説明

ポリイミドフィルムの製造方法

【課題】本発明では、ポリイミド前駆体の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させる製造方法において、生産性を向上させる目的で高速製膜が可能な製法を提供すること、又は表面改質したフィルムを生産途中で破れや亀裂のない生産性を向上させる製法を提供すること、を目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させるポリイミドフィルムの製造方法であり、支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に、ポリイミド前駆体(B)を有する溶剤を介在させてキャストすることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を用いるポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、電気配線の絶縁部材として用いられている。従来よりポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体溶液又はポリイミド溶液より製造されている。
特許文献1には、流延法によるポリイミドフィルムの製造法において、予め溶剤を塗布し60〜250℃で熱処理した金属基体面にポリアミック酸またはポリイミドを含む重合体溶液をフィルム状に流延することを特徴とするポリイミドフィルムの製造法が開示されている。
特許文献2には、有機高分子体溶液を支持体上にキャストしてフィルムあるいはシート状成形体を得る方法において、該支持体とキャストされる有機高分子体溶液膜との間に該有機高分子体に対して相溶性を有する溶媒を介在させてキャストすることを特徴とする製膜方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−244508号公報
【特許文献2】特開平11−170281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させて製造されている。しかし支持体から自己支持性フィルムを剥離させるためには、自己支持性フィルムと支持体との剥離強度が低く、自己支持性フィルム自体の引張り強度が必要となる。またキャスト後に乾燥条件をかえて自己支持性フィルムの強度を上げることも可能であるが、得られるフィルム中に残存する溶媒の除去が困難となったり、支持体側表面と気体側表面の特性が異なったり、フィルム自体の物性が低下することがあるため採用しにくい。そのためこれら条件を満たす製造方法では生産速度を上げることが難しく、得られるフィルム物性を大きく変えずに生産性の向上する製造方法が求められている。特に厚みの薄いフィルムを製造する場合に、自己支持性フィルムの強度が得られにくく生産性の向上する製造方法が求められている。
【0005】
またポリイミドフィルムは、接着性や平滑性などの表面改質を目的として、ポリイミド前駆体の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、剥離した自己支持性フィルムにポリイミド前駆体含有溶媒を塗工又は浸漬して、乾燥させ、その後塗工自己支持性フィルムを加熱イミド化して、表面改質されたポリイミドフィルムが製造されている。
自己支持性フィルムにポリイミド前駆体含有溶媒を塗工して表面改質する場合に、自己支持性フィルムに破れや亀裂が入る可能性があり、特に厚みの薄い自己支持性フィルムでは顕著で、破れや亀裂の入らないフィルムの製造方法が求められている。
【0006】
本発明では、ポリイミド前駆体の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させる製造方法において、
生産性を向上させる目的で高速製膜が可能な製法を提供すること、
又は表面改質したフィルムを生産途中で破れや亀裂のない生産性を向上させる製法を提供すること、を目的とする。
特に厚みの薄いフィルムの製造に適用可能な方法を提供することを目的とする。
【0007】
特に3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸を重合する場合、ポリマー濃度が高くなると粘度が高く、また溶液はゲル化しやすくなるため、高濃度化で製造は困難であり生産性の向上には制限がある。また、生産途中の破れや亀裂を防止するために、イミド化触媒を添加すると粘度が上がりゲル化しやすくなるため、触媒添加量に限界があり、生産性の向上には制限がある。そのため3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸の溶媒溶液を用いた生産性、特に厚みの薄いフィルム生産性の向上する製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させるポリイミドフィルムの製造方法であり、
支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に、ポリイミド前駆体(B)を有する溶剤を介在させてキャストすることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【0009】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法の好ましい態様を以下に示し、これら態様は任意に複数組み合わせることが出来る。
1)ポリイミド前駆体(A)は、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物成分、及びピロメリット酸成分より選ばれる酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及び1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンより選ばれるジアミン成分を含むジアミン成分とから得られるポリイミド前駆体であること。
2)支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に、ポリイミド前駆体(B)を有する溶剤を5〜100g/mの範囲で介在させてキャストすること。
3)支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に介在する溶剤は、ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(A)の溶媒と相溶性を有すること。
4)ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液は、ポリイミド前駆体(A)の濃度が5質量%〜50質量%であり、溶液粘度が500〜5000ポイズであること。
5)ポリイミド前駆体(B)を有する溶剤は、ポリイミド前駆体(B)の濃度が0.1質量%〜20質量%であり、溶液粘度が5〜100センチポイズであること。
6)ポリイミドフィルムの厚みが5〜15μmの範囲であること。
7)ポリイミド前駆体(B)へ、イミド化触媒を0.1〜80質量%加えること。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させる製造方法において、生産性を向上させる目的で高速製膜が可能な製法を提供することができる。
本発明では、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させる製造方法において、表面改質したフィルムを生産途中で破れや亀裂を抑制し、生産性を向上させる製法を提供することができる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、厚みの薄いフィルムの生産性を向上させることが出来る。
【0011】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミンを含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸(A)の溶媒溶液を用いて、生産性、特に厚みの薄いフィルムの生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸塩、ポリアミック酸アルキルエステル、ポリアミック酸トリメチルシリルエステル、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンの混合溶液などを挙げることができ、さらにこれらを2種以上含むものなどを挙げることが出来る。特にポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを含む成分から合成されるポリアミック酸(但し、一部イミド化されたアミック酸を含む。)が好ましい。
【0013】
ポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)の製法の一例として、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンなどのジアミン成分を気相又は溶媒中で反応させて得ることが出来る。
【0014】
ポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)の原料であるジアミンとしては、公知の芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンなどのジアミンを用いることが出来、例えば下記一般式(1)で表される芳香族ジアミンが挙げられる。
【0015】
【化1】

(但し、一般式(1)において、Yは一般式(2)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【0016】
【化2】

(但し、一般式(2)において、R、R、R及びRは、単結合、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−CH−,−C(CH−及び−C(CF−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−H,−F,−Cl,−Br,−I,−CN,−OCH,−OH,−COOH,−CH,−Cまたは−CFを示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
中でも、好ましいジアミンとしては、下記一般式(1’)で表されるものが挙げられ、さらに好ましいジアミンとしては、下記一般式(1”)で表されるものが挙げられる。
【0017】
【化3】

(但し、一般式(1’)において、Yは一般式(2’)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【0018】
【化4】

(但し、一般式(2’)において、Rは、単結合、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
及びRは、−O−または−S−を示し、
は、単結合、−O−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、−Hまたは−CHを示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M、M’〜M’、L〜L、L’〜L’及びL”〜L”は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
【0019】
【化5】

(但し、一般式(1”)において、Yは一般式(2”)で示す群から選択された2価の基を示す。)
【0020】
【化6】

(但し、一般式(2”)において、Rは、単結合、−O−、−S−、−CH−及び−C(CH−から選ばれる2価の基を示し、
〜M及びM’〜M’は、−H、−OCH、−CHまたは−Clを示す。
は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよく、
〜M及びM’〜M’は、それぞれ独立して、同一であっても、異なっていてもよい。)
【0021】
ジアミンの具体例として、
1)1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン、
5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾールなどのベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンなどを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0022】
ポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)の原料であるテトラカルボン酸成分としては、公知の
芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸二無水物又はこれらのエステルなどを用いることが出来、例えば下記一般式(3)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はこれらのエステルなどを挙げられる。
【0023】
【化7】

(但し、一般式(3)において、Xは一般式(4)で示す群から選択された4価の基を示す。)
【0024】
【化8】

(但し、一般式(4)において、Rは、一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。)
【0025】
【化9】

中でも、好ましいテトラカルボン酸二無水物としては、下記一般式(3’)で表されるものが挙げられる。
【0026】
【化10】

(但し、一般式(3’)において、Xは一般式(4’)で示す群から選択された4価の基を示す。)
【0027】
【化11】

【0028】
ポリイミド前駆体(A)単独、又はポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)からなるポリイミドフィルムの製造方法において、ポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物又はこれらのエステルなどのテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンなどのジアミン成分を気相又は溶媒中で反応させてポリイミド前駆体を合成し、さらにポリイミド前駆体を加熱してイミド化することにより得ることが出来る。
ポリイミド前駆体(A)単独、又はポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)からなるポリイミドフィルムの製造方法において、ポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸二無水物を主成分とするテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミンを主成分とするジアミンとから得られる芳香族ポリイミドフィルムを製造することができる。
テトラカルボン酸成分は、一般式(3)に示す芳香族テトラカルボン酸二無水物、好ましくは一般式(3’)に示す芳香族テトラカルボン酸二無水物が主成分として用いられ、本発明の特性を損なわない範囲で該芳香族テトラカルボン酸二無水物以外の公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0029】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)において、テトラカルボン酸二無水物として、一般式(3)に示す芳香族テトラカルボン酸二無水物を50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものを用いることが好ましい。
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)において、ジアミン成分は、一般式(1)に示す芳香族ジアミン、好ましくは一般式(1’)に示す芳香族ジアミン、さらに好ましくは一般式(1”)に示す芳香族ジアミンが主成分として用いられ、本発明の特性を損なわない範囲で該芳香族ジアミン以外の公知のジアミンを用いることができる。
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)において、ジアミンとして、一般式(1)に示すジアミン、好ましくは一般式(1’)に示すジアミン、さらに好ましくは一般式(1”)に示すジアミンを50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むものを用いることが好ましい。
【0030】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)において、テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−メチルフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,3−ジメチルフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,6−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるテトラカルボン酸二無水物は、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0031】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物オキシジフタル酸二無水物などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などのエステル構造を有する酸二無水物から選ばれる成分を含む酸性分と、ジアミン成分とを重合して得られるポリアミック酸などのポリイミド前駆体、
さらに3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物オキシジフタル酸二無水物などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などのエステル構造を有する酸二無水物から選ばれる成分を含む酸性分と、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンから選ばれる成分を含むジアミン成分とを重合して得られるポリアミック酸などのポリイミド前駆体、
特に酸成分100モル%とジアミン成分100モル%とを和した総モル量200モル%の内、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物オキシジフタル酸二無水物などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などのエステル構造を有する酸二無水物から選ばれる成分を含む酸性分と、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンから選ばれる成分を含むジアミン成分とを和した総モル量が、好ましくは100モル%以上、より好ましくは140モル%以上、さらに好ましくは170モル%以上、特に好ましくは180モル%以上を用いて、重合して得られるポリアミック酸などのポリイミド前駆体、を好ましく用いることが出来る。
【0032】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)は、公知の方法で合成することができ、ランダム重合、ブロック重合、又はあらかじめ複数のポリイミド前駆体溶液又はポリイミド溶液を合成しておき、その複数の溶液を混合後反応条件下で混合して均一溶液とする、いずれの方法によっても達成される。
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体の重合度は、ポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解して、キャストが出来、自己支持フィルムが製造でき、加熱してイミド化することでフィルムが製造できる重合度であればよい。
ポリイミド前駆体(B)は上記方法で得られるポリイミド前駆体溶液にさらに溶媒を加えて用いることができる。
【0033】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、有機溶媒中、約100℃以下、さらに80℃以下、さらに0〜60℃の温度で、特に20〜60℃の温度で、約0.2〜100時間反応させてポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を製造することが出来、このポリアミック酸溶媒溶液をドープ液(キャスト液)又は塗工液として使用することができる。
また粘度の高い又はポリマー濃度の高いポリアミック酸溶媒溶液は、溶媒で希釈して塗工液として使用することができる。
【0034】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、ポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液の重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度及び溶液粘度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、リン系安定剤、溶剤に含まれるイミド化剤及び剥離剤から選ばれる添加成分を少なくとも1種含むことができる。
【0035】
ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液は、キャストが出来、自己支持フィルムが製造でき、加熱してイミド化することでフィルムが製造できれば、有機極性溶媒、ポリマー濃度、ポリマーの重合度、溶液粘度は使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。
ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液は、ポリイミド前駆体(A)濃度が好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは13〜25質量%、特に好ましくは16〜22質量%であることが好ましい。
ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液は、30℃で測定した回転粘度が、好ましくは500〜5000ポイズ、より好ましくは1000〜4000ポイズ、さらに好ましくは1500〜3000ポイズ、特に好ましくは1600〜2500ポイズのものであることが、このポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を取り扱う作業性の面から好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが望ましい。
【0036】
ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、支持体に塗工することが出来、或いはポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液よりポリイミドフィルムが形成できるものであれば、有機極性溶媒、ポリマー濃度、ポリマーの重合度、溶液粘度は使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。
ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、ポリイミド前駆体(B)濃度が好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%であることが好ましい。
ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、30℃で測定した回転粘度が、好ましくは5〜100ポイズ、さらに好ましくは5〜50ポイズ、特に好ましくは5〜10ポイズのものであることが、このポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を取り扱う作業性の面から好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが望ましい。
ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、溶媒100質量部に対して、イミド化触媒10〜80質量部、脱水縮合剤10〜80質量部、剥離剤10〜80質量部及び界面活性剤10〜80質量部から選ばれる添加成分と配合量を含むことができる。
【0037】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法より得られるポリイミドフィルムは、
1)ポリイミド前駆体(A)から得られるポリイミド(A)層とポリイミド前駆体(B)から得られるポリイミド(B)層とが密着した2層からなるもの、
2)ポリイミド前駆体(A)から得られるポリイミド(A)層とポリイミド前駆体(B)から得られるポリイミド(B)層とが容易に剥離する2層からなるもの、
3)ポリイミド前駆体(A)から得られるポリイミドとポリイミド前駆体(B)から得られるポリイミドとが、ポリイミド前駆体(A)とポリイミド前駆体(B)とが混在するポリイミドを介して密着したもの、
を得ることが出来る。
上記2)のポリイミドフィルムからポリイミド(B)層を剥離して得られるポリイミド(A)フィルムは、B層との積層側の表面が平滑なフィルムが得られる。
【0038】
ポリイミド前駆体(B)は、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液に溶解しても良く、溶解しなくても良いが、好ましくは溶解することが好ましい。
ポリイミド前駆体(A)は、ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液に溶解しても良く、溶解しなくても良いが、好ましくは溶解することが好ましい。
ポリイミド前駆体(B)とポリイミド前駆体(A)とは均一に相溶してもよく、均一に相溶しなくてもよい。
ポリイミド前駆体(A)とポリイミド前駆体(B)は、同じ組成であってもよく、異なっていても良い。
ポリイミド(A)とポリイミド(B)とが容易に剥離する場合には、ポリイミド(A)の表面は平滑性に優れるフィルムを製造できる。
【0039】
本発明の一例としては、
ポリイミド前駆体は、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸二無水物より選ばれる酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテルから選ばれるジアミン成分を含むジアミン成分とから得られる溶液粘度が500〜5000ポイズの範囲、ポリマー濃度が5質量%〜50質量%ポリイミド前駆体(A)を用い、
ポリイミド前駆体溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させるポリイミドフィルムの製造方法であり、
支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に、ポリイミド前駆体(A)と同じ組成又は異なる組成のポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液を5〜100g/mの範囲の量を介在させてキャストすることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法を挙げることが出来る。
ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、溶媒100質量部に対して、イミド化触媒10〜80質量部、脱水縮合剤10〜80質量部、剥離剤10〜80質量部及び界面活性剤10〜80質量部から選ばれる添加成分と配合量を含むことができる。
【0040】
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の略等モル量、ジアミン成分が少し過剰な量又は酸成分が少し過剰な量を、溶媒中で反応させてポリアミック酸などのポリイミド前駆体の溶媒溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)を得ることができる。
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)は、アミン末端を封止するためにジカルボン酸無水物、例えば、無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体など、特に、無水フタル酸を添加して合成することができる。
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)は、有機溶媒中、ジアミン(アミノ基のモル数として)の使用量が酸無水物の全モル数(テトラ酸二無水物とジカルボン酸無水物の酸無水物基としての総モルとして)に対する比として、0.95〜1.05、特に0.98〜1.02、そのなかでも特に0.99〜1.01であることが好ましい。ジカルボン酸無水物を使用する場合の使用量はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基モル量に対する比として、0.05以下であるような割合の各成分を反応させることができる。
【0041】
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の製造又はキャストに使用する溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、クレゾール類などの有機溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)のゲル化を制限する目的、又は支持体からの剥離性を向上させる目的でリン系安定剤を配合することが出来、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸の重合時に固形分(ポリマー)濃度100質量%に対して0.01〜1質量%の範囲で添加することができる。
【0043】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液又は溶剤は、主として熱閉環反応などに用いられるイミド化触媒及び主として化学閉環法などに用いられる脱水縮合剤などから選ばれるイミド化剤を含むものを用いることが出来る。
イミド化触媒としては、イミダゾール、2−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどを挙げることが出来る。
イミド化触媒は、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体に対して使用量は特に限定はないが、好ましくはポリアミック酸などのポリイミド前駆体100質量部に対して0.05〜10重量、特に0.1〜2重量の割合で使用することができる。これらは比較的低温でポリイミドフィルムを形成するため、イミド化が不十分となることを避けるために使用することができる。
イミド化触媒は、溶剤に対して使用量は特に限定はないが、好ましくは溶剤100質量部に対して、好ましくは1〜80質量部、より好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜60質量部含むことが好ましい。
イミド化触媒は、ポリイミド前駆体の粘度を増加させ、ゲル化を促進する作用を有する為、濃度・粘度が高いポリイミド前駆体(A)よりも、濃度・粘度の低いポリイミド前駆体(B)へ多く含ませることができる。
【0044】
脱水縮合剤としては、閉環触媒及び脱水剤から選ばれる成分、又はこれら閉環触媒及び脱水剤とを併用して用いることが好ましい。
閉環触媒としては、公知の化学閉環法に用いる閉環触媒なら、どのような成分でも用いることができ、特に溶剤と相溶性のある成分を用いることが好ましく、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環式第3級アミンなどを挙げることが出来る
【0045】
脱水剤としては、公知の化学閉環法に用いる脱水剤なら、どのような成分でも用いることができ、特に溶剤と相溶性のある成分を用いることが好ましく、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などを挙げることが出来る。
脱水剤は、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体に対して使用量は特に限定はないが、好ましくはポリアミック酸などのポリイミド前駆体1モルに対して、0.1〜10モル、さらに0.3〜8モル、特に1〜6モルの割合で使用することができる。
脱水剤は、溶剤に対して使用量は特に限定はないが、好ましくは溶剤100質量部に対して、好ましくは溶剤100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは15〜80質量部含むことが自己支持性フィルム及びキュアフィルム物性のために好ましい。
【0046】
閉環触媒は、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体に対して使用量は特に限定はないが、好ましくはポリアミック酸などのポリイミド前駆体1モルに対して0.1〜10モル、さらに0.5〜8モル、特に1〜6モルの割合で使用することができる。
溶剤に含まれる閉環触媒の量は特に限定はないが、好ましくは溶剤100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは15〜80質量部含むことが自己支持性フィルムおよびキュアフィルム物性のために好ましい。
【0047】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、剥離剤を含むものを用いることが出来、特にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、剥離剤を含むものを用いることが出来る。
剥離剤としては、支持体にキャストして得られる自己支持性フィルムが、支持体からの剥離性が向上するものであればよく、さらに得られるポリイミドフィルムの特性に問題なければ、どのようなものでも用いることが出来る。
剥離剤としては、アルキルリン酸エステル塩などを挙げることが出来る。
剥離剤は、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体に対して使用量は特に限定はないが、好ましくはポリアミック酸などのポリイミド前駆体100質量部に対して0.05〜10重量、特に0.1〜2重量の割合で使用することができる。
剥離剤は、溶剤に対して使用量は特に限定はないが、好ましくは溶剤100質量部に対して、好ましくは1〜80質量部、より好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜60質量部含むことが剥離性のために好ましい。
【0048】
ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液は、無機粒子又は有機粒子を含むものを用いることが出来る。
粒子としては無機粒子及び有機粒子と、これらを複合した粒子を挙げることが出来る。
無機粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
有機粒子としては、ポリイミド粒子(ポリイミド前駆体の溶媒や溶剤に不要、又は完全に溶解しない物)、熱硬化性樹脂の粒子などを挙げることが出来る。
粒子は、上記の無機粒子、有機粒子、これらを複合した粒子から2種類以上用いることが出来る。
【0049】
本発明のポリイミドフィルムの製造の一例としては、
単層又は複層の押出形成用ダイスが設置された製膜装置を使用して、まず、前記ダイスに、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液を供給し、ダイスの吐出口(リップ部)から単層又は複層の薄膜状体として支持体(エンドレスベルトやドラムなど)上のポリイミド前駆体(B)溶媒溶液の薄膜上に押出して、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の均一な厚さの薄膜を形成し、キャスティング炉の内部で、ポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜(キャスト液)のポリイミド前駆体(A)及びポリイミド前駆体(B)のイミド化が完全には進まない温度かつ有機溶媒の一部又は大部分が除去できる温度に加熱して、好ましくは温度100〜180℃で2〜60分間程度加熱して、溶媒の一部又は大部分を除去して自己支持性フィルムを作成し、さらに自己支持性フィルムを支持体から剥離させ、
必要に応じて自己支持性フィルムの片面又は両面に、溶液(例えば、表面処理剤、ポリイミド前駆体、ポリイミドなどを含んでも良い)などを塗工や吹き付けなどを行い、さらに必要に応じて主として塗工溶媒を除去する目的で乾燥し、
自己支持性フィルムを加熱処理して残存するポリイミド前駆体の有機溶媒や溶媒の除去及びイミド化を行い、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0050】
ポリイミドフィルムの製造において、支持体は、ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜工程により支持体上にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜を形成させ、次にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜上にポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜状体を形成し、次にキャスティング炉の内部で加熱され、支持体より自己支持性フィルムが剥がされ、次に必要に応じて、支持体上にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液が残量する場合はその残留するポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液を除去し、次にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜工程により支持体上にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜を形成させる、の工程が連続的に行われている。
【0051】
支持体としては、公知の材料を用いることが出来るが、表面がステンレス材料からなるものが好ましく、ステンレスベルト、ステンレスのロールなどが使用される。
支持体の表面は、溶剤の薄膜が均一に形成できることが好ましい。
【0052】
ポリイミドフィルムの製造において、支持体にポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜を形成させる方法としては、公知の方法を用いることが出来、例えば、タイコート法、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スポンジや布などの公知の塗布方法、スプレーなどの噴霧器など吹き付け、などの方法を挙げる事が出来できる。
支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜との間に介在させるポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液としては、支持体上に液膜状態であればよく、好ましくは支持体状に均一な厚みの液膜状であればよく、ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の液膜の厚みはキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)の着地が問題なく行うことができる厚みを適宜選択すればよく、好ましくは溶媒を支持体面積1m当たり、5〜100gの範囲、さらに10〜80gの範囲、特に20〜70gの範囲に介在させることが好ましい。
【0053】
ポリイミドフィルムの製造において、支持体に残留するポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の除去方法としては、公知の方法を用いることが出来、ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液を取り除くことが出来、かつ支持体及びその表面を傷つけない部材を支持体やその表面に接触させる方法、気体を吹きつける方法、容易に蒸発可能でポリイミドの製造に影響を及ぼさない液体で洗浄除去する方法などを挙げることが出来る。
例えば部材としてはスポンジなどの多孔質材料、布など織物や不職布などの天然又は合成の素材を挙げることが出来る。
部材の形態は支持体及びその表面を傷つけない形状であればよく、ロール状、板状又は棒状などを挙げることが出来る。
【0054】
ポリイミドフィルムの製造において、
さらに必要に応じて、押出形成用ダイスを用いてポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)を問題なく支持体上に着地させる目的(例えばポリイミド前駆体の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)を支持体上に押さえつける目的)で、
ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)の支持体上の着地位置より支持体の進行方向に、エアナイフなどを用いて空気などのガスを吹きつけるなどの手段を用いる方法、
またポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)の支持体上の着地位置より支持体の進行方向とは反対側に、ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)と支持体との間のガスを吸引するなどの手段を用いる方法などを挙げることが出来る。
【0055】
ポリイミドフィルムの製造において、
自己支持性フィルムの加熱処理は、ピン式テンター、クリップ式テンター、金属などで固定して、加熱することが好ましい。
自己支持性フィルムの加熱処理は、まず200℃から300℃未満の温度で1分〜60分間第一次加熱処理した後に、300℃から370℃未満の温度で1分〜60分間第二次加熱処理し、そして最高加熱温度350℃〜580℃の温度、好ましくは370〜550℃で1分〜30分間第三次加熱処理することが望ましい。上記加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの公知の種々の装置を使用して行うことができる。
【0056】
ポリイミドフィルムの製造において、ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜層の気相側にポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜層を形成させる。
ポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液の薄膜層とポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液の薄膜(キャスト膜)との重なったものは、自己支持性フィルムが支持体から剥がされるまでの間で、薄膜状のポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液と薄膜状のポリイミド前駆体の溶媒溶液とが全く混ざらなくとも良く、一部又は全部が混ざっても良く、特にポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液とポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液との一部又は全部が混ざることが好ましい。
【0057】
ポリイミドフィルムの製造において、
自己支持性フィルムの片面又は両面に溶液を塗布する場合は、自己支持性フィルムに塗布した時に自己支持性フィルムが裂けやクラックがはいることがなければよい。
自己支持性フィルムの片面又は両面に溶液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗布方法を挙げる事が出来できる。
【0058】
自己支持性フィルムに塗工する溶液に含むことが出来る表面処理剤としては、シランカップリング剤、ボランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アルミニウム系キレート剤、チタネート系カップリング剤、鉄カップリング剤、銅カップリング剤などの各種カップリング剤やキレート剤などを挙げることが出来る。
溶剤は表面処理剤を含むことができる。
【0059】
支持体とキャストされるポリイミド前駆体の溶媒溶液との間に介在させるポリイミド前駆体(B)の溶媒溶液として、イミド化剤及び剥離剤から選ばれる添加成分を少なくとも1種含むものを用いることにより、自己支持性フィルムの強度が向上し、
自己支持性フィルムを支持体から剥離させて、加熱処理するまでの間に、自己支持性フィルムの片面又は両面に平滑性や接着性などの表面改質等を目的として溶液を吹き付け、塗布又は浸漬などの溶液塗工を行っても、自己支持性フィルムの切れやクラックが生じ難いため、自己支持性フィルムへの溶液塗工工程を含む製法に用いることが出来る。
【0060】
本発明に用いるポリイミドフィルムの厚みは、目的に応じて適宜選択すればよく特に限定されるものではないが、厚さが150μm以下、好ましくは5〜120μm、より好ましくは6〜50μm、さらに好ましくは7〜25μm、特に好ましくは8〜15とすることが出来る。ポリイミドフィルムの厚みが6〜15μmの範囲であること
【0061】
本発明の製法により製造されるポリイミドフィルムは、電子・電気用などの基板、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのベース基材、各種テープ基材などに用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
(支持体上へのポリアミック酸の有機溶媒溶液のキャスト状態の評価)
平滑な金属支持体上へキャストしたアミック酸を150℃で7分乾燥させて、自己支持性フィルムを作製し、自己支持性フィルムにエアー噛み込みによる発泡の有無、着地時のアミック酸溶液の揺れによる平面性の悪化の有無、及びキャスト不安定によるスジの有無を目視で観察し評価する。
○:自己支持性フィルムにエアー噛み込みによる発泡がなく、着地時のアミック酸溶液の揺れによる平面性の悪化がなく、キャスト不安定によるスジの発生がない。
×:自己支持性フィルムにエアー噛み込みによる発泡が有るか、着地時のアミック酸溶液の揺れによる平面性の悪化が有るか、又はキャスト不安定によるスジの発生が有る。
【0064】
(実験例1:アミック酸溶液Aの調製)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と当モル量のp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド中で重合して、18質量%濃度、溶液粘度1800ポイズ(30℃)のポリアミック酸溶液Aを得た。
【0065】
(実験例2:アミック酸溶液Bの調製)
窒素をフローしたセパラブルフラスコへ、ジメチルアセトアミド945gを加え攪拌させた。そこへ3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物22.9526g、2,3’、3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物5.5174g、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン27.4128gを加え、室温で3時間攪拌させてアミック酸溶液Bを調整した。得られた溶液は、30℃で粘度8.5cPであった。
【0066】
(実験例3:アミック酸溶液Cの調製)
窒素をフローしたセパラブルフラスコへ、ジメチルアセトアミド945g加え攪拌させた。そこへ、パラフェニレンジアミン14.7820g、3,3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物を40.2180g加えて、室温で3時間攪拌しアミック酸溶液Cを得た。得られた溶液は10.4cPであった。
【0067】
(参考例1)
平滑なエンドレスベルトの金属支持体上へ、Tダイを用いてアミック酸溶液Aを加熱処理後のフィルム厚みが12.5μmとなるように流延した。Tダイからの吐出量が単位面積あたり一定になるように調製しながら速度を上げていき、目視による観察でエアーの噛み込みが確認された速度を確認した。
【0068】
(実施例1)
ダイコーターを用いてアミック酸溶液Bを6g/mとなるように平滑なエンドレスベルトの金属支持体上に塗工した。アミック酸溶液Bが塗工された平滑なエンドレスベルトの金属支持体上に、Tダイを用いてアミック酸溶液Aを加熱処理後のフィルム厚みが12.5μmとなるように流延した。
ダイコーター及びTダイからのアミック酸溶液B及びAの吐出量が単位面積あたり一定になるように調整しながら速度を上げていき、参考例1の限界速度に対して2.7倍のキャスト速度でもエアーの噛み込みが無い安定したキャストが可能であることを確認した。
【0069】
(実施例2)
ダイコーターを用いてアミック酸溶液Cを10g/mとなるように平滑なエンドレスベルトの金属支持体上に塗工した。アミック酸溶液Cが塗工された平滑なエンドレスベルトの金属支持体上に、Tダイを用いてアミック酸溶液Aを加熱処理後のフィルム厚みが12.5μmとなるように流延した。
ダイコーター及びTダイからのアミック酸溶液C及びAの吐出量が単位面積あたり一定になるように調整しながら速度を上げていき、参考例1の限界速度に対して2.7倍のキャスト速度でもエアーの噛み込みが無い安定したキャストが可能であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離させ、該自己支持性フィルムを加熱してイミド化させるポリイミドフィルムの製造方法であり、
支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に、塗布又は吹き付けの方法によりポリイミド前駆体(B)を有する溶剤を介在させてキャストし、
前記塗布の方法は、タイコート法、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スポンジまたは布を用いる方法であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
ポリイミド前駆体(A)は、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物成分及びピロメリット酸成分より選ばれる酸成分を含む酸成分と、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及び1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンより選ばれるジアミン成分を含むジアミン成分とから得られるポリイミド前駆体であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に、ポリイミド前駆体(B)を有する溶剤を5〜100g/mの範囲で介在させてキャストすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
支持体とキャストされるポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液との間に介在する溶剤は、ポリイミド前駆体(A)又はポリイミド前駆体(A)の溶媒と相溶性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
ポリイミド前駆体(A)の溶媒溶液は、ポリイミド前駆体(A)の濃度が5質量%〜50質量%であり、溶液粘度が500〜5000ポイズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリイミド前駆体(B)を有する溶剤は、ポリイミド前駆体(B)の濃度が0.1質量%〜20質量%であり、溶液粘度が5〜100センチポイズであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
ポリイミドフィルムの厚みが5〜15μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−76103(P2013−76103A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−18588(P2013−18588)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2008−76907(P2008−76907)の分割
【原出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】