説明

ホウ素拡散用塗布液

【課題】ホウ素を拡散させた半導体デバイスの抵抗値にバラツキを発生させず、高濃度にホウ素を拡散させることができ、さらにはナトリウムによる半導体デバイスの汚染を回避することができる、比較的安価なホウ素拡散用塗布液を提供する。
【解決手段】(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水を含有することを特徴とするホウ素拡散用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホウ素拡散用塗布液、さらに詳しくはシリコン半導体の表面にホウ素を拡散させるための新規なホウ素拡散用塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)、トランジスタ、ダイオード等の製造にはホウ素が拡散したP型領域を有するシリコン半導体デバイスが使用されている。このようなシリコン半導体デバイスにホウ素を拡散させる方法として、熱分解法、対向NB法、ドーパントホスト法、塗布法等が検討され、使用されてきたが、これらのホウ素拡散方法の中では、塗布法が、高価な装置を必要としないで均一にホウ素を拡散させることができ、量産性に優れているところから好適に使用されている。塗布法においては、通常ホウ素を含有する塗布液をスピンコーター等を用いてウェーハ表面に塗布することによりホウ素を半導体デバイス表面に拡散させる。
【0003】
また、近年では半導体デバイスの製造コスト削減のために、ウェーハのサイズが従来の3インチ以下から4インチ以上へと大型に移行しつつある。この場合、3インチ以下のウェーハではスピンコート法による塗布により膜厚が均一な塗膜を形成することができるが、4インチ以上の大型ウェーハではスピンコート法では膜厚が不均一となるという欠点が生じる。そこで、新たな塗布方法としてスクリーン印刷法が検討されている。従来の塗布液は含有ホウ素の影響で拡散後のデバイスの抵抗値のバラツキや形成ジャンクションの乱れが発生したり、高濃度のホウ素の拡散が困難であったりした。この欠点を改良するため、ホウ素拡散用塗布液の溶剤としてプロピレングリコール系溶剤を用いるとともに非イオン界面活性剤をさらに添加した塗布液(特許文献1 請求項1または請求項2参照)が提案された。
【0004】
また、従来の塗布液ではスクリーン印刷に用いた場合、粘度が著しく低いため印刷面が安定せず、かつ速乾性が高く連続印刷が不可能であり、均一な拡散膜を形成させることが困難であるという問題があった。これらを改良するため、塗布液の粘度を特定範囲に調節した塗布液(特許文献2 請求項1参照)が提案されている。
【0005】
ところがこれらの塗布液では、塗布液の組成物である高分子としてポリビニルアルコール系樹脂を使用した場合、ポリビニルアルコール系樹脂の生産過程で使用されるケン化触媒であるアルカリ金属由来の金属不純物、特にナトリウムが半導体デバイスの歩留まり低下を引き起こし、半導体デバイスの生産性および性能を著しく損ねるという問題点があった。現在、工業的に生産されているポリビニルアルコール系樹脂は、原料である酢酸ビニルモノマーをメタノール等を重合溶媒として用いて重合し、次いでケン化触媒にアルカリ金属、主に水酸化ナトリウムを用いてケン化反応を行いポリビニルアルコールにした後、中和剤として酢酸等の中和剤を用いて中和することにより製造される。このため、不純物として酢酸ナトリウム等のアルカリ金属塩を0.1〜2質量%程度含有している。これら不純物を取り除くには通常、製造工程中でメタノール等の洗浄液を用いて洗浄を行うが、洗浄後もアルカリ金属塩の量を0.1質量%以下にすることは非常に困難であり、生産コストもかかる。さらにアルカリ金属塩を取り除くにはポリビニルアルコールを水等の溶媒に溶解させた後、イオン交換樹脂層を通過させる方法も考えられるが生産速度が遅く、イオン交換樹脂層を通過させる関係上水溶液濃度も高めることができず、塗布液に用いる場合には濃縮が必要であったりするため高コストの要因にもなっていた。また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の高分子を用いた場合には、ポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合と比較して、塗布液の皮膜形成性が悪く、その結果、半導体デバイスの抵抗値が均一になりにくい等の弊害が生じる場合がある。
【特許文献1】特開平09−181009号公報
【特許文献2】特開2007−035719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、上記現状に鑑み、ホウ素を拡散させた半導体デバイスの抵抗値にバラツキを発生させず、高濃度にホウ素を拡散させることができ、さらにはナトリウムによる半導体デバイスの汚染を回避することができる、比較的安価なホウ素拡散用塗布液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記の課題を解決すべく研究を重ね、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水を含有するホウ素拡散用塗布液を用いると、シリコン半導体デバイスの表面に高濃度のホウ素を均一に拡散させることができるうえに、塗布液中のナトリウム含量が少ないことからホウ素拡散後のウェーハ内およびウェーハ間の表面抵抗値のばらつきを小さくすることができること、つまりホウ素が拡散した半導体デバイスの抵抗値を均一とすることができることを見出し、これにより半導体デバイスを工業的に効率よく製造することができることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下のホウ素拡散用塗布液を提供する。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[14]に関する。
[1](a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水を含有することを特徴とするホウ素拡散用塗布液。
[2](a)ホウ素化合物が、ホウ酸メラミン、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、多価アルコール−ホウ素化合物錯体化合物、および塩化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]記載のホウ素拡散用塗布液。
[3](b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂が、脂肪族ビニルエステル系重合体を、ナトリウムを含有しないケン化触媒を使用してケン化することにより得られるものであることを特徴とする上記[1]または[2]記載のホウ素拡散用塗布液。
[4]ナトリウムを含有しないケン化触媒が、ホスファゼン化合物であることを特徴とする上記[3]記載のホウ素拡散用塗布液。
[5]ナトリウムを含有しないケン化触媒が、下記一般式(1)
OH (1)
(上記式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜16のアルキル基、ベンジル基またはフェニル基である。)で表される水酸化4級アンモニウムであることを特徴とする上記[3]記載のホウ素拡散用塗布液。
[6]ナトリウムを含有しないケン化触媒が、グアニジン化合物またはアミジン化合物であることを特徴とする上記[3]記載のホウ素拡散用塗布液。
[7]ナトリウムを含有しないケン化触媒が、酸ケン化触媒であることを特徴とする上記[3]記載のホウ素拡散用塗布液。
[8]酸ケン化触媒が、ギ酸、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、塩酸および硝酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする上記[7]記載のホウ素拡散用塗布液。
[9](b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂の重合度が150〜5500、ケン化度が50〜99.5mol%であることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
[10]さらに、(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
[11]さらに、(e)界面活性剤を含有することを特徴とする上記[1]〜[10]のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
[12]さらに、(f)無機充填材を含有することを特徴とする上記[1]〜[11]のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
[13](d)多価アルコール類およびその誘導体が、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする上記[10]記載のホウ素拡散用塗布液。
[14](f)無機充填材が、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、窒化ケイ素およびタルクからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする上記[12]記載のホウ素拡散用塗布液。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホウ素拡散用塗布液を用いることにより、ナトリウムの影響によるウェーハ内およびウェーハ間の表面抵抗値のばらつきが小さくなる。さらに、ホウ素拡散用塗布液に含まれるナトリウム分を工業的に有利な方法で低減させることができるため安価なホウ素拡散用塗布液を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(I)ホウ素拡散用塗布液
本発明のホウ素拡散用塗布液は、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水を含有するものである。
【0011】
(a)ホウ素化合物
本発明で使用される(a)ホウ素化合物としては水に溶解または分散するものであれば特に制限はないが、ホウ酸メラミン、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、多価アルコール−ホウ素化合物錯体化合物および塩化ホウ素が、人体に対する安全性の面で好ましい。中でも、多価アルコール−ホウ素化合物錯体化合物がより好ましい。これらのホウ素化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。多価アルコール−ホウ素化合物錯体化合物としては、例えば、特開昭63−37130号公報の請求項1記載の化合物が挙げられる。(a)ホウ素化合物の配合割合はホウ素拡散用塗布液の塗布方法や半導体デバイスに求められる抵抗値により決められるが、通常はホウ素拡散用塗布液中約0.5〜50質量%、好ましくは約1〜40質量%である。(a)ホウ素化合物の配合割合が上記範囲であると、ホウ素拡散用塗布液を半導体デバイスに塗布した場合にホウ素供給量が十分となり、所望する半導体デバイスの抵抗値を得ることができる。また、(a)ホウ素化合物の配合割合が上記範囲であると、ホウ素拡散用塗布液の安定性が良好である。さらに、半導体デバイスへのホウ素供給量が多すぎないため、半導体デバイスに求められる性能が損なわれない。
【0012】
(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂
本発明において用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、ナトリウム含有量が10ppm以下であればよいが、ナトリウム含有量が10ppm未満であることが好ましく、約5ppm以下であることがより好ましい。なお、「ポリビニルアルコール系樹脂のナトリウム含有量が10ppm以下である」とはポリビニルアルコール系樹脂中の質量規準のナトリウム含有量が0.001質量%以下であることを意味する。
【0013】
(b)成分のナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂は、JISK6726に従って測定した重合度が約150〜5500、ケン化度約50〜99.5モル%のものが好ましい。重合度が上記範囲であると、ホウ素拡散用塗布液の皮膜形成性が良好であり、乾燥時に塗膜のひび割れなどが発生せず均一な塗膜を得ることができる。また、ホウ素拡散用塗布液の粘度が高すぎないため良好にスピンコートすることができ、さらに、スクリーン印刷した場合にも皮膜を均一な厚さにすることができる。また、ケン化度が上記範囲であると、塗工時のホウ素拡散用塗布液の温度が30℃以上になっても樹脂が析出することがなく、ホウ素拡散用塗布液を10℃以下の低温で保管した場合であっても、該塗布液の流動性が損なわれないため好ましい。(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、より好ましくは約180〜5100であり、特に好ましくは約200〜5000であり、ケン化度は、より好ましくは約55〜98モル%であり、特に好ましくは約60〜90モル%である。
【0014】
(b)成分のナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂の配合割合はホウ素拡散用塗布液に求められる粘度により決定されるが、ホウ素拡散用塗布液中通常約1〜30質量%、好ましくは約1〜20質量%である。配合割合が上記範囲であると、皮膜形成性が良好であり、乾燥時に塗膜のひび割れなどが発生せず均一な塗膜を得ることができる。また、ホウ素拡散用塗布液の粘度が高すぎないためシリコンウェーハに良好にスピンコートすることができ、さらに、スクリーン印刷した場合にも皮膜を均一な厚さにすることができる。
【0015】
本発明の(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂の製造方法については、ナトリウム含有量が10ppm以下になる製法であれば良く、特に限定されないが工業的には、脂肪族ビニルエステル、主に酢酸ビニルをメタノール溶媒中で溶液重合し、得られた脂肪族ビニルエステル系重合体をアルカリケン化触媒または酸ケン化触媒によりケン化する方法が好ましい。
【0016】
脂肪族ビニルエステルを重合する際に、本発明の効果を損なわない範囲で前記脂肪族ビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体と脂肪族ビニルエステルとの共重合を行っても良い。脂肪族ビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類;ビニレンカーボネート類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノまたはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;ラウリルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、イソプロペニルアリルアルコール等のアリルアルコール類;アリルアセテート、ジメチルアリルアセテート、イソプロペニルアリルアセテート等のアセチル基含有単量体;スチレン等の芳香族系単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有単量体;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンブチルビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレン不飽和アミン;アセト酢酸、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン等が挙げられるがこれに限らない。中でも、オレフィン類、アミド類、ポリオキシアルキレンビニルエーテルが好ましく、中でも、エチレン、ジアセトンアクリルアミド、ポリオキシエチレンブチルビニルエーテルがより好ましい。また、脂肪族ビニルエステルと、脂肪族ビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体(変性モノマー)との共重合の割合は任意で良く、通常共重合樹脂中で該変性モノマーの割合が約0.1モル%〜10モル%の範囲で共重合されるのが一般的である。
【0017】
さらに、上記のようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂とアクリル酸、メタクリル酸等とをグラフト重合させて側鎖に官能基を付加した後変性ポリビニルアルコール系樹脂や、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを反応させる方法、ポリビニルアルコールとアセト酢酸エステルとを反応させエステル交換する方法等により得られるアセトアセチル化ポリビニルアルコール等の後変性ポリビニルアルコール系樹脂も、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂として用いられる。
【0018】
通常工業的に得られるポリビニルアルコール系樹脂中にはケン化反応時の副生成物である酢酸ナトリウムが不純物として0.1質量%以上含まれている。これらポリビニルアルコール系樹脂中のナトリウム含有量を減少させるには、(1)脂肪族ビニルエステル系重合体を酸またはアルカリケン化触媒でケン化してポリビニルアルコール系樹脂にした後、メタノール、エタノール等のアルコール類またはそれらアルコール類と水、酢酸メチル等の混合溶媒で洗浄する方法、(2)ポリビニルアルコール系樹脂を水等の溶媒に溶かしてポリビニルアルコール系樹脂溶液とした後、酸型イオン交換樹脂層を通過させてナトリウムイオンを除去する方法、(3)脂肪族ビニルエステル系重合体をケン化する際に使用するケン化触媒にナトリウムを含まないものを使用する方法が挙げられるが工業的には(3)の方法が好ましい。すなわち本発明においては、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂が、脂肪族ビニルエステル系重合体を、ナトリウムを含有しないケン化触媒を使用してケン化することにより得られるものであることが好ましい。(1)の方法はナトリウム含有量を十分に下げることが困難であり、洗浄液を大量に用いるため洗浄液の回収コストが高くなる。(2)の方法はナトリウム量は必要とされるレベルにまで下げることはできるがイオン交換樹脂層を通過させる関係上、水溶液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度を10質量%未満に抑える必要があり、生産性が悪い。さらには得られる樹脂溶液の濃度が低いため、ポリビニルアルコール系樹脂の本発明の塗布液への配合割合を多くしたい場合にはイオン交換後の溶液を濃縮することも必要になってくる。
【0019】
脂肪族ビニルエステル系重合体をケン化する際に使用されるケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコラート、水酸化テトラアルキルアンモニウム、シクロアミジン類(特開昭62−225504号公報参照)、グアニジン化合物(特開平8−12721号公報参照)、アミジン化合物(特開平8−27218号公報参照)、ホスファゼン化合物(特開2001−81130号公報参照)等のアルカリケン化触媒;塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸、α−またはβ−ナフタレンスルホン酸、3,4−ジメチルベンゼンスルホン酸等の酸ケン化触媒が挙げられるが、上記(3)の方法で脂肪族ビニルエステル系重合体をケン化する際に用いられるナトリウムを含有しないケン化触媒としては、アルカリケン化触媒ではホスファゼン化合物、下記一般式(1)
OH (1)
(式中R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜16のアルキル基、ベンジル基またはフェニル基である。)で表される水酸化4級アンモニウム、グアニジン化合物、またはアミジン化合物が好ましい。これらのアルカリケン化触媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書中、ケン化触媒が「ナトリウムを含有しない」とは、水酸化ナトリウム(NaOH)のように構成分子中にナトリウム(Na)原子を含まず、かつその組成物中にもナトリウム原子を含んでいないものである。ケン化触媒がその組成物中にナトリウム原子を含まないとは、該触媒に不純物等として含まれるナトリウムが約500ppm以下であることを意味する。このようなケン化触媒としては、不純物等として含まれるナトリウムが約100ppm以下のものが好ましく、約50ppm以下のものがより好ましく、実質的にナトリウムを含有しないものが最も好ましい。
【0020】
ホスファゼン化合物として、具体的には、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−ペルハロイド−1,3,2−ジアザホスホリン、tert−ブチルイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン、tert−ブチルイミノ−トリ(ピロリジノ)ホスホラン、1−エチル−2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)、1−tert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスファラニリデンアミノ]−2λ5,4λ5−カテナジ(ホスファゼン)が好ましい。
【0021】
上記一般式(1)で表される水酸化4級アンモニウムにおいて、炭素数1〜16のアルキル基は、分岐アルキル基であっても直鎖アルキル基であってもよい。また、ベンジル基、フェニル基は、メチル、エチル、プロピル等の置換基を1〜5個有していてもよい。一般式(1)で表される水酸化4級アンモニウムとして、具体的には水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラベンジルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム等が好ましい。
【0022】
グアニジン化合物として、具体的には1,1,3,3,−トリメチルグアニジン、1−シアノエチル−1,3,3−トリメチルグアニジン、1−ベンジル−1,3,3−トリメチルグアニジン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5が好ましい。
【0023】
アミジン化合物として、具体的には6−ジメチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジエチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジプロピルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7が好ましい。
【0024】
これらの触媒の中でも、ホスファゼン化合物、水酸化4級アンモニウムがより好ましく、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムが特に好ましい。
【0025】
ナトリウムを含有しないアルカリケン化触媒の使用量としては、用いる化合物の種類やケン化する際の溶媒組成や含水率にもよるが、メタノール溶媒中でケン化反応を行なう場合には、脂肪族ビニルエステル系重合体に対して、通常約0.5〜500ミリ等量とすることが好ましく、約1〜100ミリ等量とすることがより好ましい。
【0026】
ナトリウムを含有しない酸ケン化触媒では反応速度の面ではパラトルエンスルホン酸が良いが、含まれる硫黄がシリコン結晶中に再結合中心となる準位を作り、半導体デバイスに悪影響を及ぼすため好ましくなく、硫黄分のないギ酸、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、塩酸および硝酸が好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。リン酸も硫黄と同様にリンがシリコン結晶中に再結合中心となる準位を作り、半導体デバイスに悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0027】
ナトリウムを含有しない酸ケン化触媒の使用量としては、用いる化合物の種類やケン化する際の溶媒組成や含水率にもよるが、メタノール溶媒中でケン化反応を行なう場合には、脂肪族ビニルエステル系重合体に対して、通常約0.5〜500ミリ等量とすることが好ましく、約1〜100ミリ等量とすることがより好ましい。
【0028】
(c)水
本発明における(c)水としては、超純水、イオン交換水、蒸留水が用いられ、特に超純水が好ましい。中でも、水中のアルカリ金属や重金属元素などの不純物元素および異物は少ないほど好ましい。本発明のホウ素拡散用塗布液中の(c)水の含有量は、(a)ホウ素化合物および(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂の配合割合により自動的に決められるが、該(a)および(b)を十分溶解または分散させるだけの量があれば良く、通常(c)水の量はホウ素拡散用塗布液中に約25〜95質量%、好ましくは約60〜95質量%の範囲になる。
【0029】
その他の成分
本発明のホウ素拡散用塗布液は、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水に加えて、さらに(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体からなる群より選択される1種以上を含有することができる。(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体からなる群より選択される1種以上を含有させることにより、該塗布液の保存安定性、流動安定性を改善することができる。(d)一価アルコール類または多価アルコール類の種類としては、一価アルコール類ではメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等;多価アルコール類およびそれらの誘導体としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、3−メチルペンタノン1,3,5−トリオール、ジグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンおよびそれらの誘導体、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−nブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上が用いられる。中でも、多価アルコールおよびその誘導体は(a)ホウ素化合物と錯体を形成し、その錯体の安定性がよいことから、ホウ素拡散用塗布液の保存安定性、流動安定性を損なうことなく塗布液中のホウ素化合物の濃度を高めることができ、これにより高濃度のホウ素を半導体デバイスに拡散できるようになることから好ましい。(d)多価アルコール類およびその誘導体としては、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体からなる群より選択される1種以上の含有量は特に制限はないがホウ素化合物と錯体を形成させることが目的であるため(a)ホウ素化合物の量に対して5〜1000質量%程度で十分であり、好ましくは10〜900質量%程度である。
【0030】
さらに本発明のホウ素拡散用塗布液は、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水に加えて(e)界面活性剤を含有することができる。(e)界面活性剤を含有させることにより、該塗布液の消泡性、セルフレベリング性を改善することができる。(e)界面活性剤の種類としてはプルロニック型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、ポリエチレングリコール型界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等のいわゆる非イオン界面活性剤が好ましい。ナトリウム塩型、スルホン酸塩型のイオン系界面活性剤はナトリウム、イオウ分が含まれるため好ましくない。これらの中でもアセチレングリコール系界面活性剤が好ましく、市販製品としては日信化学工業社製のサーフィノールシリーズ、オルフィンシリーズが挙げられる。これら界面活性剤は単独でまたは2種以上を混合して用いても良く、その含有量はポリビニルアルコール系樹脂に対して0.01〜5質量%程度で十分であり、好ましくは0.02〜5質量%程度である。界面活性剤の含有量がこの範囲であれば、界面活性剤の効果を十分に発揮することができる。また、界面活性剤の水に対する溶解度等の関係から、界面活性剤が多すぎるとホウ素拡散用塗布液が分離したりする場合があるが、上記範囲であれば塗布液が分離することがない。
【0031】
さらに本発明のホウ素拡散用塗布液は、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水に加えて(f)無機充填材を含有することができる。(f)無機充填剤を含有させることにより、該塗布液の流動特性を変化させることができるため、該塗布液をスピン塗布性やスクリーン印刷に適した印刷特性のものにすることができる。無機充填材としてはシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、窒化ケイ素等が挙げられ、中でも、シリカが好ましい。(f)無機充填剤として、これらの中から1種単独または2種以上が用いられる。無機充填材の含有量としては本発明のホウ素拡散用塗布液中の通常約1〜35質量%、好ましくは約1〜20質量%である。無機充填材の含有量がこの範囲内であれば、ホウ素拡散用塗布液の流動特性を適度な範囲に調整することができ、シリコンウェーハ等に良好に塗布することができる。
【0032】
本発明では更に必要に応じ、ホウ素拡散用塗布液の基本物性を損なわない範囲で種々の添加剤を配合することができる。例えば粘性改良剤としてのポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタムなどのビニル系高分子化合物;ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドの交互またはブロック共重合体などのポリアルキレンオキシド化合物;ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシプロピルアクリレートまたはこれらに相当するメタクリレートなどのポリヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート類;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース系高分子化合物;各種pH調整剤;防腐剤;難燃化剤;ウェーハへの拡散濃度調整を目的としてN型領域を形成しうる化合物、例えば無水リン酸、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸メラミン、アッシドホスホオキシエチルメタクリレートおよびそのアミン塩などのリン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類などを配合することができる。
【0033】
本発明の本発明のホウ素拡散用塗布液はスピンコート法で塗布する場合には20℃でのB型回転粘度計での粘度が通常約1〜100mPa・s、好ましくは約1〜50mPa・s、スクリーン印刷法で塗布する場合には20℃でのブルックフィールド型回転粘度計での粘度が通常約500〜250000mPa・s、好ましくは約500〜150000mPa・sに調整される。
【0034】
ホウ素拡散用塗布液の製造方法
本発明のホウ素拡散用塗布液は、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水、さらに、必要に応じて上述した(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体、(e)界面活性剤、並びに(f)無機充填材からなる群より選択される1種以上を混合することにより作製される。本発明のホウ素拡散用塗布液の製造方法としては、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂および(c)水を含有する水溶液を作製した後、これに(a)ホウ素化合物を混合し、さらに(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体、(e)界面活性剤並びに(f)無機充填材からなる群より選択される1種以上を混合する方法や、予め(a)ホウ素化合物と(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体からなる群より選択される1種以上とを反応させて錯体を形成させた後、これと(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂水溶液、(e)界面活性剤および(f)無機充填材等とを混合する方法が挙げられるがこれに限らない。また、混合も市販の各種混合機を用いることができ、特殊な設備は必要ない。
【0035】
本発明のホウ素拡散用塗布液は半導体デバイスの製造等に好適に用いることができるものであり、シリコンウェーハ上に塗布して使用される。シリコンウェーハへのホウ素拡散用塗布液の塗布方法としてはスピンコーター法、スクリーン印刷法が一般的であるが、グラビア印刷法、凸版印刷法、平版印刷法、インクジェット印刷法、コンマコーター法、ダイヘッドコーター法、ダイリップコーター法およびグラビア印刷法も用いることができる。本発明のホウ素拡散用塗布液をシリコンウェーハに塗布して製造される半導体デバイスも、本発明の1つである。
【0036】
(II)ホウ素拡散方法
本発明は、(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水を含有する組成物をシリコンウェーハに塗布する工程を含むホウ素拡散方法も包含する。このような組成物やその好ましい態様としては、上述したホウ素拡散用塗布液と同様である。このような組成物を塗布する工程を含むことにより、該シリコンウェーハにホウ素を良好に拡散させることができる。
【0037】
本発明において、シリコンウェーハへの組成物の塗布方法は、上述したのと同様である。塗布する際の組成物の温度としては、約5〜40℃が好ましく、約10〜30℃がより好ましい。
【0038】
本発明において組成物をシリコンウェーハに塗布する際の塗布量としては、組成物を塗布するシリコンウェーハの種類や用途等により異なるが、例えば、半導体デバイスを製造する場合には、塗布量を約1〜500g/mとすることが好ましく、約1〜300g/mとすることがより好ましく、約1〜100g/mとすることがさらに好ましく、約1〜50g/mとすることが特に好ましい。
【0039】
本発明の方法は、さらに、シリコンウェーハに塗布した組成物を乾燥させて塗膜を形成させる乾燥工程、塗膜中の有機化合物を分解させる脱脂工程、および脱脂工程で得られた塗膜においてホウ素を拡散させる拡散工程を含むことが好ましい。このような工程を含むことにより、例えば半導体デバイス中等にホウ素を高濃度で均一に拡散浸透させることができる。
【0040】
乾燥工程における乾燥温度としては、約60〜200℃が好ましく、約100〜180℃がより好ましい。乾燥時間は、乾燥温度等により適宜設定すればよいが、例えば、約1〜60分とすることが好ましく、約3〜30分とすることがより好ましい。乾燥方法としては特に限定されず、例えば、送風乾燥、真空乾燥等の方法により乾燥させることができる。
【0041】
脱脂工程においては、塗膜中の有機化合物(有機成分を)を約90%以上除去することが好ましい。脱脂工程においては塗膜を通常約250〜600℃の温度、好ましくは約300〜550℃で、好ましくは約1〜120分、より好ましくは約5〜60分脱脂して有機成分を分解燃焼除去することが好ましい。
【0042】
拡散工程においては、例えば半導体デバイスを製造する場合であれば、脱脂工程を行なった後のウェーハを枚葉、または複数枚を重ねた状態にて、好ましくは約700〜2000℃、より好ましくは約700〜1500℃で約10分〜10日間、好ましくは約30分〜7日間保持することが好ましい。
なお、例えば半導体デバイスの製造において、上記脱脂工程により所望する抵抗値が得られる場合、拡散工程は行わなくてもよい。
本発明の拡散方法により、シリコンウェーハに上記組成物を塗布して製造される半導体デバイスも、本発明の1つである。
【実施例】
【0043】
以下実施例を示してさらに詳しく説明を行うが、これによりなんら制限されるものではない。
【0044】
ポリビニルアルコール系樹脂の物性測定方法
用いるポリビニルアルコール系樹脂の重合度、ケン化度、および酢酸ナトリウム量はJISK6726に従って測定した。ポリビニルアルコール系樹脂の微量ナトリウム量はポリビニルアルコール系樹脂を700℃の電気炉にて灰化後、灰化物にギ酸を適当量添加した後に加熱還元させ、さらにこれに塩酸を適当量添加して水に溶解させた水溶液を原子吸光法にて測定した。また、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、アルキルビニルエーテル等の変性度はポリビニルアルコール系樹脂をDMSOに溶解後H−NMRにて公知の方法にて分析して求めた。
【0045】
ホウ素拡散用塗布液の調整方法
(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水に加えて、(d)一価アルコール類、多価アルコール類またはその誘導体、(e)界面活性剤、および(f)無機充填材を一度にガラス製容器に入れて加熱攪拌し、ポリビニルアルコール系樹脂を溶解させてホウ素拡散用塗布液を作製する方法(1);(a)ホウ素化合物、(c)水、(d)一価アルコール類、多価アルコール類またはその誘導体、および(e)界面活性剤をガラス製容器に入れて加熱攪拌した溶液(A)と、(b)ポリビニルアルコール系樹脂、(c)水、および(f)無機充填材をガラス製容器に入れて加熱攪拌した溶液(B)とを用意し、溶液(A)と溶液(B)とを後で混合する方法(2)のいずれかを採用した。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度やケン化度の違い、ホウ素化合物とポリビニルアルコール系樹脂との錯体形成度合いの違いにより方法(1)および(2)を使い分けた。(f)無機充填材を添加したときに、より均一な分散が要求される場合や、攪拌混合後に脱泡を要する場合には、市販の混練・脱泡機を使用して混練・脱泡を行った。
【0046】
ホウ素拡散用塗布液のシリコンウェーハへの塗布方法
シリコンウェーハは直径4インチ、厚さ200μm、比抵抗値が10〜20Ω・cmのP型シリコンウェーハ(SUMCO社製)を用いた。ホウ素拡散用塗布液のシリコンウェーハへの塗布は、スピンコーター(ミカサ社製 MS−A100)を用いて回転速度3500rpm、塗布時間30秒で塗布した。
【0047】
ホウ素拡散用塗布液塗布後の乾燥、脱脂およびホウ素拡散方法
ホウ素拡散用塗布液が塗布されたシリコンウェーハはまず、工程(I)150℃の電気炉で5分間乾燥させた。次いで工程(II)塗膜中の有機化合物を脱脂することを目的として500℃の電気炉で20分間脱脂を行った。その後、工程(III)、前工程(II)で得られたウェーハを枚葉、または複数枚を重ね合わせた状態にて電気炉において1300℃で60分間熱処理することによりホウ素をウェーハに拡散させた。
【0048】
ウェーハの電気抵抗の測定方法
抵抗測定器(ナプソン社製、本体:RT−8A、測定器:RG−7A)を用い、拡散後のウェーハ1枚を任意に選択し該拡散膜の面内10点の表面抵抗率を求めウェーハ内の表面抵抗率のばらつきを評価した。また、拡散後のウェーハ10枚を任意に選択し、各ウェーハの中心部分の表面抵抗率を測定しおよびウェーハ間の表面抵抗率のばらつきを評価した。
【0049】
ポリビニルアルコール系樹脂の製造例
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および圧力計を備えた反応器内を窒素で置換した後、脱酸素した酢酸ビニルモノマー2800質量部および脱酸素したメタノール800質量部を仕込み、攪拌下で昇温を開始し内温が60℃となったところで、別途脱酸素したメタノール50質量部に開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1重量部を溶解させた開始剤溶液を添加して重合を開始した。60℃で5時間重合した後、冷却して重合を停止した。このときの重合溶液中の固形分濃度は55.1%(重合収率で71.8%)、また、得られたポリ酢酸ビニル樹脂をケン化度100モル%のポリビニルアルコールとしJISK6726に従って測定した重合度は1710であった。得られた重合溶液を塔内に多孔板を多段数有する脱モノマー塔に供給して塔下部よりメタノール蒸気を吹き込んで重合溶液と接触させ未反応の酢酸ビニルモノマーを除去した。ポリ酢酸ビニル−メタノール溶液の固形分濃度は42%であった。このポリ酢酸ビニル−メタノール溶液1kg(1000質量部)の温度を40℃に保ち、tert−ブチルイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン8質量部を添加して60分間ケン化反応を行った。ケン化反応終了時の形態は溶媒のメタノールおよび副生成物の酢酸メチルを含有したゲルになっており、ケン化度は88モル%、揮発分は58%、副生成物のナトリウムはポリビニルアルコールに対して10ppm(ここで言う10ppmとはポリビニルアルコール系樹脂中の質量規準のナトリウム含有量0.001質量%を示す。)未満であった。このゲル状ポリビニルアルコールを3mm角の大きさに粉砕後、乾燥して揮発分を4%にまで下げたものを試験に供した。
【0050】
以下の実施例および比較例においては、上記製造例においてケン化触媒として表1に示す各ケン化触媒を用いて製造したポリビニルアルコール系樹脂を用いた。なお、重合度の異なるポリビニルアルコール系樹脂は、上記製造例において酢酸ビニルモノマーを溶液重合する際の酢酸ビニルモノマーと溶媒であるメタノールとの比率および重合収率を調整することで変化させた。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度はケン化反応を行う際のケン化触媒の量およびケン化時間を調整して変化させた。
【0051】
実施例1
超純水300質量部にtert−ブチルイミノ−トリ(ピロリジノ)ホスホランを用いてケン化した重合度220、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂22質量部、およびホウ酸メラミン(BUDENHEIM社製、商品名「BUDIT 313」)30質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0052】
実施例2
超純水300質量部に2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−ペルハロイド−1,3,2−ジアザホスホリンを用いてケン化した重合度560、ケン化度98モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂20質量部、ホウ酸8質量部およびイソプロピルアルコール10質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0053】
実施例3
超純水300質量部に水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度2530、ケン化度78モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂9質量部、ホウ酸アンモニウム10質量部、およびソルビトール30質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった
【0054】
実施例4
超純水300質量部に水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度380、ケン化度60モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂30質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら加熱溶解させて水溶液を作製した。水溶液に多価アルコール−ホウ酸錯体化合物(ボロンインターナショナル社製、商品名「ハイボロンDBPG−3」)50質量部を添加して良く攪拌して均一にし、拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0055】
実施例5
超純水300質量部に7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5を用いてケン化した重合度5080、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール樹脂4質量部、無水ホウ酸7質量部、およびマンニトール60質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0056】
実施例6
超純水300質量部に6−ジプロピルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7を用いてケン化した重合度180、ケン化度55モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール樹脂35質量部、およびホウ酸メラミン36質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0057】
実施例7
超純水300質量部に酢酸ビニル−ポリオキシエチレンブチルビニルエーテル(竹本油脂社製、商品名「HBVE−10」の変性度が2.0モル%)共重合体を乳酸を用いてケン化した重合度1860、ケン化度96モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール樹脂16質量部、三塩化ホウ素22質量部、およびジグリセリン50質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0058】
実施例8
超純水300gに酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体(ジアセトンアクリルアミドの変性度は4.0モル%)を水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度520、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂22質量部、無水ホウ酸30質量部、および消泡剤(日信化学工業社製、商品名「サーフィノールMD−20」)0.01質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった
【0059】
実施例9
超純水300質量部に酢酸ビニル−エチレン共重合体(エチレンの変性度は1.8モル%)を水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度560、ケン化度98モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂20質量部、ホウ酸アンモニウム15質量部、ペンタエリスリトール33質量部、およびシリカ(東ソー・シリカ社製、商品名「Nipsil E−220A」)5質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0060】
実施例10
超純水300質量部に酢酸ビニル−アルキルビニルエーテル(アルキルビニルエーテルは新日本理化社製、商品名「リカビニーテルC」、リカビニーテルCの変性度は0.3モル%)を水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度560、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂10質量部、ホウ酸15質量部、およびアルミナ(日本アエロジル社製、商品名「Alu−C」)5質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0061】
実施例11
超純水300質量部に水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度560、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂20質量部、ホウ酸アンモニウム15質量部、ジエチレングリコール33質量部、シリカ(東ソー・シリカ社製、商品名「Nipsil E−220A」)5質量部および濡れ剤(日信化学工業社製、商品名「オルフィンExp−4200」)0.02質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった。
【0062】
実施例12
超純水300質量部に水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度560、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂42質量部、ホウ酸10質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル20質量部、およびシリカ(東ソー・シリカ社製、商品名「Nipsil E−220A」)15質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液はその粘度がスピンコートするには高すぎたので、シリコンウェーハへはスクリーン印刷機およびポリエステル製#380メッシュを使用して塗膜厚さが1.5μmになるようにスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷後、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった
【0063】
実施例13
超純水300質量部に水酸化テトラメチルアンモニウムを用いてケン化した重合度1860、ケン化度96モル%、ナトリウムの含有量10ppm未満のポリビニルアルコール系樹脂20質量部、多価アルコール−ホウ酸錯体化合物(ボロンインターナショナル社製、商品名「ハイボロンDBPG−3」)50質量部、シリカ(東ソー・シリカ社製、商品名「Nipsil E−220A」)15質量部、アルミナ(日本アエロジル社製、商品名「Alu−C」)15質量部および濡れ剤(日信化学工業社製、商品名「オルフィンExp−4200」)0.50質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液はその粘度がスピンコートするには高すぎたので、シリコンウェーハへはスクリーン印刷機およびポリエステル製#380メッシュを使用して塗膜厚さが1.5μmになるようにスクリーン印刷を行った。スクリーン印刷後、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すようにばらつきも少なく良好な結果であった
【0064】
比較例1
超純水300質量部に実施例1のケン化触媒に代えて水酸化ナトリウムを用いてケン化した重合度220、ケン化度88モル%、ナトリウムの含有量2588ppmのポリビニルアルコール系樹脂22質量部、およびホウ酸メラミン(BUDENHEIM社製、商品名「BUDIT 313」)30質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら分散/溶解させ拡散用塗布液を作製した。
本拡散用塗布液を所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すように抵抗値にばらつきが多かった。
【0065】
比較例2
超純水300質量部に実施例2のケン化触媒に代えて水酸化ナトリウムを用いてケン化した重合度560、ケン化度98モル%、ナトリウムの含有量3245ppmのポリビニルアルコール系樹脂20質量部、およびホウ酸15質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら溶解させ拡散用塗布液を作製した。
本拡散用塗布液を所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すように抵抗値にばらつきが多かった。
【0066】
比較例3
超純水300質量部に実施例3のケン化触媒に代えて水酸化ナトリウムを用いてケン化した重合度560、ケン化度98モル%、ナトリウムの含有量2200ppmのポリビニルアルコール系樹脂をメタノールで洗浄してナトリウム含有量を122ppmまで減らした低ナトリウムポリビニルアルコール系樹脂9質量部、およびホウ酸アンモニウム15質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら溶解させ拡散用塗布液を作製した。
本拡散用塗布液を所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すように抵抗値にばらつきが多かった。
【0067】
比較例4
超純水300質量部に実施例2のケン化触媒に代えてパラトルエンスルホン酸を用いてケン化した重合度380、ケン化度60モル%、ナトリウムの含有量45ppmのポリビニルアルコール系樹脂30質量部をガラス製容器に入れ、次いで攪拌しながら加熱溶解させて水溶液を作製した。水溶液にグリセリン−ホウ酸錯体化合物(ボロンインターナショナル社製、商品名「ハイボロンDBPG−3」)50質量部を添加して良く攪拌して均一にし、拡散用塗布液を作製した。本拡散用塗布液を上記所定の方法でシリコンウェーハに塗布し、乾燥、脱脂および拡散を行った後、抵抗値を測定した。表2に示すように抵抗値にばらつきが多かった。
【0068】
表1に、実施例1〜13および比較例1〜4で作製した拡散用塗布液中のポリビニルアルコール系樹脂、ホウ素化合物、水(超純水)、一価又は多価アルコールおよびその他の添加剤の配合量を示す。表2に、作製した拡散用塗布液を塗布して作製したウェーハの抵抗値を示す。
【0069】
【表1】


表1におけるケン化触媒を、以下に示す。
1)tert−ブチルイミノ−トリ(ピロリジノ)ホスホラン
2)2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−ペルハロイド−1,3,2−ジアザホスホリン
3)水酸化テトラメチルアンモニウム
4)水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム
5)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5
6)6−ジプロピルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7
7)乳酸
8)水酸化ナトリウム
9)パラトルエンスルホン酸
【0070】
【表2】

【0071】
表2における判断基準を、以下に示す。
○: ウェーハ内、ウェーハ間共に抵抗値のばらつきが小さい
△: ウェーハ内またはウェーハ間で抵抗値のばらつきがやや大きい
×: ばらつきが大きい
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のホウ素拡散用塗布液は、半導体デバイスの製造に有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ホウ素化合物、(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂、および(c)水を含有することを特徴とするホウ素拡散用塗布液。
【請求項2】
(a)ホウ素化合物が、ホウ酸メラミン、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、多価アルコール−ホウ素化合物錯体化合物、および塩化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項3】
(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂が、脂肪族ビニルエステル系重合体を、ナトリウムを含有しないケン化触媒を使用してケン化することにより得られるものであることを特徴とする請求項1または2記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項4】
ナトリウムを含有しないケン化触媒が、ホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項3記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項5】
ナトリウムを含有しないケン化触媒が、下記一般式(1)
OH (1)
(上記式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜16のアルキル基、ベンジル基またはフェニル基である。)で表される水酸化4級アンモニウムであることを特徴とする請求項3記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項6】
ナトリウムを含有しないケン化触媒が、グアニジン化合物またはアミジン化合物であることを特徴とする請求項3記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項7】
ナトリウムを含有しないケン化触媒が、酸ケン化触媒であることを特徴とする請求項3記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項8】
酸ケン化触媒が、ギ酸、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、塩酸および硝酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項9】
(b)ナトリウム含有量が10ppm以下のポリビニルアルコール系樹脂の重合度が150〜5500、ケン化度が50〜99.5mol%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項10】
さらに、(d)一価アルコール類、多価アルコール類およびその誘導体からなる群より選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項11】
さらに、(e)界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項12】
さらに、(f)無機充填材を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項13】
(d)多価アルコール類およびその誘導体が、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項10記載のホウ素拡散用塗布液。
【請求項14】
(f)無機充填材が、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、窒化ケイ素およびタルクからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項12記載のホウ素拡散用塗布液。