説明

ポリエチレン系積層フィルム

【課題】柔軟性、透明性、延伸の均一性に優れ、かつ、積層界面の剥離強度の強いポリオレフィン系積層フィルムの提供
【解決手段】(A)層は冷キシレン可溶成分が20〜80重量%で、該冷キシレン可溶成分は極限粘度が0.8〜2.5dl/gであり、かつ、プロピレンの含有率が50重量%以上である非晶性ポリα−オレフィンからなり、(B)層はメタロセン触媒で製造されたポリエチレンからなり、(A)層と(B)層とが積層されたポリエチレン系積層フィルムである。(B)層を構成するメタロセン触媒で製造されたポリエチレンは密度が0.890〜0.935g/cm3、分子量分布が2.2〜5.5のものが好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は少なくとも2層からなる軟質のポリエチレン系積層フィルムに関する。詳しくは、本発明の軟質のポリエチレン系積層フィルムは特定の特性を有するプロピレン含有率50重量%以上の非晶性ポリα−オレフィンからなる層と特定の触媒を用いて製造されたポリエチレンからなる層とを構成層とする積層フィルムであって、積層面の界面の剥離強さが強く、透明性及び均一延伸性に優れている。この積層フィルムは、表面保護フィルム、ダイシングフィルム、テーブルクロスなどに利用される。
【0002】
【従来技術】従来、軟質のフィルムとしては、可塑剤を含有する軟質のポリ塩化ビニルフィルムが多く使用されてきた。しかし、軟質のポリ塩化ビニルフィルムは、焼却時に有害ガスを発生する、また、含有する可塑剤が生物や環境に悪影響を与えるなど、ポリ塩化ビニルフィルムを使用することが社会問題となっている。そこで、ポリ塩化ビニルフィルムに代わる軟質のフィルム材料として、焼却時に有害ガスを発生することの無いポリオレフィン系材料を用いたフィルムの開発が進められている。ポリオレフィン系のフィルム材料としては、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のポリオレフィン系フィルムは軟質のポリ塩化ビニルフィルムに比べると種々の面で不十分な点があった。例えば、ポリプロピレンを主体とするフィルムは結晶性が高く、柔軟性、延伸性やフィルムの成形加工範囲が狭いなどの課題があり、又、ポリエチレンを主体とするフィルムは透明性、機械的強度や耐熱性に課題があった。これら課題の改善を目的に、種々の研究が行われ、各種のオレフィン系材料を組合せたブレンド組成物からなるフィルムや積層フィルムなどが提案されている。例えば、ポリプロピレンに柔軟性を付与する提案として、特開平7−300548号公報では、ポリプロピレンとポリプロピレン・エチレンランダム共重合体を主成分とするブロック共重合体とのブレンド組成物からなるフィルムが開示されている。又、ポリプロピレンにスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンやエチレン・プロピレンゴムなどの熱可塑性エラストマーをブレンドして、柔軟性を賦与したフィルムの提案もある。これらのフィルムの柔軟性は改善されているが、ポリプロピレンとブレンドされる材料との相溶性の関係で透明性が十分でなかったり、軟質のポリ塩化ビニルフィルムに比べると多方向に引伸ばされた際の均一な延伸性や加工性などは不十分であった。
【0004】また、特開平6−927号公報には、プロピレン及び/又はブテン−1の含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフィンを主成分とする樹脂組成物からなる層とポリエチレンからなる層とを構成層とする積層フィルムが提案されている。この積層フィルムは軟質のポリ塩化ビニルフィルムとほぼ同等の柔軟性や透明性を有する。しかし、この積層フィルムは繰返し折り曲げられたり、真空成形などにより部分的に延伸された場合、非晶性ポリオレフィンを主成分とする層とポリエチレン層とが界面で容易に剥離することがある。又、軟質のポリ塩化ビニルフィルムに比べ、多方向に引伸ばされた際の均一な延伸性は不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような課題の少ない、即ち、柔軟性、透明性、延伸の均一性に優れ、かつ、積層界面の剥離強度の強いポリオレフィン系積層フィルムの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題解決のため、各種ポリオレフィンを用い、ブレンド組成物のフィルムや積層フィルムの性質を検討した。その結果、特定の特性を有する非晶性ポリα−オレフィンからなる層と特定の触媒を用いて製造されたポリエチレンからなる層を構成層とする積層フィルムは積層界面の剥離強度が強く、かつ、柔軟性、透明性、延伸の均一性が良好なことを見出し、本発明に到達した。
【0007】即ち、本発明は、(A)層は冷キシレン可溶成分が20〜80重量%で、該冷キシレン可溶成分は極限粘度が0.8〜2.5dl/gであり、かつ、プロピレンの含有率が50重量%以上である非晶性ポリα−オレフィンからなり、(B)層はメタロセン触媒で製造されたポリエチレンからなり、(A)層と(B)層とが積層されたポリエチレン系積層フィルムである。
【0008】一般にポリエチレン層を構成層とする積層フィルムは積層面の剥離強度が弱いとされている。本発明の特定の非晶性ポリα−オレフィンからなる層とメタロセン触媒で製造されたポリエチレンからなる層とを積層したフィルムの界面の剥離強度が強いことを見出したことは本発明の特徴である。剥離強度が強くなる理由は明らかでないが、剥離強度がポリエチレンを製造する触媒や密度と関係していることからメタロセン触媒で製造されたポリエチレンの結晶構造が影響していると考えられる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の(A)層は冷キシレン可溶成分が20〜80重量%、好ましくは、30〜70重量%であり、該冷キシレン可溶成分の極限粘度が0.8〜2.5dl/g、好ましくは、1.0〜2.1dl/gであって、かつ、プロピレンの含有率が50重量%以上の非晶性ポリα−オレフィンで構成される。冷キシレン可溶成分の量はポリマーの非晶性の程度を示す尺度の一つである。この冷キシレン可溶成分が20wt%より少ない場合、積層フィルムの柔軟性や均一な延伸性が低下することがある。一方、80wt%より多い場合、積層フィルムの機械的強度が低下したり、単独でフィルムやシートを製造することが難しくなることがある。
【0010】なお、冷キシレン可溶成分の量は以下の方法で求められる。非晶性ポリα−オレフィンを80〜100倍量のキシレンに加え、この溶液を30分間沸騰させた後、その容器を水で冷却し、溶液の温度を20℃にする。次いで、乾燥したグラスフィルター(フィルターの目のサイズ:5G)を用い、減圧濾過により冷キシレンに未溶解の成分(以下、「濾過物」と記載する。)と冷キシレン可溶成分が溶解したキシレン(以下、「濾液」と記載する。)とに濾別する。濾過物の残ったグラスフィルターを減圧乾燥し、ほぼ恒量になるまで乾燥した後、その重量を測定し、式(1)により冷キシレン可溶成分の量は求められる。
【数1】
冷キシレン可溶成分(重量%)=(1−(M−N)/S)×100 (1)
(ただし、式中、Mは乾燥後の濾過物とグラスフィルターの重量、Nは乾燥したグラスフィルターの重量、Sはキシレンに加えた非晶性ポリα−オレフィンの重量である。それぞれの重量の単位はgである。)
【0011】なお、本発明で使用される非晶性ポリα−オレフィンは実質的に非晶性と同様の挙動を示すポリオレフィンのことであり、その結晶化度は30%以下、通常、0.1〜25%の低結晶性ポリオレフィンで、密度0.885g/cm3以下のものである。結晶化度はJIS K 7112の密度勾配管法で測定した密度を基に、ポリプロピレンの100%結晶の密度を0.936、完全非晶の密度を0.855として計算された値である。密度測定のサンプルは、非晶性ポリオレフィンのペレットをテフロンコートした金属板の間に挟み、190℃で加熱圧縮して、シート化した後、23℃で放冷することにより、作成される。
【0012】本発明で使用される非晶性ポリα−オレフィンは、冷キシレン可溶成分の量が20〜80wt%の範囲にあって、かつ、その冷キシレン可溶成分の極限粘度が0.8〜2.5dl/gの範囲にあるものである。極限粘度が0.8dl/gより小さい場合、積層フィルムの機械的強度が低下したり、単独でフィルムやシートを製造することが難しくなることがある。一方、2.5dl/gより大きい場合、積層フィルムの柔軟性や均一な延伸性が低下することがある。
【0013】冷キシレン可溶成分の極限粘度は次の方法で測定される。極限粘度測定に使用する試料の冷キシレン可溶成分は、上記の濾液をロータリーエバポレーターで約1/10の量に濃縮した後、この濃縮液に約9倍量のアセトンを加え、溶解していた冷キシレン可溶成分を析出、沈殿させ、この沈殿物を濾過回収し、乾燥することにより得られる。極限粘度は、この冷キシレン可溶成分20mgに20mlのデカリンを加え、135℃の恒温油槽中で冷キシレン可溶成分をデカリンに完全に溶解させ、ウベローデ型粘度計を用い、135℃で測定した試料の落下所用時間とデカリン単独の落下所用時間を基に求められる。
【0014】又、本発明で使用される非晶性ポリα−オレフィンはプロピレンの含有率が50重量%以上のポリオレフィンである。その構造はプロピレンの単独重合体でも良く、又、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体であっても良い。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例としては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセンー1、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1などが挙げられる。共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。共重合体の場合、プロピレンの含有量は共重合体全体に対して50重量%以上、好ましくは60重量%以上である。プロピレンの含有量が50重量%より少ない場合、機械的強度が低下したり、単独でフィルムやシートを製造することが難しくなることがある。
【0015】又、耐熱性や機械的性質をより高める必要がある場合、本発明で使用する非晶性ポリα−オレフィンに結晶性ポリプロピレンを添加することができる。結晶性ポリプロピレンは、密度0.890g/cm3以上で、市販されているアイソタクチック構造のプロピレン単独重合体あるいはプロピレンと他のα−オレフィンとからなる結晶性の共重合体などが使用できる。結晶性ポリプロピレンは非晶性ポリα−オレフィンと混合しても透明性を大きく損なわないという利点がある。非晶性ポリα−オレフィンと結晶性ポリプロピレンとの混合比は、非晶性ポリα−オレフィン100重量部に対し、結晶性ポリプロピレン50〜150重量部である。
【0016】結晶性ポリプロピレンの具体例としては、プロピレン単独重合体、エチレン成分を30重量%以下、好ましくは1〜25重量%含有するプロピレン・エチレンのランダム共重合体又はブロック共重合体、ブテン−1を20重量%以下含有するプロピレン・ブテン−1のランダム共重合体又はブロック共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1の三元ランダム共重合体又は三元ブロック共重合体などが挙げられる。
【0017】本発明で使用される非晶性ポリα−オレフィンの製造は、公知の製造方法、例えば、特開平4−258609号公報や特開平4−258611号公報記載の方法などで製造できる。具体的には、触媒系としては、ハロゲン化マグネシウム担持基剤とトリハロゲン化アルミニウムからなる触媒担体とテトラハロゲン化チタンとから得られるチタン含有固体触媒と有機アルミニウム助触媒とを配合したものが用いられる。本発明で使用される非晶性ポリα−オレフィンは、所定量の上記触媒系の存在下に、例えば、一段重合法にて、プロピレンの単独重合あるいはプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンからなるモノマーとを共重合させることにより製造できる。重合方法は、特に制限は無く、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法などが用いられる。重合後、ポリマー中に含まれる未反応モノマーを除くため、窒素気流などを通過させても良い。又、触媒を失活させるため、押出機を用い、ペレット化する際に少量の水やアルコールを添加することもできる。又、本発明では市販の非晶性ポリα−オレフィンを使用することもできる。例えば、市販品として米国ハンツマン(Huntsman)社のFPO(Flexible polyolefine)がある。
【0018】又、非晶性ポリα−オレフィンは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及び/又はそれらのエステル、酸無水物、金属塩等の誘導体、不飽和物のアミド、アミノ化合物、グリシジルメタアクリレート、ヒドロキシメタアクリレート等を用い、二軸混練機などを用いた公知の方法により変性されたものも使用することができる。これら変性されたものでは、無水マレイン酸、無水イタコン酸により変性されたものが好適である。
【0019】(B)のメタロセン触媒で製造されたポリエチレンは公知の製造法により得ることができる。例えば、エチレンやα−オレフィンを原料モノマーとして、メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せからなる触媒系を用い、不活性ガス中での流動床式気相重合あるいは攪拌式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などで製造される。
【0020】メタロセン触媒に使用されるメタロセン化合物の具体例として、ジメチルシリル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライドなどのケイ素架橋型メタロセン化合物、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド、エチレンビスインデニルハフニウムジクロライドなどのインデニル系架橋型メタロセン化合物を挙げることができる。
【0021】また、有機アルミニウム化合物としては、一般式、(−Al(R)O−)nで示される直鎖状、あるいは環状重合体(Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はRO基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)であり、具体例としてメチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルエチルアルモキサンなどが挙げられる。また、その他の有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウムなどが挙げられる。
【0022】イオン性化合物としては、一般式、C+-で示され、C+は有機化合物、有機金属化合物、あるいは無機化合物の酸化性のカチオン、又はルイス塩基とプロトンからなるブレンステッド酸であり、メタロセン配位子のアニオンと反応してメタロセンのカチオンを生成することができる。それらの具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンとトリフェニルカルボニウムカチオンあるいはジアルキルアニリニウムカチオンとのイオン化合物がある。これらのイオン化合物は、前記の有機アルミニウム化合物と併用される。
【0023】このポリエチレンはエチレン単独重合体であっても良く、又、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であっても良い。炭素数3〜10のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセンー1、4−メチル−1−ペンテン、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1などが挙げられる。これらのα−オレフィンは1種であっても良く、また、2種以上を併用しても良い。
【0024】エチレンとα−オレフィンとの共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。共重合体中のエチレンの含有量は共重合体全体に対して90モル%以上、好ましくは、93〜99.9モル%である。エチレンの量が90モル%未満の場合、機械的強度が低下する。又、本発明の目的を阻害しなければ、共重合体全体の10モル%以下であれば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及び/又はそれらのエステル、酸無水物、金属塩等の誘導体、不飽和物のアミド、アミノ化合物、グリシジルメタアクリレート、ヒドロキシメタアクリレートなどと共重合しているものも使用できる。
【0025】本発明で使用するポリエチレンはメタロセン触媒で製造されたもので、密度が0.890〜0.935、好ましくは0.895〜0.930であり、かつ、分子量分布が2.2〜5.5、好ましくは2.2〜4.0のものである。上記の密度や分子量分布の範囲を外れると、積層フィルムの非晶性ポリオレフィンを主成分とする層とポリエチレン層との剥離強度が低下することがある。
【0026】又、(A)の非晶性ポリα−オレフィン及び/又は(B)のポリエチレンには、必要に応じて、本発明の特性を阻害しない範囲で、公知の添加剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素補足剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機物充填材、無機物充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどを発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。
【0027】これらの添加剤の例を挙げると、酸化防止剤としては2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−エチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、トリオクチルホスファイト、トリストリデシルホスファイトなどの有機ホスファイト系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤がある。光安定剤としてはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン系安定剤がある。紫外線吸収剤としては2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]],2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などがある。
【0028】帯電防止剤としてはポリ(オキシエチレン)アルキルアミン、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミドなどのノニオン系帯電防止剤、第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムサルフェートなどのカチオン系帯電防止剤、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネートなどのアニオン系帯電防止剤がある。分散剤としてはエチレンビスオレイン酸アミド、 エチレンビスステアリン酸アミドなどのビスアミド系分散剤、マイクロクリスタリンワックスなどのワックス系分散剤、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの有機金属塩系分散剤がある。
【0029】難燃剤としてはトリクレジルホスフェート、リン酸アンモニウムなどのリン酸系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マグネシウムの炭酸塩、赤リン等が挙げられる。ブロッキング防止剤としては、シリカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、カオリン、タルク、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、溶融シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ハドロタルサイト系等の微粒子が挙げられる。スリップ剤としては、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドのどの高級脂肪酸アミドが好適である。添加できるその他の樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンワックスなどや、また、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、ロジン系樹脂やこれらの水素添加誘導体などがある。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体とこの水添物のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体とこの水添物のスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンゴム、アイオノマーなどがある。
【0030】本発明の積層フィルムは、(A)層及び(B)層を交互に積層して構成され、積層する(A)層及び(B)層の積層数は特に制限されないが、少なくとも2層から構成され、最外層、すなわち、両外面を形成する層の少なくとも1層が(B)層で構成されることが好ましい。例えば、(B)/(A)、(B)/(A)/(B)、(B)/(A)/(B)/(A)、(B)/(A)/(B)/(A)/(B)などのような積層組合わせの積層フィルムである。
【0031】本発明において、積層フィルムを構成する(A)層、(B)層の厚さは、特に限定されるものでなく、用途により任意に選択できる。通常、各層の厚さは、2〜500μm、好ましくは、3〜100μmの範囲である。又、(A)層と(B)層との厚みの比率も、用途により適宜選択され、特に限定されない。通常は、(A)層の厚さは積層フィルム全体の厚さの20〜99%、好ましくは30〜95%、より好ましくは35〜90%である。(A)層の厚さが上記下限より薄くなると積層フィルムの柔軟性や均一延伸性が低下することがある。上記上限より厚くなると積層フィルムの機械的強度が低くなる。
【0032】本発明の積層フィルムは、公知のフィルム製造法で製造できる。例えば、共押出積層法、ラミネーション法、ドライラミネーション法等を用いることができる。これらの方法の中では、フィルム製造時に溶融接着する共押出積層法が好ましい。この方法は、積層数に見合う押出機を用いて溶融押出しし、Tダイ法又はインフレーション法等の公知の方法により溶融状態で積層した後、冷却ロール、水冷又は空冷などの方法で冷却して、積層フィルムを製造する方法である。又、積層フィルムは必要に応じ、一軸、二軸、多軸、その他の公知の方法により延伸される。通常、面延伸倍率で1.1〜30倍に延伸される。本発明のポリエチレン系積層フィルムは多軸に延伸された際の延伸の均一性に優れている。
【0033】本発明の積層フィルムは、特に接着剤を使用しなくても、上記の製造時に溶融接着する共押出積層法により(A)層と(B)層は強固に接着し、剥離強度は強い。又、(A)層と(B)層とを接着剤で接着し、積層フィルムとした場合も剥離強度は強い。この際、使用できる接着剤の具体例は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、酢酸ビニルーエチレン共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤、ポリアミド樹脂系ホットメルト接着剤、ニトリルゴムなどのゴム系接着剤などが挙げられる。
【0034】本発明の積層フィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤塗布性を向上させる目的で表面処理を行うことができる。表面処理の方法は、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が挙げられる。これらの処理の中では、連続処理が可能であり、フィルムの製造過程の巻取り工程前に容易に実施可能なプラズマ処理、火炎処理及びコロナ放電処理が好ましい。
【0035】本発明の積層フィルムは積層、冷却、固化された後、必要により表面処理をした後、巻き取られて次工程、例えば、印刷、ラミネート、粘着性塗布、ヒートシールなどの二次加工工程を経て目的とする用途に使用することができる。
【0036】本発明の積層フィルムは柔軟性があり、積層したフィルム間の剥離強度が強い、透明性や延伸の均一性に優れているため、各種分野で使用されている。例えば、表面保護フィルム、ダイシングフィルム、化粧フィルム、テーブルクロス、アルミ蒸着膜、輸液バッグなどの医療用品、空気を封入して使用する緩衝材などがある。この中ではテーブルクロスやダイシングフィルムには特に適している。又、本発明の積層フィルムは、(A)層及び(B)層の中間に他の熱可塑性樹脂層、例えば、ナイロン、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリエステル等を積層挿入して、ガスバリヤー性を高めることもできる。又、本発明の積層フィルムの外層に他のポリオレフィン系フィルムを積層することもできる。
【0037】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例および比較例中に記載した特性の測定は下記の方法で行った。
【0038】1)冷キシレン溶解成分の測定法非晶性ポリオレフィンを、重量で100倍量のキシレンに加え、この溶液を30分間沸騰させた後、その容器を水で冷却し、溶液の温度を20℃にする。次いで、乾燥したグラスフィルター(フィルターの目のクラス:5G)を用い、減圧濾過により冷キシレンに未溶解の成分(以下、「濾過物」と記載する。)と冷キシレン可溶成分が溶解したキシレン(以下、「濾液」と記載する。)とにわけた。濾過物の残ったグラスフィルターを室温で減圧乾燥し、ほぼ恒量になるまで(約24時間)乾燥した後、その重量を測定し、冷キシレン可溶成分の量は式(1)により求めた。
【数2】
冷キシレン可溶成分(wt%)=(1−(M−N)/S)×100 (1)
(ただし、式中、Mは乾燥後の濾過物とグラスフィルターとの重量、Nは乾燥したグラスフィルターの重量、Sはキシレンに加えた非晶性ポリα−オレフィンの重量である。それぞれの重量の単位はgである。)
【0039】2)極限粘度の測定上記1)の濾液をロータリーエバポレーターで約1/10の量に濃縮した後、この濃縮液に約9倍量のアセトンを加え、溶解していた冷キシレン可溶成分を析出、沈殿させる。この沈殿物を濾過回収した後、減圧乾燥など公知の方法で恒量になるまで乾燥することにより、極限粘度測定用の冷キシレン可溶成分を得た。得た冷キシレン可溶成分20mgに20mlのデカリンを加え、135℃の恒温油槽中で冷キシレン可溶成分をデカリンに完全に溶解させた後、ウベローデ型粘度計を用い、135℃で測定した試料の落下所用時間(ta)、デカリン単独で測定した落下所用時間(t0)を基に極限粘度(単位:dl/g)を求めた。
【0040】3)剥離強度の測定(B)/(A)/(B)の3層の積層フィルムから25mm幅、長さ150mmの試験片を切取った。その末端部分を手で引き伸ばした後、表裏にそれぞれ、粘着テープを貼り付けて、延伸部分の一部を引き剥がし、積層界面で中間層の(A)層と外層の(B)層とが剥離したフィルムを得た。この剥離したフィルム部を引張試験機(島津製作所製 AGS 500型)のチャックで挟み、引張試験を行い、その強度を剥離強さとした。
【0041】4)透明性の測定ASTM D1003に準じ、ヘイズを測定した。
【0042】5)延伸性の測定油性オイルペンを用い、10mm間隔で格子状に桝目を記入した積層フィルムから縦90mm、横90mmの正方形のサンプルを切出した。このサンプルを2軸延伸機BIX−703型(岩本製作所製)を用い、50℃で、10%/分の速度で縦、横それぞれ100%まで同時2軸延伸を行い、100℃で5分間熱固定した後、室温まで冷却してから取出した。延伸された積層フィルムの桝目の形状の変化の有無を観察した。桝目が均一に延伸されたものを「均一」、桝目が延伸により曲がるなど変形したものを「変形」と評価した。
【0043】実施例1(A)層を構成する非晶性ポリα−オレフィンとして冷キシレン可溶成分が57.8重量%で、冷キシレン可溶成分の極限粘度が1.3dl/gのポリプロピレンホモポリマー(ハンツマン社製)を用い、(B)層を構成するメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンとして、密度0.918g/cm3、分子量分布2.8(宇部興産社製、商品名UMERIT 2040F)を使用した。層構成が(B)/(A)/(B)となるように3層各々独立した3台の押出機及びこれに連結した3層Tダイを用い、温度190℃で溶融3層共押出し、冷却ロール温度20℃の条件で、厚さが15μm/60μm/15μmの3層の積層フィルムを成形した。得た積層フィルムの剥離強さ、透明性及び延伸性を測定し、結果を表1に示した。
【0044】比較例1(B)層にポリエチレンとしてメタロセン触媒を用いて製造された密度0.940g/cm3、分子量分布2.8のポリエチレンを使用した以外は、実施例1と同様に実施した。得た積層フィルムの剥離強さ、透明性及び延伸性を測定し、結果を表1に示した。
【0045】比較例2(B)層にメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンの代りに密度0.922g/cm3の低密度ポリエチレン(宇部興産(株)製、商品名F222)を使用した以外は、実施例1と同様に実施した。得た積層フィルムの剥離強さ、透明性及び延伸性を測定し、結果を表1に示した。
【0046】実施例2(A)層を構成する非晶性ポリα−オレフィンとして冷キシレン可溶成分が64.7重量%で、冷キシレン可溶成分の極限粘度が1.0dl/gのプロピレン98.1重量%、エチレン1.9重量%からなるエチレン/プロピレンコポリマー(ハンツマン社製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、3層フィルムを得た。得た積層フィルムの剥離強さ、透明性及び延伸性を測定し、結果を表1に示した。
【0047】実施例3(A)層として、非晶性ポリα−オレフィンとして冷キシレン可溶成分が31.9重量%で、冷キシレン可溶成分の極限粘度が1.2dl/gのポリプロピレンホモポリマー(ハンツマン社製)と密度0.91g/cm3の結晶性ポリプロピレン((株)グランドポリマー製、商品名:F226D)とを重量比9/1で混合し、温度200℃で30分間溶融混練して、ペレット化したものを使用した以外は、実施例1と同様に実施して、3層フィルムを得た。得た積層フィルムの剥離強さ、透明性及び延伸性を測定し、結果を表1に示した。
【0048】
【表1】


【0049】
【発明の効果】(A)層は冷キシレン可溶成分が20〜80重量%、該冷キシレン可溶成分の極限粘度が1.0〜2.5dl/gであり、かつ、プロピレンの含有率が50重量%以上の非晶性ポリα−オレフィンからなり、(B)層はメタロセン触媒で製造されたポリエチレンからなり、(A)層と(B)層とが積層されたポリエチレン系積層フィルムは、透明性、延伸の均一性及び積層界面の剥離強度に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)層は冷キシレン可溶成分が20〜80重量%で、該冷キシレン可溶成分の極限粘度は0.8〜2.5dl/gであり、かつ、プロピレンの含有率が50重量%以上である非晶性ポリα−オレフィンからなり、(B)層はメタロセン触媒で製造されたポリエチレンからなり、(A)層と(B)層とが積層されたことを特徴とするポリエチレン系積層フィルム。
【請求項2】 請求項1記載の(B)層を構成するメタロセン触媒で製造されたポリエチレンの密度は0.890〜0.935g/cm3であり、分子量分布は2.2〜5.5であることを特徴とする請求項1記載のポリエチレン系積層フィルム。