説明

マイクロフォン装置

【課題】マイクロフォン素子10が組み付けられていない状態でも、ホルダー22でコイルスプリング24を保持できるマイクロフォン装置を提供する。
【解決手段】マイクロフォン素子10を囲むホルダー22を弾性部材で形成し、コイルスプリング24を挿通する貫通孔22aの軸方向中間部に狭窄部22bを設ける。コイルスプリング24の軸方向中間部に狭窄部22bよりも径の大きくない径小部24aを設けるとともに軸方向で径小部24aの上下に狭窄部22bよりも径が大きくしかも貫通孔22aより径の小さい径大部24bを設ける。コイルスプリング24を貫通孔22aに所定以上の力で挿入すると、狭窄部22bは弾性変形して径大部24bの挿入を許容し、径小部24aが狭窄部22bに臨む位置まで挿入されると、狭窄部22bは弾性復帰し、ホルダー22でコイルスプリング24を保持し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォン素子を囲むホルダーが、マイクロフォン素子が組み付けられていない状態でも、導出端子としてのコイルスプリングを保持できるようにしたマイクロフォン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロフォン装置の構造の一例を図8および図9を参照して説明する。図8は、従来のマイクロフォン装置の構造の一例の縦断面図である。図9は、従来のマイクロフォン装置の構造の一例の組み立て前の分解した縦断面図である。
【0003】
図8および図9において、集音用の表面部分を除いてマイクロフォン素子10が、絶縁材からなるホルダー12で囲まれる。マイクロフォン素子10の裏面に設けられた出力端子に臨んで、ホルダー12の裏面側に貫通孔12a、12aが穿設される。しかも、これらの貫通孔12a、12aのマイクロフォン素子10側には太径部12b、12bが設けられる。そして、これらの貫通孔12a、12aに挿入貫通させるコイルスプリング14、14は、貫通孔12a、12aを貫通できる径の挿通部14a、14aとそのマイクロフォン素子10側で貫通できない大きい径の抜け止め部14b、14bが設けられる。また、コイルスプリング14,14は、ホルダー12の貫通孔12a、12aにマイクロフォン素子10側から挿入されると、挿通部14a、14aの先端部分がホルダー12から外側に突出するような軸方向長さに設定される。
【0004】
そこで、組み立てに際して、まずホルダー12の貫通孔12a、12aにマイクロフォン素子10が配設される側からコイルスプリング14,14を挿通し、この挿通させた状態のままで、ホルダー12にマイクロフォン素子10を挿入させて、マイクロフォン素子10をホルダー12で囲む。このようにして組み立てが完了すると、コイルスプリング14,14は、マイクロフォン素子10の存在により、ホルダー12の貫通孔12a、12aから抜け出ることはない。そして、コイルスプリング14、14の一端がマイクロフォン素子10の裏面の出力端子に当接し、他端はホルダー12の外側に突出した状態となる。
【0005】
導通端子としてのコイルスプリングをホルダーに保持させる別の構造の一例が、特開平07−161416号公報に示されている。この公報に示された技術は、コイルスプリングの軸方向中間部に径大部を設け、上に狭窄部を有する貫通孔を穿設した上基板と下に狭窄部を有する貫通孔を穿設した下基板とで、コイルスプリングを軸方向に上下から挟み込むようにして、径大部が基板の狭窄部を通過し得ないようにして保持する構造である。確実な保持が得られるが、2枚の基板を必要とし、その構造が複雑である。
【特許文献1】特開平07−161416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のごとき従来のマイクロフォン構造にあっては、ホルダー12にマイクロフォン素子10が組み付けられるまで、コイルスプリング14,14はホルダー12から抜け落ちてしまい、それら自体で保持され得ない。このために、これらの3種類の部品、すなわちマイクロフォン素子10とホルダー12およびコイルスプリング14,14を同時に組み付ける必要があり、組み立て作業が繁雑なものであった。
【0007】
そこで、本発明の発明者は、組み立て作業をより簡単にするためには、マイクロフォン素子10が組み付けられていない状態であっても、ホルダー12でコイルスプリング14、14を保持できるような構造として、予めホルダー12にコイルスプリング14、14を組み付けておくことができるようにすれば、作業を改善できることに想到した。
【0008】
本発明は、上述したごとき事情に鑑みてなされたもので、マイクロフォン素子が組み付けられていない状態でも、ホルダーでコイルスプリングを保持することのできるようにしたマイクロフォン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のマイクロフォン装置は、集音用の表面部分を除いてマイクロフォン素子を絶縁材からなるホルダーで囲み、前記マイクロフォン素子の裏面側に設けた出力端子に一端を当接させるようにして前記ホルダーの裏面側に穿設した貫通孔に挿入貫通させて導出端子としてのコイルスプリングを配設したマイクロフォン装置において、前記ホルダーを弾性部材で形成するとともに前記貫通孔の軸方向中間部に狭窄部を設け、前記コイルスプリングの軸方向中間部に前記狭窄部よりも径の大きくない径小部を設けるとともに軸方向で前記径小部の上下に前記狭窄部よりも径が大きくしかも前記貫通孔より径の小さい径大部を設けて構成されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のマイクロフォン装置にあっては、ホルダーの貫通孔に、コイルスプリングを軸方向に所定以上の力で挿入すると、狭窄部は弾性変形してコイルスプリングの径大部の挿入を許容する。そして、コイルスプリングの径小部が、狭窄部に臨む位置まで挿入されると、狭窄部は弾性復帰する。そこで、かかる状態にあっては、コイルスプリングを所定以上の力で引き抜かなければ、ホルダーの貫通孔からコイルスプリングが抜け出るようなことがない。もって、マイクロフォン素子が組み付けられていない状態であっても、ホルダーでコイルスプリングを保持することができ、組み立て作業を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のマイクロフォン装置の第1実施例の構造の縦断面図である。図2は、図1の第1実施例においてマイクロフォン素子が組み付けられていない状態で、ホルダーでコイルスプリングを保持した状態の縦断面図である。図3は、図1の第1実施例のホルダーに穿設される貫通孔を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【0012】
図1ないし図3に示す本発明のマイクロフォン装置の第1実施例の構造において、集音用の表面部分を除いてマイクロフォン素子10が、絶縁材でしかも弾性部材からなるホルダー22で囲まれる。マイクロフォン素子10の裏面に設けられた出力端子に臨んで、ホルダー22の裏面側に貫通孔22a、22aが穿設される。しかも、これらの貫通孔22a、22aの軸方向中間部に内方に凸なる断面コ字状で円周状の狭窄部22b、22bが設けられる。そして、これらの貫通孔22a、22aに挿入貫通させるコイルスプリング24、24は、軸方向中間部に狭窄部22b、22bよりも径の大きくない径小部24a、24aが設けられるとともに、この径小部24a、24aの軸方向上下に狭窄部22b、22bよりも径が大きくしかも貫通孔22a、22aよりも径の小さい径大部24b、24b、24b、24bが設けられる。この第1実施例にあっては、ホルダー22の貫通孔22a、22aは、狭窄部22b、22bよりマイクロフォン素子10側の径が、狭窄部22b、22bより外側の径よりも大きく設定されている。そこで、コイルスプリング24、24にあっても、貫通孔22a、22aの軸方向の径の変化に応じて、マイクロフォン素子10側の径大部24b、24bの径が、径小部24a、24aよりも外側の径大部24b、24bの径よりも大きく設定されている。また、コイルスプリング24、24のホルダー22の外側に突出する先端部は、小さな径に設定されている。さらに、コイルスプリング24、24の軸方向長さは、ホルダー22の貫通孔22a、22aの軸方向長さよりも長く設定されている。
【0013】
そして、組み立てに際して、まず、ホルダー22の貫通孔22a、22aに、マイクロフォン素子10が配設される側からコイルスプリング24、24がそれぞれに所定以上の力で挿入される。すると、貫通孔22a、22aの狭窄部22b、22bは弾性変形して、コイルスプリング24、24の挿入先端側の径大部24b、24bの挿入を許容する。そして、狭窄部22b、22bに径小部24a、24aが臨む位置までコイルスプリング24、24が挿入されると、狭窄部22b、22bが弾性復帰する。このために、径小部24a、24aの軸方向上下の径大部24b、24b、24b、24bが、貫通孔22a、22aの狭窄部22b、22bの軸方向上下にそれぞれに配設され、所定以上の力がコイルスプリング24、24に引き抜き方向に作用しない限り、ホルダー22にコイルスプリング24、24が保持され、図2のごとき構造となる。
【0014】
そこで、予めホルダー22にコイルスプリング24、24を、図2のごとく組み付けたものに、後からマイクロフォン素子10を組み付けて、図1のごとき構造とすることができる。本発明にあっては、従来のごとく3種類の部品を同時に組み付ける必要がなく、組み立て作業が簡単であり、量産に好適である。また、ホルダー22にコイルスプリング24、24を組み付ける作業工程と、これにマイクロフォン素子10を組み付ける作業工程を、別々の場所で時間をずらして行うことも可能である。なお、第1実施例にあっては、コイルスプリング24、24のマイクロフォン素子10側の径大部24b、24bの径が大きく設定されているので、図1のごとく組み付けられた状態において、コイルスプリング24、24は安定した姿勢が得られる。また、コイルスプリング24、24のホルダー22から外側に突出する先端部の径を小さくすることで、これらの先端部を小さな面積の被当接端子(図示せず)に、確実に当接させることができる。
【0015】
図4ないし図6は、ホルダーの貫通孔に設けられる狭窄部の変形例である。図4は、狭窄部の第1の変形例を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。図5は、狭窄部の第2の変形例を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C断面矢視図である。図6は、狭窄部の第3の変形例を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D断面矢視図である。
【0016】
図4に示す第1変形例の狭窄部32にあっては、貫通孔22a、22aの軸方向中間部に内方に凸なる断面コ字状の突部32a、32a…が周方向に均等分割位置で4つ配設されたものである。また、図5に示す第2変形例の狭窄部42にあっては、貫通孔22a、22aの軸方向中間部に内方に凸なる断面略フ字状で、コイルスプリング24、24が挿入される手前側の面を挿入先端側の径が順次に小さくなる曲面に形成したものである。曲面のテーパー状の効果により、コイルスプリング24、24の挿入が容易になるようにしたものである。曲面に代えて、円錐面としても良いことは勿論である。さらに、図6に示す第3変形例の狭窄部52にあっては、貫通孔22a、22aの軸方向中間部の内方に凸なる断面略フ字状の先端部に、挿入方向に向けて凸なる小さな円周状の係止突起52aを設けたものである。この係止突起52aが、挿入されたコイルスプリング24、24の径大部24b、24bの内周面側に位置するようにして、挿入されたコイルスプリング24、24がマイクロフォン素子10側に抜け出るのをより確実に阻止するようにしたものである。
【0017】
図7は、コイルスプリングの変形例である。第1実施例では、ホルダー22の外側に突出する先端部の径を小さくしてあるが、この変形例では、コイルスプリング24、24の先端部を径大部24b、24bと同じ径のままとしたものである。第1実施例に比較して、コイルスプリング24、24の製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のマイクロフォン装置の第1実施例の構造の縦断面図である。
【図2】図1の第1実施例においてマイクロフォン素子が組み付けられていない状態で、ホルダーでコイルスプリングを保持した状態の縦断面図である。
【図3】図1の第1実施例のホルダーに穿設される貫通孔を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【図4】狭窄部の第1の変形例を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。
【図5】狭窄部の第2の変形例を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C断面矢視図である。
【図6】狭窄部の第3の変形例を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D断面矢視図である。
【図7】コイルスプリングの変形例である。
【図8】従来のマイクロフォン装置の構造の一例の縦断面図である。
【図9】従来のマイクロフォン装置の構造の一例の組み立て前の分解した縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 マイクロフォン素子
12、22 ホルダー
12a,22a 貫通孔
14、24 コイルスプリング
22b、32、42、52 狭窄部
24a 径小部
24b 径大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集音用の表面部分を除いてマイクロフォン素子を絶縁材からなるホルダーで囲み、前記マイクロフォン素子の裏面側に設けた出力端子に一端を当接させるようにして前記ホルダーの裏面側に穿設した貫通孔に挿入貫通させて導出端子としてのコイルスプリングを配設したマイクロフォン装置において、前記ホルダーを弾性部材で形成するとともに前記貫通孔の軸方向中間部に狭窄部を設け、前記コイルスプリングの軸方向中間部に前記狭窄部よりも径の大きくない径小部を設けるとともに軸方向で前記径小部の上下に前記狭窄部よりも径が大きくしかも前記貫通孔より径の小さい径大部を設けて構成したことを特徴とするマイクロフォン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−235624(P2007−235624A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55349(P2006−55349)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】