説明

ペレット製造装置及びペレット製造方法

【課題】 既存の設備に大きな変更を加えることなく、最小限の変更で生産量を上昇させられるペレット製造装置及びペレット製造方法を提供すること。
【解決手段】 バレル部2と、このバレル部2の内側に設けられた装着空間3内に配置された2本のスクリュー4と、これら2本のスクリュー4の回転によって原料供給部10から先端側に搬送される原料を先端側から排出するダイ5とを備えたものであって、前記装着空間3において前記スクリュー4の先端側が位置する排出端部空間9Aは、前記スクリュー4の基端側4Aが位置する装着空間3よりも大きな内径を備えていると共に、この排出端部空間9Aに位置する先端部スクリュー8の外径は、基端側における基端部スクリュー7の外径よりも大きく形成されていることを特徴とするペレット製造装置1によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット製造装置及びペレット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の水産資源の減少および食品の安全性の観点から、魚類養殖については、きれいな漁場環境で健康的に育てられた魚を供給することが、より期待されている。この要求に応えるため、飼料製造メーカは、餌の改良・コストダウンに取り組んでいる。一方、養殖水産業の価格が低迷していることから、養魚用飼料については、コストダウンの要求が強い。
水産養殖用のペレット飼料を作製するために用いられるペレット製造装置としては、多品種で高生産能力を備えたものが求められている。この種の製造装置として、2軸押出機が知られている。2軸押出機は、多品種生産に対応できるが、生産量に劣る点があるため、更なる生産能力の向上が課題となっている。
押出機の生産性を向上させるために、いくつかの開発が行われている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−61724号公報
【特許文献2】特開2000−218316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記開発では多品種生産における生産能力の向上には、十分ではなく、更なる工夫が求められていた。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存の設備に大きな変更を加えることなく、最小限の変更で生産量を上昇させられるペレット製造装置及びペレット製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1の発明に係るペレット製造装置は、バレル部と、このバレル部の内側に設けられた装着空間内に配置された複数のスクリューと、これら複数のスクリューの回転によって前記スクリューの原料供給部から先端側に搬送される原料を先端側から排出するダイとを備えたものであって、前記装着空間において前記スクリューの先端側が位置する排出端部空間は、前記スクリューの基端側が位置する装着空間よりも大きな内径を備えていると共に、この排出端部空間に位置する先端部スクリューの外径は、基端側における基端部スクリューの外径よりも大きく形成されていることを特徴とする。
前記先端部スクリューは、1ピッチ〜3ピッチの範囲であることが好ましい。
前記先端部スクリューの外径/基端部スクリューの外径は、1.05〜1.20の範囲であることが好ましい。
【0006】
また、前記先端部スクリューのピッチと前記基端部スクリューのピッチの比は、0.8〜1.2の範囲とされていることが好ましい。
また、第2の発明に係るペレット製造方法は、バレル部の内側に設けられた装着空間内に配置された複数のスクリューを回転させながら、それらスクリュー基端側から先端側に原料を搬送し、前記スクリューの先端側に設けられたダイの開孔から前記原料を排出させる方法において、前記装着空間における前記スクリューの先端側を基端側よりも大きくし、かつ前記スクリューの先端部分の外径を基端部分の外径よりも大きくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、既存の設備に大きな変更を加えることなく、最小限の変更で生産性を向上させられるペレット製造装置及びペレット製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるペレット製造装置の側断面図である。
【図2】ペレット製造装置の正面図である。
【図3】ダイの開孔を拡大して示す図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】バレル部において、スクリューの先端側を示す平断面図である。
【図6】2本のスクリューにおいて、先端部分と基端部分との重なり合い状態を分かりやすく示す断面図である。(A)は先端部分を、(B)は基端部分を示す。
【図7】本実施形態のペレット製造装置において、スクリューの先端部分における重なり合いを説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0010】
図1には、本実施形態におけるペレット製造装置1の側断面図を示した。ペレット製造装置1には、バレル部2と、このバレル部2の内部において長手方向にほぼ同径状に開放された装着空間3と、装着空間3に沿って配置された2本のスクリュー4が設けられている。スクリュー4の基端側4Aには、図示しない駆動部材(例えばモータ)が設けられており、両スクリュー4を軸芯回りに回転させるようになっている。両スクリュー4は、図5に示すように、互いに並行に配置されており、装着空間3の内部において、互いの羽根部分(凸部分)が相手側の溝部分(凹部分)に嵌り込むようにして設置されている。スクリュー4の基端側4Aにおいて、基端ブロック2Dに設けられた原料供給部10から投入された原料(魚類用飼料の基)は、両スクリュー4の回転によって撹拌・混合・粉砕されながら、両スクリュー4の隙間と、スクリュー4とバレル部2の内壁面との空間を抜け、スクリュー4の先端側に移動するようになっている。
【0011】
また、バレル部2において装着空間3の先端側には、ダイ5が設けられている。ダイ5には、スクリュー4によって移動された原料を排出する開孔6が開放されている。バレル部2は、スクリュー4の基端側4Aに位置する基端ブロック2Dと、所定の長さ(例えば、50cm〜80cm)のブロック2Aから構成されており、このうちブロック2Aが適当な個数(図1においては、2個)だけ長手方向に連結されることで形成されている。基端ブロック2Dには、上方に向かって開口する原料供給部10が設けられている。また、スクリュー4の先端部分は、ブロック2B,2Cの二種類のブロックによって覆われている。本実施形態では、最先端ブロック2Cの後方に組み付けられる先端ブロック2Bのみが設計変更されており、他のブロック2A,2C,2Dについては、従来構造のものを採用している。
スクリュー4は、所定の長さ(例えば、20cm〜40cm)の基端部スクリュー7に分割されており、この基端部スクリュー7が適当な個数(図1においては、10個)だけ、軸心を一致させつつ長手方向に連結されることで形成されている。但し、スクリュー4の先端は、先端部スクリュー8として、ドリル部8Aを備えて形成されている。基端部スクリュー7と先端部スクリュー8のピッチとは、ほぼ同等とされている。また、先端部スクリュー8は羽根部分が伸ばされることで、その外径が、基端部スクリュー7の外径よりも大きく構成されている。更に、先端部スクリュー8の溝部分は、基端部スクリュー7の溝部分よりも深く設定されている。
装着空間3において、先端部スクリュー8が位置する排出端部空間9の内径は、先端部スクリュー8の外径に合わせて形成されており、ブロック2Aに設けられた装着空間3の内径よりも一回り大きくなっている。また、先端部スクリュー8に設けられるスクリュー部分のピッチは約2ピッチ分とされており、その先端にドリル部8Aが設けられている。
【0012】
排出端部空間9の先端側における内壁面は、図5に示すように、2本の先端部スクリュー8の形状に合わせて形成されており、ドリル部8Aから僅かな空間を隔てて傾斜面9Aとされている。また、ダイ5の開孔6は、図2及び図3に示すように、ダイ5の中心に対して同心円を描くようにして対称的に配置されている。なお、開孔6の形状は、その同心円に沿う形状(例えば、円形状、三角形状、四角形状など)とされている。
図6には、2本のスクリュー4の重なり合い状態を示す平断面図を示した。先端部(A)および基端部(B)のいずれにおいても、両スクリュー4はスクリューの外径部分と溝部分とが噛み合うようにして配置されている。スクリュー4において、先端部スクリュー8は、基端部スクリュー7よりも外径方向に大きく構成され、かつ溝部分が深くなっている。先端部スクリュー8の外縁部分は、基端部スクリュー7の外縁部分よりも薄く(細く)なっている。このため、先端部スクリュー8の重なり代Lは、基端部スクリュー7の重なり代Mよりも大きくなっている(L>M)。
【0013】
図7には、本実施形態において、ペレット製造装置1の正面図を模式的に示した。図中の最先端ブロック2Cの内側に示す中央の円はダイ5を示し、左右一対の実線円は、先端部スクリュー8が描く円を示している。また、先端スクリュー8が描く円の内側の点線円は、基端部スクリュー7が描く円を示している。但し、比較を行いやすくするために、先端部スクリュー8が描く円については、本来は隠れ線で示すところを実線で示している。
ダイ5の中央には、円形状の開孔形成領域S(複数の開孔6が設けられる領域)が設けられており、その領域Sを左右から挟むようにして、先端部スクリュー8が配置されている。本実施形態の先端部スクリュー8の外径は、基端部スクリュー7の外径よりも大きくなっているので、両先端部スクリュー8の重なり合い領域T(右上がり斜線で示す領域)は、基端部スクリュー7の重なり合い領域U(右上がり斜線と右下がり斜線が重なる領域)よりも大きくなっている。
【0014】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果を説明する。
両スクリュー4を所定の方向に回転させながら、図示しない原料をバレル部2の基端側から装着空間3に投入する。スクリュー4の回転によって、原料は両スクリュー4の隙間、及びスクリュー4とバレル部2の内壁面との間で、撹拌・混合・粉砕されつつ均一に練られながら基端側4Aから先端側に向かって搬送される。先端部スクリュー8に至った原料は、ダイ5に向かって押圧されて、開孔6から押し出されつつ、所定の形状とされる。このとき、先端部スクリュー8の外径は、基端部スクリュー7の外径よりも大きく形成されているので、同じスピードで回転しても、大量の原料を押圧できると共に、原料を押圧する力(圧力)が大きくなる。このため、開孔6の個数を多く設定できると共に、開孔6への原料の詰まりが少なくなるため、従来よりも多くの原料を処理することができることとなり生産性が向上する。
【0015】
また、両先端部スクリュー8の重なり合い領域Tが大きくなるので、特にダイ5の中央上下端部における開孔6の原料詰まりを減少させられるので、多くの原料を処理でき、生産性が向上する。
従来のペレット製造装置において、ブロック2A,2C,2Dと基端部スクリュー7は、そのままの構成を流用可能であり、先端ブロック2Bと先端部スクリュー8の交換のみによって、本実施形態のペレット製造蔵置1を構成できるので、既存の設備に大きな変更を加えることなく、最小限の変更で済む。
<変形例>
なお、本実施形態においては、下記のように変形して実施することもできる。
1.本実施形態では、スクリュー4は2本であるが、本発明においては、スクリューは3本以上であっても良い。
2.本実施形態では、水産養殖用のペレット飼料を製造しているが、本発明によれば、その他のペレットを製造するためにも用いられる。
【符号の説明】
【0016】
1…ペレット製造装置
2…バレル部
2B…先端ブロック
3…装着空間
4…スクリュー
4A…基端側
5…ダイ
6…開孔
7…基端部スクリュー
8…先端部スクリュー
9…排出端部空間
10…原料供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル部と、このバレル部の内側に設けられた装着空間内に配置された複数のスクリューと、これら複数のスクリューの回転によって前記スクリューの原料供給部から先端側に搬送される原料を先端側から排出するダイとを備えたものであって、
前記装着空間において前記スクリューの先端側が位置する排出端部空間は、前記スクリューの基端側が位置する装着空間よりも大きな内径を備えていると共に、この排出端部空間に位置する先端部スクリューの外径は、基端側における基端部スクリューの外径よりも大きく形成されていることを特徴とするペレット製造装置。
【請求項2】
前記先端部スクリューは、1ピッチ〜3ピッチの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のペレット製造装置。
【請求項3】
前記先端部スクリューの外径/基端部スクリューの外径は、1.05〜1.20の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のペレット製造装置。
【請求項4】
前記先端部スクリューのピッチと前記基端部スクリューのピッチの比は、0.8〜1.2の範囲とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のペレット製造装置。
【請求項5】
バレル部の内側に設けられた装着空間内に配置された複数のスクリューを回転させながら、それらスクリュー基端側から先端側に原料を搬送し、前記スクリューの先端側に設けられたダイの開孔から前記原料を排出させる方法において、前記装着空間における前記スクリューの先端側を基端側よりも大きくし、かつ前記スクリューの先端部分の外径を基端部分の外径よりも大きくしたことを特徴とするペレット製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183315(P2011−183315A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52130(P2010−52130)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000155090)株式会社スエヒロイー・ピー・エム (2)
【Fターム(参考)】