説明

ホットランナ成形型

【課題】本発明は、バルブゲート式のホットランナ成形型において、型構造を簡略化することで、固定型の小型化および型費を低減することができるホットランナ成形型を提供することである。
【解決手段】可動型3と、固定型2内に配設され、溶融樹脂を供給するマニホールド10と、前記マニホールド10の樹脂流路に連通して配設され、前記可動型3と前記固定型2との間のキャビティ4の入り口のゲート12に連通するホットランナノズル13と、前記ホットランナノズル13の樹脂流路を貫通して配設され、前記ゲート12を開閉するバルブピン14と、前記固定型2と前記可動型3との間の型開閉動作の駆動力を前記バルブピン14に伝達し、前記バルブピン14による前記ゲート12の開閉動作を行う駆動力伝達手段22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の射出成形に用いられるホットランナ成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットランナ成形型では、溶融樹脂材料の通路を形成するマニホールド、ホットランナノズルにおいて、樹脂が溶融状態に保たれている。そのため、ホットランナ成形型を開いて成形品を取出す型開き工程においては、ホットランナノズルの先端に設けられたゲートから溶融樹脂が溢れ出ないように、ゲートをシールする必要がある。このゲートのシールを確実に行なう方法として、バルブゲート式ホットランナ成形型が用いられている。
【0003】
このバルブゲート式ホットランナ成形型は、固定型内に設けたマニホールドの樹脂流路に連通するホットランナノズルの先端を、ホットランナノズルを貫通するバルブピンの先端によって開閉するものである。このバルブピンの駆動は、バルブピンと同軸上に直列に配置した空圧式あるいは油圧式のシリンダによっておこなわれている。
【0004】
このような方式のバルブゲート式ホットランナ成形型は、マニホールドと同軸上に空圧式あるいは油圧式のシリンダが配設されるため、固定型の厚さが大きくなるという課題がある。
そこで、特許文献1では、固定型の厚さを小さくすることを目的として、図9に示すホットランナ成形型aが提案されている。このホットランナ成形型aは、固定型bと可動型cとの間に成形品を成形するキャビティdが形成されている。固定型b内には、溶融樹脂を供給するマニホールドeと、マニホールドeの樹脂流路に連通して配設された複数個のホットランナノズルfとが設けられている。ノズルfの先端は、キャビティdの入り口のゲートgに連通されている。ホットランナノズルfには、ゲートgを開閉するバルブピンhが貫通している。
【0005】
各バルブピンhの基部は、固定型b内に可動型cの型開閉方向に往復移動自在に配設したピンプレートiに取付けられている。マニホールドeの外側位置には、バルブピンhと並列に複数個のシリンダjが配設されている。このシリンダjによりピンプレートiを介して各バルブピンhを往復駆動してゲートgの開閉を行なう構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−96359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の装置では、固定型b内に空圧式あるいは油圧式のシリンダjを配設する必要があり、更にこれらのシリンダjを駆動させるために、駆動エアあるいは駆動油を導く導入管kが必要となる。よって、固定型bの型構造が複雑となるため、ホットランナ成形型aの型構造全体が大型化し、型費が増す等の問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、バルブゲート式のホットランナ成形型において、型構造を簡略化することで、固定型の小型化および型費を低減することができるホットランナ成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面の態様は、可動型と、固定型内に配設され、溶融樹脂を供給するマニホールドと、前記マニホールドの樹脂流路に連通して配設され、前記可動型と前記固定型との間のキャビティの入り口部分に連通するホットランナノズルと、前記ホットランナノズルの樹脂流路を貫通して配設され、前記入り口部分を開閉するバルブピンと、前記固定型と前記可動型との間の型開閉動作の駆動力を前記バルブピンに伝達し、前記バルブピンによる前記入り口部分の開閉動作を行う駆動力伝達手段とを備えたことを特徴とするホットランナ成形型である。
そして、上記構成では、固定型と可動型との間の型閉じ位置では、バルブピンがキャビティの入り口部分を開く位置で保持される。固定型と可動型との間の型開き動作時には駆動力伝達手段によってバルブピンが入り口部分を閉じる位置に移動し、入り口部分がバルブピンによってシールされる。
【0010】
好ましくは、前記固定型は、前記ホットランナノズルを保持する受板が固定取付け板との間にスペーサを介して取付けられ、前記受板と前記固定取付け板との間に前記スペーサによって形成される空間に前記型開閉動作方向に沿って移動可能なピンプレートが配設され、前記バルブピンの基端部が前記ピンプレートに固定されるとともに、前記受板は、前記型開閉動作方向に延設された貫通孔を有し、前記可動型は、前記キャビティを有する可動側型板と、前記可動側型板が取付けられる可動取付け板とを備え、前記駆動力伝達手段は、前記受板の前記貫通孔内に前記型開閉動作方向に移動可能に挿通され、一端が前記ピンプレートに固定された駆動軸体を有し、前記駆動軸体の他端は、前記可動側型板に前記型開閉動作方向に移動可能に連結され、前記固定型と前記可動型との間の型閉じ位置では前記バルブピンが前記入り口部分の開位置で保持され、前記可動型の型開き動作にともない前記可動側型板によって前記駆動軸体を介して前記ピンプレートを前記可動型の型開き動作方向に移動させて前記バルブピンによる前記入り口部分の閉動作を行う。
そして、上記構成では、固定型と可動型との間の型閉じ位置ではキャビティの入り口部分の開位置でバルブピンが保持される。固定型と可動型との間の型開き動作時には可動側型板によって駆動軸体を介してピンプレートを可動型の型開き動作方向に移動させて、型開動作時に入り口部分がバルブピンによってシールされる。
【0011】
好ましくは、前記駆動軸体は、前記可動側型板内で前記型開閉動作方向に移動可能に保持される大径部を有し、前記可動側型板は、前記駆動軸体の大径部を前記型開閉動作方向に移動可能に挿通する挿通孔と、前記大径部よりも小径なストッパ部とを有し、前記可動型の型開き動作時に前記大径部が前記ストッパ部に係脱可能に係止されることで前記ピンプレートを前記可動型の型開き動作方向に牽引する操作力を伝達する。
【0012】
好ましくは、前記固定取付け板は、前記可動型の型開き動作時に前記ピンプレートの移動量を制限するストップ部材を有する。
好ましくは、前記駆動力伝達手段は、前記バルブピンを前記入り口部分の開位置方向に押圧する方向に付勢する付勢手段を有する。
そして、上記構成では、固定型と可動型との間の型開き動作工程では、付勢手段により型開きと同時に、駆動軸体によってピンプレートが型開き方向に移動され、バルブピンが前進して入り口部分がシールされる。
【0013】
好ましくは、前記付勢手段は、前記可動側型板の前記挿通孔内に配設され、前記大径部を前記ストッパ部から離れる方向に付勢する弾性部材によって形成されている。
そして、上記構成では、固定型と可動型との間の型開き動作工程では、挿通孔内の弾性部材により駆動軸体を介してピンプレートを型開き方向へ押圧する操作力が伝達される。すなわち型開きと同時に、駆動軸体によってピンプレートが型開き方向に移動され、バルブピンが前進して入り口部分がシールされる。
【0014】
好ましくは、前記付勢手段は、前記スペーサによって形成される空間内で前記受板と前記固定取付け板との間に配設された弾性部材によって形成されている。
そして、上記構成では、固定型と可動型との間の型開き動作工程では、スペーサによって形成される空間内の弾性部材により駆動軸体を介してピンプレートを型開き方向へ押圧する操作力が伝達される。すなわち型開きと同時に、駆動軸体によってピンプレートが型開き方向に移動され、バルブピンが前進してゲートがシールされる。
【0015】
好ましくは、前記固定型は、前記ホットランナノズルと前記キャビティとの間にランナが介設され、前記ホットランナノズルが前記ランナを介して前記キャビティに連通されるとともに、前記受板と前記可動型との間にそれぞれ前記可動型の型開き動作方向に移動可能な落下板とランナ板とが配設され、前記ピンプレートは、前記受板と前記落下板を挟んで第1の駆動軸体が締結され、前記落下板は、前記ランナ板を挟んで第2の駆動軸体が締結され、前記ランナ板は、前記可動型板を挟んで第3の駆動軸体が締結され、前記受板は、ランナロックピンを保持するランナロック板が締結され、前記固定型と前記可動型との間の型閉じ位置では前記バルブピンが前記入り口部分の開位置で保持され、前記可動型の型開き動作にともない前記可動側型板と前記可動取付け板が前記可動型の型開き方向へ移動し、前記第3の駆動軸体を介して前記ランナ板が前記可動型の型開き方向へ引っ張られ、続いて前記ランナ板が前記可動型の型開き方向へ移動することで、前記第2の駆動軸体を介して前記落下板が前記可動型の型開き方向へ引っ張られる際に、前記第1の駆動軸体によって前記ピンプレートが前記可動型の型開き方向に引っ張られ、前記バルブピンによる前記入り口部分の閉動作を行う。
そして、上記構成では、固定型と可動型との間の型閉じ位置では、バルブピンがキャビティの入り口部分を開く位置で保持される。固定型と可動型との間の型開き動作時には駆動力伝達手段によってバルブピンが入り口部分を閉じる位置に移動し、入り口部分がバルブピンによってシールされる。
【0016】
好ましくは、前記可動型は、前記可動側型板に複数の前記キャビティを有し、前記固定型は、複数の前記キャビティ毎に前記ホットランナノズルがそれぞれ配設され、前記ピンプレートは、前記各ホットランナノズルの前記バルブピン毎にそれぞれ独立に設けられている。
そして、上記構成では、ピンプレートを個々のバルブピン毎に設けるため、駆動軸体同士の間隔およびガイドピン同士の間隔が小さくなり、ピンプレートの歪を起こす力が小さくなるため、ピンプレートに必要な剛性が小さくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空圧式あるいは油圧式のシリンダを用いないため、型費が低減できる。また、空圧式あるいは油圧式のシリンダをホットランナ成形型内に配設する必要が無いため、型構造が簡便となり、固定型を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態のホットランナ成形型の型閉じ状態を示す縦断面図。
【図2】第1の実施の形態のホットランナ成形型の型開き状態を示す縦断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態のホットランナ成形型の型閉じ状態を示す縦断面図。
【図4】第2の実施の形態のホットランナ成形型の型開き状態を示す縦断面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態のホットランナ成形型の型閉じ状態を示す縦断面図。
【図6】第3の実施の形態のホットランナ成形型の型開き状態を示す縦断面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態のホットランナ成形型の型閉じ状態を示す縦断面図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】従来のホットランナ成形型の型閉じ状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は本実施の形態のホットランナ成形型1の型閉じ状態を示す縦断面図、図2は、ホットランナ成形型1の型開き状態を示す縦断面図である。
図1に示すホットランナ成形型1は、2プレートタイプである。ホットランナ成形型1は、固定型2と、可動型3とを有し、固定型2と可動型3との間に成形品を成形する2つのキャビティ4が設けられている。可動型3は、2つのキャビティ4を有する可動側型板5と、前記可動側型板5が取付けられる可動取付け板6とを備える。
【0020】
固定型2は、固定取付け板7と、この固定取付け板7にスペーサ8を介して取付けられた受板9とを備える。固定型2内には、溶融樹脂(例えば、ポリカーボネートのガラス強化グレード、ガラス+炭素強化グレードなどの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)材料を供給するマニホールド10が配設されている。マニホールド10は、スペーサ8によって形成される空間内に配設され、固定取付け板7に締結された2つのサポートピン11を介して固定取付け板7に支持されている。
【0021】
受板9には、2つのホットランナノズル13が配設されている。一方のホットランナノズル13の先端は、一方のキャビティ4の入り口のゲート12に、他方のホットランナノズル13の先端は、他方のキャビティ4の入り口のゲート12にそれぞれ連通する。これらのホットランナノズル13の基端部は、それぞれマニホールド10の樹脂流路に連通されている。
【0022】
各ホットランナノズル13には、ゲート12を開閉するバルブピン14がそれぞれ各ホットランナノズル13の樹脂流路を貫通して配設されている。このバルブピン14の基部は、ピンプレート15に取付けられている。このピンプレート15は、受板9と固定取付け板7との間にスペーサ8によって形成される空間に配設され、固定型2と可動型3との間の型開閉動作方向に沿って移動可能に支持されている。ここで、ピンプレート15には、2つのサポートピン11を挿通する2つのピン挿通孔と、マニホールド10の両側に配置された2つのガイドピン16を挿通する2つのピン挿通孔とが形成されている。
【0023】
2つのガイドピン16は、図1中で上端が固定取付け板7に、下端が受板9にそれぞれ固定されている。さらに、ピンプレート15には、2つのガイドピン16を挿通する2つのピン挿通孔にガイドブッシュ17が配設されている。そして、ピンプレート15は、2つのガイドピン16とガイドブッシュ17との摺動部に沿って型開閉動作方向に沿って移動されるようになっている。このとき、ピンプレート15は、2つのガイドピン16によって型開閉方向に垂直な面で位置決めされている。
【0024】
ピンプレート15は、上ピンプレート15aと下ピンプレート15bとが重ね合わせた状態で接合されている。下ピンプレート15bには、2つのガイドピン16の外側に配置された2つのプラボルト(駆動軸体)18の各上端部が固定されている。2つのプラボルト18は、固定型2の受板9に型開閉動作方向に沿って形成されたプラボルト挿通用の貫通孔を通して下方に延出されている。
【0025】
また、可動側型板5には、型開閉動作方向に沿って2つのプラボルト挿通孔19が形成されている。2つのプラボルト18の下端部には、それぞれ大径部18aが形成されている。各プラボルト挿通孔19の下側には、プラボルト18の大径部18aを型開閉動作方向に移動可能に保持する大径穴19aが形成されている。そして、プラボルト18の大径部18aは、各プラボルト挿通孔19の大径穴19aの下端位置(図1参照)と、大径穴19aの上端の係合位置(図2参照)との間で型開閉動作方向に移動可能に保持されている。ここで、各プラボルト挿通孔19の大径穴19aの上端部には、プラボルト18の大径部18aと当接してプラボルト18の移動を規制するストッパ部19bが形成されている。
【0026】
また、上ピンプレート15aには、2つのプラボルト18と対応する位置に配置された2つのストップボルト20の各下端が固定されている。ストップボルト20の上端は、固定取付け板7に型開閉動作方向に沿って形成されたストップボルトガイド孔21内に挿入されている。2つのストップボルト20の上端には、それぞれ大径部20aが形成されている。各ストップボルトガイド孔21の上側には、ストップボルト20の大径部20aを型開閉動作方向に移動可能に保持する大径穴21aが形成されている。そして、ストップボルト20の大径部20aは、各ストップボルトガイド孔21の大径穴21aの上端位置(図1参照)と、大径穴21aの下端の係合位置(図2参照)との間で型開閉動作方向に移動可能に保持されている。
【0027】
そして、2つのプラボルト18と、ピンプレート15とによって、固定型2と可動型3との間の型開閉動作の駆動力を2つのバルブピン14に伝達し、バルブピン14によるゲート12の開閉動作を行う駆動力伝達手段22が形成されている。
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のホットランナ成形型1の使用時には、ホットランナ成形型1を閉じた型閉じ位置では、図1に示すように2つのプラボルト18の下端部の大径部18aは、大径穴19aの下端位置で可動取付け板6と当接される。この状態では、2つのプラボルト18を介してピンプレート15は、固定取付け板7に近接する方向に押圧されているため、2つのバルブピン14は、2つのホットランナノズル13の先端のゲート12から離間した位置に移動してゲート12が開き、樹脂の射出が可能となる。
【0028】
また、ホットランナ成形型1を開く工程では、可動側型板5が型開き方向(図2中で下側)に移動する。このとき、2つのプラボルト18の大径部18aが大径穴19aの上端位置で係止された時点で、プラボルト18を介してピンプレート15が型開き方向に引っ張られて、バルブピン14がホットランナノズル13内を型開き方向に移動する。そして、図2に示すように2つのバルブピン14が2つのホットランナノズル13の先端のゲート12に挿入されることにより、ゲート12がシールされる。この際のピンプレート15の移動量はストップボルト20にて制限される。なお、図2中で、符号mは、ホットランナ成形型1の型開き時にキャビティ4から突き出された成形品である。
【0029】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のホットランナ成形型1では、2つのプラボルト18と、ピンプレート15とによってバルブピン14によるゲート12の開閉動作を行う駆動力伝達手段22を形成している。これにより、ホットランナ成形型1の可動側型板5が型開き方向に移動する動作によって2つのプラボルト18と、ピンプレート15とを介して2つのバルブピン14が2つのホットランナノズル13の先端のゲート12に挿入され、ゲート12が閉じた状態でシールされる。そのため、2つのホットランナノズル13の先端のゲート12を開閉するために従来のように、空圧式あるいは油圧式のシリンダを用いる必要がないため、型費が低減できる。
【0030】
また、空圧式あるいは油圧式のシリンダをホットランナ成形型1内に配設する必要が無いため、ホットランナ成形型1の型構造が簡便となり、固定型2の小型化および型費を低減することができる。
なお、本実施の形態では、ピンプレート15の駆動力伝達手段22を構成する部品としてプラボルト18を用いたが、これに限らず、引っ張りリンクや、引っ張りチェーン等、各々の型構造に合わせた駆動力伝達部品を用いても良い。
【0031】
また、本実施の形態では、可動側型板5の動作にて、ピンプレート15を駆動させたが、各々の型構造に合わせて、固定型2と、可動型3との間の型開閉動作の駆動力をピンプレート15に伝達し、バルブピン14の駆動を行なってよい。
[第2の実施の形態]
(構成)
図3および図4は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、3プレートタイプのホットランナ成形型31に本発明を適用した変形例である。なお、図3および図4中で、第1の実施の形態(図1および図2参照)のホットランナ成形型1の構成と同一部分には同一の符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0032】
図3は、第2の実施の形態のホットランナ成形型31の型閉じ状態を示す縦断面図、図4は、第2の実施の形態のホットランナ成形型31の型開き状態を示す縦断面図である。本実施の形態のホットランナ成形型31の固定型2は、受板9に対してそれぞれ型開閉動作方向に移動可能な落下板32と、ランナ板33とを有する。ここで、落下板32は、2つのホットランナノズル13が型開閉動作方向に移動可能に挿通される2つのホットランナノズル挿通孔32aと、各ホットランナノズル13の両側に配置されるそれぞれ2つのランナロックピン34が型開閉動作方向に移動可能に挿通される4つのランナロックピン挿通孔32bとが形成されている。
【0033】
さらに、本実施の形態では第1の実施の形態の2つのプラボルト18に相当する2つの第1のプラボルト(第1の駆動軸体)35の下端フランジ部が落下板32とランナ板33との間に配設されている。これにより、ピンプレート15は、受板9と落下板32を挟んで第1のプラボルト35が締結されている。また、受板9の下面には、ランナロック板36が固定されている。このランナロック板36にランナロックピン34の上端部が保持されている。
【0034】
ランナ板33には、ホットランナノズル13とキャビティ4との間に介設されるランナ37が形成されている。そして、ホットランナノズル13がランナ37を介してキャビティ4に連通されている。
さらに、ランナ板33には、両側に2つの第2のプラボルト(第2の駆動軸体)38を型開閉動作方向に移動可能に挿通する第2のプラボルト挿通孔33aが形成されている。第2のプラボルト38の上端部は、落下板32に固定されている。第2のプラボルト38の下端部には、第2のプラボルト挿通孔33aよりも大径な大径部38aが形成されている。これにより、落下板32は、ランナ板33を挟んで第2のプラボルト38が締結されている。さらに、ランナ板33には、第3のプラボルト(第3の駆動軸体)39の上端部が固定されている。
【0035】
可動側型板5には、型開閉動作方向に沿って2つの第2のプラボルト逃げ孔40と、2つの第3のプラボルト挿通孔41とが形成されている。ここで、2つの第2のプラボルト逃げ孔40には、2つの第2のプラボルト38の大径部38aが型開閉動作方向に移動可能に挿入されている。また、2つの第3のプラボルト39の下端部には、それぞれ大径部39aが形成されている。各第3のプラボルト挿通孔41の下側には、第3のプラボルト39の大径部39aを型開閉動作方向に移動可能に保持する大径穴41aが形成されている。そして、第3のプラボルト39の大径部39aは、各第3のプラボルト挿通孔41の大径穴41aの下端位置(図3参照)と、大径穴41aの上端の係合位置(図4参照)との間で型開閉動作方向に移動可能に保持されている。これにより、ランナ板33は、可動側型板5を挟んで第3のプラボルト39が締結されている。
【0036】
そして、図3に示すように固定型2と可動型3との間の型閉じ位置ではバルブピン14がゲート12の開位置で保持されるようになっている。また、可動型3の型開き動作にともない可動側型板5と可動取付け板6が可動型3の型開き方向へ移動し、第3のプラボルト39を介してランナ板33が可動型3の型開き方向へ引っ張られ、続いてランナ板33が可動型3の型開き方向へ移動することで、第2のプラボルト38を介して落下板32が可動型3の型開き方向へ引っ張られる際に、第1のプラボルト35によってピンプレート15が可動型3の型開き方向に引っ張られ、バルブピン14によるゲート12の閉動作を行うようになっている。
【0037】
そして、本実施の形態では2つの第1のプラボルト35と、2つの第2のプラボルト38と、2つの第3のプラボルト39と、ピンプレート15とによって、固定型2と可動型3との間の型開閉動作の駆動力を2つのバルブピン14に伝達し、バルブピン14によるゲート12の開閉動作を行う駆動力伝達手段42が形成されている。
【0038】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のホットランナ成形型31は、ホットランナ成形型31を閉じた型閉じ位置では、図3に示すように2つの第3のプラボルト39の下端部の大径部39aは、大径穴41aの下端位置で可動取付け板6と当接される。この状態では、2つの第3のプラボルト39をおよび2つの第1のプラボルト35を介してピンプレート15は、固定取付け板7に近接する方向に押圧されているため、2つのバルブピン14は、2つのホットランナノズル13の先端のゲート12から離間した位置に移動してゲート12が開き、樹脂の射出が可能となる。
【0039】
また、ホットランナ成形型1を開く工程では、図4に示すように可動側型板5と可動取付け板6が型開き方向へ移動する。このとき、2つの第3のプラボルト39を介してランナ板33が型開き方向へ引っ張られる。そして、ランナ板33が型開き方向へ移動することで、第2のプラボルト38を介して落下板32が型開き方向へ引っ張られる。この際、第1のプラボルト35によってピンプレート15が型開き方向に引っ張られ、2つのバルブピン14が前進して2つのホットランナノズル13の先端のゲート12に挿入されることにより、ゲート12がシールされる。この際のピンプレート15の移動量はストップボルト20にて制限される。なお、図4中で、符号mは、ホットランナ成形型1の型開き時にキャビティ4から突き出された成形品、rはランナ板33のランナ37内で固化した状態で、ランナ37内から突き出された樹脂材料の残留部である。
【0040】
(効果)
そこで、本実施の形態のホットランナ成形型31では、2つの第1のプラボルト35と、2つの第2のプラボルト38と、2つの第3のプラボルト39と、ピンプレート15とによってバルブピン14によるゲート12の開閉動作を行う駆動力伝達手段42を形成している。これにより、ホットランナ成形型31の可動側型板5が型開き方向に移動する動作によって2つの第1のプラボルト35と、2つの第2のプラボルト38と、2つの第3のプラボルト39と、ピンプレート15とを介して2つのバルブピン14が2つのホットランナノズル13の先端のゲート12に挿入され、ゲート12が閉じた状態でシールされる。そのため、本実施の形態では第1実施形態と同様に、空圧式あるいは油圧式のシリンダを用いる必要がないため、型費が低減できる。また、空圧式あるいは油圧式のシリンダをホットランナ成形型31内に配設する必要が無いため、ホットランナ成形型31の型構造が簡便となり、固定型2の小型化および型費を低減することができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、ピンプレート15の駆動力伝達部品として2つの第1のプラボルト35と、2つの第2のプラボルト38と、2つの第3のプラボルト39とを用いたが、これに限らず、各々の型構造に合わせた駆動力伝達部品を用いて良い。また、本実施の形態では、落下板32の動作にて、ピンプレート15を駆動させたが、引っ張りリンクや、引っ張りチェーン等、各々の型構造に合わせて、固定型2と、可動型3との間の型開閉動作の駆動力をピンプレート15に伝達し、バルブピン14の駆動を行なってよい。
【0042】
[第3の実施の形態]
(構成)
図5および図6は、本発明の第3の実施の形態を示す。本実施の形態は第1の実施の形態(図1および図2参照)の一部を次の通り変更したホットランナ成形型1の変形例である。本実施の形態のホットランナ成形型1の駆動力伝達手段22は、バルブピン14をゲート12の開位置方向に押圧する方向に付勢する付勢手段51を有する。この付勢手段51は、可動側型板5のプラボルト挿通孔19の大径穴19a内に配設され、大径部20aをストッパ部19bから離れる方向に付勢する弾性部材52によって形成されている。弾性部材52とは圧縮コイルばね等のバネ部材である。
【0043】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のホットランナ成形型1を閉じた状態では、プラボルト18によってピンプレート15は、固定取付け板7に近接する方向に押圧されているため、2つのバルブピン14は、2つのホットランナノズル13の先端のゲート12から離間した位置に移動してゲート12が開き、樹脂の射出が可能となる。
【0044】
また、ホットランナ成形型1を開く工程では、図6に示すように可動側型板5が型開き方向(図2中で下側)に移動する。このとき、可動側型板5が型開き方向に移動開始すると同時に弾性部材52を介してプラボルト18に型開き方向への押圧力が作用する。すなわち、型開きと同時に、プラボルト18によってピンプレート15が型開き方向に引っ張られ、バルブピン14が前進してゲート12が迅速にシールされる。
【0045】
(効果)
そこで、本実施の形態では第1実施形態と同様の効果に加え、可動側型板5が型開き方向に移動開始すると同時に弾性部材52を介してプラボルト18に型開き方向への押圧力が作用し、ゲート12が閉じられるため、ゲート12から樹脂が溢れ出ることをより確実に防ぐことができる。
【0046】
[第4の実施の形態]
(構成)
図7および図8は、本発明の第4の実施の形態を示す。本実施の形態は第1の実施の形態(図1および図2参照)の一部を次の通り変更したホットランナ成形型1の変形例である。図7は、本実施の形態のホットランナ成形型1の型閉じ状態を示す縦断面図、図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
【0047】
第1の実施の形態のホットランナ成形型1では、2つのキャビティ4の入り口のゲート12を開閉する2つのバルブピン14が単一のピンプレート15によって同時に開閉駆動される構成を示したが、本実施の形態のホットランナ成形型1は、図7に示すように2つのキャビティ4の各ホットランナノズル13のバルブピン14毎にそれぞれ独立にピンプレート15を設けたものである。
【0048】
(作用・効果)
本実施の形態のホットランナ成形型1では、固定型2は、複数のキャビティ4毎にホットランナノズル13がそれぞれ配設され、ピンプレート15は、各ホットランナノズル13のバルブピン14毎にそれぞれ独立に設けられている。このようにピンプレート15を個々のバルブピン14毎に設けるため、プラボルト18同士の間隔およびガイドピン16同士の間隔が小さくなる。そのため、ピンプレート15の歪を起こす力が小さくなるため、ピンプレート15に必要な剛性が小さくなる。その結果、ピンプレート15の薄型化が可能であり、更に固定型2を小型化することが可能となる。
【0049】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。

(付記項1) 固定型内に配設されたマニホールドと、前記マニホールドの樹脂流路に連通して配設されたホットランナノズルと、前記ホットランナノズルの樹脂流路を貫通して配設されたバルブピンと、前記バルブピンを前記ホットランナ金型の開閉動作にて移動させる駆動力伝達手段とを備えたことを特徴とするホットランナ成形型。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ホットランナノズルを備えたホットランナ成形型を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0051】
2…固定型、3…可動型、4…キャビティ、10…マニホールド、6…キャビティ、12…ゲート(入り口部分)、13…ホットランナノズル、14…バルブピン、22…駆動力伝達手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動型と、
固定型内に配設され、溶融樹脂を供給するマニホールドと、
前記マニホールドの樹脂流路に連通して配設され、前記可動型と前記固定型との間のキャビティの入り口部分に連通するホットランナノズルと、
前記ホットランナノズルの樹脂流路を貫通して配設され、前記入り口部分を開閉するバルブピンと、
前記固定型と前記可動型との間の型開閉動作の駆動力を前記バルブピンに伝達し、前記バルブピンによる前記入り口部分の開閉動作を行う駆動力伝達手段と
を備えたことを特徴とするホットランナ成形型。
【請求項2】
前記固定型は、前記ホットランナノズルを保持する受板が固定取付け板との間にスペーサを介して取付けられ、
前記受板と前記固定取付け板との間に前記スペーサによって形成される空間に前記型開閉動作方向に沿って移動可能なピンプレートが配設され、前記バルブピンの基端部が前記ピンプレートに固定されるとともに、
前記受板は、前記型開閉動作方向に延設された貫通孔を有し、
前記可動型は、前記キャビティを有する可動側型板と、前記可動側型板が取付けられる可動取付け板とを備え、
前記駆動力伝達手段は、前記受板の前記貫通孔内に前記型開閉動作方向に移動可能に挿通され、一端が前記ピンプレートに固定された駆動軸体を有し、
前記駆動軸体の他端は、前記可動側型板に前記型開閉動作方向に移動可能に連結され、
前記固定型と前記可動型との間の型閉じ位置では前記バルブピンが前記入り口部分の開位置で保持され、前記可動型の型開き動作にともない前記可動側型板によって前記駆動軸体を介して前記ピンプレートを前記可動型の型開き動作方向に移動させて前記バルブピンによる前記入り口部分の閉動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のホットランナ成形型。
【請求項3】
前記駆動軸体は、前記可動側型板内で前記型開閉動作方向に移動可能に保持される大径部を有し、
前記可動側型板は、前記駆動軸体の大径部を前記型開閉動作方向に移動可能に挿通する挿通孔と、前記大径部よりも小径なストッパ部とを有し、
前記可動型の型開き動作時に前記大径部が前記ストッパ部に係脱可能に係止されることで前記ピンプレートを前記可動型の型開き動作方向に牽引する操作力を伝達することを特徴とする請求項2に記載のホットランナ成形型。
【請求項4】
前記固定取付け板は、前記可動型の型開き動作時に前記ピンプレートの移動量を制限するストップ部材を有することを特徴とする請求項2に記載のホットランナ成形型。
【請求項5】
前記駆動力伝達手段は、前記バルブピンを前記入り口部分の開位置方向に押圧する方向に付勢する付勢手段を有することを特徴とする請求項3に記載のホットランナ成形型。
【請求項6】
前記付勢手段は、前記可動側型板の前記挿通孔内に配設され、前記大径部を前記ストッパ部から離れる方向に付勢する弾性部材によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載のホットランナ成形型。
【請求項7】
前記付勢手段は、前記スペーサによって形成される空間内で前記受板と前記固定取付け板との間に配設された弾性部材によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載のホットランナ成形型。
【請求項8】
前記固定型は、前記ホットランナノズルと前記キャビティとの間にランナが介設され、前記ホットランナノズルが前記ランナを介して前記キャビティに連通されるとともに、
前記受板と前記可動型との間にそれぞれ前記可動型の型開き動作方向に移動可能な落下板とランナ板とが配設され、
前記ピンプレートは、前記受板と前記落下板を挟んで第1の駆動軸体が締結され、
前記落下板は、前記ランナ板を挟んで第2の駆動軸体が締結され、
前記ランナ板は、前記可動型板を挟んで第3の駆動軸体が締結され、
前記受板は、ランナロックピンを保持するランナロック板が締結され、
前記固定型と前記可動型との間の型閉じ位置では前記バルブピンが前記入り口部分の開位置で保持され、
前記可動型の型開き動作にともない前記可動側型板と前記可動取付け板が前記可動型の型開き方向へ移動し、前記第3の駆動軸体を介して前記ランナ板が前記可動型の型開き方向へ引っ張られ、続いて前記ランナ板が前記可動型の型開き方向へ移動することで、前記第2の駆動軸体を介して前記落下板が前記可動型の型開き方向へ引っ張られる際に、前記第1の駆動軸体によって前記ピンプレートが前記可動型の型開き方向に引っ張られ、前記バルブピンによる前記入り口部分の閉動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のホットランナ成形型。
【請求項9】
前記可動型は、前記可動側型板に複数の前記キャビティを有し、
前記固定型は、複数の前記キャビティ毎に前記ホットランナノズルがそれぞれ配設され、
前記ピンプレートは、前記各ホットランナノズルの前記バルブピン毎にそれぞれ独立に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のホットランナ成形型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−99860(P2013−99860A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243627(P2011−243627)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】