説明

ホメオトロピック液晶シランを利用した耐引っかき性ディスプレー及び同ディスプレー製造法

【課題】耐引っかき性であるディスプレーを提供すること。
【解決手段】基材(14);少なくとも導電層(16)を含む基材の一表面上にある活性部位(15);及びディスプレーに接触する物体のエネルギー散逸性を低下させるための、活性部位上に配置されたホメオトロピックオルガノシラン層(22)を含む耐引っかき性ディスプレー(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐引っかき性表面、より具体的にはコンピュータータッチスクリーンパネルの様な耐引っかき性ディスプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
表面の引っかきは製品の外観や機能に有害な影響を及ぼす。このことは特に、その表面をフィルター又は誘導性コーティングの様に特定機能を提供することを目的とし単層または複数層でコートされている光学及びディスプレー産業に当てはまる。具体的にはコンピュータータッチスクリーンパネルが特に傷つきやすい。タッチスクリーンはコンピューターの出力デバイスとして益々一般的になっている。接触は、指または針(スタイラス)がタッチスクリーンパネルの最外表面に接した時、タッチスクリーンにより感知される。接触はパネル上の指又はスタイラスのxとyの座標に翻訳される。データ入力は接触を基礎としているため、タッチスクリーンパネルは本来的に引っかきを受けやすい。
【0003】
引っかきは表面の可塑的変形により起こる。引っかきを生ずる力は2成分に分けることができる:表面に対し垂直である成分と、表面に対し平行な成分である。表面に対し垂直な成分は表面上に可塑的変形を生じ、表面に対する平行成分は材料を不適当に押しのけることで損傷を拡大する。垂直成分による損傷は接触表面の摩擦に依存している。摩擦係数が大きいほど垂直成分も大きくなり、その結果生じる損傷も大きくなる。
【0004】
表面に耐引っかき性を供するために最も広く利用されている2つの方法はタッチスクリーンの最外層への潤滑剤の導入、及び固体/硬質保護コーティングである。潤滑剤の導入は、表面を損傷する垂直成分による表面にそったエネルギー散逸性を減らす。固体/硬質コーティングは第1場での初期の可塑的変形を回避することを目的としている。しかし潤滑剤あるいは固体/硬質保護コーティングはいずれもタッチスクリーンパネルに対し充分な耐引っかき性を提供しない。
【0005】
非ホメオトロピックオルガノシラン(有機シラン)は、非同類表面間に安定な結合を提供するカップリング剤として長い間使用されている。表面材料に化学結合を形成することはカップリング剤の重要な特性である。一部の耐引っかき性表面処理はガラス表面の潤滑性を改善するためにオルガノシランを利用しているが、大部分の処理は硬質コーティングを提供することを伴うものである。
【0006】
オルガノシランの幾つかの他のファミリーも試験されている。その中にはアルキルシロキサン、アルキルアミノシロキサン、ペルフルオロアルキルシロキサンが含まれている。しかしこれらオルガノシランの中で、タッチスクリーンパネルに求められる程度まで耐引っかき性を改善するものは無いことが判明している。
【0007】
タッチスクリーンパネルはATMから、カジノやバールームのビデオゲームまで至る所に見ることができる。これら環境は極めて苛酷であり、コイン、ビンやガラス類による引っかきを受けやすく、また空気中のゴミや破壊行為さえ受けることがある苛酷な屋外要素にさらされることもある。引っかきの程度に依存し、ディスプレーの機能も大きく影響を受けるだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、耐引っかき性であるディスプレーを提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、耐久性であり長寿命であるこのような耐引っかき性ディスプレーを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、多くのコーティングされた表面に適用できる耐引っかき性表面を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ホメオトロピックオルガノシランをディスプレー最外表面に適用し、物体が表面を横断して引きずったときの物体のエネルギーの散逸性を減らすことにより、真に耐久性でありかつ長寿命である耐引っかき性ディスプレーを得ることができることによるものである。
【0012】
本発明は、基材、少なくとも導電層を含む、基材の1表面上にある活性部位、及びディスプレーに接触する物体のエネルギー散逸性を減らすための、活性部位上に付着したホメオトロピックオルガノシラン層を具備する耐引っかき性ディスプレーを特徴とする。
【0013】
好ましい実施態様では、活動部位は導電層上の保護層を含むだろう。活性部位は導電層上に変形可能な導電層を含むだろう。オルガノシランは液晶シランを含むだろう。基材は透明であろう。透明基材はガラスであろう。ディスプレーはタッチスクリーンパネルであろう。第1の導電層は酸化スズを含むだろう。活性部位の反対面上の基材には第2の導電層が配置されるだろう。第1及び第2の導電層は酸化スズであろう。
【0014】
本発明はまた、絶縁性基材、絶縁性基材の1表面上に配置された導電層、導電層上に配置された保護層、及びタッチスクリーンパネルに接触する物体のエネルギー散逸性を減じるための、保護層上に配置されたホメオトロピックオルガノシラン層を含む、耐引っかき性タッチスクリーンパネルを特徴とする。
【0015】
本発明は更に、絶縁性基材、基材上に配置された活性部位(少なくとも、絶縁性基材に近接して配置された第1の導電層、第1の導電層に近接し且つ間隔を開けて配置された変形可能な導電層、変形可能な導電層上に配置された保護層を含む)を有する耐引っかき性タッチスクリーンパネルを特徴とする。タッチスクリーンパネルに接触する物体のエネルギー散逸性を減じるための、活性部位上に配置されたホメオトロピックオルガノシラン層がある。
【0016】
本発明はまた、伝達媒体及びホメオトロピックオルガノシランを組み合せ、さらに保護対象のコーティングされた透明製品にこの組み合せ物を適用することで、耐引っかき性のコーティングされた透明製品を製造する方法を特徴とする。
【0017】
好ましい実施態様では、オルガノシランは液晶シランを含むことができる。製品は組み合せ物を適用した後、組み合せ物の解離温度より低い温度に加熱されてよい。伝達媒体は水を含んでよい。伝達媒体はアルコールを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ディスプレーが容量性タッチスクリーンパネルである、本発明による耐引っかき性ディスプレーの立体図である。
【図2】ディスプレーが抵抗性タッチスクリーンパネルである、図1同様の立体図である。
【図3】液晶シランの個々の炭素鎖がどのように配列しディスプレーに対し垂直に配向しているかを示し、そしてディスプレーに接触する物体と液晶シランがどのように反応するかを描写する、本発明による耐引っかき性ディスプレーの略図である。
【図4】本発明による耐引っかき性ディスプレーを提供する方法のブロックダイヤグラムである。
【図5】液晶シランが熱無しに硬化される、図4同様のブロックダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は、以下の好適実施態様の記載及び添付の図面より当業者に明らかになるだろう。
図1は、ディスプレーが容量性タッチスクリーンパネルである、本発明による耐引っかき性ディスプレーの立体図であり、
図2は、ディスプレーが抵抗性タッチスクリーンパネルである、図1同様の立体図であり、
図3は、液晶シランの個々の炭素鎖がどのように配列しディスプレーに対し垂直に配向しているかを示し、そしてディスプレーに接触する物体と液晶シランがどのように反応するかを描写する、本発明による耐引っかき性ディスプレーの略図であり、
図4は、本発明による耐引っかき性ディスプレーを提供する方法のブロックダイヤグラムであり、そして
図5は、液晶シランが熱無しに硬化される、図4同様のブロックダイヤグラムである。
【0020】
本発明の図1の耐引っかき性ディスプレー10は、例えばマサチューセッツ州、メスエンのマイクロタッチシステム(Microtouch Systems,Inc.,Methuen、Massachusetts)より入手可能な複数の異なる層より成るコンピュータータッチスクリーンパネルの様なスクリーンディスプレーであることができる。
【0021】
タッチスクリーンパネル12は、典型的にはガラス、プラスチック又はその他透明な媒体である絶縁性基材14、及び基材14上の活性部位15を含む。活性部位15は典型的には基材14上に直接付着された透明な導電層16を含む。層16は典型的には厚さ20ないし60ナノメーターの酸化スズの層であり、スパッター、真空蒸着及びその他当分野の既知の方法により付着されるだろう。層の厚さは図で例示のみを目的とし誇張されており、層のスケールを表すものではない。導電層16は更に導電性ポリマー性材料及び導電性有機−無機複合材も含んでよい。
【0022】
示してはいないが、導電性パターンは典型的には、スクリーンと指又はスタイラスの間に接触点を確立する様に導電層16全体にわたって均一な電場を提供するように導電層16の外辺部付近に配置されている。
【0023】
活性部位15は更に、導電層16に摩滅耐性を提供し導電層16を保護する為に導電層16上に付着された保護層18を含んでよい。保護層18はメチルトリエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、イソプロパノール及び水を含む溶液を製品に適用することで形成される、オルガノシロキサンの層であることができる。
【0024】
第2の導電層20は、ディスプレー10を取り付けることができるディスプレー装置の電気回路(図示しない)から生じることがあるノイズからディスプレー10をシールドするために提供されることができ、また、導電層16について議論したのと同様に付着された酸化スズ層を同様に含むことができる。しかし、ディスプレー10は導電層20なしでも有効に作動できることから、導電層20は発明の必要条件ではない。
【0025】
本発明による耐引っかき性層22は、通常保護層18上にある活性部位15に適用され、又は保護層18が存在しない場合には導電層16に直接適用され、あるいはディスプレー10に接触する物体のエネルギー散逸性を低下し、それによってディスプレー10への障害を最小化するか、防止するために追加の層が存在する場合には最外層の上に適用される。耐引っかき性層22は好ましくはホメオトロピック液晶シラン化合物を含む。
【0026】
図2のディスプレー10aは、例えば図1同様に絶縁基材14a及び導電層16aを含む、マサチューセッツ州、メスエン、マイクロタッチシステム社、カリフォルニア州、フリーモント、エロタッチシステム社(Elo Touch Systems、Freemont、California)又はブリティッシュコロンビア州、バンクーバー、ダイナプロ社(Dynapro,Vancouver、British Columbia)から入手可能な抵抗性コンピュータータッチスクリーン12aを含むことができる。保護層18aは、導電層16aと保護層18aの間に挿入された変形可能な導電層24を保護し且つ支持する硬質コーティングを含むことができる。ディスプレー10aは、指又はスタイラスに接触されると、変形可能な導電層24は圧縮され、導電層16aと接触するようになり、接触位置を指示する。耐引っかき性層22aは層18a上に適用されており、また、好ましくはホメオトロピック液晶シラン化合物1を含む。
【0027】
液晶シランはオルガノシラン族である。オルガノシランの一般式は、
nSiXm
であり、式中
Rはケイ素原子に結合した有機官能基であり;
Xはケイ素原子に結合したハロゲン基又はアルコキシル基の様な加水分解可能な基であり;
nは1又は2であり;そして
mは4−nである。
【0028】
しかし、液晶シランは、以下の一般式:
3Si(CH2p
を持ち、式中、p>1であり;
Xは、シラノールを形成するように加水分解可能なCl、Br、アルコキシ、ヒドロキシル基及びそれらの混合物のグループより選択され;そして
Zは、アルキル第4アンモニウム塩、アルキルスルフォニウム塩、アルキルフォスフォニウム塩、置換ビフェニル化合物、テルフェニル化合物、アゾキシベンゼン、シンナメート、ピリジン、ベンゾエート及びそれらの混合物のグループより選択される化合物である。
【0029】
液晶シランは、ガラス、プラスチック、セラミック、半導体、金属、有機ポリマーコーティングされた基材、又は無機コーティングされた基材の様な表面に対して、耐久性がありかつ長寿命の結合を形成する。これらのシランは高度に規則的な分子構造を有している。ホメオトロピック液晶シランは、高度の規則性に加え、液晶シランを構成する炭素鎖の主軸がそれらが結合する表面に対し垂直に自然に配列し、あるいは配列する傾向を持つように結合する。配列が垂直であるため、得られるフィルムは高い充填密度を有し、ファン・デル・ワールス力を最大化し、効果的に引っかきを防止する。
【0030】
この様な特性を有する液晶シランの良い例は、8重量%のクロロプロピルトリメトキシシラン、42重量%のオクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド及び50重量%のメチルアルコールを含む、ミシガン州、ミッドランド、ダウコーニング社(Dow Corning、Midland、Michigan)から入手可能なダウコーニング5700である。
【0031】
別の液晶シランは、15重量%のクロロプロピルトリメトキシシラン、72重量%のオクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、1重量%のジエチルオクタデシルアミン及び12重量%のメチルアルコールを含むダウコーニング5772である。
【0032】
ダウコーニング5700と類似の液晶シランは、60重量%のオクタデシルアミノジメチルトリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、3ないし5重量%のCl(CH23Si(OMe)3及び35ないし37重量%のメタノールを含む、ペンシルバニア州、チュリタウン、ゲレスト社(Gelest,Inc,Tullytown、Pennsylvania)から入手可能なゲレストSIO6620.0である。
【0033】
伝達媒体は、典型的にはホメオトロピック液晶シランを希釈し、シランを保護すべき表面に運搬するために用いられる。メタノール、エタノール及びイソプロパノールの様な低分子アルコールはシラン適用のための好適なビヒクルであるが、伝達媒体として水も利用できるだろう。更に、水はオルガノシランと反応し、加水分解生成物又はシラノールを形成する。
【0034】
水とオルガノシラン間の加水分解反応は酸性溶液内にて触媒できることも知られている。このため、溶液が塩基性の場合に溶液の沈殿を起こす自己縮合反応に対してシラノールが安定であるように、安定化剤を使用してよい。
【0035】
シラノールと基材の間に形成される結合は交互縮合反応を通じ完成される。シラノールと基材上の分子との間の交互縮合反応は一般に遅い。この反応は新しく処置された基材を150℃以下の温度で数分間、典型的には少なくとも3分間加熱することで促進することができる。しかし、温度が150℃を越えると、シランは伝達媒体と解離する。典型的には、液晶シランと基材の間に永久的結合を形成するには、基材を100ないし150℃の間で少なくとも3分間加熱すれば十分である。
【0036】
オルガノシランプライマー層は、基材と液晶シランとの間の結合性を改良するのに利用されてよい。一般に、オルガノシラン層は極めて高い濃度のヒドロキシル基と高角度のSi−O−Si結合を含む。これらは加水分解された液晶シランの結合部位である。永久結合は、加水分解された液晶シラン分子とオルガノシラン層との間の縮合反応により形成される。Si−O−Si結合は極めて耐久性であることが知られている。
【0037】
上記発明の背景に記した如く、引っかきは可塑的変形が起こり、材料が押しのけられた場合に形成される。指、スタイラス、ビン、コインその他硬質物体の様な物体が表面を横断すると、接触面間の摩擦力の結果としてエネルギーが散逸される。即ち、エネルギー散逸性が低下すれば、押しのけが無くなり、その結果引っかきが無くなる。
【0038】
図3ではディスプレー10に接触する物体の力は矢印24で示されており、それは垂直成分26と水平成分28に分けられるだろう。
【0039】
しかし、液晶シラン22は、非常に拡大して示されている個々の炭素鎖21から構成され、それは保護層18に対し垂直に配列された、又は配列される傾向にある。鎖21は物体による接触によって、矢印24の方向に対応する方向に屈曲されるときに、接触力はそれぞれ垂直力及び水平力成分26及び28に対向する成分26’及び28’に分けられる矢印24’により示される対向力とつりあっている。更に充填密度が高いため、物体はより大きな対抗力を受ける。
【0040】
液晶シランの充填密度の高さはその規則的構造の高さによる。ホメオトロピックオルガノシランの直鎖状炭素鎖は表面に対し垂直に密に充填されており、それにより通常の潤滑剤に比べより大きな対抗力を提供し損傷力に対抗する。この高度に規則的な構造は、伸長した鎖構造の変形の様な構造欠損は少なく、そのため通常の潤滑剤に比べより良い耐引っかき性を提供する。ホメオトロピック液晶シランは、その軸が表面に対し垂直であることから、保護層の厚さを最大化する。
【0041】
対照的に、非ホメオトロピック液晶シランはこの高度に規則的な層を形成できず、その為に引っかきからの表面の保護に於いて大きく劣る。
【0042】
このように、物体の力は、シランのホメオトロピック配向の結果として液晶シランにより対抗されるため、摩擦の少ない接触が起こり、その結果エネルギー散逸性が小さくなり、それにより指、スタイラス、又はその他硬質物体のディスプレーでの接触より生じうる損傷が最小化される。
【0043】
処理を受けた製品は、耐引っかき性の上昇を示すだけでなく、更に帯電防止性にも改善を示し、清浄がより容易になる。
【実施例】
【0044】
実施例1
加水分解剤及び伝達剤としての1重量%の量の水を、同様に伝達剤としての97.9重量%のイソプロピルアルコール及び1.1重量%のダウコーニング5700と図4の段階32にて組み合わせた。まず水をアルコールに加え、機械攪拌によって混合して均一な透明な溶液を得た。次にダウコーニング5700化合物をこの溶液に加え、機械攪拌により攪拌し、均一溶液を得た。加水分解反応が即時に起こった。
【0045】
段階34にて組み合せ物を、図1のタッチスクリーン12と類似のマイクロタッチシステム社より得た容量性タッチスクリーンパネルの最外表面に、溶液をスクリーン上に噴霧し、塗りつけて溶液を均一に分布させることにより適用した。しかし、上記は本発明を限定するものでなく、溶液はブラシ塗布、浸漬、塗りつけ、及び当分野に既知の他の方法の様な方法にて適用されてよい。伝達媒体は段階36にて蒸発され、その後タッチスクリーンは段階38にて3分間120℃の温度に加熱された。加熱がフィルムを硬化し、保護層と液晶シラン層の間の結合を促進する。続いてタッチスクリーンは段階40にて冷却された。
【0046】
適用工程の後、容量性タッチスクリーンは極めて耐引っかき性であることが証明された。ポールNガードナー社(Paul N、Gardner Co.,Inc)から入手可能なバランスビーム掻き取り接着損傷試験装置(Balance Beam Scrape Adhesion Mar Tester)、モデルPA−2197を使って、処理前及び後のタッチスクリーンパネルの耐引っかき性を測定した。
【0047】
試験装置は掻き取り接着による有機コーティングの接着に関するASTM D−2197標準試験法の要件を越えており、また有機コーティングの損傷耐性に関するASTM D−5178標準試験法に見合うものである。試験装置はスタイラスによる引っかきに必要な重量を測定する。1/16インチのスチールより作製し、55〜61ロックウエル硬度まで熱処理した、外直径0.128インチのループスタイラスを利用して引っかきを行った。
【0048】
引っかきは、図1の保護層18の機能破損により規定された。換言すれば、保護層18が除去され、導電層16が露出された。
【0049】
処置前、引っかきは僅か50グラムで生じた。しかし処理後は、試験装置は10,500グラムの最大負荷でも引っかき作ることはできなかった。この事は、耐引っかき性が少なくとも210倍改善されたことを意味する。
【0050】
実施例2
1重量%の量の水を、98重量%のイソプロピルアルコール及び1重量%のゲレストSIO6620.0を図5の段階42にて、実施例1同様の方法にて組み合わせた。
【0051】
組み合せ物は段階44にて、マイクロタッチシステム社より得た、図2のタッチスクリーン12と類似の抵抗性タッチスクリーンパネルに、溶液をスクリーン上に噴霧し、塗りつけて溶液を均一に分布させることにより適用した。伝達媒体は段階46にて蒸発され、フィルムは段階48にて室温に77時間放置され硬化された。
【0052】
上記に同じ試験装置を使い、タッチスクリーンパネルの耐引っかき特性が評価された。引っかきは保護層18aの層剥離として規定された。
【0053】
処置前、引っかきは僅か250グラムの負荷で生じた。しかし、処置後、引っかき形成には6、000グラムの負荷が必要とされた。このことは、耐引っかき性が24倍まで改善されたことを意味する。
【0054】
実施例3
1重量%の量の水を、98重量%のイソプロピルアルコール及び1重量%のダウコーニング5722を、実施例1記載と同様に図5の段階42にて組み合わせた。
【0055】
溶液は段階44にてマイクロタッチシステム社より得た、図1のタッチスクリーン12と類似の容量性タッチスクリーンパネルに、実施例2と同様の方法にて適用された。即ち、段階46にて伝達媒体を蒸発した後、段階48にてディスプレーに熱を加えることなくフィルムを一晩硬化した。
【0056】
引っかき試験は、CSEMインスツルメント社から入手可能なマイクロスクラッチ試験装置を用い実施された。試験は、タッチスクリーンパネル上に硬質チップを使ってコントロールされた引っかきを作製することを含んだ。半径10ミクロンのタングステンカーバイド製圧子を、負荷を増しながらパネル表面を横断させた。臨界負荷は、負荷アームに取り付けられた音響センサーと光学顕微鏡により極めて正確に検出される。
【0057】
タッチスクリーン処置前の引っかきを形成するための臨界負荷は0.55Nであった。しかし処置後は、引っかきを形成するのに必要な負荷は1.8Nであった。
【0058】
タッチスクリーンの普及により、それらは様々な環境下にある様々な場所で見受けられるようになった。通常の伝統的な利用による従来の引っかきの危険以外にも、タッチスクリーンはもはやビンや、コイン、あるいは空気中の破片そして暴力といった従来にない危険にも曝されるようになっている。ホメオトロピック液晶シランを最外表面に適用することで、従来の損傷に加え、これら苛酷な環境にて通常生ずる損傷も大きく減らされ、完全に防止される。従来の潤滑剤及び硬質コーティングは若干効果的ではあったが、本発明が示す耐引っかき性は提供でなかった。
【0059】
本発明の特異的特徴は幾つかの図面に示されており、またその他は示されていないが、これは便宜上のみのことであり、各特徴は本発明による他の特徴のいずれか、または全てと組み合わすことができるだろう。
【0060】
他の実施態様は当業者にとって明瞭であり、特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を具備する耐引っかき性ディスプレー:
基材;
少なくとも導電層を含む前記基材の1表面上の活性部位;及び
前記ディスプレーと接触する物体のエネルギー散逸性を低下させるための、前記活性部位上に付着されたホメオトロピックオルガノシラン層。
【請求項2】
前記活性部位が前記導電層上に保護層を更に含む、請求項1記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項3】
前記活性部位が前記導電層上に変形可能な導電層を更に含む、請求項1記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項4】
前記オルガノシランが液晶シランを含む、請求項1記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項5】
前記基材が透明である、請求項4記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項6】
前記透明基材がガラスである、請求項6記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項7】
前記ディスプレーがタッチスクリーンパネルである、請求項4記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項8】
前記第1の導電層が酸化スズを含む、請求項4記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項9】
前記活性部位の反対表面の前記基材上に付着された第2の導電層を更に含む、請求項1記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項10】
前記第1及び前記第2の導電層が酸化スズである、請求項9記載の耐引っかき性ディスプレー。
【請求項11】
以下を具備する耐引っかき性タッチスクリーンパネル:
絶縁性基材;
前記絶縁性基材の1表面上に配置された導電層;
前記導電層上に配置された保護層;及び
前記タッチスクリーンパネルに接触する物体のエネルギー散逸性を低下させるための、前記保護層上に配置されたホメオトロピックオルガノシラン層。
【請求項12】
以下を具備する耐引っかき性タッチスクリーンパネル:
絶縁性基材;
少なくとも、前記絶縁性基材に近接して配置された第1の導電層、前記第1の導電層に近接するが隔てられている変形可能な導電層、及び前記変形可能な導電層上に配置された保護層を有する活性部位であって、前記基材上に配置された活性部位;及び
前記タッチスクリーンパネルに接触する物体のエネルギー散逸性を低下させるための、前記活性部位上に配置されたホメオトロピックオルガノシラン層。
【請求項13】
耐引っかき性のコーティングされた透明製品の製造方法であって、
伝達媒体とホメオトロピックオルガノシランを組み合わせること;及び
保護対象のコーティングされた透明製品に前記組み合せ物を適用すること、
を含む方法。
【請求項14】
前記オルガノシランが液晶シランを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記組み合せ物を適用した後に、前記組み合せ物の解離温度より低い温度に前記製品を加熱することを更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記伝達媒体が水を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
伝達媒体がアルコールを含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記保護層がオルガノシロキサンを含む、請求項2記載の耐引っかき性ディスプレー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−198036(P2010−198036A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−106616(P2010−106616)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2000−574979(P2000−574979)の分割
【原出願日】平成11年10月1日(1999.10.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】