説明

マイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面

【課題】印刷画像品質の向上が可能となり、さらに、いわゆる「白抜け」の発生が阻止されるようにする。
【解決手段】当該表面122が、少なくとも部分的に流動性の補助剤404を備えているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキを備えた被印刷物に接触するマイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面に関する。
【0002】
さらに、本発明は、印刷機胴、特に圧胴に関する。
【0003】
さらに、本発明は、印刷機、特に両面印刷に用いられる枚葉紙オフセット印刷機に関する。
【0004】
さらに、本発明は、印刷インキを備えた被印刷物に接触する、亀裂または気孔のあるマイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面に関する。
【0005】
さらに、本発明は、第1の面に印刷インキを備えた被印刷物が、第1の面で、マイクロ張出し部を有する表面に接触する印刷法に関する。
【背景技術】
【0006】
両面印刷時、すなわち、印刷機の1回の通過で被印刷物の両面に印刷を施す場合には、被印刷物が、この被印刷物の1回の反転後、すでに印刷された、場合によりまだ十分に乾燥していない面で裏面印刷ユニットの圧胴の各表面に位置することになる。裏面印刷ユニットの印刷ギャップの通過時には、被印刷物が圧力下で圧胴の各表面に圧着される。圧胴の表面によるインキ受理、表面の汚染および後続の被印刷物へのインキ逆トラッピングを回避するためには、表面が、通常、構造化され、これによって、表面の支持割合が減じられ、かつ/または表面にインキ反発性の被覆層が設けられる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4207119号明細書には、両面印刷に用いられる枚葉紙印刷機における圧胴に用いられる、枚葉紙を案内する印刷胴ジャケット異形部が記載されている。この場合、この印刷胴ジャケット異形部は、統計的に均一に分配された、逆圧面を形成する、印刷胴軸線に対して面平行にかつ印刷胴ジャケット面に対して垂直に配置された円筒状の張出し部から成っている。この場合、印刷胴ジャケット異形部は、圧胴のクロム被覆層にエッチングされていてよい。印刷胴ジャケット異形部の被覆層または液体による湿潤は提案されていない。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10209297号明細書には、枚葉紙を案内する胴のための表面が記載されている。この表面は印刷インキに接触し、この場合、汚染し得る。この場合、表面の支持層は気孔を有している。この気孔の内室には、単層状のまたは多層状の機能被覆層が達している。液状の形で塗布される機能被覆層は、乾燥および後続の熱的な後処理によって硬化させられる前に気孔内に進入する。液体による表面の付加的な湿潤は提案されていない。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許出願公告第19515393号明細書には、有利には両面印刷における印刷機胴またはそのジャケットに用いられる、被印刷物を案内する表面構造が記載されている。この表面構造は、ほぼ均一に統計的に分配された張り出された構造エレメントと、対応配置された構造谷部とを備えている。この場合、被印刷物は構造エレメントに支持される。この場合、この構造エレメント自体は、ギャップ、溝および亀裂の不均一な網状組織を形成する多数の凹部を備えて形成されており、これによって、1つの構造エレメントの各支持面が多数の小さな面から形成されており、これによって、印刷インキの付着力が低減される。表面構造の被覆層または液体による湿潤は提案されていない。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2127021号明細書には、印刷胴が記載されている。この印刷胴は反転装置に続いている。印刷胴の各表面はインキ反発性の層を備えている。この場合、このインキ反発性の層として水分膜が提案される。この水分膜は、湿気を帯びた供給された空気から印刷胴の表面に沈積させられる。印刷胴の表面の構造化、特にマイクロ構造化は提案されていない。
【0011】
ヨーロッパ特許第0873867号明細書には、片面印刷機械が記載されている。この片面印刷機械では、片面印刷法で印刷を被る枚葉紙の反対面へのラッカ塗布が、ラッカ胴/圧胴の表面を介して全面にわたってまたは部分的に行われる。所定の片面印刷機械が記載されているので、ラッカ胴/圧胴の表面に対するインキ付着の問題は存在せず、相応して、これに関する対応措置も提案されていない。
【0012】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10227758号明細書には、被覆ユニットを備えた枚葉紙輪転印刷機が記載されている。被覆ユニットは、強くインキ反発性の被覆液を圧胴の表面に塗布する。この場合、被覆液は乾燥によって定着させられ、定着させられた状態で、インキ反発性のかつ/または摩耗を阻止する不動の層を形成する。被覆層の消耗時には、被覆ユニットによって繰返しの被覆が実施され得る。しかし、圧胴の、構造化された表面、特にマイクロ構造化された表面は提案されていない。液体による表面の付加的に湿潤も提案されていない。
【0013】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19716424号明細書には、反転装置の後方に配置された、ジャケット面を備えた胴が記されている。ジャケット面は不動のシリコーンゴム層を有している。このシリコーンゴム層は、中断されていない一貫して延びる面として形成されている。シリコーンゴム層によって、胴の表面へのインキの付着が回避される。胴の表面または被着された層の構造化、特にマイクロ構造化も、液体による湿潤も提案されていない。
【0014】
公知先行技術の解決手段も常に満足のいく印刷品質を保証しておらず、特にいわゆる「白抜け」(図3および所属の説明参照)の発生を阻止することが重要であるので、被印刷物を案内する改善された表面に向けられた願望が変わらず存在している。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4207119号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10209297号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公告第19515393号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許出願公開第2127021号明細書
【特許文献5】ヨーロッパ特許第0873867号明細書
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10227758号明細書
【特許文献7】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19716424号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の課題は、被印刷物を案内する表面を改良して、印刷画像品質の向上が可能となるようにすることである。
【0016】
本発明の別のまたは択一的な課題は、被印刷物を案内する表面を改良して、いわゆる「白抜け」の発生が阻止されるようにすることである。
【0017】
本発明の別の課題は、印刷法を改良して、印刷画像品質の向上を生ぜしめることが可能となり、特にいわゆる「白抜け」の発生を生ぜしめないことが可能となるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題を解決するために本発明の第1の構成では、当該表面が、少なくとも部分的に流動性の補助剤を備えているようにした。
【0019】
さらに、前記課題を解決するために本発明の印刷機胴では、被印刷物を案内する前記表面が設けられているようにした。
【0020】
さらに、前記課題を解決するために本発明の印刷機では、被印刷物を案内する前記表面が設けられているようにした。
【0021】
さらに、前記課題を解決するために本発明の第2の構成では、当該表面が、流動性の補助剤を被印刷物に塗布するために使用されるようになっているようにした。
【0022】
さらに、前記課題を解決するために本発明の印刷法では、表面に流動性の補助剤を塗布するようにした。
【0023】
本発明の別の有利な構成および実施態様は、従属請求項に記載してある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、マイクロ張出し部と流動性の補助剤とが設けられている。これによって、有利には、印刷画像品質が向上し、特にいわゆる「白抜け」の発生が阻止される。マイクロ張出し部によって発生させられる、いわゆる「白抜け」は、流動性の補助剤もしくは流動性の補助剤の作用によって再び閉鎖され、これによって、印刷画像内に目では見えなくなる。したがって、マイクロ張出し部と補助剤との協働によって、マイクロ張出し部を設けたにもかかわらず、いわゆる「白抜け」を回避することができるという驚くべき結果が得られる。
【0025】
マイクロ張出し部を設けることによって、一方では、表面の支持割合が低減され、他方では、被印刷物の案内、特に表面に対する相対運動の阻止に役立つマイクロ表面粗さが提供される。被印刷物に接触するマイクロ張出し部は被印刷物に侵入することもできるし、被印刷物を貫通することもでき、したがって、形状接続を形成することができる。これによって、被印刷物がより良好に案内され、印刷された画像の損傷に通じ得る、表面に対する相対運動がより良好に阻止される。
【0026】
流動性の補助剤を表面に設けることによって、有利には、本発明の使用なしでは、いわゆる「白抜け」が発生する恐れがある各箇所での印刷インキの溶合いが促進される。言い換えると、流動性の補助剤が、少なくともマイクロ張出し部と被印刷物との接触箇所で被印刷物に転移され、そこで、いわゆる「白抜け」の閉鎖を生ぜしめる。
【0027】
流動性の補助剤は、流動性の状態で塗布することができ、表面に、有利には流動性の状態で残される。すなわち、有利には、表面で硬化しない補助剤である。たとえば所定の液体が塗布され、この液体が表面に液状の状態で残される。この状態では、液体は被印刷物にも到達する。言い換えると、液状の補助剤は少なくとも表面への塗布によって被印刷物への転移に至るまで液状で残される。
【0028】
被印刷物を案内する本発明による表面の、印刷画像品質の向上に関して最適化された構成では、主として、マイクロ張出し部の円頂部しか、流動性の補助剤を備えていない。こうして、被印刷物の、本発明の使用なしでは、いわゆる「白抜け」を形成する恐れがある各箇所に適切に流動性の補助剤が到達する。さらに、有利には、いわゆる「白抜け」の回避のために必ず必要となるよりも多くの流動性の補助剤が被印刷物の表面印刷面に到達することが回避される。こうして、印刷画像品質のさらなる向上を達成することができる。
【0029】
印刷画像品質の向上に関して最適化された、被印刷物を案内する別の表面は、少なくとも幾つかの円頂部が、少なくとも1つの各凹部を有しており、該各凹部が、流動性の補助剤を収容する、すなわち、少なくとも短期間蓄えかつ少なくとも部分的に被印刷物に放出するリザーバとして形成されていることによって特徴付けられている。凹部を設けることによって、マイクロ張出し部の円頂部への流動性の補助剤の供給および収容もしくは蓄えを一層改善することができ、さらに、被印刷物の表面印刷面への所望の量での流動性の補助剤の適切な転移を達成することができる。
【0030】
本発明の別の構成によれば、流動性の補助剤が、液状の補助剤、特に印刷インキ、ラッカまたは湿し媒体と異なる補助剤であり、該補助剤が、印刷インキを希釈しかつ/または印刷インキの乾燥を遅らせかつ/または延長するようになっていてよい。印刷インキの希釈または乾燥に関する前述した作用を有する、本発明により使用される流動性の補助剤は、有利には、印刷インキの溶合いひいては、いわゆる「白抜け」の発生の阻止および/または閉鎖を助成する。
【0031】
印刷画像品質の向上に関して最適化された、被印刷物を案内する別の表面は、当該表面が、少なくとも部分的に、特にマイクロ張出し部の間にインキ反発性の被覆層を備えていることによって特徴付けられている。このインキ反発性の被覆層を本発明により設けることによって、有利には、印刷インキが被印刷物の表面印刷面から表面に付着し、後続の被印刷物への逆トラッピングによる印刷画像品質の低下を生ぜしめることを阻止することができる。さらに、マイクロ張出し部の間のインキ反発性の被覆層は、流動性の補助剤がインキに類似の特性を有している限り、流動性の補助剤の適切な塗布をマイクロ張出し部の円頂部の領域でのみ助成し、これによって、流動性の補助剤の塗布が円頂部の領域でのみ簡単になる。
【0032】
印刷機胴、特に圧胴だけでなく、印刷機、特に両面印刷に用いられる枚葉紙オフセット印刷機も、本発明に関して上述したような、被印刷物を案内する表面によって特徴付けることができる。
【0033】
さらに、本発明によれば、印刷インキを備えた被印刷物に接触する、亀裂または気孔のあるマイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面が、流動性の補助剤を被印刷物に塗布するために使用される。この場合、マイクロ張出し部に設けられた亀裂または気孔は、有利には、流動性の補助剤のためのリザーバとして働くことができ、したがって、被印刷物の表面印刷面への所望の量での流動性の補助剤の適切な転移を助成することができる。
【0034】
第1の面に印刷インキを備えた被印刷物が、第1の面で、マイクロ張出し部を有する表面に接触する本発明による印刷法は、表面に流動性の補助剤を塗布することによって特徴付けられている。
【0035】
本発明による印刷法によって、被印刷物を案内する本発明による表面に関して上述したような利点が得られる。
【0036】
本発明による印刷法の有利な実施態様によれば、流動性の補助剤を、主として、マイクロ張出し部の円頂部にのみ塗布する。これによって、やはり流動性の補助剤の適切な転移が、被印刷物に対する表面の、問題となる接触箇所でのみ可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0038】
図1には、1つの枚葉紙給紙装置102と、4つのオフセット印刷ユニット104,106,108,110と、1つの枚葉紙排紙装置112とを備えた枚葉紙オフセット印刷機100が示してある。この印刷機100は両面印刷モードで運転することができる。すなわち、最初の両印刷ユニット104,106が被印刷枚葉紙114の第1の面に印刷を施し、後続の両印刷ユニット108,110が被印刷物114の第2の面に印刷を施す。このためには、被印刷物114が反転装置116によって反転される。
【0039】
この反転装置116に後置された両圧胴118,120には、被印刷物114が、すでに印刷された第1の面で位置することになり、圧力下で印刷ユニット108,110の各印刷ギャップを通過する。圧胴118,120の、被印刷物を案内する各表面におけるインキ付着とインキ堆積とを阻止しかつ被印刷物114と、圧胴の、被印刷物を案内する各表面との間の相対運動を阻止するためには、これらの胴が、マイクロ粗さのインキ反発性の表面122を備えている。この表面122は、有利には1つまたはそれ以上の各胴ジャケットによって形成することができる。
【0040】
図2には、被印刷物を案内する表面122が示してある。この表面122は、約0.24mm〜約0.27mmの厚さを備えた、たとえばステンレス性の鋼薄板から成る支持体200を有している。この支持体200は、マイクロ構造を有するマイクロ粗さの被覆層202、特にアルミニウムまたはチタンから成る、たとえばプラズマ溶射された酸化物セラミックス層を備えている。マイクロ粗さの被覆層202は、インキ反発性の被覆層204、たとえばシリコーンを少なくともマイクロ粗さの被覆層202の凹部内に備えている。
【0041】
被印刷物114は搬送の間、すなわち、圧胴118,120の回転の間、被印刷物を案内する表面122によって案内される。この場合、マイクロ張出し部206が、枚葉紙114と、被印刷物を案内する表面122との間の相対運動ひいては表面印刷画像の損傷を阻止する。
【0042】
図3には、印刷製品のフルトーン面300が拡大して示してある。このフルトーン面300には、小さな明るい箇所302を認めることができる。この箇所302は印刷画像を乱しかつ印刷品質に損害を与え得る。明るい箇所302(いわゆる「白抜け」)は、マイクロ張出し部206と被印刷物114との接触によって発生する。この場合、インキが接触箇所で被印刷物114から解離する。したがって、全くインキを有していないかまたは周辺の領域よりも少ないインキを有する明るい箇所302が、被印刷物114とマイクロ粗さの表面122との接触箇所に発生する。
【0043】
図4には、図2に示した部分Aが拡大して示してある。支持体200には、マイクロ粗さの被覆層202が被着されている。このマイクロ粗さの被覆層の厚さは、有利には約40μm〜70μmの間の範囲内にある。マイクロ粗さの被覆層はマイクロ張出し部を有している。このマイクロ張出し部は平均して約5μm〜約30μmの範囲内の高さを有している。マイクロ粗さの被覆層の表面粗さ(すなわちRZ値)は、有利には約20μm〜約40μmの範囲内にある。マイクロ張出し部の直径は、有利には約10μm〜約50μmの範囲内にある。
【0044】
図4には、どのようにしてマイクロ張出し部206が、印刷インキ400を備えた被印刷物114に押し込まれ、被印刷物114を表面122から取り除いた後に明るい箇所302、いわゆる「白抜け」を表面印刷画像に生ぜしめる凹部402を形成し得るのかを認めることができる。
【0045】
マイクロ粗さの被覆層202に設けられたインキ反発性の被覆層204は、少なくともマイクロ張出し部206の間の領域での、被印刷物を案内する表面122によるインキ受理を阻止する。この場合、僅かな高さのマイクロ張出し部は、インキ反発性の被覆層204によってカバーされていてよい。
【0046】
表面印刷画像の損傷を阻止し、特に明るい箇所302の発生を阻止するために、本発明によれば、被印刷物を案内する表面122が少なくとも部分的に流動性の補助剤404を備えていて、たとえばローラ塗布または噴霧によって湿潤されることが提案されている。
【0047】
図1に示したように、流動性の補助剤404を、被印刷物を案内する表面122に塗布するためには、塗布装置124が使用される。この塗布装置124は流動性の補助剤404を所望の量でかつ所望の箇所で、被印刷物を案内する表面122に塗布する。塗布装置124は、図示のように、塗布ローラ126を有している。塗布は、有利には各被印刷枚葉紙の前方で、この被印刷枚葉紙が、被印刷物を案内する表面122に位置することになる前に永続的にまたはタイミング制御して行われ得る。さらに、塗布ローラ126は掻落しにより汚れ除去することができるかまたは洗浄することができる。択一的には、たとえば永続的に制御されるかまたはタイミング制御される噴霧装置が設けられていてもよい。
【0048】
流動性の補助剤404は、たとえばインキ希釈性の液体および/またはインキ乾燥を遅らせかつ/または延長する液体であってよい。択一的には、印刷インキであってもよい。
【0049】
インキ希釈性の液体として、たとえば、通常、印刷インキの粘着性を低下させるために使用される液体(たとえば「Schmidt Druckfarben」兄弟社の製品Paste900)または圧油が適している。インキ乾燥を遅らせかつ/または延長する液体として、たとえば油が適しているものの、疎油性の液体も適している。
【0050】
流動性の補助剤404は、本発明によれば、少なくともマイクロ張出し部206の接触箇所での、被印刷物を案内する表面122からの転移によって被印刷物114の表面に到達し、有利には、明るい箇所302の発生を阻止する。流動性の補助剤404の、インキ希釈性のかつ/またはインキ乾燥を延長しかつ/または遅らせる作用は、被印刷物を案内する表面122からの枚葉紙114の分離時にまたは分離後にかつまだ印刷インキ400の乾燥前に再び接触箇所を印刷インキで充填することができ、したがって、明るい箇所302の発生を有効に阻止することができることによって達成される。言い換えると、明るい箇所302は、希釈されたかまたはインキ乾燥に関して変化させられた印刷インキの溶合いによって再閉鎖される。
【0051】
弾性的な塗布ローラ126の使用時には、圧胴118;120に対する圧力の適切な調整によって、流動性の補助剤404が、マイクロ張出し部206の円頂部406(載着点または載着面)しか湿潤せず、こうして、適切に被印刷物114に対するマイクロ張出し部206の接触箇所にもたらされることを達成することができる。流動性の補助剤404がインキに類似の組成を有している限り、この補助剤404はインキ反発性の被覆層204によって受理されない。このことは、マイクロ張出し部206の適切な湿潤を助成する。
【0052】
有利には、圧力は、マイクロ張出し部が、主として、印刷過程の間に被印刷物に押し込まれるのと同程度に塗布ローラ124の弾性的な表面に押し込まれるように選択される。
【0053】
図5には、被印刷物を案内する本発明による表面122の別の構成が示してある。この場合、マイクロ張出し部の円頂部は除去加工されているかまたは凹部として形成されている。マイクロ張出し部500は、除去加工された円頂部ひいてはほぼ平らな載着面502を有している。この載着面502は流動性の補助剤404を備えている。これに対して、マイクロ張出し部504は円頂部の領域に凹部506を有している。この凹部506は流動性の補助剤404を備えていて、ある程度、流動性の補助剤404のためのリザーバとして形成されている。凹部は、製作プロセスで生ぜしめられる1つもしくはそれ以上の亀裂または気孔としてマイクロ張出し部504の円頂部の領域に設けることができる。
【0054】
択一的には、凹部506がマイクロ張出し部504に加工されてもよい。このためには、被印刷物を案内する表面122が、同じくマイクロ粗さの対向表面に向かって押圧され得る。しかし、この対向表面は、単位面積あたり、より大きな数のマイクロ張出し部と、より大きな硬さとを有しており、これによって、対向表面のマイクロ張出し部が、被印刷物を案内する表面122のマイクロ張出し部に成形加工される。
【0055】
図6には、本発明による印刷機の、図1に示した構成に対して択一的な構成が示してある。塗布装置124は、この構成では、有利には簡単なインキ・湿し装置600と、ゴムブランケット胴602と、版胴604とを有している。このような塗布装置は、全面にわたるインキ塗布または部分面にわたるインキ塗布(たとえばフルトーン面の範囲内でのみ)または画像に関連したインキ塗布すら生ぜしめることができる。ゴムブランケット胴602と圧胴118との間の圧力を介して、インキ塗布を、圧胴の、被印刷物を案内する表面のマイクロ張出し部の円頂部の領域でのみ達成することができる。塗布装置124は、一色のインキだけでなく、複数のインキ装置と版胴との使用時には、多色のインキも塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による印刷機を示す図である。
【図2】被印刷物を案内する本発明による表面を示す図である。
【図3】いわゆる「白抜け」を備えたフルトーン面の拡大図である。
【図4】図2に示した、被印刷物を案内する本発明による表面の部分Aの拡大図である。
【図5】被印刷物を案内する本発明による表面の別の構成の拡大図である。
【図6】本発明による印刷機の別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100 枚葉紙オフセット印刷機、 102 枚葉紙給紙装置、 104,106,108,110 オフセット印刷ユニット、 112 枚葉紙排紙装置、 114 被印刷物、 116 反転装置、 118,120 圧胴、 122 表面、 124 塗布装置、 126 塗布ローラ、 200 支持体、 202 被覆層、 204 被覆層、 206 マイクロ張出し部、 300 フルトーン面、 302 箇所、 400 印刷インキ、 402 凹部、 404 補助剤、 406 円頂部、 500 マイクロ張出し部、 502 載着面、 504 マイクロ張出し部、 506 凹部、 600 インキ・湿し装置、 602 ゴムブランケット胴、 604 版胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷インキを備えた被印刷物(114)に接触するマイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面において、
当該表面(122)が、少なくとも部分的に流動性の補助剤(404)を備えていることを特徴とする、マイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面。
【請求項2】
主として、マイクロ張出し部(206)の円頂部(406)しか、流動性の補助剤(404)を備えていない、請求項1記載の表面。
【請求項3】
少なくとも幾つかの円頂部(406)が、少なくとも1つの各凹部(506)を有しており、該各凹部(506)が、流動性の補助剤(404)を収容するリザーバとして形成されている、請求項1記載の表面。
【請求項4】
流動性の補助剤(404)が、液状の補助剤、特に印刷インキ、ラッカまたは湿し媒体と異なる補助剤であり、該補助剤が、印刷インキを希釈しかつ/または印刷インキの乾燥を遅らせかつ/または延長するようになっている、請求項1記載の表面。
【請求項5】
当該表面(122)が、少なくとも部分的に、特にマイクロ張出し部(206)の間にインキ反発性の被覆層(204)を備えている、請求項1記載の表面。
【請求項6】
印刷機胴、特に圧胴において、
請求項1から5までのいずれか1項記載の、被印刷物を案内する表面(122)が設けられていることを特徴とする、印刷機胴。
【請求項7】
印刷機、特に両面印刷に用いられる枚葉紙オフセット印刷機において、
請求項1から5までのいずれか1項記載の、被印刷物を案内する表面(122)が設けられていることを特徴とする、印刷機。
【請求項8】
印刷インキを備えた被印刷物(114)に接触する、亀裂または気孔のあるマイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面において、当該表面が、流動性の補助剤(404)を被印刷物(114)に塗布するために使用されるようになっていることを特徴とする、マイクロ張出し部を備えた、被印刷物を案内する表面。
【請求項9】
第1の面に印刷インキを備えた被印刷物(114)が、第1の面で、マイクロ張出し部(206)を有する表面(122)に接触する印刷法において、
表面(122)に流動性の補助剤(404)を塗布することを特徴とする、印刷法。
【請求項10】
流動性の補助剤(404)を、主として、マイクロ張出し部(206)の円頂部にのみ塗布する、請求項9記載の印刷法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−6608(P2008−6608A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176797(P2006−176797)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】