説明

ポリエステル系繊維用難燃加工剤、ポリエステル系繊維の難燃加工方法、及び難燃性ポリエステル系繊維

【課題】ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合においても、染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との色差が十分に小さい難燃性ポリエステル系繊維を得ることが可能な難燃加工剤の提供。
【解決手段】リン化合物と、下記一般式(1):


で表わされ、且つ、m:n=1:0.2〜1:2.0であり、フェノール骨格の重合度(N)の平均値が2〜30であるアニオン界面活性剤とを含有しており、前記アニオン界面活性剤の含有量が、前記リン化合物100質量部に対して、5〜40質量部であることを特徴とするポリエステル系繊維用難燃加工剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系繊維用難燃加工剤に関し、より詳しくは、リン系難燃剤を含有するポリエステル系繊維用難燃加工剤に関する。また、本発明は、このようなポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いたポリエステル系繊維の難燃加工方法、並びにそれにより得られた難燃性ポリエステル系繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系繊維の耐久難燃加工は、ヘキサブロモシクロドデカン(以下、「HBCD」と略す)に代表されるハロゲン系難燃性化合物をポリエステル系繊維の内部に浸透・付着させ、これを加熱することによって定着させる加工方法によるものが主流であった。しかし、HBCDは難分解性且つ高蓄積性の物質であることから、2004年9月に第一種監視化学物質に指定され、自動車業界では2010年12月末までに全廃され、繊維業界においても2014年3月末までに全廃する方針が打ち出されている。
【0003】
このようなHBCDに代わる難燃性化合物として、リン化合物を難燃成分とした難燃性ポリエステル繊維の製造方法が報告されている。例えば、特開2000−328445号公報(特許文献1)には、界面活性剤の存在下に乳化分散させたレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)をポリエステル系繊維に吸着させるポリエステル系繊維の難燃加工方法が記載されており、特開2003−193368号公報(特許文献2)には、界面活性剤の存在下に1,4−ピペラジンジイルビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸アミドを乳化分散させたポリエステル系繊維の難燃加工剤が記載されている。
【0004】
また、特開2002−275473号公報(特許文献3)には、界面活性剤の存在下に10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等の芳香族ホスフェートを乳化分散させた難燃加工剤が記載されており、特開2008−189817号公報(特許文献4)には、界面活性剤の存在下にリン酸フェノキシエチルエステル化合物を乳化分散させたポリエステル系繊維用難燃加工剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328445号公報
【特許文献2】特開2003−193368号公報
【特許文献3】特開2002−275473号公報
【特許文献4】特開2008−189817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜4に記載されているような難燃加工方法や難燃加工剤によれば、ポリエステル繊維に優れた難燃性を付与することができる。しかしながら、このような従来のリン化合物を含有する難燃加工剤を用いた難燃加工処理を、染色加工処理と同時にポリエステル系繊維に対して施して得られる難燃性ポリエステル系繊維においては、染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との間で大きな色差を生じるという問題があることを本発明者らは見出した。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合においても、染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との色差が十分に小さい難燃性ポリエステル系繊維を得ることが可能な難燃加工剤、それを用いたポリエステル系繊維の難燃加工方法、及びそれを用いて難燃加工処理が施された難燃性ポリエステル系繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時にリン化合物を含有する難燃加工剤を用いて難燃加工処理を施す場合において、前記難燃加工剤に、特定のフェノール−ホルムアルデヒド縮合物系アニオン界面活性剤を共存させることによって、リン化合物によりひきおこされる色差の発生が抑制され、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との間の色差を十分に小さくすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤は、リン化合物と、下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(2)又は(3):
【0012】
【化2】

【0013】
で表わされる基を示し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、式(1)、(2)及び(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、−SOH、−CHSOH、及びこれらの塩で表わされる基からなる群から選択されるいずれか1つの置換基を示す。]
で表わされ、且つ、置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)と置換基Xを有するフェノール骨格(P2)とのモル比(P1のモル数:P2のモル数)が1:0.2〜1:2.0であり、次式(i):
N=m+n+2 ・・・(i)
[式(i)中、m及びnはそれぞれ前記式(1)中のm及びnを示す。]
で表わされるフェノール骨格の重合度(N)の平均値が2〜30であるアニオン界面活性剤とを含有しており、
前記アニオン界面活性剤の含有量が、前記リン化合物100質量部に対して、5〜40質量部であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤としては、前記リン化合物及び前記アニオン界面活性剤を含有する水分散物からなるものであることが好ましい。また、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤において、前記リン化合物としては、下記一般式(4):
【0015】
【化3】

【0016】
[式(4)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。]
で表されるリン酸エステル化合物;下記一般式(5):
【0017】
【化4】

【0018】
[式(5)中、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基を示し、R12は、炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、qは、1〜20の整数を示す。]
で表される芳香族ホスフェート化合物;下記一般式(6):
【0019】
【化5】

【0020】
[式(6)中、R13は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、及び下記一般式(7):
【0021】
【化6】

【0022】
[式(7)中、R14は、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。]
で表される基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。]
で表される芳香族リン化合物;下記一般式(8);
【0023】
【化7】

【0024】
[式(8)中、R15及びR16は、同一でも異なっていてもよく、R15及びR16が相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれか1つを示し、R17及びR18は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
で表されるリン酸アミド化合物;下記式(9):
【0025】
【化8】

【0026】
で表されるトリフェニルホスフィンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であることが好ましい。
【0027】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法は、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いて前記ポリエステル系繊維に難燃加工処理を施すことを特徴とするものである。また、本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、ポリエステル系繊維に、染色加工処理と同時に本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いた難燃加工処理が施されたものであることを特徴とするものである。
【0028】
なお、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いて、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施して得られた難燃性ポリエステル系繊維と、染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との色差が十分に小さくなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、染色液に難燃成分であるリン化合物が存在すると、リン化合物の非存在下で染色加工処理のみを実施する場合に比べて染料の染着速度が変化すると推察される。このため、リン化合物を含有する染色液を用いて難燃・染色加工処理を施すと、得られる難燃性ポリエステル系繊維と、染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との間で大きな色差が発生すると推察される。特に、複数の染料を使用した場合には、染料間の染着速度差が大きくなるため、色差がさらに大きくなると推察される。
【0029】
これに対して、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤においては、前記アニオン界面活性剤が共存することによって、上記のリン化合物によりひきおこされる染料の染着速度の変化が抑制されると推察される。このため、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いて染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合においては、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との色差が十分に小さくなると推察される。特に、複数の染料を使用した場合には、すべての染料の染着速度の変化が抑制されるため、色差が顕著に小さくなると推察される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合においても、染色加工処理のみを施して得られたポリエステル系繊維との色差が十分に小さい難燃性ポリエステル系繊維を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1及び比較例1で得られた難燃性ポリエステル系繊維のa*値とb*値との関係を示すグラフである。
【図2】実施例2及び比較例2で得られた難燃性ポリエステル系繊維のa*値とb*値との関係を示すグラフである。
【図3】実施例3及び比較例3で得られた難燃性ポリエステル系繊維のa*値とb*値との関係を示すグラフである。
【図4】実施例4及び比較例4で得られた難燃性ポリエステル系繊維のa*値とb*値との関係を示すグラフである。
【図5】実施例5及び比較例5で得られた難燃性ポリエステル系繊維のa*値とb*値との関係を示すグラフである。
【図6】実施例6及び比較例6で得られた難燃性ポリエステル系繊維のa*値とb*値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0033】
<ポリエステル系繊維用難燃加工剤>
先ず、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤について説明する。本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤(以下、単に「難燃加工剤」という)は、リン化合物とアニオン界面活性剤とを含有するものである。
【0034】
(リン化合物)
本発明においては、難燃加工成分として、リン化合物を用いる。本発明の難燃加工剤によれば、このリン化合物がポリエステル系繊維の表面及び内部に吸着及び/又は吸収されることによって、ポリエステル系繊維に耐久性に優れた難燃性を付与することが可能となる。本発明に係るリン化合物としては特に制限されないが、ポリエステル系繊維に難燃剤を付与する際、ポリエステル系繊維の表面及び内部により均一且つ十分に吸着及び/又は吸収される傾向にあるという観点から、有機リン系難燃性化合物であることが好ましく、後述する一般式(4)で表されるリン酸エステル化合物;後述する一般式(5)で表される芳香族ホスフェート化合物;後述する一般式(6)で表される芳香族リン化合物;後述する一般式(8)で表されるリン酸アミド化合物;後述する式(9)で表されるトリフェニルホスフィンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であることがより好ましい。
【0035】
前記リン酸エステル化合物は、下記一般式(4)で表わされる。
【0036】
【化9】

【0037】
前記式(4)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。前記炭素数1〜24のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基、ドコシル基、テトラコシル基等の鎖状アルキル基が挙げられ、これらの中でも、化合物中のリン含量を高めるという観点から、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
前記炭素数2〜22のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基が挙げられ、これらの中でも、化合物中のリン含量を高めるという観点から、炭素数2〜6のアルケニル基であることが好ましい。また、前記炭素数5〜6の脂環アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。さらに、前記置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、フェノキシアルキルエーテル基が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシ基、フェニル基が挙げられる。
【0039】
このようなリン酸エステル化合物としては、例えば、トリキシリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリルジフェニルホスフェート、トリクメニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、(2−フェノキシエチル)ジフェニルホスフェート、(2−フェノキシエチル)ジ(4−トリル)ホスフェート、(2−フェノキシエチル)ジ(4−ビフェニル)ホスフェート、(2−フェノキシエチル)ジ(2−ナフチル)ホスフェート、(2−フェノキシエチル)ジベンジルホスフェートが挙げられる。
【0040】
前記芳香族ホスフェート化合物は、下記一般式(5)で表わされる。
【0041】
【化10】

【0042】
前記式(5)中、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基を示し、R12は、炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を示す。前記置換基を有していてもよいアリール基としては、前記一般式(4)中のR、R及びRにおいて挙げた置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。前記炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基が挙げられる。また、前記置換基を有していてもよいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチレンビスフェニレン基、ジメチルメチレンビスフェニレン基、スルホンビスフェニレン基が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシ基が挙げられる。また、qは1〜20の整数を示し、ポリエステル系繊維への吸尽が良好であるという観点から、1〜5の整数であることが好ましい。
【0043】
このような芳香族ホスフェート化合物としては、例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(2,6−キシリルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジトリルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジトリルホスフェート)、ビスフェノールSビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールSビス(ジトリルホスフェート)が挙げられる。
【0044】
前記芳香族リン化合物は、下記一般式(6)で表わされる。
【0045】
【化11】

【0046】
前記式(6)中、R13は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、及び下記一般式(7)で表される基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。
【0047】
【化12】

【0048】
前記炭素数1〜24のアルキル基及び前記炭素数2〜22のアルケニル基としては、前記一般式(4)中のR、R及びRにおいて挙げた炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数2〜22のアルケニル基とそれぞれ同様のものが挙げられる。前記炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基が挙げられる。また、前記置換基を有していてもよいアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ヒドロキシ−3,5−ターシャリブチルベンジル基が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基が挙げられる。さらに、前記炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基が挙げられる。また、前記置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、3−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基が挙げられ、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0049】
前記式(7)中、R14は、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。前記炭素数1〜24のアルキル基及び前記炭素数5〜6の脂環アルキル基としては、前記一般式(4)中のR、R及びRにおいて挙げた炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基とそれぞれ同様のものが挙げられる。
【0050】
このような芳香族リン化合物としては、例えば、下記式(10)で表わされる(10−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物A);下記式(11)で表わされる10−ヒドロキシメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物B);下記式(12)で表わされる10−ヒドロキシエチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物C);下記式(13)で表わされる10−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物D);下記式(14)で表わされる10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物E);下記式(15)で表わされる10−(p−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物F);下記式(16)で表わされる[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド(化合物G);下記式(17)で表わされるエチル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド(化合物H);下記式(18)で表わされるフェニル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド(化合物I)が挙げられる。
【0051】
【化13】

【0052】
前記リン酸アミド化合物は、下記一般式(8)で表わされる。
【0053】
【化14】

【0054】
前記式(8)中、R15及びR16は、同一でも異なっていてもよく、R15及びR16が相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。前記炭素数1〜24のアルキル基、前記炭素数2〜22のアルケニル基、前記炭素数5〜6の脂環アルキル基、及び前記置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、前記一般式(4)中のR、R及びRにおいて挙げた炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。さらに、前記置換基を有していてもよいアラルキル基としては、前記一般式(6)中のR13において挙げた置換基を有していてもよいアラルキル基と同様のものが挙げられる。また、前記式(8)中、R17及びR18は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基を示す。前記置換基を有していてもよいアリール基としては、前記式(4)中のR、R及びRにおいて挙げた置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。
【0055】
このようなリン酸アミド化合物としては、例えば、アミノジフェニルホスフェート、メチルアミノジフェニルホスフェート、ジメチルアミノジフェニルホスフェート、エチルアミノジフェニルホスフェート、ジエチルアミノジフェニルホスフェート、プロピルアミノジフェニルホスフェート、ジプロピルアミノジフェニルホスフェート、オクチルアミノジフェニルホスフェート、ジフェニルウンデシルアミノホスフェート、シクロヘキシルアミノジフェニルホスフェート、ジシクロヘキシルアミノジフェニルホスフェート、アリルアミノジフェニルホスフェート、アニリノジフェニルホスフェート、ジ−o−クレジルフェニルアミノホスフェート、ジフェニル(メチルフェニルアミノ)ホスフェート、ジフェニル(エチルフェニルアミノ)ホスフェート、ベンジルアミノジフェニルホスフェート、モルホリノジフェニルホスフェートが挙げられる。
【0056】
前記トリフェニルホスフィンオキシドは、下記式(9)で表わされる。
【0057】
【化15】

【0058】
本発明に係るリン化合物としては、これらのリン化合物のうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明に係るリン化合物としては、難燃性に優れ、ポリエステル系繊維への吸尽率が高いという観点から、ビフェニルジフェニルホスフェート(前記式(4)の化合物)、(2−フェノキシエチル)ジフェニルホスフェート(前記式(4)の化合物)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(前記式(5)の化合物)、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(前記式(6)の化合物)、アニリノジフェニルホスフェート(前記式(8)の化合物)、トリフェニルホスフィンオキシド(前記式(9)の化合物)を用いることが好ましく、リン含有量が高く、繊維との親和性がより優れるという観点から、(2−フェノキシエチル)ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを用いることがさらに好ましい。
【0059】
(アニオン界面活性剤)
本発明に係るアニオン界面活性剤は、下記一般式(1):
【0060】
【化16】

【0061】
で表される、少なくとも2種のフェノール系化合物とホルムアルデヒドとの縮合物(以下、「フェノール−ホルムアルデヒド系縮合物」という。)である。前記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(2)又は(3):
【0062】
【化17】

【0063】
で表わされる基を示し、式(1)、(2)及び(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、−SOH、−CHSOH、及びこれらの塩で表わされる基からなる群から選択されるいずれか1つの置換基を示す。前記置換基Xを構成する塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。前記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。また、前記アミン塩としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン等の1級アミンの塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミン等の2級アミンの塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミンの塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンの塩等が挙げられる。これらの塩の中でも、前記置換基Xを構成する塩としては、リン化合物による難燃効果を阻害しにくいという観点から、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。また、前記式(1)中、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を示す。また、m及びnとしては、後述する重合度(N)の平均が2〜30となる値であればよいが、難燃性阻害が少なく、難燃加工剤を水分散物とした場合に分散性が良好となるという観点から、mは25以下であることが好ましく、nは20以下であることが好ましい。。
【0064】
本発明に係るアニオン界面活性剤は、置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)と置換基Xを有するフェノール骨格(P2)とを備える。前記置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)とは、前記式(2)で表わされる末端基及び下記一般式(19):
【0065】
【化18】

【0066】
[式(19)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。]
で表わされる基を意味する。前記式(2)で表される末端基は、フェノール末端基又はクレゾール末端基であり、前記式(19)で表される基は、フェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとを縮合させることによって形成される繰り返し単位におけるフェノール又はクレゾールに由来する基である。
【0067】
また、前記置換基Xを有するフェノール骨格(P2)とは、前記式(3)で表わされる末端基及び下記一般式(20):
【0068】
【化19】

【0069】
[式(20)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Xは、−SOH、−CHSOH、及びこれらの塩で表わされる基からなる群から選択されるいずれか1つの置換基を示す。]
で表わされる基を意味する。前記式(3)で表される末端基は、スルホ基、メチレンスルホ基、スルホ基の塩、メチレンスルホ基の塩からなる群から選択されるいずれか1つのアニオン性基を有するフェノール末端基又はクレゾール末端基であり、前記式(20)で表される基は、スルホ基、メチレンスルホ基、スルホ基の塩、メチレンスルホ基の塩からなる群から選択されるいずれか1つのアニオン性基を有するフェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとを縮合させることによって形成される繰り返し単位におけるフェノール又はクレゾールに由来する基である。
【0070】
このようなアニオン界面活性剤(すなわち、フェノール−ホルムアルデヒド系縮合物)は、フェノール及びクレゾールのうちの少なくとも1種の置換基Xを有さないフェノール系化合物と、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ヒドロキシフェニルメタンスルホン酸、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の置換基Xを有するフェノール系化合物と、ホルムアルデヒドとを、公知の方法により縮合反応させることによって得られるものである。前記縮合反応としてはランダム縮合であっても、ブロック縮合であってもよい。
【0071】
本発明においては、前記アニオン界面活性剤における、前記置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)、すなわち、前記式(2)で表わされる末端基及び前記式(19)で表わされる基の合計モル数と、前記置換基Xを有するフェノール骨格(P2)、すなわち、前記式(3)で表わされる末端基及び前記式(20)で表わされる基の合計モル数とのモル比(P1のモル数:P2のモル数)が1:0.2〜1:2.0である。前記P2の割合が前記範囲を外れる場合には、リン化合物の吸尽量が低下し、ドライクリーニングに対する難燃効果の耐久性が低下する。また、リン化合物によりひきおこされる染着速度の変化を十分に抑制することが困難となり、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差や、得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差が大きくなる。さらに、本発明に係るアニオン界面活性剤においては、リン化合物の吸尽量がより向上し、リン化合物によりひきおこされる染着速度の変化がさらに抑制され、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差や得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差がさらに小さくなる傾向にあるという観点から、前記モル比(P1のモル数:P2のモル数)としては、1:0.6〜1:1.6であることが好ましい。なお、前記置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)と前記置換基Xを有するフェノール骨格(P2)とのモル比は、アニオン界面活性剤を調製する際に用いられる原料における置換基Xを有さないフェノール系化合物と置換基Xを有するフェノール系化合物との混合モル比から求めることができる。
【0072】
また、本発明においては、前記アニオン界面活性剤における、フェノール骨格の重合度(N)の平均値が2〜30である。前記フェノール骨格の重合度とは、前記置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)及び前記置換基Xを有するフェノール骨格(P2)の重合度であり、下記式(i):
N=m+n+2 ・・・(i)
[式(i)中、m及びnはそれぞれ前記式(1)中のm及びnを示す。]
で表わされる。本発明に係るアニオン界面活性剤において、前記重合度(N)の平均値(以下、「平均重合度」という。)が前記下限未満となる場合には、重合反応が十分に進行されず、フェノール−ホルムアルデヒド系縮合物が形成されないため、リン化合物によりひきおこされる染着速度の変化を十分に抑制することが困難となり、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差や、得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差が大きくなる。他方、平均重合度が前記上限を超える場合には、高粘度となって取り扱いが困難となったり、ゲル化物が形成されるおそれがある。本発明に係るアニオン界面活性剤においては、リン化合物によりひきおこされる染着速度の変化がさらに抑制され、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差や得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差がさらに小さくなる傾向にあるという観点から、前記平均重合度としては、3〜15であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。なお、前記式(1)において、m及びnの値は、前記平均重合度が前記所定の範囲となるような値であり、難燃性阻害が少なく、難燃加工剤を水分散物とした場合に分散性が良好となるという観点からは、mは25以下であることが好ましく、nは20以下であることが好ましい。
【0073】
また、このようなフェノール−ホルムアルデヒド系縮合物の平均重合度は、前記縮合反応の際に、フェノール系化合物全体(置換基Xを有さないフェノール系化合物及び置換基Xを有するフェノール系化合物の合計モル数)に対するホルムアルデヒドの混合モル比を調整することによって制御することができる。例えば、ホルムアルデヒドの混合量を前記フェノール系化合物全体に対して、0.5〜0.97モル倍とすることによって、所定の平均重合度のフェノール−ホルムアルデヒド系縮合物を得ることができる。また、このようにして得られるフェノール−ホルムアルデヒド系縮合物においては、前記フェノール系化合物全体とホルムアルデヒドとの原料モル比から前記平均重合度を求めることができる。すなわち、フェノール系化合物の仕込みモル数(置換基Xを有さないフェノール系化合物及び置換基Xを有するフェノール系化合物の合計モル数)をa、ホルムアルデヒドの仕込みモル数をbとし、これらのうちの過剰成分であるフェノール系化合物の仕込みモル数を分母として、r=b/a(r<1)とし、反応率をpとすると、フェノール−ホルムアルデヒド系縮合物の数平均重合度(P)は、下記式:
=(1+r)/[2r(1−p)+(1−r)]
で表すことができ、反応率が100%(p=1)の場合には、
=(1+r)/(1−r)
で表わすことができる。ここで、数平均重合度(Pn)は、前記式(1)中のm及びnで表わすと{2(m+n)+3}の平均値として表わすことができる。また、本発明に係るアニオン界面活性剤における平均重合度は、フェノール骨格の重合度の平均値であるから、{(P+1)/2}で表わすことができる。
【0074】
さらに、本発明に係るアニオン界面活性剤における平均重合度は、フェノール−ホルムアルデヒド系縮合物の結合硫酸値から、置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)と置換基Xを有するフェノール骨格(P2)との比率Z:Zを求め、P1の分子量と前記比率Z、P2の分子量と前記比率Z、前記比率のフェノール骨格の結合に要するCHの量、並びにゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した数平均分子量に基づいて算出することもできる。
【0075】
このようなアニオン界面活性剤を用いることにより、リン化合物によりひきおこされる染料の染着速度の変化を抑制することができ、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合においても、染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との色差が十分に小さい難燃性ポリエステル系繊維を得ることが可能となる。また、リン化合物によりひきおこされる染料の染着速度の変化を抑制するという効果により、バッチ間での色差が小さい難燃性ポリエステル系繊維を得ることも可能となる。このようなアニオン界面活性剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
(難燃加工剤及びその製造方法)
本発明の難燃加工剤は、前記リン化合物及び前記アニオン界面活性剤を含有するものである。このような難燃加工剤の製造方法としては、特に制限されないが、前記リン化合物、前記アニオン界面活性剤及び水を混合し、前記リン化合物を水中に分散させることによって製造する方法や、前記リン化合物の水分散物に前記アニオン界面活性剤の水分散物を混合することによって製造する方法が挙げられる。また、本発明に係るアニオン界面活性剤は湿潤性に優れるため、前記リン化合物と前記アニオン界面活性剤とを粉末の状態で予め混合することにより製造した難燃加工剤を、難燃加工処理に用いる際に水中に分散して用いることもできる。本発明の難燃加工剤としては、リン化合物が水中に安定した状態で存在することができ、リン化合物をポリエステル系繊維に対して均一に吸尽させることができるという観点から、前記リン化合物及び前記アニオン界面活性剤を含有する水分散物からなるものであることが好ましい。
【0077】
本発明の難燃加工剤において、前記リン化合物の含有量としては、難燃加工剤全体に対して15〜70質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。前記リン化合物の含有量が前記下限未満である場合には、難燃加工剤の使用量を多くしないと、ポリエステル系繊維に十分な難燃性を付与することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、水分散物とした場合にリン化合物の分散安定性が低下する傾向にある。
【0078】
また、本発明の難燃加工剤において、前記アニオン界面活性剤の含有量としては、前記リン化合物100質量部に対して5〜40質量部である。前記アニオン界面活性剤の含有量が前記下限未満である場合には、リン化合物によりひきおこされる染着速度の変化を十分に抑制することが困難となり、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差や、得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差が大きくなる。他方、前記アニオン界面活性剤の含有量を前記上限を超えて増加させても、前記染着速度の変化を抑制する効果のさらなる向上は認められず、ポリエステル系繊維の色差のさらなる低下が認められないだけではなく、水分散物とした場合のリン化合物の分散安定性や吸尽量が低下し、ドライクリーニングに対する耐久難燃性が低下する。本発明の難燃加工剤においては、リン化合物によりひきおこされる染着速度の変化がさらに抑制され、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差や得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差がさらに小さくなる傾向にあるという観点から、前記アニオン界面活性剤の含有量としては、リン化合物100質量部に対して10〜40質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。
【0079】
本発明の難燃加工剤としては、本発明に係るアニオン界面活性剤以外の界面活性剤(以下、界面活性剤(B)とする)をさらに含有していてもよく、前記リン化合物を前記界面活性剤(B)を用いて水に分散させてから本発明に係るアニオン界面活性剤と混合して得られたものであってもよい。前記界面活性剤(B)としては、特に制限されないが、例えば、従来から用いられている非イオン界面活性剤、本発明に係るアニオン界面活性剤以外のアニオン界面活性剤を用いることができる。
【0080】
前記非イオン界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物等のエーテル型の非イオン界面活性剤;脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、油脂のアルキレンオキサイド付加物等のエーテルエステル型の非イオン界面活性剤;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリアルキレングリコール型界面活性剤;グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル等のエステル型の非イオン界面活性剤;多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等のその他の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0081】
前記本発明に係るアニオン界面活性剤以外のアニオン界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、脂肪酸セッケン等のカルボン酸塩のアニオン界面活性剤;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルポリアルキレングリコールエーテル硫酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸、硫酸化オレフィン等の硫酸エステル塩のアニオン界面活性剤;スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物スルホン酸塩、スルホン化フェノールアルキレンオキサイド付加物スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸等の本発明に係るアニオン界面活性剤以外のホルマリン縮合物、α−オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩等のスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤;高級アルコールリン酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のリン酸エステル塩のアニオン界面活性剤;N−メチルタウリンオレイン酸塩、N−メチルタウリンステアリン酸塩等のその他のアニオン界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、前記界面活性剤(B)としては、より安定した乳化分散が可能になる傾向にあるという観点から、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩を用いることがより好ましい。このような界面活性剤(B)としては、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0082】
本発明の難燃加工剤において、前記界面活性剤(B)を含有する場合、その含有量としては、リン化合物100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。前記界面活性剤(B)の含有量が前記上限を超える場合には、ポリエステル系繊維へのリン化合物の吸尽量が低くなり、ポリエステル系繊維に十分な難燃性を付与することが困難となる傾向にある。
【0083】
また、本発明の難燃加工剤が前記リン化合物及び前記アニオン界面活性剤を含有する水分散物からなるものである場合には、分散状態にあるリン化合物の平均粒径(メジアン径(d50))が、1.0μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。分散状態にあるリン化合物の平均粒径が前記上限を超える場合には、リン化合物の分散安定性が低下する傾向にある。このような平均粒径でリン化合物を分散させる方法としてはホモミキサーを用いて転相乳化する方法や、ビーズミル等を用いて湿式分散させる方法が挙げられる。また、リン化合物の平均粒径(メジアン径(d50))に加え、90%粒径(d90)が1.0μm以下(より好ましくは0.8μm以下)になると、さらに安定な乳化分散状態にある難燃加工剤を得ることができる。なお、平均粒径(メジアン径(d50))とは、積算体積粒度分布において積算体積が小径側から50%となる粒径をいい、90%粒径(d90)とは、積算体積粒度分布において積算体積が小径側から90%となる粒径をいう。
【0084】
本発明の難燃加工剤においては、本発明の効果を損なわない範囲において、保護コロイド剤、有機溶媒を添加することができる。これらを添加することにより、難燃加工剤中の各成分の分離、沈降を抑制し、難燃加工剤の分散状態の経時的な変化を抑制することが可能となる。前記保護コロイド剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、澱粉、自己乳化分散性ポリエステル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等の水溶性高分子化合物が挙げられ、前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等の水溶性有機溶剤が挙げられる。
【0085】
本発明の難燃加工剤は、後述するように、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合に、リン化合物によりひきおこされる染料の染着速度の変化を抑制して、得られる難燃性ポリエステル系繊維と染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差を小さくしたり、得られる難燃性ポリエステル系繊維のバッチ間における色差を小さくしたりすることができるものであるが、ポリエステル系繊維に難燃性を付与できるという観点から、その使用態様は、染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合に限られるものではない。
【0086】
<難燃性ポリエステル系繊維>
次いで、本発明の難燃性ポリエステル系繊維及びその製造方法について説明する。本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に、本発明の難燃加工剤を用いて前記ポリエステル系繊維に難燃加工処理を施すことによって製造することができるものである。このように、本発明の難燃加工剤を用いてポリエステル系繊維に対して染色加工処理及び難燃加工処理を同時に施すことによって、ポリエステル系繊維にリン化合物が吸尽(吸着及び/又は吸収)され、耐久性に優れた難燃性が付与された難燃性ポリエステル系繊維が得られるとともに、得られる難燃性ポリエステル系繊維と、染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との間の色差を小さくすることが可能となる。
【0087】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維に用いられるポリエステル系繊維としては、特に制限されず、例えば、レギュラーポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、再生ポリエステル繊維、又はこれらのうちの2種以上からなるポリエステル系繊維や、これらのポリエステル系繊維と、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ナイロン、アクリル、ポリアミド等の合成繊維;炭素、ガラス、セラミックス、金属等の無機繊維との混紡繊維が挙げられ、その形態としては、糸、トウ、トップ、カセ、織物、編み物、不織布、ロープ等が挙げられる。
【0088】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維において、前記リン化合物の吸尽量は特に制限されないが、前記ポリエステル系繊維に対して0.1〜30%o.w.f.(繊維質量に対する質量%)であることが好ましく、0.5〜20%o.w.f.であることがより好ましく、1.0〜15%o.w.f.であることが特に好ましい。前記リン化合物の吸尽量が前記下限未満である場合には、十分な難燃性が発揮されないおそれがある。一方、前記リン化合物の吸尽量が多くなるにつれて難燃性は向上するが、前記上限を超える場合には、常温で固体となるリン化合物を用いた場合に繊維の風合いが硬くなるおそれがある。
【0089】
本発明の難燃加工剤を用いて前記ポリエステル系繊維に染色加工処理と同時に難燃加工処理を施す方法としては、特に制限されず、例えば、高圧吸尽法;パディング法、スプレー法、コーティング法、プリント法等のサーモゾル法が挙げられる。
【0090】
前記高圧吸尽法により染色と同浴で前記ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施す場合には、先ず、分散染料及び分散型カチオン染料のうちの少なくとも1種、分散均染剤、及びpH調整剤(例えば酢酸)等を含有する通常の染色液に、前記リン化合物濃度が0.1〜30%o.w.f.(染色液中における繊維質量に対する質量%)となるように本発明の難燃加工剤を添加して難燃・染色液を調製する。次いで、調製した難燃・染色液の浴に前記ポリエステル系繊維を浸漬せしめ、浴比1:5〜1:30(より好ましくは1:8〜1:20)、110〜150℃(より好ましくは120〜145℃)で10〜90分間(より好ましくは20〜60分間)熱処理を施すことによって、前記ポリエステル系繊維が染色されるとともに、前記リン化合物をポリエステル系繊維に吸着及び/又は吸収させることができる。前記難燃・染色加工処理の温度及び時間が前記下限未満である場合には、リン化合物が溶融しにくく、また、ポリエステル系繊維の非結晶領域が緩みにくいため、リン化合物が十分にポリエステル系繊維に吸着及び/又は吸収されず、ポリエステル系繊維に十分な難燃性を付与することが困難となる傾向にある。他方、前記上限を超えても、難燃性付与効果はそれ以上向上しないばかりか、ポリエステル系繊維の変色や脆化が発生する傾向にある。このような高圧吸尽法に使用する設備としては、液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機等が挙げられる。
【0091】
前記パディング法により染色と同浴で前記ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施す場合には、先ず、分散染料及び分散型カチオン染料のうちの少なくとも1種、分散均染剤、及びpH調整剤(例えば酢酸)等を含有する通常の染色液に本発明の難燃加工剤を添加して難燃・染色液を調製する。次いで、調製した難燃・染色液の浴にポリエステル系繊維をパディングして難燃・染色液を付着させる。前記リン化合物のポリエステル系繊維への付着量としては0.1〜30%o.w.f.であることが好ましく、このような付着量は前記難燃・染色液における前記リン化合物濃度やピックアップ率を調整することにより調整することができる。
【0092】
また、スプレー法やコーティング法、プリント法により染色と同時に前記ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施す場合には、分散染料及び分散型カチオン染料のうちの少なくとも1種、分散均染剤、及びpH調整剤(例えば、酢酸)等を含有する通常の染色液に本発明の難燃加工剤を添加して難燃・染色液を調製する。次いで、調製した難燃・染色液をスプレーやコーティング、プリントによってポリエステル系繊維に付着させる。前記リン化合物のポリエステル系繊維への付着量としては0.1〜30%o.w.f.であることが好ましく、このような付着量は前記難燃・染色液における前記リン化合物濃度やピックアップ率を調整することにより調整することができる。
【0093】
このようにして難燃・染色液を付着させたポリエステル系繊維に、乾熱処理;常圧スチーム処理、加熱スチーム処理、高圧スチーム処理等の蒸熱処理を施すことによって、ポリエステル系繊維が染色されるとともに、前記リン化合物をポリエステル系繊維に吸着及び/又は吸収させることができる。前記乾熱処理及び前記蒸熱処理の温度としては、通常は110〜210℃であり、160℃〜210℃であることが好ましい。前記乾熱処理及び前記蒸熱処理の温度が前記下限未満である場合には、リン化合物がポリエステル系繊維に十分に吸着及び/又は吸収されず、ポリエステル系繊維に十分な難燃性を付与することが困難となる傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、ポリエステル系繊維の変色や脆化が発生する傾向にある。
【0094】
前記スプレー法において使用するスプレーとしては、例えば、圧搾空気により難燃・染色液を霧状にして吹き付けるエアースプレー、液圧霧化方式のエアースプレーが挙げられる。前記コーティング法において使用するコーターとしては、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、カーテンコーター、カレンダーコーターが挙げられる。前記プリント法において使用する捺染機としては、例えば、ローラー捺染機、フラットスクリーン捺染機、ロータリースクリーン捺染機が挙げられる。
【0095】
また、前記コーティング法により難燃加工処理を施す場合には、本発明の難燃加工剤を含有する難燃・染色液に前記界面活性剤(B)からなる起泡剤を添加して泡状の難燃・染色液を調製し、ポリエステル系繊維に付着させる泡加工コーティング法、本発明の難燃加工剤を含有する難燃・染色液に粘度調整剤を添加して加工に適した粘度に調整した難燃・染色液を使用するコーティング法等を適用することができる。
【0096】
なお、前記泡加工コーティング法によれば、難燃加工剤の必要量をポリエステル系繊維に付着させることができ、難燃・染色液を全量無駄なく使用することができため、乾燥に要するエネルギー及び時間を大幅に短縮できるが、前記起泡剤の作用により難燃加工剤の吸尽量が低下するおそれがあるため、前記起泡剤の使用量を必要最低限に抑えることが重要である。また、前記粘度調整剤としては特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ザンタンガム、デンプン糊が挙げられる。
【0097】
また、このようにして得られる難燃性ポリエステル系繊維としては、難燃・染色加工処理を施された後に、通常の公知の方法によってソーピング処理が施され、ポリエステル系繊維に浸透又は固着せずに表面に残留した余剰のリン化合物、分散染料、分散型カチオン染料等を除去されたものであることが好ましい。繊維表面に単に付着しただけの余剰のリン化合物、分散染料、分散型カチオン染料等は、ポリエステル系繊維の難燃性を阻害するおそれがある。このようなソーピング処理の方法としては、特に制限されず、例えば、0.3〜5g/Lのソーピング剤、0.3〜5g/Lの再汚染防止剤、0.3〜5g/Lのソーダ灰、及び水を含有するソーピング処理浴(浴比1:5〜1:30)に、難燃・染色加工処理が施された難燃性ポリエステル系繊維を浸漬し、50〜90℃で5〜30分間熱処理する方法が挙げられる。前記ソーピング剤としては特に制限されず、通常のアニオン系、非イオン系、両性系の界面活性剤及びこれらが配合された市販のソーピング剤が挙げられる。また、前記再汚染防止剤についても特に制限されず、市販の再汚染防止剤を使用することができる。
【0098】
また、本発明の難燃性ポリエステル系繊維を製造する場合、本発明の効果を損なわない範囲において、他の繊維用加工剤を本発明の難燃加工剤と併用することもできる。このような繊維用加工剤としては、例えば、浴中柔軟剤、帯電防止剤、撥水撥油剤、防汚剤、硬仕上げ剤、風合調整剤、柔軟剤、抗菌剤、吸水剤、スリップ防止剤、耐光向上剤、キャリヤー剤、オリゴマー分散剤等が挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
<アニオン界面活性剤の調製>
(調製例1)
反応容器に、クレゾール86g(0.8モル)、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム269g(1.2モル)、37質量%ホルマリン溶液130g(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8g及び水507gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(A−1)の水分散物(不揮発分41.1質量%)を得た。
【0101】
(調製例2)
反応容器に、クレゾール130g(1.2モル)、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム179g(0.8モル)、37質量%ホルマリン溶液130g(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8g及び水553gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(A−2)の水分散物(不揮発分36.5質量%)を得た。
【0102】
(調製例3)
反応容器に、クレゾール130g(1.2モル)、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム179g(0.8モル)、37質量%ホルマリン溶液141.8g(ホルムアルデヒド1.75モル)、水酸化ナトリウム10g及び水540gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(A−3)の水分散物(不揮発分37.1質量%)を得た。
【0103】
(調製例4)
反応容器に、クレゾール86g(0.8モル)、クレゾールスルホン酸ナトリウム252g(1.2モル)、37質量%ホルマリン溶液108.1g(ホルムアルデヒド1.33モル)、水酸化ナトリウム8g及び水546gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(A−4)の水分散物(不揮発分38.6質量%)を得た。
【0104】
(調製例5)
反応容器に、フェノール75g(0.8モル)、フェノールスルホン酸ナトリウム235g(1.2モル)、37質量%ホルマリン溶液130g(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8g及び水552gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(A−5)の水分散物(不揮発分36.6質量%)を得た。
【0105】
(調製例6)
反応容器に、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム448g(2.0モル)、37質量%ホルマリン溶液130g(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8g及び水414gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(a−1)の水分散物(不揮発分50.4質量%)を得た。
【0106】
(調製例7)
反応容器に、クレゾールスルホン酸ナトリウム420g(2.0モル)、37質量%ホルマリン溶液130g(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8g及び水442gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(a−2)の水分散物(不揮発分47.6質量%)を得た。
【0107】
(調製例8)
反応容器に、クレゾール86g(0.8モル)、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム269g(1.2モル)、37質量%ホルマリン溶液33g(ホルムアルデヒド0.4モル)、水酸化ナトリウム2g及び水610gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(a−3)溶液(不揮発分36.9質量%)を得た。
【0108】
(調製例9)
反応容器に、クレゾール86g(0.8モル)、クレゾールスルホン酸ナトリウム252g(1.2モル)、37質量%ホルマリン溶液33g(ホルムアルデヒド0.4モル)、水酸化ナトリウム2g及び水627gを仕込み、約100℃で5時間反応させて、アニオン界面活性剤(a−4)溶液(不揮発分35.2質量%)を得た。
【0109】
調製例1〜7においては、残留ホルムアルデヒド濃度が0.1%未満であったため、各反応率を100%とした。フェノール系化合物に対するホルムアルデヒドの比率が低い調製例8〜9においては、重合反応が十分に進行せずにクレゾールが残留し、界面活性剤の安定な水分散物を得ることができなかった。得られたアニオン界面活性剤におけるフェノール骨格のモル比を原料の仕込み比から求めた。また、得られたアニオン界面活性剤の平均重合度をフェノール系化合物とホルムアルデヒドとの原料モル比から求めた。これらの結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
(実施例1)
<難燃加工剤の調製>
リン化合物として10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、アニオン界面活性剤としてアニオン界面活性剤(A−1)の水分散物、及び水を、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドが40質量部、アニオン界面活性剤(A−1)が不揮発分換算で10質量部、水が50質量部となるように混合し、マイルダーを用いて予備分散した後、ビーズミルを用いて乳化分散処理を施し、分散物のメジアン径(d50)が0.6μm以下であり、90%粒径(d90)が0.8μm以下である難燃加工剤を調製した。なお、分散物のメジアン径(d50)及び90%粒径(d90)は以下の方法により測定した。また、得られた難燃加工剤を20℃で30日間静置し、静置後の難燃加工剤における分散物のメジアン径(d50)を再度測定した。その結果を表2に示す。
【0112】
(メジアン径(d50)及び90%粒径(d90)の測定)
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製「LA−920」)を用いて難燃加工剤の積算体積粒度分布を測定し、積算体積が小粒径側から50%となる粒子径をメジアン径(d50)とし、積算体積が小径側から90%となる粒径を90%粒径(d90)とした。
【0113】
<難燃・染色加工処理(1)>
先ず、得られた難燃加工剤を12%o.w.f.の割合で、分散染料としてDianix Red AC−E01、Dianix Yellow AC−E NEW及びDianix Blue AC−E(いずれも、ダイスタージャパン(株)製)を各々0.2%o.w.f.の割合で、分散均染剤(日華化学(株)製「ニッカサンソルトRM−3406」)を0.5g/Lで、80質量%酢酸を0.5g/Lで含有する難燃・染色加工処理液を調製した。
【0114】
次いで、ポリエステル系繊維(レギュラーポリエステル(100%)未染色布、目付220g/m、横糸原着)をミニカラー染色機((株)テクサム技研製「MINI−JET D−100」)にセットし、前記難燃・染色加工処理液を仕込んだ染色同浴中、浴比1:15の条件で、常温から昇温速度2℃/分で130℃まで昇温し、130℃で30分間保持して、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施した。
【0115】
次いで、前記難燃・染色加工処理が施されたポリエステル系繊維を、ソーピング剤(日華化学(株)製「ニッカサンソルトRE−5」)1g/L及びソーダ灰1g/Lを含有する水溶液に浸漬し、80℃で20分間のソーピング処理を施した。このソーピング処理後のポリエステル系繊維を水洗し、180℃で1分間乾燥して難燃性ポリエステル系繊維を得た。得られた難燃性ポリエステル系繊維の難燃成分吸尽量及び難燃性を以下の方法によりそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
【0116】
(難燃成分吸尽量)
難燃加工剤を用いなかったこと以外は前記難燃・染色加工処理(1)と同様にしてポリエステル系繊維に染色加工処理を施し、ポリエステル染色布を作製した。このポリエステル染色布及び前記難燃性ポリエステル系繊維の質量を測定して質量差を求め、ポリエステル系繊維(未染色布)の質量に対する前記質量差の割合を難燃成分吸尽量(%)とした。
【0117】
(難燃性)
水洗い洗濯前の加工上がりの試料として、得られた難燃性ポリエステル系繊維をそのまま用いた。また、水洗い洗濯後の試料として、JIS L 1091(1999)に記載の方法に従って、得られた難燃性ポリエステル系繊維を5回水洗い洗濯したものを用いた。さらに、ドライクリーニング後の試料として、JIS L 1018(1999)に記載の方法に従って、得られた難燃性ポリエステル系繊維を5回ドライクリーニングしたものを用いた。これらの試料について、以下の方法により難燃性を評価した。
・45゜ミクロバーナー法
JIS L 1091(1999)に記載のA−1法により、残炎時間と燃焼面積を測定した。なお、残炎時間が3秒以内且つ燃焼面積が30cm以下の場合を「A」、それ以外の場合を「B」と判定した。
・コイル法(接炎試験)
JIS L 1091(1999)に記載のD法により、接炎回数を測定した。なお、接炎回数が3回以上の場合を「A」、2回以下の場合を「B」と判定した。
【0118】
<難燃・染色加工処理(2)>
分散染料の濃度を各々0.1%o.w.f.に変更したこと以外は前記難燃・染色加工処理(1)と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。得られた難燃性ポリエステル系繊維の色差を以下の方法により評価した。その結果を表2に示し、色差の評価におけるa*値とb*値との関係を示すグラフを図1に示す。なお、図1には、難燃加工剤を用いずに得られたポリエステル染色布におけるa*値とb*値との関係を示すグラフを共に示す。
【0119】
(色差)
難燃加工剤を用いなかったこと以外は前記難燃・染色加工処理(2)と同様にしてポリエステル系繊維に染色加工処理を施し、ポリエステル染色布を作製した。このポリエステル染色布と前記難燃性ポリエステル系繊維との色差(ΔE)を測色計(ミノルタ(株)製「CM−3700d」)を用いて測定した。
【0120】
また、前記難燃性ポリエステル系繊維の色相を知覚色度指数(a*値、b*値)で判定し、図1に示すように、a*値をx軸に、b*値をy軸にプロットした。a*値、b*値が、ポリエステル染色布の場合と同様に右下がりに推移したものを「A」、ポリエステル染色布の場合とは逆に右上がりに推移したものを「B」と判定した。
【0121】
(実施例2〜20)
リン化合物及びアニオン界面活性剤の種類と配合量、並びに水の配合量をそれぞれ表2〜3に示す種類及び配合量にしたこと以外は、実施例1と同様にして難燃加工剤を調製した。得られた難燃加工剤における調製直後のメジアン径(d50)及び20℃で30日間静置した後のメジアン径(d50)を測定した。また、得られた難燃加工剤を用い、実施例1と同様にして、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施し、各種特性を評価した。その結果を表2〜3に示す。また、実施例2〜6で得られた難燃性ポリエステル系繊維について、色差の評価におけるa*値とb*値との関係を示すグラフをそれぞれ図2〜6に示す。なお、図2〜6には、難燃加工剤を用いずに得られたポリエステル染色布におけるa*値とb*値との関係を示すグラフを共に示す。
【0122】
(実施例21〜26)
リン化合物及びアニオン界面活性剤の種類と配合量、並びに水の配合量をそれぞれ表4に示す種類及び配合量にし、さらに、界面活性剤B−1(トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド(10モル)付加物の硫酸エステルアンモニウム塩)を5質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして難燃加工剤を調製した。得られた難燃加工剤における調製直後のメジアン径(d50)及び20℃で30日間静置した後のメジアン径(d50)を測定した。また、得られた難燃加工剤を用い、実施例1と同様にして、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施し、各種特性を評価した。その結果を表4に示す。
【0123】
(比較例1〜6)
リン化合物の種類と配合量、並びに水の配合量をそれぞれ表5に示す種類及び配合量にし、アニオン界面活性剤に代えて界面活性剤B−1を5質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして難燃加工剤を調製した。得られた難燃加工剤における調製直後のメジアン径(d50)及び20℃で30日間静置した後のメジアン径(d50)を測定した。また、得られた難燃加工剤を用い、実施例1と同様にして、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施し、各種特性を評価した。その結果を表5に示す。また、比較例1〜6で得られた難燃性ポリエステル系繊維について、色差の評価におけるa*値とb*値との関係を示すグラフを図1〜6にそれぞれ示す。
【0124】
(比較例7〜20)
リン化合物及びアニオン界面活性剤の種類と配合量、並びに水の配合量をそれぞれ表5〜6に示す種類及び配合量にしたこと以外は、実施例1と同様にして難燃加工剤を調製した。得られた難燃加工剤における調製直後のメジアン径(d50)及び20℃で30日間静置した後のメジアン径(d50)を測定した。また、得られた難燃加工剤を用い、実施例1と同様にして、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施し、各種特性を評価した。その結果を表5〜6に示す。
【0125】
(比較例21〜22)
リン化合物及びアニオン界面活性剤の種類と配合量、並びに水の配合量をそれぞれ表7に示す種類及び配合量にし、さらに、界面活性剤B−1を5質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして難燃加工剤を調製した。得られた難燃加工剤における調製直後のメジアン径(d50)及び20℃で30日間静置した後のメジアン径(d50)を測定した。また、得られた難燃加工剤を用い、実施例1と同様にして、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施し、各種特性を評価した。その結果を表7に示す。
【0126】
(比較例23〜28)
リン化合物の種類と配合量、並びに水の配合量をそれぞれ表5に示す種類及び配合量にし、アニオン界面活性剤に代えて界面活性剤B−1を5質量部及び界面活性剤B−2(ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩のホルマリン縮合物(平均重合度10))を10質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして難燃加工剤を調製した。得られた難燃加工剤における調製直後のメジアン径(d50)及び20℃で30日間静置した後のメジアン径(d50)を測定した。また、得られた難燃加工剤を用い、実施例1と同様にして、ポリエステル系繊維に難燃・染色加工処理を施し、各種特性を評価した。その結果を表7に示す。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
表2〜7において、芳香族リン化合物は10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを、リン酸エステル化合物(1)はビフェニルジフェニルホスフェートを、リン酸エステル化合物(2)は(2−フェノキシエチル)ジフェニルホスフェートを、芳香族ホスフェート化合物はレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を、リン酸アミド化合物はアニリノジフェニルホスフェートを、TPPOはトリフェニルホスフィンオキシドを、それぞれ示す。
【0134】
表2〜4に示した結果から明らかなように、本発明の難燃加工剤は、30日間の静置後も高い分散性が維持されており、保存安定性に優れたものであることが確認された。また本発明の難燃加工剤を用いて染色と同浴で難燃・染色加工処理を施した場合(実施例1〜26)には、ポリエステル系繊維に耐久性に優れた難燃性を付与することができるとともに、染色加工のみを施したポリエステル系繊維との色差(ΔE)を十分に小さくできることが確認された。
【0135】
一方、表5に示した結果から明らかなように、比較例1〜10で得られた難燃加工剤においてはポリエステル系繊維に耐久性に優れた難燃性を付与することができるものの、染色加工のみを施したポリエステル系繊維との色差(ΔE)は大きなものとなった。また、未反応のクレゾールを有する比較例9〜10で得られた難燃加工剤においてはメジアン径(d50)が時間経過に伴って増大し、撹拌しても調製直後のメジアン径に戻すことができなかった。さらに、表6〜7に示した結果から明らかなように、本発明に係るリン化合物と本発明に係るアニオン界面活性剤とを併用した場合であっても、アニオン界面活性剤の使用量が少ないと、色差を抑える効果が得られず、他方、アニオン界面活性剤の使用量が多いと、ドライクリーニング後の難燃効果が低下する傾向にあることが確認された(比較例11〜22)。さらに、表7に示した結果から明らかなように、本発明に係るアニオン界面活性剤に代えてナフタレンスルホン酸ナトリウム塩のホルマリン重合物(界面活性剤B−2)を用いた場合(比較例23〜28)では、染色加工のみを施したポリエステル繊維との色差(ΔE)が十分に小さな染色物を得ることができなかった。
【0136】
また、図1〜6に示した結果から明らかなように、本発明に係るアニオン界面活性剤を含有しない難燃加工剤を用いて染色と同浴で難燃・染色加工処理を施した場合(比較例1〜6)には、染色加工処理のみを施した場合とは異なる染色挙動を示した。これは、リン化合物の影響により、各染料の染着速度が変化したためと推察される。
【0137】
他方、実施例1〜6では、染色加工のみを施したポリエステル繊維との色差(ΔE)が十分に小さいだけではなく、a*値、b*値の推移傾向が染色加工のみを施した場合と同様であり、染色挙動が近似していることが確認された。このように、本発明に係るアニオン界面活性剤を用いることによって、リン化合物によりひきおこされる染料の染着速度の変化を十分に抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上説明したように、本発明によれば、ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に難燃加工処理を施す場合においても、染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との色差が十分に小さい難燃性ポリエステル系繊維を得ることが可能な難燃加工剤を提供することが可能となる。
【0139】
従って、本発明の難燃加工剤は、染色加工処理のみを施したポリエステル系繊維との色差が十分に小さい高品質の難燃性ポリエステル系繊維を得ることができる難燃加工剤として有用である。また、バッチ間での色差が小さい高品質の難燃性ポリエステル系繊維を得ることができる難燃加工剤としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン化合物と、下記一般式(1):
【化1】

[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(2)又は(3):
【化2】

で表わされる基を示し、m及びnは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、式(1)、(2)及び(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Xは、−SOH、−CHSOH、及びこれらの塩で表わされる基からなる群から選択されるいずれか1つの置換基を示す。]
で表わされ、且つ、置換基Xを有さないフェノール骨格(P1)と置換基Xを有するフェノール骨格(P2)とのモル比(P1のモル数:P2のモル数)が1:0.2〜1:2.0であり、次式(i):
N=m+n+2 ・・・(i)
[式(i)中、m及びnはそれぞれ前記式(1)中のm及びnを示す。]
で表わされるフェノール骨格の重合度(N)の平均値が2〜30であるアニオン界面活性剤とを含有しており、
前記アニオン界面活性剤の含有量が、前記リン化合物100質量部に対して、5〜40質量部であることを特徴とするポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【請求項2】
前記リン化合物及び前記アニオン界面活性剤を含有する水分散物からなるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【請求項3】
前記リン化合物が、下記一般式(4):
【化3】

[式(4)中、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。]
で表されるリン酸エステル化合物;下記一般式(5):
【化4】

[式(5)中、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基を示し、R12は、炭素数1〜4のアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、qは、1〜20の整数を示す。]
で表される芳香族ホスフェート化合物;下記一般式(6):
【化5】

[式(6)中、R13は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、及び下記一般式(7):
【化6】

[式(7)中、R14は、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。]
で表される基からなる群から選択されるいずれか1つを示す。]
で表される芳香族リン化合物;下記一般式(8);
【化7】

[式(8)中、R15及びR16は、同一でも異なっていてもよく、R15及びR16が相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれか1つを示し、R17及びR18は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
で表されるリン酸アミド化合物;下記式(9):
【化8】

で表されるトリフェニルホスフィンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【請求項4】
ポリエステル系繊維に染色加工処理を施すと同時に、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いて前記ポリエステル系繊維に難燃加工処理を施すことを特徴とする難燃性ポリエステル系繊維の製造方法。
【請求項5】
ポリエステル系繊維に、染色加工処理と同時に請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いた難燃加工処理が施されたものであることを特徴とする難燃性ポリエステル系繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79472(P2013−79472A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220761(P2011−220761)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】