説明

ポリイミド前駆体組成物、並びにそれを用いた電極合剤ペースト、電極および塗料

【課題】 本発明の目的は、一定条件下でのポリイミド樹脂組成物の膨潤度をより小さくして、さらに優れた靱性が保持できると共に、ポリイミド樹脂組成物としてダレや滲み出しなしに好適に塗布ができるポリイミド前駆体組成物を提案することである。
【解決手段】 ポリアミック酸と、ポリアミック酸に起因する固形分に対して6〜30質量%の有機化した層状粘土鉱物とを必須成分とすることを特徴とするポリイミド前駆体組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学素子の電極用バインダー、および塗料などに用いることができるポリイミド前駆体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるため、移動情報端末の駆動電源などとして広く利用されている。近年は、大容量を必要とする電気・ハイブリッド自動車への搭載など産業用途での使用も広まりつつあり、更なる高容量化や高性能化のための検討がなされている。その試みの一つは、例えば負極活物質として単位体積あたりのリチウム吸蔵量の多いケイ素やスズ、或いはこれらを含む合金を用いて、充放電容量を増大させようとするものである。
【0003】
しかし、ケイ素やスズ、或いはこれらを含む合金のような充放電容量の大きな活物質を用いると、充放電に伴って活物質が非常に大きな体積変化を起こすため、これまでの炭素を活物質として用いた電極で広く用いられていたポリフッ化ビニリデンやゴム系の樹脂をバインダー樹脂として用いたのでは、活物質層が破壊され易くなったり、集電体と活物質層との界面で剥離が発生し易くなったりするために、電極内の集電構造が破壊され、電極の電子伝導性が低下して電池のサイクル特性が容易に低下するという問題があった。
このため、非常に大きな体積変化に対しても電極の破壊や剥離を起こしにくい、電池環境下での靭性が高いバインダー樹脂組成物が望まれていた。
【0004】
特許文献1に記載されているとおり、リチウムイオン二次電池の電極用の結着剤にポリイミド樹脂を用いることは公知である。
特許文献2、3には、ケイ素合金やスズを含む合金からなる活物質に対して、それぞれ特定の機械的特性を有するポリイミドからなるバインダー樹脂を用いることが提案されている。
【0005】
特許文献4には、ガスや水に対するガスバリアー性や寸法安定性などを付与する目的で、有機オニウムイオンによって有機化した層状粘土鉱物をポリイミド中に分散することが記載されている。
【0006】
非特許文献1には、電解液に対する電極用のバインダー樹脂の膨潤度が小さいほど充放電サイクルに伴う放電容量保持率が高くなるので好ましいことが示されている。
さらに、非特許文献2では、リチウム電池内における電解液の還元分解反応が解析されており、電極表面でメトキシリチウムなどが生成することが確認されている。すなわち、電池環境下では、電解液中に強アルカリ性でバインダー樹脂に悪影響を与える可能性があるメトキシリチウムが含まれている。
【0007】
また塗料としても、特許文献5のように、同様の破壊や剥離を起こしにくく、靭性が高い樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−163031号公報
【特許文献2】WO2004/004031号公報
【特許文献3】特開2007−149604号公報
【特許文献4】特開平04−33955号公報
【特許文献5】特開2010−189510号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日立化成テクニカルレポート第45号(2005年7月)
【非特許文献2】吉田浩明他、リチウム電池用炭酸エステル混合電解液の分解反応、第35回電池討論会 講演要旨集、日本、電気化学協会電池技術委員会、1994年11月14日、p.75−76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、電極用バインダーとしてポリイミド前駆体組成物を用いた場合でも、一定条件下でのバインダーの膨潤度をより小さくして、さらに優れた靱性が保持できるようにすることが求められていた。また、塗料用としてポリイミド前駆体組成物を用いた場合にも、得られる塗膜が優れた靱性を保持できるようにすることが求められていた。さらに、ポリイミド前駆体組成物を用いた電極合剤ペーストや塗料について、塗布の際のダレや滲み出しをなくすことが望まれていた。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、得られるポリイミド樹脂組成物が優れた靱性を保持できると共に、電極合剤ペーストや塗料の成分として用いた場合にダレや滲み出しなしに好適に塗布ができるポリイミド前駆体組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、種々検討した結果、ポリアミック酸に特定の層状粘土鉱物を所定量添加したポリイミド前駆体組成物を用いると、得られるポリイミド樹脂組成物が優れた靱性を保持できると共に、電極合剤ペーストや塗料の成分として用いた場合にダレや滲み出しなしに好適に塗布ができることを見出して本発明に至った。
【0013】
具体的には、ポリアミック酸に特定の層状粘土鉱物を所定量添加したポリイミド前駆体組成物を電極用に用いると、電池環境下でのバインダーの膨潤度をより小さくして、さらに優れた靱性が保持できると共に、電極合剤ペーストとしてダレや滲み出しなしに好適に塗布ができることを見出して本発明に至った。また、塗料用に用いると、得られる塗膜が優れた靱性を保持できると共に、塗料としてダレや滲み出しなしに好適に塗布ができることを見出して本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下の各項に関するものである。
【0015】
1. ポリアミック酸と、前記ポリアミック酸に起因する固形分に対して6〜30質量%の有機化した層状粘土鉱物とを必須成分とすることを特徴とするポリイミド前駆体組成物。
【0016】
2. 有機化した層状粘土鉱物が、アルキルアンモニウムイオンによって有機化したスメクタイトであることを特徴とする前記項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【0017】
3. ポリアミック酸が下記化学式(1)で表される繰返し単位からなることを特徴とする前記項1または2に記載のポリイミド前駆体組成物。
【0018】
【化1】

化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)〜(5)からなる群から選択されるいずれかの4価の基であり、Bは、1〜4個の芳香族環を有する2価の基である。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
4. 前記化学式(1)のBが、下記化学式(6)〜(9)からなる群から選択されるいずれかの2価の基を含んで構成されることを特徴とする前記項3に記載のポリイミド前駆体組成物。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

但し、前記化学式(8)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’−エチリデン基、1,2−エチリデン基、2,2’−イソプロピリデン基、2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジメチレン基、1,3−フェニレンジエチリデン基、1,4−フェニレンジエチリデン基、1,3−フェニレンジプロピリデン基、1,4−フェニレンジプロピリデン基、1,3−フェニレンジオキシ基、1,4−フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【0027】
【化9】

【0028】
5. さらに、ピリジン類化合物を含有することを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物。
【0029】
6. E型粘度計で30℃における溶液粘度を測定したときに、回転速度が5rpmにおける粘度に対する回転粘度が0.5rpmにおける粘度の比[0.5rpmの溶液粘度/5rpmの溶液粘度]が1.5以上であることを特徴とする前記項1〜5のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物。
【0030】
7. 加熱処理して得られるポリイミド樹脂組成物が、25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬したときの質量増加率が、浸漬前の1.0質量%未満であることを特徴とする前記項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物。
【0031】
8. 電極活物質と前記項1〜7のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物とからなる電極合剤ペースト。
【0032】
9. 前記項8に記載の電極合剤ペーストを集電体上に塗布し、加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応することにより得られることを特徴とする電極。
【0033】
10. 前記項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物を含有する塗料。
【0034】
11. 前記項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して得られるポリイミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0035】
本発明によって、得られるポリイミド樹脂組成物が優れた靱性を保持できると共に、電極合剤ペーストや塗料の成分として用いた場合にダレや滲み出しなしに好適に塗布ができるポリイミド前駆体組成物を提案することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のポリイミド前駆体組成物は、ポリアミック酸と、ポリアミック酸に起因する固形分に対して6〜30質量%の有機化した層状粘土鉱物とを必須成分とする。そして、本発明のポリイミド前駆体組成物は、電極用や塗料用として用いるのに好適である。
【0037】
有機化した層状粘土鉱物は、層状粘土鉱物の層間を有機オニウム化合物のような有機化剤で有機化した層状粘土鉱物であって、例えば層状粘土鉱物の層間の交換性無機イオンを有機化剤の有機イオンによって置換することによって生成することができる。前記有機化剤としては、例えばアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどのオニウムイオンまたはオニウムイオンを形成し得る基を有する有機化合物であって、主鎖は直鎖状、分枝状、又は環状構造の炭化水素で構成されたものが好ましい。具体的には、限定するものではないがアミノドデカン酸、ドデシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミンなどのアルキルアンモニウムイオンなどや、アクリル酸系アイオノマーのカルボン酸塩などを挙げることができる。
また、有機化した層状粘土鉱物は、前記有機化剤で有機化された層状粘土鉱物を、更に他の有機化合物を用いて処理することによって他の有機化合物と複合化した層状粘土鉱物であっても構わない。他の有機化合物としてはポリアミドやポリイミドを好適に挙げることができる。
層状粘土鉱物としては、モンモリロナイト、サボナイト、バイデライト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等のマイカ系粘土鉱物を挙げることができる。
なお、本発明で使用する有機化した層状粘土鉱物は、天然のものでも化学的に合成したものでもよいが、好ましくは合成したものである。
【0038】
さらに、例えばアルキルアンモニウムイオンによって有機化した層状粘土鉱物は、層状粘土鉱物を溶剤中に分散させ、これにアルキルアンモニウムイオンの溶液、好ましくはアルキルアンモニウムイオンの水溶液を加え、必要に応じて、加熱下に混合・攪拌して、層状粘土鉱物の交換性陽イオン(代表的にはナトリウムイオンやマグネシウムイオンなど)をアルキルアンモニウムイオンとイオン交換させることで容易に得ることができる。このようにして得られた有機化した層状粘土鉱物は、濾別し、洗浄、乾燥、解砕することによって、微細な粉末として好適に得ることができる。
【0039】
有機化した層状粘土鉱物としては、具体的にはルーセンタイトSTN(コープケミカル株式会社製)、ルーセンタイトSPN(コープケミカル株式会社製)、スメクトンSA(クニミネ工業株式会社製)などの市販の有機化した層状粘土鉱物を好適に用いることができるし、前述の方法によって層状粘土鉱物の陽イオンを所定の有機イオン又は有機化合物と交換させることで得られた有機化した層状粘土鉱物を好適に用いることもできる。
なお、本発明においては、アルキルアンモニウムイオンによって有機化したスメクタイトが特に好ましい。
【0040】
本発明のポリイミド前駆体組成物において、有機化した層状粘土鉱物の添加量はポリアミック酸に起因する固形分に対して6〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、10〜20がさらに好ましい。
添加量が6質量%未満では、印刷性に優れたチキソトロピー性が得られず、また、添加量が30質量%よりも多いと、分散不良、流動性が全くなくなるなどの問題が生じることがある。
【0041】
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とから容易に調製することができる。テトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸類すなわちテトラカルボン酸、その酸二無水物及びそのエステル化化合物などであり、好ましくは二無水物である。ジアミン成分は、ジアミン類すなわちジアミン、ジイソシアネートなどであり、好ましくはジアミンである。
【0042】
本発明のポリイミド前駆体組成物に用いられるポリアミック酸は、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とから調製された芳香族ポリアミック酸が好ましく、特に前記化学式(1)で表される繰り返し単位からなることが好適である。
すなわち、本発明のポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸成分としては、4,4’−オキシジフタル酸類、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、ピロメット酸類、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸類からなる群から選択されるいずれかのテトラカルボン酸類、或いはそれらの混合物を好適に用いることができる。
なお、テトラカルボン酸類とは、テトラカルボン酸及びその無水化物やエステル化物など、通常ポリイミドの原料成分になり得るテトラカルボン酸誘導体を意味する。
【0043】
さらに、本発明のポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸成分としては、全テトラカルボン酸成分100モル%中、10〜100モル%好ましくは15〜70モル%より好ましくは20〜50モル%の4,4’−オキシジフタル酸類、及び90〜0モル%好ましくは85〜30モル%より好ましくは80〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類及び/またはピロメリット酸類(好ましくは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類)を用いることがより好適である。
これらの芳香族テトラカルボン酸類を用いることによって、電池環境下等の一定条件下で膨潤度をより小さくして、さらに優れた靱性が保持することができるので電極用や塗料用として好適なポリアミック酸を得ることが可能になる。
【0044】
本発明のポリアミック酸を構成するジアミン成分としては、1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン類であって、具合例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの1個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテルなどの2個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(p−β−メチル−6−アミノフェニル)ベンゼン、などの3個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなどの4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン、或いはそれらに対応する1〜4個の芳香族環を有する芳香族ジイソシアネートを好適に挙げることができる。
【0045】
また、4個の芳香族環を有する芳香族ジアミン類としては、好ましくは下記化学式(10)で表される芳香族ジアミン或いは対応する4個の芳香族環を有する芳香族ジイソシアネートを好適に挙げることができる。
【0046】
【化10】

但し、前記化学式(10)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’−エチリデン基、1,2−エチリデン基、2,2’−イソプロピリデン基、2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジメチレン基、1,3−フェニレンジエチリデン基、1,4−フェニレンジエチリデン基、1,3−フェニレンジプロピリデン基、1,4−フェニレンジプロピリデン基、1,3−フェニレンジオキシ基、1,4−フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【0047】
本発明のポリアミック酸を構成するジアミン成分は、これらの中で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、フェニレンジアミン、前記化学式(10)のジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及びこれらジアミンに対応するジイソシアネートのいずれか、或いはそれらの混合物であることが好ましく、特に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、及びこれらジアミンに対応するジイソシアネートのいずれか、或いはそれらの混合物であることが好ましい。
これらの芳香族ジアミン成分を用いることによって、電池環境下の一定条件下で膨潤度をより小さくして、さらに優れた靱性が保持することができるので電極用や塗料用として好適なポリアミック酸を得ることが可能になる。
【0048】
ポリアミック酸を構成するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とのモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]は略等モル、具体的には0.95〜1.05好ましくは0.97〜1.03になるようにすることが重要である。このモル比の範囲外では、得られるポリイミド樹脂の靭性が低くなる恐れがある。
【0049】
ポリアミック酸は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶剤中で反応させることで容易に調製することができる。限定するものではないが、好ましくはジアミン成分を溶剤に溶解した溶液にテトラカルボン酸成分を一度に或いは数度に分けて多段階で添加し、攪拌することにより好適に行うことができる。反応温度は10℃〜60℃が好ましく、15℃〜55℃がさらに好ましく、15℃〜50℃が特に好ましい。反応温度が10℃より低いと反応が遅くなることから好ましくなく、60℃より高いと溶液の粘度が低くなることがあり好ましくない。反応時間は、0.5時間〜72時間の範囲が好ましく、1時間〜60時間がさらに好ましく、1.5時間〜48時間が特に好ましい。反応時間が0.5時間より短いと反応が十分進行せず、合成されたポリアミック酸溶液の粘度が不安定になることがある。一方、72時間以上の時間をかけるのは生産性の面から好ましくない。
【0050】
本発明のポリアミック酸の調製には従来ポリアミック酸を調製する際に用いられる公知の有機溶剤を使用することができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上混合して使用しても差し支えない。これらのうち、ポリアミック酸の溶解性、および安全性から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。
【0051】
本発明のポリイミド前駆体組成物において、ポリアミック酸は溶剤に均一に溶解してなる。またポリアミック酸に起因する固形分濃度が、溶剤とポリアミック酸との合計量に対して5質量%超〜45質量%、好ましくは10質量%超〜40質量%、より好ましくは15質量%超〜30質量%であることが好適である。ポリアミック酸に起因する固形分濃度が5質量%より低いと溶液の粘度が低くなりすぎ、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。また溶液粘度は、30℃における溶液粘度が、好ましくは1000Pa・sec以下、より好ましくは0.5〜500Pa・sec、さらに好ましくは1〜300Pa・sec、特に好ましくは3〜200Pa・secである。
溶液粘度が1000Pa・secを超えると、電極活物質粉末の混合や集電体上への均一な塗布が困難となり、また、0.5Pa・secよりも低いと、電極活物質粉末の混合や集電体上への塗布時にたれなどが生じ、加熱乾燥、イミド化後のポリイミド樹脂の靭性が低くなる恐れがある。
【0052】
本発明のポリイミド前駆体組成物は、予め調製したポリアミック酸溶液に、有機化した層状粘土鉱物を均一に分散させることで得ることもできるが、予め有機化した層状粘土鉱物を溶剤中に均一に分散させた分散液中で、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させてポリアミック酸を調整することによっても得ることができる。
ポリイミド前駆体組成物の溶剤は、ポリアミック酸を溶解し得る従来公知の有機溶媒を好適に用いることができ、常圧での沸点が300℃以下の有機極性溶媒が好ましく、ポリアミック酸の調製の際に用いられる前記溶剤を好適に用いることができる。
【0053】
本発明のポリイミド前駆体組成物は、E型粘度計で30℃における溶液粘度を測定したときに、回転速度が5rpmにおける粘度に対する回転粘度が0.5rpmにおける粘度の比[0.5rpmの溶液粘度/5rpmの溶液粘度]が1.5以上、好ましくは2.0以上であり、7.0以下、好ましくは6.0以下程度のチキソトロピー性を持つことが好ましい。粘度の比が1.5未満では印刷後の電極合剤ペーストや塗料の流れ出しが大きくなるとともに膜厚が薄膜化する傾向があり、7.0を超えると電極合剤ペーストや塗料がフローしなくなる傾向がある。
【0054】
本発明のポリイミド前駆体組成物においては、さらにピリジン類化合物を含有することが、得られるポリイミド樹脂の電解液に対する膨潤度をより小さくし、破断伸度及び破断エネルギーをより大きくすることができ、さらに電極や塗膜を得るための加熱処理温度を低く抑えることができるので、好適である。
ピリジン類化合物は、化学構造中にピリジン骨格を有する化合物のことであり、例えばピリジン、3−ピリジノール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、6−tert−ブチルキノリン、アクリジン、6−キノリンカルボン酸、3,4−ルチジン、ピリダジン、などを好適に挙げることができる。これらのピリジン系化合物は、単独または2種以上併用して使用しても差し支えない。
【0055】
ポリイミド前駆体組成物においてピリジン類化合物の添加量は、限定するものではないが、ポリアミック酸のアミック酸構造に対して(アミック酸構造1モル当たり)、好ましくは0.05〜2.0モル当量、より好ましくは0.1〜1.0モル当量である。添加量がこの範囲外では、電解液に対する樹脂の膨潤度をより小さくし、得られるポリイミド樹脂の破断伸度及び破断エネルギーをより大きくし、さらに電極や塗膜を得るための加熱処理温度を低く抑えるというピリジン類化合物の添加効果を得ることが難しい場合があり好ましくない。
【0056】
本発明のポリイミド前駆体組成物は、加熱処理或いはイミド化剤などの化学的処理によって、容易にポリイミド樹脂になる。例えば、ポリイミド前駆体組成物を基材上に流延あるいは塗布して120℃〜180℃の範囲で加熱乾燥後、自己支持性となったフィルムを基材から剥離し、金属枠などに固定して、さらに200℃〜400℃で5分〜10時間加熱してポリイミド樹脂フィルムを好適に得ることができる。このような加熱処理によって得られたポリイミド樹脂は、ジメチルカーボネートに25℃で24時間浸漬したときに、その質量増加率が、浸漬前の質量に対して3.0質量%未満、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満になるので、ポリイミド前駆体組成物として好適に用いることができる。また、メトキシリチウムを含有した溶液に25℃で24時間浸漬したときでも、その質量増加率が、浸漬前の質量に対して3.0質量%未満、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満になるので、ポリイミド前駆体組成物として好適に用いることができる。
【0057】
なお、ジメチルカーボネートは電池の電解液成分として多用される化合物であり、電池環境下ではしばしばメトキシリチウムを含有している。そして、電解液中で電解液による膨潤によってバインダー樹脂の質量増加(25℃で24時間浸漬時)が3質量%未満、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満であれば、電極の体積変化の影響を好適に抑えることができる。
【0058】
本発明のポリイミド前駆体組成物に、少なくとも電極活物質を、限定するものではないが、好ましくは10℃〜60℃の温度範囲で混合することにより、電極合剤ペーストを好適に調製することができる。電極活物質は公知のものを好適に用いることができるが、リチウム含有金属複合酸化物、炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末が好ましい。電極合剤ペースト中の電極活物質の量は、格別限定されないが、通常、ポリアミック酸に起因する固形分質量に対して、質量基準で0.1〜1000倍、好ましくは1〜1000倍、より好ましくは5〜1000倍、さらに好ましくは10〜1000倍である。活物質量が少なすぎると、集電体に形成された活物質層に不活性な部分が多くなり、電極としての機能が不十分になることがある。また、活物質量が多すぎると活物質が集電体に十分に結着されずに脱落し易くなる。なお、電極合剤ペースト中には、必要に応じて界面活性剤や粘度調整剤や導電補助剤などの添加剤を加えることができる。また、ポリアミック酸に起因する固形分がペーストの全固形分中の1〜15質量%となるよう混合することが好ましい。この範囲外では電極の性能が低下することがある。
【0059】
充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる例えばリチウム含有金属複合酸化物のような電極活物質を用いて得られる電極合剤ペーストを、アルミニウムなどの導電性の集電体上に流延あるいは塗布して、80〜400℃、好ましくは120〜380℃、より好ましくは150〜350℃、更に好ましくは150〜250℃の温度範囲で加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応することにより電極を得ることができる。
加熱処理温度が前記の範囲外の場合、イミド化反応が十分に進行しなかったり、電極成形体の物性が低下したりすることがある。加熱処理は発泡や粉末化を防ぐために多段で行ってもよい。また、加熱処理時間は3分〜48時間の範囲が好ましい。48時間以上は生産性の点から好ましくなく、3分より短いとイミド化反応や溶媒の除去が不十分となることがあり好ましくない。
得られる電極はリチウムイオン二次電池の正極として特に好適に用いることができる。
【0060】
また、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる例えば炭素粉末、ケイ素粉末、スズ粉末、またはケイ素若しくはスズを含む合金粉末のような電極活物質を用いて得られる電極合剤ペーストを、銅などの導電性の集電体上に流延あるいは塗布する場合、80〜300℃、好ましくは120〜280℃、より好ましくは150〜250℃の温度範囲で加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応することにより電極を得ることができる。加熱処理温度が80℃よりも低い場合、イミド化反応が十分に進行せずに電極成形体の物性が低下することがある。300℃よりも高い温度で熱処理すると銅が変形などをしてしまい、電極として使用できなくなることがある。この場合も加熱処理は発泡や粉末化を防ぐために多段で行ってもよい。また、加熱処理時間は3分〜48時間の範囲が好ましい。48時間以上は生産性の点から好ましくなく、3分より短いとイミド化反応や溶媒の除去が不十分となることがあり好ましくない。
得られる電極はリチウムイオン二次電池の負極として特に好適に用いることができる。
【0061】
本発明の塗料(coating)は、本発明のポリイミド前駆体組成物を含有し、広く塗膜を形成する材料の全てを包含する。絶縁塗料用途、着色用途(ラッカー、ペイント、印刷インキ等)、導電性塗料用途、帯電防止処理用途、その他、塗膜を形成する全ての用途を包含する。
【0062】
塗料に含まれる顔料および/またはフィラーは、用途に合わせて適宜選択することができる。塗料(即ちコーティング材料)に含有される固形物は、分野によって、あるいは添加する目的により、顔料と呼ばれたり、フィラーと呼ばれたりするが、本発明において含有することのできる固形物は、一般に顔料またはフィラーと呼ばれるもののどちらであってもよいし、両方を含有させてもよい。目的、用途に合わせて、形状および大きさを、適宜選択して使用することができる。
【0063】
導電性塗料用途および静電防止用途では、導電性フィラーとして、通常の導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、例えばケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。導電性フィラーは単独、あるいは併用して使用してもよい。本発明では、カーボンブラックを導電性フィラーとして使用することが好ましいが、特に、平均一次粒子径が5〜100nmのものが好ましく、特に10〜50nmのものが好ましい。平均一次粒子径が100nmを超えるものは、機械特性や電気抵抗値の均一性が不十分になり易い傾向がある。
【0064】
非彩色系(白色系)の顔料、あるいは着色を特に目的としないフィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、ホワイトカーボン、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、ロウ石、カオリン、クレー、ケイソウ土などの無機顔料、スチレンマイクロボール、ナイロン粒子、尿素−ホルマリン充填剤、ポリエチレン粒子、セルロース充填剤、デンプン粒子、シリコン樹脂粒子などの有機顔料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
また、着色系の顔料としては、有機着色顔料、無機着色顔料のどちらでもよく、例えば、酸化クロム、チタン酸コバルト、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、べんがら、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キノフタロン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、建染染料系顔料、塩基性染料系顔料などの有機顔料、アゾ顔料、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明の塗料は、ポリイミド前駆体組成物および顔料に加えて、更に必要に応じて分散湿潤剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0067】
塗料の調製には、ポリイミド前駆体組成物と顔料とを従来公知の分散機を用いて混合し、顔料を分散させることができる。分散機の例としては、限定するものではないが脱泡混練機、ディスパーサー、ホモミキサー、ビーズミル、ボールミル、2本ロール、三本ロール、加圧ニーダー、超音波分散機などを好適に挙げることができる。分散の際に、予め顔料を少量の水と親和性の大きい有機溶媒中に分散させたものをポリイミド前駆体水溶液組成物と混合してもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料のポリアミック酸溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定した。
固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
【0070】
<対数粘度>
試料のポリアミック酸溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒はNMP)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T)を測定した。対数粘度は、ブランクのNMPの流下時間(T)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T/T)}/0.5
【0071】
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃でローターの回転数を1rpmで測定した。
【0072】
<粘度比(チキソトロピー性)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃でローターの回転数を0.5rpm及び5rpmで測定した粘度の値から次式により算出した。
チキソ比=粘度(0.5rpm)/粘度(5rpm)
【0073】
<溶液安定性>
ポリイミド前駆体組成物を、25℃の温度に調整された雰囲気中に保管し、1ヶ月後の溶液粘度変化が±10%以内のものを○、±10%を超えたものを×とした。
【0074】
<膨潤試験>
ポリイミド前駆体組成物から得られたポリイミドフィルムを5cm角(厚さ:50μm)に切り出したものを試料として用いた。60℃で24時間真空乾燥後の質量を乾燥質量(Wd)とし、ジメチルカーボネート溶液、或いはメトキシリチウムの10質量%メタノール溶液に、25℃で24時間浸漬後の質量を膨潤質量(Ww)とし、それぞれ次式により膨潤度Sを計算した。
膨潤度S[質量%]=(Ww−Wd)/Ww×100
【0075】
<印刷性評価>
ポリイミド前駆体組成物にケイ素粉末を混合した電極合剤ペーストを銅箔上に塗布し、塗布後のダレ、滲み出しがないかを目視で確認した。
【0076】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物、
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
PMDA:ピロメリット酸二無水物、
PPD:p−フェニレンジアミン、
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0077】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTN(コープケミカル社製、アルキルアンモニウムがインターカレートされたスメクタイト)の15.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの12.93g(0.120モル)及びODAの23.93g(0.120モル)と、ODPAの37.07g(0.120モル)及びPMDAの26.07g(0.120モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.7質量%、溶液粘度7.8Pa・s、チキソ比3.4、対数粘度0.69のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0078】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0079】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.06g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0080】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSPN(コープケミカル社製、アルキルアンモニウムがインターカレートされたスメクタイト)の15.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの12.93g(0.120モル)及びODAの23.93g(0.120モル)と、ODPAの37.07g(0.120モル)及びPMDAの26.07g(0.120モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.6質量%、溶液粘度6.9Pa・s、チキソ比3.0、対数粘度0.67のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0081】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0082】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.08g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0083】
〔実施例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTNの10.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの11.85g(0.110モル)及びODAの21.94g(0.110モル)と、ODPAの33.98g(0.110モル)及びs−BPDAの32.23g(0.110モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.1質量%、溶液粘度5.9Pa・s、チキソ比2.7、対数粘度0.68のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0084】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0085】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.19g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0086】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとスメクトンSA(クニミネ工業社製、アルキルアンモニウムがインターカレートされたスメクタイト)の15.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの11.85g(0.110モル)及びODAの21.94g(0.110モル)と、ODPAの33.98g(0.110モル)及びs−BPDAの32.23g(0.110モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.9質量%、溶液粘度5.5Pa・s、チキソ比1.8、対数粘度0.68のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0087】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0088】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.02g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0089】
〔実施例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTNの10.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの6.88g(0.064モル)及びODAの29.72g(0.148モル)と、ODPAの19.73g(0.064モル)及びs−BPDAの43.67g(0.148モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.3質量%、溶液粘度6.3Pa・s、チキソ比2.5、対数粘度0.68のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0090】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0091】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.15g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、樹脂ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0092】
〔実施例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSPNの15.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの6.88g(0.064モル)及びODAの29.72g(0.148モル)と、ODPAの19.73g(0.064モル)及びs−BPDAの43.67g(0.148モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度20.0質量%、溶液粘度8.5Pa・s、チキソ比3.5、対数粘度0.68のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0093】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0094】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.00g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0095】
〔実施例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTN(コープケミカル社製、アルキルアンモニウムがインターカレートされたスメクタイト)の10.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにODAの39.23g(0.196モル)と、ODPAの60.77g(0.196モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.2質量%、溶液粘度6.0Pa・s、チキソ比2.6、対数粘度0.75の電極用バインダー樹脂組成物を得た。
【0096】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0097】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.17g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0098】
〔実施例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTNの10.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、を加え、これにBAPPの56.96g(0.139モル)と、ODPAの43.04g(0.139モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.3質量%、溶液粘度6.2Pa・s、チキソ比2.6、対数粘度0.71のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0099】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0100】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.15g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0101】
〔実施例9〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTNの10.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの26.36g(0.244モル)と、ODPAの37.80g(0.122モル)及びs−BPDAの35.85g(0.122モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度19.2質量%、溶液粘度6.3Pa・s、チキソ比2.7、対数粘度0.75のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0102】
得られたポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表1に示した。
【0103】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.17g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱することにより、活物質層の厚みが100μmの電極を好適に作成することができた。
【0104】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTNの5.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの12.93g(0.120モル)及びODAの23.93g(0.120モル)と、ODPAの37.07g(0.120モル)及びPMDAの26.07g(0.120モル)とを加え、50℃で10時間撹拌して、固形分濃度18.4質量%、溶液粘度5.0Pa・s、チキソ比1.1、対数粘度0.67のポリイミド前駆体組成物を得た。
【0105】
得られた電極用バインダー樹脂組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのバインダー樹脂フィルムを形成した。
得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0106】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.35g(イミド化後の固形分質量0.8g)と300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このとき僅かに滲み出しが見られた。
【0107】
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとクニピアF(クニミネ工業社製、モンモリロナイト)の15.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの11.85g(0.110モル)及びODAの21.94g(0.110モル)と、ODPAの33.98g(0.110モル)及びs−BPDAの32.23g(0.110モル)とを加え、50℃で10時間撹拌したが、分散不良であり、均一なポリイミド前駆体組成物を得ることができなかった。
【0108】
均一な溶液は得られなかったが、不均一な状態のポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、バインダー樹脂フィルムを形成しようとしたが、割れが生じてフィルムが得られなかった。
【0109】
また、得られた不均一な状態のポリイミド前駆体組成物4.00gと300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しが見られた。
【0110】
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとAEROSIL、R972(日本アエロジル社製、疎水性アエロジル)の15.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの11.85g(0.110モル)及びODAの21.94g(0.110モル)と、ODPAの33.98g(0.110モル)及びs−BPDAの32.23g(0.110モル)とを加え、50℃で10時間撹拌したが、分散不良であり、均一な電極用バインダー樹脂組成物を得ることができなかった。
【0111】
均一な溶液は得られなかったが、不均一な状態のポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、バインダー樹脂フィルムを形成しようとしたが、割れが生じてフィルムが得られなかった。
【0112】
また、得られた不均一な状態のポリイミド前駆体組成物4.00gと300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しが見られた。
【0113】
〔比較例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの400gとルーセンタイトSTNの40.0gを加え、25℃で4時間攪拌後、これにPPDの11.85g(0.110モル)及びODAの21.94g(0.110モル)と、ODPAの33.98g(0.110モル)及びs−BPDAの32.23g(0.110モル)とを加え、50℃で10時間撹拌したが、分散不良であり、均一なポリイミド前駆体組成物を得ることができなかった。
【0114】
均一な溶液は得られなかったが、不均一な状態のポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布しようとしたが、流動性がないため塗布ができなかった。
【0115】
また、得られたポリイミド前駆体組成物4.00gと300メッシュのケイ素粉末9.2gを乳鉢中で磨り潰すように混練し、電極合剤ペーストを調製した。得られたペーストを、ガラス棒で銅箔上に塗布した。このときダレ、滲み出しなどは見られなかった。ペーストを塗布した銅箔を基板上に固定し、窒素雰囲気下で、120℃で1時間、200℃で10分、220℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃で10分加熱を行ったが、活物質の脱落などが見られ、電極を作成することができなかった。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
以上のとおり、ポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸に起因する固形分に対して6〜30質量%の有機化した層状粘土鉱物を必須成分として加えることによって、塗布の際のダレや滲み出しを抑制して印刷性が改良されると共に一定条件下での膨潤性が改良されたポリイミド前駆体組成物を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によって、電池環境下でのバインダーの膨潤度をより小さくして、さらに優れた靱性が保持できると共に、スクリーン印刷機、ディスペンサ、スピンコーター、スリットコーター、バーコーター等による塗布の際に、電極合剤ペーストとしてダレや滲み出しなしに好適に塗布ができる、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学素子用のポリイミド前駆体組成物を提案することができる。
【0120】
本発明によって、優れた靱性が保持できると共に、着色用途(ラッカー、ペイント、印刷インキ等)、導電性塗料用途、帯電防止処理用途等による塗布の際に、塗料としてダレや滲み出しなしに好適に塗布ができる、塗料として用いることができるポリイミド前駆体組成物を提案することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸と、ポリアミック酸に起因する固形分に対して6〜30質量%の有機化した層状粘土鉱物とを必須成分とすることを特徴とするポリイミド前駆体組成物。
【請求項2】
有機化した層状粘土鉱物が、アルキルアンモニウムイオンによって有機化したスメクタイトであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項3】
ポリアミック酸が下記化学式(1)で表される繰返し単位からなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド前駆体組成物。
【化1】

化学式(1)において、Aは、下記化学式(2)〜(5)からなる群から選択されるいずれかの4価の基であり、Bは、1〜4個の芳香族環を有する2価の基である。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【請求項4】
前記化学式(1)のBが、下記化学式(6)〜(9)からなる群から選択されるいずれかの2価の基を含んで構成されることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド前駆体組成物。
【化6】

【化7】

【化8】

但し、前記化学式(8)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、カルボニル基、スルホキシル基、スルホン基、1,1’−エチリデン基、1,2−エチリデン基、2,2’−イソプロピリデン基、2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、フェニレン基、1,3−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジメチレン基、1,3−フェニレンジエチリデン基、1,4−フェニレンジエチリデン基、1,3−フェニレンジプロピリデン基、1,4−フェニレンジプロピリデン基、1,3−フェニレンジオキシ基、1,4−フェニレンジオキシ基、ビフェニレンジオキシ基、メチレンジフェノキシ基、エチリデンジフェノキシ基、プロピリデンジフェノキシ基、ヘキサフルオロプロピリデンジフェノキシ基、オキシジフェノキシ基、チオジフェノキシ基、スルホンジフェノキシ基のいずれかである。
【化9】

【請求項5】
さらに、ピリジン類化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項6】
E型粘度計で30℃における溶液粘度を測定したときに、回転速度が5rpmにおける粘度に対する回転粘度が0.5rpmにおける粘度の比[0.5rpmの溶液粘度/5rpmの溶液粘度]が1.5以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項7】
加熱処理して得られるポリイミド樹脂組成物が、25℃で24時間ジメチルカーボネートに浸漬したときの質量増加率が、浸漬前の1.0質量%未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物。
【請求項8】
電極活物質と請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物とからなる電極合剤ペースト。
【請求項9】
請求項8に記載の電極合剤ペーストを集電体上に塗布し、加熱処理して溶媒を除去するとともにイミド化反応することにより得られることを特徴とする電極。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物を含有する塗料。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して得られるポリイミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−233177(P2012−233177A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93526(P2012−93526)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】