説明

ボタン取付用パンチ、ボタン取付装置、及びボタン取付方法

【課題】中空円筒状のポストを有するボタン取付部材を用いても生地片等が周囲に飛散することがなく、ダウンジャケット等の薄い生地に好適に適用することができるボタン取付用パンチを提供する。
【解決手段】底部11に円形の開口を有するボタン10を、基端が閉じた中空円筒状のポスト22を有するボタン取付部材20で生地1に取り付ける際に使用するボタン取付用パンチ30は、前記ボタンの底部を抑えるための抑え部31と、生地を貫通し次いで前記ボタンの開口を通った前記ポストを加締めるためのパンチ本体32と、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離される生地片を前記ポストの内部に押し込むためのピン33とを備える。前記ボタン取付部材のポストは、その上部に前記ピンをポストの内部に通すための、前記生地片より小径の穴部を有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン取付用パンチ、ボタン取付装置及びボタン取付方法に関し、更に詳しくは、スナップボタン、飾りボタン等のボタンをボタン取付部材で生地に取り付ける際に使用するパンチと、このようなボタン、ボタン取付部材、パンチ等から構成されるボタン取付装置と、ボタンをボタン取付部材及びパンチを使用して生地に取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばスナップボタンの雌スナップを生地に取り付ける場合、プレス機の昇降部に連結する上方のパンチに雌スナップを保持させ、プレス機の下方のダイ上にボタン取付部材を載置し、雌スナップとボタン取付部材との間に生地を配した後、パンチを降下させる。これにより、ボタン取付部材のポストが生地を上方に貫通し、次いで雌スナップの底部の開口を通った後、パンチで加締められることにより、雌スナップが生地に固定される。ボタン取付部材のポストが中空円筒状の場合、ポストが生地を貫通する時に生地からほぼ円形の生地片が切り離される。米国特許第3351987号公報に開示される技術では、生地から分離した生地片をポストの下端開口から外部に排出するようにしている。
【0003】
例えば、表裏の薄い生地間にダウンが収容されるダウンジャケットに雌スナップや雄スナップを取り付ける場合、中実で先細りするポストを有するステープル等のボタン取付部材よりも、上述した中空円筒状のポストを有するボタン取付部材を用いる方が、仕上がりの外観やコスト面から好ましい。しかしながら、中空円筒状のポストを有するボタン取付部材を用いる場合、生地から切り離される生地片が小さくかつ軽いため、ポストの下端開口から外部に排出された生地片がプレス機の周囲に飛散して、プレス機等の故障の原因になる場合があった。また、生地の切断部から漏出し得るダウンも飛散して、これもプレス機等の故障の原因になったり、操作者の目や口に入り込むおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3351987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、その目的は、中空円筒状のポストを有するボタン取付部材を用いても生地片等が周囲に飛散することがなく、ダウンジャケット等の薄い生地に好適に適用することができるボタン取付用パンチ、ボタン取付装置及びボタン取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付ける際に使用するパンチであって、前記ボタンの底部を抑えるための抑え部と、生地を貫通し次いで前記ボタンの開口を通った前記ポストを加締めるためのパンチ本体と、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離される生地片を前記ポストの内部に押し込むためのピンとを備えるボタン取付用パンチが提供される。
【0007】
本発明に係るボタン取付用パンチでは、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付けるに当たり、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離された生地片をピンでポストの内部に押し込むことができる。このように生地片を内部に収容したポストは、ボタンの開口を通った後、パンチ本体によって加締められ、これにより、ボタンが生地に固定される。
【0008】
本発明において、ボタンの具体例として、中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付けられ得る雌スナップ、雄スナップ、飾りボタン等を挙げることができる。生地には、織物、布、不織布、フェルト、皮、樹脂シート等が含まれる。
【0009】
ボタン取付部材の中空円筒状のポストの上部は、完全に開放するのではなく、ピンをポストの内部に通すための穴部を残して閉じていることが好ましく、もしくは、上部を完全に閉じることもできる。ポストの上部が完全に閉じている場合、ピンがポストの上部を突き破りながら生地片をポスト内に押し込み得る。また、ポストの基端(下端)は、完全に閉じている必要はなく、ポストの内部に取り込まれた生地片が基端からポストの外部に排出されない程度に閉じていればよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記ピンは、前記パンチ本体の軸線に沿って収容され、前記パンチ本体に対し独立に可動する。これにより、ピンで生地片をポスト内に押し込んだ後、パンチ本体でポストを加締めることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記ボタン取付部材のポストは、その上部に前記ピンをポストの内部に通すための、前記生地片より小径の穴部を有する。この場合、ボタン取付部材のポストが生地を貫通する時に生地から切り離された生地片がポストの上部上に一時的に残り、この生地片がパンチのピンによって穴部からポストの内部に押し込まれる。
【0012】
別の本発明によれば、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付ける際、ボタンを支持させ、生地を貫通し次いで前記ボタンの開口を通った前記ポストを加締めるためのパンチと、前記ボタン取付部材が載置されるダイと、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離される生地片を前記ポストの内部に押し込むためのピンとを備えるボタン取付装置が提供される。
【0013】
本発明に係るボタン取付装置では、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付けるに当たり、ボタンをパンチに保持させ、取付部材をダイに載置し、ボタンと取付部材との間に生地を配した後、パンチをダイに対し相対的に降下させ(ダイがパンチに向かって上昇する場合もある)、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離された生地片をピンでポストの内部に押し込むことができる。このように生地片を内部に収容したポストは、ボタンの開口を通った後、パンチによって加締められ、これにより、ボタンが生地に固定される。パンチ及びダイは、プレス機に組み込まれ得る。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記パンチは、前記ボタンの底部を抑えるための抑え部と、生地を貫通し次いで前記ボタンの開口を通った前記ポストを加締めるためのパンチ本体とを備え、前記ピンは、前記パンチ本体の軸線に沿って収容され、前記パンチ本体に対し独立に可動する。ピンとパンチの関係としては、ピンがパンチに組み込まれてパンチと共に取り外しできる態様と、ピンがパンチ本体の軸線に沿って移動するが、パンチと共には取り外しできない態様とがある。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記ボタン取付部材は一枚の金属製の板から形成される。基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材を一枚の金属板から形成する場合、ボタン取付部材のベースの一部を切開し切り起こすことにより、ポストの基端を閉じることができる。金属の具体例としては、アルミニウム合金、銅合金等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記ボタン取付部材のポストは、その上部に前記ピンをポストの内部に通すための、前記生地片より小径の穴部を有する。この場合、ボタン取付部材のポストが生地を貫通する時に生地から切り離された生地片がポストの上部上に一時的に残り、この生地片がパンチのピンによって穴部からポストの内部に押し込まれる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記ボタンは、前記開口を規定する周縁に、半径方向内側かつ下方を向く鋭利なエッジを有する。このようなボタンのエッジは、ボタン取付部材のポストが生地を貫通する時に生地の切断を補助することができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記ボタン取付部材のポストは、その上部の半径方向外側端部に、前記ボタンのエッジに対向する段部を有する。このようなボタン取付部材のポストの段部は、ポストが生地を貫通する時に生地をボタンのエッジの向きに対しほぼ垂直に配向させてエッジによる生地の切断を助長することができる。
【0019】
更に別の本発明によれば、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付ける方法であって、前記ポストが生地を貫通する時に生地から生地片を切り離す工程と、前記生地片をピンでポストの内部に押し込む工程と、生地を貫通した後、前記ボタンの開口を通った前記ポストを加締める工程とを含むボタン取付方法が提供される。
【0020】
本発明では、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付けるに当たり、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離された生地片をピンでポストの内部に押し込むことができる。このように生地片を内部に収容したポストは、ボタンの開口を通った後、加締められ、これにより、ボタンが生地に固定される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、底部に円形の開口を有するボタンを、基端が閉じた中空円筒状のポストを有するボタン取付部材で生地に取り付けるに当たり、前記ポストが生地を貫通する時に生地から切り離された生地片をピンでポストの内部に押し込むことができる。そのため、中空円筒状のポストを有するボタン取付部材を用いても生地片等が周囲に飛散することがないため、ダウンジャケット等の薄い生地に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るボタン取付装置で使用するボタンの一例である雌スナップを示す平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るボタン取付装置で使用する取付部材の一例を示す平面図である。
【図4】図4は、図3のB−B線矢視断面図である。
【図5】取付部材の底面図である。
【図6】生地の上方に雌スナップを、下方に取付部材を同心状に配置した状態を示す断面説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るボタン取付装置におけるパンチを使用して、雌スナップを取付部材で生地に取り付ける直前の状態を示す断面説明図である。
【図8】取付部材のポストが生地を貫通する直前の状態を示す断面説明図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】取付部材のポストが生地を貫通した直後の状態を示す図9と同様の部分拡大図である。
【図11】パンチのピンで生地片を取付部材のポストの穴部からポスト内に押し込む状態を示す部分拡大図である。
【図12】パンチのピンで生地片を取付部材のポスト内に押し込んだ状態を示す断面説明図である。
【図13】取付部材のポストが雌スナップの開口から内部空間に入った状態を示す断面説明図である。
【図14】パンチのパンチ本体で取付部材のポストを加締める状態を示す断面説明図である。
【図15】雌スナップを生地に取り付けた状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明の一実施形態に係るボタン取付装置で使用するボタンの一例である雌スナップ10を示す平面図である。図2は、図1のA−A線矢視断面図である。雌スナップ10は、金属板を絞り加工等して形成されたもので、円板状の底部11と、底部11の周縁から上方(上下は図2に基づく)に延びるほぼ円筒状の周側部12とを含む。周側部12の上端部は、断面コの字状に半径方向外側に拡張する拡張部12aとされ、拡張部12aの内側に環状のばね13が収容される。雌スナップ10は、図示しない雄スナップの凸状の係合部を、底部11と周側部12が規定する内部空間16に着脱可能に受け入れることにより、雄スナップと係合及び脱係合することができる。ばね13は、雄スナップの係合部に対する係合力を補強する役割を果たす。底部11の中央には円形の開口14が設けられる。開口14には、詳しくは後述するが、雌スナップ10を生地に取り付ける際に、ボタン取付部材(以下、単に「取付部材」という)20のポスト22(図4等参照)が通される。底部11は、開口14の周囲において上方に窪む環状の窪み部15を含む。窪み部15は、窪み部15を除く底部11部分の半径方向内側端から半径方向内側へと上方に斜めに窪んだ後、下方へと若干反転して終端し、その半径方向内側端は、半径方向内側かつ下方の斜めを向く鋭利な環状のエッジ15aに形成される。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に係るボタン取付装置で使用する、雌スナップ10を生地に取り付けるための取付部材の一例である取付部材20を示す平面図である。図4は、図3のB−B線矢視断面図である。図5は取付部材20の底面図である。取付部材20は、金属板を絞り加工等して形成されたもので、円板状のベース21と、ベース21から上方(上下は図4に基づく)へとベース21と同心状に突出するほぼ円筒状のポスト22とを含む。ボタン取付部材20は、一枚の金属製の板から形成され、ポスト22は、円筒状で、その内側が中空状の中空円筒状である。そして、このポスト22の内側(中空円筒部)に、後述するように、切り離された生地片が押し込まれて収容される。ベース21は、ポスト22の下端(ベース側で基端とも言う)開口を塞ぐ下蓋23と、下蓋23を形成するためにベース21を部分的に切開して開口させた周方向に三つの切開部24とを含む。下蓋23は、切開部24に対応するベース21の部分を次に述べるように切り起こした三つの切り起こし片23aから成る。各切開部24及び各切り起こし片23aは、一例としてホームベース形状の五角形であり、それぞれ、底辺24a(切り起こし片23aの底辺も切開部24の底辺24aと同じ参照番号で表す)と、底辺24aに対し垂直に延びる左右の側辺24b、23bと、左右の側辺24b、23bの各上端から互いに近づく方向に斜めに延びる左右の上辺24c、23cとから規定される。ベース21は、各切開部24の底辺24aを除く、左右の側辺24b及び上辺24cに対応するラインで切断され、この切断ラインの内側部分を底辺24aからベース21の下面側へと180度折り曲げて水平(軸線に垂直な任意の面をいう)にすることにより、三つの切り起こし片23aそれぞれの左右の上辺23cがベース21の中央で互いに近接して下蓋23を成す。ベース21は、水平な半径方向外側部分21aと、半径方向外側部分21aよりもベース21の厚さ分上方に隆起する水平な半径方向内側部分21bとに区分される。切開部24の上辺24cは半径方向外側部分21aに含まれ、切開部24及び切り起こし片23aの底辺24aは半径方向内側部分21bに含まれる。これにより、切開部24から切り起こされた切り起こし片23aすなわち下蓋23の上下面がベース21の半径方向外側部分21aの上下面と面一となる。ポスト22は、ベース21から上方に延びる円筒状の胴部22aと、胴部22aの上端から半径方向内側に水平に延びる上部22bとを含む。上部22bの中央には穴部22cが設けられる。更に、胴部22aと上部22bとの境界(半径方向外側端部)には凹環状の段部22dが形成される。段部22dは、上部22bの直径が胴部22a側の直径よりも小さくなることで形成される。好ましくは、この段部22dにおいて、ボタン10の開口14の周縁のエッジ15aの直径(内径)が胴部22aよりも小さく、上部22bよりも大きいことで、生地を切り離すのにより適する。
【0025】
図6は、水平に配した生地1の上方に雌スナップ10を、下方に取付部材20を同心状に配置した状態を示す断面説明図である。取付部材20のポスト22の胴部22aの外径は、雌スナップ10の開口14の直径すなわち環状のエッジ15aが規定する直径とほぼ同じであるが、胴部22aの外径は下方へとわずかに拡大し、胴部22aの下端側部分の外径はエッジ15aが規定する直径よりもわずかに大きくなる。
【0026】
図7は、本発明の一実施形態に係るボタン取付装置におけるパンチ30を使用して、雌スナップ10を取付部材20で生地1に取り付ける直前の状態を示す断面説明図である。図7中の参照番号40は、取付部材20が載置されるダイであり、ダイ40も、雌スナップ10、取付部材20及びパンチ30と共にボタン取付装置を構成する。パンチ30及びダイ40は、図示しないプレス機に取り外し可能に組み込まれ、パンチ30はプレス機の昇降部により昇降され、ダイは静止状態に保たれる。パンチ30は、雌スナップ10の内部空間16に挿入し、雌スナップ10の底部11をダイ40に対し抑えるための円筒状の抑え部31と、抑え部31の内部に収容され、抑え部31に対し独立に上下動して可動するほぼ円柱状のパンチ本体32と、パンチ本体32の軸線に沿う空洞32aに収容され、抑え部31及びパンチ本体32に対し独立に上下動して可動する棒状のピン33とを備える。ピン33は、取付部材20のポスト22の穴部22cからポスト22の内部に進入することができる。ピン33の外径は、ポスト22の外径よりも小さく、ポスト22の上部22bの穴部22cの内径よりも小さい。雌スナップ10を生地1に取り付けるに当たり、図7に示すように、雌スナップ10をパンチ30に保持させ、取付部材20をダイ40上に載置し、雌スナップ10と取付部材20間に生地1を配する。雌スナップ10は、内部空間16に受け入れたパンチ30の抑え部31をばね13が締め付けることにより、パンチ30に保持される。次いで、パンチ30を降下させることにより、取付部材20のポスト22が生地1を上方に貫通し、次いで雌スナップ10の開口14を通った後、パンチ30のパンチ本体32によって加締められることにより、雌スナップ10が生地1に固定される(図13参照)。以下、雌スナップ10の生地1への取り付け工程を更に詳述する。なお、ピン33はパンチ本体32とは独立して上下動して可動し、抑え部31と同期して上下動するようにもできる。
【0027】
図8は、図7の状態からパンチ30がわずかに降下した状態であり、図9は図8の部分拡大図である。この時点で、パンチ30及び雌スナップ10により押し下げられている生地1が取付部材20のポスト22の上部22bに押し付けられ(以下、このポスト22の上部22bに押し付けられた生地1の部分を「ポスト対応生地部1a」という)、ポスト対応生地部1aは、下方への変位がポスト22により制限される。図8の状態からパンチ30が更に降下することにより、取付部材20のポスト22が生地1を上方に突き抜ける(図10参照)。この時、ポスト対応生地部1aは、パンチ30及び雌スナップ10により押し下げられる周囲の生地1から剪断作用により切り離され、図10に示すように、ほぼ円形の生地片1bとしてポスト22の上部22b上に残る。生地片1bの直径は、ポスト22の外径にほぼ等しく、そのため、ポスト22の穴部22cの径よりも大きい。図9を参照して、上述したポスト22による生地1からの生地片1bの切り離しの際、雌スナップ10の底部11のエッジ15aが取付部材20のポスト22の段部22dにかかる生地1に当たり、エッジ15aによる生地1の切断作用が働くため、生地1からの生地片1bの切り離しが円滑に行われる。また、ポスト22の段部22dは、エッジ15aの向きに対し生地1をほぼ垂直に配向させてエッジ15aによる生地1の切断を助長する役割を果たす。なお、図示はしないが、エッジ15aが生地1に作用する時、ピン33が生地1を下方に押して(ピン33が穴部22cに若干入り込む)、ポスト22の上部22bに対し生地1を抑えるようにすることができる。これにより、生地1からの生地片1bの分離がより容易になる。取付部材20のポスト22が生地1を上方に貫通して生地1から生地片1bが切り離されるや否や、パンチ30のピン33が降下し、ピン33がポスト22の内部に進入することで、取付部材20のポスト22の上部22b上に残る生地片1b(図10参照)を、図11及び12に示すように、生地片1bよりも小径な穴部22cからポスト22の内部へと押し込む。ポスト22内に収容された生地片1bは、ポスト22の下端が下蓋23で閉じられているため、ポスト22内に留まる(図13及び14参照)。そのため、生地片1bが、例えばダウンジャケットの薄い生地から分離した小さくかつ軽いものであっても、ポスト22の外部に排出されて飛散するようなことはない。
【0028】
図12の状態から更にパンチ30が降下すると、図13に示すように、取付部材20のポスト22が降下中の雌スナップ10の底部11の開口14を通って雌スナップ10の内部空間16に入る。この時、雌スナップ10のエッジ15aを含む窪み部15は、取付部材20の下方へとわずかに拡径するポスト22の胴部22aの外周面に接して上方に捲られるように変形する。そして、パンチ30の抑え部31が、雌スナップ10の底部11、生地1及び取付部材20のベース21を介してダイ40に突き当たり、それ以上の下方への変位を制限されるや否や、パンチ本体32が降下し、図14に示すように、取付部材20のポスト22を加締める。これにより、ポスト22は軸方向につぶれつつ半径方向に拡張して、雌スナップ10の開口14を通過不能となる。このようにして、雌スナップ10が生地1に固定される(図15参照)。
【0029】
以上の説明では、ボタンの例として雌スナップ10を挙げたが、ボタンとしては、取付部材20によって生地1に取り付けられ得る雄スナップや飾りボタン等であってもよい。また、取付部材20のポスト22の上部22bに穴部22cが無く、パンチ30のピン33がポスト22の上部22bを突き破りながら生地片1bをポスト22内に押し込むようにしてもよい。具体的には、ポスト22の上部22bに、その軸に沿って、複数の切欠きを形成し、切欠きの間の部分で、ポスト22の上部22bを支えた状態とし、ピンによって生地片を内部に押し込もうとした際に、ピンの先端によって、支えられた上部22bの一部を破断して、生地片と一緒に、ポストの内部に押し込むようにする。これによれば、生地の切断時に、ピンが生地を抑えるようにでき、生地の切断が行いやすくできる。上記実施例において、ボタン取付部材20は一枚の金属製の板から形成されるが、ポスト22の基端側のベース21を囲むようにしたキャップを取り付けて、ポスト22の基端側が閉じるようにもできる。また、ポスト22の周囲に、先端から基端に向かってスリットを形成し、加締め時に、ポスト22が変形しやすいようにすることもできる。また、ポスト22の上部22bに有する穴部22cは、ピン33によって穴を形成するようにもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 生地
1b 生地片
10 雌スナップ
11 底部
12 周側部
13 ばね
14 開口
15a エッジ
16 内部空間
20 ボタン取付部材
21 ベース
22 ポスト
22b (ポストの)上部
22c 穴部
22d 段部
23 下蓋
23a 切り起こし片
24 切開部
30 パンチ
31 抑え部
32 パンチ本体
33 ピン
40 ダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部(11)に円形の開口(14)を有するボタン(10)を、基端が閉じた中空円筒状のポスト(22)を有するボタン取付部材(20)で生地(1)に取り付ける際に使用するパンチ(30)であって、
前記ボタン(10)の底部(11)を抑えるための抑え部(31)と、
生地(1)を貫通し次いで前記ボタン(10)の開口(14)を通った前記ポスト(22)を加締めるためのパンチ本体(32)と、
前記ポスト(22)が生地(1)を貫通する時に生地(1)から切り離される生地片(1b)を前記ポスト(22)の内部に押し込むためのピン(33)とを備えるボタン取付用パンチ。
【請求項2】
前記ピン(33)は、前記パンチ本体(32)の軸線に沿って収容され、前記パンチ本体(32)に対し独立に可動する請求項1のボタン取付用パンチ。
【請求項3】
前記ボタン取付部材(20)のポスト(22)は、その上部(22b)に前記ピン(33)をポスト(22)の内部に通すための、前記生地片(1b)より小径の穴部(22c)を有する請求項1のボタン取付用パンチ。
【請求項4】
底部(11)に円形の開口(14)を有するボタン(10)を、基端が閉じた中空円筒状のポスト(22)を有するボタン取付部材(20)で生地(1)に取り付ける際、ボタン(10)を支持させ、生地(1)を貫通し次いで前記ボタン(10)の開口(14)を通った前記ポスト(22)を加締めるためのパンチ(30)と、ボタン取付部材(20)が載置されるダイ(40)と、前記ポスト(22)が生地(1)を貫通する時に生地(1)から切り離される生地片(1b)を前記ポスト(22)の内部に押し込むためのピン(33)とを備えるボタン取付装置。
【請求項5】
前記パンチ(30)は、前記ボタン(10)の底部(11)を抑えるための抑え部(31)と、 生地(1)を貫通し次いで前記ボタン(10)の開口(14)を通った前記ポスト(22)を加締めるためのパンチ本体(32)とを備え、
前記ピン(33)は、前記パンチ本体(32)の軸線に沿って収容され、前記パンチ本体(32)に対し独立に可動する請求項4のボタン取付装置。
【請求項6】
前記ボタン取付部材(20)は一枚の金属製の板から形成される請求項4又は5のボタン取付装置。
【請求項7】
前記ボタン取付部材(20)のポスト(22)は、その上部(22b)に前記ピン(33)をポスト(22)の内部に通すための、前記生地片(1b)より小径の穴部(22c)を有する請求項4〜6のいずれか一つのボタン取付装置。
【請求項8】
前記ボタン(10)は、前記開口(14)の周縁に、ポスト(22)が生地(1)を貫通する時に生地(1)を切り離すエッジ(15a)を有する請求項4〜7のいずれか一つのボタン取付装置。
【請求項9】
前記ボタン取付部材(20)のポスト(22)は、その上部(22b)の半径方向外側端部に、前記ボタン(10)のエッジ(15a)に対向する段部(22d)を有する請求項8のボタン取付装置。
【請求項10】
底部(11)に円形の開口(14)を有するボタン(10)を、基端が閉じた中空円筒状のポスト(22)を有するボタン取付部材(20)で生地(1)に取り付ける方法であって、
前記ポスト(22)が生地(1)を貫通する時に生地(1)から生地片(1b)を切り離す工程と、
前記生地片(1b)をポスト(22)の内部に押し込む工程と、
生地(1)を貫通した後、前記ボタン(10)の開口(14)を通った前記ポスト(22)を加締める工程とを含むボタン取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−43004(P2013−43004A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183702(P2011−183702)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】