説明

ポンプ及びそれを備えた熱交換器

【課題】薄型化が図られると共に可撓性に対する信頼性を確保することができるポンプ及びそれを備えた熱交換器を提供する。
【解決手段】コンテナの往路15aの内面に熱媒体の移送方向へ所定間隔をおいて配置された各金属基板34,37の表面にそれぞれ所定の電圧の印加の有無により熱媒体との親和力が変化する物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jを設けた。各金属基板34,37に対して直流電源からの電圧を順次供給することにより、当該金属基板34,37の表面に設けた物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの熱媒体との親和力の強弱が順次変化する。具体的には電圧の印加の有無により当該物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの疎水性と親水性とが切り替わる。熱媒体は親水性の物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jに追従することにより往路15a内の所定方向へ移送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン等の電子機器の放熱装置に使用されるポンプ及びそれを備えた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ノートパソコン等の電子機器では、中央演算処理装置(以下、「CPU」という。)等からの発熱が誤作動や製品寿命の低下につながるため、各種の放熱対策がなされている。近年では、電子機器の高性能化に伴ってCPUの情報処理能力のいっそうの向上が求められている。このため、CPUの集積度はますます高められ、CPUの動作による発熱量は増大の一途をたどっている。また、近年の電子機器の薄型化及び軽量化等の要求に伴い、電子機器の筐体内部の発熱密度も増大の傾向にありながら放熱装置については小型化が求められており、放熱対策はますます重要となっている。
【0003】
そうしたCPU等の発熱部の放熱対策の一つとして、例えばヒートパイプを使用してCPU等の発熱部の熱をノートパソコン等の電子機器の底面又はディスプレイ側に設けられた放熱板に移動させて放熱する構成が採用されている。ヒートパイプとは液体と気体との間の相変化に伴う潜熱とウィックの毛細管作用とを利用した閉ループの伝熱素子をいう。即ち、ヒートパイプは円筒の容器を備えており、当該容器にはウィック(多孔質材料)が内張りされている。また容器は真空状態とされて少量の液体状の熱媒体が封入されている。そしてヒートパイプの一端側を発熱部側(高温側)に、また他端側を放熱部側(低温側)に配置する。すると、ヒートパイプの一端側に伝達された発熱部の熱は液体状の熱媒体により吸収される。その結果、熱媒体は蒸発して蒸気となり潜熱を吸収する。そしてその蒸気はヒートパイプの他端側へ移動する。ヒートパイプの他端側においては、熱媒体の蒸気は凝縮して潜熱を放出して液体に戻り、その液体となった熱媒体はウイックの毛管作用によりヒートパイプの一端側に戻る。このように熱媒体は1本のパイプの中で絶えず循環し、低温度差であっても熱は一端から他端へ効率よく伝えられる。
【0004】
前述したように、近年の電子機器の更なる薄型化及び軽量化等に応えるためには、電子機器の筐体内のスペースをいっそう有効利用した放熱対策が必要であり、ヒートパイプに対しても薄型化、軽量化及び柔軟性が求められている。しかし、前記従来のヒートパイプにおいては、金属管製の容器を使用しているため、軽量化及び柔軟性の確保には限界があった。
【0005】
そこで、そのような問題を解決するために、例えば特許文献1に示されるようなシート状のヒートパイプが従来提案されている。このヒートパイプは2枚の金属箔が真空封止されることにより形成されたシート状のコンテナを備えており、当該コンテナ内には作動液が封入されている。また、当該コンテナの内部には複数のスペーサにより複数の蒸気流路が区画形成されており、各蒸気流路の上下両面にはそれぞれ作動液を還流させるためのウィックが形成されている。このように、コンテナがフィルム材料を用いてシート状に形成されているため、従来の金属管製のコンテナに比べて、ヒートパイプの薄型化及び軽量化が図られる。また、ヒートパイプの柔軟性も確保される。
【特許文献1】特開2001−165584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来のヒートパイプにおいては、熱媒体の潜熱を利用して熱を移送するようにしているので、薄い金属箔により形成されたコンテナの内部を真空にする必要があった。このため、大気圧によって押し潰されないように、コンテナ内には複数のスペーサを配置し、それらスペーサによってコンテナの形状を保持するようにしていた。
【0007】
しかしそうしたスペーサによってコンテナの形状を保持する場合であっても、金属箔を薄くしすぎた場合には真空に耐えきれないおそれがあった。即ち、スペーサを使用する場合であれ、コンテナ自身にもある程度の剛性が必要であり、コンテナを構成する金属箔の薄型化、ひいてはヒートパイプの薄型化には限界があった。また、十分な可撓性を確保するには至っていなかった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、薄型化が図られると共に可撓性に対する信頼性を確保することができるポンプ及びそれを備えた熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、内部に液体状の被移送媒体の流通路が形成されたコンテナを備えその流通路内の被移送媒体を所定方向へ移送するポンプにおいて、前記コンテナは可撓性を有するシート状に形成するようにし、前記流通路内における被移送媒体の移送方向へ所定間隔をおいて配置された複数個の電極と、前記各電極の流通路内に露出する側の表面にそれぞれ設けられ当該電極への電圧印加の有無により被移送媒体との親和力の強弱が可変とされた物質膜と、前記各電極に所定の電圧を個別に供給可能とされた電源と、前記電源からの電圧が各電極に対して順次供給されるように前記電源を制御する制御手段と、を備えたことをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポンプにおいて、前記電極は被移送媒体の流通路を構成する一対の相対する壁面にそれぞれ設けるようにしたことをその要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のポンプにおいて、前記被移送媒体は水又は所定の水溶液とし、前記物質膜は、前記電極への電圧印加の有無により前記流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わる高分子膜としたことをその要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のポンプにおいて、前記被移送媒体は水又は所定の水溶液とし、前記物質膜は、前記電極への電圧印加の有無により前記流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わる誘電体膜としたことをその要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のポンプにおいて、前記制御手段は、各電極のうち隣り合う複数個の電極に前記電源からの電圧が一括して供給されるように前記電源を制御するようにしたことをその要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のポンプにおいて、前記流通路は被移送媒体の往路及び復路を備えた環状に形成し、当該往路の内面に各電極をそれぞれ配置するようにしたことをその要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のポンプを利用した熱交換器であって、前記コンテナの外側面において前記復路に対応する部位に設けられ所定の発熱体との間及び当該コンテナ内の被移送媒体との間でそれぞれ熱交換を行う受熱部と、前記コンテナの外側面において前記往路に対応する部位に設けられ当該コンテナ内の被移送媒体との間で熱交換を行う放熱部と、を備えたことをその要旨とする。
【0016】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、コンテナの流通路の内面に被移送媒体の移送方向へ所定間隔をおいて配置された複数個の電極に対して電源からの電圧が順次供給されることにより、物質膜の被移送媒体との親和力の強弱が順次変化する。被移送媒体は親和力が確保された物質膜に追従し、これにより被移送媒体は流通路内の所定方向へ移送される。コンテナの内部を真空にする必要がないので、コンテナをシート状とすることができ、コンテナの薄型化及び可撓化が図られる。ひいてはポンプの薄型化が図られると共に可撓性に対する信頼性を確保することができる。
【0017】
また、請求項2に記載するように、前記電極を被移送媒体の流通路を構成する一対の相対する壁面にそれぞれ設けるようにすれば、それら電極の流通路内に露出する側の表面に設けられた前記物質膜が被移送媒体の流通路に面することとなる。このため、例えば流通路を構成する一対の相対する壁面のいずれか一方にのみ電極を設けるようにした場合に比べて被移送媒体の移送の信頼性が高められる。
【0018】
また、請求項3に記載するように、被移送媒体を水又は所定の水溶液とした場合、前記物質膜として、電極への電圧印加の有無により当該物質膜の流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わる高分子膜を採用することがきる。各電極への電圧印加の有無により高分子膜の流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わることにより水又は所定の水溶液は流通路内の所定方向へ移送される。
【0019】
同じく請求項4に記載するように、被移送媒体を水又は所定の水溶液とした場合、前記物質膜として、前記電極への電圧印加の有無により前記流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わる誘電体膜を採用することができる。各電極への電圧印加の有無により誘電体膜の流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わることにより水又は所定の水溶液が流通路内の所定方向へ移送される。
【0020】
また、請求項5に記載するように、各電極のうち隣り合う複数個の電極に前記電源からの電圧を一括して供給すれば、被移送媒体の移送効率が高められる。
また、請求項6に記載するように、被移送媒体の流通路は往路及び復路を備えた環状に形成し、当該往路の内面に各電極をそれぞれ配置すれば、それら電極の流通路内に露出する表面に設けられた物質膜の被移送媒体との親和力の強弱が切り替えられることにより、
往路内の被移送媒体は復路側へ移送されて再び往路内に戻る。即ち、被移送媒体は流通路を循環する。
【0021】
そしてそうした請求項6に記載のポンプを利用することにより例えば請求項7に記載するような熱交換器を構築することができる。この熱交換器においては、所定の発熱体と受熱部との間、及び受熱部とコンテナの復路内の被移送媒体との間でそれぞれ熱交換が行われる。そして復路内の被移送媒体は往路を通り、当該被移送媒体と放熱部との間で熱交換が行われる。放熱部の熱は外部に放散される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、薄型化が図られると共に可撓性に対する信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をノート型のコンピュータ等の電子機器に搭載されるヒートパイプに具体化した一実施形態を図1〜図5及び図6(a)〜図6(d)に基づいて説明する。
図1に示すように、ヒートパイプ11はシート状のコンテナ12を備えており、当該コンテナ12の一端側には受熱部13が、また同じく他端側には放熱部14が設けられている。コンテナ12の内部には少なくとも一組の往路15aと復路15bとで構成されるループ状の流通路15が形成されており、当該流通路15は大きく受熱部13に対応する受熱流通路16、放熱部14に対応する放熱流通路17及び受熱流通路16と放熱流通路17との間のポンプ部18に分けられている。
【0024】
図2に併せ示すように、コンテナ12は銅、アルミニウムあるいはステンレス等の金属箔又は当該金属箔とプラスチックシート(高分子基材)との複合材により可撓性を有するシート状且つ無端状のループ管として形成されている。コンテナ12(正確には、流通路13)には液体状の熱媒体(被移送媒体)が注入されている。熱媒体としては水、メタノール又はアンモニアの他、凍結防止剤等を含む所定の水溶液等が採用可能であり、本実施形態では水が使用されている。
【0025】
コンテナ12の上面の一端側である受熱部13に対応する部位には第1の開口部12aが形成されており、同じく他端側である放熱部14に対応する部位には第2の開口部12bが形成されている。そしてコンテナ12の上面には第1の開口部12aを覆うように受熱部材19が、また第2の開口部12bを覆うように放熱部材20が、それぞれ外方から重ね合わせられ、且つ液密状に固定されている。受熱部材19及び放熱部材20はそれぞれ例えばアルミニウム及び銅等の熱の良導体により板状に形成されており、それら受熱部材19及び放熱部材20の内面はそれぞれコンテナ12内の熱媒体に常に接触可能となっている。受熱部13には図2に二点鎖線で示す中央演算処理装置(以下、「CPU」という。)等の発熱体21が受熱部材19を介して熱伝達可能に固定される。放熱部14には図2に二点鎖線で示すファン又はヒートシンク等の冷却装置22が放熱部材20を介して熱伝達可能に固定される。
【0026】
ポンプ部18の往路15aの内面には、電圧印加の有無により熱媒体(本実施形態では水)との親和力の強弱が可変とされた物質膜25a〜25j及び同じく物質膜26a〜26jがそれぞれ互いに対向するように設けられている。具体的には、各物質膜25a〜25jは往路15aを構成する一対の相対する壁面のうち内側の面にコンテナ12の受熱部13から放熱部14の方向へ所定間隔置きに配置されている。また各物質膜26a〜26jは往路15aを構成する一対の相対する壁面のうち外側の面にコンテナ12の受熱部13から放熱部14の方向へ所定間隔置きに配置されている。各物質膜25a〜25jと各物質膜26a〜26jはそれらの配置方向に直交する方向において互いに対向している。物質膜としては、例えばアルカンチオラートの自己組織化単分子膜(Self−assembled Monolayer:SAM)からなる高分子膜を使用されている。このポンプ部18及びアルカンチオラートの自己組織化単分子膜についてはそれぞれ後に詳述する。
【0027】
<ポンプ部>
次に、流通路15のポンプ部18について詳細に説明する。
図3に示すように、往路15aを構成する互いに対向する内壁31及び外壁32はそれぞれ絶縁性を有する高分子基材により形成されている。
【0028】
内壁31においてポンプ部18に対応する部位には導電性を有する金属材料により形成された電極33が往路15aに沿う方向へ所定間隔毎に埋設されている。内壁31の表面には複数個の金属基板34が往路15aに沿う方向へ所定間隔毎に配置されており、各金属基板34はそれぞれ導電性を有する金属材料により形成された連結部材35により各電極33に連結されている。そして各金属基板34の表面には前述した物質膜25a〜25jがそれぞれ設けられている。
【0029】
外壁32においてポンプ部18に対応する部位には導電性を有する金属材料により形成された電極36が往路15aに沿う方向へ所定間隔毎に埋設されている。外壁32の表面には複数個の金属基板37が往路15aに沿う方向へ所定間隔毎に配置されており、各金属基板37はそれぞれ導電性を有する金属材料により形成された連結部材38により各電極36に連結されている。そして各金属基板37の表面には前述した物質膜26a〜26jがそれぞれ設けられている。本実施形態では各金属基板34,37は金(Au)により形成されている。
【0030】
<アルカンチオラートの自己組織化単分子膜>
次に、アルカンチオラートの自己組織化単分子膜について詳細に説明する。図4に示されるように、アルカンチオラートの自己組織化単分子膜は表面に所定形状の金属基板34,37を配置した高分子基材(図4には図示しない内壁31及び外壁32に相当する。)をアルカン(飽和炭化水素)・チオール分子(CH3(CH)nSH)のエタノール溶液中に浸すことにより自発的に構築される。具体的には、エタノール溶液中で、金の結晶表面にアルカンチオール(R−SH)を吸着させると、Au−S−Rという特有の結合が形成され、緻密で規則正しい単分子膜が得られる。
【0031】
図4(a)に示すように、アルカン・チオール分子は炭素分子の直線連鎖であり、アルカン・チオラート分子の自己組織化単分子膜である物質膜25a〜25jはそれぞれ金属基板34の表面から、また同じく物質膜26a〜26jはそれぞれ金属基板37の表面から多数の直線状の分子鎖39が突き出すことにより形成されている。分子鎖39は互いに等距離で直立している。分子鎖39のほとんどの部位は疎水性であるものの、一番上の部位(カルボキシル基〔CO2H〕は親水性であり、物質膜25a〜25j,26a〜26jの表面(頭部39a)は親水性を示す。
【0032】
そして、各金属基板34,37に電極33,36を介して電界を加えるとプラスに帯電した金属基板34,37の表面にマイナスに帯電したカルボキシル基の頭部39aが引きつけられる。その結果、図4(b)に示すように、分子鎖は金属基板34,37の方へ曲がる。そして図4(c)に示すように、分子鎖における親水性の頭部39aが隠れ、分子膜の疎水性の中間部39b(胴)が表面に露出し、自己組織化単分子膜である物質膜25a〜25j,26a〜26jの表面は疎水性を示す。このように、物質膜25a〜25j,26a〜26jの表面は親水性から疎水性に切替えられ、また電界を除去することにより容易に元に戻ることができる。従って、金属基板34,37に電界を加えるだけで、親水性と疎水性との間の切り換えが可能である。
【0033】
<電気的構成>
次に、前述のように構成されたヒートパイプ11の電気的構成を説明する。
図5に示すように、ヒートパイプ11は、電源回路41及び当該電源回路41を制御する制御部42を備えている。電源回路41はバッテリ等の直流電源43及び第1〜第10の常開接点44a〜44jを備えており、第1〜第10の常開接点44a〜44jは制御部42によりオンオフ制御される。直流電源43のプラス端子には第1〜第10の常開接点44a〜44jを介してそれぞれ金属基板34,37(正確には、電極33,36)に接続されており、当該直流電源43のマイナス端子は接地されている。第1〜第10の常開接点44a〜44jがオンすると、それら第1〜第10の常開接点44a〜44jに接続された金属基板34,37にそれぞれ直流電源43からの電圧が印加される。即ち、互いに対向するように配置された金属基板34と金属基板37と一組としたとき、各組の金属基板34,37には所定の電圧を同時に印加可能となっている。換言すると、互いに対向する物質膜25a〜25jと物質膜26a〜26jとを一組としたとき、各組の物質膜(例えば物質膜25aと物質膜26a、物質膜25bと物質膜26b…。)には同時に所定の電圧が印加可能となっている。
【0034】
制御部42は例えばプログラマブルコントローラ等からなり、ヒートパイプ11の作動時には予め記憶された常開接点制御プログラムに従って第1〜第10の常開接点44a〜44jをオンオフ制御する。例えば制御部42による第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御について、第1〜第4の制御パターンが設定されている。
【0035】
第1の制御パターンでは、制御部42は第1、第2、第5,第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jをそれぞれオフすると共に、第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d,44g,44hをオンする。第2の制御パターンでは、制御部42は第2、第3、第6、第7及び第10の常開接点44b,44c,44f,44g,44jをそれぞれオフすると共に、第1、第4、第5、第8及び第9の常開接点44a,44d,44e,44h,44iをそれぞれオンする。
【0036】
第3の制御パターンでは、制御部42は第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d、44g,44hをそれぞれオフすると共に、第1、第2、第5、第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jをそれぞれオンする。第4の制御パターンでは、制御部42は第1、第4、第5、第8及び第9の常開接点44a,44d,44e,44h,44iをそれぞれオフすると共に、第2、第3、第6、第7及び第10の常開接点44b,44c,44f,44g,44jをそれぞれオンする。尚、本実施形態において、ヒートパイプ11は本発明のポンプ及び熱交換器に相当する。また、電源回路41は本発明の電源に相当し、制御部42は本発明の制御手段に相当する。
【0037】
<用途例>
次に、前述のように構成されたヒートパイプ11の使用例を説明する。
ヒートパイプ11は、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器の放熱部材として使用される。例えば、ノート型パーソナルコンピュータの本体に内蔵されたCPUの裏面にシリコンゴム等の放熱ゴムを介して集熱板(受熱部)を設けると共に、ディスプレイ側に放熱板(放熱部)を設け、ヒートパイプ11は受熱部側に設けた集熱板と放熱部側に設けた放熱板とを接続する態様で使用する。前記放熱ゴムとしては例えばシリコンゴム等が使用される。また前記集熱板及び放熱板は例えばアルミニウム等の金属材料により形成されている。本実施形態のヒートパイプ11は、可撓性を有するシート状に形成されているので、ノート型パーソナルコンピュータの本体とディスプレイ側との間に設けられたヒンジ部等の屈曲性が要求される場所であっても配置可能となり、ノート型パーソナルコンピュータ等の電気機器の小型化が図られる。また、本実施形態のヒートパイプ11は、ノート型パーソナルコンピュータの本体の内部において、CPU等の発熱体と冷却装置22との間に段差がある場合においても両者を円滑に熱的に接続可能である。
【0038】
<実施形態の作用>
次に、前述のように構成したヒートパイプの動作を図4及び図6(a)〜図6(d)に従って説明する。
【0039】
ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器の作動によりヒートパイプ11は熱移送動作を開始する。即ち、CPU等の発熱体21とコンテナ12の受熱部13との間で図示しない放熱ゴム及び受熱部材19を介して熱交換が行われ、発熱体21から発生した熱は前記放熱ゴム及び受熱部材19を介してコンテナ12の受熱部13付近の熱媒体に伝わる。ここで、各金属基板34及び各金属基板37に順次電圧が印加されることにより各物質膜25a〜25jの表面及び各物質膜26a〜26jの表面の親水性と疎水性とが順次切り換えられ、それによりコンテナ12内の熱媒体はコンテナ12の往路15aを通って放熱部14側へ順次移送される。具体的には、ヒートパイプ11の制御部42は第1〜第4の制御パターンに基づいて第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御を順次繰り返す。以下、第1〜第4の制御パターンに基づく第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御が制御部42により実行されたときのヒートパイプ11の動作について詳細に説明する。
【0040】
<第1の制御パターン>
まず、制御部42は第1の制御パターンに基づいて第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御を行う。即ち、図4及び図6(a)に示すように、制御部42は第1、第2、第5,第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jをそれぞれオフすると共に、第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d,44g,44hをオンする。第1、第2、第5,第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jに接続された金属基板34,37に電圧が印加されることはない。このため、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25a,25b,25e,25f,25i,25j及び物質膜26a,26b,26e,26f,26i,26jの表面はそれぞれ親水性に保たれる。また、第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d,44g,44hに接続された金属基板34,37にはそれぞれ所定の電圧が印加され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25c,25d,25g,25h及び物質膜26c,26d,26g,26hの表面はそれぞれ親水性から疎水性に切り換えられる。その結果、熱媒体は親水性である物質膜25a,25b,25e,25f,25i,25j及び物質膜26a,26b,26e,26f,26i,26jの表面にそれぞれ引き寄せられる。
【0041】
<第2の制御パターン>
次に、制御部42は第2の制御パターンに基づいて第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御を行う。即ち、図4及び図6(b)に示すように、制御部42は第2、第3、第6、第7及び第10の常開接点44b,44c,44f,44g,44jをそれぞれオフすると共に、第1、第4、第5、第8及び第9の常開接点44a,44d,44e,44h,44iをそれぞれオンする。すると、第2、第3、第6、第7及び第10の常開接点44b,44c,44f,44g,44jに接続された金属基板34,37への電圧の印加が解除され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25b,25c,25f,25g,25j及び26b,26c,26f,26g,26jの表面はそれぞれ疎水性から親水性に戻る。また、第1、第4、第5、第8及び第9の常開接点44a,44d,44e,44h,44iに接続された金属基板34,37に所定の電圧が印加され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25a,25d,25e,25h,25i及び物質膜26a,26d,26e,26h,26iの表面はそれぞれ親水性から疎水性に切り換えられる。その結果、熱媒体は物質膜25b,25c,25f,25g,25j及び物質膜26b,26c,26f,26g,26jの表面にそれぞれ引き寄せられる。
【0042】
即ち、第1及び第2の常開接点44a,44bに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25a,25b及び物質膜26a,26bの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第2及び第3の常開接点44b,44cに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25b,25c及び物質膜26b,26cの表面へ移動する。また、第5及び第6の常開接点44e,44fに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25e,25f及び物質膜26e,26fの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第6及び第7の常開接点44f,44gに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25f,25g及び物質膜26f,26gの表面へ移動する。さらに、第9の常開接点44iに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25i及び物質膜26iの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第10の常開接点44jに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25j及び物質膜26jの表面に引き寄せられる。第10の常開接点44jに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25j及び物質膜26jの表面に引き寄せられていた熱媒体はコンテナ12の放熱部14側へ移動する。
【0043】
<第3の制御パターン>
次に、制御部42は第3の制御パターンに基づいて第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御を行う。即ち、図6(c)に示すように、制御部42は第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d、44g,44hをそれぞれオフすると共に、第1、第2、第5、第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jをそれぞれオンする。すると、第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d,44g,44hに接続された金属基板34,37への電圧の印加が解除され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25c,25d,25g,25h及び物質膜26c,26d,26g,26hの表面はそれぞれ疎水性から親水性に戻る。また、第1、第2、第5、第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jに接続された金属基板34,37に所定の電圧が印加される。このためそれら金属基板34,37に設けられた物質膜25a,25b,25e,25f,25i,25j及び物質膜26a,26b,26e,26f,26i,26jの表面はそれぞれ親水性から疎水性に切り換えられる。その結果、熱媒体は物質膜25c,25d,25g,25h及び物質膜26c,26d,26g,26hの表面にそれぞれ引き寄せられる。
【0044】
即ち、第2及び第3の常開接点44b,44cに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25b,25c及び物質膜26b,26cの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第3及び第4の常開接点44c,44dに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25c,25d及び物質膜26c,26dの表面へ移動する。また、第6及び第7の常開接点44f,44gに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25f,25g及び物質膜26f,26gの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第7及び第8の常開接点44g,44hに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25g,25h及び物質膜26g,26hの表面へ移動する。さらに、第10の常開接点44jに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25j及び物質膜26jの表面に引き寄せられていた熱媒体は、コンテナ12の放熱部14側へ移動する。その結果として、コンテナ12の往路15a内の熱媒体は放熱部14側へ移動する。
【0045】
<第4の制御パターン>
次に、制御部42は第4の制御パターンに基づいて第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御を行う。即ち、図6(d)に示すように、制御部42は第1、第4、第5、第8及び第9の常開接点44a,44d,44e,44h,44iをそれぞれオフすると共に、第2、第3、第6、第7及び第10の常開接点44b,44c,44f,44g,44jをそれぞれオンする。すると、第1、第4、第5、第8及び第9の常開接点44a,44d,44e,44h,44iに接続された金属基板34,37への電圧の印加が解除され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25a,25d,25e,25h,25i及び物質膜26a,26d,26e,26h,26iの表面はそれぞれ疎水性から親水性に戻る。また、第2、第3、第6、第7及び第10の常開接点44b,44c,44f,44g,44jに接続された金属基板34,37に所定の電圧が印加され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25b,25c,25f,25g,25j及び物質膜26b,26c,26f,26g,26jの表面はそれぞれ親水性から疎水性に切り換えられる。その結果、熱媒体は物質膜25a,25d,25e,25h,25i及び物質膜26a,26d,26e,26h,26iの表面にそれぞれ引き寄せられる。
【0046】
即ち、第3及び第4の常開接点44c,44dに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25c,25d及び物質膜26c,26dの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第4及び第5の常開接点44d,44eに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25d,25e及び物質膜26d,26eの表面へ移動する。また、第7及び第8の常開接点44g,44hに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25g,25h及び物質膜26g,26hの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第8及び第9の常開接点44h,44iに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25h,25i及び物質膜26h,26iの表面へ移動する。
【0047】
<第1の制御パターン>
そして、制御部42は再び第1の制御パターンに基づいて第1〜第10の常開接点44a〜44jのオンオフ制御を行う。即ち、制御部42は図6(a)に示されるように第1、第2、第5,第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jをそれぞれオフすると共に、第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d,44g,44hをオンする。すると、第1、第2、第5,第6、第9及び第10の常開接点44a,44b,44e,44f,44i,44jに接続された金属基板34,37への電圧の印加が解除される。このためそれら金属基板34,37に設けられた物質膜25a,25b,25e,25f,25i,25j及び物質膜26a,26b,26e,26f,26i,26jの表面はそれぞれ疎水性から親水性に戻る。また、第3、第4、第7及び第8の常開接点44c,44d,44g,44hに接続された金属基板34,37にはそれぞれ所定の電圧が印加され、それら金属基板34,37に設けられた物質膜25c,25d,25g,25h及び物質膜26c,26d,26g,26hの表面はそれぞれ親水性から疎水性に切り換えられる。その結果、熱媒体は親水性である物質膜25a,25b,25e,25f,25i,25j及び物質膜26a,26b,26e,26f,26i,26jの表面にそれぞれ引き寄せられる。
【0048】
即ち、第1の常開接点44aに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25a及び物質膜26aの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第2の常開接点44bに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25b及び物質膜26bの表面へ移動する。また、第4及び第5の常開接点44d,44eに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25d,25e及び物質膜26d,26eの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第5及び第6の常開接点44e,44fに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25e,25f及び物質膜26e,26fの表面へ移動する。さらに、第8及び第9の常開接点44h,44iに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25h,25i及び物質膜26h,26iの表面に引き寄せられていた熱媒体は、第9及び第10の常開接点44i,44jに接続された金属基板34,37に対応する物質膜25i,25j及び物質膜26i,26jの表面へ移動する。
【0049】
このような金属基板34,37に対する電圧制御、即ち第1〜第4の電圧制御パターンが順次繰り返されることによりポンプ作用が得られ、コンテナ12の往路15aにおいて受熱部13側から放熱部14側への流れが発生する。その結果、受熱部13の熱媒体は往路15a→放熱部14→復路15b→受熱部13の順に循環する。受熱部13から放熱部14へ移送されてきた熱媒体と放熱部材20との間で熱交換が行われ、当該放熱部材20の熱は冷却装置22により外部へ積極的に逃がされる。熱を奪われた熱媒体はコンテナ12の復路15bを通って受熱部13に戻る。以上の動作が繰り返されることにより、発熱体21からの熱が外部に放散される。
【0050】
<実施形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)コンテナ12の往路15aの内面に熱媒体の移送方向へ所定間隔をおいて配置された金属基板34,37の表面に電圧印加の有無により熱媒体との親和力の強弱が可変とされた物質膜25a〜25j及び同じく物質膜26a〜26jを設けた。そしてそれら金属基板34,37に対して直流電源43からの電圧を順次供給することにより、当該金属基板34,37の表面に設けられた物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの熱媒体との親和力の強弱を順次変化させるようにした。具体的には物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの疎水性と親水性とが切り替わる。熱媒体は親水性の物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの移動に追従し、これにより熱媒体は往路15a内の所定方向へ移送される。コンテナ12の内部を真空にする必要がないので、コンテナ12の薄型化及び可撓化が図られる。ひいてはヒートパイプの薄型化が図られると共に可撓性に対する信頼性を確保することができる。
【0051】
(2)流通路15を構成する一対の相対する壁面、正確には、往路15aを構成する互いに対向する内壁31及び外壁32の表面に金属基板34,37を設け、それら金属基板34,37の流通路15内に露出している表面に物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jをそれぞれ設けるようにした。このため、例えば内壁31及び外壁32の表面のうちいずれか一方にのみ金属基板34又は金属基板37を設けるようにした場合に比べて、流通路15内の熱媒体を効率よく移送することが可能となる。尚、流通路15内へ設置する金属基板34,37の個数及び寸法は物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの種類、被移送熱媒体量、被移送熱容量及び熱媒体の種類等により適宜変更可能である。
【0052】
(3)熱媒体を水又は所定の水溶液とした場合、物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jとして、高分子膜である例えばアルカンチオラート分子の自己組織化単分子膜を採用することがきる。このアルカンチオラート分子の自己組織化単分子膜は電圧印加の有無により親水性と疎水性とが切り替わる性質を有している。このため、物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jは、電極としての金属基板34,37への電圧印加の有無により当該物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの表面の親水性と疎水性とが切り替わる。そして、互いに対向し且つ組をなす物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jの親水性と疎水性とを同時に切り替えるようにしたことにより、熱媒体が往路15a内の所定方向へ効率的に移送することができる。
【0053】
(4)各金属基板34,37のうち隣り合う複数個の基板に直流電源43からの電圧を一括して供給するようにしたので、熱媒体の移送効率が高められる。
(5)各金属基板34,37のうち隣り合う複数個の金属基板34,37に直流電源43からの電圧を一括して供給したのち、一部の金属基板34,37への電圧の印加を順次切り替えるようにした。このため、熱媒体の所定方向への移送を安定して行うことができる。
【0054】
(6)熱媒体の流通路15は往路15a及び復路15bを備えた環状に形成し、当該往路15aの内面に各金属基板34及び各金属基板37を互いに対向するように配置し、それら金属基板34,37の表面にはそれぞれ物質膜25a〜25j及び物質膜26a〜26jを配置するようにした。このため、往路15a内の熱媒体は復路15b側へ移送されて再び往路15a内に戻る。即ち、流通路15内において熱媒体を循環させることができる。
【0055】
(7)ポンプ部23の薄型化が図られるので、ヒートパイプ11全体の薄型化も図られる。
(8)液体と気体との間の相変化に伴う潜熱とウィックの毛管作用とを利用した従来のヒートパイプと異なり、ウィックが不要となる。このため、ヒートパイプ11の構成の簡素化が図られる。
【0056】
<別の実施形態>
尚、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・本実施形態において、コンテナ12の形成材料として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリプロピレン(PP)等の合成樹脂材料、前記金属箔と前記合成樹脂材料との複合フィルム、並びに前記金属箔とゴムとの複合フィルムを採用するようにしてもよい。このようにしても、可撓性を有するコンテナ12を得ることができる。
【0057】
・本実施形態において、熱媒体として水以外にも各種水溶液が利用できる。
・本実施形態において、各金属基板34,37に対する電圧の印加の順序は適宜変更するようにしてもよい。例えば、流通路を構成する往路15a内において相対する一対の物質膜(25a〜25j及び物質膜26a〜26j)の表面の親水性と疎水性の切り替えを同時に行ってもよいし、タイミングをずらしておこなっても良い。
【0058】
・本実施形態において、アルカンチオラートの自己組織化単分子膜である物質膜25a〜25jをフッ素樹脂等の疎水性膜又は親水性膜に置き換えるようにしてもよい。そしてそれら疎水性膜又は親水性膜に所定の電圧を印加することにより水等の熱媒体に対する親和力を変化させて当該熱媒体を移送する。
【0059】
・本実施形態において、電圧印加の有無により熱媒体との親和力の強弱が可変とされた物質膜25a〜25j及び同じく物質膜26a〜26jとして、例えばアルカンチオラートの自己組織化単分子膜からなる高分子膜を使用したが、適切な誘電率を有する物質からなる誘電体膜を使用するようにしてもよい。この誘電体膜としては例えば銀基板、あるいは銀めっきを施した基板上にポリジメチルシロキサン樹脂膜を形成したものが採用可能である。このようにしても、当該物質膜への電圧印加の有無により水等の熱媒体との親和力の強弱が変化し、当該熱媒体を所定方向へ移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態のヒートパイプの概略構成図。
【図2】本実施形態のヒートパイプの正断面図。
【図3】本実施形態のヒートパイプのポンプ部の正断面図。
【図4】(a)〜(c)はアルカンチオラートの自己組織化単分子膜の分子鎖の状態を示す斜視図。
【図5】本実施形態のヒートパイプの電気的構成を示すブロック図。
【図6】(a)〜(d)は本実施形態のヒートパイプにおける熱媒体の移送状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0061】
11…ヒートパイプ(ポンプ、熱交換器)、12…コンテナ、13…受熱部、
14…放熱部、15…流通路、15a…往路、15b…復路、19…受熱部材、
20…放熱部材、21…発熱体、
25a〜25j,26a〜26j…物質膜(高分子膜)、31…往路を構成する内壁、32…往路を構成する外壁、33,36…電極、34,37…金属基板、
41…電源回路(電源)、42…制御部(制御手段)、43…直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体状の被移送媒体の流通路が形成されたコンテナを備えその流通路内の被移送媒体を所定方向へ移送するポンプにおいて、
前記コンテナは可撓性を有するシート状に形成するようにし、
前記流通路内における被移送媒体の移送方向へ所定間隔をおいて配置された複数個の電極と、
前記各電極の流通路内に露出する側の表面にそれぞれ設けられ当該電極への電圧印加の有無により被移送媒体との親和力の強弱が可変とされた物質膜と、
前記各電極に所定の電圧を個別に供給可能とされた電源と、
前記電源からの電圧が各電極に対して順次供給されるように前記電源を制御する制御手段と、を備えたポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプにおいて、
前記電極は被移送媒体の流通路を構成する一対の相対する壁面にそれぞれ設けるようにしたポンプ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポンプにおいて、
前記被移送媒体は水又は所定の水溶液とし、
前記物質膜は、前記電極への電圧印加の有無により前記流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わる高分子膜としたポンプ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のポンプにおいて、
前記被移送媒体は水又は所定の水溶液とし、
前記物質膜は、前記電極への電圧印加の有無により前記流通路内に露出する表面の親水性と疎水性とが切り替わる誘電体膜としたポンプ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のポンプにおいて、
前記制御手段は、各電極のうち隣り合う複数個の電極に前記電源からの電圧が一括して供給されるように前記電源を制御するようにしたポンプ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のポンプにおいて、
前記流通路は被移送媒体の往路及び復路を備えた環状に形成し、当該往路の内面に各電極をそれぞれ配置するようにしたポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のポンプを利用した熱交換器であって、
前記コンテナの外側面において前記復路に対応する部位に設けられ所定の発熱体との間及び当該コンテナ内の被移送媒体との間でそれぞれ熱交換を行う受熱部と、
前記コンテナの外側面において前記往路に対応する部位に設けられ当該コンテナ内の被移送媒体との間で熱交換を行う放熱部と、を備えた熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−16689(P2007−16689A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198988(P2005−198988)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】