説明

ボールの内袋

【課題】 電子デバイスを所定の位置に維持でき、デバイスの損傷を防ぐために、発生する負荷を十分に緩衝する膨らませるボールを提供する。
【解決手段】 内袋(1)の内部に延在する少なくとも二つの補強平面(10)、および内袋(1)内に配置され、補強平面(10)によって所定の位置に維持される少なくとも一つの電子デバイス(30)を有する内袋(1)を備える。内袋(1)は、完成した内袋から後で除去できる一つ以上の成形部材(100)の周りに熱可塑性材料を形成することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨らませるボール、特にサッカーボールのための内袋に関する。
【背景技術】
【0002】
サッカー、ハンドボールまたはバレーボールなどの多くのスポーツにおいて、試合を観戦している人のために、追加の情報を提供することが望ましい。これは、例えば、試合時間の任意の時点でのプレーヤーやボールの位置、またはボールの速度および個々のプレーヤーの速さと能力についての情報に関する。審判や、試合で規則が遵守されていることを監視する他の人々も、そのような情報から恩恵を受け、試合をより確実に管理するであろう。最後に、トレーナーや、競技者の医療スタッフの観点から、フィールド上の出来事を観察するだけでなく、試合の正確な過程についての信頼できるデータを得ることも道理に適っている。
【0003】
したがって、近年、送信器がボール内に配置され、ことによるとさらに他の送信器がプレーヤーに取り付けられ、それらの送信器が電磁波や他の信号を発したり反射したりするいくつかの方法が提案されている。これらの信号は、適切に設置された受信機により捕らえられ、試合時間の任意の時点で、物体、例えば、ボールの位置や速度に関する所望の情報を提供できる。そのような追跡システムの例が、特許文献1から6より知られている。
【0004】
そのような追跡システムの絶対的に必要な事項は、ボール内に送信器またはリフレクタを確実かつ永久的に配置することである。このことは、サッカーボールなどの膨らませる内袋を有する大きなボールの場合、特に、重大な問題である。中に送信器を吊り下げて、第1に、電子部品の損傷を避けるために、ボールの変形や加速の下で生じる機械的負荷を緩衝すべきである。さらに、挿入された送信器は、ボールの力学的性質および軌道に影響を与えないことが好ましい。最後に、多くの用途で、ボールの中心がいつ特定のライン、例えば、サッカーのゴールのゴールラインを通過したかに関して正確な判定が必要とされる。したがって、送信器は、ボール内の正確に定義された位置を取り、その位置を永久的に維持すべきである。
【0005】
この問題を解決するための従来技術から知られている手法は、これまで、送信器またはそれに相当するデバイスが、ボールの内袋の内部にいくつかの弾性ワイヤまたは同様の装置によって自由に吊り下げられる構成のみに関する。そのような配置は、例えば、既に述べた特許文献6および特許文献7から9より知られている。同様の構成が、特許文献10および11より知られており、これら最後の二つの文献は、ボールの内部に永久的に配置された他のデバイスに関するものである。
【0006】
しかしながら、現在公知の解決策には、いつくかの理由のために欠点がある。一方では、従来技術に開示された内袋とそれに対応するボールを製造することは非常に難しく、それには、多数の手作業の加工段階が必要である。他方で、これまでに知られている内袋は、敏感な電子部品を損傷から永久的に保護するために要求される安定性を持ち合わせていない。さらに、現在まで、ボールの中心に電子部品を確実に永久的に配置することは達成できていない。
【0007】
内袋自体の安定性を増加させるための手法が特許文献12および13から知られている。しかしながら、これらの文献は、ボールの(例えば、それぞれ、一般的な球形状を持つ正確に丸いボールまたは多面形ボールの)形状安定性のみに関し、内袋の内部における安定性を改善するための、または敏感なデバイスを適切に吊り下げるための手がかりは全く提供していない。
【特許文献1】独国特許発明第4233341C2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10055289A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10029464A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10029456A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10029463A1号明細書
【特許文献6】独国実用新案第20004174U1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10029459A1号明細書
【特許文献8】国際公開第97/20449号パンフレット
【特許文献9】仏国特許第2667510号明細書
【特許文献10】米国特許第6251035号明細書
【特許文献11】独国特許発明第829109号明細書
【特許文献12】米国特許第4826177号明細書
【特許文献13】独国特許発明第3918038C2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、送信器または別の電子デバイスを所定の位置に維持でき、デバイスの損傷を防ぐために、発生する負荷を十分に緩衝する膨らませるボール、特にサッカーボールを提供することにある。さらに別の態様によれば、内袋は、製造が費用効果的であり、ボールの他の性質に悪影響を与えないべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、この課題は、膨らませるボール、特にサッカーボール用の内袋であって、内袋の内部に延在する少なくとも二つの補強平面、および内袋の内部に配置され、補強平面によって所定の位置に維持される少なくとも一つの電子デバイスを有してなる内袋により解決される。
【0010】
上述した従来技術とは反対に、本発明の第1の態様による電子デバイスは、伝達できるのが引張力のみにとどまらない要素により配置される。電子デバイスが所定の位置から外れたときに、補強平面が追加の剪断力を提供する。さらに、補強平面は、そのどのような動きによっても内袋内部の気積が変わるので、デバイスに生じる振動を、油圧式緩衝器のように緩和する。したがって、例えば、本発明による内袋を有するサッカーボールが、プレーヤーの鋭いキックによって最初に著しく変形し、これにより、デバイスが元の位置から実質的に外れたときに、内袋は、元の外形だけでなく、内部の元の構造を迅速に回復することが補強平面により確実になる。
【0011】
さらに別の利点は、内袋の内部にある補強平面により決定される上述した気積によって電子デバイスに作用する加速力のより効果的な緩衝である。これにより、電子デバイスへの機械的負荷が減少し、それによって、デバイスの寿命が増加する。
【0012】
電子デバイスは内袋の実質的に中心に配置されることが好ましい。さらに、このデバイスは、少なくとも二つの補強平面の交線に配置されることが好ましい。そのように配置によって、電子デバイスが中心から外れたときに、いくつかの補強平面が復元力を提供することが確実になる。
【0013】
少なくとも二つの補強平面の交線は、内袋の中心から外側に実質的に半径方向に延在する。この少なくとも二つの補強平面は、90°ではない角度で交差することが好ましい。現在特に好ましい実施の形態において、内袋は少なくとも二つの交線を有しており、交線が実質的に120°の角度を画成することが好ましい。交線と内袋の外面との接点が実質的に正四面体を画成することが好ましい。この配置により、限られた数の内部の補強平面による低重量と高度の安定性とが組み合わせられる。
【0014】
本発明による内袋の別の特に安定な実施の形態において、補強平面が内袋の外面に接触する線は、膨らませるボールの表皮の少なくとも一つのパネルの形状に実質的に対応する。
【0015】
少なくとも一つの補強平面は、内袋の内圧を等しくするための少なくとも一つの開口部を有することが好ましく、この開口部は、ある実施の形態において、補強平面の実質的に中心に配置されている。
【0016】
補強平面は、内袋の外面に接触しない一つ以上の補助平面を有してなることが好ましい。この補助平面は、少なくとも一つの電子デバイスがその中に配置される内部体積を決定することが好ましい。この内部体積は、電子デバイスのための追加の緩衝保護を提供し、デバイスの所定の位置からのずれを制限する。
【0017】
さらに別の態様によれば、本発明は、膨らませるボール、特にサッカーボール用の内袋であって、内袋の内部に配置された少なくとも一つの電子デバイスおよびこのデバイスを内袋の内部の所定の位置に維持するために配置された複数の引張要素を有してなり、このデバイスは内袋の内部にある別個のチャンバ内に配置されることが好ましい内袋に関する。
【0018】
好ましいチャンバは、電子デバイスの敏感な部品のための追加の保護を提供する。これは、使用に際してだけでなく、デバイスを最初に内袋中に挿入し、緩衝の吊り下げによって衝撃や他の機械的負荷に対してまだ保護されていないときの組立てに際しても当てはまる。
【0019】
第1の実施の形態において、チャンバは、複数の引張要素の間に延在する複数の補助平面により画成される。その結果、追加の別の空気緩衝が電子デバイスの周りに形成され、改善された緩衝効果が提供される。
【0020】
さらに現在好ましい実施の形態において、チャンバは丸い形状を有し、この形状は実質的に球であることが好ましい。そのような形状は、発生する機械的負荷に対して最大の保護を提供する。内袋が極端に変形したとき、例えば、サッカーボールのペナルティー・キックのとき、外面が、デバイスの所定の位置を超えて変形した場合、チャンバの丸い形状は、発生する衝撃が、チャンバを好ましくは側方にそらし、敏感な電子デバイスを破壊し得る部品の最大加速を生じないことを確実にする。
【0021】
さらに、球形状は、内袋内部の重量分布に最大の対称性を持たせ、したがって、ボールの力学的性質および飛行経路への影響をできるだけ少なくする。最後に、チャンバの丸い形状により、ボールが極端に変形した最中に内袋の壁の内面とチャンバとが接触した場合、内袋への損傷を防ぐ。
【0022】
複数の引張要素の少なくとも一つが、その引張要素を、内袋の外面および/またはデバイスまたはチャンバにしっかりと固定するために、一端で、搭載手段を有してなることが好ましい。この少なくとも一つの引張要素は繊維の束を有してなり、搭載手段は、繊維の束の周りに射出成形されたプラスチック材料から構成される。そのような搭載手段は比較的容易に製造でき、内袋内部のチャンバ/デバイスの最終的な組立てが容易になる。
【0023】
繊維の束は、>500N、好ましくは>1000N、特に好ましくは>1200Nの短期引張強度を有する。しかしながら、500N未満の値も一般には可能である。ホイールのスポークと同様に、より高い引張強度が、引張要素のより高い予備張力を可能にし、これは転じて、内袋内のデバイスをより安定に配置することになる。
【0024】
費用効率的な製造のために、さらに、引張要素が十分な耐熱性を有することが好ましい。これにより、引張要素と、必要であれば、デバイスとを、製造の最終的な成形工程の前に内袋の内部に挿入することができる。
【0025】
最後に、本発明は、さらに別の態様によると、膨らませるボール、特にサッカーボール用の内袋であって、複数の中空支柱を有してなる内袋に関する。内袋を膨らませるときに、中空支柱は、内袋の外側から内部に半径方向に延在し、内袋の実質的に中心に、空洞を画成する。さらに、内袋は、空洞内に配置された少なくとも一つの電子デバイスを備え、少なくとも一つの中空支柱が、デバイスを内袋の外側から中心にこの中空に通して挿入できるような十分なサイズを有している。
【0026】
そのような配置によって、デバイスを内袋中に挿入できるだけでなく、デバイスが破損した場合には、そこから取り出すことができる。デバイスを挿入するための中空支柱は、内袋の他の中空支柱とは異なるサイズを有することが好ましい。デバイスを挿入するための中空支柱が、内袋の弁開口部を受け入れるための受容部に対して対称に配されている配置が特に好ましい。その結果、内袋内の重量分布がより均一になり、内袋の挿入が与える、対応するボールの軌道への影響ができるだけ小さくなる。
【0027】
ある実施の形態において、内袋は、油または水などの液体中に溶融または溶解できるコアの周りに熱可塑性材料を成形することによって製造でき、このときコアは、内袋材料を成形したときにある間隔で配置されている。その結果、電子デバイスの所定の形状とサイズのために正確に設計された比較的複雑な形状の内袋を形成できる。例えば、内袋材料が射出により施されるときに、この配置を用いてよい。あるいは、間の開いた成形コアの構成物を、内袋を形成するために、液体の内袋材料、例えば、ラテックス中に浸漬してもよい。
【0028】
本発明による内袋の追加の都合のよい改変は、さらなる従属請求項の主題である。
【0029】
最後に、本発明は、本発明の上述した実施の形態による内袋を有するボールに関する。ボールは、内袋とボールの表皮との間に配置されたカーカスを有することが好ましい。ボールの内袋が上述した補強平面を使用する場合、搭載ケーブルが、少なくとも一つの補強平面中に組み込まれ、電子部品とカーカスに取り付けられている。それゆえ、ボールのカーカスは、電子部品の取付けに含まれ、したがって、ボール内の正確かつ永久的な位置決めを安定化させる。
【0030】
搭載ケーブルは補強平面の二つの部分表面の間に配置されることが好ましい。そのような「サンドイッチ」配置は、製造が特に容易である。
【0031】
ボールが、搭載脚部により内袋に取り付けられている引張要素を有する上述した内袋を使用する場合、内袋自体は、搭載脚部の範囲内でカーカスの搭載表面に取り付けられることが好ましい。この実施の形態は、内袋とカーカスとの間、すなわち、ボールが加速されるかまたは変形されたときに、内袋が電子部品から最高の引張負荷にさらされるまさにその領域の相互接続を提供する。
【0032】
同様に、電子部品とカーカスとを相互接続する追加の搭載ケーブルは、少なくとも一つの中空支柱を有してなる上述した種類の内袋を有するボール内、好ましくはこの中空支柱内に配置される。
【0033】
本発明によるボールのさらに好ましい実施の形態は、さらなる従属請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下の詳細な説明において、本発明による内袋の現在好ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0035】
以下、本発明の現在好ましい実施の形態を、追跡システムに使用するために送信器が内袋の内部に配置されている、サッカーボール用の内袋を参照して説明する。しかしながら、本発明は、ハンドボール、バレーボール、ラグビーボールまたはバスケットボールなどの、膨らませる内袋を使用する他のボールにも使用できることが理解されよう。さらに、送信器の代わりに、異なるデバイス、例えば、単純な圧力センサまたは音響信号を提供するためのデバイス、もしくは測定目的のためまたは信号を提供するために電流を使用する任意の他のデバイスを内袋の内部に配置しても差し支えない。以下において、電磁波のための受動的リフレクタも、本発明の意味において電子デバイスと考えられる。
【0036】
しかしながら、送信器が能動的電子部品である場合、電源が必要であり、これは、例えば、小さな蓄電池によるものであってよい。これ以降に説明する内袋の実施の形態において用いられるこの蓄電池を充電するために、様々な構成が考えられる(図示せず)。
【0037】
第1の可能性は、ボールの外面またはその近くに、例えば、弁開口部の周りに、インダクション・コイルを配置することである。このインダクション・コイルを外部の交番電磁場に施すと、送信器の蓄電池は、接触せずに充電されるであろう。しかしながら、インダクション・コイルは、ボールの内部に配置してもよい。この場合、好ましくはボールの中心に配置されたインダクション・コイルが交番発電ユニットに十分に近くにもってこられるように、ボールをしぼませることが好ましい。
【0038】
しかしながら、接点を配置する、例えば、ボールの柔軟な外面、または弁内または弁上を適切に金属化し、したがって、送信器への電気接触を、対応するプラグにより発生させることも考えられる。この場合、少なくとも一つのデータ・ラインが追加に設けられ、それによって、送信器に格納された充電状態や他のデータに関する情報が読みとられる。
【0039】
外部から充電される蓄電池の使用以外に、ボールの加速運動からエネルギーを発生させる送信器用の電源を提供することも考えられる。例えば、自家発電式腕時計について知られているそのようなシステムには、ボールが永久的に使用の準備ができており、充電が必要ないという利点がある。
【0040】
原則として、ボール、例えば、サッカーボールは、表皮内に配置された内袋を有してなる。サッカーボールの場合、表皮は通常、互いに接着されている、縫いつけられている、または溶着されている複数のパネル(例えば、公知の五角形や六角形)からなる。形態の安定性を改善するために、内袋と表皮との間にカーカスを必要に応じて配置することも可能である。単純な場合、カーカスは、内袋に周りに巻きつけられたバンドなどからなり、これも内袋に接着されていてもよい。サッカーボールの別の例示構造が本出願人の独国特許発明第19732824C2号明細書に論じられている。
【0041】
図1は、本発明の第1の態様による内袋1の全体図を示す。内袋1、並びに以下に論じられている別の実施の形態は、ボールの表皮(図示せず)および適用できればカーカス(図1には示されていない)の内部に配置される。しかしながら、内袋の表面に、別個の表皮を必要とせずに内袋1自体をボールとして使用できるように適切なコーティングを設けることも考えられる。
【0042】
図1の全体図から導かれるように、内袋1の球形体積をいくつかのチャンバ20に分割する補強平面10が内袋の内部に配置されている。概略的にしか示されていない電子デバイス30が、補強平面10の交差部分に配置されており、それによって、内袋1の実質的に中心に配置されている。しかしながら、故障に対する信頼性を増加させるために、内袋の中心の周りに平面上に対称に分布したいくつかの電子デバイス、例えば、いくつかの余分な送信器を配置することも可能である。あるいは、内袋の中心に送信器の重い部品を配置し、軽い部品を内袋内に対称に分布させることも考えられる。例えば、以下に説明する、補強平面10、引張要素60、搭載ケーブル310などの中にアンテナまたは類似の機能要素を分布させてもよい。内袋の外面に一つ以上のアンテナを分布させることも考えられる。
【0043】
内袋1の内部の補強平面10の選択と配置に関して、一方では軽い重量と、他方では電子デバイス30の十分に安定な支持との間で妥協しなければならない。これに関連して、直交する補強平面10はそれほど好ましくないことが分かった。対照的に、6枚の補強平面10全体が組になって約120°の角度で交差している図1から3に示した配置が特に好ましい。その結果、交線11が内袋1の表面に接触する接点12(図1は一つの接点12のみを示し、図2および3では示されていない)が、正四面体の角を画成する。
【0044】
図4は、多数の補強平面10を有する代わりの実施の形態を示している。補強平面10が内袋1の外面2に接触している接線13(一部だけが示されている)は、膨らませるべきボールの表皮の少なくとも一つのパネルの形状、例えば、よく知られた五角形パネルの形状に実質的に対応しているのが分かる。
【0045】
図1から4に示した実施の形態において、電子デバイス30が、内袋の中心から外れた場合に、瞬時に元の位置に戻ることを確実にするために、いくつかの機構が用いられる。まず最初に、補強平面10の交差部に配置されていることが好ましいデバイス30がずれると、補強表面10内に歪みが生じ、したがって、能動的な復元力が生じる。さらに、デバイス30が内袋1の中心からずれると、補強平面10および/または内袋1の外面2により画成されるチャンバの体積が変わる。これによって、隣接するチャンバ20内に圧力差が生じ、これがさらに、電子デバイス30を元の位置に迅速に戻らせる。
【0046】
元の位置の周りでの繰り返しの振動を防ぐために、様々なチャンバ20の間に開口部21を設けることが重要なことがある。これによって、圧力を等しくすることができ、開始位置の周りでのデバイス30の振動は、あるチャンバ20から別のチャンバへの気流によって緩和される。これは、オイルが、バンパーのある1つのチャンバから別のチャンバへと小さな開口部を通って流動して、振動動作を緩和させる、自動車における油圧式バンパーの機能に似ている。
【0047】
この内袋1の場合には、この効果は、チャンバ20間の開口部21のサイズにより影響され得る。開口部21の好ましい位置は、(i)内袋の外面にある接線13の交点12、または(ii)図4に示した補強平面10のほぼ中心である。さらに、緩和効果は、内袋1を膨らませるのに使用されるガスの粘度により影響を受け得る。
【0048】
図2と3の比較がさらに別の態様を開示している。図2の実施の形態において、電子デバイス30は、6つの補強平面10の交差部に直接配置されている。図3の実施の形態は、対照的に、4つの追加の補助平面40を有してなり、その内の二つが図3において認識できる。補助平面40は、電子デバイス30が配置されている6つの補強平面10の交差部の周りに別個の体積を形成する。これは、損傷に対して電子デバイス30(図3においては示されていない)を保護するための追加の可能性を与える。
【0049】
非常に鋭いキックのときに、プレーヤーのインステップ・キックがボールと内袋の内部深くまで到達する場合、損傷を防ぐために、例えば、補助平面40により画成される体積に発泡体などを充填することが考えられる。より単純な代替例において、内部体積には、変形を防ぐために特に高圧を有するガスが充填される。この保護機能に加え、補助平面40はさらに、補強平面10により形成される内袋1の内部の骨組みの安定化に寄与する。
【0050】
補強平面10、補助平面40および内袋の外面は、熱成形により所望の形状にすることができる、軽量であるが引き裂き抵抗を有する材料から製造されることが好ましい。熱可塑性ウレタン(TPU)から製造された薄いフイルムを使用することが特に好ましい。使用するTPUの厚さ、その材料の性質および適用できる場合には、フイルムの予備膨張などの製造における適切な処理工程が、遠距離範囲に亘る内袋1の動的性質を変えるであろう。ガラス繊維によりTPUフイルムを補強することも考えられる。そのような補強TPUは、例えば、エラストグラム社(Elastogram GmbH)により提供される。
【0051】
図16aおよび16bは、異なる材料の厚さによる内袋の動的挙動への影響を示している。これらのグラフは、80mph(マイル毎時)(約128km/時)での衝撃の場合の四面体補強平面(図2に示すような)を持つ内袋の動的挙動を示している。図16aは、内袋内部にある送信器に生じた加速(重力加速度gの倍数で)を示し、一方で、図16bは送信器のずれを示している。その中で、送信器は80gの総重量を有するものと仮定した。使用したTPUフイルムの厚さには、内袋の応答挙動に大きな影響があることが直ちに分かる。これは、約1mmの範囲内の壁厚により、比較的低い加速値で最小のたわみに至ることに起因する。約0.5mmの壁厚でもまだ良好な結果が得られるが、約0.15mmの壁厚では、内袋の表皮と持続的に接触することになる。
【0052】
前処理の影響、特に、内袋に使用する前のTPUフイルムの膨張の影響が図17に示されている。このフイルムは、歪み、すなわち、膨張に関する一つのヒステリシス曲線に従わないことが分かる。歪みサイクルのそれぞれのヒステリシス曲線の形状は、代わりに、以前の最大の歪み(第1の膨張に関する濃い実線、第2の膨張に関する点線、および第3の膨張に関する実線を参照のこと)に依存する。次いで、新たなヒステリシス曲線の増加する行き道は、この以前の歪みのヒステリシス曲線の戻り道と実質的に一致する。したがって、内袋におけるTPUフイルムの特定の膨張挙動を達成すべき場合、アセンブリ前にフイルムを、結果として生じるヒステリシス曲線(それゆえ、TPUフイルムの膨張挙動)が所望の形状を示す値まで膨張させることが都合よい。したがって、その結果、内袋におけるTPUフイルムが、ボールを大幅に変形させた後またはボールを大きく加速させた後に弛むことが避けられる。
【0053】
図5に示されている、図1〜4の実施の形態を改変した実施の形態において、補強平面10内に、相当な引張強度を受容でき、かつ、一方の端部で電子デバイス30に、他方の端部で内袋1を囲むボールのカーカス300に、直接的または間接的に取り付けられる一つ以上の搭載ケーブル310が組み込まれている。電子デバイスの吊り下げにカーカス300を伴うと、ボール内部に電子デバイス30を固定する安定性がさらに増す。しかしながら、ケーブル310を内袋1の外面2に接続することだけも可能である。
【0054】
図5に示した実施の形態において、搭載ケーブル310は、補強平面10の二つの部分平面の間に位置している。これらの部分平面と搭載ケーブル310との間で相対的な運動が可能であり、例えば、接着、ヒートシールなどによって、搭載ケーブル310を静止した状態にしっかりと固定することも可能である。図5の概念の単純な実施の形態(図示せず)において、部分平面を一つだけ設け、例えば、適切なループまたは対応する孔を通る通路によって、ケーブル310がそこに固定される。この場合、補強平面10との接着も可能である。純粋な搭載機能以外に、送信器30の上述した蓄電器を充電するため、または外部にデータを導くために、電線路を一つ以上のケーブルに組み込んでもよい。どの場合(図5参照)でも、ケーブル310は内袋1を通って外部に貫通するので、送信器30に電力を供給する場合、または送信器との連絡が望ましい場合、追加の通路は必要ない。
【0055】
図6および7は、本発明のさらに別の態様に関する。これらの実施の形態において、電子デバイスは、内袋1の中心にあるチャンバ50内に配置されている。図3に関して既に説明したように、チャンバ50は、電子デバイス30の追加の保護を与える。しかしながら、チャンバが十分に硬質である材料、例えば、軽量であるが剛性であるプラスチック材料から製造されている場合、チャンバは、本発明による内袋のアセンブリ中に既に電子デバイスの敏感な部品に保護を与える。好ましいプラスチック材料は、熱可塑性ウレタン(TPU)および特に、例えば、TERLURAN(登録商標)の名称で得られるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)である。
【0056】
図6は、内袋1の中心にチャンバ50、したがって、デバイス30の位置を決定する、いくつかの引張要素60の間にある連結平面51によりチャンバ50が形成されている単純な実施の形態を示している。ある実施の形態において、連結平面51は、好ましくは半径方向に配置された引張要素60の三分の一より多くがチャンバ50内にあるまたはチャンバ50により置き換えられているようなサイズを有する。その結果、電子デバイスを吊り下げるための全体の骨組みが中心で著しく補強される。しかしながら、より小さなチャンバ50となる連結平面51のより小さな実施の形態も考えられる。
【0057】
現在好ましい改良型が図7に示されている。電子デバイス(図示せず)を収容する実質的に球状のチャンバ50が内袋1の中心に配置されている。チャンバ50は、内袋1の内部に関して密封することができる。このことは、チャンバ50が、内袋1の最終製造工程の前に内袋1の内部に配置される場合に特に好ましい。それによって、電子デバイスの敏感な部品への高温または攻撃性ガスの影響が少なくとも減少する。しかしながら、内袋1の内部の高い空気圧によるチャンバ50への機械的負荷を減少させるために、チャンバ50に開口部52(図7参照)を設けることも考えられる。チャンバ50の好ましい球形状が、電子デバイスにさらなる保護を与える。内袋1の中心に到達する衝撃は、平面の側に当たらず、ほとんどの場合、球状チャンバ50を側方に撓めるだけである。これにより、電子デバイス30に有効に作用する加速力が減少する。
【0058】
チャンバ50を内袋1の中心に吊り下げるための半径方向の引張要素60は、非常に安定な繊維61の束、例えば、アラミド繊維の束から製造されることが好ましい。従来技術、例えば、独国実用新案第20004174U号明細書とは対照的に、引張要素60は、実質的に弾性がない、または少なくとも高弾性ではないことが好ましい。Technora(登録商標)の商標名で得られるPPTA(ポリパラ−フェニレン−テレフタールアミン)のコポリマーから製造された繊維が特に好ましい。束を形成するために約200よりを平行に配置し、そのような束をいくつか(例えば20から40)よって完全な引張要素60を形成することが好ましい。これらの繊維の特別な利点は、大きな引張強度以外に、250℃までの温度で内袋1をさらに加工することを可能にする高温耐性である。さらに重要な態様は、高い引張強度の場合でさえも、これらの繊維の伸長が非常に小さいことである。引張要素は、初期の長さの最大で30%、好ましくは25%未満、特に好ましくは20%未満しか伸長しない。束そして最終的には引張要素60を構成する一よりは、好ましくは初期の長さの20%未満、特に好ましくは15%未満しか伸長できない。
【0059】
引張要素60の引張強度は1200Nより大きいことが好ましい。これにより、チャンバ50を内袋1の内部に、撓んだときに元の位置への戻りが著しく加速されるように、高張力で吊り下げることができ、これによりボールの位置決めの正確さが改善される。
【0060】
図19aおよび19bは、二つの異なる衝撃速度、すなわち、60mphおよび80mph(約96km/hおよび約128km/h)での、四面体状に配置された引張要素を有する内袋の応答挙動を示している。高速(点線の曲線)での明らかに高い加速と、外面(パネル)との長い接触とが分かる。
【0061】
この実施の形態において、引張要素60を適切に設計することによって、内袋の動的性質、すなわち、内袋の変形に対する応答に影響を与えることが一般に可能である。この目的のために、引張要素内の繊維の数、並びに互いとの相互接続を変えてもよい。送信器をしっかりと固定する安定性に選択的に影響を与えるために、非線形膨張挙動を有する上述したアラミド繊維以外の繊維を使用することも考えられる。
【0062】
繊維束61の外端と内端の周りにプラスチック材料を射出して、搭載手段62を製造することが好ましい。この場合、引張要素60は、引張要素を球状チャンバ50にしっかりと固定するために、適切なサイズの開口部53に通して導くことだけが必要である。搭載手段62の周りに射出され、デバイス30の挿入後に互いに挟まれるまたは溶着される二つ以上の(半)殻からチャンバを製造することも考えられる。その結果、内袋の製造は著しく容易になる。
【0063】
もう一度射出された搭載手段62を用いて、搭載脚部63を、チャンバ50の反対の引張要素60の端部に配置する。搭載脚部63は、チャンバ50および引張要素60を、内袋1の外面2にしっかりと固定するように働く。これは、接着、高周波溶着またはプラスチック材料に一般的な他の加工技法により行ってもよい。搭載脚部63を十分な耐熱性の材料から製造すれば、内袋1全体は、最終的な成形工程によって所望の形状とサイズにする前に、最初に予備組立てすることもできる。
【0064】
図13a〜13dは、引張要素60を内袋1の外面2にしっかりと固定するための搭載脚部63の様々な現在好ましい実施の形態を示している。搭載脚部63は、一方で、内袋1の外面2のための十分な大きな接触面65を、他方で、引張強度を保証するためのそれぞれの引張要素60のための支持体を有さなければならない。
【0065】
図13aの実施の形態において、引張要素(図示せず)は、ピン(図示せず)の周りにループ状に案内され、このピンは、搭載脚部63の接触面65の凹部64内に配置されている。このピンは、十分に安定なプラスチック材料から製造しても、最高の張力に耐えられる金属から製造してもよい。引張要素60(図示せず)の二つのくくりつけていない端部は、この実施の形態においては、チャンバ50に固定される。
【0066】
図13bは、引張要素がその周りを案内される(金属)ピンの代わりに、ボタン状の挿入体67を用いた変更例を示している。この実施の形態は、ボタン状挿入体67は、高い引張応力に耐える大きな表面を有するので、搭載脚部63が完全にプラスチックから製造されている場合により都合よい。
【0067】
図13cは、製造を単純にすることができるさらに別の変更例を示している。ここでは、引張要素60(図示せず)のループは、さらに別の部品を必要とせずに、接触面65にある適切な凹部68を通して案内される。
【0068】
最後に、図13dは、最初に、プラスチック材料が引張要素の端部の周りに射出され、次いで、接触面の凹部により受容される(図13dにおいて詳細に認知できない)実施の形態を示している。この変更例の製造は、特に単純に自動化できる。射出の代わりに、接触面65の凹部により受容される引張要素(図示せず)の外端に結び目を形成することも考えられる。
【0069】
内袋上の引張要素の搭載脚部63に関して説明した実施例は、より小さな実施の形態において、それぞれの引張要素60の内端でチャンバ50をしっかりと固定するために使用することができる。さらに、一つ以上の引張要素60が内袋1の外面2を通って延在し、カーカス300上にしっかりと固定されている場合に、説明した搭載脚部63を使用しても差し支えない。全ての実施の形態において、引張要素に使用することが好ましい繊維の端部を補強することが意味のあることであろう。
【0070】
引張要素60が、対になって実質的に同じ角度で囲むように配置されることが特に好ましい。図7に示すような4つの引張要素の場合、これにより、109.47°の角度で引張要素60の四面体形状が形成される。6つの引張要素を使用する場合、90°の角度となる。
【0071】
送信器の吊り下げのさらに別の安定化について、引張要素60間に一つ以上の横方向の接続手段を配置することも可能である。そのような実施の形態の一つが図14に示されている。中心から半径方向に延在する引張要素60以外に、複数の横方向の接続手段69が見える。三次元の蜘蛛の巣に似た構造が生じる。したがって、ボールの加速中または変形中に生じる力は、内袋全体により均一に分布され、ボールの応答挙動はより均質になる。
【0072】
図15はさらに別の実施の形態を示している。ここでは、少なくとも一つの引張要素60が、分岐点161から内袋1の外面2へと延在する、複数の副要素160に分岐している。それゆえ、引張要素60を介して伝達される引張負荷の接触点は、外面2の大きな範囲に亘って分布している。図15に示した態様において、分岐点161は外面に近い。しかしながら、分岐点を引張要素60の中心またはチャンバ50の近くに位置させることも可能である。一つ以上の副要素を再度分岐させる構成(図示せず)も考えられる。最後に、図14の横方向の接続手段69を図15の副要素と組み合わせることも可能である(図示せず)。この場合、横方向の接続手段は、引張要素同士、または引張要素と副要素、もしくは副要素同士を接続してもよい。この場合、ボールの力学的性質を確実に均一にするために、少なくとも実質的に対称である構成が好ましい。
【0073】
繊維束、例えば、上述したアラミド繊維を引張要素として使用する場合、分岐点161での分割は、実現するのが特に簡単である。この場合、束は、分岐点161から外面2に異なる方向で延在する、別個の部分束に分割することだけが必要である。
【0074】
図8は、図7の実施の形態の改良形を示している。この実施の形態において、搭載脚部63は、例えば、接着、高周波溶着、または同様の技法によって、カーカス300の内面の対応する搭載面330(図8参照)に接続されている。図5の実施の形態と同様に、カーカス300は、それによって、安定性の程度を追加するために、図8において送信器の吊り下げに含まれる。
【0075】
図9および10は、本発明のさらに別の態様に関する。この実施の形態において、内袋1、支柱60’およびチャンバ50’は、好ましくは一体の材料片、例えば、ラテックスから製造される。ラテックスは、必要であれば、追加の繊維および/または前処理、例えば、膨張によって補強することができる。この補強繊維は、ラテックス溶液の製造中に加えても、後に導入してもよい。繊維が製造中にラテックス材料中に埋め込まれるように、ラテックス溶液の成形器具の特定の位置に配置することも考えられる。さらに別の実施の形態において、内袋1の弾性特性に局部的に影響を与えるために、厚さの異なるラテックス材料が用いられる。
【0076】
内袋1は、内袋1の外面から内部に延在し、チャンバ50’を画成する複数の中空支柱60’を有してなる。中空支柱60’の一つは、電子デバイス30を挿入し、必要であれば取り出すための大きな直径を有する。この中空支柱の重い重量を埋め合わせるために、反対側に内袋1の弁のための受容部70を配置することが好ましい。その結果、膨らまされた内袋が不釣り合いとなることは大部分避けられる。内袋1が膨らまされたときに、空気圧がチャンバ50’の壁51’をデバイス30に押し付け、どのような追加の手法も必要とせずに、デバイス30を内袋1の中心に固定する。上述した実施の形態とは対照的に、電子デバイスを挿入した後には、もはや接着も溶着も必要ない。図9のチャンバ50’並びに中空支柱60’の形状と直径は単に概要である。複数の電子デバイス、例えば、上述した余分な送信器を受容するために、他の寸法並びにいくつかのチャンバ50’の配置も考えられる。
【0077】
図10は、図9の実施の形態の改良例を示しており、ここでは、送信器30は、中空支柱60’を通って延在する追加の搭載ケーブル310によってカーカス300に固定されている。この実施の形態は、ケーブル310が、送信器30を内袋1の中心に安定な様式で維持するのに十分な張力を生じさせることができるので、どのような補強ラテックス材料も必要とせずに実施できる。したがって、図10の実施の形態は、都合のよい様式で、図7および8の実施の形態の態様を、図9の改良例と組み合わせている。
【0078】
加速と撓みへの異なるラテックス材料の影響が図18aおよび18bに示されている。特に、それぞれの使用する材料によって、最初の衝撃後の振動挙動が明らかに異なることが分かる。点線の曲線は、約357ms後の送信器の著しい第2の加速を示すが、この「後振動」は、実線の曲線に対応する材料には全く観察できない。「2×C10ラテックス」と称する材料は、「ベースラテックス」と称する材料と比較して実質的に二倍の硬さを有する。
【0079】
図11および12は、複雑な内袋、例えば、図1〜4に示した内袋1を製造するための考えられる装置を示している。この目的のために、いくつかの成形部材100が、融点の低い材料、例えば、ワックス、または適切な液体(水または油など)中に溶解する材料から製造される。ここに開示される実施の形態において、成形部材100は、球のセグメントとして形成される。ピン状の接続体101を用いて、これらの成形部材100は、水平と垂直の間隙102が球を通って延在するように組み立てられる。幾何学的な観点から、間隙102は、球の中心にその中心を持つデカルト座標系により定義される平面にある。特に、図2に示した補強要素の四面体構成を形成するための、他の構成も可能である。
【0080】
組み立てた部材100を、成形、例えば、射出成形または適切な内袋材料(例えば、ラテックス)の溶液中への浸漬のために使用すれば、内部に補強平面を有する一体の内袋が形成される。最後の成形工程の最中に、送信器(図示せず)を、成形部材100によりその位置に維持しても、完成した内袋中に後で挿入してもよい。ピン状の接続体101のために、成形部材100の周りに成形された内袋のセグメントの間に管状の接続部がある。その結果、内袋1全体を膨らませるために、一つの弁接続(図示せず)しか必要ない。
【0081】
図12は、所望の位置に内袋1を成形する最中に成形部材100を維持するための装置を示している。この目的のために、金属片またはプラスチック片201などから製造された外部の骨組み200を、いくつかの方向から、組み立てられた成形体の内部を通って延在するワイヤ202と共に用いる。さらに、ワイヤ202は、内袋を製造する最中に送信器を適所に保持するように働いてもよい。最後に、ワイヤ202は、送信器を上述した様式でカーカスにしっかりと固定する搭載ケーブル310として後に働くことができるように、製造中に内袋中に組み込んでもよい。
【0082】
成形プロセスを終了したときに、外部の骨組み200を取り外し、成形部材100を含む内袋を、使用した材料の融点まで加熱する。次いで、内袋を動かすことにより、弁の開口部を通して液体材料を除去する(弁を挿入する前に)。液体中に溶解する成形部品の場合、これらの部品は、適切な溶剤に接触させることにより溶解される。その結果、複雑な内袋形状は、内袋の中心に電子デバイスをしっかりと固定するための手作業の工程を大部分はもはや必要としない上述した方法によって製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態の概略図
【図2】補強平面の実施の形態の斜視図
【図3】補強平面のさらに別の実施の形態の斜視図
【図4】補強平面のさらに別の実施の形態の斜視図
【図5】搭載ケーブルが組み込まれた内袋内の補強平面に関するさらに別の実施の形態の平面図
【図6】本発明のさらに別の実施の形態による内袋内の引張要素およびチャンバを示す斜視図
【図7】さらに別の実施の形態の電子デバイスのためのチャンバおよび引張要素を示す斜視図
【図8】電子部品の搭載に、カーカスが追加に関与しているさらに別の実施の形態を示す平面図
【図9】本発明のさらに別の実施の形態によるいくつかの中空支柱を有する実施の形態の概略図
【図10】追加の搭載ケーブルが送信器をカーカスにしっかりと固定している図9の実施の形態の変更例の平面図
【図11】複雑な形状を有する内袋の製造のための成形要素の斜視図と分解斜視図
【図12】内袋を成形する最中の図11の成形要素を支持するための骨組みを示す斜視図
【図13】例えば、図7の実施の形態に用いられるような搭載手段の例を示す斜視図
【図14】引張要素の間の追加の横方向の接続を示す図
【図15】枝分れする引張要素を示す概略図
【図16】様々な厚さのTPUフイルムに関する送信器の加速とずれを試験するための有限要素分析の結果を示すグラフ
【図17】TPUフイルムの膨脹に関するヒステリシス曲線を示すグラフ
【図18】様々な種類のラテックスを使用したときの送信器の加速とずれを試験するための有限要素分析の結果を示すグラフ
【図19】異なる衝撃速度に関する本発明の実施の形態の動的応答挙動を示すグラフ
【符号の説明】
【0084】
1 内袋
10 補強平面
20 チャンバ
30 電子デバイス
40 補助平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨らませるボール用の内袋(1)であって、
a. 前記内袋の内部に延在する少なくとも二つの補強平面(10)、および
b. 前記内袋(1)内に配置され、前記補強平面(10)によって所定の位置に維持される少なくとも一つの電子デバイス(30)、
を有してなる内袋(1)。
【請求項2】
前記電子デバイス(30)が前記内袋(1)の実質的に中心に配置されていることを特徴とする請求項1記載の内袋(1)。
【請求項3】
前記電子デバイス(30)が前記内袋(1)内に複数配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の内袋(1)。
【請求項4】
前記電子デバイス(30)が前記少なくとも二つの補強平面(10)の間の交線(11)に配置されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項5】
前記少なくとも二つの補強平面(10)の間の交線(11)が、前記内袋(1)の中心から外側に実質的に半径方向に延在することを特徴とする請求項4記載の内袋(1)。
【請求項6】
前記少なくとも二つの補強平面(10)が90°ではない角度で交差することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項7】
前記交線(11)を少なくとも二つ有し、該交線が実質的に120°の角度をなすことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項8】
前記交線(11)が前記内袋(1)の外面(2)と接触する接点(12)が実質的に正四面体を画成することを特徴とする請求項7記載の内袋(1)。
【請求項9】
前記補強平面(10)が前記内袋(1)の外面(2)と接触する接線(13)が、膨らますべきボールの表皮の少なくとも一つのパネルの形状に実質的に対応することを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項10】
前記少なくとも一つの補強平面(10)が、前記内袋(1)内の圧力を等しくできるように少なくとも一つの開口部(21)を有することを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項11】
前記開口部(21)が前記補強平面(10)の実質的に中心にあることを特徴とする請求項10記載の内袋(1)。
【請求項12】
前記補強平面(10)が、前記内袋(1)の外面(2)に接触しない少なくとも一つの補助平面(40)を有することを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項13】
複数の補助平面(40)を有し、該補助平面(40)が、少なくとも一つの電子デバイスが中に配置される内部体積を画成することを特徴とする請求項12記載の内袋(1)。
【請求項14】
前記内袋(1)および/または前記補強平面(10)および/または前記補助平面(40)に用いられる材料がTPUを有してなることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項15】
膨らませるボール用の内袋(1)であって、
a. 前記内袋(1)内に配置された少なくとも一つの電子デバイス(30)、および
b. 前記電子デバイス(30)を前記内袋(1)内の所定の位置に維持するように配置された複数の引張要素(60)、
を有してなる内袋(1)。
【請求項16】
前記デバイス(30)が前記内袋(1)内の別個のチャンバ(50)の内部に配置されていることを特徴とする請求項15記載の内袋(1)。
【請求項17】
前記チャンバ(50)が、前記複数の引張要素(60)の間に延在する複数の補助平面(51)により画成されることを特徴とする請求項16記載の内袋(1)。
【請求項18】
前記チャンバ(50)が丸い、好ましくは実質的に球の形状を有することを特徴とする請求項16記載の内袋(1)。
【請求項19】
前記チャンバ(50)が前記内袋(1)の内部に関して気密であることを特徴とする請求項16から18いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項20】
前記チャンバ(50)が、該チャンバの内側と外側の圧力を等しくできるように前記内袋(1)の内部への開口部(52)を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項16から18いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項21】
前記デバイス(30)が前記内袋(1)の実質的に中心に配置され、前記少なくとも一つの引張要素(60)が前記デバイス(30)から実質的に半径方向外側に延在することを特徴とする請求項15から20いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項22】
前記複数の引張要素(60)の内の少なくとも一つが、該引張要素(60)を、前記内袋(1)の外面(2)および/または前記デバイス(30)または前記チャンバ(50)にしっかりと固定するために一端に搭載手段(62)を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項15から21いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項23】
前記少なくとも一つの引張要素(60)が繊維の束(61)を有してなり、前記搭載手段(62)が前記束の周りに射出されたプラスチック材料から構成されることを特徴とする請求項22記載の内袋(1)。
【請求項24】
前記繊維の束(61)が、500Nより大きい、好ましくは1000Nより大きい、特に好ましくは1200Nより大きい短期引張強度を有することを特徴とする請求項23記載の内袋(1)。
【請求項25】
前記引張要素(60)が、前記内袋(1)の成形中に生じる温度に耐えられるほど十分な耐熱性を有することを特徴とする請求項15から24いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項26】
膨らませるボール用の内袋(1)であって、
a. 前記内袋(1)が膨らまされたときに該内袋(1)の外側から内側に半径方向に延在し、該内袋(1)の実質的に中心にチャンバ(50’)を画成する複数の中空支柱(60’)、および
b. 前記チャンバ(50’)の内部に配置された少なくとも一つの電子デバイス(30)、
を有してなり、前記中空支柱(60’)の少なくとも一つが、前記デバイス(30)を、該中空支柱(60’)を通して、前記内袋(1)の外側から内側に挿入できるような十分なサイズを有することを特徴とする内袋(1)。
【請求項27】
前記内袋(1)が繊維により補強されたラテックス材料から構成されることを特徴とする請求項26記載の内袋(1)。
【請求項28】
前記デバイス(30)を挿入するための前記中空支柱(60’)が、前記内袋(1)の他の中空支柱(60’)とは異なるサイズを有することを特徴とする請求項26または27記載の内袋(1)。
【請求項29】
前記デバイス(30)を挿入するための前記中空支柱(60’)が、前記内袋(1)の弁を受容するための受容部(70)に対称的に配置されていることを特徴とする請求項26から28いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項30】
前記内袋(1)が、完成した内袋から後で除去できる一つ以上の成形部材(100)の周りに熱可塑性材料を形成することにより製造されることを特徴とする請求項1から29いずれか1項記載の内袋(1)。
【請求項31】
前記完成した内袋からの前記一つ以上の成形部材の除去が、
a. 熱を加えて前記成形部材を溶融させる工程、および
b. 溶融して液体となった前記材料を前記完成した内袋から除去する工程、
を有してなることを特徴とする請求項30記載の内袋(1)。
【請求項32】
前記完成した内袋からの前記一つ以上の成形部材の除去が、
a. 前記成形部材を溶剤中で溶解させる工程、および
b. 溶解した前記材料を前記完成した内袋から除去する工程、
を有してなることを特徴とする請求項30記載の内袋(1)。
【請求項33】
請求項1から32いずれか1項記載の内袋を有するボール。
【請求項34】
前記内袋(1)と前記ボールの表皮との間に配置されたカーカス(300)をさらに備えることを特徴とする請求項33記載のボール。
【請求項35】
請求項1から14いずれか1項記載の内袋、および前記内袋(1)と前記ボールの表皮との間に配置されたカーカス(300)を有するボールであって、
前記電子デバイス(30)および/または前記カーカス(300)に接続された搭載ケーブル(310)が前記補強平面(10)の少なくとも一つの中に組み込まれていることを特徴とするボール。
【請求項36】
前記搭載ケーブル(310)が前記補強平面(10)の二つの部分平面の間に配置されていることを特徴とする請求項35記載のボール。
【請求項37】
請求項15から25いずれか1項記載の内袋、および前記内袋(1)と前記ボールの表皮との間に配置されたカーカス(300)を有するボールであって、
前記引張要素が搭載脚部(63)を介して前記内袋(1)に搭載され、前記内袋が前記カーカス(300)の搭載面(330)に搭載されていることを特徴とするボール。
【請求項38】
請求項26から29いずれか1項記載の内袋、および前記内袋(1)と前記ボールの表皮との間に配置されたカーカス(300)を有するボールであって、
前記電子デバイス(30)および/または前記カーカス(300)に接続された追加の搭載ケーブル(310)が前記中空支柱(60’)の少なくとも一つの中に配置されていることを特徴とするボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−81912(P2006−81912A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271561(P2005−271561)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(503052173)アディダス インターナショナル マーケティング ベー ヴェー (23)
【氏名又は名称原語表記】adidas International Marketing B.V.