説明

ボトム衣類

【課題】
ボトム衣料において、1枚の生地で多段の緊締力の変化をし、さらに、体の各部を適切な力で押さえる。
【解決手段】
オパール加工によって、緊締力の強い部分と弱い部分を形成し、薬品による減量速度の遅い部分の面積や形状を適宜変更することにより、ボトム衣料において、腹部や脚部を適切な力で締め付ける。ガードル1において、腹押さえ部21の緊締力が最も強く、次いで、大腿内側側部22、後側緊締部23の順に緊締力が弱くなっていくように、各部21,22,23において、P部とQ部の面積と個数を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正機能を有するボトム衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、補正機能を有する種々のボトム衣料が知られている。1枚の布帛で多段の緊締力の変化を行おうとすると、伸縮パワーの強い領域と弱い領域の境界を略直線とすることしかできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−274499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、1枚の布帛で多段の緊締力の変化を可能としているが、体の各部を適切な力で押さえることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボトム衣料は、伸縮性素材からなり、前身頃と後身頃が一体となっているか、又は、前身頃と後身頃が所定箇所で縫合されているボトム衣料において、複数の緊締部と該緊締部より緊締力の弱いその他の部分が形成され、緊締部は、強緊締力を有する腹押さえ部と、中緊締力を有する大腿内側内部と、弱緊締力を有する後側緊締部と、からなることを特徴とする。
【0006】
ボトム衣料において、腹押さえ部は、P部分と、P部分間に形成された細幅のQ部分とからなり、大腿内側内部は、幾何形状のP部分と、P部分間に形成された細幅のQ部分とからなり、後側緊締部は、大腿内側内部のP部分より小さい多数の幾何形状のP部分と、P部分間に形成された細幅のQ部分とからなり、大腿内側内部のP部分の個数がnであるとき、前記腹押さえ部のP部分の最大部分の面積S1と前記大腿内側内部のP部分の最大部分の面積S2が、S1>S2×nの関係にあることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るボトム衣料は、伸縮性素材からなり、前身頃と後身頃が一体となっているか、又は、前身頃と後身頃が所定箇所で縫合されているボトム衣料において、複数の緊締部と該緊締部より緊締力の弱いその他の部分が形成され、緊締部は、強緊締力を有する腹押さえ部と、弱緊締力を有する臀部緊締部と、
からなることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明のボトム衣料は、裁断されたままの状態で端始末不要な丸編生地からなることを特徴とし、着用時にアウターに響かなくすることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
1枚の生地において、緊締力の強弱を縫い目を作ることなく形成し、腹部と臀部下縁の緊締力をそれぞれ適切に変えながら、着用時に身体を押さえることができる。また、それに加えて、脚部においても適切な緊締力で締めつけることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例の正面図である。
【図2】本発明の第1実施例の背面図である。
【図3】生地から第1実施例のガードルを裁断した状態の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示されているのは、本発明の実施例であるガードル1である。ガードル1は、丸編の切りっ放し素材からなり、裁断されたままの状態で端始末が不要となっている。
【0012】
丸編素材は、ナイロン系繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維から成る伸縮性生地である。
【0013】
本発明に用いる生地は、丸編の切りっ放し素材をオパール加工した状態のものである。当該生地は、二種以上の繊維からなり、それぞれ特定の薬品に対する減量速度が異なる。すなわち、特定の薬品に漬けた時に、溶ける速度が異なるようになっている。
【0014】
丸編の切りっ放し素材において、緊締力の強くしたい部分には薬品に溶けにくい繊維を多くし、緊締力が最も弱くなる部分には、薬品に全て溶ける繊維と薬品に溶けない繊維の組み合わせとし、生地が透ける程度にすればよい。このように、緊締力の強弱は、減量速度の異なる繊維を適宜組み合わせることにより、如何様にもなしうる。本実施例においては、薬品としてアルカリ溶液を用い、減量速度とはアルカリ減量速度をいうが、これに限定されないのは、当然である。
【0015】
本発明においては、減量速度の異なる2種以上の繊維とポリウレタン繊維を含む部分Pと、前記減量速度の異なる2種以上の繊維のうち減量速度が大きい繊維がほぼ完全に除去され、減量速度が小さい繊維とポリウレタン繊維を含む部分Qからなる。生地における緊締力の調整は、緊締力の強いPと緊締力の弱いQの面積を変化させることにより行う。アルカリ減量速度の異なる2種以上の繊維の例として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、セルロース系繊維等がある。なお、アルカリ減量速度の異なる2種以上の繊維には、ポリウレタン繊維は含まれない。
【0016】
当該生地を、図3に示されたように、所定の形状に切断し、それを縫い合わせることにより、図1に示されたガードル1が出来上がる。図3では、クロッチ部分3とウエストベルト4を除いた前身頃部と後身頃部が一体となった形状に切断されるようになっている。
【0017】
図3に示された、前身頃と後身頃が一体となった本体部2を、後中心2Cと両脚部2Lで縫合し、それに、クロッチ部3、ウエストベルト4を縫合してガードル1が出来上がる。
【0018】
ガードル1は、腹押さえ部21、大腿内側側部22、後側緊締部23の三つの緊締部を有する(図1及び図2参照)。この中で、腹押さえ部21の緊締力が最も強く、次に、大腿内側側部22の緊締力が強く、後側緊締部23の緊締力が最も弱い。緊締部は、P部分とQ部分からなり、それ以外の部分は、Q部分のみからなる。
【0019】
腹押さえ部21は、着用時に腹部を覆う。大腿内側側部22は、着用時に、クロッチ下部から大腿内側部を通って膝上に至る。後側緊締部23は、着用時に、本体部2の上縁からヒップ下縁に沿う臀部緊締部23A、臀部の最下部近傍からそれぞれ左右の大腿内側側部22に連続する大腿後部緊締部23B、左右の臀部下縁と後側大腿部の境界近傍からそれぞれ左右大腿後部と外側部を通って膝上近傍に至る大腿長傾部23Cからなる。
【0020】
腹押さえ部21は、本体部2の前側において、本体部2の上縁からクロッチ部3の若干上方にまで至る略V字状を成している。腹押さえ部21は、上辺が長く下辺が短い台形状のP部分が9つ集まって形成される。各台形間には、細長いQ部分が形成されている。各台形の面積は、他の緊締部のP部分より面積が大きく、他の緊締部より緊締力が強くなっている。9つの台形は最上部が最も面積が大きく、下に行くに従って、面積が小さくなるようになっている。P部分の大きさは、最上部の台形において、上辺が約18センチ、下辺が約15センチで、上下方向(図1中、上下方向)の長さが5センチ弱である。最下部の台形は、上辺が4センチ強、下辺が約5ミリ、上下方向の長さが約1センチである。このようにすることにより、ウエスト近傍ほど緊締力が強くクロッチ部に近いほど緊締力が弱くなり、適切な腹押さえができる。
【0021】
本実施例では、P部分は9つの台形からなるが、これに限定されないのは当然である。台形の個数や各台形の大きさが本実施例と異なってもよく、形状が台形に限定されないのも当然である。また、腹押さえ部21の形状も略V字状に限定されない。例えば、腹押さえ部21が、U字状となっていてもよく、円に近い形状で、腹押さえ部21の中央付近のP部分が最も大きくなっていてもよい。
【0022】
本実施例では、腹押さえ部21の各P部分の面積は、最も小さいもので2平方センチ強であり、最も大きいもので90平方センチ以下であり、さらに、各P部分のほとんどが、大腿内側側部22の各P部に比べて十分に大きく、腹押さえ部21の緊締力を三つの緊締部の中で最も大きいものとしている。
【0023】
腹押さえ部21のP部分は何個でもよいが、1個の場合は、面積が90平方センチ以上且つ800平方センチ以下であることが望ましい。また、大腿内側側部22のP部分との関係において、以下の関係を有することが好ましい。大腿内側内部22のP部分の個数がnであるとき、腹押さえ部21のP部分の最大部分の面積S1と大腿内側内部22のP部分の最大部分の面積S2が、S1>S2×nの関係にある。
【0024】
本実施例において、大腿内側側部22は、三角形、四角形、五角形からなるP部分が10から20程度形成され、各P部分間に細幅のQ部分が形成されることにより、帯状の緊締部を成している。平均的なP部分の大きさは、四角形で略2センチ四方である。各P部分の面積が腹押さえ部21のP部分より小さいので、大腿内側側部22の緊締力は、腹押さえ部21の緊締力より小さい。
【0025】
大腿内側側部22のP部分は何個でもよいが、太腿内側部の緊締力の関係から、本実施例のように10から20程度であることが望ましい。
【0026】
後側緊締部23は、三角形、四角形、五角形からなるP部分が多数形成され、各P部分間に細幅のQ部分が形成されることにより、緊締部を成している。平均的なP部分の大きさは、四角形で略1センチ四方である。各P部分の面積が3つの緊締部の中で最も小さいので、後側緊締部23の緊締力は、3つの緊締部の中で最も小さい。なお、後側緊締部23P部分は、全てが大腿内側側部22のP部分より小さい必要はなく、大腿内側側部22のP部分より大きいものが少数存在しても、後側緊締部23の緊締力が大腿内側側部22の緊締力より小さければ、本実施例に該当する。また、大腿内側側部22においても、後側緊締部23においても、P部の形状が三角形、四角形、五角形に限定されないのはもちろんである。同様の作用を奏するものであれば、丸、楕円等、ハート、星、花、その他いかなる幾何形状であってもよい。
【0027】
後側緊締部23の臀部緊締部23Aは、略U字状を成し、着用の際にヒップの下方への下垂を防ぐ。大腿後部緊締部23Bは大腿内側側部22と連続する。大腿長傾部23Cは、前述のように、左右の臀部下縁と後側大腿部の境界近傍からそれぞれ左右大腿後部と外側部を通って膝上近傍に至り、大腿後部緊締部23B、大腿内側側部22と共に大腿部を適切に締めつける。
【0028】
前記3つの緊締部以外の部分は、Q部分のみからなり、同一の緊締力を有し、前記3つの緊締部より緊締力が弱い。例えば、9.8Nの力で引っ張ったとき、腹押さえ部21は、縦方向の伸度が42.3%、横方向の伸度が27.7%である。同じ力で引っ張ったとき、緊締部以外の部分は、縦方向の伸度が131.3%、横方向の伸度が122.3%である。
【0029】
クロッチ部3は、本体部2と同一の素材からなり、本体部2に縫合されている。また、クロッチ部3の肌側には、マチ布(不図示)が取り付けられている。クロッチ部3と本体部2は同一素材であることが好ましいが、別素材であってもよい。
【0030】
ウエストベルト4は、本体部2と同一の素材からなる。帯状に裁断した生地を折り返して二重にし、当該折り返し部分にテープ(不図示)を縫い付けたものを、本体部2に縫合する。図1及び図2において、ウエストベルト4の上縁部が折り返し部である。ウエストベルト4と本体部2は同一素材であることが好ましいが、別素材であってもよい。
【0031】
さらに、ガードル1は、切りっ放しの丸編素材からできているので、裾部24において端始末の必要がなく、アウターに響くことがない。
【0032】
上記実施例は、ガードル1に基づいて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、他のボトム衣料においても適用できる。例えば、脚付きショーツ、ロングパンツ、水着にも適用できる。脚付きショーツの場合、前身頃と後身頃を所定の箇所、例えば、側部において縫合する必要があるが、その他の構成は、ガードル1と同様にできる。
【0033】
また、上記実施例では、オパール加工によってP部分とQ部分を形成し、緊締力の強弱を調整しているが、それ以外の方法であってもよい。例えば、樹脂プリントの塗布によって、緊締力の強い部分と弱い部分を形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ガードル
2 本体部
2C 後中心
2L 両脚部
3 クロッチ部
4 ウエストベルト
21 腹押さえ部
22 大腿内側側部
23 後側緊締部
24 裾部
F 丸編生地
P 減量速度の異なる2種以上の繊維とポリウレタン繊維を含む部分
Q 減量速度の異なる2種以上の繊維のうち減量速度が大きい繊維が除去され、減量速度が小さい繊維とポリウレタン繊維を含む部分
S 縫合部








【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性素材からなり、前身頃と後身頃が一体となっているか、又は、前身頃と後身頃が所定箇所で縫合されているボトム衣料において、複数の緊締部と該緊締部より緊締力の弱いその他の部分が形成され、
前記緊締部は、強緊締力を有する腹押さえ部と、中緊締力を有する大腿内側内部と、弱緊締力を有する後側緊締部と、
からなることを特徴とするボトム衣料。
【請求項2】
前記ボトム衣料において、
前記腹押さえ部は、P部分と、該P部分間に形成された細幅のQ部分とからなり、
前記大腿内側内部は、幾何形状のP部分と、該P部分間に形成された細幅のQ部分とからなり、
前記後側緊締部は、前記大腿内側内部のP部分より小さい多数の幾何形状のP部分と、該P部分間に形成された細幅のQ部分とからなり、
前記大腿内側内部のP部分の個数がnであるとき、前記腹押さえ部のP部分の最大部分の面積S1と前記大腿内側内部のP部分の最大部分の面積S2が、S1>S2×nの関係にあることを特徴とする、請求項2記載のボトム衣料。
【請求項3】
伸縮性素材からなり、前身頃と後身頃が一体となっているか、又は、前身頃と後身頃が所定箇所で縫合されているボトム衣料において、複数の緊締部と該緊締部より緊締力の弱いその他の部分が形成され、
前記緊締部は、強緊締力を有する腹押さえ部と、弱緊締力を有する臀部緊締部と、
からなることを特徴とするボトム衣料。
【請求項4】
前記伸縮性生地は、裁断されたままの状態で端始末不要な丸編生地からなることを特徴とする、請求項1乃至3記載のボトム衣料。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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