説明

ポリマービーズの製造方法

本発明は、ポリマー材料内での犠牲フィラー材料の使用によって生成される孔径の狭い分布を伴って得ることのできる予め規定可能な孔径を有することを特徴とするポリマービーズ材料に関する。また、本発明は、所定のサイズを有する球形又はほぼ球形のビーズ又は樹脂として材料を生産するための方法も開示している。さらに、本発明は、前記方法により生成される分子インプリントされたポリマー材料の調製にも関する。またさらに、本発明は、化学物質、金属イオン、無機化合物、薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、天然及び人工ポリマー、天然又は人工化合物、食品又は医薬品、ウイルス、細菌、細胞及びその他のエンティティの分離、検出、触媒反応又は内包のための前記ポリマー材料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料内での犠牲フィラー材料の使用によって生成される狭い分布を伴って得ることのできる予め規定可能な孔径を有することを特徴とするポリマー材料に関する(図1)。また、本発明は、所定のサイズを有する球形又はほぼ球形のビーズ(又は樹脂)として材料を調製するための方法にも関する。さらに、本発明は、化学物質、金属イオン、無機化合物、薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、天然及び人工ポリマー、天然又は人工化合物、食品又は医薬品、ウイルス、細菌、細胞及びその他のエンティティの分離、検出、触媒反応又は内包のための前記ポリマー材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
生体分子、医薬品、食品化合物、化学物質、バイオエレクトロニクス及びその他の分野では、広く多様な選択肢の分離材料が用いられる。これらの材料は、スチレン及びジビニルベンゼンのような有機モノマーから誘導されたもの又はアガロース又はセルロースなどの生体高分子に基づくものなどのポリマー材料から、シリカ又はヒドロキシアパタイトに基づくものなどの無機材料にまで至っている。
【0003】
シリカビーズなどの無機材料の利点は、その機械的安定性及びその高度に定義された気孔構造にある。例えば、数多くの産業において分離のために広く用いられているシリカ材料の孔径は、充分に定義づけされており、理論上の又は恐らくは実践的に到達可能な限界に近い孔径分布を有する。シリカなどの無機材料が有する、高度に構造化された集合体へと組織化する能力は、有機材料の場合よりもはるかに極立っていることが一般に知られている。
【0004】
孔径分布及びそれが分離効率に及ぼす効果の重要性は、ヴァンデームター(Van Deemter)の方程式において記載されている。この方程式の1つの成分すなわち
=ωd・v/D
は、分離効率に対する物質移動の効果(H)を粒度(d)、流速(v)、移動相中の被分析物の拡散係数(D)及び孔径分布及び形状に関する係数(ω)と関連づけている。この関係は、ωが小さくなる(孔径分布がより狭くなる)につれて、Hは小さくなる(すなわち、より優れた分離効率を導くより低いプレート高さ)ということを予測している。分離工業では、これは周知のことであり、分子質量すなわちストークスの半径に基づく分離、例えばペプチド、タンパク質及びその他のオリゴ又は巨大分子の分離にとって特に重要である。このように、孔径分布は主要パラメータであるが、標準的にこれは、多孔質シリカなどの無機樹脂材料を使用することによってのみ或る程度の確実さで制御可能である(図2A参照)。特に、ろ過材料においては、孔径の「規則性」が極めて重要であることが報告されてきた。充分に定義された気孔の形状及びサイズにより、ろ過プロセスは特定の分子について選択的なものとなることができ、鋭敏な排除限界及び高い分離能が導かれる。
【0005】
気孔は、その直径によって分類され、微小孔は約2nm未満の直径、メソ細孔は約2nm〜50nmの範囲内の直径、そしてマクロ孔は約50nm超の直径を有する。
【0006】
多孔質シリカは、高度に定義された球形又はほぼ球形のビーズを生成し得るが、シリカベースの材料の欠点は、分離ステップの間に実施される再生ステップにおいて適用されることの多い、アルカリ条件に対するその周知の不安定さにある。例えば、タンパク質の生物薬剤学的精製においては、C18シリカは標準的に最終的「研磨」分離ステップで使用される。標準的には2回である少ない回数のタンパク質精製サイクルの後、通常は濃水酸化ナトリウムでの洗浄が実施されて、タンパク質残渣及びファウリングをひき起こし得るクロマトグラフィカラムに結合したその他の望ましくない材料を除去する。この洗浄手順は、例えばFDAなどの一部の規制基準に適合させる目的で要求されることが多い。かかるシリカビーズの寿命及びかかるプロセスにおけるそれらの長時間使用はこのようにして制限される。この洗浄プロセスにより分解したシリカは定期的に新しいシリカと交換されなくてはならないことから、これはユーザーにとって多大なコスト要因となる。逆相シリカカラム上での塩基性化合物の分離(多くの医薬用薬物が「塩基性」である)が検討されている場合、疎水性表面と相互作用するよう非荷電化合物であるためにアルカリ性条件が必要とされることから、付加的な制限が見られる。
【0007】
シリカは、同様に、その表面上に望ましくない化学的活性部位を露出させるものとして知られている。これらの制限にも関わらず、シリカは、その強い機械的安定性及び溶剤中で膨潤しないことを主な理由として、広く使用される分離材料である。さらに、高秩序気孔構造は高い分離効率に寄与する。
【0008】
近年、増々多くの精製プロセスにおいてポリマー分離材料がシリカに置き換わってきている。これは、大抵は、安定性の改善及びこれらの固定相の長い寿命に起因している。例えば、スチレン−ジビニルベンゼンベースの固定相は、シリカ固定相よりも再生ステップ中の安定性ははるかに高いことから、増々一般的になっている。
【0009】
しかしながら、かかるポリマー材料の主たる欠点は、それらの孔径特性が、a)充分定義されておらず、b)調製プロセス中で容易に制御されない、ということにある。このタイプの市販のポリマービーズ材料(例えばロームアンドハース(Rohm & Haas)(オランダ)又はポリマー・ラブズ(PolymerLabs)(英国))は、シリカなどの無機材料に基づく等価の分離材料に比べると、孔径の定義がはるかに不十分であり、往々にして、要求の高い分離にとって不利であり得る小さい気孔部分も含んでいる(図2Bに例示)。その上、このポリマービーズ材料は、ポロゲン(porogen)の使用によってそのマクロ気孔率を導出しており、標準的に20%前後の架橋密度を有する。これらの比較的低い架橋レベルのため、ポリマービーズは低い機械的安定性を有することになり、使用される溶剤系に応じて可変的な膨潤挙動を示し得る。
【0010】
標準的には、ポロゲンは、モノマーの重合の間に気孔率を制御する、トルエン又はジクロロメタンなどの有機溶剤である。
【0011】
例えば、架橋ポリスチレンの合成中、溶剤又はポロゲンの存在下でポリマー網目の中で気孔が形成される。20%未満の架橋密度は通常、より低いnm範囲(2〜5nm)内の小さな孔径をもたらす。かかる気孔は、かなり均一であるが、ポリマーはむしろゲルに近く、制限された機械的安定性しか示さず、その結果、圧力下での材料の圧縮及び圧壊がもたらされる。同様にポリマー中に存在する微小孔(すなわち2nm未満の気孔)は、一部の利用分野にとっては望ましくない可能性がある。理想的には、圧力安定性材料及び一部の溶剤中での膨潤傾向が低い材料を得るためには、架橋百分率を増大させるべきである。しかしながら、架橋密度が例えば20%という或る値を上回った場合、ポリマーは不均質となり、20〜50nmの標準的サイズ範囲を有する大きいいわゆるマクロ孔が生成されることになる。これらの気孔は、不規則で、ポリマーマトリクスの内部で終結して低い拡散及び貫流特性をもたらす。概して、気孔を形成するためにポロゲンを用いることにより、小さい気孔はかなり均質であり得るが、特に大きな平均孔径を有するポリマーにおいて、残りの気孔は広いサイズ範囲を有する傾向を有することになる。
【0012】
アンバーライト(Amberlite)(ロームアンドハース)又はポリマーラボラトリーズ(UK)製のPLRP−S媒質などの市販の分離材料は、不規則な気孔を特徴とする非結晶質の内部構造を特色とするこのような従来のマクロ多孔質ポリマーの標準的な例である。かかる材料の実験的に測定された孔径の一例が図2Bに例示されている。
【0013】
上述の問題のいくつかに対処するため、フェイブッシュ(Feibush)、(米国特許第4,933,372号明細書)は、高度に定義されたシリカ粒子の気孔特性がポリマービーズの形で画像化される一方法を開示している。この方法においては、シリカ粒子には、モノマーを充填し次に重合させた。これは、例えば、疎水性シリカ粒子と共に疎水性モノマーが水中に分散させられた水性懸濁液系の中で実施することができた。熱力学的に駆動された区分化を通して、モノマーはシリカビーズの内部に蓄積した。重合の後、シリカ−ポリマー複合材料は、次にシリカ主鎖を除去するべく、厳しいフッ化物又は水酸化物洗浄に付された。このプロセスの結果として、シリカビーズの鏡像を表わすポリマービーズが生産された。これらのビーズは、シリカ内の当初気孔のあった場所に存在していた出発シリカ粒子(ポリマーバルク)にそのサイズが対応し、一方ポリマー気孔は溶解したシリカ壁に対応していた。
【0014】
このフェイブッシュの方法は、結果としてのポリマービーズ内のいくつかの望ましい特性を導くものの、その生産プロセスの複雑さとそれに付随する低い費用便益要因のため、これが広く使用されることはなかった。このような高級なシリカ材料の現行コストは、材料1kgあたり数千ユーロの範囲内にある。これとは対照的に、本発明に従った分離材料の調製に必要な非多孔質粒子のコストは1kgあたり数ユーロである。
【0015】
さらなる開発において、マルーク(Mallouk)ら(ジョンソン(Johnson)SA.、オリヴィエ(Ollivier)PJ.及びマルークTE.、「Ordered mesoporous polymers of tunable pore size from colloidal silica templates」、Science、1999年、第283号、963〜965頁)は、多孔質ポリマー材料を生成するためにコロイドシリカを使用した。より精確に言うと、乾燥コロイドシリカから作られたペレットは、ペレットプレスを用いて作られた。プレス加工されたペレットは次に金型として使用された。ペレットは非常に高い10000kPaの圧力及びきわめて高い温度すなわち800℃で生産された。高温高圧の下で材料を生産するプロセスは、「焼結」と呼ばれる。直径0.7cm、厚み0.3cmの寸法を有する平板状のペレットが得られた。焼結ステップは、連結されたコロイドシリカ粒子の網目を生成する目的で実施された。焼結済みシリカ粒子は、三次元の相互連結されたコロイドシリカ網目を形成した。この焼結ペレット内へと、シリカ粒子間の空所に充填するためにモノマー溶液を使用し、次に重合させた。この相互連結された網目の空隙にモノマーを充填し、その後重合させ、ひき続きコロイドシリカを除去することにより、最終ポリマーの中に連続気泡系が生成された。マルークによる刊行物は同様に、得られた気孔が比較的狭い分布を有し、或る程度もとのコロイドシリカに対応しているということも示している。しかしながら、マルークの研究グループにより実施された研究作業は、一般的な分離又は精製の利用分野に有用な球形又はほぼ球形のポリマー材料を生産するためのプロセスを開示していない。対照的に、それは、いかなる大規模又は工業的プロセスにも適していない手間のかかる複合材料形成方法を提供している。この研究において使用されたコロイドシリカは、オルトケイ酸テトラエチルのエマルジョンを内含する労働集約的なゾル−ゲルプロセスによって得られ、このプロセスは、最終生成物が得られるまで少なくとも2日を要する(さらなる詳細は、K.オセオ・アサレ(Osseo−Asare)及びFJ.アリアガダ(Arriagada)、Colloids Surf.第50号、321頁、1990年の中で記載されている)。
【0016】
スエオカ(Sueoka)ら(米国特許第4279752号明細書)は、細かいシリカ粒子(粒度0.01μm)が混和される多孔質膜の調製を開示している。この膜は、スライドダイを通して凝固浴槽内に押出されるポリビニルアルコールで構成されており、得られた膜は次にもう1つの浴槽内で架橋処理により加工される。第3の浴槽では、シリカが抽出され、その後膜は洗浄される。得られた膜は、気孔形成シリカのサイズ(0.01μm)とは異なり1μm前後の均等な孔径を有している。同文献は、細かいシリカ粒子が混和プロセス中に凝集することを記している。スエオカらが開示した材料はクロマトグラフィ充填物質として有用ではない。すなわちこれはビーズの形態を有していない。
【0017】
デリロ・マルチェヴスカ(Derylo−Marczewska)ら(Langmuir、2002年、第18号、7538〜7543頁)による刊行物は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の調製のためのヒュームドシリカの使用を開示している。合成の詳細から、ブロックの形をしたバルク材料が調製されるという結論を下すことができる。デリロ・マルチェヴスカらによって開示されている材料は、クロマトグラフィ充填物質として有用とはならない。すなわち、これはビーズを開示していない。孔径分布が主要ピークを示していても、大きな微小孔部分も表示しており、これは孔径のその他の母集団を含んでいる。その結果、開示されているブロック材料は、均等な孔径分布を有していない。微小孔は、クロマトグラフィ分離においては不利であり、望ましくないクロマトグラフィ効果及びピークテーリングなどの明確に定義されていないピーク形状をもたらす可能性がある。
【0018】
リー(Li)ら(米国特許第5288763号明細書)は、鋳型重合技術に基づく多孔質ポリマー粒子の調製を開示している。鋳型として、開始剤を含有するモノマー混合物の中に溶解させられる線状ポリマー、ポリアクリル酸(PAA)が使用される。さらに、PAAモノマー混合物の溶解後、それは、あらゆる不溶物質を除去するためにろ過される。開示されているのは、気孔の一部を生成するのに用いられる可溶性鋳型、すなわちPAAである。得られた粒子は、狭い孔径分布を有するものと主張されているが、このことは参考文献中に開示されていない。得られた孔径は1μmより大きく、表1内に均一であると言及されている(図4〜5に示されているようなSEM観察により評価)が、裏づけデータは提供されていない。さらに、得られたビーズは、その気孔率に関してマクロ孔及び微小孔質の両方の領域を示している。リーらがその特許(第1段、47行目)中で述べているように、微小孔は望ましくないクロマトグラフィ効果と、ピークテーリングなどの明確に定義されていないピーク形状をもたらすことになる。
【0019】
アッシャー(Asher)及びリゥ(Liu)(国際公開第0000278A1号パンフレット)による研究は、コロイドシリカを水溶性モノマーと混合し、次に2つの水晶板の間で重合させるプロセスを開示している。結果として得られる材料は、0.1mmの標準厚みを有する平坦なシートである。これは大きい空隙とより小さな気孔の両方を含み、定義された気孔率を示さない。その上、ビーズは開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
クロマトグラフィでは、微小孔無しで狭い孔径分布とビーズの形態を有する、経済的な方法による大規模生産に適した充填物質が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本発明の目的は、孔径の制御が可能であり、気孔が狭いサイズ分布を有し、かつ事実上微小孔を含まずかつ容易に大規模生産されるポリマービーズ材料を調製することにある。その上、このポリマービーズ材料は安価な(商品)出発材料で生産可能である。本目的は、以下の工程により得ることができる:
a)非多孔質粒子の存在下でモノマー及び任意にはポロゲン及び任意には添加剤を提供し、任意にはこれらを混合すること、
b)分散媒中で前記混合物を分散させて、非多孔質粒子を含むモノマー液滴を形成すること、
c)前記非多孔質粒子を含む前記モノマー液滴を重合すること、
d)形成されたポリマービーズから前記非多孔質粒子を除去すること。
【0022】
このようにして得られた材料は、ビーズ様の形態、つまり主として球形であり、本発明の1つの目的に従ったこの材料は、分離;検出;触媒反応;診断;内包の利用分野、例えば化学物質例えば金属イオン、無機化合物、薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、天然及び人工ポリマー、天然又は人工化合物、食品又は医薬品、ウイルス、細菌、細胞及びその他のエンティティの内包;又は富化利用分野、例えばクロマトグラフィ、バッチ分離、センサー利用分野、フィルタ、膜、制御放出材料、触媒、バイオミメティック材料、熱力学的トラップ及び内包マトリクスにおいて使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、得られたポリマービーズ材料内で孔径及び気孔分布を制御するために非多孔質粒子の粒度及び粒子分布を使用することのできる、重合プロセス中に気孔形成剤としての非多孔質粒子を用いることで得られるポリマービーズ材料に関する。ポリマー内部の非多孔質粒子網目は、自己集合プロセスによって生成される。本発明によれば、非多孔質粒子によりモノマーが区分化するための条件が生成される。
【0024】
一の実施形態において、本発明は、狭い孔径分布(事実上微小孔を含まない)を有するポリマービーズ材料において、
a)非多孔質粒子の存在下でモノマー及び任意にはポロゲン、任意には添加剤を提供し、任意にはこれらを混合すること、
b)分散媒中で混合物を分散させて、非多孔質粒子を含むモノマー液滴を形成すること、
c)前記非多孔質粒子を含む前記モノマー液滴を重合すること、
d)形成されたポリマービーズから前記非多孔質粒子を除去すること、
によって得られるポリマービーズ材料に関する。
【0025】
一の実施形態によれば、ステップa)は非極性非多孔質粒子の存在下で非極性モノマーを混合し極性媒質(例えばモノマー及び非多孔質粒子が不溶性又は非混和性である極性溶剤又は水)中で分散させるか又は極性非多孔質粒子の存在下で極性モノマーを混合し次に疎水性媒質(例えば、極性モノマー及び非多孔質粒子が不溶性又は非混和性である鉱油)中で混合物を分散させることによって実施可能である。これに関連して、分散という用語は、「分散は、巨視的規模で均質であるが微視的規模では均質ではない。それは1つの物質のもう1つの物質のマトリクス内での結晶粒又は液滴で構成されている」(アトキンス(Atkins)P.W、Physical Chemistry、第5版、Oxford University Press、240頁)というその一般的意味で用いられる。非多孔質粒子及びモノマーは、分散媒とは異なる化学的類似性又は類似の機能性を有するという事実に起因して、いずれの場合でも、モノマーは非多孔質粒子と区分化すると考えられている。
【0026】
もう1つの実施形態においては、その表面上に極性又は非極性の化学官能基を担持するように非多孔質粒子を修飾することができ、その後これらを極性又は非極性モノマーと混合し、極性及び非極性媒質の極性又は非極性又は混和性混合物でありうる媒質内に混合物を分散させることができる。
【0027】
本発明のさらにもう1つの実施形態においては、モノマーは、固体モノマー、モノマー用溶剤(例えば、非極性のモノマーについてはトルエン又より極性の高いモノマーについてはアセトニトリル)及び非多孔質粒子を重合前に混合することにより、半乾燥プロセス中に非多孔質粒子と区分化することができた。
【0028】
1つの実施形態においては、重合前に液体モノマー及び非多孔質粒子を混合することにより、半乾燥プロセスを実施することができる。
【0029】
重合の後、ポリマービーズ内部のコロイド粒子は除去されて、非多孔質粒子が以前に存在していた気孔又は穴の網目を後に残す。サイズ、サイズ分布及びその他の化学的又は物理化学的パラメータなどの非多孔質粒子の性質は、最終ポリマー材料の気孔特性を決定することになる。これが、ポリマービーズ、樹脂、膜などの最終ポリマー材料の孔径特性を制御する方法である。気孔特性の制御は非多孔質粒子の選択によって決定される。
【0030】
ポリマー材料内に気孔を生成するためには、コロイド粒子が好まれるが、μm範囲内にあるより大きな粒子を想定することが可能である。μm範囲内の孔径を有する、かかるポリマービーズが、一部の利用分野にとっては有用である。例えば、タンパク質、細胞又はその他の化合物などの大きな化合物の分離のためには、μm範囲内の気孔を有する材料が好ましい。
【0031】
本発明によれば、好ましい非多孔質粒子はコロイドシリカ、ラテックス、結晶質分子、生体鉱物又はその他の任意の有機、無機又は生物学的非多孔質エンティティ又はそれらの任意の混合物である。より好ましい非多孔質粒子はコロイド粒子であり、最も好ましいのはコロイドシリカ、例えばアエロジル(Aerosil)R972又はR8200(デグサ(Degussa))である。コロイド粒子の性質は、最終ポリマー気孔特性に反映される。コロイドが内部気孔率を全く有していないことが好ましい。100Åの粒度を有するコロイドが使用される場合には、ポリマー材料は同様に100Å前後の孔径を有することになる。ただし、ポリマーの最終孔径は、ポリマーが収縮又は膨潤するにつれて変動する可能性があり、これは、使用されるポリマーの性質に応じて異なる特性である。非常に狭い孔径分布を有するコロイドが利用される場合、これは同じ又はきわめて類似する孔径分布を有するポリマービーズ内の気孔をもたらす。
【0032】
非多孔質粒子は異なる直径を有し得る。このように、これらの非多孔質粒子は、1つ以上の非多孔質粒子集団を含み得、ここで各集団は、基本的に同じ、ただし他の集団とは異なる直径を有する。
【0033】
また、本発明は、所定のサイズを有する球形又はほぼ球形のビーズ又は樹脂などのポリマー材料の生産のための方法にも関する。さらに、本発明は、高度に定義された孔径分布を示し、望まれる場合には球形、平坦、顆粒状、層状又は多成分形式で生産され得る、例えばポリマービーズ及び樹脂などのポリマー材料の調製方法にも関する。本発明によるポリマー材料は同様に、その他の形式又は形状でも調製可能である。当業者であれば、膜、フィルタ、管、複合材料及び当業者にとって既知のその他の形式として有用である形式又は形状を調製することができる。かかる形状は、顆粒、モノリス、球、複合ビーズ、ロッド、管、シート、膜、フィルタ、中空、層状又はその他の多成分集合体であり得る。
【0034】
さらに、本発明は、化学物質、金属イオン、無機化合物、薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、天然及び人工ポリマー、天然又は人工化合物、食品又は医薬品、ウイルス、細菌、細胞及びその他のエンティティの分離、検出、触媒反応又は内包を目的とした前記ポリマーの使用にも関する。
【0035】
本発明においては、気孔形成剤としてコロイドシリカなどのコロイド粒子を用いることができ、ここでは、気孔は重合が完了した後に形成され、塩基例えば水酸化ナトリウムなどの適切な作用物質でシリカを除去することによって顕示される。このプロセスにより、気孔形成は、重合の機序、位相分離及び架橋から切り離され、結果として、例えばポリマー材料の所望の気孔特性を制御、微調整及び改変できるなどのいくつかの利点をもたらす。このプロセスのさらなる利点は、コロイドシリカが重合されたビーズ内になおも存在する一方で、最終気孔構造を変更することなくポリマーバルクのあらゆる改変を行なうことができるということにある。
【0036】
ポリマービーズ又は樹脂は、例えば懸濁液、縮合、バルク、エマルジョン、膜乳化、分散、沈降、溶液、グラフト重合、表面又は電気重合の形で前記ポリマーを生産することによって、又は膨潤技術によって容易に得ることができる。かかるプロセスは、図4に描かれており、球形ポリマービーズを生成する。
【0037】
本発明において使用すべきコロイド粒子は、ヒュームドシリカ又はコロイドシリカ、ラテックス、結晶分子、生体鉱物又はその他のあらゆる有機、無機又は生物学的コロイドエンティティからなる群から選択され得る。コロイド粒子は疎水性であり得、その場合、疎水性モノマーが選択されることになり、そうでなければ親水性であってよく、その場合親水性モノマーが選択されることになり、分散媒はそれぞれに親水性(例えば水、アルコール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、有機酸、有機塩基及びケトン、その他の極性有機溶剤又はそれらの任意の混合物)又は疎水性(例えば鉱油、芳香族又は脂肪族環式化合物、アルカン、例えばヘプタン、石油エーテル、ハロゲン化溶剤又はミネラルスピリット又はそれらの任意の混合物)である。
【0038】
本発明による好ましいコロイド粒子は、アエロジルR972及びR8200などの疎水性表面を有するコロイドシリカ粒子である。コロイド粒子は、単一のタイプのコロイドであっても異なるタイプのコロイドの混合物であってもよい。非極性モノマー相(例えばジビニルベンゼン及びスチレン)が水又は疎水性コロイド粒子を含有する水富有相に添加される場合、コロイド粒子は、熱力学的区分化に起因して前記非極性モノマー相の中で富化することになる。本発明に関係する特定のコロイドが適切な環境の中で単純な自己集合により相互連結された網目を形成することが示唆されてきた。
【0039】
本発明における「コロイドの」という用語はP.W.アトキンス、「Physical Chemistry」、第5版、970頁によって記載されている通りに定義づけされる。
【0040】
「自己集合」というのは、コロイド粒子及びモノマーが分散媒と異なる化学的類似性又は類似の機能を有するものとして理解される。この化学的類似性又は機能のためこれらは互いに引きつけ合って互いに粘着し、分散媒を回避又ははね返すことになる。このように、例えば、コロイド粒子及びモノマーは疎水性、親水性、極性、非極性又は中性であり得、一方懸濁媒質はこれに対応して親水性、疎水性、非極性又は荷電媒質である。本発明者らは、さまざまな方法によって生産される疎水性コロイドシリカ(例えばヒュームドシリカ、デグサ、ドイツ)がこのプロセスにおいてうまく作用することを観察した。モノマー−シリカ混合物が水又は水富有媒質中で撹拌されるか又はその他の形で掻混される場合、内部に疎水性コロイドシリカを伴うモノマー液滴が形成される。このモノマー液滴はこのとき重合されて凝固し、ビーズを形成する。コロイドシリカはポリマービーズの内部に包埋されていることから、この材料はこのときシリカ−ポリマー複合材料と呼ばれる。
【0041】
前記シリカ−ポリマー複合材料は同様に、いわゆる半乾燥プロセスでも形成可能である。この手順においては、非多孔質シリカはモノマー及び開始剤そして必要に応じて溶剤と、適切な掻混条件(例えばローリング、実施例5を参照)下で混合され、重合は半乾燥プロセスで実施される。
【0042】
重合完了後、ポリマーから取込まれたシリカを除去することで、後にはポリマーの多孔質網目が残される。取込まれたシリカの除去は、適切な溶剤での溶解により実施可能である。これらのステップは、図1に概略的に描かれている。このプロセスは、図4に概略的に描かれている。コロイドシリカ粒子及び結果としてのポリマー−シリカ複合材料ビーズの相対的サイズは、図4ではより便利な視覚的描写を得るべく単純化されており、一定縮尺となるように意図されていない。シリカは、それがポリマー内部のフィラーであってその機能を果たした後除去されることから、これを犠牲フィラー材料とみなすことができる。それは、気孔を生成するために除去され、すなわち犠牲にされる。シリカの使用とその後のその除去は、ポリマー内に気孔を残留させることから、これらを気孔形成剤とみなすことができる。
【0043】
一般に分離工業では、重合された液滴はポリマービーズ又は時として樹脂と呼ばれる。本発明の中では、「ビーズ」と「樹脂」という用語は同義的に用いられる。
【0044】
本発明における「ポリマー材料」とは、ポリマービーズ又は樹脂或いはその他の材料、例えば膜、フィルタ、管、複合材料及び当業者にとって既知のその他の形式又は形状を意味するように意図されている。
【0045】
「犠牲非多孔質フィラー」及び「非多孔性粒子」という用語は、本発明中で同義的に使用され、常に「ポリマー材料」内部に気孔構造を生成するのに用いられる非多孔質粒子を意味する。
【0046】
本発明においては、「粒子」及び「フィラー」という用語は同義的に使用される。本発明においては、モノマーという用語は、モノマー及び架橋モノマーの両方を内含する。モノマーの例としてはスチレン又はメタクリル酸があり、架橋モノマーの例としては、ジビニルベンゼン又はメチレンビスアクリルアミドがある。
【0047】
本発明では分散媒と連続相が同義的に使用されている。
【0048】
本発明で使用される「微小孔を含まない」という用語は、例えば図2cに開示されているように、主に微小孔を含まないことを意味する。
【0049】
コロイドシリカは、ゾルゲル方法(K.オセオ・アサレ及びFJ.アリアガダ、Colloids Surf.第50号、321頁、1990年)及びその他の方法例えば火炎加水分解によって得ることができる。このとき、コロイドシリカはヒュームドシリカと呼ばれる。ヒュームドシリカ粒子は、酸素−水素ガス火炎中での揮発性シランの火炎加水分解プロセスの中で得られる。コロイドサイズ範囲内にあるこのようなヒュームドシリカは例えば、アエロジルという商標名でデグサ(ドイツ)により製造販売されている。ヒュームドシリカ及びコロイドシリカという用語は、本発明においては同義的用語である。コロイドシリカは、通常、乾燥粉末として提供される。
【0050】
好ましくは、モノマー混合物に移されポリマー内に取込まれる疎水性又は親水性表面などに適合され工学処理された表面及び粒子特性を有するコロイド及びコロイドシリカ粉末を使用することができる。重合の後、ポリマーは、シリカを溶解させ図2Cに例示されているような定義された狭い孔径変動を有する高度に定義された気孔の相互連結された網目を後に残す1回の洗浄に付される。
【0051】
図2Cに例示されているように、図2Bに示されている一般的ポリマー樹脂については得られない本発明のビーズ内での高度に定義された狭い孔径分布に関する明確な証拠が存在する。新規材料の孔径分布は、図2Aに示されたシリカなどの無機分離ビーズに匹敵する。さらに、得られたビーズは明らかに、望ましくない微小孔性、つまり20Å未満の気孔を全く含まない。図2Bに示されているように、市販のポリマービーズは、相当な微小孔性レベルを有する。
【0052】
好ましいコロイドシリカは、直径が低nm〜低μmのサイズ範囲を有し、好ましくは、無視できるほどしか又は全く内部気孔率を示さない。これらのコロイドシリカはシラノール基を示すその未変性形態をしているか、又はマイアー(Maier)ら(マイアーN.M.、L.ニコレッティ(Nicoletti)、M レーメルホッフェル(Laemmerhofer)、W リンドナー(Lindner)、Chirality、1999年、11巻、第7号、522〜528頁)により記載され、実施例1に記載されているとおり、化学的に修飾されており、かつその表面上に中性、酸性、塩基性、親水性、疎水性、重合性、バイオミメティック又はその他の官能基を含み得る。その上、シリカの表面は、モノマー組成及び重合の化学的性質を補完するべく工学処理され得る。
【0053】
モノマー混合物に添加されるコロイドシリカの量は、微量からさらに多量の範囲にわたり、モノマー溶液に比べ99重量%に近い最大量を有し得る。
【0054】
シリカの重量百分率が、添加されるモノマー溶液の重量百分率よりもはるかに大きく、分散媒が全く存在しない場合には、これは半乾燥重合と呼ばれる。半乾燥重合は、全てのモノマーがシリカコロイドによって被覆されているため、コロイドモノマー混合物が乾燥しているように見える重合系を表わす。
【0055】
任意には、モノマー相とコロイドシリカの相容性を制御すると同時に系内のその他の相との相容性をも制御する付加的な作用物質/添加剤を、材料の全体的特性を改善する目的で添加することができる。例えば、表面活性化合物(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリトン又は類似の両親媒性化合物)、両親媒性ポリマー、例えばポリビニルアルコ−ル(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVPy)又は有機溶剤を添加して、疎水性モノマー(又は逆の場合には親水性モノマー)を含むシリカの湿潤を改善することができる。当業者にとって既知のその他の添加剤も同様に想定できる。
【0056】
或いは、連続相中で懸濁されるシリカの能力を減少又は増大させる化合物を添加することができる。かかる化合物は、標準的に両親媒性作用物質及び界面活性剤の性質を有し、シラン、アルカン、ポリマー、脂肪酸、炭水化物及びその他の両親媒性化合物の誘導体を内含し得ると思われる。
【0057】
さらに、モノマー混合物(例えばスチレン−ジビニルベンゼン)とのその相容性を増大させるためのシリカの表面修飾を検討することができる。かかる表面修飾は、メチル、ブチル、フェニル、オクチル、スチリル、メタクリル又はその他の類似の官能基の取込みによるシリカ表面の修飾が関与し得る。
【0058】
本発明においては、分子インプリントされたポリマーを、コロイドを用いて生産することを想定することができる。一般に分子インプリントされたポリマーは、溶剤中において鋳型の存在下でモノマーと架橋剤を重合させることによって生産される。重合の後、鋳型は洗い出されて、鋳型及び類似の分子が或る程度の特異性をもって中に再結合し得る結合部位を後に残す。鋳型としては、ペプチド、タンパク質、ホルモン、薬物、金属イオン、毒素、キラル化合物、ウイルス、細胞及びその他のあらゆる化学的又は生物学的エンティティを想定することができる。
【0059】
文献中(セラーグレン(Sellergren),B、「Molecularly Imprinted Polymers:Man made mimics of antibodies and their application in analytical chemistry」、B.セラーグレン(編)、Elsevier publishers、2001年(22章、550頁))では数多くの例が紹介されており、当業者であれば、あらゆるタイプの鋳型を考慮することができる。
【0060】
本発明に従うと、ポリマーモノマーは、通常、ビニル、スチレン又はアクリルモノマーから誘導される。好ましい例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、アリルデキストラン、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリセロール−1−アクリラート又はグリセロール−1−メタクリラート、2−又は4−ビニル−ピリジン、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、メタクリル酸、メチルメタクリラート及びスチレン、及び架橋モノマー、例えばエチレンングリコールジメタクリラート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ−メタクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート及びN,N’−メチレン−ビスアクリルアミド又はその他のあらゆる極性、非極性、イオン性、親水性又は疎水性モノマー又は架橋剤又はその混合物がある。さらなるモノマー候補は、セラーグレンにより編集された分子インプリント教本(セラーグレン,B、「Molecularly Imprinted Polymers:Man made mimics of antibodies and their application in analytical chemistry」、B.セラーグレン(編)、Elsevier publishers、2001年(22章、550頁))などの文献中で広く記載されており、市販されているか又は利用分野に適合するようにオーダーメードすることができる。
【0061】
さらに、本発明におけるアガロース、デキストリン、セルロース又はその他の生体高分子を含むビーズの調製も可能である。
【0062】
その他の利用分野においては、ポリマー配合物は、温度、pH、塩濃度及びその他のパラメータなどの環境中の変化に反応できるようにするか又は結合効果に応答できるようにする、ポリマーの応答性又はレポータ特性を含み得る。このような応答性効果を含むいくつかのモノマー及びポリマーは、例えばマチアソン(Mattiasson)ら(B.マチアソン、A.クマール(Kumar)及びI.ユー・ガラエフ(Yu Galaev)、Journal of Molecular Recognition、第11号、211〜216頁、1998年)により文献中で記載されている。レポータ基は例えば蛍光性であるか又は、診断の利用分野で使用され得るもう1つの測定可能なシグナルを放出するか又はそれに影響を及ぼすことができる。
【0063】
材料は、モノマー溶液中のシリカなどの上述の非多孔質粒子などの犠牲非多孔質フィラーのインサイチュ重合によってか又は、予備形成されたオリゴマ又はポリマー内への取込みによって調製可能である。取込みの後、犠牲非多孔質フィラーは次に、フッ素化合物及び強アルカリ性又は強酸性化学物質などのように、既知の方法(フェイブッシュ、米国特許第4,933,372号明細書)により溶解される。非多孔質粒子を溶解させる作用物質は、例えばホウフッ化水素酸又はフッ化水素アンモニウムなどのフッ化物化合物、ナトリウム、カリウム又はテトラメチルアンモニウムの水酸化物に基づくさまざまな強アルカリ性化学物質、又はリン酸などの酸性化合物の濃縮溶液をベースとしてもよい。一般に加熱により、シリカを除去するこのような化合物の効率は高くなる。
【0064】
ポリマー内に犠牲非多孔質フィラーを取込む1つの方法は、液体、溶液、エマルジョン、エアロゾル又は懸濁液に対する単なる添加によるものである。或いは、予備形成された材料に混和することによって、焼成又はプレス加工によって、射出成形又はその他のポリマー加工方法によって、犠牲非多孔質フィラーを取込むことが可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はその他の適切な物品又は特殊ポリマーに対し、犠牲非多孔質フィラーを混和させ、次に所望の形式に加工し、その後最終的に処理して犠牲非多孔質フィラーを除去して、所望の気孔率又は気孔特性を含む構造を得ることができると思われる。
【0065】
また、本発明は、均一にサイズ決定されたポリマー粒子又はビーズを生成するプロセスをも網羅している。コロイドシリカ粒子を用いて均一なポリマービーズを生成するためのプロセスは、懸濁、エマルジョン、分散重合方法、膜乳化及び、例えばウゲルスタッド(Ugelstad)ら(ウゲルスタッド,J.;カゲラッド(Kaggerud),K.H.;ハンセン(Hansen),F.K.;バージ(Berge),A.、Makromol.Chem.1979年、第180号、737〜744頁)の手順、又はフレッシェ(Frechet)ら(米国特許第5130343号明細書)により記載されている通りの手順に従った単分散ラテックスエマルジョン又は類似の配合物を用いた単一又は多重膨潤方法である。狭い(又は均一な)粒度分布を有する粒子は、単分散と呼ばれる。
【0066】
一の実施形態によれば、シリカ含有ビーズが例えばスチレン中に「浸漬され」、(a)ジビニルベンゼンなどのモノマーの残基未反応ビニル基の除去;b)ビーズの密度の増加及び微小孔レベルの低下;c)ビーズの機械的安定性の改善及びd)或る特性を有するもう1つの材料の取込みをもたらす、シリカ−ポリマー複合材料ビーズ又は樹脂の重合後の処理を想定することができる。
【0067】
本発明の一の実施形態によれば、本発明に従ったビーズ又は樹脂は、分離能力にさらなる規模を付与するため、分子又は巨大分子鋳型のいずれかの存在下で調製することもできる。分子鋳型は、重合組成物の一部分であってもよく、そうでなければ溶解した又は分散した形態で存在し、溶剤抽出及びその他の洗浄又は化学的処理方法により重合後に除去することもできる。或いは、分子鋳型は、コロイドシリカ粒子と共有結合により付着又は会合させることができ、これらはシリカ担体にカップリング又は会合されているためシリカと共に除去され得る。例えば、シリカ表面修飾は単なる酸性基であり得、その後最終ビーズの一部となるモノマー混合物内の塩基性モノマーを使用することができる。こうして、酸性アニオンと相互作用する能力を有する塩基性アニオン交換体樹脂が結果としてもたらされることになり、塩基性モノマーが用いられる場合、それらは大部分がビーズの表面上にあることになる。
【0068】
本発明による1の実施形態においては、塩基性部分は、酸性カチオン交換体樹脂を得るのに用いられる酸性モノマー及びコロイドシリカにカップリングされ得る。より複雑な分子、例えば薬物、キラル分子、炭水化物、ペプチド又はタンパク質さらには生体のエンティティがコロイド粒子の表面修飾として用いられる場合、カップリングされたエンティティ及び類似の化合物に対して定義された親和性を有するポリマー樹脂を生成するべく、機能的モノマー及び架橋剤及びその他の反応物質は適切に適応される。
【0069】
重合は、任意の従来の及び適切な開始剤によって開始され得、好ましい開始剤は、アゾ、過酸化物またはその他の開始剤、例えばアゾ開始剤例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、ジメトキシフェニルアセトフェノンである。開始は、熱又はUV光の照射を介してか、又は化学又は触媒反応によるものであり得る。ラジカル、縮合、イオン、電気化学又は開環重合などのあらゆる重合化学反応を想定することができる。当業者であれば、その他の開始化学及び技術を理解することになる。
【0070】
その上、本発明は、広範な重合方法例えば溶解、多段階膨潤、分散、沈降及び懸濁又はエマルジョン重合に対し応用可能であり、均質な溶液又は不均質相内、例えば相間内、液体−液体相間内又は液体−固体相間内、表面上又は、重合系内の分子、オリゴマ、ポリマー、巨大分子、樹状、結晶質、生物学的又はその他の添加剤との組合せの形で実施可能である。当業者であれば、その他の重合化学及び技術を理解し、かつその他の適切な添加剤を理解することであろう。
【0071】
図4に例示されているように懸濁媒質として水を必要とする重合系においては、水相中の望ましくない重合を抑制するため水相に対し亜硝酸ナトリウムなどのラジカルスカベンジャを添加することができる。こうして一般的クロマトグラフィでは固定相として有用でない小さなポリマー画分をもたらす水相中の無制御の重合の量は減少する。
【0072】
最終ポリマー中でシリカ又は任意のその他の適切な非多孔質粒子が共重合されてから、取込まれた非多孔質粒子を除去するためにポリマーを処理しなくてはならない。取込まれた非多孔質粒子へのアクセス性を増大させるため、材料を膨潤させる適切な溶剤でビーズを処理することができる。かかる溶剤は、例えばアセトン、アルコール、塩素系溶剤、トルエン又はベンゼン、テトラヒドロフラン又はジビニルベンゼンスチレン樹脂を膨潤させるその他のあらゆる適切な溶剤である。その他のポリマーは、通常ポリマーと類似の溶解度パラメータを示すその他の溶剤を必要とする。例えば、生体高分子は、水、緩衝液又はアルコールなどの水性又は極性溶剤の中で高い膨潤速度を有する。材料の膨潤の後、取込まれた非多孔質粒子を化学的又は物理的に或いはその他の形で処理して除去することができる。
【0073】
本発明によれば、取込まれた非多孔質粒子はその溶解度又は安定性の性質に従ってか又はその他のあらゆる手段によって除去することができる。
【0074】
ポリマー材料が生産されてから、これらを効率の良いサイズ排除分離材料として、単純な逆相材料として又は修飾の後イオン交換分離材料として、例えばマスダ(Masuda)ら(マスダ,T.;ニシムラ(Nishimura),Y.;トネガワ(Tonegawa),M.;キタハラ(Kitahara),K.;アライ(Arai),S.;ヤマシタ(Yamashita),J.;タカイ(Takai),N.、Journal of Chromatography A、1999年、第845号、401〜408頁)の手順内で開示されている通りに使用可能である。さらに、材料表面の性質を変化させるために、その他の分子に結合する又はカップリングするように官能基を利用することができる。例えば、表面上に抗原を固定化させ、これをその後分離材料として使用して、さらなる規模の選択性を結果として得ることができる。当然のことながら、その他のエンティティを本発明に従ったポリマー材料の表面に結合又は付着させて、工学処理された表面特性に到達することも可能である。フィルタの利用分野においては、変動する分子サイズ及び流体力学半径を有する化合物のろ過又は拡散を慎重に制御するために、膜、フィルタ、又はその他の装置を使用することができる。このことは特に透析膜、サイズ排除フィルタ及びその他のサイズ又は形状選択的利用分野にとって重要であり、これらのために本発明を使用することが可能である。
【0075】
本発明の一の実施形態によれば、材料に薬学的に活性な成分が投入され、材料はこのとき薬学及び医療の利用分野において、制御放出材料として機能し得る。
【0076】
小さいシリカ粒子の溶解に由来する気孔の取込みに加えて、物質移動及び拡散特性を改変するためにより大きい直径を有する定義された気孔の第2の集団を生成することが有益であり得る。これは、第2の種類の貫流又は潅流気孔を生成するより大きな直径の第2の非多孔質シリカ材料を使用することによってか、又は混合物内に高秩序固体又は半固体材料を添加することによって、本発明の一の実施形態に従って実現される。場合によっては、大きな孔の取込みは、流体添加剤、相又は溶剤によって達成され得る。
【0077】
要約すると、本発明は、ポリマー、好ましくはポリマービーズ又は樹脂、又はその他の材料をベースとする高度に定義された気孔構造を示す分離材料の調製のための新規の方法について記載している。本発明に従うと、分離領域内で樹脂として有用である球形ビーズ又は材料の生産のためのプロセス及び方法が本発明の焦点にある。例えば、定義されたサイズ及び化学的性質のコロイドシリカを用いることにより、最終材料の孔径を予め定めることができる。異なる分離利用分野で、異なる孔径を有する樹脂又は材料が必要とされる。本発明は、所定の範囲内の孔径例えば少なくとも50オングストローム、より好ましくは少なくとも100オングストロームで孔径を制御する可能性を提供する。さらに、本発明はまた、図2Cに例示されているような狭い孔径分布を有する樹脂及び材料をも提供する。図2Cは本発明に従った樹脂の窒素吸着分析によって分析された孔径及び孔径分布を例示している。さらに、モノマー溶液中にポロゲン溶剤を内含しないことにより、望ましくない未定義の気孔は未然に防がれ、材料は望ましくない微小孔率を全く含まないものとなる。
【0078】
本発明について、いくつかの開示された実施形態との関係において記載してきたが、当業者であれば、具体的には言及されていないものの本発明の範囲内に入るその他の実施形態、変形形態又は組合せも予測することができる。
【0079】
本書で引用された全ての参考文献はその全体が本明細書に参照により援用されている。
【0080】
ここで、非限定的な実施例を参考にしながら、本発明についてさらに詳細に記載する。
【実施例】
【0081】
実施例1
コロイドシリカのシラン化
1000ml入りの2口丸底フラスコに、21.0gのシリカ(アエロジル、デグサ、ドイツ)及び120mlのトルエンを添加し、窒素を10分間バブリングし、その後1mlの精製水を、オーバーヘッド式撹拌機で非常にゆっくりと撹拌しながら滴下し、その後1時間撹拌した。約14.5ml(16.2g)のシランを混合物中に滴下し、10分間撹拌し、0.1211gのp−トルエンスルホン酸一水和物を添加し、室温で45分間撹拌し、油浴中で105℃、窒素下で24時間還流に付す。冷却後、溶剤を除去し、シリカを得た。
【0082】
実施例2
バルク重合
10gのDVB(ジビニルベンゼン)、2gのスチレン及び200mgのAIBNのモノマー混合物を調製し、1〜20gのコロイドシリカ(アエロジル、デグサ)を添加する。均質な混合物に達するまで穏やかな撹拌を必要とする混合物が得られる。この濃厚なモノマーシリカ混合物を次に12時間65℃まで加熱させる。重合の後、ポリマーブロックを得、ポリマー塊へと破砕し、粉砕し、洗浄し、ふるいがけ又は水簸して、乾燥させる。
【0083】
ポリマー−シリカ複合材料顆粒をまず充分な量のアセトン又は任意の適切な溶剤の中で膨潤させ、その後水酸化ナトリウム水溶液でこれを処理し、取込んだシリカを溶解させる。結果としての処理された顆粒はこのとき、溶解したシリカコロイドが残した秩序気孔構造を有する。
【0084】
実施例3
懸濁重合(高度の架橋を有するもの)
10gのDVB、2gのスチレン及び200mgのAIBNのモノマー混合物を調製し、5gのコロイドシリカ(アエロジル、デグサ)を添加する。シリカ−モノマー混合物が得られ、これには均質の混合物に達するまで穏やかに撹拌する必要があるかもしれない。このシリカ−モノマーを次に、標準的に2重量%の懸濁安定剤(例えばPVA)、及び必要に応じて室温で懸濁を安定化させるためのその他の添加物を含有する100mlの水相に添加する。その後、2相懸濁液系を撹拌してモノマー混合物を分散させて小さなポリマー液滴を形成させ、次に65℃で12時間その後80℃で4時間加熱する。重合の完了後、ポリマービーズを採取し、次に洗浄し、必要な場合は湿式又は乾式ふるいがけ、水簸又は沈積により所望の粒度画分へと分画し、乾燥させる。このプロセスは図4に概略的に描かれている。
【0085】
このポリマー−シリカ複合材料をまず50mlのアセトン又はその他の適切な溶剤のいずれかの中で膨潤させ湿潤化させ、その後、取込まれたシリカを溶解させる水酸化ナトリウムで処理する。このように処理されたビーズはそのとき球形であり、溶解したシリカコロイドが残した秩序気孔構造を有する。
【0086】
実施例4
シリカ−凝集体の形成及びその後のモノマー添加
標準的に2%の懸濁安定化剤(例えばPVA)、及び必要に応じてその他の添加剤を含有する連続水相(100ml)を調製し、次に5gのコロイドシリカ(アエロジル、デグサ)を添加し、撹拌して均等に懸濁させる。このプロセス中、コロイドシリカの凝集体が形成し得る。徹底的な懸濁の後、10gのDVB、2gのスチレン及び200mgのAIBNからなるモノマー溶液を、例えば分量式に添加し、全てのモノマーがシリカ凝集体により吸収されてしまうまで混合物を撹拌し、全混合物を系の中に均等に分散させる。その後懸濁液を65℃で12時間、その後80℃で4時間加熱する。重合が完了した後、ポリマービーズを採取し、その後洗浄し、必要に応じて湿式又は乾式ふるいがけ、水簸又は沈積により、所望の粒度の画分へと分画し、乾燥させる。このプロセスは図4に概略的に例示されている。
【0087】
このポリマー−シリカ複合材料をまず50mlのアセトン又はその他の適切な溶剤のいずれかの中で膨潤させ湿潤させ、その後、水酸化ナトリウム水溶液で処理し、取込まれたシリカを溶解させる。このように処理したビーズは、そのとき球形であり、溶解したシリカコロイドが残した秩序気孔構造を有する。
【0088】
実施例5
半乾燥重合
容器中で5gの乾燥コロイドシリカ(アエロジル、デグサ)を秤量し、スチレン、ジビニルベンゼン及び開始剤からなる(モル比1:1:0.04)モノマー混合物0.1〜5mlを添加する。容器を窒素でパージし、次に密封する。シリカ床全体を通して徹底的にモノマー混合物を均等に分布させるのに充分なだけこの半乾燥混合物を撹拌する(或いは掻混又はローリングさせる)。その後混合物を、16時間60℃で加熱することにより重合を開始させ、モノマーが完全に硬化してしまうまで重合させる。その後、水酸化ナトリウム溶液に曝露することによりシリカを除去し、結果としてのポリマービーズを洗浄し、採取する。
【0089】
実施例6
未変性コロイドシリカを用いた逆懸濁
5gのエチレングリコールジメタクリラートEGDMA、2gのヒトロキシエチルメタクリラート(HEMA)、2gのメタクリル酸(MAA)及び200mgのAIBNのモノマー混合物を調製し、5gの未変性コロイドシリカを添加する。濃厚な懸濁液が得られるが、これには均質な混合物に達するまで穏やかに撹拌する必要があるかもしれない。この濃厚なモノマー懸濁液を次に、標準的に2%の懸濁安定剤及び必要に応じて室温で懸濁を安定させるための添加剤を含有する鉱油、石油エーテル、ヘプタン又は類似の相(50ml)に添加する。任意には、油相中の望ましくない重合を抑制するべく油相に対しラジカルスカベンジャを添加することができる。こうして、一般のクロマトグラフィにおける固定相としては有用でない小さいポリマー画分をもたらす油相中の未制御重合の量は減少する。次に、2相懸濁液系を撹拌してモノマー混合物を崩壊させて、小さいポリマー液滴を形成し、その後12時間65℃まで、そして次に4時間80℃で加熱する。重合完了後、ポリマービーズを採取し、その後洗浄し、必要に応じて所望の粒度に分画し、乾燥させる。
【0090】
このポリマー−シリカ複合材料をまず50mlのアセトン中で膨潤させ、次に水酸化ナトリウム水溶液で処理して、取込まれたシリカを溶解させる。結果として得られたポリマービーズを洗浄し採取する。
【0091】
実施例7
制御された孔径のポリマー樹脂(低架橋材料)の調製
シリカゲル(3g)(アエロジル、デグサ)及び精製水(30ml)を3口フラスコに添加し、穏やかに撹拌しながら30分間窒素ガスで混合物を曝気した。スチレン、ジビニルベンゼン及び開始剤(モル比1:1:0.04)からなる混合物(3ml)とそれに続いて10mlの0.35wt%のPVA水溶液(MW1000、1部;MW1500、25部)を添加した。混合物を24時間流動する窒素下で700rpmで撹拌し、その後75℃でさらに24時間保った。混合物を次に冷却し、焼結ガラスフィルタを通してろ過し、200mlの水と100mlのメタノールで洗浄した。その後5MのNaOH水溶液90mlとメタノール60mlの混合物に対して沈殿物を添加し、室温で24時間撹拌して、鋳型シリカゲルを溶解させた。溶液が中性となるまで水で、そしてそれに続いて100mlのメタノールで、ポリマー粒子を洗浄し、その後、室温で真空下で乾燥させた。標準的ポリマー収率は90%を上回り、シリカは先の例で記載されている通り、定量的に除去される。
【0092】
実施例8
イオン交換材料を形成するための制御された孔径樹脂の修飾
ステップ1:クロロメチル化
2.7gのトリオキサンと12mlのクロロメチルシランを30mlのクロロホルム中に溶解させ、溶液を、例えば実施例7の場合のように調製された3グラムの乾燥ポリマー材料に対し添加した。その後、1.5mlのSnClを添加し、混合物を0℃で30分間そしてさらに2時間室温で、流動する窒素下で撹拌した。反応混合物をメタノール−水混合物に添加し、ガラスフィルタを通してろ過し、メタノール、THF、水及びメタノールで洗浄した。ポリマービーズを真空下で乾燥させた。
【0093】
ステップ2:アニオン交換材料への転換
8mLの水と2mLのN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンの混合物中に、2.0gのクロロメチル化樹脂を懸濁させる。粒子を10分間、音波処理により分散させ、その後混合物を4時間60℃で撹拌する。ガラスフィルタ上で粒子をろ過し、水、6MのHCl及び水で洗浄し、その後真空下で一晩乾燥させる。N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンの代りにその他の第3アミンも使用可能である。
【0094】
実施例9
狭い孔径分布を有する単分散ビーズの調製
水(0.1g/ml)中の(乳化剤を用いないエマルジョン重合によって得られた)0.83mlのラテックス懸濁液を、0.48mlのフタル酸ジブチル、0.02gのSDS及び5mlの精製水からなるマイクロエマルジョンで膨潤させる。この混合物を、油微液滴が完全に消滅するまで、125rpmで撹拌しながら15時間膨潤させる。膨潤した粒子に対して、2%のPVAを含有する20mlの精製水中に分散した1〜10gのコロイドシリカ(アエロジル、デグサ)を添加し、膨潤したポリマー液滴により撹拌下でこれを吸収させる。架橋剤(5mlのEDMA)、モノマー(1mlのメタクリル酸)、0.25gのAIBN、0.02gのSDS、20ml中2%のPVAを添加し、同様に、撹拌しながら形成された液滴により吸収させる。任意には、粒子をさらに膨潤させて粒度を増大させる。形成された粒子内部のモノマーを次に50℃で24時間ゆっくり撹拌しながら窒素雰囲気下で重合させる。重合させたビーズの分散がこのように得られ、これを250mlの水中に注ぎ込み、ろ過し、次にメタノールで3回、テトラヒドロフランで2回、アセトンで2回の懸濁−ろ過サイクルにより洗浄する。得られた粒子をその後アセトンで研ぎ、二フッ化水素アンモニウムで処理して犠牲フィラーを除去し、洗浄し、採取して定義された気孔構造を有する単分散ポリマー粒子を得る。
【0095】
実施例10
定義された孔径分布を有するモノリシックカラムの調製
3mlのスチレン、ジビニルベンゼン及びAIBN(モル比1:1:0.04)中のシリカ(3g、アエロジル、デグサ)の懸濁液を片端が密封されたステンレス鋼製カラム(寸法、内径4.6mm、高さ10cm)内に注ぎ込む。カラムの充填後、片側も同様に密封し、カラムを重合させる。例えば熱による重合の完了後、カラムをメタノール水酸化ナトリウムで洗浄して犠牲フィラーを除去し、カラムを洗浄する。
【0096】
実施例11
狭い孔径分布を有する膜の調製
3mlのスチレン、ジビニルベンゼン及びAIBN(モル比1:1:0.04)中のシリカ(3g、アエロジル、デグサ)の懸濁液を、ペトリ皿金型中に流し込み、この金型を次にロックで密封する。充填及び密封の後、ポリマーを例えば熱又はUV照射により重合させる。重合完了後、得られた膜を水酸化ナトリウム水で処理及び洗浄して、実施例7中に記載されているように犠牲フィラーを除去し、膜を洗浄する。このプロセス又はそれに類似したプロセスにより、定義された孔径構造を有する膜及び平坦な形式が得られる。
【0097】
実施例12
定義された孔径分布を有する成形技術によって作られる材料の調製
犠牲シリカをポリプロピレン(PP)顆粒に混和し、これを次に、所望の設計の形状及び形態を生産するべく射出、押出し又はブロー成形又はカレンダリングのため成形装置の中でさらに加工する。10gのPP顆粒に対し、乾燥状態で0.1〜100gのコロイドシリカを混和し、機械の中に補給する。PPシリカ混合物を、成形器具のさまざまな工具を通して圧送して、所望のサイズ及び形状の金型を得る。或いは、予備成形されたポリプロピレン(又はポリエチレン又はその他のポリマー)を、所望の形状及び形態にプレス加工又は焼結することができる。
【0098】
形状形成及びさらなる(機械的、物理的又は化学的)処理ステップの後、実施例7に記載した通りの適切な方法で犠牲フィラーを除去して、所望の形状及び定義された孔径分布を有する材料を得る。
【0099】
実施例13
気孔形成剤としてコロイドを用いた分子インプリントされたポリマーの調製
容器内で、5gの乾燥コロイドシリカ(アエロジル、デグサ、ドイツ)を秤量し、エチレングリコールジメチルアクリラート、メタクリル酸、プロプラノロールそして任意にはクロロホルムからなる0.1〜5mlの分子インプリントモノマー混合物を添加する。容器を窒素でパージし、その後密封する。シリカ床全体を通して徹底的にモノマー混合物を均等に分布させるのに充分なだけ混合物を混合する。次に加熱、UV照射又はその他の方法により混合物の重合を開始させ、モノマーが完全に硬化するまで混合物を重合させる。その後、二フッ化水素アンモニウム水溶液での処理によりシリカを除去し、結果として得たポリマービーズを洗浄し採取する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図面の説明
【図1】コロイドシリカの取込み、重合化及びコロイドの除去によって得られる気孔を伴う本発明の方法によるポリマー材料の調製を例示している。最終的ポリマービーズの孔径分布は、グラフ中で理想化されており、コロイドシリカのサイズ分布に対応しているはずである。
【図2A−C】窒素吸着(BET)分析により測定されるさまざまなビーズの孔径分布を例示している。調査対象となったビーズは、A)高級な市販のシリカ、B)高級な市販のポリスチレン−ジビニルベンゼン(PS−DVB)ポリマー樹脂、及びC)本発明に従ったポリマービーズであった。
【図3】光学顕微鏡により撮影された本発明に従ったポリマー材料の写真を例示している。
【図4】プロセス中にコロイド粒子を取込んだポリマービーズの調製のための懸濁プロセスを概略的に例示する。コロイド粒子及びモノマー溶液の両方が疎水性を有する場合、それは、分散媒、水と非混和性の相を形成することになる。撹拌時点で、モノマーと疎水性コロイド粒子からなる前記相は液滴を形成することになる。重合の後、コロイド−ポリマー複合ビーズが得られる。さらなる加工により多孔質ビーズが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭い孔径分布を有するポリマービーズ材料であって、
a)非多孔質粒子の存在下で、モノマー及び任意にはポロゲン及び任意には添加剤を提供し、任意にはこれらを混合すること、
b)分散媒中で前記混合物を分散させて、前記非多孔質粒子を含むモノマー液滴を形成すること、
c)前記非多孔質粒子を含む前記モノマー液滴を重合すること、
d)形成されたポリマービーズから前記非多孔質粒子を除去すること、
によって得られるポリマービーズ材料。
【請求項2】
狭い孔径分布を有するポリマービーズ材料であって、
a)非多孔質粒子の存在下で、モノマー及び任意にはポロゲン及び任意には添加剤を提供し、任意にはこれらを混合すること、
b)前記非多孔質粒子を含む前記モノマー液滴を重合すること、
c)形成されたポリマービーズから前記非多孔質粒子を除去すること、
によって得られるポリマービーズ材料。
【請求項3】
前記分散媒が親水性である、請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項4】
前記親水性分散媒が、水、アルコール、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、有機酸、アミド、有機塩基及びケトン、その他の極性有機溶剤或いはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3に記載のポリマー材料。
【請求項5】
前記分散媒が疎水性である、請求項1に記載のポリマー材料。
【請求項6】
前記疎水性分散媒が、鉱油、芳香族又は脂肪族環式化合物、石油エーテル、アルカン及びハロゲン化溶剤或いはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項5に記載のポリマー材料。
【請求項7】
非多孔質粒子が、粒度、表面化学及び密度などの同じ又は異なる特性を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項8】
前記非多孔質粒子がコロイド粒子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項9】
前記コロイド粒子が500nm以下の直径を有する、請求項7又は8に記載のポリマー材料。
【請求項10】
前記非多孔質粒子が500nm超の粒子である、請求項7又は8に記載のポリマー材料。
【請求項11】
前記非多孔質粒子の粒度及び粒度分布に対応する孔径及び孔径分布を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項12】
前記孔径が少なくとも50オングストロームである、請求項11に記載のポリマー材料。
【請求項13】
前記非多孔質粒子の表面が、荷電、中性、酸性、塩基性、極性、非極性、親水性、疎水性、キラル、アクリル、スチレン又はバイオミメティックである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項14】
前記コロイド粒子が、コロイドシリカ、ラテックス、結晶分子、生体鉱物又はその他の任意の有機、無機又は生物学的コロイドエンティティ或いはそれらの任意の混合物から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項15】
前記モノマーがビニル、スチレン又はアクリルモノマー、架橋モノマー又はその他の任意の極性、非極性、イオン性、親水性又は疎水性モノマー又は架橋モノマー或いはそれらの任意の混合物から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項16】
前記非多孔質粒子の表面に鋳型分子を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項17】
鋳型分子がステップa)で添加される、請求項1又は2に記載のポリマー材料。
【請求項18】
前記モノマーがアクリル、ビニル又はスチレンモノマー及び多価架橋剤から選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項19】
前記取込まれた非多孔質粒子が、フッ化物化合物、アルカリ性又は酸性化学物質から選択される作用物質によって除去される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項20】
前記材料が、イオン性、キラル、極性、疎水性、バイオミメティック、触媒材料であるか、反応性或いはそれらの任意の組合せを有するか、又は親和性特性を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項21】
前記ポリマービーズ材料が微小孔を含まない、請求項1〜20のいずれか一項に記載のポリマービーズ材料。
【請求項22】
分離;抽出;検出;触媒反応;診断;内包の利用分野、例えば化学物質例えば金属イオン、無機化合物、薬物、炭水化物、脂肪、ペプチド、タンパク質、核酸、天然及び人工ポリマー、天然又は人工化合物、食品又は医薬品、ウイルス、細菌、細胞及びその他のエンティティの内包;又は富化利用分野、例えばクロマトグラフィ、バッチ分離、センサー利用分野、フィルタ、膜、制御放出材料、触媒、バイオミメティック材料、熱力学的トラップ及び内包マトリクスにおいて使用される、請求項1〜21のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項23】
前記ポリマー材料が、クロマトグラフィカラム内の充填物質として使用される、請求項1〜21のいずれか一項に記載のポリマー材料。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−518501(P2009−518501A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544301(P2008−544301)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050545
【国際公開番号】WO2007/067140
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508170678)エムアイピー テクノロジーズ エービー (1)
【Fターム(参考)】