説明

ポンプゲート

【課題】スイング型やマイタ型の扉門設備の扉門(扉体)の水路開閉、昇降型の扉門設備の扉門(ゲート)の上昇に支障とならない薄型のポンプゲートを提供すること。
【解決手段】鉛直に配置された回転軸12に一端が支持され、該回転軸12を中心に水平方向に回転することにより開閉する単数又は複数の扉門11を備え、扉門11の開閉により水路10を開閉する扉門設備の扉11内に、扉門11により水路10を閉じた状態で、水路10の上流側に吸込口13aが下流側に吐出口11bが開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路13を設け、扉門内水路13に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプの噴流ノズル20を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛直に配置された回転軸に一端が支持された単数又は複数の扉門を備え、該扉門の開閉で水路を開閉する扉門設備、昇降する扉門(ゲート)を備え、該扉門の昇降により水路を開閉する扉門(ゲート)設備に関し、特に扉門にポンプを設け、水路を閉じた状態で上流側の水を下流側に排水することができるポンプゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、本川と支川との合流部に、小規模な排水施設としてポンプゲート設備を設置し、支川の氾濫を防止している。即ち大雨などで本川が増水した場合、ポンプゲート設備のゲートを閉じることで、本川側の水が支川に逆流するのを防止し、支川の上流側の水をポンプによって本川側に強制的に排水している。
【0003】
図1は従来のこの種のポンプゲート設備を示す概略側断面図である。このポンプゲート設備は、水路100を開閉するゲート101と、該ゲート101に取り付けたポンプ102(水中ポンプ)と、ゲート101に取り付けた吊り上げ部材103と、該吊り上げ部材103を上下動させゲート101を開閉する開閉機構(スピンドルやラック開閉機構で構成される)104、該開閉機構104をゲート101の上部に据え付けるためのコンクリート製構造物又は鋼製架台105、及び手摺106等を備えている。本川増水時は開閉機構104を駆動してゲート101を下降させ水路100を閉じ、ポンプ102を駆動することで支川の上流側の水を下流側(本川側)に排水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−38455号公報
【特許文献2】特開2000−204536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のポンプゲート設備においては、ゲート101とポンプ102(水中ポンプ)を一体化しており、ゲート101は、鉛直方向に上下動するスライドゲート又はローラゲートを使用しているが、ポンプ102の吸込口102a及び逆流防止用のフラップ弁を含む吐出口102bがゲート101の側面から張り出しているため、ポンプ102の上昇に限界があり、ポンプ102を高く上昇させるには、コンクリート製構造物又は鋼製架台105を大きくする必要があった。
【0006】
また、従来、図2に示すように、鉛直に配置された回転軸110に一端が支持され、該回転軸110を中心に水平方向に回転することにより水路100を開閉する扉門(扉体)111を備えたスイング型の扉門設備や、図3に示すように、鉛直に配置された回転軸110に一端が支持され、該回転軸110を中心に水平方向に回転することにより水路100を開閉する扉門(扉体)111を備えたマイタ型の扉門設備がある。このような、スイング型やマイタ型の扉門設備の扉門111にポンプ112を取り付けることも考えられる。しかしながら、ポンプ112の吸込口112a及び吐出口112bが扉門111の側面から張り出すことになるため、水路100の開放に支障をきたし、水路100を完全に開放するためには、水路100の片側側壁(図2参照)や両側側壁(図3参照)に大きなピット113を設ける必要がある。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、スイング型やマイタ型の扉門設備の扉門の開閉、昇降型の扉門設備の扉門の上昇に支障とならない薄型のポンプゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、鉛直に配置された回転軸に一端が支持され、該回転軸を中心に水平方向に回転することにより開閉する単数又は複数の扉門を備え、該扉門の開閉により水路を開閉する扉門設備の該扉門内に、前記扉門により前記水路を閉じた状態で、前記水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したことを特徴とするポンプゲートにある。
【0009】
また、本発明は、昇降により水路を開閉する扉門を備えた扉門設備の該扉門内に、前記扉門により前記水路を閉じた状態で、前記水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したことを特徴とするポンプゲートにある。
【0010】
また、本発明は、上記ポンプゲートにおいて、前記扉門内水路の吐出口に逆流防止用弁を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記ポンプゲートにおいて、前記扉門内水路の吐出口は該水路下流側の最高水位より高い位置に配置することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記ポンプゲートにおいて、前記扉門が全開及び全閉の状態で、該扉門の底面が当接する傾斜面を前記水路の底面に設け、前記扉門及び該扉門に設けた前記ポンプの荷重を該扉門の底面を介して前記傾斜面で支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、扉門内に水路を閉じた状態で、水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したので、扉門の側面から張り出すものはなく、扉門を開いた場合、扉門は水路の側部に寄り、水路面を開放するので、通船等の障害にならない。また、水路上方に構造物が立設することなく、景観や日照を害することがない。また、扉門を開いた状態では、扉門は水路の側部に寄っているから、扉門やポンプの分解点検において、必要最小限の引き上げ容量のクレーン設備でよく、分割構造によっては、クレーンを備えた車両(例えば積載型トラッククレーン)程度で扉門施設の維持管理が可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、昇降する扉門内に水路を閉じた状態で、水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路の垂直部に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したので、扉門の側面から張り出すものはなく、扉門を昇降させる昇降機構が簡単で該昇降機構を取り付けるコンクリート製構造物又は鋼製架台を大きくする必要がない。
【0015】
また、本発明によれば、扉門内水路の水路下流側の開口に逆流防止用弁を設けたので、ポンプの羽根車又は噴流ポンプのノズルの停止中に水路下流側の水が扉門内水路を通って上流側に水が逆流することがない。
【0016】
また、本発明によれば、扉門内水路の水路下流側の開口は該水路下流側の最高水位より高い位置に配置するので、水路下流側の水が扉門内水路を通って逆流することがないから逆流防止用弁を設ける必要がなく、逆流を完全に防止できる。
【0017】
また、本発明によれば、扉門が全開及び全閉の状態で、該扉門の底面が当接する傾斜面を水路の底面に設け、扉門及び該扉門に設けたポンプの荷重を該扉門の底面を介して傾斜面で支持するので、扉門を回転軸でのみ支持する片持ち構造に比較し、回転軸及び扉門自体の剛性を小さくできコスト低減を図ることができる。これに対し、扉門を回転軸のみで常時支持する片持ち構造では、回転軸や扉門の剛性を大きくする必要があり、その分コスト高となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のポンプゲート設備の概略構成を示す側断面図である。
【図2】従来の扉門設備の扉門にポンプを取り付けた場合の概略構成例を示す図で、図2(a)は平面図、図2(b)は側断面図である。
【図3】従来の扉門設備の扉門にポンプを取り付けた場合の概略構成例を示す図で、図3(a)は平面図、図3(b)は側断面図である。
【図4】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す図で、図4(a)は平面図、図2(b)は側断面(A−A断面)図である。
【図5】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。
【図6】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す平面図である。
【図7】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す図で、図7(a)は平面図、図7(b)は側断面(A−A断面)図である。
【図8】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。
【図9】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。
【図10】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。
【図11】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。
【図12】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。
【図13】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す図で、図13(a)平面図、図13(b)は(a)のA−A断面図、図13(c)は(a)B−B断面図である。
【図14】本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す図で、図14(a)平面図、図14(b)は(a)A−A断面図、図14(c)は(a)B−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。
〔実施形態例1〕
図4は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す図で、図4(a)は平面図、(b)は扉門(扉体)の側断面(A−A矢視断面)図である。図において、10は、本川と支川との合流部に設けられた水路である。本ポンプゲートは、スイングゲートと呼ばれる扉門11を備えたポンプゲートである。扉門11は一端が鉛直に立設配置された回転軸12で支持され、支柱15を中心に水平方向に回転するようになっている。扉門11を支持する回転軸12が支柱15を中心に回転し水路10を塞いだ状態が扉門11の全閉、側壁10aに当接した状態(扉門11が一点鎖線で示す位置にある状態)を全開という。
【0020】
扉門11には、該扉門11により水路10を閉じた状態で、水路10の上流側に開口する吸込口13a、下流側に開口する吐出口13bを備え、上下方向に垂直に延びる扉門内水路13を設けている。該扉門内水路13は扉門11の頂部に達し、吸込口13aと吐出口13bの間の垂直部に水路10の上流側の水を下流側に排水するポンプの羽根車14を配置している。該羽根車14はシャフト16を介して電動機等の駆動機17の回転軸に連結され、該駆動機17で回転されるようになっている。吐出口13bには、逆流防止弁として扉門11の下流側にヒンジピン18aでの回動自在に支持されたフラップ弁18を設けている。
【0021】
上記構成のポンプゲートにおいて、駆動機17を起動して羽根車14を回転すると水路10の支川側の水は吸込口13aから吸い込まれ、扉門内水路13内を上昇して、吐出口13bからフラップ弁18を押し上げ、下流側に流れる。WL1は水路10の上流側の水位を、WL2は水路10の下流側の水位を示す。図4に示すように、下流側の水位WL2が上流側の水位WL1より高い場合、何らかの原因で羽根車14が停止すると、下流側の水圧でフラップ弁18は閉じ、下流側の水は扉門内水路13を通って上流側へは流れない。即ち、逆流は防止される。図では扉門11内に2本の扉門内水路13をそれぞれにポンプの羽根車14を配置した例を示したが、扉門内水路13を1本又は3本以上設け、各扉門内水路13に羽根車14を配置してもよい。なお、矢印Jは支川側から本川側に流れる水流の方向を示す。
【0022】
上記のように、ポンプゲートを扉門設備の扉門11に吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設け、該扉門内水路13に羽根車14を配置する構成を採用することにより、扉門の両側面に大きな凸部が現れることなく、ポンプゲートがスリム化される。その結果、扉門11が全開、即ち図4(a)一点鎖線で示す位置にある場合、扉門11が水路10の側壁10aと平行で当接した状態で寄るから、自然流下時の水理に影響を与えることなく、扉門設備をポンプゲートとしても水路10を拡張する必要がない。
【0023】
また、電動機等の駆動機17を扉門11の頂部に設置することにより、駆動機17に通常の屋外型の駆動機を使用することが可能となり、従来のポンプゲートのように駆動機に水中モータを使用することがないから経済性に優れる。また、駆動機17が扉門11の外に出ていることから、日常点検が行い易くなると共に、扉門内水路13が扉門11の頂部に達し開口しているから、羽根車14やシャフト16等のポンプ回転体を含め、扉門内水路13を通して鉛直方向に取り出すことができるから、分解点検時における維持管理性の向上が図れる。
【0024】
〔実施形態例2〕
図5は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す扉門(扉体)の側断面(図4(a)A−A矢視断面)図である。図5において、図4と同一符号を付した部分は同一部分を示す。なお、他の図においても同様とする。本ポンプゲートが図4のポンプゲートと異なる点は、扉門内水路13の吐出口13bの位置が、水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置になっている点である。これにより、逆流防止弁としてのフラップ弁18を省略できる。また、逆流防止弁がフラップ弁18の場合、吐出口13bの端部とフラップ弁18の間に異物が挟まった場合、逆流を完全に防止できないが、ここでは吐出口13bの位置を水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置としているため、逆流は完全に防止できる。
【0025】
なお、図4、図5ではスイングゲートと呼ばれる扉門11を備えたポンプゲートを示したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、一端が鉛直に立設配置された回転軸12で支持され、支柱15を中心に水平方向に回転する一対の扉門11を備えたマイタゲートの各扉門11の内部に図4(b)及び図5に示すような、吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設け、該扉門内水路13に羽根車14を配置するようにしてもよい。
【0026】
〔実施形態例3〕
図7は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す図で、図7(a)は平面図、(b)は扉門(扉体)の側断面図である。本ポンプゲートは、スイングゲートと呼ばれる扉門11を備えたポンプゲートである。扉門11は図4(a)に示す扉門11と同様、一端が鉛直に立設配置された回転軸12で支持され、支柱15を中心に水平方向に回転するようになっている。また、扉門11には、吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設けている点も図4(a)に示す扉門11と同じである。
【0027】
本ポンプゲートでは、扉門内水路13の垂直部に噴流ポンプ(ジェットポンプ)の噴流ノズル20を配置している。該噴流ノズル20には噴流発生ポンプ22の吐出口に接続された噴流水供給管21が接続されている。噴流発生ポンプ22の吸込口には噴流水吸込管23が接続され、該噴流水吸込管23の下端にはストレーナ24が取り付けられている。噴流発生ポンプ22を起動し、噴流水吸込管23で水路10の上流側の水(下流側の水でもよい)を吸込み、噴流水供給管21を通して噴流ノズル20に供給する。この時、噴流水吸込管23に吸い込まれる水に同伴する異物はストレーナ24で除去される。これにより、噴流ノズル20から噴流水25が噴出し、扉門内水路13内の水を押し上げ、吐出口13bから吐出す。これにより、水路10の上流側の水が吸込口13aから吸い込まれ、扉門内水路13を通って、吐出口13bから下流側に吐き出される。
【0028】
上記のように、ポンプゲートにおいて扉門設備の扉門11に吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設け、該扉門内水路13に噴流ノズル20を配置する構成を採用することにより、扉門11の両側面に大きな凸部が現れることなく、ポンプゲートがスリム化される。その結果、扉門11が全開、即ち図7(a)一点鎖線で示す位置にある場合、扉門11が水路10の側壁10aと平行で当接した状態となるから、自然流下時の水理に影響を与えることなく、扉門設備をポンプゲートとしても水路10を拡張することがない。
【0029】
また、噴流発生ポンプ22を扉門11の外に設置することにより、通常の屋外型のポンプを使用することが可能となり、従来のポンプゲートのように水中モータポンプを使用することがないから経済性に優れる。また、扉門内水路13に回転するものがないから、故障も発生しにくい。噴流発生ポンプ22やその駆動機等が扉門11の外に出ていることから、日常点検が行い易くなる。
【0030】
また、噴流発生ポンプ22を図7(a)に示すように、水路10の側部に設置し、噴流水供給管21を回転軸12又は直近位置に取り付ける。噴流水供給管21を回転軸に取り付けることにより、噴流水供給管21に可撓性を持たせることがない。また、回転軸12の直近位置でも、扉門11の全開・全閉時の取り合い点の変位は僅かであるので、過剰な可撓を持たせる設備を設ける必要がなく、効果的である。
【0031】
〔実施形態例4〕
図8は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す扉門(扉体)の側断面図である。本ポンプゲートが図7のポンプゲートと異なる点は、扉門内水路13の吐出口13bの位置が、水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置になっている点である。これにより、逆流防止弁としてのフラップ弁18を省略できる。また、逆流防止弁がフラップ弁18の場合、吐出口13bの端部とフラップ弁18の間に異物が挟まった場合、逆流を完全に防止できないが、ここでは吐出口13bの位置を水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置としているため、逆流は完全に防止できる。
【0032】
なお、図7、図8ではスイングゲートと呼ばれる扉門11を備えたポンプゲートを示したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、一端が鉛直に立設配置された回転軸12で支持され、支柱15を中心に水平方向に回転する一対の扉門11を備えたマイタゲートの各扉門11の内部に図7(b)及び図8に示すような、吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設け、該扉門内水路13に噴流ノズル20を配置するようにしてもよい。
【0033】
〔実施形態例5〕
図9は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す断面図である。本ポンプゲートは、水路10を開閉する扉門(ゲート)31、扉門31に取り付けた吊り下げ部材32、該吊り下げ部材32を上下動させ扉門31を開閉するゲート開閉機構(スピンドルやラック開閉機構で構成される)33、該ゲート開閉機構33を扉門31の上部に据え付けるためのコンクリート製構造物又は鋼製架台34、梯子35、及び手摺36等を備えている点は、図1に示す従来のポンプゲートと同じである。
【0034】
本ポンプゲートでは、扉門31内に吸込口13a及び吐出口13bを備え上下方向に垂直に延びる扉門内水路13を設けている。該扉門内水路13の垂直部に水路10の上流側の水を下流側に排水するポンプの羽根車14を配置している。該羽根車14はシャフト16を介して電動機等の駆動機17の回転軸に連結され、該駆動機17で回転されるようになっている。吐出口13bには、逆流防止弁として扉門31の下流側にヒンジピン18aで回動自在に支持されたフラップ弁18を設けている。
【0035】
上記構成のポンプゲートにおいて、扉門31を下げその下端が水路10の底面10cに当接して水路を閉じ、駆動機17を起動して羽根車14を回転すると水路10の支川側の水は吸込口13aから吸い込まれ、扉門内水路13内を上昇して、吐出口13bからフラップ弁18を押し上げ、下流側に流れる。このように、扉門31内に吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設け、該扉門内水路13に羽根車14を配置する構成を採用することにより、扉門11の両側面に大きな凸部が現れることなく、ポンプゲートがスリム化される。その結果、扉門11の昇降が容易で、ゲート開閉機構33、コンクリート製構造物又は鋼製架台34等を大きくする必要がない。
【0036】
また、電動機等の駆動機17を扉門31の頂部に設置することにより、駆動機17に通常の屋外型の駆動機を使用することが可能となり、経済性に優れる。また、駆動機17が扉門31の外に出ていることから、日常点検が行い易くなる。また、扉門内水路13は扉門31の頂部に達して開口しているから、羽根車14やシャフト16等のポンプ回転体を含め、扉門内水路13を通して鉛直方向に取り出すことができるから、分解点検時における維持管理性の向上が図れる。
【0037】
〔実施形態例6〕
図10は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。本ポンプゲートが図9のポンプゲートと異なる点は、扉門内水路13の吐出口13bの位置が、水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置になっている点である。これにより、逆流防止弁としてのフラップ弁18(図9参照)を省略できる。また、逆流防止弁がフラップ弁18の場合、吐出口13bの端部とフラップ弁18の間に異物が挟まった場合、逆流を完全に防止できないが、ここでは吐出口13bの位置を水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置としているため、逆流は完全に防止できる。
【0038】
〔実施形態例7〕
図11は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す側断面図である。本ポンプゲートは、水路10を開閉する扉門(ゲート)31、扉門31に取り付けた吊り下げ部材32、該吊り下げ部材32を上下動させ扉門31を開閉するゲート開閉機構(スピンドルやラック開閉機構で構成される)33、該ゲート開閉機構33を扉門31の上部に据え付けるためのコンクリート製構造物又は鋼製架台34、梯子35、及び手摺36等を備えている点は、図9、図10に示すポンプゲートと同じである。
【0039】
本ポンプゲートでは、扉門内水路13に噴流ポンプ(ジェットポンプ)の噴流ノズル20を配置している。該噴流ノズル20には噴流発生ポンプ22の吐出口に接続された噴流水供給管21が接続されている。噴流発生ポンプ22の吸込口には噴流水吸込管23が接続され、該噴流水吸込管23の下端にはストレーナ24が取り付けられている。噴流発生ポンプ22を起動し、噴流水吸込管23で水路10の上流側の水(下流側の水でもよい)を吸込み、噴流水供給管21を通して噴流ノズル20に供給する。これにより、噴流ノズル20から噴流水25が噴出し、扉門内水路13内の水を押し上げ、吐出口13bから吐出す。これにより、水路10の上流側の水は吸込口13aから吸い込まれ、扉門内水路13を通って、吐出口13bから下流側に吐き出される。
【0040】
上記のように、ポンプゲートにおいて扉門設備の扉門31に吸込口13a及び吐出口13bを備えた扉門内水路13を設け、該扉門内水路13に噴流ノズル20を配置する構成を採用することにより、扉門31の両側面に大きな凸部が現れることなく、ポンプゲートがスリム化される。その結果、扉門31の昇降が容易で、ゲート開閉機構33、コンクリート製構造物又は鋼製架台34等を大きくする必要がない。
【0041】
また、噴流発生ポンプ22を扉門11の外に設置することにより、通常の屋外型のポンプを使用することが可能となり、従来のポンプゲートのように水中モータポンプを使用することがないから経済性に優れる。また、扉門内水路13に回転するものがないから、故障も発生しにくい。噴流発生ポンプ22やその駆動機等が扉門31の外に出ていることから、日常点検が行い易くなる。
【0042】
〔実施形態例8〕
図12は本発明に係るポンプゲートの概略構成例を示す扉門(扉体)の側断面図である。本ポンプゲートが図11のポンプゲートと異なる点は、扉門内水路13の吐出口13bの位置が、水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置になっている点である。これにより、逆流防止弁としてのフラップ弁18(図11参照)を省略できる。また、逆流防止弁がフラップ弁18の場合、吐出口13bの端部とフラップ弁18の間に異物が挟まった場合、逆流を完全に防止できないが、ここでは吐出口13bの位置を水路10の下流側の最高水位HWL2より高い位置としているため、逆流は完全に防止できる。
【0043】
図13は本発明に係るポンプゲートの構成を示す図で、図13(a)は平面図、図13(b)はA−A断面、図13(c)はB−B断面を示す。本ポンプゲートは図4及び図5に示すポンプゲートと同様、スイングゲートと呼ばれる扉門11を備えたポンプゲートである。図示するように扉門11の底部は断面逆山形に形成されている。そして水路10の底面10cの扉門11の全閉位置及び全開位置には、扉門11の底部逆山形の両斜面の一方の斜面が当接する傾斜面10bが形成されている。
【0044】
上記のように水路10の底面10cの扉門11の全閉位置及び全開位置に傾斜面10bを設けることにより、扉門11が全閉位置や全開位置に達すると、扉門11の底部の傾斜面がこの傾斜面10bに当接し、扉門11等の荷重を扉門11の底部の傾斜面を介して傾斜面10bで支持するので、扉門11を回転軸12でのみ支持する片持ち構造に比較し、回転軸12及び扉門11自体の剛性を小さくできコスト低減を図ることができる。これに対し、扉門11等を回転軸12のみで常時支持する片持ち構造では、回転軸12や扉門11の剛性を大きくする必要があり、その分コスト高となる。
【0045】
図14は本発明に係るポンプゲートの他の構成を示す図で、図14(a)は平面図、図14(b)はA−A断面図、図14(c)はB−B断面図を示す。本ポンプゲートは図6に示すポンプゲートと同様、マイタゲートと呼ばれる2枚の扉門11を備えたポンプゲートである。図示するように扉門11の底部は断面逆山形に形成されている。そして水路10の底面10cの扉門11の全閉位置及び全開位置には、扉門11の底部逆山形の両斜面の一方の斜面が当接する傾斜面10bが形成されている。
【0046】
上記のように水路10の底面10cの扉門11の全閉位置及び全開位置に傾斜面10bを設けることにより、扉門11が全閉位置や全開位置に達すると、扉門11の底部の傾斜面がこの傾斜面10bに当接し、扉門11等の荷重を扉門11の底部の傾斜面を介して傾斜面10bで支持するので、扉門11を回転軸12でのみ支持する片持ち構造に比較し、回転軸12及び扉門11自体の剛性を小さくできコスト低減を図ることができる。これに対し、扉門11等を回転軸12のみで常時支持する片持ち構造では、回転軸12や扉門11の剛性を大きくする必要があり、その分コスト高となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、扉門内に水路を閉じた状態で、水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したので、扉門の側面から張り出すものはなく、扉門を開いた場合、扉門は水路の側部に寄り、水路面を開放するので、通船等の障害にならない。また、水路上方に構造物が立設することなく、景観や日照を害することがない。また、扉門を開いた状態では、扉門は水路の側部に寄っているから、扉門やポンプの分解点検において、必要最小限の引き上げ容量のクレーン設備でよく、分割構造によっては、クレーンを備えた車両(例えば積載型トラッククレーン)程度で扉門施設の維持管理が可能なポンプゲートとして利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 水路
11 扉門
12 回転軸
13 扉門内水路
14 ポンプの羽根車
15 支柱
16 シャフト
17 駆動機
18 フラップ弁
20 噴流ノズル
21 噴流水供給管
22 噴流発生ポンプ
23 噴流水吸込管
24 ストレーナ
25 噴流水
31 扉門(ゲート)
32 吊り下げ部材
33 ゲート開閉機構
34 コンクリート製構造物又は鋼製架台
35 梯子
36 手摺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直に配置された回転軸に一端が支持され、該回転軸を中心に水平方向に回転することにより開閉する単数又は複数の扉門を備え、該扉門の開閉により水路を開閉する扉門設備の該扉門内に、前記扉門により前記水路を閉じた状態で、前記水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したことを特徴とするポンプゲート。
【請求項2】
昇降により水路を開閉する扉門を備えた扉門設備の該扉門内に、前記扉門により前記水路を閉じた状態で、前記水路の上流側に吸込口が下流側に吐出口が開口し、且つ少なくとも一部が垂直方向に配置された扉門内水路を設け、該扉門内水路に上流側の水を下流側に排水する噴流ポンプのノズルを配置したことを特徴とするポンプゲート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポンプゲートにおいて、
前記扉門内水路の吐出口に逆流防止用弁を設けたことを特徴とするポンプゲート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプゲートにおいて、
前記扉門内水路の吐出口は該水路下流側の最高水位より高い位置に配置することを特徴とするポンプゲート。
【請求項5】
請求項1に記載のポンプゲートにおいて、
前記扉門が全開及び全閉の状態で、該扉門の底面が当接する傾斜面を前記水路の底面に設け、
前記扉門及び該扉門に設けた前記ポンプの荷重を該扉門の底面を介して前記傾斜面で支持することを特徴とするポンプゲート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−26269(P2012−26269A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247064(P2011−247064)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2007−286499(P2007−286499)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】