説明

ポリイミド前駆体溶液の製造方法

【課題】 本発明の目的は、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを反応させて均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を容易に得ることができるポリイミド前駆体溶液の製造方法を提案することである。
【解決手段】 本発明は、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを、30〜70質量%のエチレングリコールまたはグリコール酸と70〜30質量%の非プロトン性極性溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得ることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の製造方法に関する。この製造方法によって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒との合計量に対して10〜50質量%になる濃度範囲でも、120℃未満の温度で反応して、均一に溶解した高分子量のポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体溶液を容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを比較的低温で反応して容易に均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得ること特徴とするポリイミド前駆体溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全芳香族ポリイミド前駆体溶液は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの略等モル量を、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒中で比較的低温の温度条件下に反応させることによって容易に得ることができる。
この全芳香族ポリイミド前駆体溶液から得られる全芳香族ポリイミドは、優れた耐熱性、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、機械的性質などの特長を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスなどの幅広い用途に現在好適に利用されているが、一方で分子内共役構造による電荷移動錯体の形成により著しく着色している。
【0003】
このため、透明性の高いポリイミドとして、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを用いた脂肪族或いは半脂肪族ポリイミドの検討がなされている。
しかしながら、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを反応してポリイミド前駆体を得ようとすると、脂肪族ジアミンが、その高い塩基性に起因して、反応初期段階に生成する低分子量ポリアミド酸と容易に塩を形成する。そして、生成する塩は非常に強固であって溶媒対する溶解性が極めて低いために、反応混合液中に析出する。この結果、その後の反応を容易に進めることができないという問題が生じた。
【0004】
特許文献1には、芳香族テトラカルボン酸二無水物とトランス1,4−ジアミノシクロヘキサンとを低温で反応したのでは、高分子量のポリイミド前駆体溶液は得られないことが記載されている。このため、特許文献1では、溶媒中で、芳香族テトラカルボン酸二無水物とトランス1,4−ジアミノシクロへキサンとを反応させて塩を形成し、得られた塩含有反応液を80℃〜150℃に加熱して重合反応を開始させ、少なくとも一部の塩を溶解させた後、更に室温で撹拌することにより重合反応させて高分子量のポリイミド前駆体溶液を得ることによって、還元粘度が2.0dL/g以上のポリイミド前駆体を得ることが記載されている。
しかしながら、反応温度が、実施例で示されたような120℃や150℃の高温度を必要とすることは、好ましいことではなかったし、さらに、この方法では、ポリイミド前駆体が14質量%程度の濃度でしか重合できず、より高濃度では重合が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−161136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを反応させて、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を容易に得ることができるポリイミド前駆体溶液の製造方法を提案することである。
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒との合計量に対して10〜50質量%になる濃度範囲でも、120℃未満の温度で反応して、均一に溶解した高分子量のポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体溶液を容易に得ることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の各項に関する。
(1) テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを、30〜70質量%のエチレングリコールまたはグリコール酸と70〜30質量%の非プロトン性極性溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得ることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の製造方法。
(2) 120℃未満の温度で反応させてポリイミド前駆体溶液を得ることを特徴とする前記項1に記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
(3) 脂肪族ジアミンが脂環式ジアミンであることを特徴とする前記項1または2に記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
(4) テトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸無水物を含んでなること、好ましくは芳香族テトラカルボン酸無水物、より好ましくは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
(5) テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒との合計量に対して10〜50質量%になる濃度範囲であることを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
【0008】
(6) ポリイミド前駆体溶液が、30〜70質量%のエチレングリコールまたはグリコール酸と70〜30質量%の非プロトン性極性溶媒とを含む混合溶媒中に、均一に溶解していることを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを反応させて均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を容易に得ることができる。
特に、本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒
との合計量に対して10〜40質量%になる濃度範囲でも、120℃未満の温度で反応して、均一に溶解した高分子量のポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体溶液を容易に得ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法の特徴は、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの反応において、反応溶媒に、エチレングリコールまたはグリコール酸のいずれか或いはその混合物と、非プロトン性極性溶媒とを、70〜30:30〜70の質量比率、好ましくは60〜40:40〜60の質量比率で混合した混合溶媒を用いるところにある。
この混合溶媒を用いることによって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを、比較的低温で且つ高濃度で反応した場合でも、塩形成による析出を抑制して、比較的高分子量からなるポリイミド前駆体が均一に溶解したポリイミド前躯体溶液を容易に得ることができる。
【0011】
溶媒として、非プロトン性極性溶媒を用いた場合、或いは非プロトン性極性溶媒とエチレングリコールまたはグリコール酸以外の溶媒との混合溶媒を用いたのでは、本発明のように、塩形成による析出を抑制して、比較的高分子量からなるポリイミド前駆体が均一に溶解したポリイミド前躯体溶液を容易に得ることは難しい。
【0012】
エチレングリコールまたはグリコール酸と共に用いる非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある。)N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを使用することができるが、溶媒の毒性および可燃性などの安全面の観点からNMP、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが好ましい。
【0013】
本発明で使用するテトラカルボン酸二無水物としてはすべてのテトラカルボン酸二無水物を用いることができるが、耐熱性や機械的強度などの観点から芳香族テトラカルボン酸二無水物が望ましい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメッリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸などを挙げることができる。これらの中でも、特に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、得られるポリイミドの耐熱性や寸法安定性の観点から、特に好ましい。
【0014】
本発明で用いるジアミンは、塩基性が強く塩形成する可能性が高い脂肪族ジアミンであるが、得られるポリイミドの透明性や耐熱性や機械的強度などの観点から、脂環状式ジアミンが特に好ましい。
脂環式ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、2,3−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)-トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン等の脂環式ジアミンを用いることが好ましい。
これらの中では、得られるポリイミドの熱寸法安定性の観点からトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンを用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法は、通常は、前記混合溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの略等モルを、好ましくは120℃未満の温度、より好ましくは0℃以上120℃未満の温度、さらに好ましくは10℃以上110℃未満の温度、特に好ましくは10℃以上100℃未満の温度で重合反応を行う。
0℃未満でも反応はできるが、反応速度が遅くなるので好適とはいえない。120℃以上の温度では、不要な加熱を行うことになるので経済的でないし、得られるポリイミド前駆態様液が、イミド化が進んで溶解性が低下したり、着色したりすることがある。また本発明の混合溶媒を用いる効果が少なくなる。
【0016】
なお、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとは、通常略等モル用いるが、必要に応じて使用するモル比を少しずらしてもよい。特に限定はないが、モル比[テトラカルボン酸二無水物もモル数/脂肪族ジアミンモル数]は0.9〜1.1程度である。
【0017】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法においては、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒との合計量に対して50質量%以下の濃度範囲で、塩の形成を抑制して、容易に重合反応を行うことができる。
したがって、本発明の特徴のひとつは、従来重合反応が困難であった、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%、特に好ましくは25〜40質量%の比較的高濃度で、重合反応を容易に行うことができることである。このような高濃度で重合反応が容易なことは、小スケールの設備で効率的に製造を行うことができ、また得られたポリイミド前駆体溶液を用いる際に溶媒の除去が容易になるので、工業的に非常に有益である。
【0018】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法において、反応時間は特に限定されない。0.1〜100時間、好ましくは1〜20時間程度である。また、反応雰囲気も特に限定されることはない。通常のポリイミド前駆体を製造する場合と同じように空気雰囲気でも良いが、好ましくは不活性雰囲気下で好適に行うことができる。
【0019】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法で得られた、ポリイミド前駆体溶液は、30〜70質量%のエチレングリコールまたはグリコール酸と70〜30質量%の非プロトン性極性溶媒とを含む混合溶媒中に、ポリイミド前駆体が均一に溶解していることを特徴とする。このポリイミド前駆体溶液は、加熱してイミド化することにより好適にポリイミドを提供することができる。例えば、本発明のポリイミド前駆体溶液は、回路基板等の基板上に塗布され、50℃〜150℃の温度範囲で乾燥され、更に200℃〜400℃ 、好ましくは300℃〜350℃の温度範囲で熱処理または脱水試薬と化学反応させることによってイミド化して、ポリイミド膜を得ることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定するものではない。
以下の例で使用した化合物の略号は以下のとおりである。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CHDA:トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン
【0021】
以下の例における評価方法を説明する。
<ポリイミド前駆体溶液の均一性の評価>
溶媒にジアミンを溶解後、テトラカルボン酸二無水物を添加し、混合物を所定の条件で重合反応を試みた後の反応混合物について、目視で観察し、透明かつ不溶物の無い均一に溶解した溶液が得られた場合は○としそれ以外を×とした。
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
<固形分濃度>
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は、ポリアミック酸溶液を350℃で30分間乾燥し、乾燥前の重量W1と乾燥後の重量W2とから次式によって求めた値である。
固形分濃度(重量%)={(W1−W2)/W1}×100
【0022】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン215.0002gとエチレングリコール215.0002gとを加え、これにCHDAを19.3236g(0.1722モル)と、s−BPDAの50.6765g(0.1722モル)を加え、70℃にて3時間撹拌して、濃度14.0質量%、固形分濃度12.76質量%、溶液粘度15Pa・sの、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得た。
【0023】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン150.0049gとエチレングリコール150.0049gとを加え、これにCHDAを55.2121g(0.4921モル)と、s−BPDAの144.7945g(0.4921モル)を加え、70℃にて3時間撹拌して、濃度40.0質量%、固形分濃度36.45%、溶液粘度200Pa・sの、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得た。
【0024】
〔実施例3〕
溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン150.0049gにグリコール酸215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の操作を行った。濃度14.0質量%、固形分濃度12.76%、溶液粘度15Pa・sの、均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得た。
【0025】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン410.0162gを加え、これにCHDAを24.8456g(0.2215モル)と、s−BPDAを65.1580g(0.2215モル)を加え、70℃で3時間撹拌した。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0026】
〔比較例2〕
溶媒としてエチレングリコール410.0162gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0027】
〔比較例3〕
溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン86.0001gとエチレングリコール344.0003gとを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0028】
〔比較例4〕
溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン344.0003gとエチレングリコール86.0001gとを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0029】
〔比較例5〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりに1,3-プロパンジオール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0030】
〔比較例6〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりに1,4-ブタンジール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0031】
〔比較例7〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりに1,5-ペンタンジオール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0032】
〔比較例8〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりにメタノール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0033】
〔比較例9〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりにエタノール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0034】
〔比較例10〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりにフェノール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0035】
〔比較例11〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりにトリグライム215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0036】
〔比較例12〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりにアセトン215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0037】
〔比較例13〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりにジエチレングリコール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0038】
〔比較例14〕
溶媒としてエチレングリコールの代わりに1,2-ブタンジオール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0039】
〔比較例15〕
溶媒としてシュウ酸215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0040】
〔比較例16〕
溶媒としてプロピレングリコール215.0002gを加えた以外は実施例1と同様の重合をおこなった。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0041】
〔比較例17〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてN-メチル−2−ピロリドン450.0001gを加え、これにCHDAを13.8026g(0.1230モル)と、s−BPDAを16.8026g(0.1230モル)を加え、80℃で3時間撹拌した。原料などの溶け残り(不溶物)があり、均一な溶液を得られなかった。
【0042】
以上説明した実施例と比較例とを表1にまとめた。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを反応させて均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を容易に得ることができる。
特に、本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によって、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒
との合計量に対して10〜40質量%になる濃度範囲でも、120℃未満の温度で反応して、均一に溶解した高分子量のポリイミド前駆体からなるポリイミド前駆体溶液を容易に得ることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとを、30〜70質量%のエチレングリコールまたはグリコール酸と70〜30質量%の非プロトン性極性溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて均一に溶解したポリイミド前駆体溶液を得ることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の製造方法。
【請求項2】
120℃未満の温度で反応させてポリイミド前駆体溶液を得ることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
【請求項3】
脂肪族ジアミンが脂環式ジアミンであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
【請求項4】
テトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
【請求項5】
テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとの合計量が、テトラカルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンと混合溶媒との合計量に対して10〜50質量%になる濃度範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体溶液の製造方法。
【請求項6】
ポリイミド前駆体溶液が、30〜70質量%のエチレングリコールまたはグリコール酸と70〜30質量%の非プロトン性極性溶媒とを含む混合溶媒中に、均一に溶解していることを特徴とするポリイミド前駆体溶液。

【公開番号】特開2013−49822(P2013−49822A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189974(P2011−189974)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】