説明

ホログラム付缶

【課題】缶体強度を低下させることなくホログラムが形成されるホログラム付缶を目的とする。
【解決手段】ホログラム付缶(1)は、金属製缶体(10)の表面に樹脂による透明層(12)を最外層とする複数の層または単数の層が設けられ、前記透明層(10)の外面または内面にホログラムを現出させる微細凹凸(12a)が形成されている。また、前記透明層(12)と缶体(10)との間に、有色層(11)およびベースコート層の少なくとも一方の層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、缶体の表面にホログラムが形成されたホログラム付缶およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、物体の三次元像の再生が容易であるとともに虹色に光る装飾性を有するものであり、多様な分野で広く用いられる。特に、再生する像に相当する干渉縞が微細凹凸として形成された原版を作製し、この原版の微細凹凸を対象物に転写したレリーフ型ホログラムは、製造が簡易であることから、包装材料等の日常生活用品にも広く用いられている(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
特許文献1に記載されているホログラムの製造方法は、金属平板に対して凸状曲面に像を現出させる微細凹凸が設けられた版を冷間で圧介させることにより、金属平板を塑性変形させて版の微細凹凸を転写するものである。
【0004】
特許文献2には、金属製飲料用缶の缶胴に3次元的凹凸部を形成し、この凹凸部の表面にホログラムを現出させた3次元的ホログラム付缶が記載されている。この缶の製法においては、ホログラムを缶胴金属または缶胴形成用金属素材に直接微細凹凸を転写するか、あるいはホログラム加工を施したフィルムを缶胴または缶胴形成用金属素材に貼着している。
【0005】
特許文献3は、金属製の中空筒状体にホログラム加工を施すに際し、陽画ホログラフィ像が形成されたマスターシムから複数のマザーシム、シスターシムを順次製作し、さらにシスターシムから印刷ロールを製作し、この印刷ロールに形成された微細凹凸を中空筒状体に転写する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4−54328号公報
【特許文献2】特開2002−200900号公報
【特許文献3】特表2002−508539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ホログラムを現出させるための微細凹凸を缶体に転写する方法では、缶体が部分的に薄くなるために缶体の強度低下が問題になる。また、加工用型は金属缶を塑性変形させ得る硬質材料で形成しなければならず、型の製作コストが高くなる。また、相手材が金属であるから、49〜490MPa(5〜50kgf/mm2)程度の加工荷重が必要であり(特許文献1)、エネルギーコストも高くなる。さらに、転写加工時に缶体から脱落する金属粉が型を目詰まりさせることがあり、連続生産には不利である。
【0008】
一方、ホログラム加工したフィルムを貼着する方法では、缶強度が低下するおそれはないが、缶の製造とは別工程でフィルムを製作する必要がある。
【0009】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、缶体強度を低下させることなくホログラムが現出されるホログラム付缶、および缶体の製造工程でホログラムを付与できるホログラム付缶の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のホログラム付缶は下記[1]〜[6]に記載の構成を有する。
【0011】
[1] 金属製缶体の表面に樹脂による透明層が形成され、この透明層の外面にホログラムを現出させる微細凹凸が形成されていることを特徴とするホログラム付缶。
【0012】
[2] 金属製缶体の表面に樹脂による透明層を最外層とする複数の層が設けられ、前記透明層の外面または内面にホログラムを現出させる微細凹凸が形成されていることを特徴とするホログラム付缶。
【0013】
[3] 前記透明層と前記缶体との間に、有色層およびベースコート層の少なくとも一方の層が形成されている前項2に記載のホログラム付缶。
【0014】
[4] 前記微細凹凸は平行に配列する多数の溝である前項1〜3のいずれかに記載のホログラム付缶。
【0015】
[5] 前記微細凹凸の形成領域が複数のセルに分画され、隣接するセルで方向の異なる溝が形成されている前項4に記載のホログラム付缶。
【0016】
[6] 前記透明層の厚さが2〜30μmである前項1〜5のいずれかに記載のホログラム付缶。
【0017】
また、本発明のホログラム付缶の製造方法は下記[7]〜[9]に記載の構成を有する。
【0018】
[7] 金属製缶体の表面に樹脂による透明層を最外層とする複数または単数の層を形成し、この複数または単数の層を形成した缶体に、表面にホログラムを現出させる微細凹凸が刻設された型を押し付けて前記透明層の外面に微細凹凸を転写することを特徴とするホログラム付缶の製造方法。
【0019】
[8] 前記透明層と前記缶体との間に、有色層およびベースコート層の少なくとも一方の層を形成する前項8に記載のホログラム付缶の製造方法。
【0020】
[9] 金属製缶体の表面に有色層またはベースコート層を形成し、この缶体に、表面にホログラムを現出させる微細凹凸が刻設された型を押し付けて前記有色層またはベースコート層に微細凹凸を転写し、転写した微細凹凸を埋める態様で透明層を積層し、該透明層の内面に微細凹凸を形成することを特徴とするホログラム付缶の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
上記[1][2]に記載のホログラム付缶は、ホログラムを現出させる微細凹凸が透明層に形成されているため、缶体の厚さが部分的に薄くなることがなく強度低下がない。
【0022】
上記[3]に記載のホログラム付缶において、有色層を有する缶は透明層を通して有色層が視認されるので、装飾性を高めることができる。また、ベースコート層を有する缶は、缶体の金属色を打ち消してより美しく装飾性の高いホログラムを現出させることができる。
【0023】
上記[4]に記載のホログラム付缶は、微細凹凸を転写するための型の製作が容易であり、ひいてはホログラム付缶の製造コストも抑制される。
【0024】
上記[5]に記載のホログラム付缶は、セル毎に虹色に輝いてセルの形状も意匠の構成要素となるとともに、見る方向を変えると虹色の輝きもセルに対応して細かく変化し、美しいホログラムが現出される。
【0025】
上記[6]に記載のホログラム付缶によれば、缶体の変形が防がれ、かつ透明層が剥離しにくい。
【0026】
上記[7]に記載のホログラム付缶の製造方法によれば、透明層の外面に微細凹凸を形成することにより、缶体の強度を低下させることなくホログラムを現出させ得るホログラム付缶を製造することができる。
【0027】
上記[8]に記載のホログラム付缶の製造方法によれば、より装飾性の高いホログラム付缶を製造することができる。
【0028】
上記[9]に記載のホログラム付缶の製造方法によれば、透明層の内面に微細凹凸を形成することにより、缶体の強度を低下させることなくホログラムを現出させ得るホログラム付缶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】本発明のホログラム付缶であり、透明層の外面に微細凹凸が形成された缶を示す断面図である。
【図1B】本発明のホログラム付缶であり、透明層の内面に微細凹凸が形成された缶を示す断面図である。
【図2A】本発明のホログラム付缶の他の例を示す断面図である。
【図2B】本発明のホログラム付缶の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のホログラム付缶の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明のホログラム付缶の他の例を示す正面図および部分拡大図である。
【図5】本発明のホログラム付缶の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明における「ホログラム」の語は、微細凹凸によって形成された干渉縞が像を再生するもののみならず、広義に微細凹凸によって入射光を分光して虹色に反射するものを含むものとする。後者の虹色を呈するホログラムは、多数の微細な溝を平行に配列することにより現出させることができる。
【0031】
本発明のホログラム付缶は、缶体の表面に、樹脂による透明層を最外層とする複数またた単数の層が形成され、透明層の外面または内面にホログラムを現出させる微細な凹凸が形成されたものである。要すればさらに、前記透明層と缶体の間に有色層またはベースコート層、あるいは両方を有している。
【0032】
図1Aおよび図1Bに示すホログラム付缶(1)(2)は、いずれも円筒型のアルミニウム缶の缶胴(10)に有色層(11)と透明層(12)を順に積層したものである。
【0033】
図1Aのホログラム付缶(1)は、前記透明層(12)の外面に平行に配列した多数の溝(12a)を設けることにより微細凹凸が形成されている。そして、缶(1)に光を当てると、透明層(12)を通して有色層(11)を視認でき、かつ透明層(12)の溝(12a)で反射した光は干渉を起こして虹色のホログラムを現出し、有色層(11)の色に虹色が重なって見える。また、見る角度を変えると色が変化する。
【0034】
一方、図1Bに示すホログラム付缶(2)は、有色層(11)の外面に平行に配列した多数の溝(11a)を設け、この溝(11a)を埋める態様で透明層(12)が積層されている。このため、前記透明層(12)の内面に溝(12b)が形成され、外面は滑らかな曲面である。このホログラム付缶(2)においても、透明層(12)を通して有色層(11)を視認でき、かつ溝(12b)の表面で反射した光は溝(12b)で干渉を起こして虹色のホログラムを現出し、有色層(11)の色に虹色が重なって見える。
【0035】
また、図2Aおよび図2Bに示すホログラム付缶(3)(4)はベースコート層(13)を有するものである。
【0036】
図2Aに示すホログラム付缶(3)は、缶胴(10)の表面に、ベースコート層(13)、有色層(11)、透明層(12)の順に積層し、透明層(12)の外面に溝(12a)を形成したものである。また、図2Bに示すホログラム付缶(4)は、有色層が無く、ベースコート層(13)上に透明層(12)を積層したものである。図示例のホログラム付缶(3)(4)は、透明層(12)の外面に溝(12a)を設けたものであるが、図1Bのホログラム付缶(2)と同様に透明層(12)の内面に溝を設けることもできる。
【0037】
さらに、図3に示すホログラム付缶(5)は缶胴(10)上に直接透明層(12)を設けたものである。この場合は透明層(12)の外面に溝(12a)を形成する。
【0038】
上述した各ホログラム付缶における各層について詳述する。
【0039】
透明層(12)は、無色透明または有色透明の樹脂で構成されている。樹脂の種類は、エポキシ/フェノール樹脂、ポリエステル/アミノ系樹脂、エポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂が好ましく、特に水性塗料であるエポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂は、焼付け乾燥時に揮発する有機溶剤量が少ない点で好ましい。溝(12a)の深さ(D)は0.5μmあれば美しいホログラムを形成することができ、透明層(12)は溝(12a)を形成できる厚さ(T)があれば良い。しかし、透明層(12)が薄すぎると溝(12a)を転写する際に缶胴(10)を変形させるおそれがあるため、厚さ(T)は2μm以上が好ましい。一方、過度に厚くすると透明層(12)が剥離し易くなるため、30μm以下が好ましい。特に好ましい厚さ(T)は4〜15μmである。なお、ベースコート層(13)を有する場合は透明層(12)を薄くすることが可能であり、2〜10μmとすることが好ましい。溝(12a)のピッチ(P)、即ち隣接する凸部−凸部間の距離は、1〜50μmの範囲が好ましい。可視光の波長域はおおよそ400〜800nmであるから上記範囲のうちでも1μmに近い方が鮮明で美しいホログラムを現出させることができる。しかし、レリーフ型ホログラムではピッチ(P)が小さくなるほど型の製作コストが高くなり、ひいてはホログラム付缶の製造コストが高くなるため、2〜50μmの範囲が好ましい。コスト面において特に好ましい溝(12a)のピッチ(P)は10〜20μmである。また、前記微細凹凸の深さ(D)、即ち凸部の頂点から凹部の底まで距離は0.5〜10μmが好ましく、特に0.5〜3μm程度が好ましい。
【0040】
有色層(11)は任意に設ける層であり、全域を単一色で形成することも、単一色または複数色で模様や文字を描くこともでき、缶の装飾性を高める効果がある。有色層(11)の材料として、缶体印刷に用いられるインク等を用いることができ、アルキッド樹脂を主成分とし、顔料(有機、無機、金属粉等)及び/または添加剤を含んだ溶剤系のインク等を例示できる。有色層(11)は色が視認できれば良いので層の厚さは限定されず、0.5μm以上あれば良い。しかし、図1Bに示すように有色層(11)に微細凹凸を形成する場合は、溝深さ(D)を確保するとともに転写時の缶胴の変形を防ぐために、ベースコート層(13)を設ける場合は1μm以上、ベースコート層(13)を設けない場合は2μm以上が好ましい。
【0041】
ベースコート層(13)は任意に設ける層であり、缶胴(10)の金属色を打ち消して有色層(11)の色を鮮明に見せ、美しいホログラムを現出させて装飾性を高める効果がある。図2Bのホログラム付缶(4)のように、ベースコート層(13)上に透明層(12)を積層する場合も、缶胴(10)の金属色が打ち消されるので美しいホログラムを現出させることができる。また、ベースコート層(13)を設けることにより、透明層(12)または有色層(11)に微細凹凸を転写する際に缶胴(10)の変形を防止する効果がある。換言すれば、ベースコート層(13)を設けることにより、透明層(12)または有色層(11)の厚さを薄くすることができる。ベースコート層(13)の好ましい厚さは5〜20μmであり、特に5〜15μmが好ましい。また、ベースコート層(13)の材料としてはポリエステル/エポキシ/アミノ系樹脂及びポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂を、紫外線硬化型塗料の場合は光重合開始剤を含有させたエポキシ/ポリエチレン系樹脂を推奨できる。ベースコート層(13)の色は限定されないが、缶胴(10)の金属色を打ち消して美しいホログラムを現出するには白色が好ましい。
【0042】
前記透明層(12)、有色層(11)およびベースコート層(13)は缶胴(10)の全領域に形成しても、一部にのみ形成しても良い。また、透明層(12)の微細凹凸もまた、透明層(12)の全領域に形成されている必要はなく一部にのみ形成されていても良い。例えば、図4に示すように、缶胴(10)の表面に有色層(11)で文字(15)や図柄を描き、この文字(15)等の上に透明層(12)を積層して溝(12a)を形成すれば、文字(15)部分の断面は図1Aに示した状態となる。そして、文字(15)の色にホログラムの虹色の輝きが加わわり、金属色の缶胴(10)上で文字(15)を際だたせることができる。
【0043】
また、微細凹凸として平行に配列した溝を形成する場合、微細凹凸を形成する全領域において同一方向の溝を形成することも、異なる方向の溝を組み合わせることもできる。例えば、図4に示すように、微細凹凸の形成領域を多数のセル(16)(17)に分画し、セル(16)(17)毎に溝(12a)の方向を異ならせることができる。このようにすれば、セル(16)(17)単位で虹色に輝いてセルの形状も意匠の構成要素となるとともに、見る方向を変えると虹色の輝きもセル(16)(17)に対応して細かく変化し、美しいホログラムが現出される。前記セル(16)(17)の形状および配置、溝(12a)の方向は、規則性があっても良いし、不規則なものでも良く、それぞれに趣の異なるホログラムを形成することができる。
【0044】
本発明のホログラム付缶は、缶胴(10)の表面に、必要に応じてベースコート層(13)、有色層(11)、透明層(12)を順次形成し、微細凹凸の形成は型の表面に刻設した微細凹凸を転写することにより行う。
【0045】
各層の形成方法は限定されず、形成方法としてベースコート層(13)を塗布後170〜210℃で30秒以上焼付けし、有色層(11)を塗布し、透明層を塗布後170〜210℃で30秒以上焼付ける方法を例示できる。焼付け温度が170℃未満では焼付け不足のために塗膜硬度が得られない。一方、210℃を超えると焼付け過剰のために塗膜に割れが発生するおそれがあり、加熱エネルギーも無駄になる。また、アルミニウム缶においては缶胴(10)材料が軟化してネック加工時に座屈が発生するおそれがある。
【0046】
また、ベースコート層(13)が紫外線硬化型塗料の場合は紫外線を照射し、オーブンで170〜210℃で30秒以上焼付け、有色層(11)及び透明層を同様に塗布する方法を例示できる。紫外線源としては、波長200〜500nmで輝線を放射する高圧水銀灯を例示でき、高圧水銀灯は出力80W/cm程度のものが好ましい。
【0047】
上述したように、ホログラムを現出させるための凹凸は極めて微細であるから、転写前の透明層(12)の外面の表面粗さ(Ra)が5μm以下であることが好ましく、特に2μm以下が好ましい。透明層(12)の内面に微細凹凸を形成する場合の有色層(11)およびベースコート層(13)の表面粗さも同様である。
【0048】
図5は、透明層(12)の外面に溝(12a)を形成する方法を例示している。缶胴(10)の内部に変形防止用の内型(22)を装填し、外周面の所要部位に溝(21)を設けた円筒型の型(20)を缶胴(10)に押し付け、缶胴(10)および型(20)を回転させると、型(20)の溝(21)が透明層(12)の外面に転写され、透明層(12)の外面に溝(12a)が形成される。なお、図5の円内拡大図は、缶胴(10)に有色層(11)と透明層(12)を積層した例を示している。また、透明層(12)の内面に形成する場合は、有色層(11)またはベースコート層(13)に溝を転写した後に透明層(12)を積層形成する。
【0049】
いずれの場合も金属製の缶胴(10)よりも硬度の低い層への転写であるから、缶胴に直接転写するよりも小さい加工荷重で済み、金属粉の発生もないから型が目詰まりすることもない。また、缶胴が薄くなることがないから缶の強度が低下することもない。缶の強度低下がないことから、飲料用缶にも好適である。
【0050】
型(20)の材料や製作方法は限定されず、例えば、レーザー加工によって微細凹凸を刻設する方法を例示できる。また、型(20)の材料としてはレーザー加工ができる材質(金属等)であれば限定されず、グラッシーカーボン等を例示できる。従来の缶胴に凹凸を転写するための型ほどには高硬度が要求されないので、型の材料コストや加工コストが低減される。また、同じ硬度の材料であれば、缶胴に転写するよりも型寿命が長い。このため、製造コストが厳しく制限される飲料用缶の製造に適している。
【0051】
また、平行に配列した溝(12a)で虹色を呈するホログラムは、像を再生させるホログラムよりも型の製作が容易であり、ひいてはホログラム付缶の製造コストも抑制できる。この点でも、製造コストが厳しく制限され、短期間でデザイン変更が行われる飲料用缶の製造に適している。
【0052】
次に、本発明のホログラム付缶の製造方法について、図1Aに示したアルミニウム製の飲料用ホログラム付缶(1)を例に挙げて説明する。
【0053】
(i)アルミニウム薄板から円筒型の底付の缶胴(10)を成形する。
【0054】
(ii)缶胴(10)を洗浄する。
【0055】
(iii)缶胴(10)の外面に、印刷により有色層(11)および透明層(12)を順次積層する。
【0056】
(iv)有色層(11)および透明層(12)を焼き付けて安定させる。
【0057】
(v)缶胴(10)の内面を塗装する。
【0058】
(vi)内面の塗装面を焼き付けて安定させる。
【0059】
(vii)図5に示すように、缶胴(10)に型(20)を押し付け、回転させながら透明層(12)に溝(21)を転写して、透明層(12)の外面に溝(12a)を形成する。
【0060】
(viii)缶胴(10)にネッキング加工を施して縮径されたネック部(18)を形成する。
【0061】
本発明のホログラム付缶およびその製造方法は上述した実施形態に限定するものではない。例えば、缶体の形状やホログラムの形成位置は何ら限定されず、缶底または缶蓋にホログラムを形成したものも本発明に含まれる。また、微細凹凸を転写するための型の形状も断面円形のもの限定されず、平型で転写することもできる。また、缶体の材料も限定されず、アルミニウム缶またはスチール缶を例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のホログラム付缶の製造方法によれば、缶体の強度を低下させることなく装飾性の高いホログラムを形成できるため、飲料用缶の製造に適している。
【符号の説明】
【0063】
1,2,3,4,5…ホログラム付缶
10…缶胴(缶体)
11…有色層
11a…溝
12…透明層
12a,12b…溝(微細凹凸)
13…ベースコート層
16,17…セル
20…型
21…溝(微細凹凸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型のアルミニウム製缶体の表面に、塗布後に焼付けされた樹脂による透明層が形成され、この透明層の外面にホログラムを現出させる微細凹凸が形成されていることを特徴とするホログラム付缶。
【請求項2】
円筒型のアルミニウム製缶体の表面に、塗布後に焼付けされた樹脂による透明層を最外層とする複数の層が設けられ、前記透明層の外面にホログラムを現出させる微細凹凸が形成されていることを特徴とするホログラム付缶。
【請求項3】
前記透明層と前記缶体との間に、有色層およびベースコート層の少なくとも一方の層が形成されている請求項2に記載のホログラム付缶。
【請求項4】
前記微細凹凸は平行に配列する多数の溝である請求項1〜3のいずれかに記載のホログラム付缶。
【請求項5】
前記微細凹凸の形成領域が複数のセルに分画され、隣接するセルで方向の異なる溝が形成されている請求項4に記載のホログラム付缶。
【請求項6】
前記透明層の厚さが2〜30μmである請求項1〜5のいずれかに記載のホログラム付缶。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−108520(P2012−108520A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275540(P2011−275540)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2006−336471(P2006−336471)の分割
【原出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】