説明

ポリエステルならびにそれより成る中空容器および延伸フィルム

【目的】 透明性が高く、かつガスバリヤー性および強度などに優れたポリエステルおよびそれから成る成形体を提供する。
【構成】 ■テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を80〜99.5モル%と、■フェニレンジオキシジ酢酸またはそのエステル形成性誘導体を0.5〜4.5モル%、の割合で含むジカルボン酸成分と、ジオール成分とを共重合させて成るポリエステルならびにそれより成る中空容器および延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透明性が高く、かつ強度およびガスバリヤー性に優れたポリエステルおよびそれを用いて成形される包装材料に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略すことがある)は機械的強度、化学的安全性、透明性、衛生性などに優れており、また軽量、安価であるために、各種のシート、フィルム、容器などとして幅広く包装材料に用いられている。
【0003】しかしながら、PETのガスバリヤー性は、ポリオレフィンなど他の樹脂に比べれば優れているものの、更に高い性能が要求されている分野も有り、まだ十分なレベルとは言えなかった。例えば、炭酸飲料、ビール、ワインなどの用途においては、内容物保存の点から特に厳しい酸素ガスバリヤー性、炭酸ガスバリヤー性が要求されており、通常に使用される二軸配向したPETからなる中空容器では必ずしも十分なガスバリヤー性を有しているとは言えない。また、生鮮食品、医療機器等の包装用として、酸素ガス等の気体や水分の透過率が少なくしかも冷凍加工、煮沸処理、レトルト処理などによってもそれらの性能が低下しないフィルムの要望がある。
【0004】このため、ポリエチレンテレフタレート製包装材料のガスバリヤー性を更に向上させる方法として、PETに各種のガスバリヤー性素材をブレンドしたり、積層またはコーティングを行う方法が提案されている。例えば、本発明者等も、イソフタル酸及びフェニレンジオキシジ酢酸を主たる酸成分として用いる特定の共重合ポリエステルが優れたガスバリヤー性素材として使用できることを見い出している(特開平1−247422、特開平1−247423、特開平1−167331、特開平2−182455、特開平2−14238、USP495,9421)。
【0005】また、5〜100モル%のフェニレンジオキシジ酢酸と0〜95モル%のテレフタル酸から成る酸成分を用いた共重合ポリエステルも優れたガスバリヤー性素材として知られている(特表昭60−501060、USP4,440,992、USP4,552,948)。しかしながら、これらのガスバリヤー性素材そのものは一般に、機械的強度、耐熱性が充分でなく、それ単独で成形体として用いることは困難である。また、PETにガスバリヤー性素材をブレンドする場合には、PET製成形体が本来持っている機械的強度、耐熱性等を保持することが難しい。更に、PETにガスバリヤー性素材を積層またはコーティングする方法においても、成形条件の選定、層間接着性または容器の肉厚化などの種々の問題を考える必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ガスバリヤー性、機械的強度、耐熱性、耐水性などの物性に優れ、透明度の高いポリエステルおよびそれから成るシート、フィルム、中空容器などの成形体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、ジカルボン酸成分として主成分をテレフタル酸とし、また、少量のフェニレンジオキシジ酢酸を特定の範囲で用いたポリエステルでは、意外なことに、機械的強度、耐熱性、耐水性、ガスバリヤー性のいずれの物性もが優れており、それ単独で成形体とすることも充分可能であることを見い出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、■テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を80〜99.5モル%と、■フェニレンジオキシジ酢酸またはそのエステル形成性誘導体を0.5〜4.5モル%、の割合で含むジカルボン酸成分と、ジオール成分とを共重合させて成るポリエステルに関する。以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明に用いられるテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体としては、具体的には、テレフタル酸、2−クロルテレフタル酸や2−メトキシテレフタル酸などの核置換体、または、テレフタル酸ジメチルやテレフタル酸ジエチルなどのエステル体、更にはテレフタル酸ジクロライドなどのテレフタル酸ハロゲン化物、などのようにジオール成分と反応するものであればよい。
【0010】また、フェニレンジオキシジ酢酸またはそのエステル形成性誘導体としては、具体的には、1,2−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、2−メチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、5−メチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、6−メチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、5−エチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、6−エチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、5−メトキシ−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、6−メトキシ−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4−クロロ−1,2−フェニレンジオキシジ酢酸、4−クロロ−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸などのほか、これらの酸無水物、酸ハライド、エステルなどである。また、これらの化合物は単独で使用するばかりでなく、例えば、1,2体と1,3体のごとく置換位置の異なる化合物の混合物として用いることもできる。以上のうち、好ましくは1,3−フェニレンジオキシジ酢酸またはその誘導体であり、更に好ましくは、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸である。
【0011】本発明のポリエステルを構成するジカルボン酸成分のうち、テレフタル酸単位は80〜99.5モル%、好ましくは90〜99.0モル%であり、かつフェニレンジオキシジ酢酸単位は0.5〜4.5モル%、好ましくは1.0〜4.0モル%の範囲である。テレフタル酸単位が80モル%以下では機械的強度、耐熱性が低下する。一方、フェニレンジオキシジ酢酸単位が0.5モル%に満たない場合、ガスバリヤー性の改良レベルが充分でなく、4.5モル%を超える場合は、成形加工の際の熱分解、融着などのトラブルが生じやすい。更に、得られた成形体の透明度、機械的強度、耐熱性が著しく低下し、それ単独で成形体として用いるには適さない。
【0012】また、フェニレンジオキシジ酢酸単位を4.5モル%を越えて増加させると、未延伸シート状の試料ではガスバリヤー性は更に向上するが、延伸シート状の試料では、意外なことに必ずしもガスバリヤー性は向上しない。本発明のポリエステルにおいては、テレフタル酸単位、フェニレンジオキシジ酢酸単位が前述の範囲を満たしている限り、その他の少量のジカルボン酸やオキシ酸またはその誘導体を使用することもできる。これらの他のジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸、オキシ酸またはその誘導体としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、グリコール酸などが挙げられる。
【0013】本発明のポリエステルに用いられるジオール成分としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式グリコールやさらにはビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体などを挙げることができる。これらのうちで、一般にはエチレングリコールが最も好ましい。ジオール成分は前述のジカルボン酸成分と実質的に当量となる量が用いられる。
【0014】また、本発明のポリエステルは、本発明の要件を損なわない範囲でトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、芳香族ジヒドロキシ化合物のグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの多官能化合物や、o−ベンゾイル安息香酸などの単官能化合物を共存させてもよい。かかる多官能化合物や単官能化合物はジオール成分の20モル%以下、好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下の範囲で使用される。
【0015】更に、必要に応じて、従来から公知の添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤及び染顔料などの着色剤をポリエステル製造時のいずれかの階段で添加しても良く、成形加工前にいわゆるマスターバッチ処方で添加しても良い。本発明のポリエステルは、その極限粘度〔フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて30℃で測定した値〕が、通常0.4〜2.0、好ましくは0.5〜1.5の範囲であることが望ましい。極限粘度が0.4未満では、得られるポリエステルの強度が低く、重合反応終了後、反応缶から抜き出しチップに切断する際や、シート、フィルム、瓶、たる、缶などの容器として成形する際に実用上必要な物性が得られない。極限粘度が2.0を超える場合には溶融粘度が高くなり過ぎて射出、押出、ブローなどの成形が困難となるなどの問題がある。
【0016】かかるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートについて従来から公知の重合方法で製造することができる。例えば、テレフタル酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸およびエチレングリコールを用いて加圧下で直接エステル化反応を行った後、更に昇温すると共に次第に減圧とし重縮合反応させる方法がある。あるいは、テレフタル酸のエステル誘導体、例えば、テレフタル酸ジメチルエステルと、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸ジメチルエステル、及びエチレングリコールを用いてエステル交換反応を行い、その後得られた反応物を更に重縮合することで製造できる。これらの重縮合反応において、フェニレンジオキシジ酢酸は、エステル交換反応又は、重縮合反応初期の任意の時期に加えることができる。例えば、あらかじめ、テレフタル酸エステル誘導体とエチレングリコールのエステル交換反応を行ない、そのエステル交換反応物にフェニレンジオキシジ酢酸を加えて重縮合してもよい。更に、必要に応じて、重合後、再度、加熱処理を実施して、高重合度化、低アセトアルデヒド化あるいは、低オリゴマー化することができる。加熱処理は、通常、80〜180℃の温度でチップ表面を結晶化した後、樹脂の融点温度直下ないしそれより80℃低い温度の範囲で数十時間以下の範囲内において実施するのが好ましい。
【0017】以上の反応では、エステル化触媒、エステル交換触媒、重縮合触媒、安定剤などを使用することが好ましい。エステル交換触媒としては、公知の化合物、例えば、カルシウム、マンガン、亜鉛、ナトリウム及びリチウム化合物などの1種以上を用いることができるが透明性の観点からマンガン化合物が特に好ましい。重縮合触媒としては公知のアンチモン、ゲルマニウム、チタン及びコバルト化合物などの1種以上を用いることができるが、好ましくはアンチモン、ゲルマニウム及びチタン化合物が用いられる。
【0018】このようにして得られた本発明のポリエステルは、PETで一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができ、未延伸の状態でもガスバリヤー性の高い材料として使用可能である。また、該ポリエステルを少なくとも一軸方向に延伸することによりさらにガスバリヤー性や機械的強度を改善することが可能である。
【0019】本発明のポリエステルから成る延伸フィルムは、射出成形もしくは、押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また、圧空成形、真空成形によりカップ状やトレイ状に成形することもできる。かかる延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は本発明のポリエステルのガラス転移点とそれより70℃高い温度の間に設定すればよく、通常40〜170℃、好ましくは60〜140℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は、一軸延伸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸の場合であれば、縦方向及び横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。
【0020】また、該フィルムの未延伸原反は、総厚さ50〜2000μ、好ましくは100〜1000μがよい。厚さ50μ未満では延伸時破断し易くなり、また、2000μを越えると、急冷が難しくなるのと同時に、延伸張力も大となるので、均一延伸が難しくなる。以上の延伸フィルムは、そのままの状態でも使用できるが場合によっては、更に延伸したフィルムを緊張下、100℃以上融点以下、好ましくは150〜230℃で、0.1〜30分好ましくは0.5〜5分間熱固定し、更にガスバリヤー性能や機械的強度を向上させて使用してもよい。
【0021】本発明のポリエステルから成る中空成形体は、本発明のポリエステルから形成したプリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来よりPETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には、例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままで、あるいは口栓部、底部を加工後それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。延伸温度は、70〜120℃、好ましくは80〜110℃で、延伸倍率は縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。
【0022】得られた中空成形体はそのまま使用することができるが、特に果汁飲料などのように熱充填を必要とする内容液の場合には、一般に、更に、成形に用いた同じブロー金型内、または別途設けた金型内で熱固定し、耐熱性を向上させて使用される。この熱固定の方法は、一般的には圧縮空気、機械的伸長などによる緊張下、通常、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、通常、2秒〜2時間、好ましくは10秒〜30分間行われる。
【0023】なお、本発明のポリエステルを用いた成形体を製造するにあたって、本発明のポリエステルより成る層と、PETを主体とするポリアルキレンテレフタレートより成る積層体、または、これらの樹脂をブレンドしたものを利用することもできる。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施中「部」は「重量部」を意味するものとし、本実施例で使用した種々の測定法を以下に示す。
【0025】■ 極限粘度フェノール/テトラクロロエタン(50/50重量比)中、30℃で測定した。
【0026】■ アセトアルデヒド量160℃で2時間水抽出後、ガスクロマトグラフで定量した。
【0027】■ 不活性気体流量不活性気体流量は単位時間(hr.)当りおよび単位樹脂重量(kg)当りの流通した気体量を1気圧、25℃に換算した体積量(1)で示した。
【0028】■ ガス透過率23℃、100%RHの条件下、「OX−TRAN 10/50A」酸素透過率測定装置(米国 Modern Controls社製)又は、「PERMATRAN C−IV」炭酸ガス透過率測定装置(米国 Modern Controls社製)で測定し、cc・mm/m2 ・day・atmで示した。
【0029】■ 耐クリープ性試験クエン酸一水和物12.5gに、0℃に調温した蒸留水を加え溶かし、次にこの水溶液全量を試作瓶に充填し、更に重炭酸ナトリウム15.0g投入後、直ちに密栓し、数十秒間振とうして重炭酸ナトリウムを溶解させた。このとき、瓶内は、0℃、1気圧の状態で約4.0倍容量の炭酸ガスを充填した状態に相当する。該瓶を気温23℃、温度50%、または気温38℃、湿度90%雰囲気に平らな面に置き、約2時間後における瓶中の液面の線(以下「入味線」という。)を測定後、3〜12週間同状態で保存した場合の入味線の低下長さを測定した。この場合、入味線の低下長さが小さいほど耐クリープ性に優れていることを示す。
【0030】■ 機械的強伸度特性試作した瓶の胴部につき、JIS−K7113に従い、気温23℃、温度50%の条件下、引張り試験機(INTESCO社製)により機械的強伸度を測定した。
【0031】■ 耐熱性試験試作した瓶に、所定温度に加温した熱水990mlを充填し、密栓して1時間室温に放置した。その後、開栓して空瓶とした後、目視で瓶の変形を観察した。各条件で試作した瓶3本につき試験し、変形が認められた温度を耐熱限界温度と判定した。
【0032】■ 環状三量体量(以下「CT量」という)
共重合ポリエステル試料200mgを、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容量比3/2)混液2mlに溶融し、更にクロロホルム20mlを加えて希釈した。これに、メタノール10mlを加え、試料を再析出させ、ろ過した後のろ液を得た。該ろ液を乾固後、残渣にジメチルホルムアミド25mlに溶解した液について液体クロマトグラフ法にて分析定量した。なお、環状三量体とは、重合中に副生するオリゴマー類の主成分である。オリゴマー類は、成型時に金型などの装置類に付着、汚染し、生産効率を低下させる原因となる。従って、CT量が少ない方が好ましい。
【0033】実施例1ジメチルテレフタレート9583部(全酸成分に対し96モル%)、エチレングリコール6390部及び酢酸マンガン・4水塩2.1部を反応缶に加え、160℃から220℃まで、4時間かけて漸次昇温し、エステル交換反応を行った。この反応物に、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸470部(全酸成分に対し4モル%)、正リン酸1.5部、二酸化ゲルマニウム1.5部を加え、220℃から除々に昇温するとともに、重合槽内を常圧から漸次減圧にし、275℃0.5torrの真空下、全重合時間3時間で、極限粘度0.63の透明チップを得た。該ポリエステルチップ表面を攪拌結晶化機(米国Bepex社製)中、150℃で結晶化させた後、静置式固相重合塔に移し、201/kg・hrの窒素気体流通下、120〜160℃で3時間乾燥し、200℃で10時間固相重合した。該固相重合品の極限粘度は0.88で、チップ中のアセトアルデヒド量が2.2ppm、CT量が0.37重量%であった。
【0034】該固相重合処理チップから、シリンダー各部およびノズル275℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間10秒、金型冷却水温10℃に設定した東芝(株)製射出成形機IS−60Bでプリフォームを成形した。このプリフォームを予熱炉90℃、ブロー圧力20kg/cm2 、成形サイクル10秒に設定した二軸延伸ブロー成形機により胴部平均肉厚300μ、内容積約1リットルの瓶を得た。得られた瓶胴体部のガス透過率、CT量、入味線低下長さ、および機械的強伸度の測定結果を表−1に示す。
【0035】実施例2テレフタル酸8200部(全酸成分に対し96モル%)1,3−フェニレンジオキシジ酢酸470部(全酸成分に対し4モル%)及びエチレングリコール3835部をオートクレープに仕込み、窒素雰囲気の加圧(2.5kg/cm2 )下、攪拌しつつ、220〜245℃で3時間エステル化反応を行い、この間、生成する水を系外へ留去した。このエステル化物に、正リン酸1.5部、二酸化ゲルマニウム1.5部を加えた。以降、実施例1と同様にして全重合時間3時間で、極限粘度0.65の透明チップ、更に固相重合処理で極限粘度0.86、アセトアルデヒド量2.0ppm、CT量0.37重量%のチップを得、続いて実施例1と同様にブロー成形して1リットル瓶を得た。この瓶胴体部片のガス透過率、CT量、入味線低下長さ、および機械的強伸度の測定結果を表−1に示す。
【0036】実施例3ジメチルテレフタレート9712部(全酸成分に対し97モル%)、エチレングリコール6500部、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸350部(全酸成分に対し3モル%)を用いた以外は、実施例1と同様に操作し固相重合後の極限粘度0.86、アセトアルデヒド量2.0ppm、CT量0.39重量%のチップを得た。該チップから、実施例1のプリフォームの首下長及び胴部外径が各々4/5の長さ、胴部肉厚が1.32倍の小型プリフォームを作成し、実施例1と同様にブロー成形し1リットル瓶とした。得られた瓶胴体部のガス透過率、CT量、入味線低下長さ、および機械的強伸度の測定結果を表−1に示す。
【0037】比較例1ボトル用ポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製、RT−543C)から、実施例1と同様にブロー成形し、1リットル瓶を得た。該瓶胴体片のガス透過率、CT量、入味線低下長さ、および機械的強伸度の測定結果を表−1に示す。
【0038】比較例2ジメチルテレフタレート9392部(全酸成分に対し94モル%)エチレングリコール6450部、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸698部(全酸成分に対し6モル%)を用いた以外は、実施例1と同様に処理し、極限粘度0.87、アセトアルデヒド量2.0ppm、CT量0.48重量%の固相重合チップを得た。このチップより実施例1と同様にブロー成形して得た1リットル瓶とした。得られた瓶胴体部のガス透過率、CT量、入味線低下、および機械的強伸度の測定結果を表−1に示す。また、このチップのプレポリマーを攪拌結晶化機により、結晶化させた際、かなりの量のチップ間の融着現象が認められ、固相重合後でも、3〜4個連結したチップや変形チップが数多く認められた。
【0039】
【表1】


【0040】実施例4実施例3で得た固相重合チップから、実施例3と同様なプリフォームを作成し、熱固定装置付延伸ブロー機で、1リットル瓶にブロー成形すると共に、該瓶を150℃で10秒間熱固定し、耐熱果汁用瓶を得た。該耐熱瓶胴部のガス透過率、および耐熱性試験の結果を表−2に示す。また、この瓶に90℃で殺菌し、85℃に降温した果汁を充填し、密栓後、15分間倒置したが、瓶形状に変形は見られなかった。
【0041】比較例3耐熱ボトル用ポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製、RT−543G)を使い、実施例4と同様にブロー成形および熱固定をして耐熱果汁用1リットル瓶を得た。該瓶胴部のガス透過率、および耐熱性試験の結果を表−2に示す。また、実施例4と同様にして、85℃の果汁液を充填し、倒置したが変形は見られなかった。本比較例2の瓶は、実施例4の瓶と比較し、耐熱性は同等に認められたが、ガスバリヤー性において劣っていた。
【0042】比較例4比較例2で得た固相重合チップを使い、実施例4と同様にブロー成形および熱固定をして耐熱果汁用瓶を得た。該耐熱瓶胴部の耐熱性試験の結果を表−2に示す。また、実施例4と同様にして85℃の果汁液を充填したところ瓶全体に渡ってかなりの変形が認められた。
【0043】
【表2】


【0044】実施例5ジメチルテレフタレート9583部(全酸成分に対し96モル%)、エチレングリコール6390部及び酢酸マンガン・4水塩2.1部を反応缶に加え、160℃から220℃まで、4時間かけて漸次昇温し、エステル交換反応を行った。この反応物に、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸470部(全酸成分に対し4モル%)、正リン酸1.5部、二酸化ゲルマニウム1.5部を加え、220℃から徐々に昇温するとともに、重合槽内を、常圧から漸次減圧にし、273℃、0.5torrの真空下、全重合時間3.5時間で、極限粘度0.65の透明チップを得た。
【0045】該チップを真空乾燥後、シリンダー及びノズルを275℃、スクリュー回転数40rpmに設定した40mmφ押出機(Modern Machinery社製)で、1200μ肉厚のシートを成形した。この押出シートを槽内90℃に設定したロング延伸機(米国T.M.Long社、製)で3×3倍に同時二軸延伸した後、緊張下、オーブン中、200℃で120秒間熱固定した。
【0046】得られた延伸フィルムは良好な外観を有し、酸素ガス透過率は、1.07cc・mm/m2 ・day・atmの優れた酸素ガスバリヤー性を示した。また、この延伸フィルムを、プレッシャークッカー((株)平山製作所製)中、120℃、相対湿度100%の環境下で、1時間、レトルト処理した後、再度、酸素ガス率を測定したが、1.09cc・mm/m2 ・day・atmで、レトルト処理前とほとんど変化はなく、また、外観の変化も認められなかった。
【0047】実施例6テレフタル酸8200部(全酸成分に対し96モル%)、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸470部(全酸成分に対し、4モル%)及びエチレングリコール3835部をオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気の加圧(2.5kg/cm2 )下、攪拌しつつ、220〜245℃で3時間、エステル化反応を行い、この間、生成する水を系外へ留去した。このエステル化物に、正リン酸1.5部、二酸化ゲルマニウム1.5部を加えた。以降、実施例5と同様にして、極限粘度0.65の無色透明チップを得た。該チップを延伸倍率を3.5×3.5倍とした以外は実施例5と同様に操作し、良好な外観を有した延伸フィルムを得た。このフィルムの酸素ガス透過率は0.95cc・mm/m2 ・day・atmであった。また、実施例5と同様なレトルト試験を行ったが、レトルト前後で酸素ガス透過率、外観に変化はなかった。
【0048】実施例7ジメチルテレフタレート9712部(全酸成分に対し97モル%)、エチレングリコール6500部、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸350部(全酸成分に対し3モル%)を用いた以外は実施例5と同様に操作し、極限粘度0.67の無色透明チップを得た。該チップを延伸倍率を3.8×3.8倍とした以外は実施例5と同様に操作し、良好な外観の延伸フィルムを得た。このフィルムの酸素ガス透過率は、0.96cc・mm/m2 ・day・atmであった。また、実施例5と同様なレトルト試験を行ったが、レトルト前後で酸素ガス透過率、外観に変化はなかった。
【0049】比較例5包装フィルム用PET(ダイアホイル(株)製、ダイアホイル−H)から、実施例5と同様に操作し、外観のすぐれた延伸フィルムを得た。この延伸フィルムの酸素ガス透過率は、1.58cc・mm/m2 ・day・atmであり、実施例5と同様なレトルト試験によっても酸素ガス透過率にはほとんど変化が認められなかったが、実施例5〜7に比べると酸素ガスバリヤー性に劣っていた。
【0050】比較例6ジメチルテレフタレート9392部(全酸成分に対し94モル%)、エチレングリコール6450部、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸698部(全酸成分に対し6モル%)を用いた以外は、実施例5と同様に操作し、極限粘度0.66の透明チップを得た。実施例5に従って得た延伸フィルムの酸素ガス透過率は1.16cc・mm/m2 ・day・atmであり、実施例5のフィルムに比べ酸素ガスバリヤー性は、やや、劣っていた。このフィルムは延伸性が悪く、偏延伸気味で、肉厚も不均一になり易く、外観も見劣りした。
【0051】比較例7延伸倍率を3.8×3.8倍とした以外は比較例6と同様に操作し、延伸フィルムを得た。このフィルムは、やや偏延伸気味であり、肉厚も不均一で外観も見劣りした。
【0052】
【発明の効果】本発明のポリエステルは透明性が高く、かつガスバリヤー性、機械的強度、耐水性、耐熱性などに優れている。また、該ポリエステルはオリゴマー含有量が少ないので、成形時の金型などの装置の汚染が少なく生産効率が高くなる。従って、これを用いて得られる成形体は、各種のフィルム、シート、容器などの包装材料として幅広く用いることができる。また、該ポリエステルは、それ単独で成形体とすることができるため、各種の包装材料を、煩雑な装置、工程を経ることなく製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ■テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を80〜99.5モル%と、■フェニレンジオキシジ酢酸またはそのエステル形成性誘導体を0.5〜4.5モル%、の割合で含むジカルボン酸成分と、ジオール成分とを共重合させて成るポリエステル。
【請求項2】 フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒中で測定した極限粘度が0.4〜2.0である請求項1のポリエステル。
【請求項3】 ■テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を90〜99.0モル%と、■フェニレンジオキシジ酢酸またはそのエステル形成性誘導体を1.0〜4.0モル%、の割合で含むジカルボン酸成分を有する請求項1のポリエステル。
【請求項4】 フェニレンジオキシジ酢酸が1,3−フェニレンジオキシジ酢酸である請求項1のポリエステル。
【請求項5】 ジオール成分がエチレングリコールである請求項1のポリエステル。
【請求項6】 請求項1に記載のポリエステルを射出成形または押出成形によってプリフォームを成形した後、二軸延伸ブロー成形して成るポリエステル製中空容器。
【請求項7】 請求項1に記載のポリエステルを射出成形または押出成形によってプリフォームを成形した後、二軸延伸ブロー成形し、更に熱固定して成るポリエステル製中空容器。
【請求項8】 請求項1に記載のポリエステルを射出成形または押出成形して得られたシート状物を、少なくとも一方向に延伸して成るポリエステル製延伸フィルム。
【請求項9】 請求項1に記載のポリエステルを射出成形または押出成形して得られたシート状物を、少なくとも一方向に延伸し、更に熱固定して成るポリエステル製延伸フィルム。

【公開番号】特開平5−186570
【公開日】平成5年(1993)7月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−332330
【出願日】平成3年(1991)12月16日
【出願人】(000005968)三菱化成株式会社 (4,356)