ボルト
【課題】ピッチ差を利用して締結するねじ締結体であって、必要締付トルクを従来より小さな力で与えることができるボルトを提供することである。
【解決手段】主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりも小さなピッチの副ねじが頭部側に螺刻されたボルトであって、ボルトの副ねじ部の外径が主ねじ部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルトの副ねじ部に螺合するナットが、頭部の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルトの頭部側より螺入され、かつ前記ボルトの副ねじの主ねじ側端で主ねじ又は円筒部により係止されるボルトにすることにより実現できた。
【解決手段】主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりも小さなピッチの副ねじが頭部側に螺刻されたボルトであって、ボルトの副ねじ部の外径が主ねじ部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルトの副ねじ部に螺合するナットが、頭部の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルトの頭部側より螺入され、かつ前記ボルトの副ねじの主ねじ側端で主ねじ又は円筒部により係止されるボルトにすることにより実現できた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ締結体を構成するボルトに関する。詳しくは、ピッチ差を利用して締結するねじ締結体を構成するボルトであって、締付工具を使って必要な締付力に締め付けるときに、締付工具を回す力を軽減させると共に、締付の有無の確認が容易なボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
締付トルクに関する技術としては、例えば、締付工具が締付方向に係合する係合部と、ねじ部と、これら係合部とねじ部との間に介在すると共に、前記締付工具と前記ねじ部との間に所定の規制値よりも大きなトルクが加わると前記締付工具から前記ねじ部へのトルクの伝達を防止してそれ以上締付できないようにするトルクリミッター付ボルトにおいて、前記トルクリミッタ部を、前記締付工具と前記ねじ部との間に前記規制値よりも大きなトルクが加わったときに、前記係合部と前記締付工具との係合が外れて前記締付工具が空転するように弾性変形するものとした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−240627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶や工場等には多くの配管が設置されており、特に船舶では配管フランジの多くはボルト締結により組み立てられている。このように多数のボルト締結作業を行うときは、ボルト締結作業で楽でしかも締付られていることの確認が容易な締結構造が求められている
【0005】
締付トルクに関する技術として、特許文献1の技術は、締付時の回転トルクの上限を規制する技術であるが、締付工具を使って回す力を軽減させる技術ではないことから、船舶の配管工事のように比較的大きいボルトを多数締め付けていく場合には大きな労力を費やすので作業者の負担が大きいという問題があった。このように大きな労力を必要としていることは、他の業種では女性の現場進出が拡大する中で女性の進出を阻害するという問題もあった。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、規制値より大きいトルクをねじ部にかからないようにすることはできるが、規制値のトルクで締め付けられているかを確認するには締付後にトルクチェックをしなければならないので、ボルトを一つずつ確認することは時間がかかり確認作業が徹底できないという問題があった。
【0007】
また、締結の有無の確認が容易な従来のトルクシャーボルトは、人力で破断させると仮定すれば、ナットを一方の工具で固定してピンテールを左(通常戻し方向)に回転して破断させねばならないので作業が極めて困難で専用電動工具を使用するのが普通であり、そのためフランジ締付用等の低締付域の人手による工具で使用するトルクシャーボルトが実用化されていなかったという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ピッチ差を利用して締結するねじ締結体であって、必要締付トルクで被締結部材を締め付けるために、締付工具を使って回す力を従来より軽減させた力で締付作業ができ、規定値のトルクで締め付けられているかが容易に確認できるボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載のボルト2は、主ねじ6がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ6よりも小さなピッチの副ねじ7が頭部8側に螺刻されたボルト2であって、ボルト2の副ねじ7部の外径が主ねじ6部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルト2の副ねじ7部に螺合するナットが、頭部8の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルト2の頭部8側より螺入され、かつ前記ボルト2の副ねじ7の主ねじ6側端で主ねじ6又は円筒部11により係止されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のボルト2の発明は、主ねじ6がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ6よりも小さなピッチの副ねじ7が頭部8側に螺刻されたボルト2であって、前記頭部8と副ねじ7との間の外周面に溝10を周設して、前記溝10の底部の軸を所定トルクで破断可能となるように前記溝10の底部の外径部を形成し、前記ボルト2の副ねじ7部の外径が主ねじ6部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルト2の副ねじ7部に螺合するナットが、頭部8の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルト2の頭部8側より螺入され、かつ前記ボルト2の副ねじ7の主ねじ6側端で主ねじ6又は円筒部11により係止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のねじ締結体1の発明は、ボルト2の実質的なピッチ差が普通ボルト2のピッチに比して小さくなり、例えば主ねじ6がM12×1.75で、副ねじ7がピッチ1.5の場合にはピッチ差が0.25となり、ピッチ1.75に比して1/7となり、本締付時にはボルト2のみを回転させて被締結部材5に接しているナットを回転させない構造にしているので本締付時に被締結部材5との締付回転による摩擦が生じないことから、締付に必要な回転トルクを従来に比べて約70%に軽減させることができる。
【0012】
例えば、船舶の配管の締結に使用されている強度区分は4.8で、M16×2ピッチのボルトの締付トルクは100Nm前後であるが、本願発明のボルト2を使用すると、約0.3ピッチで70Nm前後の回転トルクでよいので、締付に必要な回転トルクを約30%も軽減させることができた。この回転トルクであれば女性も容易に締め付けることができ、このような作業への女性の進出を可能にすることができる。
【0013】
また、メンテナンス時においては、ナットを主ねじ6側と頭部8側の双方に抜けられるのに加えて、頭部8側ナットからはみ出すボルト2のねじ山が1〜2山程度に限られるので、錆又はペンキ等を噛みこんで回転しなくなる可能性が著しく少なくなり、従来もっとも作業が困難で厄介なボルト22取外しの作業能率が向上してメンテナンスのコストダウンを図ることができる。
【0014】
仮締め時にはボルト2とともにナットも回転させていき、ナットを被締結部材5に当接させて仮締めを完了させるが、仮締め時には強い力でナットを回転させないので被締結部材5表面にキズがつかない。本締め時にはボルト2を回転させるがナットを回転させないので、メンテナンス時に再使用を繰り返しても被締結部材5表面の摩耗が生じずキズがつかないという効果も奏する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明と同じ効果を奏する。さらに、トルクシャータイプとするためにボルト頭部8の首下部に環状の溝10を設け、ボルト頭部8を必要トルクである一定の締付力で破断させて分離させることにより、ボルト頭部8が存しているか存していないかということを目視確認するだけで、規定の締付トルクで締め付けられているかを確認することができる。よって、例えば配管のフランジ部は少なくとも4本以上のボルト2で締結するが、締結後、第三者がすべての締め付けたボルト2に対して目視確認しながら見て歩くだけで容易に締付結果を確認できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の円筒部を有するボルト(溝なし)の概要図である。
【図2】本発明の円筒部を有し溝を形成したボルトの概要図である。
【図3】本発明の円筒部のないボルト(溝なし)の概要図である。
【図4】図1に示すボルトであって、12ポイントセレーションのボルト頭部の平面概要図である。
【図5】頭部に六角穴を有するボルトの概要図である。
【図6】図5に示すボルトであって、六角形状穴を有するボルト頭部の平面概要図である。
【図7】溝を有する本発明のボルトに副ねじ用ナットを係止させた状態の概要図である。
【図8】本発明のボルト(溝なし)に副ねじ用ナットを係止させた状態の概要図である。
【図9】ねじが螺刻された被締結部材を締結した状態の本発明のボルトの使用説明図である。
【図10】ボルト貫通孔を有する被締結部材を締結した状態の本発明のボルトの使用説明図である。
【図11】(イ)は普通ボルトナットからなるねじ締結体の場合の概念図で、(ロ)は締付状況概念図である。
【図12】(イ)はボルトに副ねじが螺刻された場合の本発明であるボルトを使用したねじ締結体の概念図で、(ロ)はボルトに主ねじと副ねじを螺刻された本発明であるボルトを使用したねじ締結体の締結状況概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明であるボルト2について図1乃至図8で説明する。本発明であるボルト2は、主ねじ6がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ6よりも小さなピッチの副ねじ7が頭部8側に螺刻されたボルト2であって、ボルト2の副ねじ7部の外径が主ねじ6部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルト2の副ねじ7部に螺合するナットが、頭部8の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルト2の頭部8側より螺入され、かつ前記ボルト2の副ねじ7の主ねじ6側端で主ねじ6又は円筒部11により係止される形態からなる。
【0018】
ボルト2の副ねじ7の外径と主ねじ6の外径との大きさは、ナットが副ねじ7端で係止すればよく、ボルト2の副ねじ7の外径が主ねじ6の外径に対して若干大きくても小さくても、又は同一でもよい。
【0019】
また、ボルト2の副ねじ7の外径を主ねじ6の外径と同一の場合に、頭部8よりナットを螺入させるようにしたことにより、ボルト2の頭部8の外径部にねじ溝(図なし)が存する形態もありうるが実用上問題はない。ボルト頭部8の外径を、副ねじ用ナット4のねじ山の頂の直径以上かつ谷底の直径以下とした場合にも、ボルト頭部8にねじ溝が存する形態になるが実用上問題はない。
【0020】
ボルト2における、螺刻される主ねじ6の部分と副ねじ7の部分の位置関係は、図3に示すように、ボルト2の主ねじ6の部分と副ねじ7の部分とを、隣接させて主ねじ6と副ねじ7のそれぞれのねじ溝を連通させて連続させてもよいし、ねじ溝を連通させず不連続とさせてもよい。又は図1、図2又は図5に示すように、離間させて主ねじ6の部分と副ねじ7の部分との間に円筒部11などの螺刻されていない部分を設けてもよい。
【0021】
主ねじ6と副ねじ7のピッチ差、又は螺刻されていない部分が副ねじ用ナット4の回転への抑止力となり、図7又は図8に示すように、副ねじ用ナット4の自由回転を拘束することができる。
【0022】
図9又は図10に示すように、ねじ締結状態において、副ねじ用ナット4又は主ねじ用ナット3を緩めれば、ボルトナットからなるねじ締結体1を取り外せるので、副ねじ7側又は主ねじ6側のナットからはみ出したボルト2のねじ山数を1〜2山にしておけば、錆やペンキ等がボルトナット部に噛み込んでもどちらか一方のナットは緩めやすい。
【0023】
仮締め段階で、主ねじ用ナット3及び副ねじ用ナット4で仮締めし、後から本締めを行う。こうすることにより、本締め段階において締付作業で回転させるのはボルト2のみであり、このときに被締結部材5に当接するナットは回転しないことから、メンテナンスでボルトナットのねじ締結体1を緩めたり締め付けたりを繰り返しても被締結部材5の表面には摩耗が生じにくいという効果がある。
【0024】
ボルト2に頭部座面を有しないことにより、本締めするときに座面がないボルト2のみを回転させてナットは回転させないため、被締結部材5との摩擦が生じないことから、従来より約30%減の締付力で本締めができる。これにより、多数のボルトナットを連続して締め付けていく場合に疲労しにくいし、また従来より締付ける力の弱い人も締付作業ができるようになる。
【0025】
主ねじ6側及び副ねじ7側のナットとも市販品でよいので、ナットが特殊の場合に比べて市場への普及がしやすいという効果がある。
【0026】
また、ボルト2には、ボルト2の頭部8と副ねじ7との間の外周面に溝10を周設して、前記溝10の底部の軸を所定トルクで破断可能となるように前記溝10の底の外径部を形成している。
【0027】
前記溝10部の破断は一定のトルクが加わったときに生ずるようにしているため、破断するまでボルト2の締め付けを行うことにより、本発明のボルト2を使用したすべてのねじ締結体1を一定のトルクで締め付けることができる。これにより、締結トラブルの約43%を占めるといわれる締付不良をなくすことができ、従来ボルトナットを規定の締付トルクで締め付けることができるには技能を要し、熟練者と未熟練者とでは締付トルクのバラツキに大きな差があったのが、熟練者と未熟練者との差がなくなり新人でも安心して締付作業を任されるという効果がある。
【0028】
また、規定の締付トルクに達したときに溝10部の破断によって、締付後のねじ締結体1のボルト頭部8は脱離してなくなっていることから、作業者自身が締付作業時にボルト2一本ごとに締付トルクが規定値に達しているかの状況が確認でき、作業者が締付作業完了した後に、工事管理者等が船内などの作業現場を巡回して歩いて目視で確認するだけで、各ねじ締結体1ごとに規定値の締付トルクで締付られているかの確認がすべて容易にできるという効果がある。
【0029】
そして、ボルト2の頭部8の工具掛かり部の形状、例えば六角形状、又は図4に示すように12ポイントセレーション13、あるいは図6に示すように、六角形状穴12等の工具が滑らない形状であればよい。
【0030】
次に本発明のボルト2を使用したねじ締結体1について説明する。
【0031】
ねじ締結体1の構成は、被締結部材5のボルト2挿入穴にねじが螺刻がされている場合は図9に示すように主ねじ6側のナット無の形態となり、被締結部材5のボルト挿入穴にねじが螺刻がされていない場合には図10に示すように被締結部材5を主ねじ用ナット3と副ねじ用ナット4で挟む形態となる。
【0032】
ここで、図9において、副ねじ7側ナットが螺入された状態のボルト2を被締結部材5に螺入させて、前記副ねじ用ナット4で仮締めしてからボルト2を本締めしていくと、前記ナットに対してボルト2が螺入方向にすすむ。
【0033】
ボルト2の主ねじ6と副ねじ7は、ねじ部を直線的に展開すればわかるように、頭部8、主ねじ6部及び副ねじ7部を成型した軸を、頭部8形状、主ねじ6及び副ねじ7を別々に又は一体的に刻設した転造ダイスで転造すれば製造でき、特別な製造方法は要しない。このとき、前記副ねじ7部及び主ねじ6のおねじは、市販のナットに一致させた外径及びピッチを設定する。なお、特殊な用途に使用するときは市販のナットに限定されない。
【0034】
本発明の実施の形態であるボルト2を使用したねじ締結体1の使用について、図9及び又は図10の形態の場合において説明する。
【0035】
本発明の実施の形態であるボルト2を使用したねじ締結体1には、主ねじ6と副ねじ7の外径を同一にする第一の形体、又は副ねじ7の外径を主ねじ6の外径よりわずかに大きく又は小さくする第二の形体、さらには第一又は第二の形体において、図1や図2に示すように主ねじ6と副ねじ7との間に円筒部11などの非ねじ部を設ける形体、図3示すように主ねじ6と副ねじ7とを隣接させる形体などがある。いずれも副ねじ7端で係止が可能なので、被締結部材5への螺入前にボルト2に副ねじ7側ナットを係止させることができる。
【0036】
図10に示す主ねじ用ナット3を使用する形態の場合について説明する。まず、ボルト2の副ねじ7に副ねじ用ナット4を完全に螺合させ、前記ナットを副ねじ7端で係止させる。
【0037】
また、主ねじ6と副ねじ7とを離間させた場合には、その中間部位に例えば円筒部11を設ける場合があり、この場合は円筒部11がナットを円筒部11端で係止させる。
【0038】
そして、副ねじ用ナット4を螺合させたボルト2を被締結部材5の孔に挿入させながら、主ねじ6用ナット3を前記ボルト2のねじ先側から螺入させていき、前記主ねじ6用ナット3と副ねじ7用ナット4とが被締結部材5の表面に当接してさらに仮締めを行う。
【0039】
次にボルト2を締め付けていくと本締めが始まる。ボルト頭部8に工具を掛けて締め付けていけば、主ねじ6と副ねじ7が同時進行で締まっていき、主ねじ6と副ねじ7のピッチ差で螺入しようとするので、副ねじ7と副ねじ用ナット4のねじ接触面と、主ねじ6と主ねじ用ナット3のねじ接触面とにおいて大きな摩擦抵抗が生じ、大きな圧縮力が生じてボルト2とナットと被締結部材5とは固定化される。
【0040】
次に、本発明のボルトナットの組合せ概念図で螺入状況を説明する。まず比較のための普通ボルトナットの場合について図11で説明する。図11(イ)は普通ボルトナット22、23で締付ける概念図であり、図11(ロ)は螺入状況の説明図である。
【0041】
図11(ロ)において、横方向の下線bは被締結部材5の被締結面を示し、上線aはボルト22やナット23のピッチの大きさをリード角で示し、上下線に挟まれた楔体40はナット23の主ねじ29のねじ山と座面を示している。
【0042】
図11(ロ)に、普通ナット23が被締結部材5面に当接しながらボルト22の主ねじ部に押し込まれていく形体を示している。
【0043】
次に、本発明の場合を、図12(イ)及び(ロ)に示しており、被締結部材5に主ねじのめねじが螺刻されており主ねじ用ナットを有さない場合である。図12(イ)はボルト2に副ねじ7が螺刻された場合の概念図を表しており、図12(ロ)は図12(イ)の締結状況概念図である。
【0044】
図12(ロ)において、上側の溝状体26はナット4の副ねじ33のねじ溝を表し、下側の溝状体27は被締結部材5の主ねじのねじ溝を表し、主ねじのピッチを溝状体27の傾きで表し、副ねじのピッチを溝状体26の傾きで表している。そして、略エ字状の楔体41はボルト2を表し、楔体41の上部は副ねじ7のねじ山を、下部は主ねじ6のねじ山を表している。
【0045】
図12(ロ)に示した、被締結部材5の主ねじ35とナット4の副ねじ33の異勾配の溝の中にボルト2である楔体41を押し込んだ形体は、末広がりの溝状体26と溝状体27とにボルト2を押し込むことになる。
【0046】
次に、使用例を挙げて本発明を説明する。
【0047】
[使用例1]
図1に示すボルト2の場合であり、ボルト2の主ねじ6が5/8インチでピッチ約2.3mm、副ねじ7がM16でピッチ2mmとし、ピッチ差を約0.3mmとした。この場合における、締付工具を使ったときに回す力は70Nmであった。
【0048】
比較例として、ボルト2の主ねじ6をM16でピッチ2mmとした場合の、締付工具を使ったときに回す力は約100Nmであった。この結果、本発明のボルト2を使用した方が、締付工具を使ったときに回す力が約70%でよいという効果があった。
【符号の説明】
【0049】
1 ねじ締結体
2 ボルト
3 主ねじ用ナット
4 副ねじ用ナット
5 被締結部材
6 主ねじ
7 副ねじ
8 頭部
10 溝
11 円筒部
12 六角形状穴
13 12ポイントセレーション
22 ボルト(普通ボルト)
23 ナット(普通ナット)
26 溝状体
27 溝状体
29 主ねじ(ナット)
33 副ねじ
35 主ねじ
40 楔体
41 楔体
a 上線
b 下線
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ締結体を構成するボルトに関する。詳しくは、ピッチ差を利用して締結するねじ締結体を構成するボルトであって、締付工具を使って必要な締付力に締め付けるときに、締付工具を回す力を軽減させると共に、締付の有無の確認が容易なボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
締付トルクに関する技術としては、例えば、締付工具が締付方向に係合する係合部と、ねじ部と、これら係合部とねじ部との間に介在すると共に、前記締付工具と前記ねじ部との間に所定の規制値よりも大きなトルクが加わると前記締付工具から前記ねじ部へのトルクの伝達を防止してそれ以上締付できないようにするトルクリミッター付ボルトにおいて、前記トルクリミッタ部を、前記締付工具と前記ねじ部との間に前記規制値よりも大きなトルクが加わったときに、前記係合部と前記締付工具との係合が外れて前記締付工具が空転するように弾性変形するものとした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−240627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶や工場等には多くの配管が設置されており、特に船舶では配管フランジの多くはボルト締結により組み立てられている。このように多数のボルト締結作業を行うときは、ボルト締結作業で楽でしかも締付られていることの確認が容易な締結構造が求められている
【0005】
締付トルクに関する技術として、特許文献1の技術は、締付時の回転トルクの上限を規制する技術であるが、締付工具を使って回す力を軽減させる技術ではないことから、船舶の配管工事のように比較的大きいボルトを多数締め付けていく場合には大きな労力を費やすので作業者の負担が大きいという問題があった。このように大きな労力を必要としていることは、他の業種では女性の現場進出が拡大する中で女性の進出を阻害するという問題もあった。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、規制値より大きいトルクをねじ部にかからないようにすることはできるが、規制値のトルクで締め付けられているかを確認するには締付後にトルクチェックをしなければならないので、ボルトを一つずつ確認することは時間がかかり確認作業が徹底できないという問題があった。
【0007】
また、締結の有無の確認が容易な従来のトルクシャーボルトは、人力で破断させると仮定すれば、ナットを一方の工具で固定してピンテールを左(通常戻し方向)に回転して破断させねばならないので作業が極めて困難で専用電動工具を使用するのが普通であり、そのためフランジ締付用等の低締付域の人手による工具で使用するトルクシャーボルトが実用化されていなかったという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ピッチ差を利用して締結するねじ締結体であって、必要締付トルクで被締結部材を締め付けるために、締付工具を使って回す力を従来より軽減させた力で締付作業ができ、規定値のトルクで締め付けられているかが容易に確認できるボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載のボルト2は、主ねじ6がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ6よりも小さなピッチの副ねじ7が頭部8側に螺刻されたボルト2であって、ボルト2の副ねじ7部の外径が主ねじ6部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルト2の副ねじ7部に螺合するナットが、頭部8の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルト2の頭部8側より螺入され、かつ前記ボルト2の副ねじ7の主ねじ6側端で主ねじ6又は円筒部11により係止されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のボルト2の発明は、主ねじ6がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ6よりも小さなピッチの副ねじ7が頭部8側に螺刻されたボルト2であって、前記頭部8と副ねじ7との間の外周面に溝10を周設して、前記溝10の底部の軸を所定トルクで破断可能となるように前記溝10の底部の外径部を形成し、前記ボルト2の副ねじ7部の外径が主ねじ6部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルト2の副ねじ7部に螺合するナットが、頭部8の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルト2の頭部8側より螺入され、かつ前記ボルト2の副ねじ7の主ねじ6側端で主ねじ6又は円筒部11により係止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のねじ締結体1の発明は、ボルト2の実質的なピッチ差が普通ボルト2のピッチに比して小さくなり、例えば主ねじ6がM12×1.75で、副ねじ7がピッチ1.5の場合にはピッチ差が0.25となり、ピッチ1.75に比して1/7となり、本締付時にはボルト2のみを回転させて被締結部材5に接しているナットを回転させない構造にしているので本締付時に被締結部材5との締付回転による摩擦が生じないことから、締付に必要な回転トルクを従来に比べて約70%に軽減させることができる。
【0012】
例えば、船舶の配管の締結に使用されている強度区分は4.8で、M16×2ピッチのボルトの締付トルクは100Nm前後であるが、本願発明のボルト2を使用すると、約0.3ピッチで70Nm前後の回転トルクでよいので、締付に必要な回転トルクを約30%も軽減させることができた。この回転トルクであれば女性も容易に締め付けることができ、このような作業への女性の進出を可能にすることができる。
【0013】
また、メンテナンス時においては、ナットを主ねじ6側と頭部8側の双方に抜けられるのに加えて、頭部8側ナットからはみ出すボルト2のねじ山が1〜2山程度に限られるので、錆又はペンキ等を噛みこんで回転しなくなる可能性が著しく少なくなり、従来もっとも作業が困難で厄介なボルト22取外しの作業能率が向上してメンテナンスのコストダウンを図ることができる。
【0014】
仮締め時にはボルト2とともにナットも回転させていき、ナットを被締結部材5に当接させて仮締めを完了させるが、仮締め時には強い力でナットを回転させないので被締結部材5表面にキズがつかない。本締め時にはボルト2を回転させるがナットを回転させないので、メンテナンス時に再使用を繰り返しても被締結部材5表面の摩耗が生じずキズがつかないという効果も奏する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明と同じ効果を奏する。さらに、トルクシャータイプとするためにボルト頭部8の首下部に環状の溝10を設け、ボルト頭部8を必要トルクである一定の締付力で破断させて分離させることにより、ボルト頭部8が存しているか存していないかということを目視確認するだけで、規定の締付トルクで締め付けられているかを確認することができる。よって、例えば配管のフランジ部は少なくとも4本以上のボルト2で締結するが、締結後、第三者がすべての締め付けたボルト2に対して目視確認しながら見て歩くだけで容易に締付結果を確認できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の円筒部を有するボルト(溝なし)の概要図である。
【図2】本発明の円筒部を有し溝を形成したボルトの概要図である。
【図3】本発明の円筒部のないボルト(溝なし)の概要図である。
【図4】図1に示すボルトであって、12ポイントセレーションのボルト頭部の平面概要図である。
【図5】頭部に六角穴を有するボルトの概要図である。
【図6】図5に示すボルトであって、六角形状穴を有するボルト頭部の平面概要図である。
【図7】溝を有する本発明のボルトに副ねじ用ナットを係止させた状態の概要図である。
【図8】本発明のボルト(溝なし)に副ねじ用ナットを係止させた状態の概要図である。
【図9】ねじが螺刻された被締結部材を締結した状態の本発明のボルトの使用説明図である。
【図10】ボルト貫通孔を有する被締結部材を締結した状態の本発明のボルトの使用説明図である。
【図11】(イ)は普通ボルトナットからなるねじ締結体の場合の概念図で、(ロ)は締付状況概念図である。
【図12】(イ)はボルトに副ねじが螺刻された場合の本発明であるボルトを使用したねじ締結体の概念図で、(ロ)はボルトに主ねじと副ねじを螺刻された本発明であるボルトを使用したねじ締結体の締結状況概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明であるボルト2について図1乃至図8で説明する。本発明であるボルト2は、主ねじ6がねじ先側に螺刻され、かつ主ねじ6よりも小さなピッチの副ねじ7が頭部8側に螺刻されたボルト2であって、ボルト2の副ねじ7部の外径が主ねじ6部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルト2の副ねじ7部に螺合するナットが、頭部8の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルト2の頭部8側より螺入され、かつ前記ボルト2の副ねじ7の主ねじ6側端で主ねじ6又は円筒部11により係止される形態からなる。
【0018】
ボルト2の副ねじ7の外径と主ねじ6の外径との大きさは、ナットが副ねじ7端で係止すればよく、ボルト2の副ねじ7の外径が主ねじ6の外径に対して若干大きくても小さくても、又は同一でもよい。
【0019】
また、ボルト2の副ねじ7の外径を主ねじ6の外径と同一の場合に、頭部8よりナットを螺入させるようにしたことにより、ボルト2の頭部8の外径部にねじ溝(図なし)が存する形態もありうるが実用上問題はない。ボルト頭部8の外径を、副ねじ用ナット4のねじ山の頂の直径以上かつ谷底の直径以下とした場合にも、ボルト頭部8にねじ溝が存する形態になるが実用上問題はない。
【0020】
ボルト2における、螺刻される主ねじ6の部分と副ねじ7の部分の位置関係は、図3に示すように、ボルト2の主ねじ6の部分と副ねじ7の部分とを、隣接させて主ねじ6と副ねじ7のそれぞれのねじ溝を連通させて連続させてもよいし、ねじ溝を連通させず不連続とさせてもよい。又は図1、図2又は図5に示すように、離間させて主ねじ6の部分と副ねじ7の部分との間に円筒部11などの螺刻されていない部分を設けてもよい。
【0021】
主ねじ6と副ねじ7のピッチ差、又は螺刻されていない部分が副ねじ用ナット4の回転への抑止力となり、図7又は図8に示すように、副ねじ用ナット4の自由回転を拘束することができる。
【0022】
図9又は図10に示すように、ねじ締結状態において、副ねじ用ナット4又は主ねじ用ナット3を緩めれば、ボルトナットからなるねじ締結体1を取り外せるので、副ねじ7側又は主ねじ6側のナットからはみ出したボルト2のねじ山数を1〜2山にしておけば、錆やペンキ等がボルトナット部に噛み込んでもどちらか一方のナットは緩めやすい。
【0023】
仮締め段階で、主ねじ用ナット3及び副ねじ用ナット4で仮締めし、後から本締めを行う。こうすることにより、本締め段階において締付作業で回転させるのはボルト2のみであり、このときに被締結部材5に当接するナットは回転しないことから、メンテナンスでボルトナットのねじ締結体1を緩めたり締め付けたりを繰り返しても被締結部材5の表面には摩耗が生じにくいという効果がある。
【0024】
ボルト2に頭部座面を有しないことにより、本締めするときに座面がないボルト2のみを回転させてナットは回転させないため、被締結部材5との摩擦が生じないことから、従来より約30%減の締付力で本締めができる。これにより、多数のボルトナットを連続して締め付けていく場合に疲労しにくいし、また従来より締付ける力の弱い人も締付作業ができるようになる。
【0025】
主ねじ6側及び副ねじ7側のナットとも市販品でよいので、ナットが特殊の場合に比べて市場への普及がしやすいという効果がある。
【0026】
また、ボルト2には、ボルト2の頭部8と副ねじ7との間の外周面に溝10を周設して、前記溝10の底部の軸を所定トルクで破断可能となるように前記溝10の底の外径部を形成している。
【0027】
前記溝10部の破断は一定のトルクが加わったときに生ずるようにしているため、破断するまでボルト2の締め付けを行うことにより、本発明のボルト2を使用したすべてのねじ締結体1を一定のトルクで締め付けることができる。これにより、締結トラブルの約43%を占めるといわれる締付不良をなくすことができ、従来ボルトナットを規定の締付トルクで締め付けることができるには技能を要し、熟練者と未熟練者とでは締付トルクのバラツキに大きな差があったのが、熟練者と未熟練者との差がなくなり新人でも安心して締付作業を任されるという効果がある。
【0028】
また、規定の締付トルクに達したときに溝10部の破断によって、締付後のねじ締結体1のボルト頭部8は脱離してなくなっていることから、作業者自身が締付作業時にボルト2一本ごとに締付トルクが規定値に達しているかの状況が確認でき、作業者が締付作業完了した後に、工事管理者等が船内などの作業現場を巡回して歩いて目視で確認するだけで、各ねじ締結体1ごとに規定値の締付トルクで締付られているかの確認がすべて容易にできるという効果がある。
【0029】
そして、ボルト2の頭部8の工具掛かり部の形状、例えば六角形状、又は図4に示すように12ポイントセレーション13、あるいは図6に示すように、六角形状穴12等の工具が滑らない形状であればよい。
【0030】
次に本発明のボルト2を使用したねじ締結体1について説明する。
【0031】
ねじ締結体1の構成は、被締結部材5のボルト2挿入穴にねじが螺刻がされている場合は図9に示すように主ねじ6側のナット無の形態となり、被締結部材5のボルト挿入穴にねじが螺刻がされていない場合には図10に示すように被締結部材5を主ねじ用ナット3と副ねじ用ナット4で挟む形態となる。
【0032】
ここで、図9において、副ねじ7側ナットが螺入された状態のボルト2を被締結部材5に螺入させて、前記副ねじ用ナット4で仮締めしてからボルト2を本締めしていくと、前記ナットに対してボルト2が螺入方向にすすむ。
【0033】
ボルト2の主ねじ6と副ねじ7は、ねじ部を直線的に展開すればわかるように、頭部8、主ねじ6部及び副ねじ7部を成型した軸を、頭部8形状、主ねじ6及び副ねじ7を別々に又は一体的に刻設した転造ダイスで転造すれば製造でき、特別な製造方法は要しない。このとき、前記副ねじ7部及び主ねじ6のおねじは、市販のナットに一致させた外径及びピッチを設定する。なお、特殊な用途に使用するときは市販のナットに限定されない。
【0034】
本発明の実施の形態であるボルト2を使用したねじ締結体1の使用について、図9及び又は図10の形態の場合において説明する。
【0035】
本発明の実施の形態であるボルト2を使用したねじ締結体1には、主ねじ6と副ねじ7の外径を同一にする第一の形体、又は副ねじ7の外径を主ねじ6の外径よりわずかに大きく又は小さくする第二の形体、さらには第一又は第二の形体において、図1や図2に示すように主ねじ6と副ねじ7との間に円筒部11などの非ねじ部を設ける形体、図3示すように主ねじ6と副ねじ7とを隣接させる形体などがある。いずれも副ねじ7端で係止が可能なので、被締結部材5への螺入前にボルト2に副ねじ7側ナットを係止させることができる。
【0036】
図10に示す主ねじ用ナット3を使用する形態の場合について説明する。まず、ボルト2の副ねじ7に副ねじ用ナット4を完全に螺合させ、前記ナットを副ねじ7端で係止させる。
【0037】
また、主ねじ6と副ねじ7とを離間させた場合には、その中間部位に例えば円筒部11を設ける場合があり、この場合は円筒部11がナットを円筒部11端で係止させる。
【0038】
そして、副ねじ用ナット4を螺合させたボルト2を被締結部材5の孔に挿入させながら、主ねじ6用ナット3を前記ボルト2のねじ先側から螺入させていき、前記主ねじ6用ナット3と副ねじ7用ナット4とが被締結部材5の表面に当接してさらに仮締めを行う。
【0039】
次にボルト2を締め付けていくと本締めが始まる。ボルト頭部8に工具を掛けて締め付けていけば、主ねじ6と副ねじ7が同時進行で締まっていき、主ねじ6と副ねじ7のピッチ差で螺入しようとするので、副ねじ7と副ねじ用ナット4のねじ接触面と、主ねじ6と主ねじ用ナット3のねじ接触面とにおいて大きな摩擦抵抗が生じ、大きな圧縮力が生じてボルト2とナットと被締結部材5とは固定化される。
【0040】
次に、本発明のボルトナットの組合せ概念図で螺入状況を説明する。まず比較のための普通ボルトナットの場合について図11で説明する。図11(イ)は普通ボルトナット22、23で締付ける概念図であり、図11(ロ)は螺入状況の説明図である。
【0041】
図11(ロ)において、横方向の下線bは被締結部材5の被締結面を示し、上線aはボルト22やナット23のピッチの大きさをリード角で示し、上下線に挟まれた楔体40はナット23の主ねじ29のねじ山と座面を示している。
【0042】
図11(ロ)に、普通ナット23が被締結部材5面に当接しながらボルト22の主ねじ部に押し込まれていく形体を示している。
【0043】
次に、本発明の場合を、図12(イ)及び(ロ)に示しており、被締結部材5に主ねじのめねじが螺刻されており主ねじ用ナットを有さない場合である。図12(イ)はボルト2に副ねじ7が螺刻された場合の概念図を表しており、図12(ロ)は図12(イ)の締結状況概念図である。
【0044】
図12(ロ)において、上側の溝状体26はナット4の副ねじ33のねじ溝を表し、下側の溝状体27は被締結部材5の主ねじのねじ溝を表し、主ねじのピッチを溝状体27の傾きで表し、副ねじのピッチを溝状体26の傾きで表している。そして、略エ字状の楔体41はボルト2を表し、楔体41の上部は副ねじ7のねじ山を、下部は主ねじ6のねじ山を表している。
【0045】
図12(ロ)に示した、被締結部材5の主ねじ35とナット4の副ねじ33の異勾配の溝の中にボルト2である楔体41を押し込んだ形体は、末広がりの溝状体26と溝状体27とにボルト2を押し込むことになる。
【0046】
次に、使用例を挙げて本発明を説明する。
【0047】
[使用例1]
図1に示すボルト2の場合であり、ボルト2の主ねじ6が5/8インチでピッチ約2.3mm、副ねじ7がM16でピッチ2mmとし、ピッチ差を約0.3mmとした。この場合における、締付工具を使ったときに回す力は70Nmであった。
【0048】
比較例として、ボルト2の主ねじ6をM16でピッチ2mmとした場合の、締付工具を使ったときに回す力は約100Nmであった。この結果、本発明のボルト2を使用した方が、締付工具を使ったときに回す力が約70%でよいという効果があった。
【符号の説明】
【0049】
1 ねじ締結体
2 ボルト
3 主ねじ用ナット
4 副ねじ用ナット
5 被締結部材
6 主ねじ
7 副ねじ
8 頭部
10 溝
11 円筒部
12 六角形状穴
13 12ポイントセレーション
22 ボルト(普通ボルト)
23 ナット(普通ナット)
26 溝状体
27 溝状体
29 主ねじ(ナット)
33 副ねじ
35 主ねじ
40 楔体
41 楔体
a 上線
b 下線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりも小さなピッチの副ねじが頭部側に螺刻されたボルトであって、ボルトの副ねじ部の外径が主ねじ部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルトの副ねじ部に螺合するナットが、頭部の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルトの頭部側より螺入され、かつ前記ボルトの副ねじの主ねじ側端で主ねじ又は円筒部により係止されることを特徴とするボルト。
【請求項2】
主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりも小さなピッチの副ねじが頭部側に螺刻されたボルトであって、前記頭部と副ねじとの間の外周面に溝を周設して、前記溝の底部の軸を所定トルクで破断可能となるように前記溝の底部の外径部を形成し、前記ボルトの副ねじ部の外径が主ねじ部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルトの副ねじ部に螺合するナットが、頭部の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルトの頭部側より螺入され、かつ前記ボルトの副ねじの主ねじ側端で主ねじ又は円筒部により係止されることを特徴とするボルト。
【請求項1】
主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりも小さなピッチの副ねじが頭部側に螺刻されたボルトであって、ボルトの副ねじ部の外径が主ねじ部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルトの副ねじ部に螺合するナットが、頭部の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルトの頭部側より螺入され、かつ前記ボルトの副ねじの主ねじ側端で主ねじ又は円筒部により係止されることを特徴とするボルト。
【請求項2】
主ねじがねじ先側に螺刻され、かつ主ねじよりも小さなピッチの副ねじが頭部側に螺刻されたボルトであって、前記頭部と副ねじとの間の外周面に溝を周設して、前記溝の底部の軸を所定トルクで破断可能となるように前記溝の底部の外径部を形成し、前記ボルトの副ねじ部の外径が主ねじ部の外径と同一の場合、小さい場合又は大きい場合も含め、前記ボルトの副ねじ部に螺合するナットが、頭部の外径を前記ナットのねじの谷底部の直径以下の大きさに形成した前記ボルトの頭部側より螺入され、かつ前記ボルトの副ねじの主ねじ側端で主ねじ又は円筒部により係止されることを特徴とするボルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−96464(P2013−96464A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238277(P2011−238277)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(511138135)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(511138135)
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