説明

ホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法及び記録方法

【課題】ホログラフィック記録媒体の要素ホログラムによる画像記録の最適な記録条件を短時間で、且つ定性的に決定する方法を提供する。
【解決手段】ホログラフィック記録媒体に、複数の要素ホログラムを連続して記録するとき、記録レーザ光の記録露光量を第1〜第n段階に変化させて、明パターン画像及び暗パターン画像を各段階毎に第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像としてそれぞれ記録し、これらに再生光を照射して、明及び暗パターンの各画像の中心部からの回折光の強度を検出し、第1〜第n明パターンの画像からの回折光強度をSa〜Sa、前記第1〜第n暗パターンの画像からの回折光強度をSb〜Sbとしたとき、Sa/Sb=SNR、…Sa/Sb=SNRを算出し、算出されたSNR〜SNRのうち最大となるSNRmaxの時の記録露光量を、最適記録露光量とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録媒体の表面にドット状の複数の要素ホログラムを形成して3次元画像のハードコピーを作成する際における要素ホログラムの記録のための記録露光量を決定する方法及びこの決定された記録露光量により立体画像を記録する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3次元物体のハードコピーとして用いることのできるホログラフィック立体ハードコピー、その作成方法及び装置が開示されている。このホログラフィック立体ハードコピーは、基材表面にドット状の複数の要素ホログラムを形成して構成されている。
【0003】
上記の記録方法は、3次元画像データからホログラフィック記録媒体の各点に対応する原画パターンを表示手段に表示して、その表示された原画パターンに対応してドット状の要素ホログラムを上記ホログラフィック記録媒体に形成するものである。
【0004】
このように、要素ホログラムを用いて3次元画像を形成するにあたり、要素ホログラムの記録の際における最適な記録条件を見出す必要がある。
【0005】
具体的には、物体光及び参照光の強度、物体光と参照光の強度比及び露光時間を変化させて、そのホログラフィック記録媒体に最適な記録条件を決める必要がある。
【0006】
これに対して、例えば特許文献2には、ホログラフィック光学素子の評価方法及びその装置が開示されているが、定量的な記録条件を決定できるものではなく、従って、条件を変化させ、要素ホログラムを記録したサンプル画像を、白色光下、目視で観察し、その最適な記録条件を決めざるを得ず、この場合は、最適な記録条件を決定するために膨大なサンプル数と、それを目視する為の時間が必要となるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−249686号公報
【特許文献2】特許第3058929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、要素ホログラムによる立体画像記録のための最適な記録条件を、短時間で、且つ定性的に決定することができるホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法及びこれを用いた記録方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち以下の実施例により上記課題を解決することができる。
【0010】
(1)ホログラフィック記録媒体に複数の要素ホログラムを形成して3次元画像を作成する際における前記要素ホログラムの記録のための記録露光量を決定する方法であって、
第1段階の記録露光量で、要素ホログラムを複数連続的に記録して、中心部が周辺部より明るい第1明パターンの画像を記録する第1明パターン画像記録過程、記録露光量を第2〜第n段階に変化させて、前記第1明パターンの画像と同一パターンの第2〜第n明パターンの画像を記録する第2〜第n明パターン画像記録過程からなる明パターン画像記録過程と、前記第1明パターン画像記録過程における、前記第1段階と同一の記録露光量で、要素ホログラムを複数連続的に記録して、中心部が周辺部よりも暗く、且つ、前記第1明パターンの画像と明暗が反転している第1暗パターンの画像を記録する第1暗パターン画像記録過程、記録露光量を前記第2〜第n段階と同一として、前記第1暗パターンの画像と同一パターンの第2〜第n暗パターンの画像を記録する第2〜第n暗パターン画像記録過程からなる暗パターン画像記録過程と、前記第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像に再生光を照射して、各々から発生する回折光の強度を検出する過程と、
前記第1〜第n明パターンの画像からの回折光強度をSa〜Sa、前記第1〜第n暗パターンの画像からの回折光強度をSb〜Sbとしたとき、Sa/Sb=SNR、Sa/Sb=SNR、…Sa/Sb=SNRを算出するSNR算出過程と、前記算出されたSNR、SNR、…SNRのうち最大となるSNRmaxを決定するSNRmax決定過程と、前記第1〜第n段階の記録露光量のうち、SNRmaxとなる記録露光量を最適記録露光量とする過程と、を有してなるホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【0011】
(2)(1)において、前記第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像における前記中心部の画像の面積がパターン全体の面積の0.01乃至0.5であることを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【0012】
(3)(1)または(2)において、前記ホログラフィック記録媒体に、画像を記録するための画像領域の他に、試し書き領域を設定しておき、前記第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像を該試し書き領域に記録することを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【0013】
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記ホログラフィック記録媒体が、赤、緑、青の3色のカラー画像記録媒体であり、前記明パターン画像記録過程及び暗パターン画像記録過程は、赤色記録レーザ光による赤色明パターン画像記録過程及び赤色暗パターン画像記録過程と、緑色記録レーザ光による緑色明パターン画像記録過程及び緑色暗パターン画像記録過程と、青色記録レーザ光による青色明パターン画像記録過程及び青色暗パターン画像記録過程と、を含み、記録露光量を赤、緑、青の各色毎に決定することを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【0014】
(5)(1)乃至(4)において、前記明パターン画像及び暗パターン画像の暗部及び明部は、それぞれ空間光変調器の全暗画素及び全明画素により形成されることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【0015】
(6)(1)乃至(5)のいずれかで決定された最適記録露光量の記録レーザ光により、ホログラフィック記録媒体に立体画像を記録することを特徴とするホログラフィック記録媒体への記録方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、SNRの高い良好な画像のための記録条件を定性的に、且つ短時間で決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法を実施するための装置における光学系を示す光学系統図
【図2】同装置において、ホログラフィック記録媒体に記録された要素ホログラムを一部拡大して模式的に示す説明図
【図3】同装置において、要素ホログラムにより形成する明パターン画像及び暗パターン画像を示す平面図
【図4】同装置における制御系を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態の例に係る記録露光量決定方法の過程を示すフローチャート
【図6】図3に示される画像のパターンと比較するための全明及び全暗パターンを示す平面図
【図7】同決定方法の過程における図3の明パターン画像及び暗パターン画像での、記録露光量と再生時の回折光の検出強度に対応するSNRを示す比較図
【図8】明パターンを全明、暗パターンを全暗とした比較パターン画像からの回折光強度、SNRを、記録露光量毎に測定した結果を示す比較図
【図9】図7及び図8の記録露光量とSNRとの関係を示す線図
【図10】明パターン画像及び暗パターン画像の他の例を示す平面図
【図11】ホログラフィック記録媒体に反射型ホログラムを形成する場合の記録露光量決定方法を実施するための装置における光学系を示す光学系統図
【図12】ホログラフィック記録媒体にカラー画像を記録する場合の記録露光量決定方法の過程の要部を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態に係るホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法は、図1に示されるようなホログラフィック記録媒体の記録露光量を決定するための記録露光量決定光学系10により、ホログラフィック記録媒体12に、図2に示されるような、ドット状の複数の要素ホログラム14を連続して記録するとき、記録レーザ光の記録露光量を第1〜第n段階に変化させて、図3に示されるような明パターン画像25及び暗パターン画像27を各段階毎に第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像としてそれぞれ記録し、これらに再生光を照射して、明パターンの各画像及び暗パターンの各画像の中心部からの回折光の強度を検出し、第1〜第n明パターンの画像からの回折光強度をSa〜Sa、前記第1〜第n暗パターンの画像からの回折光強度をSb〜Sbとしたとき、Sa/Sb=SNR、…Sa/Sb=SNRを算出し、算出されたSNR〜SNRのうち最大となるSNRmaxの時の記録露光量を、最適記録露光量とするものである。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例1に係るホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法を実施するための装置における記録露光量決定光学系10は、図1に示されるように、レーザ16からビームスプリッタ18に至る光源光学系20と、ビームスプリッタ18の透過光を参照光としてホログラフィック記録媒体12に導くための参照光光学系30と、ビームスプリッタ18における反射光を物体光として、前記参照光と反対側からホログラフィック記録媒体12に導くための物体光光学系40と、ホログラフィック記録媒体12を間にして物体光光学系40と対向するようにして配置された検出光学系50とから構成されている。
【0020】
また、ホログラフィック記録媒体12に形成された立体画像を再生するための再生光を照射する再生光学系60とを有している。
【0021】
光源光学系20は、レーザ16側からシャッタ21、コリメータレンズ22、1/2波長板24、偏光フィルタ26を備えて構成されている。
【0022】
参照光光学系30は、NDフィルタ32と、回転可能ミラー34と、アパーチャ36とを備えて構成されている。
【0023】
この回転可能ミラー34は、図1に示されるように、ビームスプリッタ18及びNDフィルタ32を透過した参照光をホログラフィック記録媒体12方向に反射する位置と、参照光を遮断して、再生光学系60からの再生光をホログラフィック記録媒体12に入射させる位置との間で揺動可能となっている。
【0024】
物体光光学系40は、ビームスプリッタ18からホログラフィック記録媒体12との間に、NDフィルタ41、ミラー42、ビームエクスパンダ43と、空間光変調器(SLM)44と、対物レンズ45とをこの順で備えて構成されている。
【0025】
検出光学系50は、ホログラフィック記録媒体12を間にして、前記対物レンズ45と反対側の位置に設けられた検出側対物レンズ52と、この検出側対物レンズ52において平行光とされた回折光を受光する受光素子54とを備えて構成されている。
【0026】
再生光学系60は、白色再生光を出射するLED62とコリメータレンズ64とを備えて構成されている。
【0027】
ここで、ホログラフィック記録媒体12は、XYステージ13に搭載されてXY平面内で移動可能とされ、また、前記検出光学系50の受光素子54はCCDとされている。
【0028】
この実施例では、図1に示される記録露光量決定光学系10のSLM44を、図3に示される明パターン画像25及び暗パターン画像27による要素ホログラム14を夫々連続的に形成することによって、ホログラフィック記録媒体12の夫々の領域に記録する。
【0029】
記録後は、レーザ16のパワーをシャットダウンするか、レーザ16からレーザ光を出射直後に遮蔽板を設け、記録露光量決定光学系10における回転可能ミラー34を、LED62からの再生光がホログラフィック記録媒体12に向けて通過するように回転させて、再生光としてのLED光をホログラフィック記録媒体12に記録された明パターン画像25の記録領域及び暗パターン画像27の記録領域に照射して、回折光を発生させるようになっている。
【0030】
次に、図4に示される記録露光量決定光学系10における制御系70について説明する。
【0031】
この制御系70は、システムコントローラ72と、前記シャッタ21、受光素子54、SLM44、1/2波長板24、XYステージ13を含むオプティカルユニット74と、シャッタ21、受光素子54、1/2波長板24及びXYステージ13を制御するタイミングコントローラ76と、レーザ16を制御するためのレーザユニット78と、を備えて構成されている。
【0032】
システムコントローラ72は、コントロールソフトウェア72Aにより、イメージファイル72Bから記録すべき画像を読み出して、シグナルプロセッサ72CからSLM44に上記画像のイメージデータを出力するようにされている。
【0033】
また、タイミングコントローラ76は、受光素子54により回折光を受光するタイミング、1/2波長板24の駆動量とタイミング、及びシャッタ21の開閉タイミングを、コントロールソフトウェア72Aからの指示に基づいて制御するようにされ、更に、XYステージ13を制御して、ホログラフィック記録媒体12の要素ホログラム14の形成点(記録点)をコントロールソフトウェア72Aからの指示に基づいて制御するようにされている。
【0034】
次に、図5を参照して、記録露光量決定光学系10によりホログラフィック記憶媒体12に、明パターン画像25及び暗パターン画像27を記録する過程について説明する。
【0035】
なお、この実施例では、参考のために、図6に示される全明パターン画像26、全暗パターン画像28もホログラフィック記録媒体12に記録する。
【0036】
図5のステップ101において、ホログラフィック記録媒体12を、記録露光量決定光学系10にローディングし、次のステップ102において、ホログラフィック記録媒体12に遮光フィルムが貼られているか否かを判定し、YESであれば、次のステップ103において、遮光フィルムを剥離し、NOであればステップ103を迂回してステップ104に進む。
【0037】
ステップ104では、遮光フィルムがない状態のホログラフィック記録媒体12に記録するための記録条件の情報が取得され、次のステップ105において、ホログラフィック記録媒体12にプレキュアが必要か否かを判定し、YESであれば106においてプレキュア露光がされ、NOであれば、ステップ106を迂回してステップ107に進む。
【0038】
ステップ107では、ホログラフィック記録媒体12を、XYステージ13によって駆動して、該ホログラフィック記録媒体12の試し書き領域(図示省略)を、物体光と参照光の交差位置に移動させる。
【0039】
ステップ109では、記録露光量決定光学系10において参照光と物体光により明パターン画像25、暗パターン画像27を、要素ホログラム14により記録する。この過程の詳細は後述する。
【0040】
このとき、1/2波長板24により記録レーザパワー、シャッタ21により記録時間の一方または両方を制御して、第1〜第n段階の記録露光量で、各パターン画像を記録する。次のステップ110では、図1に示される回転可能ミラー34を図1の状態から時計方向に揺動させてLED62からの白色再生光が回転可能ミラー34に邪魔されることなくホログラフィック記録媒体12に到達するように位置させ、この状態で、再生光をホログラフィック記録媒体12に第1〜第7段階の記録露光量ごとに記録された第1〜第7明パターン画像、第1〜第7暗パターン画像、第1〜第7全明パターン画像、第1〜第7全暗パターン画像をそれぞれ照射して、発生した回折光をステップ111において受光素子54から取り出す。その結果の例は、図7及び図8に示されるようになった。
【0041】
また、次のステップ112では、記録露光量毎に検出された回折光強度Sai、Sbiのデータは、受光素子54からタイミングコントローラ76を経て、システムコントローラ72に入力され、ここで記録露光量毎のSNR=Sai/Sbiが計算される。記録露光量とSNRとの関係は、図7、図9に示されるように、記録露光量80mJ/cmの場合に、SNRが14と最高になることが分かる。ステップ113では、SNRが14のときの記録露光量即ち記録レーザパワーと露光時間が最適記録露光量として決定される。
【0042】
ステップ114において、上記記録露光量即ち記録レーザパワーと露光時間の記録条件がシステムコントローラ72に読み込まれる。
【0043】
ステップ115において、XYステージ13により、ホログラフィック記録媒体12を駆動し、その画像領域を記録レーザ光の照射位置に移動させ、ステップ116において、画像記録を開始する。
【0044】
ステップ117において画像記録が終了後、ステップ118においてホログラフィック記録媒体12のポストキュアをして、ステップ119において画像領域を切り出し、ステップ120において、切り出した画像領域を黒色シートで覆ってから、ステップ121においてホログラフィック記録媒体12が装置から排出される。
【0045】
ここで、図5のステップ107〜110の試し書き及び白色光により再生する過程について、詳細に説明する。
【0046】
レーザ16からの出射光は、コリメータレンズ22によって平行光とされ、1/2波長板24と偏光フィルタ26とにより記録レーザパワーが制御された後、ビームスプリッタ18に入射し、ここで透過する参照光と反射する物体光とに分離される。
【0047】
物体光は、物体光光学系40におけるNDフィルタ41により強度調整がされた後、ミラー42により反射されて、ビームエクスパンダ43によってビーム径が拡大され、SLM44において振幅変調されて物体光となり、対物レンズ45により、ホログラフィック記録媒体12に集光される。SLM44においては要素ホログラム14が連続的に形成されたとき、図3及び図6に示される明パターン画像25、暗パターン画像27、全明パターン画像26、全暗パターン画像28が形成されるように変調される。
【0048】
参照光は、NDフィルタ32において強度調整された後、アパーチャ36で記録する要素ホログラムの大きさ、形状を調整し、回転可能ミラー34で反射され、ホログラフィック記録媒体12における物体光の焦点位置に入射され、ここで、対物レンズ45により集光された信号光と干渉して、要素ホログラムを形成する。
【0049】
ホログラフィック記録媒体12上に記録された明パターン画像25、暗パターン画像27、全明パターン画像26及び全暗パターン画像28の各領域に対して再生光学系60のLED62から再生光(白色光)が照射される。この再生光は、コリメータレンズ64によって平行光とされ、参照光とほぼ重なるように入射し、これによって、要素ホログラム14により回折光が生じる。
【0050】
検出側対物レンズ52によりほぼ平行光とされ、検出器である受光素子54に入射し、ここで、回折光の強度、及び、強度分布が検出される。
【0051】
上記実施例は、図4、図7に示されるように明パターン画像25及び暗パターン画像27における中心部の面積の、画像全体に対する比率が0.20であり、前記最適記録露光量80mJ/cmは、この面積比0.20に対応するものであり、面積比が異なる場合は最適露光量は変化する。
【0052】
表1に、明パターン画像及び暗パターン画像の中心部の面積比を0.005から1まで18段階に変化させ、上記図5に示されるステップ109から113までを各面積比毎に繰り返して得た最適な記録露光量を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
また、表1には、得られた面積比毎の最適記録露光量で画像を記録した場合の画像コントラストを目視で判定した結果を示す。判定結果から、面積比は0.01〜0.5の範囲で適正な画像コントラストを得ることができた。
【0055】
上記明パターン画像及び暗パターン画像は、ともに、中心部25a及び27aが円形とされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、明パターン画像では中心部が周辺部よりも明るく、暗パターン画像では中心部が周辺部よりも明るく、且つ、パターン中心を含み、周辺部はパターンの四隅が中心部に対して明暗が反対となるものであればよい。例えば図10に示されるように中心部が四角形、ひし形、三角形、縦長、横長あるいは十文字形であってもよい。
【0056】
図1に示される光学系は、物体光と参照光とが、ホログラフィック記録媒体の反対方向から入射する透過型であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図11に示されるような反射型ホログラフィック記録媒体に対応する記録露光量決定光学系80としてもよい。この場合、図1の光学系に対して、再生光学系及び回転可能ミラーの位置が異なるのみであるので、図1の各構成と同一構成部分には同一符号を付することにより説明を省略するものとする。
【0057】
また、SLM44は、透過型液晶パネル、あるいはDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)、LCOS等の反射型デバイスであってもよく、受光素子54は、CCD、CMOS等の空間光強度分布を検出できるものであればよく、更に、単純な光検出器(PD)を複数個並べてもよい。
【0058】
さらに、再生用のLED62は実施例のように白色光型が好ましい。白色光型であると、ホログラフィック記録媒体12にカラー画像を記録した場合あるいはモノクロ画像を記録した場合のいずれでも再生できる。
【0059】
更にまた、上記実施例において、ホログラフィック記録媒体12への試し書きはモノクロ画像を記録するものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば赤色レーザ光、緑色レーザ光及び青色レーザ光の3色でカラー記録するようにしてもよい。この場合のフローチャートを、図12に示す。
【0060】
カラー画像記録の場合、図12のステップ109R、109G、109Bにおいて、ホログラフィック記録媒体12をXYステージ13によって各色毎に移動させ、赤色記録レーザ光、緑色記録レーザ光、青色記録レーザ光により図3及び図6に示される明パターン画像25、暗パターン画像27、全明パターン画像26、全暗パターン画像28を、それぞれ記録する。ステップ110の白色光による再生、ステップ111の検出器出力取り出し、ステップ112のSNR計算、ステップ113の最適記録露光量の決定、ステップ114の記録条件の読み込みは、赤緑青の色毎に実行される。なお、記録露光量は、赤、緑及び青の強度比による色バランスを考慮する必要がある。色バランスをとるためには、予め、媒体の色彩情報を変角分光測色システム等を用いて測定していくことが好ましい。測定結果は、XYZ色度図、L色度図、L色度図などのデータとしてホログラフィック記録媒体12の一部あるいはそのカートリッジに設置されたメモリ等に記録しておけば、画像の記録時に、記録されたデータを読み出して、各記録波長の最適な強度を算出し、最適な記録条件を決定することができる。
【0061】
また、上記実施例において、最適記録露光量を決定しているが、これは、記録レーザ光の記録パワーを固定し、記録時間を変化させたり、逆に、記録時間を固定して、記録レーザ光の記録パワーを変化させてもよく、あるいは両者を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…記録露光量決定光学系
12…ホログラフィック記録媒体
13…XYステージ
14…要素ホログラム
16…レーザ
18…ビームスプリッタ
22…コリメータレンズ
25…明パターン画像
27…暗パターン画像
25a、27a…中心部
30…参照光光学系
34…回転可能ミラー
40…物体光光学系
44…空間光変調器(SLM)
45…対物レンズ
50…検出光学系
52…検出側対物レンズ
54…受光素子
60…再生光学系
62…LED
64…コリメータレンズ
70…制御系
72…システムコントローラ
72A…コントロールソフトウェア
72B…イメージファイル
72C…シグナルプロセッサ
74…オプティカルユニット
76…タイミングコントローラ
78…レーザユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィック記録媒体に複数の要素ホログラムを形成して3次元画像を作成する際における前記要素ホログラムの記録のための記録露光量を決定する方法であって、
第1段階の記録露光量で、要素ホログラムを複数連続的に記録して、中心部が周辺部より明るい第1明パターンの画像を記録する第1明パターン画像記録過程、記録露光量を第2〜第n段階に変化させて、前記第1明パターンの画像と同一パターンの第2〜第n明パターンの画像を記録する第2〜第n明パターン画像記録過程からなる明パターン画像記録過程と、
前記第1明パターン画像記録過程における、前記第1段階と同一の記録露光量で、要素ホログラムを複数連続的に記録して、中心部が周辺部よりも暗く、且つ、前記第1明パターンの画像と明暗が反転している第1暗パターンの画像を記録する第1暗パターン画像記録過程、記録露光量を前記第2〜第n段階と同一として、前記第1暗パターンの画像と同一パターンの第2〜第n暗パターンの画像を記録する第2〜第n暗パターン画像記録過程からなる暗パターン画像記録過程と、
前記第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像に再生光を照射して、各々から発生する回折光の強度を検出する過程と、
前記第1〜第n明パターンの画像からの回折光強度をSa〜Sa、前記第1〜第n暗パターンの画像からの回折光強度をSb〜Sbとしたとき、
Sa/Sb=SNR、Sa/Sb=SNR、…Sa/Sb=SNRを算出するSNR算出過程と、
前記算出されたSNR、SNR、…SNRのうち最大となるSNRmaxを決定するSNRmax決定過程と、
前記第1〜第n段階の記録露光量のうち、SNRmaxとなる記録露光量を最適記録露光量とする過程と、
を有してなるホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像における前記中心部の画像の面積がパターン全体の面積の0.01乃至0.5であることを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ホログラフィック記録媒体に、画像を記録するための画像領域の他に、試し書き領域を設定しておき、前記第1〜第n明パターンの画像及び第1〜第n暗パターンの画像を該試し書き領域に記録することを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記ホログラフィック記録媒体が、赤、緑、青の3色のカラー画像記録媒体であり、
前記明パターン画像記録過程及び暗パターン画像記録過程は、赤色記録レーザ光による赤色明パターン画像記録過程及び赤色暗パターン画像記録過程と、緑色記録レーザ光による緑色明パターン画像記録過程及び緑色暗パターン画像記録過程と、青色記録レーザ光による青色明パターン画像記録過程及び青色暗パターン画像記録過程と、を含み、記録露光量を赤、緑、青の各色毎に決定することを特徴とするホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4において、
前記明パターン画像及び暗パターン画像の暗部及び明部は、それぞれ空間光変調器の全暗画素及び全明画素により形成されることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体の記録露光量決定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかで決定された最適記録露光量の記録レーザ光により、ホログラフィック記録媒体に立体画像を記録することを特徴とするホログラフィック記録媒体への記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−220690(P2012−220690A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85797(P2011−85797)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】