定配列で設けられた枠体と、前記枠体上に形成され、前記複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群とを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るヒートシンクは、上記ペルチェモジュールを搭載するペルチェモジュール搭載ヒートシンクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数のペルチェ素子が挿入固定される複数の孔部が枠体に所定配列で設けられる。また、複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群が枠体上に形成される。よって、枠体の被温調体に対する取付け位置を決定することにより、複数のペルチェ素子の被温調体に対する固定位置が決定される。また、導体群が複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有しているので、複数の孔部に挿入固定される複数のペルチェ素子と導体群との結線が容易となる。したがって、複数のペルチェ素子を容易に結線することができ、さらに複数のペルチェ素子を容易に且つ正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るペルチェモジュールを搭載するペルチェモジュール搭載ヒートシンクの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1におけるペルチェモジュールの構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図3】図2におけるペルチェ素子用配線基板の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るペルチェモジュールの構成を示す平面図である。
【図5】図4のペルチェモジュールにおけるペルチェ素子用配線基板の構成を示す平面図である。
【図6】従来のペルチェモジュールの構成を示す断面図である。
【図7】従来の熱交換器の構成を示す平面図である。
【図8】従来の他の熱交換器の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るペルチェモジュールを搭載するペルチェモジュール搭載ヒートシンクの構成を概略的に示す斜視図である。
【0029】
図1において、ヒートシンク1は、基板2の熱接触面2aにペルチェモジュール6が固定されており、温度制御の対象となる被温調体3にペルチェモジュール6を介して取り付けられている。ペルチェモジュール6には後述する導体群12が設けられており、リード線4を介して外部と電気的に接続されている。
【0030】
図2は、図1におけるペルチェモジュール6の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。図3は、図2におけるペルチェ素子用配線基板の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【0031】
図2(a)及び(b)において、ペルチェモジュール6は、ペルチェ素子20a,20b,20c,20d(複数のペルチェ素子)と、ペルチェ素子20a,20b,20c,20dを電気的に接続するペルチェ素子用配線基板10とを備える。
【0032】
ペルチェ素子用配線基板10は、ペルチェ素子20a,20b,20c,20dが夫々挿入固定される孔部15a,15b,15c,15d(複数の孔部)が所定配列で設けられた枠体11と、枠体11上に形成され、孔部15a,15b,15c,15dの所定配列に応じた回路パターンを有する導体群12とを備える(図3(a)及び(b))。
【0033】
ペルチェ素子20a,20b,20c,20dは、夫々孔部15a,15b,15c,15dに挿入した状態で半田にて枠体11に接合されている。ペルチェ素子20aは、一方の主面がヒートシンク1の基板2に当接しており、他方の主面が被温調体3に当接している。ペルチェ素子20aは、その寸法が例えば40mm×40mm×4mmである。尚、本実施の形態では、上記4個のペルチェ素子の寸法は同一であり、上記4個の孔部の寸法も同一であるので、ペルチェ素子20a及び孔部15a以外の説明を省略する。
【0034】
枠体11は、電気絶縁性を有する一層の型枠構造であり、例えばガラス繊維が充てんされたエポキシ樹脂で一体的に成形されている。枠体11は、その寸法が例えば100mm×100mm×1mmであり、枠体11の厚さは、ペルチェ素子20と放熱対象の熱接触を妨害させないように、ペルチェ素子の厚さよりも小さい値となるように設計されている。孔部15a,15b,15c,15dは、枠体11にマトリックス状に配列されており、本実施の形態では、2行×2列で配列されている。各孔部は、略矩形であり、その寸法が例えば45mm×45mm×1mmである。孔部の寸法は、組み立てを容易にするべくペルチェ素子の寸法より大きく設定されている。枠体11の各孔部に各ペルチェ素子を挿入固定することにより、ヒートシンク1の基板2に対する各ペルチェ素子の取付け位置が決定される。
【0035】
また、枠体11には、孔部15aと一体的に形成され、該孔部と隣接して設けられた導体部12a,12bに向かって夫々延出した溝部16a,16bが設けられている。溝部16a,16bは後述するリード線を収容するスペースとなっている。同様にして、孔部15bには溝部17a,17bが、孔部15cには溝部18a,18bが、孔部15dには溝部19a,19bが設けられており、夫々対応するリード線が収容される。これにより、枠体11と各リード線の干渉を防止することができる。
【0036】
導体群12は、導体部12a,12b,12c,12d,12e(複数の導体部)で構成されており、マトリックス状に配列された孔部15a,15b,15c,15dを囲うように配設されている。好ましくは、導体群12は、マトリックス状に配列された孔部15a,15b,15c,15dの近傍且つ枠体11の外周部に形成されている。
【0037】
各導体部は、隣接して設けられた2つの孔部の近傍に設けられており、各ペルチェ素子のリード線の長さを短くすることが可能な位置で、各ペルチェ素子が電気的に直列に接続可能な所定形状にて配置される。
【0038】
具体的には、導体部12aは、直線状(略I字型)の導体部であり、孔部15aの一辺近傍から、枠体11の端面11aまで、枠体11の端面と平行な図中X方向(第1の方向)に、延在しており、その一端がペルチェ素子20aの正極側端子に、他端がリード線4aに夫々接続される。導体部12bは、直線状の導体部であり、孔部15aの導体部12aが形成されている側の辺近傍から孔部15bの近傍に亘って、X方向と直交する図中Y方向(第2の方向)に延在している。これにより、ペルチェ素子20aの負極側端子に接続されるリード線が導体部12bに接続可能となり、ペルチェ素子20bの正極側端子に接続されるリード線が導体部12bに接続可能となる(図2(b))。
【0039】
導体部12cは、略コの字型の導体部であり、X方向に延在する第1導体32及びY方向に延在する第2導体31,33で構成されている。導体部12cは、孔部15bの導体部12bが形成されている側の辺近傍から、図3(b)における孔部15cの左側の辺近傍に亘って延在している。これにより、ペルチェ素子20bの負極側端子に接続されるリード線が導体部12cの第2導体31に接続可能となり、ペルチェ素子20cの正極側端子に接続されるリード線が第2導体33に接続可能となる(図2(b))。
【0040】
導体部12dは、導体部12bと同様に、直線状の導体部であり、孔部15cの第2導体33が形成されている側の辺近傍から孔部15dの近傍に亘って、Y方向に延在している。これにより、ペルチェ素子20cの負極側端子に接続されるリード線が導体部12dに接続可能となり、ペルチェ素子20dの正極側端子に接続されるリード線が導体部12dに接続可能となる。
【0041】
導体部12eは、略L字型の導体部であり、X方向に延在する第1導体35及びX方向と直交するY方向に延在する第2導体34で構成されている。導体部12eは、孔部15dの導体部12dが形成されている側の辺近傍から枠体11の端面11aまで延在しており、その一端がペルチェ素子20dの負極側端子に、他端がリード線4bに夫々接続される。
【0042】
すなわち、導体群12は、略I字型の導体部12a,12b,12d、略L字型の導体部12e及び略コの字型の導体部12cで構成されており、これらの導体部の配置によって所定の回路パターンを形成している。尚、回路パターンは本実施の形態に限定されず、例えば、ペルチェ素子20bのリード線を図面2(b)において下側を向けて配置する場合は、導体部12cはL字型の導体部となり、導体部12dはL字型の導体部となる。
【0043】
また、各導体部は、孔部15a,15b,15c,15dのうち隣接して設けられた2つの孔部に挿入固定される2つのペルチェ素子を電気的に接続する。具体的には、導体部12bは、孔部15a,15bに挿入固定されるペルチェ素子20a,20bを電気的に接続する。同様に、導体部12cは、孔部15b,15cに挿入固定されるペルチェ素子20b,20cを電気的に接続し、導体部12dは、孔部15c,15dに挿入固定されるペルチェ素子20c,20dを電気的に接続する。導体部12aは、リード線4と孔部15aに挿入固定されるペルチェ素子20aとを電気的に接続し、導体部12eは、リード線4と孔部15dに挿入固定されるペルチェ素子20dとを電気的に接続する。各導体部は、例えば銅等の金属材料により形成されており、その幅は、例えば3mm、厚さは、例えば0.1mmである。
【0044】
枠体11の中心部には丸孔16が設けられており、固定ボルト5を丸孔16に挿通して基板2上のネジ穴に嵌入固定することにより、ペルチェモジュール6がヒートシンク1の基板2に接合される。これにより、枠体11及びペルチェ素子20a,20b,20c,20dが基板2の熱接触面2aと当接する。
【0045】
また、ペルチェ素子用配線基板10は、枠体11に配され、各導体部の端部と該導体部の近傍に設けられた孔部に挿入固定されるペルチェ素子とを電気的に接続するリード線群(導線群)13を有する。本実施の形態では、リード線群13は図中X方向に延在している。具体的には、リード線13aは、導体部12a,12bの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子20aとを電気的に接続する。同様に、リード線13bは、導体部12b,12cの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子20aとを電気的に接続し、リード線13cは、導体部12c,12dの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子20aとを電気的に接続し、リード線13dは、導体部12d,12eの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子20dとを電気的に接続する。好ましくは、リード線13a,13b,13c,13d,13eの長さは同一である。これにより、結線作業が容易となる。リード線群13が導体群12と接続されることにより、ペルチェ素子20a,20b,20c,20dが順に直列に接続される。
【0046】
上記のように構成されるペルチェ素子用配線基板10において、導体群12の各導体部は、各ペルチェ素子と接続されるリード線の長さを短くすることが可能な位置に、所定形状にて配置される。これにより、ペルチェ素子と各導体部の端部との距離が小さくなり、結線作業が容易となる。
【0047】
また、被温調体3に対する枠体11の取付け位置を決定することにより、被温調体3に対する孔部15a,15b,15c,15dの位置が決定される。これにより、被温調体3に対するペルチェ素子20a,20b,20c,20dの固定位置が決定される。また、被温調体3に対する枠体11の取付け位置を変更することにより、上記4個のペルチェ素子の固定位置が容易に変更される。
【0048】
本実施の形態によれば、複数のペルチェ素子(20a,20b,20c,20d)が挿入固定される複数の孔部(15a,15b,15c,15d)が枠体11に所定配列で設けられる。また、複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群12が枠体11上に形成される。よって、被温調体3に対する枠体11の取付け位置を決定することにより、被温調体3に対する複数のペルチェ素子の固定位置が決定される。また、導体群12が複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有しているので、ペルチェモジュール6の製造時やペルチェ素子の交換時に、複数の孔部に挿入固定される複数のペルチェ素子と導体群12との結線が容易となる。したがって、複数のペルチェ素子を容易に結線することができ、さらに複数のペルチェ素子を容易に且つ正確に位置決めすることができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、導体群12が複数の孔部の配列に応じた回路パターンを有するので、この回路パターンを用いて配線基板上の故障箇所を容易に検出することが可能となる。さらに、複数のペルチェ素子を容易に位置決めすることができるので、ペルチェモジュールやヒートシンクの設計の自由度を向上することができる。
【0050】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るペルチェモジュールの構成を示す平面図であり、図5は、図4のペルチェモジュールにおけるペルチェ素子用配線基板の構成を示す平面図である。
【0051】
図4及び図5において、ペルチェモジュール7は、ペルチェ素子60a,60b,60c,60d,60eと、ペルチェ素子60a,60b,60c,60d,60eを電気的に接続するペルチェ素子用配線基板40とを備える。すなわち、本第2の実施の形態に係るペルチェモジュールは5個のペルチェ素子を備えている。
【0052】
ペルチェ素子用配線基板40は、ペルチェ素子60a,60b,60c,60d,60eが挿入固定される孔部50a,50b,50c,50d,50eが所定配列で設けられた枠体41と、枠体41上に形成され、孔部50a,50b,50c,50d,50eの所定配列に応じた回路パターンを有する導体群42とを備える。
【0053】
孔部50a,50b,50c,50d,50eは、枠体41にマトリックス状に配列されており、本実施の形態では、枠体41の中心部に孔部50eが設けられ、他の4個の孔部50a,50b,50c,50dが、孔部50eを中心として2行×2列で配列されている。孔部50aと孔部50dの間、及び孔部50bと孔部50cとの間には夫々丸孔76,77が設けられており、固定ボルト46,47により、ペルチェモジュール7がヒートシンク1の基板2に接合される。
【0054】
導体群42は、導体部42a,42b,42c,42d,42e,42fで構成されており、マトリックス状に配列された孔部50a,50b,50c,50d,50eを囲うように配設されている。導体部42aは、直線状の導体部であり、孔部50aの一辺近傍から、図中X方向に枠体41の端面41aまで延在しており、その一端がペルチェ素子60aの正極側端子に、他端がリード線4aに夫々接続される。導体部42bは、略L字型の導体部であり、X方向に延在する第1導体52及びY方向に延在する第2導体51で構成されている。導体部42bは、孔部50aの導体部42aが形成されている側の辺近傍から孔部50eの近傍に亘って延在している。これにより、ペルチェ素子60aの負極側端子に接続されるリード線が導体部42bの第2導体51に接続可能となり、ペルチェ素子60eの正極側端子に接続されるリード線が第1導体52に接続可能となる。
【0055】
導体部42cは、略L字型の導体部であり、X方向に延在する第1導体54及びY方向に延在する第2導体53で構成されている。導体部42cは、孔部50eの導体部42bが形成されている側の辺近傍から孔部50bの近傍に亘って延在している。これにより、ペルチェ素子60eの負極側端子に接続されるリード線が導体部42cの第1導体54に接続可能となり、ペルチェ素子60bの正極側端子に接続されるリード線が第2導体53に接続可能となる。
【0056】
導体部42dは、略コの字型の導体部であり、X方向に延在する第1導体56及びY方向に延在する第2導体55,57で構成されている。導体部42dは、孔部50bの第2導体53が形成されている側の辺近傍から、図5における孔部50cの左側の辺近傍に亘って延在している。これにより、ペルチェ素子60bの負極側端子に接続されるリード線が導体部42dの第2導体55に、ペルチェ素子60cの正極側端子に接続されるリード線が第2導体57に接続可能となる。
【0057】
導体部42eは、直線状の導体部であり、孔部15aの第2導体57が形成されている側の辺近傍から孔部50dの近傍に亘って、Y方向に延在している。これにより、ペルチェ素子60cの負極側端子に接続されるリード線が導体部42eに、ペルチェ素子60dの正極側端子に接続されるリード線が導体部42eに接続可能となる。
【0058】
導体部42fは、略L字型の導体部であり、X方向に延在する第1導体58及びY方向に延在する第2導体59で構成されている。導体部42fは、孔部50dの導体部42eが形成されている側の辺近傍から枠体41の端面41aまで延在しており、その一端がペルチェ素子60dの負極側端子に、他端がリード線4bに夫々接続される。
【0059】
導体部42bは、孔部50a,50eに挿入固定されるペルチェ素子60a,60eを電気的に接続する。同様に、導体部42cは、孔部50c,50eに挿入固定されるペルチェ素子60c,60eを電気的に接続し、導体部42dは、孔部50b,50cに挿入固定されるペルチェ素子60b,60cを電気的に接続する。導体部42aは、リード線4aと孔部50aに挿入固定されるペルチェ素子60aとを電気的に接続し、導体部42fは、リード線4bと孔部50dに挿入固定されるペルチェ素子60dとを電気的に接続する。
【0060】
また、ペルチェ素子用配線基板40は、枠体41に配され、各導体部の端部と該導体部の近傍に設けられた孔部に挿入固定されるペルチェ素子とを電気的に接続するリード線群43を有する。リード線43aは、導体部42a,42bの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子60aとを電気的に接続する。同様に、リード線43bは、導体部42b,42cの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子60eとを電気的に接続し、リード線43cは、導体部42c,42dの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子60bとを電気的に接続する。また、リード線43dは、導体部42d,42eの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子60cとを電気的に接続し、リード線43eは、導体部42e,42fの各端部と該導体部の近傍に配設されたペルチェ素子60dとを電気的に接続する。この構成により、ペルチェ素子60a,60b,60c,60d,60eが順に直列に接続される。
【0061】
また、枠体41には、孔部50aと一体的に形成され、該孔部と隣接して設けられた導体部42a,42bに向かって延出した溝部81a,81bが設けられている。溝部81a,81bはリード線43aを収容するスペースとなっている。同様にして、孔部50bには溝部82a,82bが、孔部50cには溝部83a,83bが、孔部50dには溝部84a,84bが、孔部50eには溝部85a,85bが設けられており、リード線43b,43c,43d,43eが夫々収容される。これにより、枠体11と各リード線の干渉を防止することができる。
【0062】
本実施の形態によれば、複数のペルチェ素子(60a,60b,60c,60d,60e)が挿入固定される複数の孔部(50a,50b,50c,50d)が枠体41に所定配列で設けられる。また、複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群42が枠体41上に形成される。よって、被温調体3に対する枠体41の取付け位置を決定することにより、被温調体3に対する複数のペルチェ素子の固定位置が決定される。また、導体群42が複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有しているので、複数の孔部に挿入固定される複数のペルチェ素子と導体群42との結線が容易となる。したがって、複数のペルチェ素子を容易に結線することができ、さらに複数のペルチェ素子を容易に且つ正確に位置決めすることができる。
【0063】
上記実施の形態では、ペルチェモジュールは4個のペルチェ素子又は5個のペルチェ素子を備えるが、これに限るものではなく、少なくとも2つのペルチェ素子を備えていてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、枠体11に固定される4個のペルチェ素子の寸法は同一であるが、これに限るものではなく、上記4個のペルチェ素子の寸法が異なっていてもよい。また、枠体11に形成される4個の孔部の寸法が異なっていてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、複数の孔部が枠体にマトリックス状に配列されているが、これに限るものではなく、平面状に配列されてもよい。また、複数の孔部が枠体に直線状、曲線状、又はこれらの組合せで配列されてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、各導体部は、図中X方向に延在する第1導体及びX方向と直交するY方向に延在する第2導体の少なくとも一方で構成されるが、これに限るものではなく、X方向(又はY方向)に対して所定角度α(0<α<90°)で延在する他の導体を有していてもよい。また、各導体は、直線状のみならず、曲線状に形成されてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、ペルチェ素子の負極側端子及び正極側端子は当該ペルチェ素子の同一方向に設けられているが、これに限るものではなく、異なる方向に設けられてもよい。この場合、各導体部は、隣接する2つのペルチェ素子のうち一方の負極側端子及び他方の正極側端子が設けられる方向に応じて所定形状にて形成される。これにより、ペルチェ素子の仕様や配置が変更された場合であっても、ペルチェ素子と導体部を接続するリード線を短くすることができ、結線作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ヒートシンク
2 基板
3 被温調体
4 リード線
6 ペルチェモジュール
10 ペルチェ素子用配線基板
11 枠体
12 導体群
13 リード線群
15a,15b,15c,15d 孔部
20a,20b,20c,20d ペルチェ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のペルチェ素子が夫々挿入固定される複数の孔部が所定配列で設けられた枠体と、
前記枠体上に形成され、前記複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群とを備えることを特徴とするペルチェ素子用配線基板。
【請求項2】
前記複数の孔部は、前記枠体にマトリックス状に配列され、
前記導体群は、マトリックス状に配列された前記複数の孔部を囲うように配設されることを特徴とするペルチェ素子用配線基板。
【請求項3】
前記導体群は、マトリックス状に配列された前記複数の孔部の近傍且つ前記枠体の外周部に形成されることを特徴とする請求項2記載のペルチェ素子用配線基板。
【請求項4】
前記導体群は、複数の導体部で構成され、
前記導体部は、前記複数の孔部のうち隣接して設けられた2つの孔部に挿入固定される2つのペルチェ素子を電気的に接続することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペルチェ素子用配線基板。
【請求項5】
前記導体部は、第1の方向に延在する第1導体及び前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第2導体の少なくとも一方で構成されることを特徴とする請求項4記載のペルチェ素子用配線基板。
【請求項6】
前記導体部の端部と前記導体部の近傍に設けられた孔部に挿入固定されるペルチェ素子とを電気的に接続する導線を更に有することを特徴とする請求項4又は5記載のペルチェ素子用配線基板。
【請求項7】
前記枠体は、電気絶縁性を有する一層の型枠構造であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のペルチェ素子用配線基板。
【請求項8】
複数のペルチェ素子と、前記複数のペルチェ素子を電気的に接続するペルチェ素子用配線基板とを備え、
前記ペルチェ素子用配線基板は、複数のペルチェ素子が夫々挿入固定される複数の孔部が所定配列で設けられた枠体と、前記枠体上に形成され、前記複数の孔部の所定配列に応じた回路パターンを有する導体群とを備えることを特徴とするペルチェモジュール。
【請求項9】
請求項8記載のペルチェモジュールを搭載するペルチェモジュール搭載ヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211079(P2011−211079A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79243(P2010−79243)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)