説明

マイクロ波伝送線路

【目的】 マイクロ波伝送線路において、複数の入力伝送線路上に配設するスイッチング素子の損失を小さくし効率良く出力伝送線路に伝える。
【構成】 複数のマイクロ波入力伝送線路4,5から接合点8を介して一つの出力伝送線路9に接続し、該出力伝送線路に増幅回路11を設け、該増幅回路前段のそれぞれの入力伝送線路4,5から分岐したオフライン上にスイッチング素子20,21を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマイクロ波伝送線路の改良技術に関するものであり、具体的には衛星通信、衛星放送の偏波を受信するアンテナに接続するコンバータ内の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から衛星通信や衛星放送に使用される右旋円偏波または左旋円偏波もしくは水平偏波または垂直偏波を入力する入力伝送線路上にスイッチング素子を兼ねた増幅器を設け、該複数の入力伝送線路の接合点に接続した一つの出力伝送線路上に増幅器を設けた技術は公知となっているのである。例えば、特開平2−63201号公報の技術である。
【0003】該従来の技術は図2に示すように、複数の入力伝送線路22・23上にそれぞれスイッチング素子を兼ねた増幅素子であるFET24・25が設けられ、該FET24・25にはバイアス回路26・27・28・29が接続されている。即ち、アンテナからの入力信号はバイアス回路26・27を介してFET24・25のゲートGに入力され、FETのソースSはアースされ、ドレインDはバイアス回路28・29と接続している。そしてバイアス回路28・29から接続点30を介して出力伝送線路31と接続し、該出力伝送線路31上に増幅器32が設けられて二段目の増幅が行われる構成としているのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような構成において、複数の入力伝送線路上のバイアス回路26・27はスイッチング回路として一つのFETのゲートGに信号を入力するとFETがONして増幅され、その出力信号は出力伝送線路31上の増幅器32にて二段目の増幅が行われ、後段の周波数変換回路へ出力されるのである。このように従来では、それぞれの入力伝送線路上にスイッチング素子と増幅器が少なくとも一つずつ必要であり、部品点数の増加を招き、しかもこれらの素子は主線路上にあるのでマイクロ波を伝送するものであるから雑音指数の(損失)の小さい素子を使用しなければならず、大変高価な素子となり、コスト高となってしまうのである。そして、入力信号はスイッチング素子、増幅器を経て伝送されるので、その素子毎に損失(雑音)が大きくなるのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような点に鑑み、スイッチング素子上において損失がないように、複数のマイクロ波入力伝送線路から接合点を介して一つの出力伝送線路に接続し、該出力伝送線路に増幅回路を設け、前記増幅回路前段のそれぞれの入力伝送線路から分岐したオフライン上にスイッチング素子を設けたものである。
【0006】
【作用】衛星通信のアンテナからの入力信号は、一側の入力伝送線路に接続したスイッチング素子がONとした場合、入力伝送線路から接合点を経て出力伝送線路上の増幅回路に損失なく送られ、増幅された信号は周波数変換回路、チューナーへと伝送されるのである。そして他側のスイッチング素子はOFFとされ、入力信号はアースされて接合点まで伝送されないのである。
【0007】
【実施例】本発明が解決しようとする課題及び解決するための手段は以上の如くであり、次に添付の図面に示した実施例の構成を説明すると、図1は本発明のマイクロ波伝送線路の回路図、図3は衛星放送の受信ブロック図である。図3において衛星放送の受信の場合について説明すると、アンテナ1には衛星放送の直線偏波または円偏波が受信可能であり、直線偏波の受信の場合には水平偏波と直線偏波があり、例えば水平偏波を給電部に設けたプローブ2に受信され、該プローブ2は入力伝送線路4に接続され、垂直偏波は給電部に設けたプローブ3に受信され、該プローブ3は入力伝送線路5に接続され、該入力伝送線路4・5には分岐してそれぞれスイッチング素子6・7が接続され、入力伝送線路4・5端は接合点8に接続され、一つの出力伝送線路9に接続されている。該出力伝送路9上には増幅器11が配設され、該増幅器11に周波数変換器12が接続されて周波数変換されて、同軸ケーブル13を介してチューナー14にて検波されてチャンネルを選択してテレビセット15にて映し出されスピーカーから音声が発せられるのである。
【0008】前記入力伝送線路4・5において、接合点8から見たインピーダンスZinは数1で表すことができる。例えば図3のように入力伝送線路4に信号が送られてくると、入力信号は接合点8でそのまま出力伝送線路9へ伝わる成分と反射して入力伝送線路5へ伝わる成分とができる。この場合入力伝送線路5において適当なインピーダンスに設定しておかないと反射を繰り返し出力伝送線路9に悪影響を与えてしまい映像等が乱れてしまうのである。そこで、接合点8から各スイッチング素子までの長さLをλg/4として、スイッチング素子7をアース(ZL =0)すると、それぞれ数1に代入するとZinは無限大(Zin=∞)となり、反射されずに整合がとれるのである。また、スイッチング素子6をONした場合、ZLは無限大となり、L=λg/4を数1に代入すると、Zinはゼロとなり損失無く伝送されるのである。
【0009】
【数1】


【0010】このようなインピーダンス特性に構成しておいて、スイッチング素子6・7を図1の如くFET20・21に置き換えて、該FET20・21のドレインD1・D2を入力伝送線路4・5から分岐して接続(並列接続)し、ソースS1・S2をアースと接続すると、FET20のゲートG1にバイアス電圧を印加しない状態では、FET20はオープンの状態となり図3のスイッチング素子6の如くON状態となり、アンテナ1からの信号は接合点8へ伝送される。FET21のゲートG2にバイアス電圧を印加する状態では、FET21は短絡状態となり、入力伝送線路5は見掛け上インピーダンスZinが無限大となり、図3のスイッチング素子7の如くOFF状態となり、アンテナ1からの信号はアース側へ伝送され、接合点8での反射もないのである。そして、出力伝送線路9上に増幅器11が設けられており、この増幅器11はFETだけでなくトランジスタ等であっても構わない。尚、増幅器11においては数段増幅するものであり、またスイッチング素子、増幅素子であるFETは高電子移動度トランジスタ(HEMT)であっても構わない。
【0011】このような構成において、水平偏波を受信して衛星放送を見る場合には、FET20のゲートG1をオープンとし、FET21のゲートG2にバイアス電圧を印加すれば、入力伝送線路4上のスイッチング素子はONとなり、入力伝送線路5上のFET21は導通してアースされスイッチング素子はOFFとなり、垂直偏波信号は接合点8まで至らず、水平偏波信号が入力伝送線路4上で損失なく接合点8に至り、出力伝送線路9上の増幅器11により増幅されて、周波数変換器12へ出力されるのである。逆に、垂直偏波を受信して衛星放送を見る場合には、FET21のゲートG2をオープンとし、FET20のゲートG1にバイアス電圧を印加すれば、入力伝送線路5上のスイッチング素子はONとなり、入力伝送線路5上のスイッチング素子はOFFとなり、水平偏波信号は接合点8まで至らず、垂直偏波信号は入力伝送線路5上で損失なく接合点8に至り、出力伝送線路9上の増幅器11により増幅されて、周波数変換器12へ出力されるのである。
【0012】
【発明の効果】以上のように構成したので、入力伝送線路上には増幅器やスイッチング素子が直列に接続されない、即ち、主線路上にない構成となるので、入力伝送線路上での損失がなく出力伝送線路上の増幅器に信号を伝えることができるようになり、直列に接続する高価な増幅器を必要としなくなり、伝送線路上にはOFFラインでスイッチング素子を接続するので安価なスイッチング素子でよく、部品点数も減少でき、省スペースとなりコンバーターをコンパクトに構成できるようになったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマイクロ波伝送線路の回路図である。
【図2】従来のマイクロ波伝送線路の回路図である。
【図3】衛星放送の受信ブロック図である。
【符号の説明】
4・5 入力伝送線路
6・7 スイッチング素子
8 接合点
9 出力伝送線路
11 増幅器
20・21 FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のマイクロ波入力伝送線路から接合点を介して一つの出力伝送線路に接続し、該出力伝送線路に増幅回路を設け、該増幅回路前段のそれぞれの入力伝送線路から分岐したオフライン上にスイッチング素子を設けたことを特徴とするマイクロ波伝送線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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