説明

ペレットの製造方法およびペレット製造装置

【課題】ダイスの表面の平面度が不十分でも、カッタ軸の回転速度に関係なく、カッタ刃を適切な接触面圧でダイス面に当接させることができるペレット製造装置を提供する。
【解決手段】カッタ軸(7)と、カッタホルダ(8)と、カッタホルダの外周部取り付けられているカッタアーム(11、11、…)と、これらのカッタアームのそれぞれに取り付けられているカッタ刃(4、4、…)とから構成する。カッタアーム(11、11、…)は、その軸心の周りに揺動的に回動可能である。カッタ刃(4、4、…)はカッタアームに対して垂直の軸心の周りに揺動的に回動可能である。これらにより、個々のカッタ刃(4、4、…)は独立してフレキシブルである。また、カッタ軸(7)には、該軸の回転速度に応じた所定の軸方向の力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイスから溶融樹脂をストランド状に押し出して水中で冷却し、冷却された樹脂をダイスの表面に接しながら回転するカッタ刃によって切断して、ペレットを製造するペレットの製造方法およびペレット製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂成形品の成形には、従来周知のように、安定剤、可塑剤、無機充填剤等の添加剤が混合・分散された合成樹脂材料が使用される。このような合成樹脂材料は一般にペレット化されている。ペレタイザすなわちペレット製造装置は、押出機、この押出機の先端部に設けられているダイス、ダイスに対応して設けられているカッタ装置等から構成され、カッタ装置とダイスは所定のケーシングに入れられている。そして、ケーシング内には所定の給水口から冷却用の水あるいは温水が給水されると共に、所定の排水口から排水されるようになっている。従って、押出機により各種添加剤を混合して溶融・混練した溶融樹脂を、ダイスの複数個のノズル孔からストランド状に連続的に押し出すと、樹脂は水中で冷却され、ダイスに接しながら所定速度で回転駆動されるカッタ装置で切断すると、所定の大きさのペレットが得られる。得られたペレットは排水口から水と共に排出される。このようなペレット製造装置において、カッタ刃のダイスへの当接状態は重要である。すなわち、ダイスとカッタ刃の接触面圧が低下すると、ダイスとカッタ刃の間に隙間すなわちクリアランスが生じたり、カッタ刃が適切に研磨される、いわゆるカッタ刃の再生効果がなくなる。そうすると、カッティング不良によりペレットの形状や粒径が不均一になって品質に悪影響を及ぼすことになる。また、ダイスにカッタ刃が強く押し当てられてダイスとカッタ刃の接触面圧が高くなり過ぎると、ダイスとカッタ刃が早期に摩耗してしまう。そこで、ダイスにカッタ刃を適切に当接することができる、色々なペレット製造装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−301532号公報
【特許文献2】特開2003−326519号公報
【特許文献3】特許第2642579号公報
【特許文献4】米国特許第5,624,688号
【特許文献5】特昭54−127463号公報
【特許文献6】特公平07−20618号公報
【0004】
特許文献1には、複数枚のカッタ刃を固定しているカッタホルダが、所定の継手を介してカッタ軸に連結され、カッタホルダがカッタ軸に対して所定の範囲で首振り可能になっているカッタ装置を備えたペレット製造装置が記載されている。カッタホルダはカッタ軸に対して所定の範囲で任意の方向に傾くことができるので、カッタ軸とダイスの表面の垂直度が不十分であっても、換言すると複数枚のカッタ刃からなる面とダイスの表面の平行度が不十分であっても、カッタホルダがカッタ軸に対してわずかに傾いて、複数枚のカッタ刃がダイスに適切に当接することになる。特許文献2〜4にも、カッタホルダがカッタ軸に対して所定の範囲で首振り可能に連結され、それによって特許文献1に記載のペレット製造装置と同様な効果を奏するカッタ装置を備えたペレット製造装置が記載されている。
【0005】
特許文献5には、カッタ軸に固着されているカッタホルダと、カッタホルダに連結されている複数本のカッタアームと、それぞれのカッタアームに連結されている複数枚のカッタ刃とからなるカッタ装置を備えたペレット製造装置が記載されている。カッタホルダの外周面には、軸方向に向かう所定の深さの穴が円周方向に等間隔に複数個明けられている。これらの穴にカッタアームが挿入される。カッタアームは、断面が円の所定の長さの軸からなり、所定箇所において直角に曲げられL字状を呈している。そして、一方の端部がカッタホルダの穴に挿入されると共に所定のピンによって穴から抜けないようになっている。このようなカッタアームの他方の端部は、斜めの所定の角度でダイスに向かっている。一方の端部は、穴の中で所定の範囲で回転することができるので、カッタアームの他方の端部は所定の範囲で回転することができる。この回転によって他方の端部とダイスの距離が変化することになるので、ダイスの表面に凹凸があっても他方の端部に接続されているペレット刃が上下して凹凸に追随することができる。カッタ刃は、所定の長さの刃が形成されている刃部と、刃部の中央部に刃部と直角に固着されている軸部とから構成されている。この軸部が、カッタアームの他方の端部にカッタアームを延長するように接続されており、カッタアームに対して回転できるようになっている。従って、ペレット刃の刃部はカッタアームと垂直な面内で回転することができる。カッタ装置はこのように構成されているので、ダイスの表面が湾曲していてもカッタ刃はダイスの表面の湾曲に追随することができ、カッタ刃は滑らかにダイスの表面に当接することになる。
【0006】
特許文献6には、油圧によってカッタ軸を軸方向に駆動したり、ダイスとカッタ刃の接触面圧を調節することができるカッタ装置を備えたペレット製造装置が記載されている。カッタ刃が水中で回転すると、カッタ刃の切刃、いわゆるすくい面に水流が当たって、カッタ刃はダイスに押し当てられることになる。カッタ刃が高速で回転するとカッタ刃がダイスに強く押し当てられてダイスとカッタ刃の接触面圧が高くなるが、特許文献6に記載のペレット製造装置においては、カッタ軸に軸方向の力を作用させることができるので、ダイスとカッタ刃の接触面圧を低下させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜6記載のいずれのペレット製造装置によっても、カッタ刃がダイスの表面に比較的適切に当接されるので、所望の品質のペレットを製造することはできる。しかしながら、これらのペレット製造装置には解決すべき問題点も見受けられる。例えば、特許文献1〜4のそれぞれに記載のペレット製造装置においては、複数枚のカッタ刃からなる面とダイスの表面の平面度が十分なときには、これらの面の平行度が不十分であってもカッタホルダがカッタ軸に対して傾き、カッタ刃がダイスに適切に当接することができるが、これらの面の平面度が不十分な場合には、一部のカッタ刃がダイスから浮いたり、一部のカッタ刃がダイスに過大な接触面圧で当接される。その結果、カッティング不良が生じて製造されるペレットの品質に悪影響を及ぼしたり、ダイスとカッタ刃が早期に摩耗するという問題がある。
【0008】
特許文献5に記載のペレット製造装置にも解決すべき問題点が見受けられる。すなわち、ダイスの表面の平面度が不十分であってもカッタ刃はダイスの表面の形状に追随して当接されることになるが、カッタ刃の回転速度が変化したときの問題については格別に考慮されていない。つまり、カッタ刃が低速で回転するときには、カッタ刃のすくい面に当たる水流が少ないので、カッタ刃がダイスに押し当てられる力は弱くなる。そうすると、ダイスとカッタ刃の接触面圧が不十分になって、ダイスとカッタ刃の間にクリアランスが発生してカッタ刃の再生効果が得られなくなり、カッティング不良が生じる。また、カッタ刃が高速で回転するときには、カッタ刃のすくい面に当たる水流が多くなるので、カッタ刃がダイスに強く押し当てられ、ダイスとカッタ刃の接触面圧が過大になり、カッタ刃は早期に摩耗する。
【0009】
特許文献6に記載のペレット製造装置によると、ダイスとカッタ刃の接触面圧が圧力媒体により制御されるので、通常は実施する上で格別問題はないが、複数枚のカッタ刃はカッタホルダに固定されていて揺動することができないので、またカッタホルダもカッタ軸に対して固定されているので、複数枚のカッタ刃からなる面とダイスの表面の平行度が不十分であったり、これらの面の平面度が不十分であると、一部のカッタ刃がダイスから浮いたり、一部のカッタ刃がダイスに過大な接触面圧で当接することもあり得る。
【0010】
本発明は、上記したような問題点を解決したペレットの製造方法およびペレット製造装置を提供することを目的としており、具体的には、ダイスの表面の平面度が不十分であっても、あるいはダイスの表面とカッタ軸の垂直度が不十分であっても、カッタ刃を適切にダイスの表面に当接させることができ、またカッタ刃の回転速度の高低に関係なく、ダイスとカッタ刃の接触面圧を適正な範囲に維持することができるペレットの製造方法およびペレットの製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、ペレット製造装置のカッタ装置において、カッタホルダにカッタ刃を個々に揺動自在に取り付け、ダイスの表面に対してそれぞれのカッタ刃が独立して当接するようにする。また、カッタ軸を回転駆動してペレットを製造するとき、回転数に応じてカッタ軸に軸方向の力を付与して、ダイスとカッタ刃の接触面圧が適正な範囲になるように調整する。
【0012】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、ダイスからストランド状に水中あるいは温水中に押し出される溶融樹脂を所定大きさに切断してペレットを製造するとき、所定速度で回転駆動されるカッタ軸と、該カッタ軸の先端部に着脱自在に取り付けられているカッタホルダとからなり、前記カッタホルダに複数枚のカッタ刃が個々に、前記ダイス側に面した前記カッタホルダの底面に平行で放射状に半径外方に延びた第1の軸心に対して揺動的に回動可能に、且つ前記第1の軸心に垂直な第2の軸心に対しても揺動的に回動可能に取り付けられているカッタ装置を使用し、このとき前記カッタ軸には該カッタ軸の回転速度に応じた所定の軸方向の力を付与するように構成される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ダイスからストランド状に水中あるいは温水中に押し出される溶融樹脂を所定大きさに切断するカッタ装置を備えたペレット製造装置において、前記カッタ装置は、所定速度で回転駆動されるカッタ軸と、前記カッタ軸の先端部に着脱自在に取り付けられているカッタホルダと、前記カッタホルダの外周部に放射状に取り付けられている複数本のカッタアームと、これらのカッタアームのそれぞれに取り付けられている複数枚のカッタ刃と、前記カッタ軸に軸方向の力を付与する押力調整機構とからなり、前記カッタアームは前記ダイス側に面した前記カッタホルダの底面に平行で放射状に半径外方に揺動的に回動可能に所定量だけ延び、前記カッタ刃は前記カッタアームに対して垂直の軸心の周りに揺動的に回動可能であり、それによって前記複数個のカッタ刃は前記ダイスの表面の形状に追随して当接し、前記押力調整機構は、前記カッタ軸に、該カッタ軸の回転速度に応じた所定の軸方向の力を付与するように構成される。請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のペレット製造装置において、前記カッタアームの揺動的な回動角の範囲が制限されるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によると、複数枚のカッタ刃が個々に、カッタホルダの底面に平行で放射状に半径外方に延びた第1の軸心に対して揺動的に回動可能に、且つ前記第1の軸心に垂直な第2の軸心に対しても揺動的に回動可能に取り付けられているので、各カッタ刃は独立してダイスの表面の形状に追随して当接する。したがって、ダイスの表面の平面度が不十分であっても、ダイスとカッタ刃との間にクリアランスは生じない。これにより、形状的に品質の高いペレットを製造することができる。また、カッタ軸には該カッタ軸の回転速度に応じた所定の軸方向の力を付与するので、ダイスとカッタ刃の接触面圧が過小になることも過大になることもない。従って、カッタ刃は適切に研磨されると共に、早期に摩耗することもない。また、他の発明によると、カッタアームの揺動的な回動角の範囲が制限されているので、カッタ軸に軸方向の力を適切に付与して、ダイスとカッタ刃の接触面圧を適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るカッタ装置を模式的に示す図で、その(ア)はダイス側から見たカッタホルダとカッタ刃の側面図、その(イ)はカッタホルダとカッタ刃の断面図である。
【図2】本実施の形態に係るカッタ装置を構成しているカッタ刃とカッタアームを模式的に示す図で、その(ア)はカッタ刃の正面図、その(イ)はカッタ刃の側面図、その(ウ)はカッタアームの正面図、その(エ)はカッタアームの側面図、その(オ)、(カ)は(ウ)においてB−B、A−Aでそれぞれ切断した断面図、その(キ)は組立てられたカッタ刃とカッタアームの正面図である。
【図3】本実施の形態に係るペレット製造装置を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るペレット製造装置において、カッタ軸の回転数に対するダイスとカッタ刃の接触面圧等の関係を示すグラフであり、その(ア)はカッタ軸の回転速度とカッタ軸に作用する推進力との関係を、その(イ)は押力調整機構によってカッタ軸に作用させる調整圧力との関係を、その(ウ)はダイスとカッタ刃の接触面圧との関係を、それぞれを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るペレット製造装置1も、図3に示されているように外形的には、従来周知のペレット製造装置と略同様に構成されている。すなわち、溶融樹脂を押し出す押出機と、押出機の先端に設けられているダイス2と、カッタ刃4、4、…が取り付けられているカッタ装置5とから構成されている。押出機は図3に示されていない。カッタ装置5は、図示されない駆動機構によって回転駆動されるカッタ軸7、このカッタ軸7の前方の端部に着脱自在に取り付けられているカッタホルダ8、カッタホルダ8に設けられている複数枚のカッタ刃4、4、…、カッタ軸7に軸方向の力を作用させてカッタ刃4、4、…がダイス2に当接する圧力すなわち接触面圧を調整する押力調整機構9等から構成されている。押力調整機構9については、後で詳しく説明する。
【0017】
カッタホルダ8の取付部8aの外周面には、本実施の形態では8個の取付穴13、13、…が円周方向に等間隔に明けられている。これらの取付穴13、13、…は、カッタホルダ8の底面8bに平行で、半径内方に向かう所定深さの取付穴である。これらの穴13、13、…の内周面には雌ネジが形成され、カッタアーム11の一方の端部がネジ込まれるようになっている。また、カッタホルダ8の前面あるいは底面8bには、後述する固定板の取り付け用の複数個の雌ネジが形成されている。
【0018】
カッタホルダ8の底面8bに取り付けられる固定板32は、図1の(イ)に示されているように、全体として円盤状を呈し、その中心部には取付ボルト35の挿通用の孔が、また中心部から離れた所定の位置には取付ネジ33、33、…用の複数個の透孔が明けられている。このような透孔が明けられている固定板32の円周部は、カッタホルダ8側に曲げらた係止部32Sが形成されている。この係止部32Sは、図1の(イ)に示されているように組み立てられたとき、カッタホルダ8の外周部に位置し、その先端部は後述するカッタアームの係止面に所定の遊びをもって当接するようになっている。
【0019】
本実施の形態においては、カッタ刃4、4、…はカッタホルダ8に、それぞれのカッタアームを介して取り付けられている。カッタホルダ8、カッタ刃4、4、…等をダイス側から見た側面図あるいは底面図が図1の(ア)に、これらを断面で示す断面図が図1の(イ)にそれぞれ示されている。そして、図2にはカッタ刃4とカッタアーム11が示されている。これらの図によってカッタ刃4とカッタアーム11を詳しく説明する。
【0020】
カッタ刃4は、図2の(ア)、(イ)に示されているように、切刃14が形成されている刃部15と、断面形状が円形の軸部17とから構成されている。軸部17の先端部に、刃部15の中央が一体的に取り付けられている。換言すると、カッタ刃4のみね18の中央に、軸部17がみね18に対して垂直になるように接続されている。このように構成されているカッタ刃4は、その軸部17によって後述するカッタアーム11に取り付けられるようになっている。軸部17の頭部近傍の外周面には、溝19が形成されており、この溝19にスナップリング30が嵌められるようになっている。
【0021】
カッタアーム11は、図2の(ウ)の正面図と、(エ)の側面図とに示されているように、概略的には断面が円形の棒状あるいは円柱状を呈している。円柱状を呈しているので、屈曲した部材に比較して機械加工が容易になっている。カッタアーム11の一方の端部21から中央部にかけては、カッタホルダ8の取付穴13に挿入される挿入部22になっいる。より詳しくは、挿入部22の外周部には雄ネジが形成され、この雄ネジが取付穴13の内周面に形成されている雌ネジに緩くネジ込まれるようになっている。このように緩くねじ込まれるので、カッタアーム11は取付穴13の中で軸回転することができる。カッタアーム11の中央部寄りには、図2の(カ)の断面図に示されているように、外周面の一部が平面状に切り落とされた形で係止面24が形成されている。この係止面24は、図2の(ウ)に示されているように軸方向には所定の長さを有する。カッタホルダ8の取付穴13にカッタアーム11を挿入あるはネジ込み、後で説明するようにカッタホルダ8に固定板32を取り付けると、取付板32に形成されている係止部32Sによって、この係止面24が押さえられる。これにより、カッタアーム11の回転は規制され、取付穴13内に止められる。また、係止面24が係止部32Sによって押さえられるので、カッタアーム11の軸方向に回転可能な回転角の範囲は、所定の範囲に制限されることになる。従って、このカッタアーム11に取り付けられるカッタ刃4は、ダイス2面に対して接する方向と離間する方向とに揺動することができるが、揺動できる範囲は制限されることになる。
【0022】
カッタアーム11の他方の端部26の近傍は軸方向に所定長さにわたって、外周面の一部が両側から平行に切り落とされ、面27’、27’からなる平板部27が形成されている。この平板部27に、図2の(オ)に示されているように、垂直に貫通孔28が明けられている。この貫通孔28にカッタ刃4の軸部17が挿入される。カッタアーム11とカッタ刃4は、カッタ刃4の軸部17を貫通孔28に挿入して、図2の(キ)に示されているように、軸部17に形成されている溝19にスナップリング30を嵌めることにより組み立てられる。貫通孔28の内径は、カッタ刃4の軸部17の外径よりもわずかに大きい。これにより、軸部17は軸方向に回動できる。したがって、カッタ刃4はカッタアーム11に対して垂直方向に自由に回転することができる。ところで、カッタアーム11の係止面24は、平板部27の面27’、27’に対して所定の角度傾いているので、カッタ刃4が取り付けられているカッタアーム11がカッタホルダ8に取り付けられると、カッタ刃4はカッタホルダ8の底面に対して所定の角度で傾斜することになる。つまり、カッタ刃4は所定の角度でダイスに当接することになる。
【0023】
次に、カッタ刃4が取り付けられたカッタアーム11をカッタホルダ8に取り付ける組立方法を説明する。カッタアーム11、11、…を、図1の(ア)、(イ)に示されているように、カッタホルダ8の取付穴13、13、…に所定深さまでネジ込む。このとき、カッタアーム11、11、…の係止面24、24、…が、カッタホルダ8の底面8b側に向く位置で止める。カッタホルダ8の底面8bに固定板32をあてがい、取付ボルト35をカッタ軸7の先端部の雌ネジにネジ込む。また、取付ネジ33、33、…をカッタホルダ8にネジ込む。これにより、組立が終わる。固定板32の係止部32Sがカッタアーム11、11、…の係止面24、24、…を押さえる。したがって、カッタアーム11、11、…は、回転が規制され取付穴13、13、…から抜けることはない。また、係止段32Sによって押さえられるので、取付穴13、13、…内におけるカッタアーム11、11、…の軸方向の回転Y1の回動角の範囲は制限されることになる。より詳しく説明すると、カッタアーム11、11、…の軸方向の回転は、係止部32Sが係止面24、24、…と離間している所定の回動範囲内においては抵抗無く回転することができるが、固定板32はわずかに弾性変形するので、その回動範囲を超えても弾性変形に抗してわずかに回動することができる。
【0024】
図3によって、カッタ軸7に軸方向の力を付与する押力調整機構9について説明する。押力調整機構9は、カッタ軸7の支持機構と、この支持機構に圧縮空気あるいは圧油を給排する流体給排機構とから構成されている。最初に支持機構から説明する。本実施の形態に係るカッタ装置5においては、支持機構はカッタ軸7を取り囲んでいるスリーブ36と、このスリーブ36を同様に取り囲んでいるハウジング39とからなっている。カッタ軸7には所定長さの大径部7aが形成されている。カッタ軸7はこの大径部7aの端部の前後の2箇所において、前記スリーブの軸受部により軸支されいる。大径部7aの前後の端部は、スリーブ36の軸受部に接しているので、カッタ軸7はスリーブ36に対して回転は自在であるが、スリーブ36により軸方向への移動は規制されている。スリーブ36の後端部寄りの外周部には、所定の幅の拡径部が形成されいる。この拡径部は、後で説明するように押力調整機構9のピストン部37になっている。
【0025】
ハウジング39は、スリーブ36が軸方向に移動可能に液密的に挿入される円筒部と、スリーブ36のピストン部37が同様に軸方向に移動可能に液密的に位置するシリンダ部41とからなっている。シリンダ部41の端部は、蓋体で封鎖されるようになっている。シリンダ部41は、ピストン部37によってダイス2側に位置する前方の第2のシリンダ室45と、後方の第1のシリンダ室44とに区画されている。第2のシリンダ室45には圧縮された空気が、第1のシリンダ室44には圧油が、それぞれ給排されるようになっている。第1、2のシリンダ室44、45に油圧あるいは空気圧を給排すると、ピストン・シリンダ部42が作動して、ハウジング39は固定されているので、スリーブ36したがってカッタ軸7が軸方向の駆動され、あるいはカッタ軸7に所定の軸方向の力が付与される。前記シリンダ部41とピストン部37が共働して、ピストン・シリンダ部42を構成している。
【0026】
流体給排機構は、エア源46、エアフィルタ48、第1、2の減圧弁49、50、第1、2の切替弁51、52等から構成されている。第1の切替弁51は、XとYの2ポジションを採ることができ、Xポジションを採ると圧縮空気がハイドロコンバータ54に供給されるようになっている。ハイドロコンバータ54は、空気圧を油圧に変換する機器であり、ハイドロコンバータ54の出口ポートと第1のシリンダ室44は給排管56によって接続されている。第1の切替弁51がYポジションを採ると、エア源46から供給される圧縮空気は遮断される。あるいは、第1のシリンダ室44から圧油が排出される。これにより、第1のシリンダ室44の油圧は低下する。一方、第2の切替弁52もX、Yの2ポジションを採ることができ、Yポジションを採るとエア源46からの圧縮空気は遮断されると共に、第2のシリンダ室45は大気圧に解放されることになる。第2の切替弁52をXポジションにすると、圧縮空気が給排管57を経由して直接第2のシリンダ室45に供給されることになる。給排管56、57には、それぞれ圧力計58、59が取り付けられ、空気圧あるいは油圧が適正な範囲に維持されているか否かが監視されるようになっている。
【0027】
本実施の形態によると、図には示されていないがカッタ軸7には回転速度計が設けられ、この回転速度計で計測されるカッタ軸7の回転速度は、制御装置に入力され、そしてカッタ軸7の回転速度に応じて減圧弁49、50、切替弁51、52等が次に述べるように制御されるようになっている。
【0028】
本実施の形態に係るペレット製造装置1の作用を説明する。押力調整機構9における、流体給排機構の第1の切替弁51をXポジションに、第2の切替弁52をYポジションにしてカッタ軸7にダイス2方向の所定の軸力を作用させる。所定の回転駆動機構によってカッタ軸7を回転駆動する。そうすると、カッタ刃4、4、…はダイス2に当接して回転する。押出機で樹脂材料を溶融してダイス2からストランド状に押し出すと、ダイス2は水中あるいは温水中に没しているので、溶融樹脂は水中で冷却される。冷却された樹脂を回転するカッタ刃4、4、…によって切断し、ペレットを得る。このとき、カッタ刃4、4、…の刃部15の、いわゆるすくい面には水流が当たるので、カッタ刃4、4、…にはダイス2の方向に推進力が作用する。そうすると、カッタ刃4、4、…は揺動自在にカッタホルダ8に取り付けられているので、カッタ刃4、4、…はダイス2の表面の形状に追随するようにダイス2に当接することになる。また、押力調整機構9によって適切な軸方向の力がカッタ軸7に作用しているので、ダイス2とカッタ刃4、4、…の接触面圧は適正な範囲に維持される。従って、ダイス2とカッタ刃4、4、…の間にはクリアランスは生じることがなく、良好に樹脂を切断することができる。
【0029】
カッタ軸7ので回転速度が大きくなると、あるいは大きいときは、カッタ刃4、4、…のすくい面に水流が高速で当たり、カッタ刃4、4、…に作用するダイス2の方向の推進力f2が増大するが、回転速度計により計測される回転速度が制御装置に入力され、制御装置からの信号により第2の切替弁52はXポジションに切り替わり、第2の減圧弁で調整された圧縮空気が第2のシリンダ室45に供給される。そうすると、カッタ軸7にはカッタ刃4、4、…をダイス2から離間しようとする軸方向の力f3が作用する。ダイス2とカッタ刃4、4、…の接触面圧f1は、f1=f2−f3で与えられるので、力f3の大きさが調整され、接触面圧f1は適切な圧力に維持される。カッタ軸7がさらに高速になると、カッタ刃4、4、…に作用する推進力f2がさらに増大するが、第1の切替弁51はYポジションに切り替わり、第1のシリンダ室44内の圧油は排出される。そうすると、カッタ軸7に作用する軸方向の力f3が大きくなるので、ダイス2とカッタ刃4、4、…の接触面圧f1は適正な範囲に維持される。
【0030】
図4の(ア)のグラフに示されているように、カッタ軸7の回転速度が大きくなると、カッタ刃4、4、…に作用する推進力f2は増加する。そこで、図4の(イ)に示されているように、押力調整機構9によって、カッタ軸7の回転速度に応じてカッタ軸7に作用する軸力f3が変化する。そうすると、図4の(ウ)に示されているように、ダイス2とカッタ刃4、4、…の接触面圧f1は、カッタ軸7の回転速度に関係なく、一定に維持される。
【0031】
本発明の実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、押力調整機構9については、作動流体を圧油のみから構成することも、圧縮空気のみから構成することも可能であるし、特許文献6に記載の機構を適用することもできる。また、カッタホルダとカッタ刃についても変形が可能であり、特許文献5に記載のカッタホルダとカッタ刃を適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ペレット製造装置 2 ダイス
4 カッタ刃 5 カッタ装置
7 カッタ軸 8 カッタホルダ
8a 取付部 8b 底面
9 押力調整機構 11 カッタアーム
24 係止面 32 固定板
32S 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスからストランド状に水中あるいは温水中に押し出される溶融樹脂を所定大きさに切断してペレットを製造するとき、
所定速度で回転駆動されるカッタ軸と、該カッタ軸の先端部に着脱自在に取り付けられているカッタホルダとからなり、前記カッタホルダに複数枚のカッタ刃が個々に、前記ダイス側に面した前記カッタホルダの底面に平行で放射状に半径外方に延びた第1の軸心に対して揺動的に回動可能に、且つ前記第1の軸心に垂直な第2の軸心に対しても揺動的に回動可能に取り付けられているカッタ装置を使用し、このとき前記カッタ軸には該カッタ軸の回転速度に応じた所定の軸方向の力を付与することを特徴とするペレット製造方法。
【請求項2】
ダイスからストランド状に水中あるいは温水中に押し出される溶融樹脂を所定大きさに切断するカッタ装置を備えたペレット製造装置において、
前記カッタ装置は、所定速度で回転駆動されるカッタ軸と、前記カッタ軸の先端部に着脱自在に取り付けられているカッタホルダと、前記カッタホルダの外周部に放射状に取り付けられている複数本のカッタアームと、これらのカッタアームのそれぞれに取り付けられている複数枚のカッタ刃と、前記カッタ軸に軸方向の力を付与する押力調整機構とからなり、
前記カッタアームは前記ダイス側に面した前記カッタホルダの底面に平行で放射状に半径外方に揺動的に回動可能に所定量だけ延び、前記カッタ刃は前記カッタアームに対して垂直の軸心の周りに揺動的に回動可能であり、それによって前記複数個のカッタ刃は前記ダイスの表面の形状に追随して当接し、
前記押力調整機構は、前記カッタ軸に、該カッタ軸の回転速度に応じた所定の軸方向の力を付与するようになっていることを特徴とするペレット製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載のペレット製造装置において、前記カッタアームの揺動的な回動角の範囲が制限されているペレット製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−66387(P2012−66387A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210407(P2010−210407)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】