説明

ボールチェックバルブ

【課題】流体の通水時に発生するボールの振動を防止し、騒音の発生を抑え、流体の流量が減少することのないボールチェックバルブを提供する。
【解決手段】内面軸線方向に突条部2が設けられた2つの開口部を有する筒状のバルブ本体1と、バルブ本体1の上流側の開口部に突条部2端面に当接して保持された保持リング9と、保持リング9に隣接または嵌合されるシートリング11と、突条部2の停止面8と弁閉位置の間を進退動可能に保持される球形弁体7とを具備する。球形弁体7が突条部2の停止面8に当接しているときの、球形弁体7の重心位置の前記軸線に直交する外周線とバルブ本体1内周面との間に形成される流路開口の面積Sと、球形弁体7の重心とシートリング11または保持リング9の下流側内周線とを結ぶ線上における球形弁体7と保持リング9の間に形成される流路開口の面積Sとの関係をS=0.45S〜0.65Sとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、上下水道、農・水産業、半導体製造分野、食品分野などの各種産業の配管ラインに使用されるボールチェックバルブに関するものであり、さらに詳しくは、流体の通水時に発生するボールの振動を防止し、騒音の発生を抑え、流体の流量が減少することのないボールチェックバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すような逆流防止弁があった(特許文献1参照。)。その構成は、内部に弁体101が移動可能に収納され、一端部に弁体101の抜け出しを防止するための抜止部102が形成された筒状の第一のハウジング103と、第一のハウジング103の他端部に軸線を互いに一致させて装着され、弁体101を受ける座面を有する環状の弁座104が形成された筒状の第二のハウジング105とを備え、両ハウジング103、105の互いに対向する端面間には、両ハウジング103、105間を止水するための環状の第一のシール部材106が設けられており、弁座104の座面上には、弁座104への弁体101の着座状態で弁体101と弁座104との間を止水するための環状の第二のシール部材107が設けられており、第一のハウジング103又は第二のハウジング103のいずれか一方のハウジングには、第二のシール部材107を座面へ向けて押さえ付けるための押え部108が設けられているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−155118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の逆流防止弁は、第一のハウジング103内周とリブ109で保持された弁体101との間を流体が通過するときに流体の流れが乱れ易くなり、流体の流量が大きくなるにつれて流れの乱れが大きくなり、弁体101に振動が発生する恐れがあった。これは逆流防止弁を垂直に配管して下から上に流体を流すことを順流としたときに最も起こりやすく、弁体101は自重により下方向へ落ちようとするが流体の上方向への流で押し上げられて弁体101は浮き上がり、弁体101が第二のシール部材107から離れて開口し、この開口面積が大きくなると流体の流れは弁体101外周面に沿って第一のハウジング103内周とリブ109で保持された弁体101との間を流れるため、弁体101を上方向へ押し上げる流体の力の多くは弁体101と第二のシール部材107の開口部が大きくなるにつれて放射状に外側方向に拡散してしまい、弁体101の自重に対して弁体101を抜止部102に当接させたままを維持するほどの押し上げる力を得ることができずにリブ109の位置で浮遊した状態で流体の流れの乱れを受けて弁体が振動するものである。特に第二のシール部材107からリブ109の抜止部102までの弁体101の移動距離が大きいと、弁体101が浮き上がった後で弁体101を上方向へ押し上げる流体の力のほとんどが放射状に外側方向に拡散するため、弁体101が安定できずに流体の乱れで弁体101が第一のハウジング103内を動いて振動が起こり易くなるという問題があった。逆流防止弁内で弁体101の振動が発生した場合、振動する弁体101が流体の流れを妨げてしまい、逆流防止弁を流れる流体の流量が低下する問題や、振動によって第一のハウジング103と弁体101が断続的に衝突する音が騒音となったり、最悪の場合では振動によって第一のハウジング103内部で弁体101が断続的にぶつかることで逆流防止弁が破損する恐れがある問題や、振動により弁体101やリブ109がぶつかることで磨耗変形し、弁体101と弁座104の接触部の隙間から流体が漏れる恐れがある等の問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を鑑みなされたものであり、流体の通水時に発生するボールの振動を防止し、騒音の発生を抑え、流体の流量が減少することのないボールチェックバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明のボールチェックバルブの構成を説明すると、内面軸線方向に突条部が設けられた2つの開口部を有する筒状のバルブ本体と、該バルブ本体の上流側の開口部に前記突条部端面に当接して保持された保持リングと、該保持リングに隣接または嵌合されて配置されるシートリングと、前記突条部の停止面と該シートリングに接触して静止する弁閉位置の間を進退動可能に保持される球形弁体とを具備するボールチェックバルブにおいて、該球形弁体が前記突条部の停止面に当接しているときの、該球形弁体の重心位置の前記軸線に直交する外周線とバルブ本体内周面との間に形成される流路開口の面積Sと、前記球形弁体の重心と前記シートリングまたは保持リングの下流側内周線とを結ぶ線上における該球形弁体と該保持リングの間に形成される流路開口の面積Sとの関係が、S=0.45S〜0.65Sであることを第1の特徴とする。
【0007】
前記球状弁体の進退動可能な距離mが、前記球状弁体の直径Lに対して0.2L〜0.6Lであることを第2の特徴とする。
【0008】
前記球状弁体が前記シートリングに対して静止する閉位置にあるとき、前記保持リングが当接する前記突条部端面が、該球形弁体の重心位置の前記軸線に直交する外周線より前記バルブ本体の上流側に位置することを第3の特徴とする。
【0009】
前記バルブ本体の上流側の開口部の内周面に螺合され、前記突条部端面と前記保持リング及び前記シートリングを挟持して保持する押圧リングを具備することを第4の特徴とする。
【0010】
前記シートリングまたは前記押圧リングを介して前記バルブ本体と密封状態で保持される鍔付き短管と、前記バルブ本体に螺合することにより該鍔付き短管を前記バルブ本体に固定するキャップナットとを具備することを第5の特徴とする。
【0011】
前記シートリング外周縁に形成された環状嵌合部が前記保持リング側面に形成された環状溝に嵌合され、前記押圧リングの一端面または前記鍔付短管の鍔部側端面が該シートリングに当接して押圧されることを第6の特徴とする。
【0012】
前記保持リングの内面に、前記球状弁体の直径より縮径されたテーパー部が設けられていることを第7の特徴とする。
【0013】
前記バルブ本体の下流側の開口部端面に設けられた環状溝に装着されたOリングと、該Oリングを介して該バルブ本体に接する鍔付き短管と、前記バルブ本体に螺合することにより該鍔付き短管を前記バルブ本体に固定するキャップナットとをさらに具備することを第8の特徴とする。
【0014】
以下、本発明を図1に基づいて説明する。本発明において、振動とは球状弁体7がバルブ本体1内で振動することを言い、球形弁体7に直接関与しない流体の流れやその他外力等の要因によって発生する震えなどは含まれない。
【0015】
本発明において、バルブ本体1は2つの開口部を有する必要がある。また、球形弁体は、球形で弁体として機能するのであれば楕円状や偏心した形状でも良いが、真球状のボール形状であることが望ましい。
【0016】
本発明において、流路開口面積Sは、球形弁体7の重心とシートリング11内周線(シールポイント)とを結ぶ線上、または球形弁体7の重心と保持リング9の下流側内周線とを結ぶ線上における球形弁体7と保持リング9の間に形成される両流路開口の面積のうち、小さい方の面積を指す。図1のボールチェックバルブの場合、球形弁体7の重心と保持リング9の下流側内周線とを結ぶ線上における球形弁体7と保持リング9の間に形成される流路開口の面積の方が小さいため流路開口面積Sとなる。
【0017】
本発明において、シートリング11の材質はゴム状の弾性体であればいずれでも良く、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、塩素化ポリエチレン、フッ素ゴムなどが好適なものとして挙げられ、特に限定されるものではない。
【0018】
また、本発明において、ボールチェックバルブのバルブ本体1、球形弁体7、鍔付き短管17、24、キャップナット20、25、保持リング9、押圧リング14の材質は、ポリ塩化ビニル(以下、PVCと記す)、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンなどの合成樹脂や鉄、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレスなどの金属などいずれでも良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上のような構造をしており、以下の優れた効果を得ることができる。
(1)ボールチェックバルブの通水時における球形弁体の振動の発生を防止できる。
(2)球形弁体の移動距離が小さくなりボールチェックバルブをコンパクトに形成できる。
(3)球形弁体の振動を防止することで振動による騒音がなくなり、通水時の騒音を抑えることができる。
(4)球形弁体の振動を防止することで流量の低下を防止でき、高いCv値を得て大流量に対応することができる。
(5)球形弁体の振動によるバルブ本体の破損が防止されるため、ボールチェックバルブの長期使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のボールチェックバルブの一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の要部拡大縦断面図である。
【図4】流路開口の面積Sを示す要部拡大切欠き斜視図である。
【図5】S/S−Cv値特性を示すグラフである。
【図6】従来の逆流防止弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0022】
1はPVC製の略中空円筒状のバルブ本体で、その内側には3本の突条部2が、軸線に沿って放射状に等間隔に突出してバルブ本体1と一体的に設けられている(図2参照)。バルブ本体1の上流側(図1では下側)の入口開口部3の口径は、下流側(図1では上側)の出口開口部4の口径よりも大きく設けられ、バルブ本体1内部は中央部よりやや下流側に向かって緩やかに縮径された湾曲面を有した構造となっている。
【0023】
また、突条部2は、バルブ本体1の入口開口部3の端面から間隔をあけて、入口開口部3の内周面から略同一の高さで設けられているが、出口開口部4の付近で徐々に高さが低くなり、出口開口部4と略同径となる。
【0024】
バルブ本体1内周面に対する突条部2の高さh(略同一の高さで設けられた部分)は、球形弁体7の直径Lに対して0.2Lとなるように設けられている。なお、突条部2の高さhは球形弁体7の直径Lに対して0.1L〜0.3Lで設けることが好適であり、0.15L〜2.5Lで設けることがより好適である。これは突条部2を流体が十分流れるための開口面積を得るために0.1L以上である必要があり、バルブ本体1が大きくなりすぎないようにして流体の流れを直線的にするために0.3L以下である必要がある。なお、突条部2は図2に示すように等間隔に3本設けられているが、その数は少なくとも3本以上であれば良く特に限定されるものではない。このうち、突条部2を3本で設けた形状は突条部2に寸法誤差があったとしても3点保持で確実に後記球形弁体7を保持できるのでより好適である。
【0025】
また、バルブ本体1の出口開口部4の端面には環状溝5が設けられ、環状溝5にはOリング6が装着されている。
【0026】
7はPVC製のボールである球形弁体であり、バルブ本体1の内部で突条部2により軸線に沿って進退動可能に保持されている。球形弁体7はバルブ本体1の出口開口部4の口径よりも大きい直径を有し、流体の流れにより球形弁体7が下流側に付勢されたとき、突条部2の停止面8に当接した状態で保持される。このとき、球形弁体7の進退動可能な距離m、すなわち球形弁体7が突条部2の停止面8に当接した全開位置から、球形弁体7が後記シートリング11に接触して静止する閉位置までの球形弁体7の重心の移動距離(図1参照)が、球形弁体7の直径Lに対して0.33Lとなるように形成されている。
【0027】
なお、球形弁体7の進退動可能な距離mは、球形弁体7の直径Lに対して0.2L〜0.6Lの範囲で設けることが好ましく、0.3L〜0.45Lの範囲で設けることがより好ましい。これは、移動距離が少なくなりすぎると流体を流すのに十分な開口面積を得ることができなくなるので一定の流量を確保して流体を流すために0.2L以上であると良く、バルブ本体1を必要以上に大きくさせず、流体圧によって球形弁体7を振動させることなく突条部2の停止面8に常に押圧させるために0.6L以下であると良い。この移動範囲であれば球形弁体7の移動量を抑えられてバルブの開閉を行うことができるため、バルブの寸法が抑えられ、バルブをコンパクトにすることができる。
【0028】
9はPVC製の円環状部材である保持リングであり、外径がバルブ本体1の入口開口部3端部の内径と略同径に設けられており、入口開口部3から挿入されて一端面が前記突条部2の入口開口部3側端面に当接して配置されている。他端面内周側には後記シートリング11が嵌合される環状溝10が設けられている。保持リングの内径d2は球形弁体7の直径Lに対して1.025Lとなるように設けられている。(図3参照)。この保持リング9の内径d2は球形弁体7の直径Lに対して1.005L〜1.040Lとなるように設けるのが良い。
【0029】
11はゴム製のシートリングであり、外周縁部に設けられたバルブ本体1の軸線方向に突出した環状嵌合部13と内周方向へ突出した内鍔部12が一体となった断面L字状に形成されている。内鍔部12の内周縁は断面円弧状に設けられており、かつ、保持リング9の内径より縮小して設けられている。また、外周縁部の筒状環状嵌合部13は保持リング9の環状溝10に嵌合される。
【0030】
14は円筒状のPVC製の押圧リングであり、外周にはバルブ本体1の入口開口部3端部に設けられた雌ねじ部に螺合される雄ねじ部15が形成されている。押圧リング14がバルブ本体1の入口開口部3に螺合されることにより、押圧リング14の一端面と突条部2の入口開口部3側端面との間にシートリング11と嵌合した保持リング9が挟持され、かつ、押圧した状態で保持される。押圧リング14の一端面内周側には段差部16が形成されており、従って、押圧リング14とシートリング11の内鍔部12とは隙間を開けて保持されている。この隙間は内鍔部12の肉厚が薄いときは同等かそれ以下の寸法で設けられており、好適には1〜5mmの範囲で形成されている。また、押圧リング14外周はOリングを介在させてバルブ本体1内周面とシールされており、押圧リング14の他端面にはOリング26が装着される環状溝が設けられている。また、押圧リング14の内径は球形弁体7の直径より小さく設けられており、弁閉時に球形弁体7が押圧リング14によって抜け出さないように保持される。
【0031】
17はPVC製の鍔付き短管であり、パイプなどが接続される短管部18の一端には鍔部19が設けられている。なお、短管部18の他端にはフランジ部(図示せず)を設けても良い。
【0032】
20は円筒状のPVC製のキャップナットであり、一方の端部内周にバルブ本体1両端部外周に設けられた雄ねじ部21に螺着される雌ねじ部22が設けられており、もう一方の端部には内周方向へ突出する内鍔部23が設けられている。キャップナット20は、バルブ本体1上流側では押圧リング14の端面にOリング26を介して鍔付き短管17の鍔部19端面に当接し、バルブ本体1の雄ねじ部21に螺着して、鍔付き短管17とバルブ本体1とをシールさせた状態で固定する。
【0033】
また、バルブ本体1下流側でも同様にバルブ本体1の端面にOリング6を介して鍔付き短管24を当接し、キャップナット25によって鍔付き短管24とバルブ本体1とをシールさせた状態で固定する。
【0034】
ここで、ボールチェックバルブの寸法の関係について説明する。図1の実線で示すように球形弁体7が突条部2の停止面8に当接しているとき、球形弁体7の重心位置の軸線に直交する外周線27とバルブ本体内周面28との間に形成される流路開口の面積S(図2の流路となる部分の面積)と、球形弁体の重心とシートリング11または保持リング9の下流側内周線とを結ぶ線上における球形弁体7と保持リング9の間に形成される流路開口の面積S(図4参照)との関係は、S=0.45S〜0.65Sが成立する範囲内にする必要があり、より好適にはS=0.53S〜0.63Sになるようにする必要がある。これは、流量が低下しない程度に流路開口の面積を得るために0.45S以上である必要があり、球形弁体7を突条部2の停止面8へ常に押圧させるための付勢力を維持するために0.65S以下である必要がある。流路開口の面積Sは、バルブ本体の内径をd1とし、球形弁体の直径をLとすると(図3参照)、S=π/4×(d1−L)−(突条部の断面積)×(突条部の数)で算出され、流路開口の面積Sは、球形弁体7が突条部2の停止面8に当接しているときの球形弁体7の重心から保持リング9の下流側内周線の距離をR1、該内周線の位置から軸心までの距離をr1とし、球形弁体7の重心から球形弁体7外周面までの距離をR2、該外周面の位置から軸心までの距離をr2とする(図3参照)と、S=π×(R1×r1−R2×r2)で円錐台側面の表面積として算出される。なお、球形弁体7の重心から保持リング9の下流側内周線の距離よりシートリング11のシールポイントまでの距離の方が短いときは距離が短い方をR1として面積Sを算出する。
【0035】
球形弁体7がシートリング11に対して静止する閉位置にあるとき、保持リング9が当接する突条部2端面が、球形弁体7の重心位置の軸線に直交する外周線27より入口開口部3側に位置していることが好ましい。その理由は、閉状態から球形弁体7が出口開口部4側へと移動するときに、バルブの開閉におけるタイムラグが発生することなく、流路を素早く開口させるための応答性を良くさせ、球形弁体7の少ない移動量で開口面積を大きく取り、Cv値を確保することができるからである。
【0036】
なお、本実施形態ではシートリング11を保持リング9に嵌合させているが、シートリング11と保持リング9は嵌合させずに隣接させても良い。(図示せず。この場合、シートリングの形状は異なる。)また、シートリング11の内鍔部12の肉厚はシール性を維持する範囲で薄肉に設けると良く、球形弁体7の直径Lに対して0.05L〜0.1Lの範囲の肉厚であることが好ましい。これは、シートリング11に球形弁体7が接触する時に、シートリング11が大きく変形することなくシールするために0.05L以上が良く、シートリング11に球形弁体7が食い込むことを防止するために0.1L以下が良い。
【0037】
また、本実施形態では押圧リング14を用いているが、押圧リング14を用いない構成にしても良い(図示せず)。この場合、シートリング11と保持リング9が嵌合された状態でシートリング11に鍔付き短管17の鍔部19端面を当接させ、キャップナット25によって鍔付き短管24とバルブ本体1とをシールさせた状態で固定する。
【0038】
また、保持リング9の内周には上流側に向かって暫時縮径するテーパー部が設けられても良い(図示せず)。この場合、テーパー部に球形弁体7を当接させて球形弁体7がシートリング11に深く食い込ませずにシールに最適なところで保持することができる。テーパー部の角度は軸線に対して10°〜30°が好ましく、ボールチェックバルブの面間の寸法を大きくさせないために10°以上が良く、最小内径の先端部分が球形弁体7に当たることなくテーパー部の内周面で球形弁体7を当接させて球形弁体7の損傷を防止させるために30°以下が良い。テーパー部を設けたときには保持リング9の最小内径(テーパー部の最小内径)は、球形弁体7の直径Lに対して0.9L〜0.97Lとなるように縮径されていることが好ましい。ボールチェックバルブ内部の流路を狭めないために0.9L以上が良く、保持リング9を球形弁体7に確実に当接させるために0.97L以下が良い。
【0039】
次に、本発明のボールチェックバルブを開閉させた時の作動について説明する。流体が上流側から下流側へ流れている(順流、図1では下から上方向)とき、球形弁体7は図1の実線の位置に移動し、球形弁体7とバルブ本体1の突条部2の間に形成された流路を通って流体が下流側へと流れる。上流側からの流体が停止すると、球形弁体7は下流側の流体の逆流圧力により上流側に移動し、シートリング11に押圧されることにより閉止状態となり流体の逆流を防止する(図1の破線の状態)。閉止状態で球形弁体7はシートリング11の内鍔部12内周縁の円弧状断面と線接触でシールしている。押圧リング14の一端面内周側に段差部16が形成されていることにより、球形弁体7がシートリング11に当接するときにシートリング11が段差部16との隙間によって段差部16側に僅かにたわむことで、球形弁体7外周面に等しくシートリング11が線接触でシールできる。これによりシートリング11の寸法誤差による隙間の発生などが防止でき、逆流圧力が低圧であっても確実なシール性を得ることができ、流体の漏れが防止される。また、接触面積が小さいので球形弁体7とシートリング11の摩擦抵抗が減少し、流体が順流になった時にシートリング11からの球形弁体7の離れを良くし、バルブの開閉におけるタイムラグの発生を防止して流体の流れに応じた応答性の良い開閉を行うことができる。また、逆流圧力が高い場合は段差部16の部分でシートリング11の変形を抑えることができ、球形弁体7を保持できる。
【0040】
ここで、流体が上流側から下流側へ流れる(順流、図1では下から上方向)とき、流体は球形弁体7を押し上げることで流路を開放して流れ、流体の流れは球形弁体7と保持リング9の間に形成された流路を通って、すなわち、球形弁体7の重心位置の軸線に直交する外周線27とバルブ本体1内周面28との間で形成された流路を通って出口開口部4から流出される。このとき、球形弁体7の重心位置の軸線に直交する外周線27とバルブ本体1内周面28との間で形成される流路開口の面積Sに対して球形弁体7の重心と保持リングの下流側内周線とを結ぶ線上における球形弁体7と保持リング9の間に形成される流路開口の面積Sの方が開口面積は小さくなるように設けられているため、流路開口の面積Sを通過する流体は下流側より上流側の流体圧の方が高くなるため、これと流体の流れにより球形弁体7を押し上げる方向への強い力が付勢される。流体が流れている間は常に上方へ付勢する力を維持したままとなるため、球形弁体は常に突条部の停止面に押圧された状態となり流体の流れの乱れによって動くことはなくなる。これにより、球形弁体7がバルブ本体1の軸線に対して振動することが防止される。
【0041】
次に、本発明のボールチェックバルブにおいて、容量係数、振動、騒音について以下に示す試験方法で評価した。
【0042】
(1)容量係数測定試験
JIS B 2005−2−3「工業プロセス用調節弁−第2部:流れの容量−第3節:試験手順」におけるバルブの容量係数(Cv値)の試験方法に準拠し、垂直配管で入口開口部3を下側、出口開口部4を上側に向けて流体を下から上へと流れるようにし、ボールチェックバルブの上流側と下流側の圧力と流量を測定し、容量係数(Cv値)を算出した。
(2)振動の有無の確認
配管接続されたボールチェックバルブに直接手を触れて、配管内に流体が流れる時に発生する震えを除いて球形弁体の振動が発生していないか触診した。
(3)騒音の有無の確認
配管接続されたボールチェックバルブの箇所で、配管内に流体が流れる時に発生する音以外に振動による騒音が発生していないか聴診器を用いて聴音した。
【0043】
なお、本試験で使用したボールチェックバルブは呼び径が40mmのものを使用した。また、呼び径40mmの容量係数測定試験における合格値は、ボールチェックバルブが用いられる管路の条件からCv値が50以上であることとし、55以上をより好適な範囲とする。
【実施例1】
【0044】
図1に示すような、球形弁体7が突条部2の停止面8に当接しているときの、球形弁体7の重心位置の軸線に直交する外周線27とバルブ本体1内周面28との間に形成される流路開口の面積Sと、球形弁体7の重心と保持リング9の下流側内周線とを結ぶ線上における球形弁体7と保持リング9の間に形成される流路開口の面積Sとの関係が、S=0.45Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
【実施例2】
【0045】
実施例1と同様に、S=0.53Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
【実施例3】
【0046】
実施例1と同様に、S=0.59Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
【実施例4】
【0047】
実施例1と同様に、S=0.63Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
[比較例1]
【0048】
実施例1と同様に、S=0.37Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
[比較例2]
【0049】
実施例1と同様に、S=0.67Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
[比較例3]
【0050】
実施例1と同様に、S=0.91Sとなる本実施形態のボールチェックバルブを用いて、Cv値、振動、騒音の計測を行なった。試験結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から明らかなように、実施例及び比較例1では振動や騒音が発生しなかったのに対して、比較例2、3では振動や騒音が発生した。またCv値では実施例は合格値の50をクリアしているが比較例では合格値に満たなかった。これは、比較例1ではS2の開口面積が小さくなりすぎたために流体の流れが悪くなってCv値が下がったものである。比較例2及び比較例3で流体を流すための開口面積は十分得られているが、球形弁体7の振動が発生したことにより球形弁体7の振動が流体の流れの妨げとなってCv値が低下したものである。
【0053】
図5は表1よりS/S−Cv値特性を示したものだが、図5よりS/Sである一定値以上になると急激なCv値の低下が見られ、ここを境に振動が発生している。そのため、Cv値50以上が合格ラインを満たすS=0.45〜0.65Sの範囲であれば(図5の斜線の領域)、Cv値が高く良好な流量特性を得ることができると共に球形弁体7の振動および騒音の発生を防止することができる。さらにはS=0.53〜0.63Sの範囲であれば、より高いCv値を得ることができるためより好適である。このように、球形弁体7の振動および騒音が解消されることで球形弁体7の磨耗は低減され、良好な流量を得ることができ、長期的にシール性を維持できることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 バルブ本体
2 突条部
3 入口開口部
4 出口開口部
5 環状溝
6 Oリング
7 球形弁体
8 停止面
9 保持リング
10 環状溝
11 シートリング
12 内鍔部
13 環状嵌合部
14 押圧リング
15 雄ねじ部
16 段差部
17 鍔付き短管
18 短管部
19 鍔部
20 キャップナット
21 雄ねじ部
22 雌ねじ部
23 内鍔部
24 鍔付き短管
25 キャップナット
26 Oリング
27 外周線
28 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面軸線方向に突条部が設けられた2つの開口部を有する筒状のバルブ本体と、該バルブ本体の上流側の開口部に前記突条部端面に当接して保持された保持リングと、該保持リングに隣接または嵌合されて配置されるシートリングと、前記突条部の停止面と該シートリングに接触して静止する弁閉位置の間を進退動可能に保持される球形弁体とを具備するボールチェックバルブにおいて、該球形弁体が前記突条部の停止面に当接しているときの、該球形弁体の重心位置の前記軸線に直交する外周線とバルブ本体内周面との間に形成される流路開口の面積Sと、前記球形弁体の重心と前記シートリングまたは保持リングの下流側内周線とを結ぶ線上における該球形弁体と該保持リングの間に形成される流路開口の面積Sとの関係が、S=0.45S〜0.65Sであることを特徴とするボールチェックバルブ。
【請求項2】
前記球状弁体の進退動可能な距離mが、前記球状弁体の直径Lに対して0.2L〜0.6Lであることを特徴とする請求項1記載のボールチェックバルブ。
【請求項3】
前記球状弁体が前記シートリングに対して静止する閉位置にあるとき、前記保持リングが当接する前記突条部端面が、該球形弁体の重心位置の前記軸線に直交する外周線より前記バルブ本体の上流側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボールチェックバルブ。
【請求項4】
前記バルブ本体の上流側の開口部の内周面に螺合され、前記突条部端面と前記保持リング及び前記シートリングを挟持して保持する押圧リングを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のボールチェックバルブ。
【請求項5】
前記シートリングまたは前記押圧リングを介して前記バルブ本体と密封状態で保持される鍔付き短管と、前記バルブ本体に螺合することにより該鍔付き短管を前記バルブ本体に固定するキャップナットとを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のボールチェックバルブ。
【請求項6】
前記シートリング外周縁に形成された環状嵌合部が前記保持リング側面に形成された環状溝に嵌合され、前記押圧リングの一端面または前記鍔付短管の鍔部側端面が該シートリングに当接して押圧されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のボールチェックバルブ。
【請求項7】
前記保持リングの内面に、前記球状弁体の直径より縮径されたテーパー部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のボールチェックバルブ。
【請求項8】
前記バルブ本体の下流側の開口部端面に設けられた環状溝に装着されたOリングと、該Oリングを介して該バルブ本体に接する鍔付き短管と、前記バルブ本体に螺合することにより該鍔付き短管を前記バルブ本体に固定するキャップナットとをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のボールチェックバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236612(P2010−236612A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85392(P2009−85392)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】