説明

ポンプ設備

【課題】小水量管理運転を用いた際の管理運転水量を通常排水量に近づけることで、より信頼性の高い管理運転が可能となるポンプ設備を提供すること。
【解決手段】吸込水槽(10)内の液体を揚水する複数台のポンプ(30−5,30−5)と、各ポンプの吐出側に設けた吐出弁(47−5,47−5)とを有するポンプ設備(1−5)において、複数台のポンプ(30−5,30−5)の吐出弁(47−5,47−5)の上流側同士をバイパス管(51−5)で連通するとともにバイパス管にバイパス弁(59−5)を設け、管理運転時にはバイパス管で連通した各ポンプの吐出弁を閉とし、バイパス弁を開とすることで何れかのポンプで揚水した液体をバイパス管を通して別のポンプから吸込水槽内に戻す。これにより通常運転に近い水量での管理運転が可能になり、信頼性の高い管理運転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として治水排水に用いられるポンプ設備に関し、特にポンプ設備における管理運転の信頼性を向上することができるポンプ設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、揚排水用のポンプ設備においては、緊急に排水が必要とされた際に確実に運転ができることを確認するなどの目的で、定期的に管理運転が行われる。すなわち管理運転は、システム全体の故障発見、機能維持や運転操作員の習熟度を高めるために、定期的に実施されることが基本となっている。
【0003】
設備の信頼性を確保する上では、管理運転は通常の排水状態(定格排水量・負荷)に近い状態での運転、特に全水量管理運転が好ましい。しかしながら経済上の問題(バイパス水路の構築など)、または常用時に流入水が少ない、または機場が狭く確保できる敷地スペースがないなどの機場特性・仕様により、現実にはバイパス管路循環運転による小水量管理運転、または吐出弁を全閉状態とした締切運転(無送水運転)による無水管理運転が近年多く用いられている。しかしながらこれら小水量管理運転や無水管理運転には以下で説明するような問題があり、満足な管理運転が行えているとはいえない状態であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「ポンプ場」 農林水産省農村振興局整備部設計課監修 管理運転手法・構造についての基準書(第18章 管理設備の設計802頁,803頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)小水量管理運転
小水量運転となり、実際の排水運転と違う状態(負荷)での運転になるため、管理運転で満足な機器状態の確認ができない。
ポンプによっては(ハイドロによっては)、ストール域と呼ばれる性能不安定領域での運転となり、大きな振動を伴った運転となり、最悪の場合、故障させてしまう恐れがある。
【0006】
(2)締切運転による無水管理運転
無水運転であり、実際の排水運転と違う状態(負荷)での運転になるため、管理運転で満足な機器状態の確認ができない。
締切運転であり、大きな振動を伴った運転となる。最悪の場合、故障させてしまう恐れがある。またポンプ内の水の温度が上昇するため、運転時間に制限を設ける場合がある(蒸気を形成し、機器に損傷を与えないよう、通常は数分間程度で止める必要がある。)。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、小水量管理運転を用いた際の管理運転水量を通常排水量に近づけることで、より信頼性の高い管理運転が可能となるポンプ設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、吸込水槽内の液体を揚水する複数台のポンプと、各ポンプの吐出側に設けた吐出弁とを有するポンプ設備において、複数台のポンプの吐出弁の上流側同士をバイパス管で連通するとともにバイパス管にバイパス弁を設け、管理運転時にはバイパス管で連通した各ポンプの吐出弁を閉とし、前記バイパス弁を開とすることで何れかのポンプで揚水した液体をバイパス管を通して別のポンプから吸込水槽内に戻すことを特徴とするポンプ設備にある。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、バイパス管を通す開口を土木構造体やポンプベースに設ける必要がなく、より簡素な設備にできるとともに、何れかのポンプで揚水した液体を別のポンプのポンプ本体を介して吸込水槽に戻すため、管理運転時の管路損失を低減でき、より通常運転に近い水量での管理運転が可能となり、信頼性の高い管理運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ポンプ設備1−1の概略構成図である。
【図2】ポンプ30のQ−Hカーブと、通常運転時および各種管理運転時の管路損失曲線L1,L2,L3,L4とを示す図である。
【図3】ポンプ設備1−2の要部概略平面図である。
【図4】ポンプ設備1−3の概略構成図である。
【図5】ポンプ30−3のQ−Hカーブと、通常運転時および各種管理運転時の管路損失曲線L1,L2,L5とを示す図である。
【図6】ポンプ設備1−4の概略構成図である。
【図7】ポンプ設備1−5の概略構成図である。
【図8】ポンプ設備1−5の要部概略平面図である。
【図9】ポンプ30−5のQ−Hカーブと、通常運転時および管理運転時の管路損失曲線L1,L2,L6とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態にかかるポンプ設備1−1の概略構成図である。同図に示すようにポンプ設備1−1は、吸込水槽10の上部に設置した土木構造体(以下「ポンプ室の床」という)20に設けた開口21内にポンプ30を挿入・設置して構成されている。ポンプ30は、吊り下げ管31の下側にポンプボウル33と吸込ベルマウス35を取り付け、吊り下げ管31の上側に吐出ケーシング(吐出エルボ)37を取り付け、吐出ケーシング37の上部に設置した駆動機41から垂下した駆動軸43を吐出ケーシング37内に導入し、駆動軸43の先端に取り付けたインペラ45をポンプボウル33と吸込ベルマウス35の内部に配置して構成されている。
【0012】
そしてポンプ30は、その外周(具体的には吊り下げ管31と吐出ケーシング37の間)に取り付けているポンプベース49を、床20の開口21に取り付けることで据え付けられる。また吐出ケーシング37の吐出側には吐出管39が接続され、吐出管39の途中にはこれを開閉する吐出弁47が取り付けられている。
【0013】
そしてこのポンプ設備1−1においては、吐出弁47の上流側(一次側)、具体的には吐出管39に、バイパス管51を接続している。バイパス管51は分岐管であって前述のようにその一端が吐出管39に接続され、途中の分岐部分a1で第1の分岐部51Aと第2の分岐部51Bの2つに分岐し、第1の分岐部51Aはポンプベース49を貫通して吸込水槽10内に挿入され、第2の分岐部51Bは床20を貫通して吸込水槽10内に挿入されている。つまりバイパス管51の吐出口となる第1の分岐部51Aと第2の分岐部51Bの先端は、吸込水槽10の2ヶ所に開口している。またバイパス管51の吐出管39に接続されている部分と分岐部a1との間にはこのバイパス管51を開閉する切替弁53が取り付けられている。
【0014】
ポンプ設備1−1の通常運転は、吐出弁47を開き、切替弁53を閉じた状態で、駆動機41を駆動し、これによってインペラ45を回転駆動して吸込ベルマウス35から吸込水槽10内の液体を吸い込み、吐出管39から排水していくことによって行われる。
【0015】
一方ポンプ設備1−1の管理運転は、吐出弁47を閉じ、切替弁53を開いた状態で、駆動機41を駆動し、これによって吸込ベルマウス35から吸い込まれた吸込水槽10内の液体をバイパス管51に送り込み、第1,第2の分岐部51A,51B先端の2つの吐出口から吸込水槽10内に排水することによって行われる。
【0016】
このポンプ設備1−1の場合、バイパス管51を分岐管としてその吐出口を吸込水槽10の複数個所(2か所)としたので、その分管理運転時の水量を大きくすることができ、すなわち管理運転時の水量を通常の排水量・負荷に近づけることが可能になり、ポンプ30の状態確認の信頼性を向上することができる。
【0017】
図2はポンプ30のQ−Hカーブと、通常運転時および各種管理運転時の管路損失曲線とを示す図である。同図に示すように、バイパス管が分岐しない1本のみの場合(従来の場合)は、管理運転時の水量が通常排水時の水量よりもかなり少ない小水量運転となるため、管理運転時の管路損失曲線L2と通常運転時の管路損失曲線L1との間に大きな相違が生じ、実際の排水運転とかなり違う状態(負荷)での運転になり、満足な機器状態の確認ができない。これに対してこのポンプ設備1−1においては、バイパス管51を2本に分岐しているので、排水する水量を約2倍に増加することができ、管理運転時の管路損失曲線L3と通常運転時の管路損失曲線L1との間の相違を小さくでき、実際の排水運転に近い状態(負荷)での運転になり、満足な機器状態の確認ができる。
【0018】
なお上記ポンプ設備1−1においてはバイパス管51を2本に分岐したが、3本以上の複数本に分岐してもよい。たとえば3本に分岐させた場合はさらに管理運転時の排水量が増加するので、図2に示すように、管理運転時の管路損失曲線L4と通常運転時の管路損失曲線L1との間の相違をさらに小さくでき、さらに実際の排水運転に近い状態(負荷)での運転に近づけることができる。
【0019】
ところで上記ポンプ設備1−1において、第1,第2の分岐部51A,51Bの内の第1の分岐部51Aはポンプベース49を貫通して吸込水槽10内に挿入されている。したがって第1の分岐部51Aの設置の際は床20に開口を設けることが不要であり、したがって床20内の土木強度筋を損傷する恐れがなく、容易に施工または既設設備の改造が可能であり、信頼性の向上が図れる。従来、バイパス管を用いた小容量管理運転を行っていた既設のポンプ機場であって、バイパス管がすでに床20を貫通して設けられている場合は、新たな開口を床20に設けなくてもよく、特に好適である。
【0020】
なお第1の分岐部51Aだけでなく、第2の分岐部51Bについてもポンプベース49を貫通して吸込水槽10内に挿入させるようにすれば、分岐管設置のための開口を床20に設ける必要が全くなくなる。このように第1,第2の分岐部51A,51B全てをポンプベース49に貫通させた場合は、従来締切運転による管理運転を行っていた既設のポンプ機場(すなわち床20にバイパス管用の開口が全くないポンプ機場)でも、その床に新たな開口を設ける必要が全くないので、容易に改造が可能になる。
【0021】
上記ポンプ設備1−1においては、バイパス管51を吐出管39の途中に取り付けたが、バイパス管51は吐出ケーシング37や吊り下げ管31などのポンプ本体に取り付けてもよい。
【0022】
〔第2実施形態〕
図3は本発明の第2実施形態にかかるポンプ設備1−2の要部概略平面図である。図3はポンプ設備1−2を図1に示すA−A方向から見たときのポンプ30−2に対するバイパス管51−2,51−2の設置状態を示している。同図に示すポンプ設備1−2において、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(ただしそれぞれに「−2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同じである。
【0023】
このポンプ設備1−2において、前記ポンプ設備1−1と相違する点は、バイパス管51−2を分岐管とせず、その代りに、吐出弁47−2の上流側にそれぞれ切替弁53−2,53−2を有する管理運転用のバイパス管51−2,51−2を2本接続し、且つこれらバイパス管53−2,53−2をポンプベース49−2に貫通させて吸込水槽内に挿入した点である。つまり両バイパス管51−2,51−2先端の吐出口は、吸込水槽10のポンプベース49−2下側の2ヶ所に開口している。
【0024】
そしてポンプ設備1−2の通常運転は、前記ポンプ設備1−1の場合と同様に、吐出弁47−2を開き、両切替弁53−2,53−2を閉じた状態で行われる。
【0025】
一方ポンプ設備1−2の管理運転は、吐出弁47−2を閉じ、両切替弁53−2,53−2を開いた状態で、ポンプ30−2を運転し、ポンプ30−2に吸い込んだ吸込水槽内の液体を両バイパス管51−2,51−2に送り込み、先端の2つの吐出口から吸込水槽内に排水することで行われる。このポンプ設備1−2の場合、バイパス管51−2を2本としてその吐出口を吸込水槽の複数個所(2か所)としたので、その分管理運転時の水量を大きく(約2倍)することができ、すなわち通常の排水量・負荷に近づけることが可能になり、前記ポンプ設備1−1の場合と同様、ポンプ30−2の状態確認の信頼性を向上することができる。なおこのポンプ設備1−2の場合も、前記図2に示すと同様の効果となる。
【0026】
上記ポンプ設備1−2においては、両バイパス管51−2,51−2の先端をポンプベース49−2に貫通して吸込水槽内に挿入したので、床20−2に開口を設けることが全く不要になり、床20−2内の土木強度筋を損傷する恐れがなく、容易に施工または既設設備の改造が可能になり、信頼性の向上が図れる。なお場合によっては、バイパス管51−1,51−2の両者またはいずれか一方を床20−2に貫通して吸込水槽内に挿入してもよい。またバイパス管51−2の本数を3本以上の複数本にしてもよい。
【0027】
〔第3実施形態〕
図4は本発明の第3実施形態にかかるポンプ設備1−3の概略構成図である。同図に示すポンプ設備1−3において、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(ただしそれぞれに「−3」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同じである。
【0028】
このポンプ設備1−3において、前記ポンプ設備1−1と相違する点は、切替弁53−3を取り付けたバイパス管51−3を分岐管とせずに1本の管とし、このバイパス管51−3を吸込水槽10−3内に挿入し、さらにバイパス管51−3の吐出口を吸込水槽10−3内の管理運転時の水位レベルWLより低い位置に開口させた点である。
【0029】
そしてポンプ設備1−3の通常運転は、前記ポンプ設備1−1の場合と同様に、吐出弁47−3を開き、切替弁53−3を閉じた状態で行われる。
【0030】
一方ポンプ設備1−3の管理運転は、吐出弁47−3を閉じ、切替弁53−3を開いた状態で、ポンプ30−3を運転し、ポンプ30−3に吸い込んだ吸込水槽10−3内の液体をバイパス管51−3に送り込み、先端の吐出口から吸込水槽10−3の水面下に直接排出することで行われる。
【0031】
このポンプ設備1−3の場合、前述のように、バイパス管51−3の吐出口の開口位置が水面下になるので、流体のサイホン特性を利用でき、管理運転時における実揚程を0mとすることができる。従って、管理運転時の水量を通常運転時の排水量に近づけることができ、より信頼性の高い管理運転が可能になる。
【0032】
図5はポンプ30−3のQ−Hカーブと、通常運転時および各種管理運転時の管路損失曲線L1,L2,L5とを示す図である。同図からも明らかなように、バイパス管が分岐しない1本のみの場合でかつバイパス管の吐出口を吸込水槽水位レベルWLより高い位置に開口させた従来例の場合に比べ、このポンプ設備1−3の場合は、バイパス管51−3が1本であってもその吐出口を吸込水槽水位レベルWLより低い位置に開口させているので、管理運転時の水量を通常運転時の排水量により近づけることができる。
【0033】
またこのポンプ設備1−3においても、バイパス管51−3がポンプベース49−3を貫通して吸込水槽10−3内に挿入されているので、床20−3に開口を設けることが全く不要になり、床20−3内の土木強度筋を損傷する恐れがなく、容易に施工または既設設備の改造が可能になり、設備の信頼性の向上が図れる。なおバイパス管51−3の本数を2本以上の複数本とすれば、管理運転時の水量をさらに通常運転時の排水量に近づけることができ、より信頼性の高い管理運転が可能になる。その場合も、すべてのバイパス管51−3をポンプベース49−3に貫通させるのが好ましい(もちろん床20−3を貫通させてもよい)。
【0034】
上記ポンプ設備1−3においては、バイパス管51−3を吐出管39−3の途中に取り付けたが、バイパス管51−3は吐出ケーシング37−3や吊り下げ管31−3などのポンプ本体に取り付けてもよい。
【0035】
〔第4実施形態〕
図6は本発明の第4実施形態にかかるポンプ設備1−4の概略構成図である。同図に示すポンプ設備1−4において、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(ただしそれぞれに「−4」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同じである。
【0036】
このポンプ設備1−4において、前記ポンプ設備1−1と相違する点は、吐出側にそれぞれ吐出弁47−4を有するポンプ30−4,30−4を2台設置し、各吐出弁47−4の上流側に切替弁53−4を有するバイパス管51−4を接続するとともにバイパス管51−4の吐出口をそれぞれ吸込水槽10−4内に挿入して開口し、さらに2台のポンプ30−4,30−4のバイパス管51−4同士を切替弁57−4を有する連通管55−4によって連通している点である。なおこのポンプ設備1−4においても、各バイパス管51−4はポンプベース49−4に貫通させて吸込水槽10−4内に挿入されている。
【0037】
そしてポンプ設備1−4の通常運転は、各々のポンプ30−4,30−4において、前記ポンプ設備1−1の場合と同様に、吐出弁47−4を開き、切替弁53−4,57−4を閉じた状態で行われる。必要に応じて両ポンプ30−4,30−4が駆動されたり、片側のポンプ30−4が駆動されたりする。
【0038】
一方ポンプ設備1−4の管理運転は、左右のポンプ30−4,30−4について別々に行う。例えば図6に示す左側のポンプ30−4の管理運転を行う場合は、まず両ポンプ30−4,30−4の吐出弁47−4,47−4を閉じ、両ポンプ30−4の切替弁53−4,53−4と連通管55−4の切替弁57−4とを開く。この状態で左側のポンプ30−4を運転し、このポンプ30−4に吸い込んだ吸込水槽10−4内の液体をバイパス管51−4に送り込み、その先端の吐出口から吸込水槽10−4に排出すると同時に、連通管55−4に分岐した液体を右側のポンプ30−4のバイパス管51−4に導入し、その先端の吐出口から吸込水槽10−4に排出する。このとき同時に右側のポンプ30−4のポンプ本体を通してその吸込ベルマウス35−5からも排水される。図6に示す右側のポンプ30−4の管理運転を行う場合も上記と同様の弁の開閉状態で、右側のポンプ30−4を駆動すればよい。
【0039】
つまりこのポンプ設備1−4によれば、あたかも前記ポンプ設備1−1に示したような分岐管路を設けた構成と同等の構成になり、かつ隣接のポンプ本体を介して液体を吸込水槽10−4に戻すことが可能となり、ポンプ設備1−1で説明したのと同様以上の通常運転水量に近い管理運転を行うことができ、より信頼性の高い管理運転設備を構築することが可能となる。
【0040】
このポンプ設備1−4の両ポンプ30−4,30−4が、元々従来のバイパス管51−4を有する構成であった場合、両バイパス管51−4,51−4を切替弁57−4を有する連通管55−4で連通するだけでこのポンプ設備1−4を構成することができる。つまり土木躯体(床20−4)にも、ポンプベース49−4にも新たに開口を設ける必要がなく、容易に既設設備を改造できる経済性の良い設備となる。
【0041】
また例えば、管理運転時において吸込水槽10−4の水位が低い状態で運転する場合、バイパス管51−4の吐出液が吸込水槽10−4の水面を叩き、このバイパス管51−4を取り付けたポンプ30−4が気泡を巻き込んで吸い込み、このポンプ30−4に悪影響を及ぼす可能性がある。このような場合は、例えば図6の左側のポンプ30−4の管理運転時においては、両ポンプ30−4,30−4の吐出弁47−4,47−4を閉じ、連通管55−4の切替弁57−4と右側のポンプ30−4の切替弁53−4とを開き、左側のポンプ30−4の切替弁53−4を閉じる。この状態で、左側のポンプ30−4を運転すれば、このポンプ30−4に吸い込んだ吸込水槽10−4内の液体はこのポンプ30−4に取り付けられたバイパス管51−4に送り込まれるが、その吐出口からは吐出せず、すべて連通管55−4に導入され、右側のポンプ30−4のバイパス管51−4の吐出口と、右側のポンプ30−4のポンプ本体の吸込ベルマウス35とから排出される。これによって管理運転中のポンプ30−4への気泡の巻き込みが防止できると同時に、複数の流路を通して液体を吸込水槽10−4内に戻せるので、管理運転時の水量を通常運転時の排水量に近づけることができ、信頼性の高い管理運転も行える。
【0042】
このポンプ設備1−4においては2台のポンプ30−4,30−4を設置した例を示したが、3台以上のポンプを設置した場合にも同様に適用できる。つまりこのポンプ設備1−4においては、連通管55−4によって2台以上のポンプ30−4のバイパス管51−4を共用できるので、あたかも各ポンプ30−4に対して複数のバイパス管51−4を設けた構成となり、切替弁53−4,57−4と吐出弁47−4の開閉による管理運転を行うことによって通常運転水量に近い管理運転を行うことができ、信頼性の高い管理運転設備を構築することが可能となる。
【0043】
また上記ポンプ設備1−4においては、図6に示すように連通管55−4をバイパス管51−4の切替弁53−4の上流側に接続したが、切替弁53−4をポンプ吐出管39−4とバイパス管51−4が分岐する間に設け、連通管55−4及び切替弁57−4を切替弁53−4の下流側に接続してもよい。また上記ポンプ設備1−4においては、バイパス管51−4の吐出口の開放端を吸込水槽10−4の水面の上方(大気中)としているが、前記ポンプ設備1−3に示すように、この吐出口を吸込水槽10−4の管理運転時の吸込水槽水位レベルWLよりも低い位置に配設してもよい。また上記ポンプ設備1−4においても、バイパス管51−4を吐出管39−4の途中に取り付けたが、バイパス管51−4は吐出ケーシング37−4や吊り下げ管31−4などのポンプ本体に取り付けてもよい。
【0044】
〔第5実施形態〕
図7は本発明の第5実施形態にかかるポンプ設備1−5の概略構成図、図8はポンプ設備1−5を図7に示すB−B方向から見たときのポンプ30−5に対するバイパス管51−5の設置状態を示す要部概略平面図である。同図に示すポンプ設備1−5において、前記図1,図2示すポンプ設備1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(ただしそれぞれに「−5」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1,図2に示すポンプ設備1−1と同じである。
【0045】
このポンプ設備1−5において、前記ポンプ設備1−1と相違する点は、吐出側にそれぞれ吐出弁47−5を有するポンプ30−5,30−5を2台設置し、各吐出弁47−5の上流側同士を直接バイパス管51−5で連通するとともにバイパス管51−5にバイパス弁59−5を設けた点である。
【0046】
そしてポンプ設備1−5の通常運転は、各々のポンプ30−5,30−5において、吐出弁47−5を開き、バイパス弁59−5を閉じた状態で行われる。必要に応じて両ポンプ30−5,30−5が駆動されたり、片側のポンプ30−5が駆動されたりする。
【0047】
一方ポンプ設備1−5の管理運転は、左右のポンプ30−5,30−5について別々に行う。例えば図8に示す上側のポンプ30−5の管理運転は、両ポンプ30−5,30−5を停止した状態で、まず両ポンプ30−5,30−5の吐出弁47−5,47−5を閉じ、バイパス弁59−5を開き、この状態で上側のポンプ30−5を運転し、このポンプ30−5に吸い込んだ吸込水槽10−5内の液体をバイパス管51−5を通して下側のポンプ30−5に導入し、下側のポンプ30−4のポンプ本体を通してその吸込ベルマウス35−5から排出することによって行う。図8に示す下側のポンプ30−5の管理運転も、上記と同様の弁の開閉状態で、下側のポンプ30−5を駆動することによって行う。
【0048】
このポンプ設備1−5の場合、床20−5などの土木躯体やポンプベース49−5の許容開口寸法(強度やスペースの制約)にこだわることなく、口径の大きいバイパス管51−5を容易に設置することができ、管理運転時の管路損失を大きく低減できる。同時に別のポンプ30−5のポンプ本体を通して吸込水槽10−5に液体を戻せるので、この点からも管理運転時の管路損失を低減でき、より通常運転に近い水量での管理運転が可能となり、信頼性の高い管理運転を行うことができる。また管理運転時の液体を他のポンプ30−5から排出することにより、吸込水槽10−5内の水を効率よく(大きく)循環させることが可能であり、水質悪化防止にも効果がある。また管理運転時に水が水面を叩くことによる気泡が生じることもなく、ポンプ30−5への気泡の巻き込みも防止できる。
【0049】
図9はポンプ30−5のQ−Hカーブと、通常運転時および管理運転時の管路損失曲線L1,L2,L6とを示す図である。同図に示すように、1本のバイパス管で排水を吸込水槽10−5に直接戻す従来例に比べて、ポンプ設備1−5の場合は排水する水量を2倍以上に増加することができ、管理運転時の管路損失曲線L6と通常運転時の管路損失曲線L1との間の相違を小さくでき、実際の排水運転に近い状態(負荷)での運転になり、満足な機器状態の確認ができる。
【0050】
以上説明したようにこのポンプ設備1−5によれば、バイパス管51−5を通す開口を土木構造体やポンプベース49−5に設ける必要がなく、簡素な設備にできるとともに、何れかのポンプ30−5で揚水した流体をバイパス管51−5を通して別のポンプ30−5のポンプ本体から吸込水槽10−5に戻すため、管理運転時の管路損失を低減でき、より通常運転に近い水量での管理運転が可能となり、信頼性の高い管理運転を行うことができる。なお上記ポンプ設備1−5においては2台のポンプ30−5,30−5を設置した例を示したが、3台以上のポンプを設置した場合にも同様に適用できる。
【0051】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば本発明は、吸込水槽内の液体を揚水するポンプであれば、上記した縦軸ポンプ以外の各種縦軸ポンプ,横軸ポンプ,斜流ポンプにも同様に適用できる。またポンプ設備の構成自体も上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1−1(1−2〜1−5) ポンプ設備
10(10−2〜5) 吸込水槽
20(20−2〜5) 床(土木構造体)
21(21−2〜5) 開口
30(30−2〜5) ポンプ
31(31−2〜5) 吊り下げ管
33(33−2〜5) ポンプボウル
35(35−2〜5) 吸込ベルマウス
37(37−2〜5) 吐出ケーシング
39(39−2〜5) 吐出管
41(41−2〜5) 駆動機
43(43−2〜5) 駆動軸
45(45−2〜5) インペラ
47(47−2〜5) 吐出弁
49(49−2〜5) ポンプベース
51(51−2〜5) バイパス管
51A 第1の分岐部
51B 第2の分岐部
53(53−2〜5) 切替弁
55−4 連通管
57−4 切替弁
59−5 バイパス弁
WL 管理運転時の吸込水槽水位レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込水槽内の液体を揚水する複数台のポンプと、各ポンプの吐出側に設けた吐出弁とを有するポンプ設備において、
複数台のポンプの吐出弁の上流側同士をバイパス管で連通するとともにバイパス管にバイパス弁を設け、管理運転時にはバイパス管で連通した各ポンプの吐出弁を閉とし、前記バイパス弁を開とすることで何れかのポンプで揚水した液体をバイパス管を通して別のポンプから吸込水槽内に戻すことを特徴とするポンプ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47521(P2013−47521A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231168(P2012−231168)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2009−59244(P2009−59244)の分割
【原出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】