説明

ポケット開口部の閉塞構造

【課題】釦やファスナー等の副材を必要とすることなく開口部を閉塞でき、しかもポケット本体に対して物を出し入れすることが容易なポケット開口部の閉塞構造を提供する。
【解決手段】ポケット本体2に開口部7が設けられ、前記開口部7を覆って閉塞状態とする蓋フラップ3が前記ポケット本体2の周辺部に捲り上げ可能に設けられた構造である。前記ポケット本体2又は蓋フラップ3のいずれか一方側に差し込み部11が設けられ、前記蓋フラップ3による開口部7の覆い状態で前記開口部7に向かった状態となって前記差し込み部11に差し込まれるフック片13が他方側に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケットの開口部を蓋フラップによって閉塞する閉塞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場やクリーンルームなどでは、衣服のポケット内に収容した物がポケットから落下し、異物として製品に混入することは好ましくない。このようなポケットからの物の落下を防止するため、ポケット本体の裏側に袋状の保持部を設け、この保持部の端部をポケット本体の内部に接合可能としてポケット本体の開口部を閉じる構造が開発されている(特許文献1、2、3参照)。しかし、この構造は、複雑なため、実用的ではない。
【0003】
これに対し、収容物の落下を防止するための簡単な構造としては、次の2つの構造が実用化されている。
【0004】
第1の構造は、蓋フラップを設け、蓋フラップによってポケット本体の開口部を閉塞する構造である。第1の構造においては、蓋フラップ又はポケット本体の一方に釦を取り付け、他方に釦挿入孔を形成したり、蓋フラップ及びポケット本体に面ファスナーなどのファスナーを取り付けることにより、蓋フラップによるポケット本体の開口部の閉塞状態を維持して物の落下を防止するようになっている。
【0005】
第2の構造は、ポケット本体の開口部を逆玉縁構造とするものである。逆玉縁は、ポケット本体に相互に重なる二重の折返し部を形成し、二重の折返し部を通過させることにより、物をポケット本体に入れるようになっており、折返し部が二重のため、ポケット本体の開口部からの物の落下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−169259号公報
【特許文献2】実用新案登録第3107677号公報
【特許文献3】実用新案登録第3111907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1の構造では、釦やファスナーなどの副材自体が破損したり、外れたりするため、副材の落下に起因した異物混入を防止することが難しい。又、副材が硬質であるため、ポケットの布材が擦れて塵が発生し、この塵が異物として製品に混入することもある。さらには、硬質の副材が製品に当たって製品を傷付ける危険性もある。
【0008】
第2の構造では、複雑な二重の折返し部を通過させてポケット本体の内部に物を出し入れする必要があるため、物の出し入れがしにくい問題がある。又、逆玉縁とするためには、衣服の見頃に切り込みを形成する必要があり、切り込みから発生した糸くずが異物混入の原因となっている。
【0009】
そこで、本発明は、副材を必要とすることなく開口部を閉塞でき、しかもポケット本体に対して物を出し入れすることが容易なポケット開口部の閉塞構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明のポケット開口部の閉塞構造は、ポケット本体に開口部が設けられ、前記開口部を覆って閉塞状態とする蓋フラップが前記ポケット本体の周辺部に捲り上げ可能に設けられた構造であって、前記ポケット本体又は蓋フラップのいずれか一方側に差し込み部が設けられ、前記蓋フラップによる開口部の覆い状態で前記開口部に向かった状態となって前記差し込み部に差し込まれるフック片が他方側に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のポケット開口部の閉塞構造であって、前記フック片の差し込みを行う手懸かりとする操作窓が前記他方側に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のポケット開口部の閉塞構造であって、前記差し込み部及びフック片が複数設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のポケット開口部の閉塞構造であって、前記フック片が前記一方側に引っ掛け可能な形状となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のポケット開口部の閉塞構造であって、前記フック片及び/又は前記差し込み部に芯材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のポケット開口部の閉塞構造であって、前記差し込み部は、前記開口部に沿ってポケット本体又は蓋フラップのいずれか一方に形成されたスリットであることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のポケット開口部の閉塞構造であって、前記差し込み部は、前記開口部に沿ってポケット本体又は蓋フラップのいずれか一方の表側に取り付けられたベルト片であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、ポケット本体又は蓋フラップのいずれか一方側に差し込み部を設け、他方側にフック片を設けており、蓋フラップが開口部を覆った状態では、フック片が開口部に向かった状態となって差し込み部に差し込まれる。従って、蓋フラップがポケット本体の開口部を覆った閉塞状態とすることにより、フック部が差し込み部に差し込まれて係合する。
【0018】
この構造では、フック片が開口部を覆った状態でフック片が差し込まれるため、フック片がポケット本体又は蓋フラップの一方側にしっかりと係合した状態となる。このため、蓋フラップが確実に開口部を閉塞する。このような状態では、ポケット本体内の物が開口部から落下することがなくなる。又、蓋フラップを捲り上げるだけでフック片が差し込み部から外れて開口部が開放される。このため、ポケット本体内に対して物の出し入れが容易となる。
【0019】
このような請求項1記載の発明によれば、副材を必要とすることなく開口部を確実に閉塞できるため、副材の破損や外れ、擦れによる布材の塵に起因した異物混入を防止できると共に、副材の接触に起因した製品の傷付けをなくすことができる。又、複雑な逆玉縁構造とする必要がないため、ポケット本体に対して物の出し入れが容易となる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、操作窓を通じてフック片を直接に操作して差し込み部に差し込むことができる。このため、差し込み部へのフック片の差し込みが容易となる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、請求項1及び2の発明の効果に加えて、差し込み部及びフック片が複数設けられるため、蓋フラップが開口部を覆った状態をさらに確実に維持することができる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3の発明の効果に加えて、フック片がポケット本体又は蓋フラップの一方側に引っ掛けられるため、フック片を強固に一方側に係合した状態とすることができる。このため、蓋フラップによる開口部への覆い状態が安定する。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4の発明の効果に加えて、フック片又は/及び差し込み部に芯材を設けることにより、これらに張りを付与することができる。このため、蓋フラップの閉塞強度が向上すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5の発明の効果に加えて、差し込み部がスリットによって形成されるため、差し込み部を簡単に形成することができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜5の発明の効果に加えて、差し込み部がベルト片によって形成されるため、フック片の差し込み部への差し込み操作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態の閉塞構造を示す全体斜視図である。
【図2】第1実施形態における開口部の閉塞状態を示す正面図である。
【図3】第1実施形態における蓋フラップの捲り上げ状態を示す正面図である。
【図4】第2実施形態における蓋フラップの捲り上げ状態を示す正面図である。
【図5】第3実施形態における蓋フラップの捲り上げ状態を示す正面図である。
【図6】第4実施形態における蓋フラップの捲り上げ状態を示す正面図である。
【図7】第5実施形態における蓋フラップの捲り上げ状態を示す正面図である。
【図8】第6実施形態における蓋フラップの捲り上げ状態を示す斜視図である。
【図9】布材の端部を簡易に縫代始末する例を示し、(a)はロック始末を示す斜視図、(b)は三つ折始末を示す斜視図、(c)はパイピング始末を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0028】
[第1実施形態]
図1〜図3は、本発明の第1実施形態におけるポケット開口部の閉塞構造1を示し、図1は、全体の斜視図、図2は、開口部を閉塞した状態の正面図、図3は、開口部を開放した状態の正面図である。
【0029】
閉塞構造1は、ポケット本体2と、蓋フラップ3とを有している。ポケット本体2及び蓋フラップ3は、衣服4の表側における胸部や臀部等の適宜箇所に縫い付けにより取り付けられる。
【0030】
ポケット本体2は、適宜の大きさの四角形に裁断された布材によって形成されている。ポケット本体2は、上辺部2aを除く下辺部2b、左辺部2c及び右辺部2dが折り返され、これらの3つの辺部2b、2c、2dの折り返し部分を縫糸6によって衣服4の表側に縫い付けることにより、袋状となって衣服4に取り付けられている。ポケット本体2が袋状となることにより、ポケット本体2の内部に対して物出し入れすることができる。
【0031】
上辺部2aは、衣服4に縫い付けられることがなく、これにより袋状のポケット本体2の上部に開口部7が形成される。従って、開口部7を通してポケット本体2に対し物の出し入れを行うことができる。
【0032】
蓋フラップ3は、ポケット本体2と同様に布材によって形成されている。蓋フラップ3は、ポケット本体2の開口部7と同等の幅又はそれ以上の幅を有した横長の四角形に裁断されたフラップ本体9を有しており、ポケット本体2の周辺部である開口部7の上側に位置するように衣服4の表側に取り付けられている。衣服4への取り付けは、フラップ本体9の一端側を衣服4に縫い付けることにより行われ、符号9aは、衣服4に縫い付けられた固定部である。
【0033】
フラップ本体9は、ポケット本体2の上部に重なることが可能な長さとなっており、ポケット本体2の上部に重なることによりポケット本体2の開口部7を閉塞する。又、フラップ本体9は、固定部9aを除いた部分がフリー状態となっており、衣服4から離れる方向への捲り上げが可能となっている。フラップ本体9を捲り上げることにより、フラップ本体9がポケット本体2から離れるため、図1及び図3に示すように、ポケット本体2の開口部7が開放される。
【0034】
この実施形態の閉塞構造1においては、差し込み部11がポケット本体2に設けられ、フック片13が蓋フラップ3のフラップ本体9に設けられている。
【0035】
差し込み部11は、開口部7よりも下方側に位置するようにポケット本体2の上部に設けられている。差し込み部11は、ポケット本体2の上部に形成されたスリットにより構成されている。スリットからなる差し込み部11は、開口部7と略平行となった状態で開口部7に沿うようにポケット本体2の上部における幅方向の略中央部分に形成されている。
【0036】
一方、フック片13をフラップ本体9に設けるため、この実施形態では、フラップ本体9に取付片15が縫い付けられている。取付片15は、フラップ本体9と同様な幅に裁断された布材からなり、フラップ本体9の自由端側に縫い付けられる。フック片13は、取付片15の裏側における幅方向の略中央部分に設けられており、フラップ本体9に縫い付けられることなく、フラップ本体9から離れることが可能となっている。
【0037】
図1及び図3に示す蓋フラップ3の捲り上げ状態で示すように、フック片13は、取付片15の上述した位置からポケット本体2の方向に伸びるように設けられている。フック片13は、ポケット本体2に設けた差し込み部11に差し込まれるものであり、その幅は差し込み部11よりも幾分小さいか略同等となっている。この実施形態において、フック片13は、先端部分の角部が丸まった円弧状となった舌片形状に形成されるものである。先端部分の角部が丸くなっていることにより、差し込み部11への差し込みを円滑に行うことができるメリットがある。
【0038】
図1に示すように、フック片13に対応した操作窓17がフラップ本体9に設けられている。操作窓17は、フラップ本体9におけるフック片13との対応部位を四角形孔等に切り取ることにより形成されるものである。この操作窓17を通じて指をフック片13に当てて保持することにより、フック片13の差し込み部11への差し込みの手懸かりとすることができる。
【0039】
次に、この実施形態の動作を説明する。
【0040】
図1及び図3は、蓋フラップ3を捲り上げた状態であり、蓋フラップ3の捲り上げによりポケット本体2の開口部7が開放される。このため、ポケット本体2の内部に対して物を出し入れすることができる。
【0041】
図2は、蓋フラップ3を捲り上げ状態から降ろして開口部7を覆った状態であり、開口部7が閉塞状態となる。この閉塞に続いて、操作窓17を通じてフック片13が開口部7に向かった状態となるように操作して、フック片13を下側から差し込み部11に差し込む。図2において、符号13aは、差し込み部11に差し込まされたフック片13の差し入れ部分である。かかるフック片13の差し込み部11への差し込みにより、フック片13がポケット本体2にしっかりと係合する。従って、蓋フラップ3の開口部7を確実な閉塞状態とすることができる。このため、ポケット本体2内の物が開口部7から落下することがなくなる。
【0042】
かかる開口部7の閉塞状態に対し、蓋フラップ3を捲り上げると、蓋フラップ3の捲り上げと共にフック片13が差し込み部11から簡単に外れて図1及び図3に示す開口部7の開放状態となる。これにより、ポケット本体2に対して物の出し入れが容易となる。
【0043】
このような実施形態では、釦やファスナー等の副材を必要とすることなく開口部7を確実に閉塞できるため、副材の破損や外れ、副材との擦れによる布材の塵に起因した異物混入を防止できる。又、副材の接触に起因した製品の傷付けをなくすことができる。また、逆玉縁構造のように衣服の見頃に切込みを形成する必要がないため、切込みから糸くずが発生することがない。
【0044】
また、図9に示すように、ポケット本体2や蓋フラップ3等の布材の端部を簡易に縫代始末(ロック始末、三つ折始末、パイピング始末等)することができるので、布材の端部から糸くずが発生して異物が混入することを防止できる。
【0045】
さらには、複雑な逆玉縁構造とする必要がないため、ポケット本体2に物を入れることが容易となる。
【0046】
以上に加えて、この実施形態では、フック片13及び差し込み部11のいずれか一方又は双方に芯材(図示省略)を設けることができる。芯材としては、ポリエステルやナイロン等の原料からなる化学繊維を用いた織布や不織布を用いることができる。フック片13への芯材の配置は、フック片13を含む取付片15に芯材を積層して縫い付けることにより行うことができる。差し込み部11への芯材の配置は、差し込み部11の左右両側の布材に芯材を積層して縫い付けることにより行うことができる。
【0047】
フック片13や差し込み部11に芯材を設けることにより、フック片13自体や差し込み部11周囲に張りを付与することができる。これにより、蓋フラップ3自体や差し込み部11周囲の強度が向上して閉塞状態が安定すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0048】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態のポケット開口部の閉塞構造1Aを示す。
【0049】
この実施形態において、ポケット本体2は、第1実施形態のポケット本体2と同様な構造となっている。すなわち、ポケット本体2の上端部分には、開口部7が形成されていると共に、開口部7と略平行な状態で開口部7に沿ったスリットからなる差し込み部11がポケット本体2の上部に設けられている。
【0050】
図4に示す閉塞構造1Aにおいて、蓋フラップ3に取付片15が縫い付けられ、この取付片15にフック片21が設けられるが、フック片21は、四角形状の舌片形状となっている。四角形のフック片21は、ポケット本体2の方向に伸びており、その長さLが長くなるように設定されている。このような長さLが長いフック片21をポケット本体2の差し込み部11に差し込むと、フック片21とポケット本体2との係合部分が長くなる。このため、フック片21がポケット本体2と強固に係合し、蓋フラップ3による開口部7の閉塞状態がしっかりと固定される。これにより、開口部7からの物の落下を確実に防止することができる。
【0051】
なお、この実施形態においても、第1実施形態と同様に、フック片21自体及び差し込み部11の周囲のいずれか一方又は双方に芯材を設けることができる。これにより、フック片21自体や差し込み部11の周囲に張りを付与することができ、閉塞状態が安定すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0052】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態のポケット開口部の閉塞構造1Bを示す。
【0053】
この実施形態においても、ポケット本体2は、第1実施形態のポケット本体2と同様な構造となっている。すなわち、ポケット本体2の上端部分には、開口部7が形成されていると共に、開口部7と略平行な状態で開口部7に沿ったスリットからなる差し込み部11がポケット本体2の上部に設けられている。
【0054】
図5に示す閉塞構造においては、蓋フラップ3に設けられるフック片22に特徴がある。フック片22は、蓋フラップ3の取付片15からポケット本体2の方向に伸びているが、伸びている先端側が丸くなっている一方、基部側(取付片15側)22aが幅広となって幅方向に膨出した形状となっている。基部側22aの幅寸法は、ポケット本体2の差し込み部11の長さと同等か、幾分なるように設定される。
【0055】
さらに、基部側22aが幅狭な連結部22bによって取付片15に連設されている。このようなフック片22においては、幅広の基部側22aと取付片15との間にクビレ部23が形成される。
【0056】
この実施形態において、巻き上げ状態の蓋フラップ3をポケット本体2側に降ろして蓋フラップ3によって開口部7を覆って閉塞する。この開口部7の覆い状態では、フック片22が開口部7に向かった状態となるため、指等によりフック片22を差し込み部11に差し込む。この差し込みでは、幅広の基部側22aが差し込み部11を通過した後、クビレ部23が差し込み部11に達して差し込みが停止する。
【0057】
このような構造では、基部側22aが幅広となっていることからフック片22がポケット本体2に引っ掛かった状態となるため、差し込み部11から抜けにくくなっている。従って、フック片22が差し込み部11から外れることがない。このため、フック片22とポケット本体2とが強固な係合状態となり、蓋フラップ3の閉塞状態が安定し、開口部7から物が落下することを確実に防止することができる。
【0058】
開口部7を開放する場合には、蓋フラップ3を捲り上げることにより行うが、フック片22が布材によって形成されているため、幅広の基部側22aが差し込み部11を円滑に通過する。このため、開口部7の開放を容易に行うことができる。
【0059】
なお、この実施形態においては、差し込み部11の長さ方向の両端部分に縫糸を付加縫いしたり、差し込み部11の長さ方向の両端部分に補強布を縫い付けることが良好である。これらの処理により、差し込み部11の両端部に強度が付与されて変形しにくくなるため、フック片22が不用意に差し込み部11から抜け出ることを防止することができ、フック片22の差し込み状体が安定する。
【0060】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に、フック片21自体及び差し込み部11の周囲のいずれか一方又は双方に芯材を設けることができる。これにより、フック片21自体や差し込み部11の周囲に張りを付与することができ、閉塞状態が安定すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0061】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態を示す。この実施形態のポケット開口部の閉塞構造1Cでは、差し込み部11及びフック片13が複数設けられている。
【0062】
差し込み部11は、ポケット本体2の開口部7と略平行な状態で開口部7に沿っており、ポケット本体2の上部に対して2つが横並び状に設けられている。
【0063】
フック片13は、第1実施形態と同様な形状となっており、蓋フラップ3の取付片15の幅方向に沿って2つが横並び状に設けられている。それぞれのフック片13は、ポケット本体2の差し込み部11に対応しており、蓋フラップ3が開口部7を覆った状態としてフック片13を開口部に向ける。このことにより、各フック片13を対応した差し込み部11に差し込むことができる。
【0064】
このように差し込み部11及びフック片13を2つ設けることにより、フック片13が2箇所でポケット本体2と係合する。このため、蓋フラップ3が開口部7を覆った閉塞状態を確実に維持することができ、開口部7の閉塞状態が安定する。
【0065】
なお、この実施形態では、差し込み部11及びフック片13を2つ設けているが、3つ以上設けても良い。
【0066】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に、フック片21自体及び差し込み部11の周囲のいずれか一方又は双方に芯材を設けることができる。これにより、フック片21自体や差し込み部11の周囲に張りを付与することができ、閉塞状態が安定すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0067】
[第5実施形態]
図7は、本発明の第5実施形態を示す。この実施形態のポケット開口部の閉塞構造1Dにおいては、第1実施形態と同様のフック片13が蓋フラップ3に設けられている。
【0068】
これに対し、ポケット本体2には、差し込み部11Aがベルト片31によって形成されている。ベルト片31は、横細の布材からなり、長さ方向の両端部を折り返してポケット本体2の表側に縫い付けることにより、ポケット本体2に取り付けられる。ベルト片31は、開口部7と略平行な状態で開口部7に沿ってポケット本体2の表側に設けられており、ベルト片31とポケット本体2との間にはフック片13の差し込みが可能となっている。
【0069】
この実施形態では、開口部7を覆うように蓋フラップ3を降ろした後、蓋フラップ3による開口部7の覆い状態でフック片13をベルト片31とポケット本体2との間に差し込む。この差し込みにより、フック片13とポケット本体2とがしっかりと係合するため、蓋フラップ3による開口部7の閉塞状態を安定して保持することができる。このため、開口部7からの物の落下を防止することができる。
【0070】
このような実施形態では、差し込み部11Aをポケット本体2の表側に縫い付けたベルト片31により構成しているため、フック片13の差し込み操作が容易となる。又、ベルト片31がポケット本体2のデザインを構成するため、ポケット本体2に装飾性を付与することができる。
【0071】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に、フック片21自体及び差し込み部11の周囲のいずれか一方又は双方に芯材を設けることができる。これにより、フック片21自体や差し込み部11の周囲に張りを付与することができ、閉塞状態が安定すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0072】
[第6実施形態]
図8は、本発明の第6実施形態のポケット開口部の閉塞構造1Eを示す。
【0073】
この実施形態の閉塞構造1Eは、第1実施形態の閉塞構造1に対し操作窓17が形成されていない点が異なるだけであり、その他の構成は第1実施形態の閉塞構造と同様である。すなわち、蓋フラップ3においてはフック片13が設けられるが、フック片13の対応位置には、操作窓17が形成されていない。
【0074】
このような実施形態においても、蓋フラップ3が開口部7を覆った状態とし、この蓋フラップ3の開口部の覆い状態でフック片13を開口部に向かうように操作してフック片13を差し込み部11に差し込む。この差し込みにより、開口部7の閉塞状態が安定するため、ポケット本体2内からの物の落下を防止することができる。
【0075】
この実施形態においても、第1実施形態と同様に、フック片21自体及び差し込み部11の周囲のいずれか一方又は双方に芯材を設けることができる。これにより、フック片21自体や差し込み部11の周囲に張りを付与することができ、閉塞状態が安定すると共に、洗濯耐久性が向上する。
【0076】
[他の実施形態]
以上の実施形態では、差し込み部11,11Aをポケット本体2に設け、フック片13,21,22を蓋フラップ3に設けているが、差し込み部11,11Aを蓋フラップ3に設ける一方、フック片13,21,22をポケット本体2に設けた逆の配置としても良い。この場合においても、開口部7の覆い状態でポケット本体2のフック片13,21,22を蓋フラップ3の差し込み部11,11Aに差し込んで係合させることができるため、同様な効果を得ることができる。
【0077】
又、以上の実施形態では、ポケット本体2及び蓋フラップ3を上下方向に配置しているが、これらを左右の横方向に配置しても良く、斜めに配置しても良い。このような配置においても、フック片13,21,22を差し込み部11,11Aに差し込むことにより、開口部7の閉塞状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B,1C,1D,1E ポケット開口部の閉塞構造
2 ポケット本体
3 蓋フラップ
7 開口部
9 フラップ本体
11、11A 差し込み部
13、21、22 フック片
31 ベルト片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケット本体(2)に開口部(7)が設けられ、前記開口部(7)を覆って閉塞状態とする蓋フラップ(3)が前記ポケット本体(2)の周辺部に捲り上げ可能に設けられた構造であって、
前記ポケット本体(2)又は蓋フラップ(3)のいずれか一方側に差し込み部(11,11A)が設けられ、
前記蓋フラップ(3)による開口部(7)の覆い状態で前記開口部(7)に向かった状態となって前記差し込み部(11、11A)に差し込まれるフック片(13,21,22)が他方側に設けられていることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。
【請求項2】
請求項1記載の発明であって、
前記フック片(13,21,22)の差し込みを行う手懸かりとする操作窓(17)が前記他方側に設けられていることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発明であって、
前記差し込み部(11、11A)及びフック片(13,21,22)が複数設けられていることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の発明であって、
前記フック片(13,21,22)が前記他方側に引っ掛け可能な形状となっていることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の発明であって、
前記フック片(13,21,22)及び/又は前記差し込み部(11,11A)に芯材が設けられていることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の発明であって、
前記差し込み部(11,11A)は、前記開口部(7)に沿ってポケット本体(2)又は蓋フラップ(3)のいずれか一方側に形成されたスリットであることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載の発明であって、
前記差し込み部(11,11A)は、前記開口部(7)に沿ってポケット本体(2)又は蓋フラップ(3)のいずれか一方の表側に取り付けられたベルト片(31)であることを特徴とするポケット開口部の閉塞構造(1,1A,1B,1C,1D,1E)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−58127(P2011−58127A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209461(P2009−209461)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】