説明

マイクロカプセル

【課題】乳化分散性がよく、粒子径が適度な大きさを有し、その分布が均一で、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れたマイクロカプセルを得る。
【解決手段】油性芯物質をアニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に乳化分散させた後、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化反応によるカプセル膜壁を形成させるマイクロカプセルの製造方法において、前記アニオン性高分子電解質が(1)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)と(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)と(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる共重合体とするマイクロカプセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルに関する。さらに詳しくは、本発明は、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化膜により製造されたマイクロカプセルにおいて、油性芯物質の乳化分散性が良く、乳化液が安定で、高濃度、低粘度のスラリーとなり、得られるマイクロカプセルの粒子径が適度な大きさを有し、またその分布が均一で、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れ、製造工程が簡単で、油性芯物質に対して乳化分散樹脂液の使用比率が少なくて済む、経済性に優れたマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルの機能は、芯物質を微小の球形カプセル内に閉じ込め、変質させることなく保護し、その応用時に必要に応じて徐放、またはカプセルを一時に破壊することにより放出して芯物質の本来の性能を発揮せしめるものである。
【0003】
今日マイクロカプセルの応用範囲は極めて広く、ノーカーボン紙に代表される感圧記録材料、医薬品、農薬徐放剤、香料、粘接着剤、食品、洗剤、染料、触媒、酵素、防錆剤等多岐にわたっている。例えば具体的には、香料を芯物質とするマイクロカプセルでは、ヒノキチオールの大豆油溶液をカプセル化して、アクリルなどの合成樹脂エマルジョンをバインダーとして、シーツや浴衣などに樹脂加工し、森林浴シーツや浴衣を製造する、また自動車内装用に使用する、また特殊な不織布にスプレー加工する、また靴の消臭中敷き用に応用するなどの実用化がある。また鼠や害虫による侵食防止に鼠忌避剤、害虫忌避剤などの薬剤をカプセル化して電線やゴム管に練りこむなども行われている。また粘接着剤用途では、例えば溶剤系のエポキシ樹脂接着剤や粘着剤などをカプセル化し、ボルトなど被着体に塗布し、応用時ボルトが締まる時点でカプセルが機械的圧力で破壊され、強固な接着機能を発揮する場合などがある。またさらに、色素や示温剤をカプセル化して光変色剤や示温剤への応用などもある。
【0004】
これら用途のなかで工業的に最も多く利用されているのが宅配便や各種伝票類などに使用されるノーカーボン紙である。この場合上用紙に加えられた筆圧でマイクロカプセルが破壊されることにより、カプセルに内包されている染料が下用紙に塗布された顕色剤と反応して発色することを利用するものである。したがってマイクロカプセルは膜壁が緻密で、強度があり、耐熱性があり、高温、多湿の経時で変化がなく、紙の摩擦程度ではカプセルが破壊されず、筆圧で破壊し、発色が良好であることが要求される。粒子径は4〜7ミクロン程度がよく、分布は均一であることが要求される。2ミクロン以下の小さなカプセルは筆圧で破壊されず、無駄になり、経済性の問題が生ずる。また7ミクロンより大きなカプセルは壊れやすく滲みや汚染の原因となり、好ましくない。
【0005】
マイクロカプセルの製造法としては、物理的方法、機械的方法、物理化学的方法、化学的方法がある。
【0006】
物理的、又は機械的方法は特殊な設備が必要であること、得られるカプセルの粒子径が数十ミクロン以上と大きすぎること、またそのために膜壁の緻密性と強度に欠け、壊れやすく、芯物質が経時で漏れやすい等の欠点のため、用途がかなり限定されるという弱点があった。
【0007】
物理化学的方法及び化学的方法は、特殊な設備が不要なこと、マイクロカプセルの粒子径が1ミクロン以下の小さいものから数ミリと大きなものまで容易にコントロールが可能で製造できること、膜壁の緻密性も高いものが得られること等の利点があるため多方面に利用されている。
【0008】
歴史的には物理化学的方法で、コアセルベーション(相分離)法としてよく知られるゼラチン/アラビアゴム法が最も広く用いられている。しかし、膜剤として天然物を使用することによる腐敗、凝集、経済性等の種々問題点と耐水性が劣ることによる性能上の問題、さらに工業的にはこの方法では得られるマイクロカプセルの固形分濃度が低く、とりわけノーカーボン紙のような紙基材に塗工する用途では、乾燥エネルギーの浪費が大で、不経済となり実用化には大きな難点があった。
【0009】
化学的方法としては油性芯物質と水相の界面でモノマーを重合させて膜壁を作る界面重合法と、油性芯物質または水相の一方のみで重合させて膜壁を形成させるin―situ重合法とがある。
【0010】
界面重合法は、古くは特開昭49−25822号公報に代表される。この方法ではポバールが乳化分散剤として使用され、油性芯物質が先ず水相中に乳化分散される。膜壁を形成する硬化剤としては、イソシアネート、酸クロライド、エポキシ化合物等反応性の強い化合物が用いられるため、マイクロカプセル膜は前記コアセルベーション法よりは強靭であるが、重合反応のコントロールが難しい。その上反応性の強い活性水素を有する芯物質では直ちに反応、ゲル化を引き起こすため使えず、また毒性が高く、高価であるという欠点を有していた。
【0011】
一方、in―situ重合法では、水溶性のアニオン性高分子電解質が乳化分散剤として用いられ、膜壁を作る硬化剤にはメラミン樹脂等アミノ樹脂が使用される。安価で重合反応に特別な触媒が不要で、短時間で簡単にマイクロカプセルが製造可能という長所を有しており、古くから特許も多数出願されている。しかし、この方法では油性芯物質の乳化分散、膜壁の緻密性等が他の方法に比し悪く、工夫を要する。特許の多くはこれら欠点を克服するため乳化分散剤である高分子電解質の樹脂組成の工夫に苦心されている。硬化剤としては、アミノ樹脂が用いられ、主としてメラミン樹脂が用いられる。尿素樹脂を用いることも可能ではあるが、硬化させるため系をかなり低pHにしなければならず、腐蝕等装置的な問題、及び硬化反応が速過ぎ、生成した膜壁が硬くて脆いものになりやすい。したがって、実際的には硬化反応がコントロール容易で強靭な膜壁が得られるメラミン樹脂が主として使用される。
【0012】
in―situ重合法では、上記欠点を克服するため、種々の工夫がなされ、多数の改良策が提案されている。通常前記の欠点は硬化剤よりは乳化分散剤の工夫によって解決される場合が多く、ほとんどの過去の特許は乳化分散剤の樹脂組成に集中している。
【0013】
例えば特公昭54−16949号公報には、油性芯物質の乳化分散に用いるアニオン性高分子電解質としてエチレン/無水マレイン酸共重合体が報告されている。硬化剤にはメラミン樹脂が用いられる。この方法により油性芯物質の乳化分散性が改善され、カプセル膜壁の強度と緻密性は向上し、耐熱、耐湿性も良好となった。しかし、カプセルスラリーの粘度は高くなり、エチレン/無水マレイン酸樹脂の水への溶解性が悪く、作業性に難点があった。
【0014】
また、特開昭54−49984号公報には、乳化分散剤としてスチレン/無水マレイン酸共重合体が報告されている。この方法では、油性芯物質の乳化分散性はさらに改善され、安定で低粘度のカプセルスラリーが得られる。膜壁の強度も十分だが、スチレン/無水マレイン酸共重合体は低pHで水に対する溶解性に乏しく、析出する欠点を有していた。
【0015】
また、特開昭56−51238号公報には、乳化分散剤としてポリスチレンスルホン酸等のスチレンスルホン酸系ポリマーが報告されている。スチレンスルホン酸系ポリマーは、低pHでも安定であり、壁膜の強度、耐熱性、耐湿性も良好であるが、乳化分散スラリー、及びメラミン樹脂硬化時の発泡性が高く、作業性に難点があるのと紙などに塗布した塗工膜が発泡によりはじき、塗工むらが生じ、商品化に難点があった。
【0016】
さらに、特許公報第2634836号公報には、系変性剤としてアクリル酸類とアクリロニトリルとアシッドフォスフォオキシポリエチレングリコールメタクリレートとの三元共重合体を使用することにより、(1)疎水性芯物質の乳化分散性が良く、(2)且つ乳化液の安定性を保ち、(3)カプセル化工程が簡単で、(4)しかも短時間の反応によって、(5)無類の強度、緻密性、耐水性、耐湿性に優れたカプセルをいっそう低粘度で且ついっそう高濃度で得ることができるマイクロカプセルの製造方法が確立できたことを報告している。上記(1)〜(5)の記述については、メラミン初期縮合物を硬化剤として使用することにより記述通りのマイクロカプセルが得られる。しかしながら、乳化分散粒子及び最終的に得られるマイクロカプセルの粒子径が若干小さく、例えばノーカーボン紙に応用した場合に発色性が不足し、また粒子径分布が広く、特に小粒子径のものが多く、カプセルが破壊されず、そのため発色せず無駄となり、経済性の点で問題があった。また大粒子径のものもかなり多く含まれ、時として滲み、汚染の原因となる場合があった。また、更に疎水性芯物質に対する三元共重合体の乳化分散性が弱く、疎水性芯物質に対する三元共重合体の使用比率が少ない場合は乳化分散がうまくいかず、油が表面に浮いたり、極端な場合はカプセルスラリーが分離する傾向があった。したがって、安定なマイクロカプセルを作製するには、疎水性芯物質に対して三元共重合体の使用比率を増さねばならず、経済性の点で弱点があった。
【特許文献1】特開昭49−25822号公報
【特許文献2】特公昭54−16949号公報
【特許文献3】特開昭54−49984号公報
【特許文献4】特開昭56−51238号公報
【特許文献5】特許公報第2634836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化膜により製造されるマイクロカプセルにおいて、油性芯物質の乳化分散性がよく、乳化液が安定で、高濃度、低粘度のスラリーとなり、得られるマイクロカプセルの粒子径が適度な大きさを有し、またその分布が均一で、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れ、製造工程が短時間で簡単、経済性に優れたマイクロカプセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定組成の単量体混合物を水溶液共重合して得られるアニオン性高分子電解質が、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明の第1は、油性芯物質をアニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に乳化分散させた後、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化反応によるカプセル膜壁を形成させるマイクロカプセルの製造方法において、前記アニオン性高分子電解質が(1)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)と(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)と(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる共重合体であることを特徴とするマイクロカプセルを提供するものである。
【0020】
本発明の第2は、本発明第1のマイクロカプセルにおいて、アニオン性高分子電解質が1)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)と(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)と(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)からなるアニオン性高分子電解質用組成物を提供するものである。
【0021】
本発明の第3は、本発明第1のマイクロカプセルにおいて、アニオン性高分子電解質が(1)カルボキシル基含有不飽和単量体(a)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して60〜95重量部、(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して2〜20重量部、(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して0.5〜12重量部、(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して0.2〜8重量部から成る不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体であるマイクロカプセルを提供するものである。
【0022】
本発明の第4は、本発明第1のマイクロカプセルの製造方法において、前記アニオン性高分子電解質が前記油性芯物質100重量部に対して、1〜30重量部であるマイクロカプセルを提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマイクロカプセルにおいて、用いるアニオン性高分子電解質は油性芯物質の乳化分散性が良く、乳化液が安定で、高濃度、低粘度のスラリーとなり、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化膜により得られるマイクロカプセルは、粒子径が適度な大きさを有し、またその分布が均一で、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れている。また、少量のアニオン性高分子電解質の使用量で安定なカプセルスラリーが得られるため、経済性に優れたマイクロカプセルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明において、油性芯物質を酸性水溶液中に乳化分散させた後、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化反応によりカプセル膜壁を形成させるマイクロカプセルの製造方法の際に、先ず前段の乳化分散剤として用いられるアニオン性高分子電解質は、(1)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)と(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)と(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体である。
【0025】
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)としては、カルボキシル基(酸無水物基を含む)と重合性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されないが、代表的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。上記のカルボキシル基含有不飽和単量体の中でもアクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましい。
【0026】
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体は遊離酸のままであっても良く、カルボキシル基の一部がナトリウム、カリウム、アンモニウム、アミンなどの塩を形成していても良い。
【0027】
カルボキシル基含有不飽和単量体の使用量は、共重合体の構成成分の総和100重量部に対して60〜95重量部、好ましくは65〜90重量部、より好ましくは70〜90重量部であり、75〜85重量部が特に好ましい。
【0028】
共重合体の構成成分の総和100重量部に対してカルボキシル基含有不飽和単量体の使用量が60重量部未満では、水溶解性が不足するため、マイクロカプセル製造用樹脂組成物として油性芯物質の乳化分散力に欠け、乳化粒子の安定性に欠ける。一方、95重量部より多い場合には、水溶性が大きすぎ、疎水性部分が少ないため、乳化分散剤としてのHLBバランスに欠ける。したがって、カプセルの乳化スラリーは異常な高粘度になったり、分離を引き起こし不安定になる。
【0029】
(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミト゛基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)は、共重合体の構成成分の総和100重量部に対して2〜20重量部使用される。(メタ)アクリロニトリルは、モノマーとしてはかなり親水性であるが、重合体になった後は超疎水性になる。したがって、乳化分散剤としては疎水性成分としてHLBを下げる働きをする。一方、重合体としての性質は結晶性を示し、マイクロカプセルの膜壁成分として強靭で耐熱性を向上させる働きをする。メタクリル酸メチルは、モノマーとしても重合体としても親水性が大きい。アミド基含有重合性不飽和単量体は水溶性であり、乳化分散剤としてカルボキシル基含有不飽和単量体を補完する役割を担い、保護コロイドとしての能力が優れる。水酸基含有重合性不飽和単量体は、親水性が強く乳化分散剤としてHLBを高め、時として乳化分散性を向上させる働きをする。また、水酸基成分はメラミン樹脂との硬化性に富み、マイクロカプセルにおいて強靭な膜壁を作る助けをする。
【0030】
アミド基含有重合性不飽和単量体(d)としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアクリルアミド、α-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド及びN-ビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が挙げられる。
【0031】
水酸基含有重合性不飽和単量体(e)としては、例えばアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、ε-カプロラクトン変性アクリルモノマーなどが挙げられる。これらのヒドロキシ基含有重合性不飽和単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。ε-カプロラクトン変性アクリルモノマーとしては、ダイセル化学工業(株)製の商品名「プラクセルFA-1
」、「プラクセルFA-2」、「プラクセルFA-3」、「プラクセルFA-4」、「プラクセルFA-5」、「プラクセルFM-1」、「プラクセルFM-2」、「プラクセルFM-3」、「プラクセルFM-4」、及び「プラクセルFM-5」などが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)は2重量部未満では、乳化分散剤として、乳化分散力に欠け、乳化粒子の安定性に欠けると同時にマイクロカプセルとしての強度、耐熱性が不足する。20重量部より多い場合も、乳化分散剤としてのバランスが不足し、安定なスラリーが得られない。
【0033】
本発明のアニオン性高分子電解質におけるメタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)としては、例えば下記式(1)、メタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)としては、例えば下記式(2)で表される。(1)と(2)はどちらか一方を用いてよく、又は併用してもよい。
【0034】
【化1】

【0035】
【化2】

メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)の使用量は、水溶性共重合体の構成成分の総和100重量部に対して0.5〜12重量部、1〜10重量部がより好ましい。
【0036】
メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)が0.5重量部未満では、乳化分散力に欠け、乳化分散粒子の安定性に欠ける。また、マイクロカプセル粒子の粒子径が小さく、不均一で、より小さな粒子径のものが多くなる。さらにまた、メラミン樹脂の硬化速度が遅く、カプセル膜壁の強度が不足し、紙基材などに塗られたマイクロカプセルの耐熱性や耐温湿性に欠けるため、塗装カプセルの貯蔵安定性が低下し、商品価値の低下を招く。12重量部より多い場合は、乳化分散が却って悪くなり、極端な場合は凝集、分離を引き起こす。メラミン樹脂の硬化も局部的になり不均一で弱い膜壁強度となるため、不安定なマイクロカプセルとなる。
【0037】
本発明のアニオン性高分子電解質中におけるポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)としては、例えば下記式(3)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)としては、例えば下記式(4)で表される。(3)と(4)はどちらか一方を用いてよく、又は併用してもよい。
【0038】
【化3】

【0039】
【化4】


ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)が乳化分散樹脂中に共重合されると、ノニオン性の乳化剤成分としての機能を発揮する。すなわち、一般にアニオン性乳化剤を使用すると分散粒子の粒子径が小さくなりすぎる。しかし、ノニオン性の乳化剤は系のHLBを適度に調節し、乳化ミセルのサイズを大きくしてより大きな粒子径の粒子をより均一に整える作用をすることが知られている。それと同様にポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)成分が共重合された乳化分散剤は、マイクロカプセルの粒子径をより大きく、より均一に調整する作用を及ぼす。更に油性芯物質に対して少ない乳化分散樹脂の使用比率で安定なマイクロカプセルスラリーが得られるという作用ももたらす。
【0040】
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)の使用量は、水溶性共重合体の構成成分の総和100重量部に対して0.2〜8重量部、0.5〜6重量部がより好ましい。
【0041】
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)が、0.2重量部未満では、マイクロカプセルの粒子径を大きく、均一に調整する能力に欠け、8重量部より多いと、乳化分散力が低下し、粒子径が大きくなりすぎて逆に不安定になる。
【0042】
このようにして、上記(a)〜(i)の不飽和単量体混合物を水溶液重合してアニオン性高分子電解質が調整される。
【0043】
水溶液重合は、前記モノマー成分(a), (b),(c),(d),(e),(f),(g),(h)及び(i)を水性液中で、ラジカル重合開始剤の存在下、攪拌下に加熱することによって実施される。反応温度は例えば30〜100℃程度、反応時間は0.5〜10時間程度が好ましい。水を仕込んだ反応容器にモノマー混合液を一括添加又は暫時滴下することによって反応温度の調節を行うとよい。
【0044】
ラジカル重合開始剤としては、通常アクリル樹脂の乳化重合や水溶液重合で使用される公知の開始剤が使用できる。具体的には、水溶性のフリーラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などや、これらの酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤が水溶液の形で使用される。また、時として油溶性の過酸化物であるクメンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、ジ#−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドやアゾビスイソブチルニトリルなども用いられる。
【0045】
本発明のアニオン性高分子電解質は、水と種々の割合で混合溶解可能である。マイクロカプセル製造においてアニオン性高分子電解質の使用量は、油性芯物質100重量部に対して、1〜80重量部が可能であるが、製造過程におけるカプセルスラリーの固形分濃度、粘度、マイクロカプセルの粒子径によって適宜選択される。使用量が少なすぎるとカプセル化工程中に凝集、分離が生じたり、使用量が多すぎると得られるカプセルスラリーの粘度が高くなったり、分離が生じたりするなど、良好なマイクロカプセルが得にくくなる。したがって、使用量は、1〜30重量部が好ましく、3〜25重量部がさらに好ましい。
【0046】
アニオン性高分子電解質の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般的に1,000〜200,000程度であり、好ましくは5,000〜100,000程度である。重量平均分子量は、重合開始剤の使用量により調整できる。また、樹脂の水溶液中での固形分濃度は10〜40重量%のいずれでもよいが、10重量%未満では生成カプセルの濃度も低く、生産能率が悪く、40重量%を超えると樹脂水溶液の粘度が高くなりすぎてカプセルの分散が悪く好ましくない。
【0047】
本発明のマイクロカプセルの膜壁を作るための硬化剤としてのメラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物としては、メラミンとパラホルムとホルムアルデヒドの混合物又はメチロールメラミンを出発原料として用いる。メチロールメラミンは弱アルカリ性でメラミンとホルムアルデヒドの混合物を攪拌下加熱して容易に得ることができる。又市販のメチロールメラミンを出発原料としてもよい。
【0048】
メラミンとホルムアルデヒドの使用モル比は、生成カプセルの緻密性、膜壁強度、耐熱性、粒子径などに大きな影響を与えるが、ホルムアルデヒドのメラミンに対するモル比は、約1〜5、好ましくは1.5〜4、より好ましくは2〜3.5である。
【0049】
メラミン―ホルムアルデヒド初期縮合物の調整は、pH8〜10の範囲で、メラミンとホルムアルデヒド及び又はパラホルムを加熱、攪拌してメチロール化反応を行うことによって実施する。得られたプレポリマーの安定性、特に低温安定性を向上させるため、場合によってはpHを酸性側に下げ、これに等重量以上のメタノールを添加してメチルエーテル化反応を行う。アルカリで中和後過剰のメタノールを減圧濃縮して除去し、所期の安定なメラミン―ホルムアルデヒド初期縮合物を得る。
【0050】
本発明において、カプセル化される油性芯物質のうち油の例としては、魚油、ラード油等の動物油、大豆油、胡麻仁油、落花生油、亜麻仁油、ひまし油、とうもろこし油等の植物油、石油、ケロシン、ガソリン、ナフサ、パラフィン、トルエン、キシレン等の鉱物油がある。合成油の例としては、ビフェニル化合物、ターフェニル化合物、リン酸化合物、アルキルナフタレン系高沸点溶剤、アルキル置換ジフェニルアルカン、ジフェニルエタン、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、サリチル酸メチル、その他天然鉱物油などがある。油性芯物質としては、マイクロカプセルの用途、目的に応じて、上記油に香料、染料、医薬、農薬、食品、接着剤、触媒、示温剤、顕色剤、防錆剤、洗剤、液晶等を適宜溶解して作製することができる。
【0051】
本発明のマイクロカプセル製造工程の概要は下記に示す通りである。
1)前記組成のアニオン性高分子電解質を水溶液重合によって合成する。
2)前記のようにして、メラミン―ホルムアルデヒド初期縮合物を合成
する。
3)アニオン性高分子電解質中に上記油性芯物質を乳化分散する。乳化分散はpHを2〜7の酸性範囲に保ち、ホモジナイザーなどで5,000〜10,000rpmで強制高速攪拌により、10分程度の短時間で行う。
4)3)の乳化分散液中に2)のメラミン―ホルムアルデヒド初期縮合物を、又は2)のメラミン―ホルムアルデヒド初期縮合物中に3)の乳化分散液を混合し、攪拌下60〜90℃に昇温する。0.5〜5時間同じ温度で攪拌を続ける。5)冷却、pH調整、濾過する。
【0052】
pH調整はアルカリ性にする場合は、例えば苛性ソーダや炭酸ソーダ水溶液、アミン類、アンモニア水等の塩基性物質で、酸性にしたい場合は、例えば蟻酸、酢酸、塩酸、硫酸、クエン酸、燐酸、乳酸などが使用される。
【0053】
カプセル製造系中のアニオン性高分子電解質の量はメラミン―ホルムアルデヒド初期縮合物に対して重量比で、0.2〜10、好ましくは0.3〜5である。使用量が少ないとカプセル化で分離、増粘又は凝集が起こる。使用量が多いと分散粒子が小さくなり、好ましくない。
【0054】
前記アニオン性高分子電解質は、油性芯物質100重量部に対して1〜30重量部使用するが、一般には、カプセル化濃度、粒子径、粘度によって決める。使用量が少ないと、カプセル化の際乳化分散力が不足してスラリーが凝集するなど良好なマイクロカプセルが得にくく好ましくない。逆に多すぎてもスラリーの粘度が上がりすぎ、粒子径が小さくなりすぎたりして好ましくない。
【0055】
マイクロカプセルの大きさは用途に応じて適宜選択できる。感圧記録紙に用いる場合、大きさは3〜10ミクロンが好ましく、更に好ましくは4〜7ミクロンである。
【0056】
本発明は、マイクロカプセル製造上、特に感圧記録紙用のマイクロカプセルに極めて有用である。即ち、本発明の方法によれば、油性芯物質の乳化分散性が良く、発泡もなく乳化液が安定で、高濃度、低粘度のスラリーとなり、得られるマイクロカプセルの粒子径が適度な大きさを有し、またその分布が均一で、強度、緻密性、耐水性、耐熱性、耐温湿性に優れ、製造工程が短時間で簡単にマイクロカプセルが得られる。
【0057】
本発明によって製造されたマイクロカプセル分散液は、カーテンロール、ブレードコーター、エアナイフコーター、クラビアコーターなどにより、紙などの支持体上に塗布され、使用できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例、比較例中の部及び%は、特に記載のない限り重量基準である。実施例中ではマイクロカプセルの応用例として、利用の多いノーカーボン紙を代表して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の用途についても同様に用いることができる。
【0059】
下記の要領でマイクロカプセルスラリーの平均粒子径と分布、粘度、カプセル化率、発色性、耐汚れ性、耐温湿性試験を行った。
【0060】
(平均粒子径と分布)
島津 SALD-2000J(島津製作所(株)製)を用いてマイクロカプセルの平
均粒子径を測定した。また、粒子径分布については、特にノーカーボン紙用として無用、又は悪い作用を及ぼす1.5μ以下の小粒子径と8μ以上の大粒子径マイクロカプセル粒子の粒子数の、全粒子数に対する比率を測定した。
【0061】
(粘度)
23℃におけるマイクロカプセルスラリーの粘度をB型粘度計の60rpmで測定した。
【0062】
(カプセル化率)
マイクロカプセルスラリーを市販のノーカーボン紙用下用紙上に0.05mmのアプリケータで塗布し、常温で乾燥後下用紙の汚れ程度により測定する。
【0063】
(発色性)
マイクロカプセルスラリー33部に小麦粉澱粉7部の水60部溶解液を加えて作製したスラリーを、坪量40g/m2の原紙に#10のコーティングバーで塗布し、110℃、3分乾燥してノーカーボン紙上用紙を作成した。この上用紙を市販の下用紙と重ね合わせてタイプライターにて印字し、発色性を評価した。
【0064】
(耐汚れ性)
発色性試験用と同様の方法で上用紙を作成し、市販の下用紙と重ね合わせ、約1.5Kg/cm2の静圧を加え、下用紙顕色剤面の発色汚れを評価した。
【0065】
(耐温湿性)
マイクロカプセルスラリーを市販のナーカーボン紙用下用紙上に0.05mmのアプリケーターで塗布し、常温で乾燥して作成した塗工紙を、50℃、相対湿度80%の恒温恒湿器中に1ケ月間放置後、表面の汚れ具合を評価した。
【0066】
[実施例1]
(アニオン性高分子電解質の合成)
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水730部を仕込み、攪拌しながら60℃に昇温した。一方、アクリル酸(AA、80%溶液)310部、メタクリル酸(MAA)13部、アクリロニトリル(AN)25部、メチルメタクリレート(MMA)8部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレ
ンマーPE-200)5部にイオン交換水300部からなる不飽和単量体の均一水溶液を作製し、滴下ロートに入れ、そのうち10%を反応容器に添加した。次に反応容器の内温を75℃まで上げ、過硫酸カリウムの3部とイオン交換水10部を添加し、反応容器の内温80℃で10分間反応した。次に前記不飽和単量体水溶液の残り90%を反応容器の内温83〜85℃で3時間かけて滴下した。他方、過硫酸カリウム2部をイオン交換水60部に溶解し、別の滴下ロートに入れ、不飽和単量体水溶液の滴下開始1時間後から2時間30分かけて滴下した。過硫酸カリウム水溶液の滴下終了後1時間、83〜85℃で熟成反応を行った。その後反応容器を40℃以下まで冷却し、苛性ソーダ15部をイオン交換水90部に溶解した水溶液を添加した。
【0067】
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.1%で、粘度は280mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
【0068】
(メラミンホルムアルデヒド初期縮合物の合成)
攪拌機、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に37%ホルムアルデヒド240部、メラミン180部、92%パラホルム60部を投入し、攪拌し、80℃に昇温する。80℃、30分間攪拌し、付加反応を行った後、メタノール720部と10%塩酸7部を投入し、60℃で約1時間メタノール変性反応を行う。反応は、ピペットによりサンプリングした上記反応物を大量の水(例えばバケツ)に添加し、白濁した時点を反応の終点として、それまで攪拌により行う。その後、20%の苛性ソーダ水溶液3部を投入する。
【0069】
冷却後、減圧下で反応物の不揮発分が75%になるまで濃縮することによりメタノールと水を除去し、製品とする。
【0070】
得られたメラミンホルムアルデヒド初期縮合物水溶液の不揮発分は75.2%で、粘度は1,700mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH8.9であった。
【0071】
(マイクロカプセルの作製)
予めクリスタルバイオレットラクトン(CVL)13部をアルキルジフェニルエタン(商品名ハイゾールSAS−296、日本石油化学(株)製)
260部に加え、攪拌下で90℃、10分間で加熱溶解して冷却し、油性芯物質を作製した。一方、上記の方法で合成したアニオン性高分子電解質樹脂水溶液130部、水220部、10%苛性ソーダ水溶液15部と上記作製した油性芯物質を別の容器に入れ、混合し、ホモジナイザー(特殊機化工業(株)製)に
て回転数9,000rpmで3分間乳化した。得られたO/W型乳化液の平均粒子径は5.1μであった。次にこれに上記合成したメラミンホルムアルデヒド初期縮合物水溶液70部をイオン交換水200部に溶解した後添加し、80℃まで昇温し、80℃で2時間攪拌を続けた。40℃以下まで冷却し、10%苛性ソーダ水溶液80部を投入し、攪拌、混合した後120メッシュのネットで濾過した。
【0072】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.1μ、粘度は90mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0073】
[実施例2]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリル酸(AA、80%溶液)310部、メタクリル酸(MAA)13部、イオン交換水300部の代わりに、アクリル酸(AA、80%溶液)326部、イオン交換水297部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0074】
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.2%で、粘度は290mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
【0075】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.0μ、粘度は70mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0076】
[実施例3]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリロニトリル(AN)25部、メチルメタクリレート(MMA)8部の代わりに、アクリロニトリル(AN)33部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施した。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.1%で、粘度は260mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
【0077】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.2μ、粘度は80mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0078】
[実施例4]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部の代わりに、メタクリロイルポリオキシポロピレン(6モル)アシッドフォスフェート20部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施した。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.0%で、粘度は280mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
【0079】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は4.9μ、粘度は90mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0080】
[実施例5]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製
、ブレンマーPE-200)5部の代わりに、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE-350)5部を用いた以外は
、実施例1と全く同様に実施した。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.0%で、粘度は300mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.5であった。
【0081】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は5.1μ、粘度は80mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0082】
[実施例6]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製
、ブレンマーPE-200)5部の代わりに、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPP-1000)5部を用いた以外
は、実施例1と全く同様に実施した。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は21.9%で、粘度は290mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.5であった。
【0083】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は4.8μ、粘度は90mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0084】
[実施例7]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製
、ブレンマーPE-200)5部の代わりに、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPP-500)5部を用いた以外
は、実施例1と全く同様に実施した。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.2%で、粘度は280mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
【0085】
得られたマイクロカプセルスラリーの平均粒子径は4.9μ、粘度は80mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、異常な粘度上昇や発泡はまったくなく、良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0086】
[比較例1]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリル酸(AA、80%溶液)310部、メチルメタクリレート(MMA)8部、イオン交換水300部の代わりに、アクリル酸(AA、80%溶液)188部、メチルメタクリレート(MMA)106部、イオン交換水324部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.3%で、粘度は220mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH4.8であった。
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。カプセル製造中に異常発泡と増粘が起こり、得られたマイクロカプセルスラリーも凝集物が多く、一部油が表面に分離していた。平均粒子径は4.2μ、粘度は3、120mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。
【0087】
[比較例2]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液においてメチルメタクリレート(MMA)8部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部の代わりに、メチルメタクリレート(MMA)28部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.0%で、粘度は240mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.8であった。
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。カプセル製造中に異常発泡と増粘が起こり、得られたマイクロカプセルスラリーも凝集物が多く、一部油が表面に分離していた。平均粒子径は3.9μ、粘度は2、840mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。
【0088】
[比較例3]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリロニトリル(AN)25部、メチルメタクリレート(MMA)8部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル)アシッドフォスフェート20部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE-200)5部の代わりに、アクリロニトリル(
AN)33部、メタクリロイルポリオキシエチレン(4モル)アシッドフォスフェート25部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.1%で、粘度は270mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。カプセル製造中に若干発泡と増粘が起こった。平均粒子径は4.3μ、粘度は1、240mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。
【0089】
[比較例4]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリロニトリル(AN)25部、メチルメタクリレート(MMA)8部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル) アシッドフォスフェート20部の代わりに、アクリロニトリル(AN)35部、メチルメタクリレート(MMA)18部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.2%で、粘度は260mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.7であった。
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。カプセル製造中に発泡と増粘が起こった。平均粒子径は5.0μ、粘度は1、830mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。
【0090】
[比較例5]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリロニトリル(AN)25部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE-200)5部の代わりに
、アクリロニトリル(AN)30部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.1%で、粘度は280mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
【0091】
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。平均粒子径は4.5μ、粘度は380mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。尚、マイクロカプセル作製時の各工程において、若干発泡があったものの異常な粘度上昇はまったくなく、見かけ上良好なマイクロカプセルスラリーが得られた。
【0092】
[比較例6]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル) アシッドフォスフェート20部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE-200)5部の代わりに、メタクリロイルポリオキ
シエチレン(6モル) アシッドフォスフェート25部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.1%で、粘度は270mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.6であった。
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。カプセル製造中に若干発泡と増粘が起こった。平均粒子径は4.3μ、粘度は1、240mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。
【0093】
[比較例7]
実施例1のアニオン性高分子電解質の合成における不飽和単量体水溶液において、アクリロニトリル(AN)25部、マチルメタクリレート(MMA)8部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル) アシッドフォスフェート20部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE-200)5部の代わりに、アクリロニトリル(
AN)33部、メタクリロイルポリオキシエチレン(6モル) アシッドフォスフェート25部を用いた以外は、実施例1と全く同様に実施し、アニオン性高分子電解質の合成を行った。
得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液の不揮発分は22.2%で、粘度は280mPa・s(23℃、B型粘度計)、pH3.5であった。
上記得られたアニオン性高分子電解質樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様の方法でカプセル化反応を行い、マイクロカプセルスラリーを作製した。カプセル製造中に発泡と増粘は起こらず、見かけ上良好なマイクロカプセルが得られた。平均粒子径は4.1μ、粘度は140mPa・s(23℃、B型粘度計)であった。
【0094】
以上の評価結果を表1に纏めた。
【0095】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性芯物質をアニオン性高分子電解質の酸性水溶液中に乳化分散させた後、メラミンとホルムアルデヒドの初期縮合物の硬化反応によるカプセル膜壁を形成させるマイクロカプセルにおいて、前記アニオン性高分子電解質が(1)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)と(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)と(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)からなる不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
特許請求の範囲1記載のマイクロカプセルにおいてアニオン性高分子電解質が(1)カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(a)と(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)と(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)と(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)からなるアニオン性高分子電解質用組成物。
【請求項3】
特許請求の範囲1記載のマイクロカプセルにおいて、アニオン性高分子電解質が(1)カルボキシル基含有不飽和単量体(a)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して60〜95重量部、(2)(メタ)アクリロニトリル(b)及び又はメタクリル酸メチル(c)及び又はアミド#基含有重合性不飽和単量体(d)及び又は水酸基含有重合性不飽和単量体(e)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して2〜20重量部、(3)メタクリロイルポリオキシエチレンアシッドフォスフェート(f)及び又はメタクリロイルポリオキシプロピレンアシッドフォスフェート(g)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して0.5〜12重量部、(4)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(h)及び又はポリプロピレングリコールモノメタクリレート(i)を共重合体の構成成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)の総和100重量部に対して0.2〜8重量部から成る不飽和単量体混合物を水溶液重合して得られる水溶性共重合体であるマイクロカプセル。
【請求項4】
特許請求の範囲1記載のマイクロカプセルにおいて、前記アニオン性高分子電解質が前記油性芯物質100重量部に対して、1〜30重量部であるマイクロカプセル。


【公開番号】特開2006−7017(P2006−7017A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184698(P2004−184698)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】