説明

ポリイミド溶液およびその溶液から得られるポリイミド膜

【課題】耐熱性、更には有機溶媒への可溶性ポリイミド溶液および透明性、低線熱膨張性に優れたポリイミド膜を得ること、さらに、当該ポリイミドを用いて耐熱性や低線熱膨張性の要求の高い製品又は部材を提供することを目的とする。特に、本発明のポリイミド溶液を、ガラス、金属、金属酸化物及び単結晶シリコン等の無機物表面に形成する用途に適用した製品、及び部材を提供することを目的とする。
【解決手段】エステル基を含有する特定のポリイミドで上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド溶液およびその溶液から得られるポリイミド膜に関する。さらに、そのポリイミド膜を用いた電子デバイス材料、TFT基板、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルター、印刷物、光学材料、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3−Dディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、透明導電膜基板、現在ガラスが使用されている部分の代替材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶や有機EL、電子ペーパー等のディスプレイや、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されている。そこでガラス基板に変えて、薄型化、軽量化、フレキシブル化が可能なプラスチックフィルム基板が検討されている。
【0003】
これらのデバイスには基板上に様々な電子素子、例えば、薄膜トランジスタや透明電極等が形成されているが、これらの電子素子の形成には高温プロセスが必要である。しかしながら、プラスチックフィルムは、耐熱性、高温での寸法安定性が低く、製造工程において反りなどの熱変形が生じやすいため、位置あわせが困難になり、また電気素子が破壊されてしまう恐れがあった。
【0004】
更に、表示素子から発せられる光がプラスチックフィルム基板を通って出射されるような場合(例えば、ボトムエミッション型の有機ELなど)、プラスチックフィルム基板には透明性が必要となる。特に、可視光領域である400nm以下の波長領域での光透過率が高いことが要求される。
【0005】
これらデバイス作製プロセスはバッチタイプとロール・トゥ・ロールタイプに分けられる。ロール・トゥ・ロールの作製プロセスを用いる場合には、新たな設備が必要となり、さらに回転と接触に起因するいくつかの問題を克服しなければならない。一方、バッチタイプは、ガラス基板上にコーティング樹脂溶液を塗布、乾燥し、基板形成した後、剥がすというプロセスになる。そのため、現行TFT等のガラス基板用プロセス、設備を利用することができるため、コスト面で優位である。
【0006】
このような背景から、既存のバッチプロセス対応が可能で、耐熱性、高寸法安定性のコーティングフィルムが得られる、コーティング樹脂溶液の開発が強く望まれている。
【0007】
これらの要求を持たす材料としてポリイミドが検討されている。透明性の高いポリイミドを得ようとする場合、脂環式モノマーやフッ素置換基を含有する芳香族モノマーが一般に用いられている(特許文献1、特許文献2)。一方、低線膨張係数を有するフレキシブルプリント配線基板用途として、特許文献3が知られている。また、層間絶縁膜材料としてアミド基またはエステル基を含有するポリイミドが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−252373号公報
【特許文献2】特開2004−182757号公報
【特許文献3】WO2005/113647号公報
【特許文献4】特開2010−106225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1または2に記載の脂環式モノマーを用いた場合、有機溶媒への可溶性は高くなるものの、耐熱性および寸法安定性の高いポリイミドを得ることができない。フッ素置換基を含有するポリイミド、例えば、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMBという場合がある)から得られるポリイミドは、耐熱性や有機溶媒への溶解性及び透明性にも比較的優れており、液晶配向膜用や視覚補償用フィルムとしてこれまでも報告例があるが、熱膨張特性や寸法安定性についての記述はない。特許文献3に記載のポリエステルイミドは、剛直な構造のために溶媒にほとんど溶解しない。また特許文献4に記載のエステル基含有ポリイミド及びアミド基含有ポリイミドは、透明性の点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、透明性や耐熱性、更には有機溶媒への可溶性及び低線熱膨張係数に優れたポリイミドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は以下の構成を有するものである。
1 下記一般式(1)で表される構造を含有するポリイミドと有機溶媒を含有するポリイミド溶液。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中のR1〜R4は同一でも異なっていてもよく水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、トリフルオロメチル基、メトキシ基からなる群より選択される。ただし、R1〜R4全てが水素である場合は除く)
【0014】
2 R1〜R3が炭素数1〜5のアルキル基であり、R4が水素であることを特徴とする1に記載のポリイミド溶液。
3 R1、R3がアルキル基であり、R2、R4が水素であることを特徴とする1に記載のポリイミド溶液。
4 上記一般式(1)の構造を50モル%以上含有することを特徴とする1〜3のいずれかのポリイミド溶液。
5 有機溶媒が、アミド系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒から少なくとも1つ選択されることを特徴とする1〜4のいずれかのポリイミド溶液。
6 1〜5のいずれかのポリイミド溶液から得られることを特徴とするポリイミド膜。
7 6に記載のポリイミド溶液を支持体に塗工して得られることを特徴とするポリイミド膜。
8 支持体がガラス基板であることを特徴とする7に記載のポリイミド膜。
9 波長400nmの光の透過率が50%以上であることを特徴とする6〜8のいずれかのポリイミド膜。
10 線熱膨張係数が20ppm/K以下であることを特徴とする6〜9のいずれかのポリイミド膜。
11 6〜10のいずれかのポリイミド膜を含有するTFT基板。
12 6〜10のいずれかのポリイミド膜を含有するフレキシブルディスプレイ基板。
13 6〜10のいずれかの記載のポリイミド膜を含有するカラーフィルター。
14 6〜10のいずれかのポリイミド膜を含有する有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置。
15 6〜10のいずれかのポリイミド膜を含有する光学材料。
16 6〜10のいずれかのポリイミド膜を含有する電子デバイス材料。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明に係るポリイミドは、透明性、耐熱性に加えて、様々な無機材料と同等の低線熱膨張係数を有することから、耐熱性、低膨張性(寸法安定性)が必要とされる公知の全ての部材用のフィルムや塗膜として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明で製造されるポリイミド溶液は、下記式(1)で表される構造を含有するポリイミドと有機溶媒を含有する。
【0018】
【化2】

【0019】
式中のR1〜R4は同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、トリフルオロメチル基、メトキシ基からなる群より選択される。ただし、R1〜R4の全てが水素原子である場合は除く。また、高透明性かつ低熱膨張特性を得る観点から、R1〜R3がアルキル基であり、R4が水素である場合が好ましい。透明性を向上させる観点から、R1、R3がアルキル基であり、R2、R4が水素である場合が好ましい。
【0020】
R1〜R4は、これらのうち少なくとも1つがポリイミドの低熱膨張性、耐熱性および溶解性の観点から、炭素数1〜5のアルキル基、トリフルオロメチル基であることが好ましく、メチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。さらに入手性と製造コストの観点からR1〜R4の少なくとも1つがメチル基、tert−ブチル基またはイソブチル基であり、かつ、メチル基、tert−ブチル基およびイソブチル基以外のR1〜R4は水素原子であることが特に好ましい。また、R1〜R4の全ての炭素数の合計が、透明性および溶解性を付与する点で、3以上であることが好ましい。上限は耐熱性および低熱膨張性の観点から、12以下が好ましい。即ち、例えば、R1〜R3が−CH3基、R4が水素であった場合、R1〜R4の全ての炭素数の合計は3となる。R1が−CH(CH3)CH2CH3基であり、R2〜R4が水素である場合、炭素数の合計は4となる。即ち、R1、R2、R3がメチル基であり、R4が水素であるか、R1〜R4のうち1つがtert−ブチル基、イソブチル基または1,1−ジメチルプロピル基であり、残りの3つが水素であることが好ましく、R1〜R3がメチル基であり、R4が水素である場合が最も好ましく、このとき構造は、下記式(2)
【0021】
【化3】

【0022】
となる。
【0023】
上記ポリイミドは、上記式(1)で表される繰り返し単位を含有していれば、その他の骨格については特に制限されない。例えば、上記式(1)で表される骨格以外のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを使用することができる。上記式(1)で表される本発明のポリイミドの繰り返し単位は、溶解性と低線熱膨張係数のバランスにより選択されるが、ポリイミド全体の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上含んでいることが好ましく、90モル%以上含んでいることが最も好ましい。また、上記式(1)の繰り返し単位は、規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0024】
上記式(1)で表される繰り返し単位を含有しているポリイミドは、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン及び/または3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを用いて製造されることが好ましい。
【0025】
上記式(1)で表される繰り返し単位を含有しているポリイミドを製造する際に、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物と併用可能な他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4'−ビス[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4'−ビス[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0026】
また、併用可能なジアミンモノマーの具体例として、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6'−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、6,6'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ジアミノ−2−フルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,6−ジフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,4−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2−フルオロベンジジン、3−フルオロベンジジン、2,3−ジフルオロベンジジン、2,5−ジフルオロベンジジン、2,6−ジフルオロベンジジン、2,3,5−トリフルオロベンジジン、2,3,6−トリフルオロベンジジン、2,3,5,6−テトラフルオロベンジジン、2,2’−ジフルオロベンジジン、3,3’−ジフルオロベンジジン、2,3’−ジフルオロベンジジン、2,2’,3−トリフルオロベンジジン、2,3,3’−トリフルオロベンジジン、2,2’,5−トリフルオロベンジジン、2,2’,6−トリフルオロベンジジン、2,3’,5−トリフルオロベンジジン、2,3’,6,−トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’−テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’−オクタフルオロベンジジン、2−(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,−トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0027】
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸から得ることができる。このポリアミド酸は、例えば、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、テトラカルボン酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に分散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0028】
上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを、それぞれ少なくとも1種類ずつ用いて反応を行えばよい。このとき、1種のジアミンと1種のテトラカルボン酸二無水物が実質上等モルであれば、テトラカルボン酸二無水物成分1種及びジアミン成分1種のポリアミド酸になる。また、2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル数と複数のテトラカルボン酸二無水物成分全量のモル数とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃がよい。ポリアミド酸の合成反応の温度条件が80℃以下であれば、ポリアミド酸の分解が起こりにくく、ポリアミド酸の合成反応の温度条件が0℃以上であれば、重合反応の進行が遅くなりにくい。また、反応時間は10分〜30時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0029】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。また、後述するように、ポリアミド酸を合成して得られるポリアミド酸溶液を、減圧下で加熱して、有機溶媒の除去とイミド化を同時に行うことができる。そのため、上記有機溶媒としては、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。
【0030】
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0031】
ポリアミド酸の重合に使用する反応溶媒は、使用するテトラカルボン酸二無水物、ジアミン類を溶解することが可能なものが好ましく、更に生成されるポリアミド酸を溶解することが可能なものが好ましい。例えば、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、フェノール、クレゾールなどのフェノール系溶媒、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるが必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いて良い。ポリアミド酸の溶解性及び反応性を高めるために、DMF、DMAc、NMPなどのアミド系溶媒が好ましく使用される。
【0032】
次に、上記ポリアミド酸を用いて、ポリイミドを得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、ポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。
【0033】
熱的手法による脱水閉環は、ポリアミド酸を加熱して行えばよい。あるいは、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の支持体に、ポリアミド酸を流延または塗布した後、80℃〜500℃の範囲内で熱処理を行えばよい。さらに、フッ素系樹脂によるコーティング等の離型処理を施した容器に直接ポリアミド酸を入れ、減圧下で加熱乾燥することによって、ポリアミド酸の脱水閉環を行うこともできる。このような熱的手法によるポリアミド酸の脱水閉環により、ポリイミドを得ることができる。なお、上記各処理の加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分〜5時間の範囲で行うことが好ましい。また、共沸溶媒を用いた共沸法は、ポリアミド酸にトルエン・キシレン等の水と共沸する溶媒を加え、170〜200℃に昇温して、脱水閉環により生成してくる水を積極的に系外へ除去しながら、1時間〜5時間程度反応させればよい。反応終了後、アルコール等の貧溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール等で洗浄を行ったのち、乾燥を行ってポリイミドを得ることができる。
【0034】
一方、化学的手法による脱水閉環は、上記ポリアミド酸溶液に、脱水触媒とイミド化剤を添加したポリアミド酸を、反応溶媒中でイミド化を完結した後、反応溶媒中に、貧溶媒を投入し、ポリイミドを固形物として得る手法が挙げられる。
【0035】
上記にあるイミド化剤としては、3級アミンを用いることができる。3級アミンとしては複素環式の3級アミンがさらに好ましい。複素環式の3級アミンの好ましい具体例としてはピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどをあげることができる。脱水触媒としては具体的には無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が好ましい具体例として挙げることができる。
【0036】
イミド化剤や脱水触媒の添加量としては、ポリアミド酸のアミド基に対して、イミド化剤は0.5から5.0倍モル当量、さらには0.7〜2.5倍モル当量、特には0.8〜2.0倍モル当量が好ましい。また、脱水触媒は0.5から10.0倍モル当量、さらには0.7〜5.0倍モル当量、特には0.8〜3.0倍モル当量が好ましい。
【0037】
ポリアミド酸にイミド化剤や脱水触媒を加える際、溶媒に溶かさず直接加えても良いし、溶媒に溶かしたものを加えても良い。直接加える方法ではイミド化剤や脱水触媒が拡散する前に反応が急激に進行しゲルが生成することがある。好ましくはイミド化剤や脱水触媒を溶媒に溶かし、その溶液をポリアミド酸溶液に混合することが好ましい。
【0038】
上記したように、ポリアミド酸にイミド化剤や脱水触媒を添加し、反応溶媒中でイミド化を完結した後、この溶液をポリイミド溶液として使用してもよいし、反応溶媒中に、貧溶媒を投入し、固形物状態のポリイミドとしてもよい。この場合、ポリイミド、イミド化剤及び脱水触媒を含有するポリイミド溶液に貧溶媒を投入することで、固形物状態のポリイミドを単離する方法、または固形物状態で析出させる方法を用いることができる。単離されたポリイミドは、粉末状、フレーク状、種々の形態を含む固形物状態のものであり、その平均粒径は、好ましくは5mm以下であり、さらには3mm以下、特には1mm以下が好ましい。
【0039】
本発明で用いられるポリイミドの貧溶媒としては、ポリイミドを溶解しない溶媒であって、ポリイミドを溶解している溶媒として使用した有機溶媒と混和するものを用いることができる。例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。上記アルコールの中でも2−プロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが、単離後のポリイミドの安定性やイミド化率が高くなるという観点から好ましく、2−プロピルアルコールまたは水が特に好ましい。
【0040】
ポリイミド、イミド化剤及び脱水触媒を含有するポリイミド溶液を貧溶媒中に投入する際、ポリイミド溶液の固形分濃度は、撹拌が可能な粘度であるならば特に制限されないが、ポリイミドの粒径を小さくするという観点から濃度は希薄である方が好ましく、ポリイミド溶液の固形分濃度が15%以下、好ましくは10%以下の状態になるように希釈を行った後に、ポリイミド溶液に貧溶媒を投入することが好ましい。また、ポリイミド溶液の固形分濃度が5%以上であれば、貧溶媒の量が多くなりすぎることがないため好ましい。使用する貧溶媒の量はポリイミド溶液の等量以上の量を使用することが好ましく、2〜3倍量がより好ましい。ここで、固形分とは、溶媒以外の全成分であり、固形分濃度とは、全溶液中の固形分の重量%濃度を表す。
【0041】
ここで得られたポリイミドは、少量のイミド化剤や脱水触媒を含んでいるため、上記貧溶媒、特に2−プロピルアルコール等のアルコール系溶媒で数回洗浄することが好ましい。
【0042】
こうして得られたポリイミドの乾燥方法は、真空乾燥でも、熱風乾燥でもよい。ポリイミドに含まれる溶媒を完全に乾燥させるためには、真空乾燥が望ましく、乾燥温度は100〜200℃の範囲が好ましく、120〜180℃で行うことが特に好ましい。
【0043】
本発明のポリイミドの重量平均分子量は、その用途にもよるが、5,000〜500,000の範囲であることが好ましく、10,000〜300,000の範囲であることがさらに好ましく、30,000〜200,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られやすい。一方、500,000以下であると、溶解性が確保できるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られやすい。ここで用いている分子量とは、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算の値のことをいい、ポリイミドそのものの分子量でも良いし、その前駆体であるポリアミド酸の分子量でも良い。
【0044】
次に本発明のポリイミド膜について説明する。本発明におけるポリイミド膜とは、厚み5〜50μmのポリイミドの成形体であり、溶媒を含んでいても構わない。ポリイミド膜は、前駆体であるポリアミド酸またはポリイミド溶液から得ることができる。ポリアミド酸の膜を形成した後、熱イミド化により得られた膜を形成するよりも、ポリイミドを一旦溶融または有機溶媒に溶解した後に膜を形成する方が、低い線膨張係数を得るためには好ましい。
【0045】
以下に、ポリイミド溶液からポリイミド膜を得る方法について説明する。本発明のポリイミド溶液は、上述した方法で得られたポリイミドを、任意の有機溶媒に溶解することで得ることができる。使用する有機溶媒としては特に限定はされないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒の少なくとも1つが選択されることが好ましい。さらに、上記アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒の全てに溶解することが、塗工する支持体に合わせた溶媒を都度選定できるという点で特に好ましい。本発明のポリイミド溶液の濃度は5〜40重量%が好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0046】
ポリイミド溶液の粘度は塗工する厚み及び塗工環境に応じて、随時選択されるが、0.1〜50Pa・sであることが好ましく、0.5〜30Pa・sであることがさらに好ましい。ポリイミド溶液の粘度が0.1Pa・s以上の場合は、製膜に関して十分な粘度であるので、十分な膜厚精度が確保できる。ポリイミド溶液の粘度が50Pa・s以下の場合は、適度な流動性があり、膜厚精度が確保できるとともに塗工後すぐに乾燥する部分が発生せず、ゲル欠陥等の外観欠陥が発生しない。上記粘度は23℃における動粘度をE型粘度計を用いて、測定したものである。
【0047】
本発明のポリイミド膜は、支持体にポリイミド溶液を塗工し、乾燥することで製造することができる。
【0048】
上記ポリイミド溶液を塗工する支持体としては、ガラス基板、SUS等の金属基板あるいは金属ベルト、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート及びトリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム等が使用されるがこれに限定されるものではない。現行のバッチタイプのデバイス製造プロセスに適応させるためにはガラス基板を用いることが好ましい。
【0049】
ポリイミド膜製造時の乾燥温度に関しては、プロセスに合わせた条件を選択することが可能であり、特性に影響を与えない限り、特に制限されない。
【0050】
ポリイミド膜の透明性は、例えば、JIS K7105−1981に従った全光線透過率あるいはヘイズで表される。全光線透過率は85%以上、さらに好ましくは87%以上であるとよい。ヘイズは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下であるとよい。また、本発明の用途においては、全波長領域で透過率が高いことが要求される。特にポリイミドは短波長側の光を吸収しやすい傾向があり、膜自体が黄色に着色することが多い。本発明の用途に使用するためには、波長400nmでの光透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であるとさらに好ましい。400nmでの光透過率は紫外−可視分光光度計によって測定される。このように透明性を付与することで、ガラス代替用途などの透明基板として使用することができる。本発明のポリイミド膜は、特に耐熱性及び線熱膨張係数に優れていることから、ガラス代替用途などの透明基板として、好適に使用することができる。
【0051】
このようにして製造される本発明のポリイミド膜は、低熱膨張特性と加熱前後の寸法安定性を有することを特徴としており、例えば熱機械分析(TMA)によりこれらの値を測定する場合、10mm×3mmのフィルム試料に加重を3.0gとし、10℃/minの昇温速度で測定したときに、100〜200℃の範囲での平均線熱膨張係数が20ppm/K以下、さらに好ましくは15ppm/K以下であるポリイミド膜を得ることができる。
【0052】
ガラス転移温度は、耐熱性の観点からは高ければ高いほど良いが、示差走査熱量分析(DSC)または動的粘弾性分析(DMA)において、昇温速度10℃/minの条件で測定したときのガラス転移温度が、200℃以上であることが好ましく、熱処理温度を高くできるという点において、更に好ましくは250℃以上であるとよい。
【0053】
本発明に係るポリイミドは、そのまま製品や部材を作製するためのコーティングや成形プロセスに供してもよいが、フィルム状に成形されたポリイミドにさらにコーティング等の処理を行い積層物として用いることが出来る。コーティングあるいは成形プロセスに供するために、該ポリイミドを必要に応じて溶媒に溶解又は分散させ、さらに、光又は熱硬化性成分、本発明に係るポリイミド以外の非重合性バインダー樹脂、その他の成分を配合して、ポリイミド組成物を調製してもよい。
【0054】
本発明に係るポリイミド組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0055】
本発明に係るポリイミド組成物は、式(1)で表されるポリイミドを、組成物の固形分全体に対し、通常、60〜99.9重量%の範囲内で含有させる。なお、99.9重量%とは実質的に全ての意味である。また、その他の任意成分の配合割合は、ポリイミド組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜95重量%の範囲が好ましい。0.1重量%以上であると、添加物を添加した効果が発揮されやすく、95重量%以下であると、組成物の特性が最終生成物に反映されやすい。なお、ポリイミド組成物の固形分とは溶媒以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0056】
本発明に係るポリイミド膜は、その表面に金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成していても良い。これら無機薄膜の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えばCVD法、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法等が挙げられる。
【0057】
本発明に係るポリイミド膜は、耐熱性、絶縁性等のポリイミド本来の特性に加えて、高い寸法安定性及び高い有機溶媒への溶解性を有することから、これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、光学フィルム、液晶表示装置、有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置、3−Dディスプレイ、タッチパネル、透明導電膜基板あるいは太陽電池に使用されることが好ましく、さらには現在ガラスが使用されている部分の代替材料とすることがさらに好ましい。即ち、本発明に係る上記一般式(1)で表される構造を含有するポリイミド、好ましくはR1〜R3がメチル基であり、R4が水素であり、トリフルオロメチル基が2,2’位にある一般式(2)
【0058】
【化4】

【0059】
で表されるポリイミドを含有するポリイミド膜は、特に、TFT基板、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルター、有機EL,電子ペーパー等の画像表示装置、光学材料、電子デバイス材料として好適である。
【実施例】
【0060】
(評価方法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
(1)ポリイミドの分子量
表1の条件にて重量平均分子量(Mw)を求めた。評価結果を表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
(2)ポリイミドの有機溶媒への溶解性試験
ポリイミド0.5gに対し、表2に記載の有機溶媒9.5g(固形分濃度5%)をサンプル管に入れ、マグネチックスターラーで撹拌した。室温で完全に溶解したものを◎、加熱して溶解したものを○、一部溶け残りがあるものを△、不溶なものを×とした。評価結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
(3)ポリイミド膜の線熱膨張係数
100〜200℃の平均線膨張係数の測定は、Bruker−AXS製TMA4000を用いて(サンプルサイズ 幅5mm、長さ15mm)、荷重を膜厚(μm)×0.5gとして、5℃/minで150℃まで一旦昇温(1回目の昇温)させた後、20℃まで冷却し、さらに5℃/minで昇温(2回目の昇温)させて2回目の昇温時のTMA曲線より計算した。
(4)ポリイミド膜のガラス転移温度
Bruker−AXS製TMA4000用い、測定長(測定治具間隔)を15mmとして、正弦的に荷重(振幅15g)をかけ動的粘弾性測定を行い、損失エネルギーが最大となる温度をガラス転移温度とした。
(5)ポリイミド膜の全光線透過率
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105−1981記載の方法により測定した。
(6)ポリイミド膜のヘイズ
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105−1981記載の方法により測定した。
(7)ポリイミド膜の透過率
日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V−650)を用いて、ポリイミド膜の200−800nmにおける光透過率を測定し、400nmの波長における光透過率を指標として用いた。また、透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)も求めた。
(8)エステル基含有テトラカルボン酸二無水物のFT−IRスペクトル測定
日本分光製FT−IR5300を用いて、積算回数16回4000cm-1〜400cm-1の範囲で測定した。
(9)エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトル測定
JOEL製JNM−ECP400を用いて、試料5mg程度を測定管に入れ、TMS入り重水素化溶媒(DMSO−d6)を測定管に高さ4cmになるように加えて調整した測定試料を400MHzにて測定を実施した。
(10)エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の融点
Bruker−AXS社製DSC3100によりJIS K−7121に記載の方法にて測定した。
【0065】
(合成例1)
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成(下記式(3))>
【0066】
【化5】

【0067】
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、トリメリット酸無水物クロライド4.6g(22.0mmol)を入れ、溶液濃度が56.6wt%となるようにテトラヒドロフラン(以下、THF)4.0mlを加えて溶解させ、溶液Aを調製した。更に別の容器にトリメチルハイドロキノン1.5g(10.0mmol)を溶液濃度が30.0wt%となるようにTHFを4.0ml加えて溶解させ、脱酸剤としてピリジン3.2ml(40.0mmol)を加えて溶液Bを調製した。
【0068】
氷浴中で、溶液Aに攪拌下、溶液Bをゆっくりと滴下して3時間攪拌し、その後室温で18時間攪拌した。析出物を濾別し、得られた沈殿をTHF10mlで洗浄し、その後さらに、イオン交換水で塩化物イオンが除去されるまで洗浄した。塩化物イオンの除去は、洗浄ろ液に1wt%硝酸銀水溶液を数滴滴下することで確認した。洗浄後の沈殿を150℃で12時間真空乾燥して収量2.7g収率53.1%で白色の生成物を得た。FT−IRにて、1857cm-1、1781cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1734cm-1(エステル基C=O伸縮振動)のピーク、また、1H−NMRで、δ2.12ppm(m、CH3、9H)、δ8.70ppm(m、フタルイミド上、5および6位CaromH、4H)、δ8.31ppm(dd、フタルイミド上、3位CaromH、2H)、δ7.22ppm(s、中央フェニル上、CaromH、1H)のピークを確認することができたことから、目的物である上記式(3)に示すエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が得られたことを確認した。この化合物の融点をDSCで測定したところ、245℃であった。
【0069】
(合成例2)
<ポリイミドの重合(下記式(2))>
【0070】
【化12】

【0071】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB11.9gを入れ、重合用溶媒として脱水したN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMF)170.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例1で合成した式(3)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物18.1gを加え、室温で7時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。
【0072】
上記溶液にDMFを加え固形分濃度を10重量%とし、イミド化触媒としてピリジン5.8gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.1gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で100℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0073】
(合成例3)
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成(下記式(4))>
【0074】
【化6】

【0075】
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、トリメリット酸無水物クロライド8.8g(42.0mmol)を入れ、溶液濃度が33.2wt%となるようにTHF20.0mlを加えて溶解させ、溶液Aを調製した。更に別の容器に2,5−ジtert−ブチルハイドロキノン4.3g(19.6mmol)を溶液濃度が24.1wt%となるようにTHFを15.4ml加えて溶解させ、脱酸剤としてピリジン4.2ml(52.0mmol)を加えて溶液Bを調製した。
【0076】
氷浴中で、溶液Aに攪拌下、溶液Bをゆっくりと滴下して3時間攪拌し、その後室温で16時間攪拌した。析出物を濾別し、得られた沈殿をTHF10mlで洗浄し、その後さらに、イオン交換水で塩化物イオンが除去されるまで洗浄した。塩化物イオンの除去は、洗浄ろ液に1wt%硝酸銀水溶液を数滴滴下することで確認した。洗浄後の沈殿を160℃で12時間真空乾燥して収量4.8g収率43.0%で白色の生成物を得た。この粗結晶をトルエン/γ―グチロラクトン=20/1(重量比)溶液より再結晶し、180℃で12時間真空乾燥し、精製物を得た。FT−IRにて、1828cm-1、1780cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1747cm-1(エステル基C=O伸縮振動)のピーク、また、1H−NMRで、δ1.26ppm(s、tert−Bu、18H)、δ7.41ppm(s、中央フェニル上、CaromH、2H)δ8.33ppm(m、フタルイミド上、5位CaromH、2H)、δ8.61ppm(dd、フタルイミド上、3位CaromH、2H)δ8.70ppm(m、フタルイミド上、6位CaromH、2H)のピークを確認することができたことから、目的物である上記式(4)に示すエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が得られたことを確認した。
【0077】
(合成例4)
<ポリイミドの重合(下記式(10))>
【0078】
【化13】

【0079】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB9.7gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMF170.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例3で合成した式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物20.3gを加え、室温で7時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。
【0080】
上記溶液にDMFを加え固形分濃度を10重量%とし、イミド化触媒としてピリジン4.8gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸7.5gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で100℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0081】
(合成例5)
<ポリイミドの重合(下記式(11))>
【0082】
【化14】

【0083】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB12.0gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc70.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例3で合成した式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物15.0gを加え、さらに式(5)の構造のナフタレンテトラカルボン酸二無水物3.0gを加え、室温で72時間攪拌後、DMAc87.5gを添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。
【0084】
【化7】

【0085】
なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して16重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:70mol%、式(5)の構造のナフタレンテトラカルボン酸二無水物:30mol%となっていた。
【0086】
上記溶液にイミド化触媒としてピリジン6.0gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.2gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で100℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0087】
(合成例6)
<ポリイミドの重合(下記式(12))>
【0088】
【化15】

【0089】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB11.2gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc70.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例3で合成した式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物14.0gを加え、さらに式(6)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物4.8gを加え、室温で72時間攪拌後、DMAc84.0gを添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。
【0090】
【化8】

【0091】
なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して16.3重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:70mol%、式(6)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:30mol%となっていた。
【0092】
上記溶液にイミド化触媒としてピリジン5.5gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸8.6gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で100℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0093】
(合成例7)
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成(下記式(7))>
【0094】
【化9】

【0095】
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、トリメリット酸無水物クロライド7.4g(35.1mmol)を入れ、溶液濃度が45.0wt%となるようにTHF10.0mlを加えて溶解させ、溶液Aを調製した。更に別の容器にtert−ブチルハイドロキノン2.6g(15.6mmol)を溶液濃度が46.0wt%となるようにTHFを3.5ml加えて溶解させ、脱酸剤としてピリジン3.4ml(42.0mmol)を加えて溶液Bを調製した。
【0096】
氷浴中で、溶液Aに攪拌下、溶液Bを約10分かけてゆっくりと滴下し、その後室温で19時間攪拌した。析出物を濾別し、得られた沈殿をTHF10mlで洗浄し、その後さらに、イオン交換水で塩化物イオンが除去されるまで洗浄した。塩化物イオンの除去は、洗浄ろ液に1wt%硝酸銀水溶液を数滴滴下することで確認した。洗浄後の沈殿を100℃で2時間、さらに160℃で12時間真空乾燥して収量5.3g収率66.0%で白色の生成物を得た。この粗結晶に無水酢酸20mlを加えて、加熱・冷却することで再結晶し、析出した結晶をろ別した後、無水酢酸およびトルエンで洗浄してから、80℃で2時間、さらに160℃で12時間真空乾燥し、精製物を得た。再結晶収率は47.9%であり、トータルでの収率は31.6%であった。FT−IRにて、1861cm-1、1778cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1740cm-1(エステル基C=O伸縮振動)のピークを確認することができたことから、目的物である上記式(7)に示すエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が得られたことを確認した。この化合物の融点をDSCで測定したところ、224℃であった。
【0097】
(合成例8)
<ポリイミドの重合(下記式(13))>
【0098】
【化16】

【0099】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB11.5gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc214.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例7で合成した式(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物18.5gを加え、室温で7時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して12.3重量%となっていた。
【0100】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を7.6重量%とし、イミド化触媒としてピリジン5.7gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸8.8gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0101】
(合成例9)
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成(下記式(8))>
【0102】
【化10】

【0103】
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、トリメリット酸無水物クロライド6.3g(30.0mmol)を入れ、溶液濃度が45.3wt%となるようにTHF8.6mlを加えて溶解させ、溶液Aを調製した。更に別の容器にジアミルハイドロキノン2.5g(10.0mmol)を溶液濃度が30.0wt%となるようにTHFを6.6ml加えて溶解させ、脱酸剤としてピリジン4.9ml(60.0mmol)を加えて溶液Bを調製した。
【0104】
氷浴中で、溶液Aに攪拌下、溶液Bを約10分かけてゆっくりと滴下し、その後室温で18時間攪拌した。析出物を濾別し、得られた沈殿をTHF、希塩酸溶液洗浄し、その後さらに、イオン交換水で塩化物イオンが除去されるまで洗浄した。塩化物イオンの除去は、洗浄ろ液に1wt%硝酸銀水溶液を数滴滴下することで確認した。洗浄後の沈殿を80℃で2時間、さらに160℃で12時間真空乾燥して収量3.9g収率65.6%で白色の生成物を得た。この粗結晶に1gあたり10mlの1,4−ジオキサンを加えて、加熱・冷却することで再結晶し、この操作を3回繰り返した。析出した結晶をろ別した後、80℃で2時間、さらに160℃で12時間真空乾燥し、精製物を得た。再結晶収率は56.4%であり、トータルでの収率は40.0%であった。FT−IRにて、1865cm-1、1783cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動)、1743cm-1(エステル基C=O伸縮振動)のピークを確認することができたことから、目的物である上記式(8)に示すエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が得られたことを確認した。この化合物の融点をDSCで測定したところ、269.2℃であった。
【0105】
(合成例10)
<ポリイミドの重合(下記式(14))>
【0106】
【化17】

【0107】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB10.3gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc70.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例9で合成した式(8)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物19.3gを加え、室温で142時間攪拌した後、DMAcを153.4g添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して11.7重量%となっていた。
【0108】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を4.9重量%とし、イミド化触媒としてピリジン5.2gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸8.2gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0109】
(合成例11)
<ポリイミドの重合(下記式(15))>
【0110】
【化18】

【0111】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB11.9gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc120.0gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例9で合成した式(8)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物15.6gを加え、さらに式(5)の構造のナフタレンテトラカルボン酸二無水物を3.0g加えて、室温で48時間攪拌し、適当な粘度となるよう希釈した後、DMAcを54.2g添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して14.9重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(8)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:70mol%、式(5)の構造のナフタレンテトラカルボン酸二無水物:30mol%となっていた。
【0112】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を5.5重量%とし、イミド化触媒としてピリジン5.9gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.1gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0113】
(合成例12)
<ポリイミドの重合(下記式(16))>
【0114】
【化19】

【0115】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB12.2gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc76.8gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例7で合成した式(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物9.8gを加え、さらに式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を10.9g加えて、室温72時間攪拌した後、DMAcを53.2g添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して20.2重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:50mol%、式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:50mol%となっていた。
【0116】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を6.3重量%とし、イミド化触媒としてピリジン6.0gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.3gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0117】
(合成例13)
<ポリイミドの重合(下記式(17))>
【0118】
【化20】

【0119】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB13.1gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc80.7gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例7で合成した式(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物16.8gを加え、さらに式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を4.7g加えて、室温48時間攪拌した後、DMAcを56.8g添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して20.1重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:80mol%、式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:20mol%となっていた。
【0120】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を6.2重量%とし、イミド化触媒としてピリジン6.4gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.9gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0121】
(合成例14)
<ポリイミドの重合(下記式(18))>
【0122】
【化21】

【0123】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB12.6gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc78.6gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例7で合成した式(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物13.2gを加え、さらに合成例3で合成した式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を7.9g加えて、室温96時間攪拌した後、DMAcを258.0g添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して9.1重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(7)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:65mol%、式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:35mol%となっていた。
【0124】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を6.8重量%とし、イミド化触媒としてピリジン6.2gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.6gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0125】
(合成例15)
<ポリイミドの重合(下記式(19))>
【0126】
【化22】

【0127】
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB12.4gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMAc70.9gを仕込み攪拌した後、この溶液に、合成例3で合成した式(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物15.5gを加え、ピロメリット酸二無水物を2.5g加えて、室温で92時間攪拌した後、DMAcを120.6g添加して希釈し、ポリアミド酸を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して13.7重量%となっていた。各モノマーの仕込み比は、TFMBを100mol%としたとき、(4)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物:70mol%、ピロメリット酸二無水物:30mol%となっていた。
【0128】
上記溶液にDMAcを加え固形分濃度を6.2重量%とし、イミド化触媒としてピリジン6.1gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.5gを添加し室温で24時間攪拌した。2Lの蒸留水/エタノール=1/1(体積比)混合溶媒にポリイミド溶液を滴下・析出させ、粉末状のポリイミドを得た。得られた粉末状のポリイミドを蒸留水で3回洗浄した後、真空乾燥装置で150℃12時間真空乾燥して、ポリイミドとして取り出した。得られたポリイミドの評価結果を表2に示す。
【0129】
(実施例1)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてDMAcを用い、合成例2にて合成したポリイミドが7.3重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間、250℃で1時間乾燥させ、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0130】
(実施例2)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例2にて合成したポリイミドが7重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間、250℃で1時間乾燥させ、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0131】
(実施例3)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてDMAcを用い、合成例4にて合成したポリイミドが15.0重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間、250℃で1時間乾燥させ、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0132】
(実施例4)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例5にて合成したポリイミドが8.2重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間、280℃で1時間乾燥させ、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0133】
(実施例5)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例6にて合成したポリイミドが8.3重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間、220℃で1時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに220℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0134】
(実施例6)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてDMAcを用い、合成例8にて合成したポリイミドが10.7重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で3時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに220℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0135】
(実施例7)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてDMAcを用い、合成例10にて合成したポリイミドが10.6重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに260℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0136】
(実施例8)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例11にて合成したポリイミドが9.1重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに260℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0137】
(実施例9)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例12にて合成したポリイミドが13.8重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに230℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0138】
(実施例10)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてDMAcを用い、合成例13にて合成したポリイミドが15.5重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに220℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0139】
(実施例11)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例14にて合成したポリイミドが7.5重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で2時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに230℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0140】
(実施例12)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
溶媒としてシクロペンタノンを用い、合成例15にて合成したポリイミドが7.0重量%の濃度で含有されているポリイミド溶液を作製した。このポリイミド溶液をバーコーターでガラス板上に塗布し、60℃で3時間、250℃で1時間乾燥させ、ガラスから剥離した後、さらに250℃で1時間熱処理し、ポリイミド膜を得た。ポリイミド膜の評価結果を表3に示す。
【0141】
(合成例16)
ポリテトラフルオロエチレン製のシール栓に4枚羽根撹拌翼を具備したステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB9.7gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMF170gを仕込み攪拌した後、この溶液に、下記式(9)に示すアミド基含有テトラカルボン酸二無水物20.2gを加え、室温で攪拌し、ポリアミド−アミド酸を得た。
【0142】
【化11】

【0143】
なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。24時間撹拌後に、イミド化触媒としてピリジン4.8gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸7.4gを添加して攪拌し、100℃で4時間攪拌したのち、室温まで冷却した。冷却した反応溶液に、DMFを88g添加し撹拌したのち、その溶液を2Lセパラブルフラスコに移し、その溶液に600gのイソプロパノールを2〜3滴/秒となる速度で滴下して、目的とする生成物を沈殿させた。その後、桐山ロートにより、吸引ろ過し、300gのイソプロパノールにて洗浄した。この洗浄を2回繰り返し、桐山ロートにより、吸引ろ過し100℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥させることで、ポリイミドを得た。
【0144】
(比較例1)
<ポリイミド溶液およびのポリイミド膜の作製>
合成例16で得られたポリイミドをDMAcに溶解してポリイミドが7重量%含有されているポリイミド溶液を作製し、ガラス板上に塗工した後、60℃で10分間乾燥させ、さらに150℃で60分間、300℃で60分間乾燥させた。その後ガラス板からフィルムを剥がし、フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0145】
(比較例2)
ステンレス製撹拌棒を備えた撹拌機、窒素導入管を備えた、500mLのガラス製セパラブルフラスコに、TFMB12.3gを入れ、重合用溶媒として脱水したDMF170gを仕込み攪拌した後、この溶液に、式(6)の構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物17.7gを加え、室温で7時間攪拌し、ポリアミド酸を得た。
【0146】
なお、この反応溶液におけるジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して15重量%となっていた。
【0147】
上記溶液にDMFを加え固形分濃度を10重量%とし、イミド化触媒としてピリジン6.1gを添加して、完全に分散させた。分散させた溶液中に無水酢酸9.4gを添加したが、1時間後にゲル化してしまったため、これ以降の操作は実施しなかった。
【0148】
【表3】

【0149】
実施例1〜12のポリイミドは、比較例1のポリイミドと比べて、400nmの波長における光透過率が高いことから透明性に優れるとともに、無機材料と同等の低線熱膨張係数を有していた。また、実施例1〜12のポリイミドは、比較例2のポリイミドと比べて、溶媒への溶解性に優れており、ポリイミド溶液として供給することが可能であった。
【0150】
上記式(1)において、R1〜R3が炭素数1のアルキル基であり、R4が水素原子である構造のみを含有する実施例1のポリイミドは400nmの波長における透過率が60%以上かつ線熱膨張係数が15ppm/K以下であり、高透明性かつ低熱膨張特性を有していた。
【0151】
上記式(1)において、R1、R3が炭素数3以上のアルキル基であり、R2,R4が水素原子である構造のみを含有する実施例3および7のポリイミドは400nmの波長における光透過率が70%以上であり、非常に透明性に優れていた。
【0152】
また、ナフタレン構造テトラカルボン酸二無水物やピロメリット酸二無水物を上記式(1)の構造のポリイミドに共重合した実施例4、8および12に示すポリイミドは、線熱膨張係数が16ppm/K以下であり、低熱膨張特性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を含有するポリイミドと有機溶媒を含有するポリイミド溶液。
【化1】

(式中のR1〜R4は同一でも異なっていてもよく水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基、トリフルオロメチル基、メトキシ基からなる群より選択される。ただし、R1〜R4全てが水素である場合は除く)
【請求項2】
前記R1〜R3が炭素数1〜5のアルキル基であり、前記R4が水素であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド溶液。
【請求項3】
前記R1、R3がアルキル基であり、前記R2、R4が水素であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド溶液。
【請求項4】
前記一般式(1)の構造を50モル%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項5】
前記有機溶媒が、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒から少なくとも1つ選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリイミド溶液から得られることを特徴とするポリイミド膜。
【請求項7】
前記ポリイミド溶液を支持体に塗工して得られることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド膜。
【請求項8】
前記支持体がガラス基板であることを特徴とする請求項7に記載のポリイミド膜。
【請求項9】
波長400nmの光透過率が50%以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のポリイミド膜。
【請求項10】
線熱膨張係数が20ppm/K以下であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリイミド膜。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリイミド膜を含有するTFT基板。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリイミド膜を含有するフレキシブルディスプレイ基板。
【請求項13】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリイミド膜を含有するカラーフィルター。
【請求項14】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリイミド膜を含有する有機EL及び電子ペーパー等の画像表示装置。
【請求項15】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリイミド膜を含有する光学材料。
【請求項16】
請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリイミド膜を含有する電子デバイス材料。

【公開番号】特開2013−82876(P2013−82876A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−59201(P2012−59201)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】