説明

ポンプ制御ユニット

【課題】ポンプから送り出される流体の圧力を目標値に維持する制御を、コスト上昇を招くことなく実現する。
【解決手段】電動モータMの励磁コイル6を駆動するPWM信号のデューティ比の調節により油圧ポンプPの回転速度を制御するドライバ制御ユニット10を備える。励磁コイル6に流れる電流をシャント抵抗Rsで電圧信号に変換し、この電圧信号を分圧比設定回路Aで分圧し、この分圧電圧の上昇によりPWM信号のON信号を短縮する信号補正回路14を備えた。分圧比設定回路AはPWM信号のON時間が長いほど分圧電圧を高くする特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ制御ユニットに関し、詳しくは、ポンプを駆動する電動モータの複数の励磁コイルに対してパルス幅変調により電力を供給する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたポンプ制御ユニットとして特許文献1には、油圧ポンプを駆動するセンサレス三相ブラシレスDCモータが示され、マイコンで制御されるモータ駆動ICと、このモータ駆動ICで制御されるFET回路とを有する制御装置が示されている。この特許文献1の制御装置では、電動モータの回転を検出してモータ駆動ICに与える単位回転角度検出回路と、FET回路を介して電動モータ(励磁コイル)に供給される電流値をシャント抵抗で検出してマイコンに与える電源電流検出回路とを備えている。
【0003】
この特許文献1では、マイコンでPWM演算を行い、この演算結果をモータ駆動ICから、FET回路に与えることでデューティの設定により電動モータの回転の制御が行われる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐353624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動モータで油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプから供給される作動油の油圧を設定値に維持する定油圧制御を行う場合には、油圧ポンプから供給される作動油の油圧を圧力センサで油圧を検出し、この検出値を目標値に維持するためにデューティ比を高精度で設定する制御を行うことが考えられる。
【0006】
しかしながら、作動油の圧力を目標値に維持するためデューティ比を高精度で設定する制御を実現するには、マイクロプロセッサを必要とし、ソフトウエアを開発するためコストの上昇を招くだけではなく、マイクロプロセッサを備えた構成では制御遅れを招くこともあり改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、ポンプから送り出される流体の圧力を目標値に維持する制御を、コスト上昇を招くことなく実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、ポンプを駆動する電動モータが、複数の励磁コイルに電力を供給することで磁界によりロータを駆動回転する駆動構成を備えると共に、前記励磁コイルに供給する電流のデューティ比を設定する電力制御部と、前記励磁コイルに流れる電流を電圧信号に変換するシャント抵抗と、前記シャント抵抗からの電圧信号から前記デューティ比に対応した分圧比となる検出電圧信号を作り出す分圧比設定回路を備え、前記電力制御部で設定される前記デューティ比を、前記検出電圧信号に基づいて変更する電力補正部を備えた点にある。
【0009】
この構成によると、励磁コイルに供給された電流をシャント抵抗が電圧信号に変換するので、この電圧信号に基づいて分圧比設定回路が、デューティ比に対応した分圧比となる検出信号値を作り出す。例えば、デューティ比が低い状態と比較して、デューティ比が高い状態で分圧電圧を高くするように分圧比設定回路を構成すると、デューティ比が高い状態で励磁コイルに流れる電流値の変化した場合に検出電圧信号を大きく変化させることも可能となる。そして、電力補正部が検出電圧信号に基づきデューティ比を変更することで励磁コイルに供給される電力を維持することも可能となる。
特に、この構成では、デューティ比が低い状態では、励磁コイルに流れる電流値が変化した場合に検出電圧信号の変化を小さくして、電力補正部によるデューティ比の変更を行わず必要とする電力を励磁コイルに供給する処理も可能となる。
従って、マイクロプロセッサ等の処理装置を備えずとも、励磁コイルに供給される電流を維持し、ポンプから送り出される流体の圧力を目標値に維持する制御を、コスト上昇を招くことなく、応答性良く実現できた。
【0010】
本発明は、前記電力制御部が、設定されたデューティ比に従って電力制御素子をON状態に設定する信号を出力し、前記電力補正部が、前記検出電圧信号が設定値を超えた際に前記電力制御素子のON時間を短縮する補正作動を行っても良い。
【0011】
これによると、電力補正部は検出電圧信号が設定値を超えた際に電力制御素子のON時間を短縮する補正作動を行うことにより、励磁コイルに対して流れる電流の増大を抑制して目標値に維持できる。
【0012】
本発明は、前記分圧比設定回路が、前記シャント抵抗からの電圧信号を分圧する複数の分圧抵抗と、複数の前記分圧抵抗のうち接地側の分圧抵抗に並列に配置したコンデンサとで構成されても良い。
【0013】
これによると、デューティ比が低い状態ではコンデンサが充放電を繰り返す状態で、このコンデンサに電流が流れるため、接地側の分圧抵抗に流れる電流値が低下し、分圧比設定回路からの検出電圧信号が低下する。これとは逆に、デューティ比が高い状態ではコンデンサが殆ど放電されず充電状態に維持されるため、接地側の分圧抵抗に流れる電流値が増大し、分圧比設定回路からの検出電圧信号は上昇する。つまり、モータの始動時のようにデューティ比が低い状態で励磁コイルに流れる電流値が設定値を超えた場合にデューティ比を維持して電動モータの確実な増速を行わせる。また、電動モータが定常回転にある場合のようにデューティ比が高い状態において励磁コイルに流れる電流値が設定値を超えた場合にはデューティ比のON時間を短くして応答性良く電動モータの回転速度を減じて吐出圧の上昇を抑制できる。
【0014】
本発明は、前記ポンプから送り出される流体圧が、予め設定された要求圧を越えた場合に、前記ポンプから送り出される流体の圧力を逃がすリリーフ弁を備えても良い。
【0015】
これによると、ポンプから送り出される流体圧が要求圧を越えた場合にリリーフ弁により流体の圧力を逃がすことにより、オイル圧の過剰な上昇を抑制して電動モータの負荷を軽減し、励磁コイルの発熱を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ポンプ制御ユニットのブロック回路である。
【図2】PWM信号のデューティ比の変化を示すチャートである。
【図3】要求油圧に対する作動油の流量とモータ電流と電源電流との変化を示すグラフである。
【図4】リリーフ弁を備えた構成において要求油圧に対する作動油の流量とモータ電流と電源電流との変化を示すグラフである。
【図5】デューティ比の変化時におけるモータ駆動電流と電源電流との変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように油圧制御ECU1と、ドライバ制御ユニット10(電力制御部の一例)と、ドライバ回路2と、電動モータMと、油圧ポンプPとを備えて車両に備えられるポンプ制御ユニットが構成されている。
【0018】
乗用車等の車両のエンジンにはバルブ開閉タイミング制御機構や、油圧アクチュエータ等の油圧作動装置3を備えており、本発明のポンプ制御ユニットでは、ドライバ制御ユニット10がパルス幅変調により電動モータMに供給する電力を制御して油圧ポンプPの駆動回転を制御するように構成されている。
【0019】
本発明のポンプ制御ユニットが備えられる車両として、アイドリングストップ制御が行われる車両を例に挙げることができる。具体的には、エンジンで駆動される主油圧ポンプ(図示せず)と、本発明の油圧ポンプPを並列的に備えた油路系を備え、この油路系からの作動油が供給される油圧作動装置3を備える。このような構成でアイドリングストップ制御が行われる際に、本発明のポンプ制御ユニットが電動モータMを制御して油圧ポンプPを駆動し、エンジンの停止時にも油圧作動装置3への作動油の供給を実現する。
【0020】
また、本発明のポンプ制御ユニットが備えられる車両として電動モータMが制御される油圧ポンプPを備えたハイブリッド型の車両を例に挙げることができる。この車両では、エンジンの停止時に油圧作動装置3に作動油を供給するだけではなく、ハイブリッドモータの冷却を行うために油圧ポンプPからの作動油の一部をオイルクーラで冷却した状態でハイブリッドモータに供給して冷却を実現する。
【0021】
図1に示すポンプ制御ユニットでは、油圧ポンプPから油圧作動装置3に作動油を供給する主油路4を備え、この主油路4には作動油の圧力上昇時に圧力を逃がすリリーフ弁5を備え、油圧作動装置3に供給されない作動油をエンジンのメインギャラリ(図示せず)に潤滑油として供給する油路系を備えている。主油路4には油圧ポンプPから送り出される作動油の油圧を検出する油圧センサSpを備え、この油圧センサSpの検出結果は油圧制御ECU1にフィードバックされる。
【0022】
電動モータMは複数の励磁コイル6と、励磁コイル6からの磁界の作用で駆動回転するロータ7とを有するセンサレスブラシレスDCモータとして構成され、この電動モータMはドライバ制御ユニット10で制御される。
【0023】
油圧制御ECU1は、エンジンの回転速度や車両の走行状況に応じて目標とする作動油圧を設定し、この作動油圧を得るための目標デューティ比情報を設定し、ドライバ制御ユニット10に出力する。ドライバ制御ユニット10は目標デューティ比情報に基づいてPWM信号を生成してドライバ回路2の複数の電力トランジスタやMOSFET等の電力制御素子を制御することで電動モータMの駆動を行う。
【0024】
このポンプ制御ユニットでは、ドライバ回路2に供給された電流を電圧信号に変換するシャント抵抗Rsを備えると共に、このシャント抵抗Rsからの電圧信号からデューティ比に対応した分圧比となる検出電圧信号を作り出すように3つの分圧抵抗R1、R2、R3と、コンデンサCとで構成される分圧比設定回路Aを備えている。
【0025】
ドライバ制御ユニット10は、分圧比設定回路Aからの検出電圧を取得することにより、このドライバ制御ユニット10からドライバ回路2に出力されるPWM信号のデューティ比を変更する制御を行う。このドライバ制御ユニット10の構成と作動形態とを以下に説明する。
【0026】
〔ドライバ制御ユニット〕
ドライバ制御ユニット10は、デューティ比設定部11と、パルス生成回路12と、PWM信号生成部13と、信号補正回路14(電力補正部の一例)と、コンパレータ15と、基準電圧生成回路16とを備えている。
【0027】
デューティ比設定部11は、油圧制御ECU1から出力される目標デューティ比情報をD/A変換処理により閾値としてPWM信号生成部13に与える。パルス生成回路12は設定周期の駆動パルス信号を生成してPWM信号生成部13に与える。
【0028】
PWM信号生成部13は、デューティ比設定部11からの閾値と、内部の発振回路(図示せず)で生成した鋸歯状信号とに基づいてPWM信号を生成するコンパレータ(図示せず)を有している。また、PWM信号生成部13は、パルス生成回路12からの駆動パルス信号に同期するキャリア周期でPWM信号をドライバ回路2の複数の電力制御素子に出力する出力回路(図示せず)を備えると共に、信号補正回路14からの補正信号に基づいて閾値を変化させてPWM信号のON時間を短縮する補正回路(図示せず)を有している。
【0029】
信号補正回路14は、コンパレータ15から出力信号が出力された場合に補正信号をPWM信号生成部13に与える。この補正信号が与えられることで、PWM信号生成部13では閾値を調節してPWM信号のON時間を短縮する。
【0030】
コンパレータ15は、一方の入力端子に基準電圧生成回路16からの基準電圧が印加され、他方の入力端子に分圧比設定回路Aからの検出電圧信号が印加される。分圧比設定回路Aは、シャント抵抗Rsからの電圧信号からデューティ比に対応した分圧比となる検出電圧信号を作り出す。これにより分圧比設定回路Aからの検出電圧信号が、基準電圧生成回路16で生成された基準電圧(設定値)を超えた場合に、コンパレータ15が出力端子から出力信号を出力する。
【0031】
(ドライバ制御ユニットの別実施形態)
ドライバ制御ユニット10を、クロック発生回路とカウンタとを備えて構成し、デューティ比設定部11を、PWM信号のON時間を示すクロック数を与えるように構成する。また、PWM信号生成部13を、ON時間に対応するクロック数がカウントされる時間だけON状態とし、OFF時間に対応するクロック数がカウントされる時間だけOFF状態とするPWM信号の波形を生成するよう構成する。この別実施形態では、クロック発生回路やカウンタ、ゲートやレジスタ等のロジックでPWM信号のデューティ比の変更が可能となる。
【0032】
また、電動モータMの始動時にPWM信号のデューティ比のON時間を、低い値から高い値に増大させるスタート制御回路を備えてドライバ制御ユニット10を構成する。このようにドライバ制御ユニット10にスタート制御回路を備えた場合には、油圧制御ECU1は電動モータMの起動と停止とを指示する信号だけを出力すれば良いため、油圧制御ECU1の構成の簡素化が実現する。
【0033】
(信号補正回路の別実施形態)
信号補正回路14を、PWM信号生成部13からドライバ回路2に出力する信号経路に介装したスイッチング素子で構成し、このスイッチング素子をコンパレータ15から出力信号でOFF操作するように構成する。このように構成したものでコンパレータ15から出力信号が出力されたタイミングで、PWM信号を遮断することでON時間を短縮する作動形態となる。
【0034】
また、ドライバ制御ユニットの別実施形態で説明したようにPWM信号生成部13を、クロック発生回路やカウンタとロジック等で構成した場合、信号補正回路14は、ON時間に対応するカウント値を変更する処理を行わせることで、デューティ比の変更が実現する。
【0035】
〔分圧比設定回路〕
分圧比設定回路Aは、図1に示す如く、シャント抵抗Rsの電圧信号が作用する位置から接地位置との間(シャント抵抗Rsの端子間)に分圧抵抗R1、R2、R3の3つの抵抗が、この順序で直列に接続し、最も接地側の分圧抵抗R3と並列してコンデンサCが接続した構成を有している。このような構成から、シャント抵抗Rsからの電圧信号に基づいてデューティ比に対応した分圧比となる検出電圧信号を作り出し、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2との中間位置から取り出せる。
【0036】
この分圧比設定回路Aでは、PWM信号のデューティ比が低い場合(ON時間が短い場合)には、コンデンサCが充放電を繰り返すため、シャント抵抗Rsからの電圧信号はコンデンサCに流れ、接地側の分圧抵抗R3に流れる電流値が低下しコンパレータ15の入力端子に印加する検出電圧信号の上昇は抑制される。すなわち、シャント抵抗Rsからの電圧信号は2つの分圧抵抗R1、R2で分圧されるのが支配的になる。
【0037】
これとは逆に、PWM信号のデューティ比が高い場合(ON時間が長い場合)には、コンデンサCが殆ど充電状態に維持されるため、シャント抵抗Rsからの電圧信号はコンデンサCに殆ど流れず、接地側の分圧抵抗R3に流れる電流値を上昇させ、この分圧抵抗R3で生ずる電圧も上昇させコンパレータ15の入力端子に印加する電圧を上昇させる。すなわち、シャント抵抗Rsからの電圧信号は3つの分圧抵抗R1、R2、R3で分圧されるのが支配的になる。
【0038】
(分圧比設定回路の別実施形態)
シャント抵抗Rsからの検出電圧信号をD/A変換によりデジタル信号化し、このデジタル信号化された検出電圧信号が変動した場合に、PWM信号生成部13で設定されたデューティ比が低いほど変動幅を小さくする処理装置を備えて分圧比設定回路Aを構成しても良い。このように構成することで分圧抵抗を備えずに済み、検出精度が分圧抵抗の精度に影響されることがない。
【0039】
また、この分圧比設定回路Aの別実施形態として、コンデンサCを備えず接地側の分圧抵抗(例えば、図1のR3)を可変抵抗器で構成し、この可変抵抗器を操作するサーボモータ等のアクチュエータを備え、デューティ比が低いほど可変抵抗器で成る分圧抵抗の抵抗値を低くするようにアクチュエータを制御する制御系を備えて構成しても良い。このように構成する場合に、デューティ比の変化量に対する分圧抵抗の変化量の関係を必要とする特性に設定するように、アクチュエータの作動形態を設定することも可能となる。
【0040】
また、分圧比設定回路Aの別実施形態として、コンデンサCを備えず接地側の分圧抵抗(例えば、図1のR3)をデジタルポテンショメータで構成し、デューティ比が低いほどデジタルポテンショメータで設定される抵抗値を低くする制御系を備えて構成しても良い。このように構成する場合に、前述と同様に、デューティ比の変化量に対する分圧抵抗の変化量の関係を必要とする特性に設定することも可能となる。
【0041】
〔ポンプ制御ユニットの作動形態〕
油圧ポンプPの始動時には、油圧制御ECU1が電動モータMの回転速度の上昇を図るため、PWM信号のデューティ比を低い値から高い値に上昇させる制御が行われる。また、PWM信号のデューティ比が低い状況において電動モータMに作用する負荷等により励磁コイル6に流れる電流が増大した場合には、シャント抵抗Rsからの検出電圧信号も上昇する。しかしながら、分圧比設定回路Aではデューティ比が低い場合に、低い分圧比となる検出電圧信号を作り出すため、分圧比設定回路Aからコンパレータ15の入力端子に印加する検出電圧信号の上昇は抑制され、コンパレータ15から出力信号が出力されることもない。これにより電動モータMの回転速度の上昇を図る際にはPWM信号生成部13でON時間が短縮されず、電動モータMで油圧ポンプPを強力に駆動しながら回転速度の上昇が円滑に行われる。
【0042】
また、定油圧制御を行う場合に油圧制御ECU1は、目標デューティ比を100%に設定する制御を行うことにより油圧ポンプPで目標とする油圧を得る。つまり、電動モータMを定常回転させる場合にはPWM信号としてデューティ比が100%の電流が供給される。これにより、分圧比設定回路AのコンデンサCは充電状態に維持され、励磁コイル6に流れる電流が増大してシャント抵抗Rsからの電圧信号が上昇した場合には、分圧比設定回路Aからコンパレータ15の入力端子に印加する検出電圧信号は敏感に上昇する。従って、例えば、図2に示すようにON時間がT1のPWM信号のON時間をT2に短縮する如く、PWM信号生成部13でON時間が短縮されることになり、電動モータMの駆動速度の上昇が抑制され油圧ポンプPから送り出される作動油の油圧が過剰に上昇する不都合が抑制される。
【0043】
〔要求油圧とモータ電流等の関係を示すグラフ〕
図3にはリリーフ弁5を備えない構成において要求油圧を横軸に取り、作動油の流量Q1、Q2と、モータ電流Cmと、電源電流Csとを縦軸に取ったグラフを示しており、このグラフに示されるように要求油圧の上昇に伴いモータ電流Cmと電源電流Csが右上がりに上昇する。このモータ電流Cmと電源電流Csとはデューティ比と対応するものであり、電源電流制限値CL(デューティ比が100%)に達した後には前述したようにデューティ比のON時間が短縮され電源電流Csは右下がりで減少し、モータ電流Cmは励磁コイル6の影響で増大する。このように要求油圧が上昇する際に要求油量Q2は確保され、また、作動油の流量Q1は要求油量の増大に伴い右下がりで減少し、電源電流Csが電源電流制限値CLに達した後には更に急勾配となる右下がりで減少する。
【0044】
図4にはリリーフ弁5を備えた構成において要求油圧を横軸に取り、作動油の流量Q1、Q2と、モータ電流Cmと、電源電流Csとを縦軸に取ったグラフを示している。リリーフ弁5は要求油圧(要求圧)の上限を少し超えた圧力で作動油の圧力を逃がすようにリリーフ圧が設定されている。このグラフに示されるように要求油圧の上昇に伴いモータ電流Cmと電源電流Csが右上がりに上昇する。このモータ電流Cmと電源電流Csとはデューティ比と対応するものであり、電源電流制限値CLに達した後には前述したようにデューティ比のON時間が短縮され電源電流Csは右下がりで減少し、モータ電流Cmは励磁コイル6の影響で増大する。このように要求油圧が上昇する際に要求油量Q2は確保され、また、作動油の流量Q1は要求油量の増大に伴い右下がりで減少し、リリーフ弁5がリリーフ圧に達した後には更に急勾配となる右下がりで減少する。
【0045】
図5にはデューティ比を横軸にとり、電流を縦軸に取ったグラフを示している。グラフに示されるように電源電流Csの上昇に伴い、モータ電流Cmは減少する。つまり、伝動モータの励磁コイル6には低速回転時に電流を蓄えるため、モータ電流Cmは大きい値を示しているが、電源電流Csの上昇に伴い減少し、デューティ比が100%に達した時点で電源電流Csとモータ電流Cmとは近似する値となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ポンプを駆動する電動モータの回転速度をPWM信号のデューティ比の設定により回転速度が制御する装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
5 リリーフ弁
6 励磁コイル
7 ロータ
10 電力制御部(ドライバ制御ユニット)
14 電力補正部(信号補正回路)
A 分圧比設定回路
M 電動モータ
P ポンプ(油圧ポンプ)
Rs シャント抵抗
R1 分圧抵抗
R2 分圧抵抗
R3 分圧抵抗
C コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを駆動する電動モータが、複数の励磁コイルに電力を供給することで磁界によりロータを駆動回転する駆動構成を備えると共に、
前記励磁コイルに供給する電流のデューティ比を設定する電力制御部と、
前記励磁コイルに流れる電流を電圧信号に変換するシャント抵抗と、
前記シャント抵抗からの電圧信号から前記デューティ比に対応した分圧比となる検出電圧信号を作り出す分圧比設定回路を備え、
前記電力制御部で設定される前記デューティ比を、前記検出電圧信号に基づいて変更する電力補正部を備えているポンプ制御ユニット。
【請求項2】
前記電力制御部が、設定されたデューティ比に従って電力制御素子をON状態に設定する信号を出力し、
前記電力補正部が、前記検出電圧信号が設定値を超えた際に前記電力制御素子のON時間を短縮する補正作動を行う請求項1記載のポンプ制御ユニット。
【請求項3】
前記分圧比設定回路が、前記シャント抵抗からの電圧信号を分圧する複数の分圧抵抗と、複数の前記分圧抵抗のうち接地側の分圧抵抗に並列に配置したコンデンサとで構成されている請求項1又は2記載のポンプ制御ユニット。
【請求項4】
前記ポンプから送り出される流体圧が、予め設定された要求圧を越えた場合に、前記ポンプから送り出される流体の圧力を逃がすリリーフ弁を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載のポンプ制御ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−113273(P2013−113273A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262501(P2011−262501)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】