説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】 結晶化度や結晶化速度に優れたポリアミド樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)脂肪族ポリアミド樹脂100重量部に(B)式(I)で表される化合物0.01〜10重量部を配合したことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂にニコチン酸ヒドラジドを配合した結晶化度、結晶化速度に優れるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミドは、優れた加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質などを有しているため、射出成形品、中空成形品、フィルム、シート、繊維などに加工され各種用途に用いられている。しかし、ポリアミドは結晶化度が低く、結晶化速度が遅いため加工サイクルが長くなる欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、結晶化度や結晶化速度に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、懸かる現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ニコチン酸ヒドラジドをポリアミドに配合することで、ポリアミド樹脂に優れた結晶化度、結晶化速度を付与できることを見出し本発明に到達した。
【0005】
即ち、本発明は、(A)脂肪族ポリアミド樹脂100重量部に(B)式(I)で表される化合物0.01〜10重量部を配合したことを特徴とするポリアミド樹脂組成物を提供する。
【0006】
【化1】

【発明の効果】
【0007】
本発明により結晶化速度に優れるポリアミドを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられるポリアミド樹脂としては、ラクタムあるいはアミノカルボン酸の重合又はジアミンとカルボン酸の重縮合によって得られるポリアミドのホモポリマーおよびコポリマー、そしてこれらの混合物が挙げられる。具体的には、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等のホモポリマー、これらの2成分以上に用いられる脂肪族カルボン酸/脂肪族アミンを含むコポリマーあるいはこれらポリマーの混合物が挙げられる。
【0009】
式(I)で表されるニコチン酸ヒドラジドの配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いることが好ましい。ニコチン酸ヒドラジドの配合量が0.01重量部未満であると、冷却固化時間の短縮がはかれないため射出成形時の成形サイクルが低下し、量産性が低下することとなる。また、ニコチン酸ヒドラジドの配合量が10重量部を超えると、経済的に不利になる。
【0010】
本発明のポリアミド組成物は必要に応じて、充填剤、離型剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、重金属不活性化剤、ハイドロタルサイト、帯電防止剤、金属石鹸、顔料、染料などにより安定化することが好ましい。
【0011】
充填剤としては、未処理のまたは表面処理されているタルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、シリカ、ゼオライト、ボロンナイトライド、アルミナ、マグネシア、グラファイト、マイカなどが挙げられる。通常0.5〜10μmの範囲内の平均粒径のものが選ばれる。
【0012】
離型剤としては、例えば、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0013】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部、より好ましくは、0.05〜5重量部が用いられる。
【0014】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられる。
【0015】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0016】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
【0017】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0018】
上記重金属不活性化剤としては、N,N’−ジフェニルオキサミド、N,N’−ビス(サリチロイル)ヒドラジン、N,N’−ビス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、3−サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾール、ビス(ベンジリデン)オキサリルジヒドラジド、イソフタロイルジヒドラジド、セバコイルビスフェニルヒドラジド、N,N’−ジアセチルアジポイルジヒドラジド、N,N’−ビス(サリチロイル)オキサリルジヒドラジド、N,N’−ビス(サリチロイル)チオプロピオニルジヒドラジドなどが挙げられる。
【実施例】
【0019】
実施例により本発明を詳細に示す。ただし、本発明は以下の実施例によりなんら制限されるものではない。
【0020】
実施例1及び比較例1
ポリアミド−6(CM1021:東レ(株)製)100重量部を120℃で3時間乾燥し、表1記載の造核剤1重量部を配合し、ラボプラストミルμ(東洋精機製作所(株)製:型式D1220B)260℃×150rpmで単軸押出ししてペレットを得た。得られたペレットを120℃で3時間乾燥した。示差走査熱量計(Perkin Elmer社製:Diamond DSC)で50℃から280℃まで50℃/分で昇温し、10分保持して10℃/分で100℃まで冷却した場合の発熱ピークからポリアミド樹脂組成物の結晶化温度を、ピーク面積からエンタルピー(ΔHc)を測定した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明のニコチン酸ヒドラジドをポリアミドに配合することで結晶化温度が高く、結晶化時のエンタルピー変化の大きなポリアミド樹脂組成物が得られる。結晶化温度が高くなることで同じ加工温度で成形した場合は、結晶化速度に優れた、加工サイクルに優れたポリアミド樹脂組成物が得られると期待できる。また、結晶化時のエンタルピー変化が大きいことから結晶化度が高くなっていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ポリアミド樹脂100重量部に(B)式(I)で表される化合物0.01〜10重量部を配合したことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【化1】


【公開番号】特開2006−77189(P2006−77189A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264911(P2004−264911)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合発機構 精密高分子プロジェクト高機能材料の研究開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用をうけるもの)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】