説明

ポリイミド系非対称中空糸膜

【課題】気体透過性に優れると共に、特に二酸化炭素(CO2 )とメタン(CH4 )との分離性に優れたポリイミド系非対称中空糸膜を提供すること。
【解決手段】直鎖ポリアミド酸と多分岐ポリアミド酸の混合溶液を用いて、中空糸紡糸装置にて中空糸状構造体を作製し、かかる中空糸状構造体に対して加熱処理を施して、直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸をイミド化せしめることにより、目的とするポリイミド系非対称中空糸膜を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド系非対称中空糸膜に係り、特に、気体分離(例えば二酸化炭素とメタンの分離)に有利に用いられる中空糸膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子膜を気体分離膜として用いて、混合気体から特定の気体を分離したり、精製することが積極的に検討されている。例えば、空気から酸素を積極的に透過させて、酸素富化空気を製造し、これを医療や燃料システム等の分野で活用する試みが為されている。そして、これらの用途に用いられる気体分離膜に対しては、特定の気体に対する気体透過性及び気体選択性が、何れも大きいことが要求されている。また、気体分離膜の使用環境によっては、高耐熱性、耐薬品性、高強度等の特性も要求されている。
【0003】
そのような状況の下、種々の中空糸膜が提案されているところ、そのような中空糸膜の一種として、従来より、単一のポリマー材料からなる中空糸膜であって、その外(又は内)表面の緻密層がこれに連続する多孔質層により支持されて一体構造を呈する、所謂、非対称構造の中空糸膜(非対称中空糸膜)が広く知られている。具体的には、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから合成される直鎖ポリイミドを含む液状材料(紡糸液)を用いて、非対称中空糸膜を製造する方法が、特公平6−36854号公報(特許文献1)や特開平5−68859号公報(特許文献2)等に開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2等に開示されている如き、従来のポリイミドからなる非対称中空糸膜にあっては、十分な気体分離性(特に、二酸化炭素とメタンとの分離性)を発揮するとは言い難いものであった。
【0005】
一方、特許第4249138号(特許文献3)においては、異なる特性を有する二種類のポリマーの混合物(ポリマーブレンド)からなる気体分離膜のうち、特定のポリマーの組み合わせからなるものにあっては、通常のポリマーブレンドの理論式から想定される気体分離比(理論値)よりも高い値を示すことが提示されている。
【0006】
しかしながら、そこにおいて示されている、気体分離比の理論値と実測値との差は、小さいものであり、優位な差とは言い難いものである。また、ポリマーブレンドからなる気体分離膜の気体透過速度は、ポリマーブレンド中の気体透過速度に劣るポリマーのブレンド比に大きく依存するものであり、気体透過速度と気体分離比との関係は、従来の気体分離膜に内在するトレードオフの関係性を大きく打破するものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−36854号公報
【特許文献2】特開平5−68859号公報
【特許文献3】特許第4249138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、優れた気体透過性と共に、優れた気体分離特性、特に、二酸化炭素(CO2 )とメタン(CH4 )の分離性を兼ね備えたポリイミド系非対称中空糸膜を提供することにある。また、本発明は、上記のポリイミド系非対称中空糸膜を有利に製造することが出来る方法を提供することについても、解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、かかる課題を解決すべく、直鎖ポリイミドと多分岐ポリイミドとのポリマーブレンドからなるポリイミド系非対称中空糸膜を、その要旨とするものである。
【0010】
なお、本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜において、好ましい第一の態様は、好ましくは、前記直鎖ポリイミドが、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物と芳香族ジアミンとを用いて得られるものである。
【0011】
また、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜において、好ましい第二の態様は、前記芳香族ジアミンが、少なくとも3,3’−ジヒドロキシベンジジンを含む二種以上の芳香族ジアミンである。
【0012】
さらに、本発明のポリイミド系非対称中空糸膜において、好ましい第三の態様は、前記ポリマーブレンドの100重量部が、前記直鎖ポリイミドの60〜90重量部と、前記多分岐ポリイミドの10〜40重量部とから構成されている。
【0013】
一方、本発明は、直鎖ポリイミドと多分岐ポリイミドとのポリマーブレンドからなるポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法にして、前記直鎖ポリイミドの前駆体である直鎖ポリアミド酸と、前記多分岐ポリイミドの前駆体である多分岐ポリアミド酸との混合溶液を用いて、それら直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸の混合物からなる中空糸状構造体を中空糸紡糸装置にて作製し、該中空糸状構造体に対して加熱処理を施すことを特徴とするポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法をも、その要旨とするものである。
【0014】
ここで、本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第一の態様は、前記加熱処理の前に、前記中空糸状構造体に対して乾燥処理が施される。
【0015】
また、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第二の態様は、前記直鎖ポリアミド酸が、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物と芳香族ジアミンとを用いて得られるものである。
【0016】
さらに、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第三の態様は、前記芳香族ジアミンが、少なくとも3,3’−ジヒドロキシベンジジンを含む二種以上の芳香族ジアミンである。
【0017】
加えて、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第四の態様は、前記ポリマーブレンドの100重量部が、前記直鎖ポリイミドの60〜90重量部と、前記多分岐ポリイミドの10〜40重量部とから構成されている。
【0018】
また、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第五の態様は、前記加熱処理が100〜500℃の温度にて実施される。
【0019】
さらに、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第六の態様は、前記乾燥処理が10〜100℃の温度にて5分〜72時間、実施される。
【0020】
そして、本発明に係るポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法において、好ましい第七の態様は、前記混合溶液の粘度が1000〜1000000cPである。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜は、単一のポリイミドからなるものではなく、二種類の異なるポリイミド(直鎖ポリイミド及び多分岐ポリイミド)のポリマーブレンドにて構成されているところから、優れた気体透過性と共に、二酸化炭素とメタン(CH4 )の分離性とを兼ね備えたものとなっているのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例に係るポリイミド系非対称中空糸膜の断面を撮影したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ところで、本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜を製造するに際しては、有利には、先ず、直鎖ポリイミドの前駆体である直鎖ポリアミド酸、及び、多分岐ポリイミドの前駆体である多分岐ポリアミド酸を調製する。尚、以下の記載において、直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸を「ポリアミド酸」と総称する場合もある。
【0024】
直鎖ポリアミド酸は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応せしめることにより、合成される。本発明において用いられる芳香族テトラカルボン酸二水物及び芳香族ジアミンとしては、従来より公知のものであれば、何れをも用いることが可能であり、それら公知のものの中から、目的とするポリイミド系非対称中空糸膜に応じた一種又は二種以上のものが、適宜に選択されて、用いられることとなる。
【0025】
具体的には、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(OPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)、又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)等の化合物を、例示することが出来る。これらの中でも、特に、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)が有利に用いられる。
【0026】
また、芳香族ジアミンとしては、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニール、ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−アミノフェノキシフェニル]スルホン、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン又は9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン等の他、芳香族ヒドロキシジアミンを例示することが出来る。芳香族ヒドロキシジアミンとしては、3,3’−ジヒドロキシベンジジン(HAB)、3,4’−ジアミノ−3’,4−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルオキシド、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)メタン、2,4−ジアミノフェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の化合物を例示することが出来る。本発明においては、特に、芳香族ヒドロキシジアミンである3,3’−ジヒドロキシベンジジン(HAB)を用いること、又は、HABと、芳香族ヒドロキシジアミン以外の芳香族ジアミン、特に、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)とを併用することが好ましい。
【0027】
一方、多分岐ポリアミド酸は、芳香族テトラカルボン酸二水物と芳香族トリアミンとを反応せしめることにより、合成される。かかる合成に際して用いられる芳香族テトラカルボン酸二水物及び芳香族トリアミンにあっても、従来より公知のものであれば、何れをも用いることが可能であり、それら公知のものの中から、目的とする気体分離膜に応じた一種又は二種以上のものが、適宜に選択されて、用いられることとなる。
【0028】
本発明において用いられる芳香族トリアミンとしては、分子内に3個のアミノ基を有する芳香族化合物であれば、従来より公知のものを何れをも用いることが出来る。具体的には、1,3,5−トリアミノベンゼン、トリス(3−アミノフェニル)アミン、トリス(4−アミノフェニル)アミン、トリス(3−アミノフェニル)ベンゼン、トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン[TAPOB]、1,3,5−トリス(アミノフェニル)ベンゼン[TAPB]又は1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)トリアジン等を挙げることが出来る。また、本発明においては、下記一般式で表される所定の非対称構造を有する芳香族トリアミンを用いることも可能である。具体的には、2,3’,4−トリアミノビフェニル、2,4,4’−トリアミノビフェニル、3,3’,4−トリアミノビフェニル、3,3’,5−トリアミノビフェニル、3,4,4’−トリアミノビフェニル、3,4’,5−トリアミノビフェニル、2,3’,4−トリアミノジフェニルエーテル、2,4,4’−トリアミノジフェニルエーテル、3,3’,4−トリアミノジフェニルエーテル、3,3’,5−トリアミノジフェニルエーテル、3,4,4’−トリアミノジフェニルエーテル、3,4’,5−トリアミノジフェニルエーテル、2,3’,4−トリアミノベンゾフェノン、2,4,4’−トリアミノベンゾフェノン、3,3’,4−トリアミノベンゾフェノン、3,3’,5−トリアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノベンゾフェノン、3,4’,5−トリアミノベンゾフェノン、2,3’,4−トリアミノジフェニルスルフィド、2,4,4’−トリアミノジフェニルスルフィド、3,3’,4−トリアミノジフェニルスルフィド、3,3’,5−トリアミノジフェニルスルフィド、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルフィド、3,4’,5−トリアミノジフェニルスルフィド、2,3’,4−トリアミノジフェニルスルフォン、2,4,4’−トリアミノジフェニルスルフォン、3,3’,4−トリアミノジフェニルスルフォン、3,3’,5−トリアミノジフェニルスルフォン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルフォン、3,4’,5−トリアミノジフェニルスルフォン、2,3’,4−トリアミノジフェニルメタン、2,4,4’−トリアミノジフェニルメタン、3,3’,4−トリアミノジフェニルメタン、3,3’,5−トリアミノジフェニルメタン、3,4,4’−トリアミノジフェニルメタン、3,4’,5−トリアミノジフェニルメタン、2−(2,4−ジアミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)プロパン、2−(2,4−ジアミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3,4−ジアミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3,5−ジアミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3,4−ジアミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3,5−ジアミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(2,4−ジアミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(2,4−ジアミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3,4−ジアミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3,5−ジアミノフェニル)−2−(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3,4−ジアミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3,5−ジアミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を、挙げることが出来る。
【化1】

【0029】
多分岐ポリアミド酸を合成する際に用いられる芳香族テトラカルボン酸二水物としては、上述した、直鎖ポリアミド酸を合成する際に用いられ得るものと、同様のものを用いることが可能である。また、本発明において、多分岐ポリアミド酸を合成する際に用いられる芳香族テトラカルボン酸二水物としては、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)が特に好ましい。
【0030】
なお、本発明において、多分岐ポリアミド酸を合成するに際しては、上述した芳香族トリアミンと共に、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン、或いは、分子内にアミノ基を4個以上有する芳香族化合物を、芳香族トリアミンと共重合せしめた状態にて、或いは、ポリアミド酸合成時に芳香族トリアミン等と同時に添加することにより、使用することも可能である。芳香族ジアミンとしては、直鎖ポリアミド酸の合成の際に用いられ得るものと同様のものを挙げることが出来、また、シロキサンジアミンとしては、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(アミノフェノキシ)ジメチルシラン又はビス(3−アミノプロピル)ポリメチルシロキサン等が挙げられる。更に、分子内にアミノ基を4個以上有する芳香族化合物としては、トリス(3,5−ジアミノフェニル)ベンゼン、トリス(3,5−ジアミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンジジン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルケトン又は3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0031】
また、上述した芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族トリアミン、芳香族ジアミン、及び分子内にアミノ基を4個以上有する芳香族化合物の各化合物におけるベンゼン環に、炭化水素基(アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン基、アルコキシ基、アセチル基、スルホン酸基等の置換基を有する誘導体であっても、本発明においては、多分岐ポリアミド酸を合成する際に用いることが可能である。
【0032】
そのような芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族トリアミン(及び、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン、或いは分子内にアミノ基を4個以上有する芳香族化合物。以下、適宜アミン成分という。)との反応は、比較的低温、具体的には100℃以下、好ましくは50℃以下の温度下において実施することが好ましい。より具体的には、多分岐ポリアミド酸を合成する際の温度条件の下限は、使用する溶媒(後述する、溶媒α)の融点以上であることが好ましい。かかる温度(融点)より低い温度の場合、溶媒が凍り、合成に支障をきたすからである。例えば、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を使用する場合は、−20℃以上の温度にて多分岐ポリアミド酸を合成することが好ましい。また、芳香族テトラカルボン酸二無水物とアミン成分の反応モル比([芳香族テトラカルボン酸二無水物]:[アミン成分])は、1.0:0.3〜1.0:1.8の範囲内となるような量的割合において、反応せしめることが好ましく、1.0:0.4〜1.0:1.5の範囲内となるような量的割合において、反応せしめることがより好ましい。この範囲外の割合において反応せしめると、十分な分子量を有するポリアミド酸を合成することが出来ず、非常に脆い材料となるからである。
【0033】
本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜は、後述するように、通常、液状の材料を用いて一般的な中空糸紡糸装置にて製造されることから、直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸の調製は、所定の溶媒内にて行なうことが好ましい。本発明において用いられ得る溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチルスルホン、ヘキサメチルスルホン、又はヘキサメチルフォスホアミド等の非プロトン性極性溶媒、m−クレゾール、o−クレゾール、m−クロロフェノール、又はo−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、又はジグライム等のエーテル系溶媒等を挙げることが出来、これらは単独で、若しくは二種以上の混合溶媒として、使用することが可能である。尚、そのような溶媒を用いて直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸を調製するに際しては、従来より公知の手法の何れをも採用することが可能である。
【0034】
以上の如くして調製された直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸のうち、特に多分岐ポリアミド酸については、末端にアミノ基或いはカルボキシル基を有する、ケイ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンのアルコキシ化合物を反応せしめることも可能である。末端にカルボキシル基を有する、ケイ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンのアルコキシ化合物とは、具体的に、末端に、一般式:−COOH、或いは、一般式:−CO−O−CO−で表わされる官能基を有するカルボン酸、酸無水物であり、それらの誘導体である酸ハライド(一般式:−COX。但し、XはF、Cl、Br、Iの何れかの原子。)も、本発明において用いることが可能である。
【0035】
より具体的に、ケイ素のアルコキシ化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノフェニルジメチルメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシリルカルボン酸、プロピルメチルジエトキシシリルカルボン酸、又はジメチルメトキシシリル安息香酸等を挙げることが出来、また、酸無水物である3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物も使用可能である。チタンのアルコキシ化合物としては、特開2004−114360号公報中の段落[0085]において示されている如き構造(下記構造式)を呈するもの等を、例示することが出来る。また、それらアルコキシ化合物の誘導体としては、例えば、各種ハロゲン化物等が挙げられる。
【化2】

【0036】
なお、上述したアルコキシ化合物と多分岐ポリアミド酸との反応は、先に説明した芳香族テトラカルボン酸二無水物とアミン成分とを反応せしめた際と同様の温度条件にて、実施されることが望ましい。
【0037】
以上のようにして合成された直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸を用いて、本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜を製造するに際しては、直鎖ポリアミド酸溶液及び多分岐ポリアミド酸溶液を混合し、又は、直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸を所定の溶媒内にて混合し、この混合溶液を紡糸液として用いて、従来より公知の中空糸紡糸装置にて紡糸する。
【0038】
直鎖ポリアミド酸と多分岐ポリアミド酸との混合溶液(紡糸液)は、それより得られる直鎖ポリイミドと多分岐ポリイミドとのポリマーブレンドの100重量部、換言すれば、非対称中空糸膜を構成するポリマーブレンドの100重量部が、直鎖ポリイミドの60〜90重量部と、多分岐ポリイミドの10〜40重量部とから構成されるように、直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸が配合され、調製される。より具体的には、直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸の配合割合が、[直鎖ポリアミド酸]:[多分岐ポリアミド酸]=60:40〜90:10(重量比)となるように、調製される。このような配合割合の混合溶液を用いることによって、得られるポリイミド系非対称中空糸膜は、優れた気体透過性及び気体分離性を発揮することとなる。
【0039】
また、直鎖ポリアミド酸と多分岐ポリアミド酸との混合溶液(紡糸液)の粘度は、1000〜1000000cPであることが好ましく、2000〜500000cPであることがより好ましい。混合溶液の粘度が低すぎると、一般的な中空糸紡糸装置にて中空糸状構造体を形成することが困難であり、一方、混合溶液の粘度が高すぎると、中空糸紡糸装置の紡糸ノズルからの吐出が困難となり、目的とする中空糸状構造体が得られないからである。
【0040】
本発明のポリイミド系非対称中空糸膜を製造する際に用いられる中空糸紡糸装置は、従来より公知のものの中から、目的とするポリイミド系非対称中空糸膜に応じたものが適宜に選択されて、使用される。また、紡糸の際の各種条件、具体的には、芯鞘構造を呈する紡糸ノズルの径(芯側ノズルの内口径及び外径、鞘側ノズルの内口径)、鞘側ノズル(又は芯側ノズル)へ送液する凝固液の種類、ノズル内への送液速度、ノズル先端から凝固浴までの距離(エアーギャップ)、凝固浴内の凝固液の種類等は、ポリアミド酸の種類や目的とするポリイミド系非対称中空糸膜に応じて適宜に選択されることとなる。なお、鞘側ノズル(又は芯側ノズル)へ送液する凝固液及び凝固浴内の凝固液としては、水(イオン交換水)の他、イソプロパノール、メタノールやエタノール等の水系溶媒を例示することが出来る。
【0041】
そして、中空糸紡糸装置を用いて得られたポリアミド酸の中空糸状構造体に対して加熱処理を施し、ポリアミド酸(直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸)をイミド化せしめることにより、目的とするポリイミド系非対称中空糸膜が得られるのである。即ち、直鎖ポリアミド酸と多分岐ポリアミド酸とを併用することにより、その溶液が、紡糸装置を使用することができる程度に十分な溶液粘度を有することとなり、従来の紡糸装置により中空糸状構造体が作製可能となったのである。
【0042】
なお、ポリアミド酸からなる中空糸状構造体の加熱処理は、不活性雰囲気下において、例えば100〜500℃の加熱温度にて実施されることが好ましく、より好ましくは150〜480℃の加熱温度で実施される。加熱温度が低すぎると、ポリアミド酸のイミド化が十分に進行せず、一方、加熱温度が高すぎると、ポリイミドが熱分解し、劣化する恐れがあるからである。より具体的には、50〜150℃の加熱温度にて5分〜120分、処理した後、150〜250℃の加熱温度にて5分〜120分処理し、更に、250〜450℃の加熱温度にて5分〜120分処理する、所謂、多段加熱処理を行うことが好ましい。
【0043】
また、本発明においては、前述の加熱処理の前に、ポリアミド酸からなる中空糸状構造体に対して乾燥処理を施すことが好ましい。かかる乾燥処理は、10〜100℃の温度にて5分〜72時間、実施することが好ましく、20〜90℃の温度にて10分〜48時間、実施することがより好ましい。乾燥温度が低すぎて、且つ乾燥時間が短すぎると、残留溶媒及び凝固液が十分に揮発せず、後工程において中空糸状構造体が変形する恐れがある。一方、乾燥温度が高すぎて、且つ乾燥時間が長すぎると、アミド酸結合が切断し、得られる非対称中空糸膜の力学特性が低下する恐れがある。
【0044】
そして、以上の如くして得られたポリイミド系非対称中空糸膜にあっては、優れた気体透過性を有すると共に、二酸化炭素とメタンの分離特性についても優れたものとなる。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0046】
なお、以下の実施例及び比較例において、各溶液の粘度の測定は、東機産業株式会社製のTV−22形粘度計(商品名、1°34’×R24型コーンロータ装備)を用いて、室温(25℃)下、0.5rpmの回転数にて行なった。
【0047】
先ず、4種類のポリアミド酸溶液を、それぞれ以下の手法に従って調製した。
【0048】
−多分岐ポリアミド酸溶液Aの調製−
撹拌機、窒素導入管及び塩化カルシウム管を備えた300mLの三つ口フラスコに、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン[TAPOB]:7.2g(18mmol)を仕込み、ジメチルアセトアミド[DMAc]:30mLを加えて溶解した。この溶液を撹拌しながら、DMAc:54mLに溶解した4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物[6FDA]:6.4g(14.4mmol)を徐々に加えた後、25℃で3時間、撹拌した。
【0049】
次いで、溶液内に3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物(TEOSPSA):0.86g(2.8mmol)を加え、更に2時間、撹拌することにより、多分岐ポリアミド酸(6FDA−TAPOB)のDMAc溶液(多分岐ポリアミド酸溶液A)を得た。この反応溶液のポリマー濃度は17.6重量%、東機産業株式会社のTV−22形粘度計(商品名;1°34’×R24型コーン・ロータ装備)にて測定した粘度は110cPであった。
【0050】
−多分岐ポリアミド酸溶液Bの調製−
撹拌機、窒素導入管及び塩化カルシウム管を備えた300mLの三つ口フラスコに、1,3,5−トリス(アミノフェニル)ベンゼン[TAPB]:6.3g(18mmol)を仕込み、ジメチルアセトアミド[DMAc]:60mLを加えて溶解した。この溶液を撹拌しながら、DMAc:108mLに溶解した4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物[6FDA]:6.0g(13.5mmol)を徐々に加えた後、25℃で3時間、撹拌した。
【0051】
次いで、この溶液に3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物[TEOSPSA]:0.86g(2.8mmol)を加え、更に2時間、撹拌することにより、多分岐ポリアミド酸(6FDA−TAPB)のDMAc溶液(多分岐ポリアミド酸溶液B)を得た。この溶液のポリマー濃度は7.7重量%、粘度は4cPであった。
【0052】
−直鎖ポリアミド酸溶液Iの調製−
撹拌機、窒素導入管及び塩化カルシウム管を備えた300mLの三つ口フラスコに6FDA:32.0g(72mmol)を仕込み、DMAc:156mLを加えて溶解した。この溶液を撹拌しながら、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン[TPEQ]:20.8g(71.28mmol)を徐々に加え、25℃で3時間、撹拌することにより、直鎖ポリアミド酸(6FDA−TPEQ)のDMAc溶液(直鎖ポリアミド酸溶液I)を得た。この溶液のポリマー濃度は26.4重量%、粘度は100000cP以上であった。
【0053】
−直鎖ポリアミド酸溶液IIの調製−
撹拌機、窒素導入管及び塩化カルシウム管を備えた300mLの三つ口フラスコに、6FDA:32.0g(72mmol)を仕込み、DMAc:144mLを加えて溶解した。この溶液を撹拌しながら、TPEQ:10.4g(35.64mmol)、及び3,3’−ジヒドロキシベンジジン[HAB]:7.7g(35.64mmol)を徐々に加え、25℃で3時間、撹拌することにより、直鎖ポリアミド酸(6FDA−HAB/TPEQ)のDMAc溶液(直鎖ポリアミド酸溶液II)を得た。この溶液のポリマー濃度は27.0重量%、粘度は100000cP以上であった。
【0054】
以上の如くして調製したポリアミド酸溶液を用いて、以下の手法に従って、中空糸膜を作製した。なお、中空糸膜の作製に際しては、鞘側ノズル(内口径:0.8mm)と、芯側ノズル(内口径:0.2mm、外径:0.4mm)とからなる同軸二重ノズル(カセンエンジニアリング株式会社製)を用いた。
【0055】
−実施例1−
多分岐ポリアミド酸溶液Aと直鎖ポリアミド酸溶液Iを、多分岐ポリアミド酸:直鎖ポリアミド酸=20:80(重量比)となるような割合において混合した。この混合溶液のポリマー濃度は23.2重量%、粘度は14400cPであった。
【0056】
得られた混合溶液を鞘側ノズルに、シリンジポンプを用いて送液速度:2.0mL/minで送り、同時に、イオン交換水を芯側ノズルに、シリンジポンプを用いて送液速度:0.8mL/minで送った。
【0057】
吐出された中空糸状構造体を、15cmのエアーギャップを設けた後に、イオン交換水で満たした凝固浴に浸漬して固定化し、イオン交換水で満たした洗浄浴を通して巻き取りロールで巻き取った。得られた中空糸状構造体を回収し、室温にて風乾した。
【0058】
更に、この中空糸状構造体に対して、窒素雰囲気下にて、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で1時間、加熱処理を施すことにより、外形寸法:550μm、内径寸法:450μmのポリイミド系非対称中空糸膜を得た。得られたポリイミド系非対称中空糸膜の断面SEM写真を図1として示す。
【0059】
−実施例2−
多分岐ポリアミド酸溶液Bと直鎖ポリアミド酸溶液Iを、多分岐ポリアミド酸:直鎖ポリアミド酸=10:90(重量比)となるような割合において混合した。この混合溶液のポリマー濃度は21.3重量%、粘度は11000cPであった。
【0060】
得られた混合溶液を鞘液として、また、イオン交換水を芯液として用いて、実施例1に示した条件に従い、ポリイミド系非対称中空糸膜を作製した。
【0061】
−実施例3−
多分岐ポリアミド酸溶液Aと直鎖ポリアミド酸溶液IIを、多分岐ポリアミド酸:直鎖ポリアミド酸=20:80(重量比)となるような割合において混合した。この混合溶液のポリマー濃度は23.5重量%、回転粘度は12300cPであった。
【0062】
得られた混合溶液を鞘液として、また、イオン交換水を芯液として用いて、実施例1に示した条件に従い、ポリイミド系非対称中空糸膜を作製した。
【0063】
以上の如くして得られた3種類のポリイミド系非対称中空糸膜については、それぞれ適当な長さに切り出し、片端をエポキシ接着剤で封止した後、ステンレス製パイプに固定し、簡易モジュールを作製した。そして、このモジュールを気体透過装置にセットし、1気圧、25℃の条件の下、定容法により気体透過測定を行った。尚、気体透過装置は、高圧部位、簡易モジュール及び低圧部位の3つの部位に大別される。高圧部位は、中空糸膜に一定圧力の透過気体を供給するための部位であり、測定中の圧力低下を最小限に抑えるために十分な体積を確保した。導入圧力は、信号出力端子を備えた電源供給ユニット(日本エム・ケー・エス株式会社製、型番:113BJ-2 )に接続した圧力計(同社製、Baratron圧力計、型番:722A-14Tシリーズ)にて、モニターした。このような気体透過装置を用いて、先ず、簡易モジュールを気体透過装置にセットし、系内を真空として十分に乾燥させた。次いで、簡易モジュールの中空糸膜内部に気体を導入し、中空糸膜表面より透過する気体を低圧部位で捕集した。このとき、中空糸膜表面より透過した気体による低圧部位の圧力変化を、前述の電源供給ユニットに接続された別個の圧力計(同社製、Baratron圧力計、型番:626A-01Tシリーズ)にてモニターした。得られた気体透過速度Q{×10-6[cm3 (STP)/(cm2 ・sec・cmHg)]}、及び気体分離係数αを、下記表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
かかる表1からも明らかなように、本発明に従うポリイミド系非対称中空糸膜にあっては、優れた気体透過性と共に、二酸化炭素とメタンの分離性も優れていることが確認される。
【0066】
−比較例1−
多分岐ポリアミド酸溶液Aを鞘液として、イオン交換水を芯液として用いて、実施例1に示した条件に従って紡糸を試みたが、溶液粘度が低いために、中空糸状構造体が形成されなかった。
【0067】
−比較例2−
多分岐ポリアミド酸溶液Bを鞘液として、イオン交換水を芯液として用いて、実施例1に示した条件に従って紡糸を試みたが、溶液粘度が低いために、中空糸状構造体が形成されなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖ポリイミドと多分岐ポリイミドとのポリマーブレンドからなるポリイミド系非対称中空糸膜。
【請求項2】
前記直鎖ポリイミドが、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物と芳香族ジアミンとを用いて得られるものである請求項1に記載のポリイミド系非対称中空糸膜。
【請求項3】
前記芳香族ジアミンが、少なくとも3,3’−ジヒドロキシベンジジンを含む二種以上の芳香族ジアミンである請求項2に記載のポリイミド系非対称中空糸膜。
【請求項4】
前記ポリマーブレンドの100重量部が、前記直鎖ポリイミドの60〜90重量部と、前記多分岐ポリイミドの10〜40重量部とから構成されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のポリイミド系非対称中空糸膜。
【請求項5】
直鎖ポリイミドと多分岐ポリイミドとのポリマーブレンドからなるポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法にして、
前記直鎖ポリイミドの前駆体である直鎖ポリアミド酸と、前記多分岐ポリイミドの前駆体である多分岐ポリアミド酸との混合溶液を用いて、それら直鎖ポリアミド酸及び多分岐ポリアミド酸の混合物からなる中空糸状構造体を中空糸紡糸装置にて作製し、該中空糸状構造体に対して加熱処理を施すことを特徴とするポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項6】
前記加熱処理の前に、前記中空糸状構造体に対して乾燥処理を施す請求項5に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項7】
前記直鎖ポリアミド酸が、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物と芳香族ジアミンとを用いて得られるものである請求項5又は請求項6に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項8】
前記芳香族ジアミンが、少なくとも3,3’−ジヒドロキシベンジジンを含む二種以上の芳香族ジアミンである請求項7に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項9】
前記ポリマーブレンドの100重量部が、前記直鎖ポリイミドの60〜90重量部と、前記多分岐ポリイミドの10〜40重量部とから構成されている請求項5〜請求項8の何れか1項に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項10】
前記加熱処理が100〜500℃の温度にて実施される請求項5〜9の何れか1項に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥処理が10〜100℃の温度にて5分〜72時間、実施される請求項6〜請求項10の何れか1項に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。
【請求項12】
前記混合溶液の粘度が1000〜1000000cPである請求項5〜請求項11の何れか1項に記載のポリイミド系非対称中空糸膜の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2012−210607(P2012−210607A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78536(P2011−78536)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】