説明

マイクロ波加熱装置、及びこれを用いた画像定着装置

【課題】簡易な構成によって、加熱ムラの発生の抑制を可能にして加熱効率を高めたマイクロ波加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱室5は、導電性材料で構成された障壁部によって複数の空間(11,12,13)に分割されている。少なくとも一以外の空間内(12,13)には、終端部5aの位置に、方向d2に係る長さが相互に異なる、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成された移相器31,32が挿入されることで、各空間内に形成される定在波W1,W2,W3の節の方向d2に係る位置が相互に異なる。また、少なくとも一以外の空間内には、前記被加熱体の通過領域よりも上流側の位置に、加熱室5の入口から終端部5aまでの移相器31,32を含めた各空間のインピーダンスの差異を減少させるように、方向d2に係る長さが相互に異なる、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成されたインピーダンス調整器33,34が挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱効率を高めたマイクロ波加熱装置に関する。また、本発明は、このような加熱効率を高めたマイクロ波加熱装置を現像剤(トナー)定着に利用した画像定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像定着装置においては、トナー材料を用紙(被印刷物)に定着させることで画像を用紙上に定着させる。従来の画像定着装置では、定着用ローラによって用紙に対して熱又は圧力を加えることで、用紙上にトナーの定着を行っている。
【0003】
しかし、かかる従来構成においては、経年による定着用ローラの摩耗という問題があり、かかる問題を解消するための一つの方法として、マイクロ波を用いた非接触によるトナー定着方法の開発が近年行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図16A及び図16Bは、特許文献1に開示されたマイクロ波装置の構成を示す概念図である。
【0005】
図16Aに示すように、マイクロ波装置100は、マイクロ波を発生させるマグネトロン110,マグネトロン110から発生されたマイクロ波を共振器チャンバ103に入力結合する入力結合変換器113,貯水庫111及びサーキュレータ112を設けている。入力結合変換器113と共振器チャンバ103の間には絞りを備えた結合開口114が位置している。共振器チャンバ103の側面109には、用紙101を通過案内するための通過部107を有している。共振器チャンバ103の下流側には金属からなる終端スライダ115が位置しており、終端スライダ115は共振器チャンバ103に対して水平な方向で可動であり、共振器チャンバ103内に達している。
【0006】
図16Bは、共振器チャンバ103部分の概略斜視図である。マグネトロン110より発生されたマイクロ波が、共振器チャンバ103内に導かれる。図16Bには、概略的に正弦波の形で図示されている。
【0007】
共振器チャンバ103には、互いに対向する両側面109及び109’に、夫々一つの通過部107,107’が設けられている。用紙101は、通過部107’を通過して共振器チャンバ103内に導かれ、対向する位置に設けられた通過部107を通して排出される。用紙101の移動方向が矢印にて図示されている。
【0008】
通過部107,107’内には、移動可能なエレメント104が設けられている。エレメント104はテフロン(登録商標)という商品名で知られるポリテトラフルロエチレン(PTFE)からなるバーであって、共振器チャンバ103内に達している。
【0009】
特許文献1においては、このエレメント104の位置を共振器チャンバ103内の長手方向に移動可能に構成されている。このエレメント104の位置を移動させて、共振器チャンバ103内の共振条件を調整することで、用紙101によるマイクロ波の吸収を高めることができる。
【0010】
また、インクジェットプリンターにおいて、メディアに吐出されたインクを乾燥するのにマイクロ波を利用した技術が特許文献2に開示されている。
【0011】
特許文献2では、中央部でU字状に屈曲した2段形状の導波管を用い、終端部において、供給されるマイクロ波の波長λの1/2の範囲内でスライド可能な反射終端部材を備える構成である。
【0012】
通常、導波管内に形成される定在波はλ/2の周期で形成されるため、位置に応じて加熱ムラが生じる。しかし、特許文献2の構成によれば、反射終端部材を移動させることで、定在波のエネルギーのピーク位置をλ/2の範囲内で移動させることができる。これにより、導波管内の任意の位置におけるマイクロ波のエネルギーを平均化することができ、インクの乾燥ムラを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−295692号公報
【特許文献2】特開2010−089351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1の技術では、入力結合変換器113と共振器チャンバ103との間に絞りを備えた結合開口114を設けることで、共振器チャンバ103内に定在波を形成させている。しかし、絞り部分の側面は斜度を有しているため、かかる側面でマイクロ波の反射が生じ、これによって伝送効率が低下していることが分かった。つまり、高いエネルギー量のマイクロ波をチャンバ内に導くためには、更に高いマイクロ波エネルギーをマグネトロンより発生させなければならず、消費エネルギーの面で問題を有していた。
【0015】
紙をマイクロ波に晒すと紙の温度が上昇することはマイクロ波の分野においては公知である。しかし、例えばプリンタやコピー機のように、極めて短時間の間にトナーを紙の上に定着させる必要がある用途において、当該短時間の間にトナーを定着させ得るだけの温度上昇を可能にする手法は、現時点で確立されているとはいえない。例えば、マイクロ波を利用して加熱を行う電子機器の代表例として電子レンジが知られているが、電子レンジに紙を入れて1秒〜数秒程度マイクロ波を当てたとしても、かかる紙を100℃以上温度上昇させることはできない。
【0016】
特許文献1の技術においても、極めて短時間の間にトナーを定着させることは困難であり、また、当該技術を利用して定着時間を短縮させるためには、極めて高いマイクロ波エネルギーをマグネトロンより発生させなければならない。
【0017】
また、特許文献2においては、U字に屈曲させた特殊な導波管が必要となる。そして、この屈曲部の形成に際しては、放出されるマイクロ波の出力が抑制されることのないようにする必要があるところ、精緻な製造過程が要求される。このため、大量生産には不向きであり、製造コストも大きくなることが想定される。
【0018】
マイクロ波による定在波を用いて加熱を行う場合、上述したように定在波のエネルギーの腹(ピーク)の位置と、節(ボトム)の位置で加熱ムラが生じてしまう。本発明は、できるだけ簡易な構成によって、かかる加熱ムラの発生の抑制を可能にして加熱効率を高めたマイクロ波加熱装置を提供することを目的とする。また、本発明は、かかるマイクロ波加熱装置を現像剤定着に利用することで、加熱効率の高い非接触型の画像定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成すべく、本発明に係るマイクロ波加熱装置は、
マイクロ波を出力するマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波が導かれ、前記マイクロ波の進入方向の終端部が短絡されている導電性の加熱室と、を有し、
前記加熱室は、導電性材料で構成された障壁部によって前記進入方向に沿って前記終端部に達する位置まで複数の空間に分割されると共に、当該加熱室の内部を被加熱体が前記マイクロ波の進入方向とは非平行方向の向きに通過するための開口部を有し、
複数の前記空間のうち、少なくとも一以外の空間内には、前記終端部の位置に、前記進入方向に係る長さが相互に異なる、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成された移相器が前記マイクロ波発生部の方向に向かって挿入されることで、前記各空間内に形成される定在波の節の前記進入方向に係る位置が相互に異なり、
複数の前記空間のうち、少なくとも一以外の空間内には、前記被加熱体の通過領域よりも上流側の位置に、前記マイクロ波が進入する前記加熱室の入口から前記終端部までの前記移相器を含めた前記各空間のインピーダンスの差異を減少させるように、前記進入方向に係る長さが相互に異なる、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成されたインピーダンス調整器が挿入され、
前記マイクロ波発生部のマイクロ波出力端から前記加熱室の終端部までの間は、前記被加熱体を通過させるための前記開口部の部分を除いて導電性材料で構成された筒状の導波管で連結されていることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、各空間内に形成される定在波の位相をマイクロ波の進入方向にずらすことができるため、各定在波の節の位置及び腹の位置を相互にずらすことができる。よって、例えば被加熱体が一の空間を通過する際において、当該空間内に存在する定在波の節の位置を通過することで十分な加熱が行えない場合であっても、他の空間を通過する際には、当該位置に定在波の節が形成されているということがない。つまり、全空間を通過した段階においては、被加熱体のあらゆる箇所において、高いエネルギー量を有する定在波が形成されている位置を通過していることとなる。
【0021】
また、本構成では、移相器を挿入したことによる各空間内のインピーダンスの差異を減少させるように、インピーダンス調整器を挿入している。これにより、各空間内に進入するマイクロ波のエネルギー量に大きな差異が生じるということがない。
【0022】
この結果、各空間内に形成される定在波につき、ほぼ同等のエネルギー量(電界強度)を有した状態で、位相のみをずらすことが可能となる。これにより、加熱効率を向上させることができる。また、加熱室を複数の空間に分割して、移相器及びインピーダンス調整器を各空間内に挿入するのみでよく、非常に簡易な構成によって加熱効率の向上が実現できる。
【0023】
また、前記空間の数をN(Nは2以上の自然数)とし、前記加熱室を構成する前記導波管内に形成される定在波の管内波長をλgとした場合に、前記各空間内に形成される定在波の節の前記進入方向に係る位置が相互にλg/(2N)ずれるように、位相器の外形を決定するのが好ましい。
【0024】
このとき、各空間内の定在波の節の位置を最も均一にずらすことができ、加熱ムラを最も解消することができる。
【0025】
更に、前記移相器を構成する誘電体内に形成される定在波の管内波長をλg’とした場合において、前記各空間内に挿入される前記位相器の前記進入方向に係る長さをいずれもλg’/2の整数倍とするのが好適である。
【0026】
かかる構成としたとき、各空間には、移相器のマイクロ波発生部側の端面位置に定在波の節が形成される。なお、移相器を挿入しない空間においては、終端部に定在波の節が形成される。この方法により、定在波の節の位置を各空間毎に意図的にずらすことができる。
【0027】
また、前記移相器と前記インピーダンス調整器を同一の材料で構成し、前記加熱室の入口から前記終端部までの前記各空間内に存在する前記移相器及び前記インピーダンス調整器の前記進入方向に係る長さの合計値を相互に一致させるのが好ましい。
【0028】
このようにすることで、各空間のインピーダンスを容易に均一化することができる。
【0029】
また、上記構成において、前記移相器及び前記インピーダンス調整器を高密度ポリエチレンで構成するのが好ましい。
【0030】
かかる構成とすることで、加工性に優れ、また、比較的安価に入手できるため製造コストを抑制する効果が得られる。
【0031】
また、上記の構成に加えて、
前記各空間内に、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成された電界変成器を有し、
前記電界変成器は、前記進入方向に関し前記インピーダンス調整器の挿入箇所よりも前記マイクロ波発生部側の位置であって、当該電界変成器を構成する誘電体内に形成される定在波の管内波長をλgz、自然数をN(N>0)とした場合に、前記進入方向に係る長さが(4N−3)λgz/8より大きく、(4N−1)λgz/8未満で、マイクロ波の定在波の節を含む位置に挿入されている構成とするのが好適である。
【0032】
より好ましくは、前記電界変成器が、1/4λgzの奇数倍の大きさの幅で、且つ、前記加熱室の終端部側の面が前記マイクロ波の定在波の節の位置となるように設置される構成としてもよい。
【0033】
かかる構成とすることで、電界変成器の下流側、すなわち被加熱体の通過領域において、上流側よりも電界強度を高める効果が得られる。これにより、短時間の間に加熱室内の温度を急激に上昇させる効果をより高めることが可能となる。
【0034】
なお、前記電界変成器は、前記移相器及び前記インピーダンス調整器と同一の材料で構成するのが好適であり、更には高密度ポリエチレンで構成するのが好適である。
【0035】
同一の材料で実現することで、簡易な態様で製造が可能となり、そのコストの低廉化も期待できる。
【0036】
また、本発明に係る画像定着装置は、上記特徴を有したマイクロ波加熱装置を備え、前記開口部を介して通過する現像剤付き記録シートが前記加熱室で加熱されることで、現像剤を記録シートに定着させることを特徴とする。
【0037】
かかる構成とすることで、短時間の間に現像剤を記録シートに定着させることが可能となり、機械的な定着機構を有しない画像定着装置が実現される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、各空間内に形成される定在波につき、ほぼ同等のエネルギー量(電界強度)を有した状態で、位相のみをずらすことが可能となるため、簡易な構成によって加熱効率を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態のマイクロ波加熱装置の概念的構成図である。
【図2】加熱室の構成を示す斜視図である。
【図3】加熱室の詳細な構成を示す模式平面図である。
【図4】加熱室内に形成される定在波の概念図である。
【図5】加熱室内の各空間内に形成される定在波の位相ずれを説明するための概念図である。
【図6A】比較例1における概念的構成図である。
【図6B】比較例1における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図である。
【図6C】比較例1における定在波の電界分布状態につき、位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【図7A】比較例2における概念的構成図である。
【図7B】比較例2における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図である。
【図7C】比較例2における定在波の電界分布状態につき、位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【図8A】実施例1における概念的構成図である。
【図8B】実施例1における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図である。
【図8C】実施例1における定在波の電界分布状態につき、位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態のマイクロ波加熱装置の概念的構成図である。
【図10】電界変成器を設置したときの管内電界分布を示す概念図である。
【図11A】導波管内の終端部を短絡したときの管内の電界状態を説明するための概念図である。
【図11B】導波管内の終端部に誘電率の異なる材料を満たしたときの管内の電界状態を説明するための概念図である。
【図11C】導波管内に誘電率の異なる材料を満たしたときの、当該誘電体の上流、誘電体内、及び下流の各電界状態を説明するための概念図である。
【図12A】比較例3における概念的構成図である。
【図12B】比較例3における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図である。
【図12C】比較例3における定在波の電界分布状態につき、位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【図13A】実施例2における概念的構成図である。
【図13B】実施例2における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図である。
【図13C】実施例2における定在波の電界分布状態につき、位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【図14】整合器の概念的構成図である。
【図15A】電界変成器を挿入していない場合の定在波の波形を示すグラフである。
【図15B】0.06λg’の幅の電界変成器を挿入したことによる電界強度の変化を示すためのグラフである。
【図15C】0.13λg’の幅の電界変成器を挿入したことによる電界強度の変化を示すためのグラフである。
【図15D】0.25λg’の幅の電界変成器を挿入したことによる電界強度の変化を示すためのグラフである。
【図15E】0.37λg’の幅の電界変成器を挿入したことによる電界強度の変化を示すためのグラフである。
【図15F】0.44λg’の幅の電界変成器を挿入したことによる電界強度の変化を示すためのグラフである。
【図15G】電界変成器の前後における電界強度の比と、電界変成器の幅の関係を示すグラフである。
【図15H】電界変成器の前後における電界強度の比と、電界変成器の幅の関係を示す表である。
【図16A】従来のマイクロ波装置の構成を示す概念図である。
【図16B】従来のマイクロ波装置が備える共振器チャンバ部分の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係るマイクロ波加熱装置の概念的構成図であり、一の側面から見た状態を示している。図1に示されるマイクロ波加熱装置1は、マグネトロン等で構成されるマイクロ波発生部3と、マイクロ波によって加熱対象物を加熱させるための加熱室5の間の位置に、整合器7を設けている。また、本実施形態においては、マイクロ波発生部3と整合器7の間にアイソレータ4を設けている。アイソレータ4は、整合器7からマイクロ波発生部3側の方向にマイクロ波が反射した場合に、当該反射されたマイクロ波の電力を熱エネルギーに変換して、マイクロ波発生部3を安定的に動作させるための保護機器である。ただし、本発明の装置において、アイソレータ4は必ず必要な構成要素というわけではない。
【0041】
また、図1に示すように、加熱室5の最も下流側は、導体によって終端されている(5a)。なお、この終端5aも加熱室5と同じ金属材料で構成されているものとして構わない。
【0042】
マイクロ波発生部3から整合器7までの間、整合器7から加熱室5までの間は、いずれも導電性材料(金属等)の筒状の枠体で連結されており、発生したマイクロ波を閉じ込めることができる構成となっている。ただし、加熱室5には後述のスリット6(「開口部」に対応)が設けられている。
【0043】
本実施形態では、図16A及び図16Bで示した従来構成と同様に、加熱室5内に用紙(「被加熱体」に相当)を通過させるためのスリット6を備えており、用紙が図1の紙面上奥から手前に向かって矢印d1の向きに通過することを想定している。すなわち、加熱室5は、奥側の側面にもスリット6に対向する位置に同様のスリットが設けられており、奥側の側面に設けられたスリットより加熱室5内に進入してきた用紙は、加熱室5内において加熱された後、手前側の側面に設けられたスリット6より加熱室5の外へと排出される構成である。なお、この用紙には面上にトナー粒子が付着しており、加熱室5内において加熱されることで、付着されたトナーが用紙に定着される。
【0044】
図2は、加熱室5の構成を示す斜視図である。加熱室5は、スリット6、及びマイクロ波導入口8を所定の面上に設けた状態で、金属等の導体で周囲を覆われた筒形状を有している。すなわち、加熱室5は、マイクロ波発生部3から見て最も下流側に位置する、マイクロ波導入口8と対向する面において導体により短絡されている。加熱室5の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金等の純度の高い非磁性金属(透磁率が真空の透磁率とほぼ等しい金属)、導電率が高い合金の他、前記の金属や合金を表皮深さの数倍の厚みを持たせた一層若しくは多層のメッキ又は箔又は表面処理(導電性塗料の塗装を含む)を施した金属、真鍮等の合金、又は樹脂が利用可能である。
【0045】
加熱室5は、マイクロ波発生部3側の側面には、マイクロ波を内部に導くための開口部であるマイクロ波導入口8が設けられている。マイクロ波発生部3より出力されたマイクロ波は、矢印d2の向きにマイクロ波導入口8より加熱室5内へと導かれる。マイクロ波導入口8は、用紙10の進行方向d1に垂直な向きの寸法をa,d1に平行な向きの寸法をbとする、ほぼ長方形状を有している。
【0046】
なお、本実施形態では、加熱室5内を伝搬するマイクロ波は、基本モード(H10モード、又はTE10モード)であるものとする。
【0047】
そして、本実施形態の構成として、図3以下を参照して詳細に説明するように、加熱室5はマイクロ波の進行方向d2に沿って3列の空間に分けられている。本実施形態では3列の空間で構成しているが、本発明を実現するに際し、この空間数は3に限られるものではない。
【0048】
スリット6は、加熱対象となる用紙10を通過させるのに必要な最小限の寸法で構成されているのが好ましい。なぜなら、必要以上に開口されてしまうと、導入されたマイクロ波が当該スリット6を介して漏洩してしまい、加熱室5内でのマイクロ波のパワーが減少するおそれがあるためである。
【0049】
図3は、本実施形態における加熱室5の詳細な構成を示す模式平面図である。なお、加熱室5は、金属等の導体で周囲を覆われた筒形状を有しているが、ここでは説明の便宜上、加熱室5の内部を一部透過させて図示している。
【0050】
上述したように、加熱室5の側面にはスリット6が設けられており、用紙10がこのスリット6を介して加熱室5の内部をd1方向に通過可能に構成されている。そして、マイクロ波発生部3より発生されたマイクロ波が、図面左側よりd2方向に加熱室5内に進入可能な構成である。
【0051】
加熱室5には、マイクロ波の進入方向と同方向に、導電性材料で構成された仕切板21,22が設けられており(ここでは金属製とする)、これによって空間11,12,13の3空間に隔てられている。ただし、この仕切板21,22は、用紙10をd1方向に通過させることができる程度の隙間(又はスリット)を有しているものとする。そして、この隙間を除いては、なるべく加熱室5の内壁に接近させ、隣接する空間同士を連絡する通路が存在しないように構成されるのが好ましい。
【0052】
更に、本実施形態においては、各空間に進入する定在波の位相を相互にずらすべく、移相器を挿入している。より具体的には、空間11内に移相器31を、空間12内に移相器32を挿入し、空間13内には移相器を挿入していない。ここでは、位相器31は、d2方向に関し、移相器32の2倍の長さを有する構成である。
【0053】
移相器31及び32は、誘電率の高い材料で構成されており、それぞれは各空間内を前記の長さにわたって遮蔽するように挿入されている。ここでは、材料として高密度ポリエチレン(UHMW)を利用しているが、テフロン(登録商標)という名称で知られるポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料、石英、その他の高誘電率材料を利用することができる。また、できるだけ加熱されにくい材料で構成されるのが好ましい。加工容易性並びにコスト面の観点から、実用的には高密度ポリエチレンを用いるのが好適である。
【0054】
更に、空間12及び13においては、終端部にインピーダンス調整器33及び34が挿入される。ここでは、インピーダンス調整器33及び34として、移相器31及び32と同じ材料を採用している。
【0055】
インピーダンス調整器33及び34として、移相器31及び32と同じ材料を利用する場合、空間12内に挿入するインピーダンス調整器33については、同空間12内に挿入する移相器32とd2方向に関し同じ長さとする。また、空間13内に挿入するインピーダンス調整器34については、空間11に挿入する移相器31とd2方向に関し同じ長さとする。これにより、加熱室5の入口から終端部を見たときに、各空間11,12,13のインピーダンスを簡単に等しくすることができる。
【0056】
なお、以下では、d2方向の長さのことを単に「幅」と称することがある。
【0057】
図4は、図3の構成においてマイクロ波が進入してきたときに、各空間11,12,13内に形成される定在波の状態を概念的に図示したものである。ただし、移相器31の幅をλg’とし、移相器32の幅をλg’/2としている。ここで、λg’とは、移相器31及び32と同じ誘電体内に形成される定在波の波長(以下において「誘電体内波長」という。)を指している。
【0058】
なお、以下においては、d2方向に関し、終端部5a側を「下流」、マイクロ波発生部3側を「上流」と称することがある。
【0059】
図4に示すように、各空間11,12内には、終端部5aの位置に下流側の端面(第1面)が来るように移相器31及び32が挿入されている。この条件で移相器を挿入したことで、空間11においては、移相器31の上流側の端面(第2面)の位置61に定在波W1の節が現れる。同様に、空間12においては、移相器32の上流側の端面(第2面)の位置71に定在波W2の節が現れる。なお、移相器が挿入されていない空間13においては、終端部5aが配置されている位置81に定在波W3の節が現れる。なお、図4において、供給されるマイクロ波が各空間11,12,13に分配される先端部を「分波部41」として記載している。
【0060】
これにより、空間11,12,13それぞれに存在する定在波W1,W2,W3の位相を相互にずらすことが可能となり、各定在波W1,W2,W3の腹の位置を相互にd2方向にずらすことができる。よって、用紙10がd1方向に加熱室5内を通過すると、空間11,12,13のいずれかを通過する過程においては高エネルギー領域を通過することとなる。これによって、用紙10への加熱ムラを抑制することが可能となる。
【0061】
なお、空間11,12,13内に形成される定在波W1,W2,W3の位相のずらし方としては、加熱室5内に形成される定在波の管内波長λgの1/6ずつ位相をずらした場合に、最もエネルギー効率を高めることができる(図5参照)。つまり、下記数1を実現するように移相器31,32の材料及び幅を決定すればよい。
【0062】
【数1】

【0063】
なお、数1において、λg/6という数値は、加熱室を3空間に分割したためであって、一般的にN分割する場合、最もエネルギー効率を高めるには管内波長λg/(2N)ずつ位相をずらせばよい。
【0064】
このとき、空間11内に形成される定在波W1の節(61,62,63,64,65,66)、空間12内に形成される定在波W2の節(71,72,73,74,75,76)、及び空間13内に形成される定在波W3の節(81,82,83,84,85,86)、はそれぞれ均等に位置をずらすことができる。これにより、例えば、空間11内において節62が形成される位置を紙10が通過して、加熱が不十分であったとしても、引き続き空間12,13を通過したとき、かかる空間内では当該位置は定在波の節に該当しないため、十分な加熱が可能な状態となる。図5に示すように各定在波W1,W2,W3につき、均等に位相をずらすことで、紙10がd1方向に通過した際、d2方向の位置に関する加熱ムラを解消することが可能となる。つまり、上記数1の条件に従って位相をずらすことで、加熱室5内に最も高効率のエネルギー状態を実現させることができる。
【0065】
ただし、本発明の効果を実現するに際しては、この数1の条件を厳密に成立さなければならないというものではない。少なくとも、各空間11,12,13において定在波の位相のずれを生じさせることで、位相ずれが存在しない場合と比較して加熱ムラを解消させる効果が得られる。この点については、実験結果に基づいて後述される。
【0066】
次に、インピーダンス調整器33及び34について説明する。位相器31及び32は、前述したように、各空間11,12,13内の定在波W1,W2,W3の位相を相互にずらす目的で挿入されたものである。これに対し、インピーダンス調整器33,34は、マイクロ波発生部3から発生したマイクロ波を、各空間11,12,13に対して等しく(ほぼ等しく)分散して入力させるために、各空間内のインピーダンスを等しく(ほぼ等しく)する目的で挿入されている。
【0067】
各空間11,12,13に対してほぼ同等のエネルギー量を保持したマイクロ波を分散して入力させるためには、各空間内のインピーダンスをほぼ等しくすることが必要となる。この点につき、実験結果を参照しながら詳細に説明する。
【0068】
(比較例1)
図6Aは、加熱室5を単純に仕切り板21,22によって空間11,12,13の3空間に分けたときの概念的構成図を示している。この状態でd2方向にマイクロ波を進入させたときの、各空間内に存在する定在波の電界分布を図6B,図6Cに示す。図6Bは、比較例1における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図であり、図6Cは、比較例1における位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【0069】
なお、比較例1において、マイクロ波発生部3からのマイクロ波発生条件として、出力エネルギーを400Wとし、出力周波数を2.45GHzとした。また、加熱室5及び導波管についてはアルミニウム製のものを採用している。後述する比較例2〜3及び実施例1〜図2においても同様である。
【0070】
更に、以下の比較例及び実施例においては、以下の装置を共通して利用した。
・マイクロ波発生部3: マイクロデバイス社(現マイクロ電子社)製の製品を利用した。
・アイソレータ4: マイクロデバイス社(現マイクロ電子社)製の製品を利用した。
・加熱室5: アルミニウム製の導波管にスリット6を設けたもの
・用紙10: 「中性紙」と称される市販のPPC用紙を利用した。
【0071】
図6Bによれば、各空間11,12,13内にはほぼ同等の等高線が形成されており、ほぼ同じパワーでマイクロ波が分散して入力されていることが理解できる。つまり、加熱室5内に金属製の仕切り板21,22を設けることで、進入するマイクロ波を各空間に対して分散させる効果が得られることが分かる。
【0072】
一方、図6Cによれば、各空間内に形成される定在波W1,W2,W3の、d2方向の位置における電界強度についても同等であることが分かる。つまり、各定在波W1,W2,W3の定在波の節の位置は全てほぼ同じであり、腹の位置も全てほぼ同じである。従って、加熱室5をこのような構成とした状況で加熱しても、節の位置と腹の位置とで電界強度が異なるため、加熱ムラが生じることが分かる。なお、今回の実験では、定在波W3の位置別の電界強度が定在波W1とほとんど同じ値となったため、グラフ上ではW3とW1が重なって表示されている。
【0073】
(比較例2)
上述したように、加熱ムラをなるべく解消させるには、各空間で形成される定在波の節の位置を相互にずらすことが重要となる。このため、比較例2においては、単純に各空間の終端部の位置をずらすことで、各空間に形成される定在波の位相をずらすことを試みている。
【0074】
図7Aは、比較例2における概念的構成図であり、具体的には、空間11内においては、終端部3aから前方に向かって幅λg/3の金属板45を、空間12内においては、終端部3aから前方に向かって幅λg/6の金属板46を挿入している。空間13内においては金属板を挿入せず、終端部3aにおいてマイクロ波が終端するように構成した。
【0075】
d2方向にマイクロ波が進入したとき、終端部として導電性の短絡板を設ける構成としておくと、かかる終端部の位置において定在波の節が形成される。そこで、空間11においては終端部5aの位置から幅λg/3の金属板45を挿入しておくことで、空間11内に形成される定在波については、終端部5aからλg/3前方の位置に節が来るように設計できる。同様に、空間12においては終端部5aの位置から幅λg/6の金属板46を挿入しておくことで、空間12内に形成される定在波については、終端部5aからλg/6前方の位置に節が来るように設計できる。よって、このような構成とすることで、各空間内に形成される定在波の位相を相互にずらすことができれば、加熱ムラを解消することが可能となる。
【0076】
図7Aの構成で、d2方向にマイクロ波を進入させたときの、各空間内に存在する定在波の電界分布を図7B,図7Cに示す。図7Bは、比較例2における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図であり、図7Cは、比較例2における位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【0077】
なお、図7B等に示す等高線図は、実際はカラー図面であり、スペクトル分布のような色合いで構成されている。すなわち、電界強度が低いほど紫や青色で表示されており、電界強度が高いほど、赤や橙色で表示されている。そして、本願明細書に添付したモノクロの図面においては、電界強度が高い赤色の線が「黒っぽく」表示されており、それ以外の色の線は「白っぽく」表示されている。つまり、白の線で囲まれた領域内に黒っぽい線が多く示されている箇所については、電界強度が非常に高いことを表している。
【0078】
図7B及び図7Cによれば、空間12については電界強度が高いものの、空間11,13については電界強度が低いことが分かる。図7Cによれば、確かに各空間内に形成される定在波W1,W2,W3は、相互に位相がずれており、各定在波の節の位置をずらすことができている。しかし、定在波間において電界強度に差があるため、このような構成で加熱しても、位置に応じた加熱ムラが生じてしまう。例えば、d2方向に関し、空間12内において定在波W2の腹が形成されている位置の近傍と、空間11内において定在波W1の腹が形成されている位置の近傍とでは、加熱程度に大きな差が生じてしまう。
【0079】
つまり、比較例2に示すように、各空間内に形成される定在波の位相をずらすべく、単に終端位置をd2方向に変化させた場合には、各空間内に形成される定在波のエネルギー量に差異が生じてしまうことが分かる。比較例2の構成としても、加熱ムラを解消する効果はほとんど期待できない。
【0080】
(実施例1)
上述したように、加熱ムラをなるべく解消させるには、各空間で形成される定在波の節の位置を相互にずらすことが重要となる。しかしながら、比較例2のように、節の位置をずらすべく各空間の終端部の位置をd2方向にずらすと、各空間内に形成される定在波の電界強度に差異が出ることが分かる。
【0081】
比較例2のように、各空間内に形成される定在波につき、電界強度に差異が生じるのは、加熱室入口から終端部5aを見た時の、各空間のインピーダンスが異なることに起因する。つまり、終端部に金属板45,46を挿入した結果、各空間11,12,13のインピーダンスに差異が生じてしまい、この結果として各空間内の定在波の電界強度に差異が生じたといえる。
【0082】
そこで、本発明では、各空間内のインピーダンスをできるだけ等しくしながら、且つ、各空間内に形成される定在波が相互に位相差を有する状況を実現すべく、図3〜図5を参照して説明したような構成を採用した。この構成につき、「実施例1」として、実験結果を参照しながら説明する。
【0083】
図8Aは、実施例1の概念的構成図を示している。図3〜図5を参照して既に説明したように、実施例1においては、空間11内においては、終端部5aから上流側に向かって幅λg’の移相器31を挿入している。また、空間12内においては、終端部5aから上流側に向かって幅λg’/2の移相器32を挿入している。この移相器31,32は、導電率の高い材料の一つである高密度ポリエチレンで構成されている。
【0084】
更に、実施例1では、空間12内において、入口近傍から下流側に向かって幅λg’/2のインピーダンス調整器33を挿入しており、空間13内において、入口近傍から下流側に向かって幅λg’のインピーダンス調整器34を挿入している。このインピーダンス調整器33,34は、移相器31,32と同一の材料で構成されている。つまり、移相器32とインピーダンス調整器33は、本実施例では完全に同一の部材で構成され、移相器31とインピーダンス調整器34は、本実施例では完全に同一の部材で構成される。
【0085】
この状態でd2方向にマイクロ波を進入させたときの、各空間内に存在する定在波の電界分布を図8B,図8Cに示す。図8Bは、実施例1における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図であり、図8Cは、実施例1における位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【0086】
図8B及び図8Cによれば、各空間共にほぼ同等の電界強度を示しており、且つ、定在波の節の位置をd2方向に相互にずらせていることが分かる。よって、このような構成の下で、紙10をd1方向に通過させた場合、d2方向にわたってほぼ均一に加熱することができる。
【0087】
ところで、実施例1において、定在波の位相を相互にずらすために高誘電体で構成した移相器31,32を導入しているのは、位相を相互にずらす目的に加えてインピーダンス調整を簡易にする目的でもある。すなわち、比較例2(図7A参照)で示したように、終端部に幅の異なる金属板を導入した場合においても、定在波の位相を相互に異ならせることは可能である。ただし、比較例2の場合には、各空間のインピーダンスに差異が生じた結果、定在波の電界強度に差異が生じ、加熱ムラを生み出す別の要因となった。従って、図7Aの構成の下で各空間のインピーダンスをほぼ等しくすることができれば、実施例1と同等の効果が期待できる。この場合、金属板を導入した状態における各空間のインピーダンスを計算し、これらのインピーダンスをほぼ均衡させるべくインピーダンス調整器を導入するという方法を採用することができる。
【0088】
しかし、実施例1のように、金属板に代えて高誘電体の移相器を採用することで、インピーダンス調整を非常に簡易に行うことができる。なぜなら、既に説明したように、移相器31,32と、インピーダンス調整器33,34とはそれぞれ同一の材料で構成することができ、更にこの場合、移相器31とインピーダンス調整器34、移相器32とインピーダンス調整器33は、同じ材料で同じ寸法の部材を採用することができるためである。つまり、実施例1であれば、幅λg’で、一の空間を密閉可能な高さと奥行(d1方向の長さ)を有する高密度ポリエチレンを2個、幅λg’/2で、一の空間を密閉可能な高さと奥行(d1方向の長さ)を有する高密度ポリエチレンを2個、それぞれ準備するのみで、加熱ムラを解消できる。
【0089】
そして、図5を参照して上述したように、更に上記数1を満たすように加熱室5の材料や寸法、移相器31,32の材料を選択することで、加熱ムラを解消する効果を著しく高めることができる。
【0090】
なお、図8Aでは、加熱室5のほぼ入口近傍にインピーダンス調整器33,34を挿入したが、少なくとも被加熱体(例えば用紙10)を通過させたときに、当該被加熱体の上流側端面よりも更に上流側にインピーダンス調整器33,34が挿入されていればよい。
【0091】
〔第2実施形態〕
図9は、第2実施形態に係るマイクロ波加熱装置の概念的構成図である。第1実施形態と比較して、整合器7より下流側(終端部5a側)に更に電界変成器15を備えた点が異なる。より詳細には、各空間11,12,13のそれぞれに電界変成器15を備える構成である。
【0092】
電界変成器15は、誘電率の高い材料で構成されており、本実施形態では高密度ポリエチレン(UHMW)を利用しているが、テフロン(登録商標)という名称で知られるポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料、石英、その他の高誘電率材料を利用することができる。また、できるだけ加熱されにくい材料で構成されるのが好ましい。加工容易性並びにコスト面の観点から、実用的には高密度ポリエチレンを用いるのが好適である。
【0093】
つまり、電界変成器15として高密度ポリエチレンを採用したとき、電界変成器15、移相器31,32、及びインピーダンス調整器33,34は全て同一の材料で実現できることとなる。
【0094】
電界変成器15は、電界変成器15と同じ誘電体内に形成される定在波の波長をλgzとしたときに、マイクロ波の進行方向d2の向きの幅として、λgz/4の奇数倍(λgz/4,3λgz/4,……)の長さを有する構成である。なお、この電界変成器15の幅をλgz/4の奇数倍とすることで、その挿入効果を最も高めることができるものであるが、後述する関係式を満たすように電界変成器15の幅を設定することで、電界変成器15の挿入効果を得ることができる。
【0095】
なお、前述のように、電界変成器15を移相器31及び32と同じ材料で構成した場合、電界変成器15内の定在波の波長λgzは、移相器31及び32内の定在波の波長(誘電体内波長)λg’に一致する。以下では、符号の煩雑化を避けるべく、λgz=λg’として説明する。
【0096】
なお、マイクロ波発生部3から発生するマイクロ波波長をλ、電界変成器15の誘電率をε’、遮断波長をλc,誘電体内波長をλg’とすると、下記数2が成立する。この関係式により、誘電体内波長λg’を算出することができる。
【0097】
【数2】

【0098】
図10に示すように、本実施形態では、この電界変成器15を固定的に設置する。より具体的には、加熱室5内(の各空間11,12,13内)に形成される定在波の節となる位置20に電界変成器15を設置する。更に具体的には、電界変成器15の終端部5a側(下流側)の面が節となる位置20となるように設置する。
【0099】
電界変成器15は、空気よりも誘電率が高いため、当該電界変成器15内を通過する定在波の波長が短くなる。これにより、電界変成器15よりも下流側(終端部5a側)の定在波W’の電界を更に高めることができる。特に変圧器の幅Lを下記関係式の範囲内で設定した場合に定在波W’の電界を顕著に高める効果が得られる。なお、下記関係式においてNは自然数である。
【0100】
(関係式)
(4N−3)λg’/8 < L < (4N−1)λg’/8
【0101】
これらの結果は、後述する別実施形態の実施例によって明らかとなる。
【0102】
第1実施形態及び本実施形態のように、加熱室5内にマイクロ波の定在波を生じさせる構成においては、終端部5aからのマイクロ波発生部3に向かう方向の距離に応じて電界強度の強い部分(腹)と弱い部分(節)が生じてしまう。そこで、図10に示すように、特に定在波の節の位置に電界変成器15を設置することで、電界変成器15より下流側の定在波W’の電界強度が高められ、トナーの定着性を向上させることが可能となる。
【0103】
つまり、電界変成器15よりも下流側にスリット6を設け、この位置において用紙10を通過させることで、パワーが増大された定在波W’に基づく加熱処理が施されるため、トナー定着時間を短縮化することができる。
【0104】
電界変成器15の設置により、その下流側の電界を高める効果が得られる点については、以下の理論によっても裏付けられる。
【0105】
(理論説明)
長方形導波管の負荷端を図11Aに示すように、インピーダンスZrで終端した場合を想定する。TE10モードを考え、負荷端における入射電界及び反射電界の振幅をそれぞれEi,Erで表した場合、導波管のZ軸の各点のEy及びHxは以下の数3で表される。なお、図2におけるa方向がX軸、b方向がY軸、d2方向がZ軸にそれぞれ対応しており、Eyとは電界のY軸成分、Hxとは磁界のX軸成分に相当する。
【0106】
【数3】

【0107】
なお、数2において、Z01は特性インピーダンス、γ1は伝搬定数である。
【0108】
ここで、図11Bに示すように、領域Iを大気とし、領域IIにインピーダンスZRとして終端部cで短絡された誘電体が満たされている状況を想定する。領域Iでの入射電界をEi1、反射電界をEr1、領域IIでの入射電界をEi2、反射電界をEr2とすると、上記数1及びz=0における境界条件より、以下の数4が成立する。
【0109】
【数4】

【0110】
ここで、図11Bにおいて終端部c面は短絡されているため、以下の数5が成立する。なお、領域IIの先頭位置(マイクロ波発生部側)のZ座標を0とし、領域IIのZ軸方向の幅をdとしている。
【0111】
【数5】

【0112】
上記数5をEi2について解くと、数6が成立する。
【0113】
【数6】

【0114】
上記数6において、損失を無視してその絶対値を取ると、数7が成立する。
【0115】
【数7】

【0116】
数7において、β1gは領域I内における管内波長λ1gの複素成分(位相定数)、β2gは領域II内における管内波長λ2gの複素成分(位相定数)である。また、Kは定数である。
【0117】
数7により、β2gdがπ/2の奇数倍の場合、領域IIの電界強度は入射電界に等しく、β2gdがπ/2の偶数倍の場合、領域IIの電界強度は入射電界の1/Kになっている。よって、誘電率が異なる領域の境界面が電界の腹に当たる場合には、その両側での電界強度は等しくなり、節に当たる場合にはそれぞれの領域での位相定数βgの比に反比例することが分かる。
【0118】
よって、図11Cのように、基準面aの下流側にλ2g/4の厚みを有する誘電体で導波管を満たし(領域II)、更にその下流側(領域III)のλ1g/4の距離の位置に短絡面cを置くと、数8が成立する。なお、EI, EII, EIIIは、それぞれ領域I, II, IIIにおける電界強度を示す。
【0119】
【数8】

【0120】
これに、|EI|=|EII|の条件を考慮すると、下記数9が成立する。
【0121】
【数9】

【0122】
数9により、領域IIIの電界強度は領域Iの電界強度のK倍となることが分かる。つまり、λ2g/4の厚みを有する誘電体、すなわち電界変成器15を挿入することで、その上流側の電界強度が増幅されて下流側に伝搬することが分かる。
【0123】
なお、領域Iを大気、領域IIを誘電率εrの誘電体とすると、定数Kは以下の数10により規定される。
【0124】
【数10】

【0125】
(比較例3)
図12Aは、比較例3の概念的構成図であり、比較例1の構成に、高密度ポリエチレンで構成される電界変成器15(15a、15b,15c)を各空間11,12,13内に挿入した状態を示している。電界変成器15の幅をλg’/4としている。
【0126】
この状態でd2方向にマイクロ波を進入させたときの、各空間内に存在する定在波の電界分布を図12B,図12Cに示す。図12Bは、比較例3における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図であり、図12Cは、比較例3における位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【0127】
比較例1(図6C)と比較例3(図12C)を比べると、電界変成器15を導入することで、各空間内に形成される定在波の電界強度を大きく上昇させる効果が得られることが分かる。ただし、比較例3については、比較例1と同様、単に空間を3つに分けたに過ぎないため、各空間11,12,13に形成される定在波W1,W2,W3は、位相のずれが生じておらず、d2方向における節の位置は各定在波ともにほぼ同じである。従って、この状態で加熱を行っても加熱ムラは生じてしまう。
【0128】
(実施例2)
図13Aは、実施例2の概念的構成図であり、実施例1の構成に。高密度ポリエチレンで構成される電界変成器15(15a、15b,15c)を各空間11,12,13内に挿入した状態を示している。なお、電界変成器15の幅はλg’/4としている。ここでは、移相器32,33、インピーダンス調整器33,34、及び電界変成器15a、15b,15cを全て同一材料である高密度ポリエチレンで構成している。
【0129】
この状態でd2方向にマイクロ波を進入させたときの、各空間内に存在する定在波の電界分布を図13B,図13Cに示す。図13Bは、実施例2における定在波の電界分布状態につき、等高線によって表示した図であり、図13Cは、実施例2における位置と電界強度の関係をグラフによって示した図である。
【0130】
図13B及び図13Cによれば、実施例1のときと同様、各空間共にほぼ同等の電界強度を示しており、且つ、定在波の節の位置をd2方向に相互にずらせていることが分かる。よって、このような構成の下で、紙10をd1方向に通過させた場合、d2方向にわたってほぼ均一に加熱することができる。
【0131】
そして、実施例1(図8C)と実施例2(図13C)を比べると、やはり電界変成器15を導入することで、各空間内に形成される定在波の電界強度を大きく上昇させる効果が得られていることが分かる。つまり、実施例2の構成とすることで、各空間11,12,13内に形成される各定在波W1,W2,W3相互の節のd2方向の位置をずらしながら、更に電界強度を上昇させることが可能となる。これにより、実施例1と比べて加熱効率を更に向上させることが可能となる。
【0132】
〔別実施形態〕
〈1〉上記実施形態において、金属製の仕切板21,22によって加熱室5内を3空間11,12,13に分ける旨の説明を行ったが、空間を分けることができていればよく、必ずしも「板」によって仕切ることが要求されるというものではない。すなわち、長手方向(d2方向)に沿って予め複数の空間が設けられている導波管を用いる構成も可能である。
【0133】
〈2〉整合器7としては、例えばE−H整合器を利用するのが好適である。図14は、整合器7としてE−H整合器を用いた場合の概念的構成図である。この整合器7は、金属等の導体で周囲を覆われた筒形状の導波管に対し、用紙の進行方向d1に平行な側面P1上に第1T分岐路11を、d1及びd2に垂直な側面P2上に第2T分岐路12を夫々設けた構成となっている。整合器7の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金等の純度の高い非磁性金属(透磁率が真空の透磁率とほぼ等しい金属)、導電率が高い合金の他、前記の金属や合金を表皮深さの数倍の厚みを持たせた一層若しくは多層のメッキ又は箔又は表面処理(導電性塗料の塗装を含む)を施した金属、真鍮等の合金、又は樹脂が利用可能である。
【0134】
マイクロ波発生部3と加熱室5の間にE−H整合器で構成された整合器7を設けることで、加熱室5内に形成される定在波のパワーを著しく大きくする効果が得られる。より詳細には、入射されたマイクロ波が加熱室5の終端5aで反射された後、E−H整合器7において当該反射波が加熱室5側に再反射される。これらの反射が幾度となく繰り返されることで、加熱室5内に生じる定在波の電界を大きくすることが可能となる。
【0135】
〈3〉上記実施形態では、用紙へのトナー定着にマイクロ波を利用する実施形態を説明したが、短い時間の間に急激に加熱を行うことを要求される他の一般的な用途(例えば、セラミックスの仮焼や焼結、高温を必要とする化学反応の他、トナーを金属粉末として配線(導電)パターンを製作する用途)に利用することが可能である。
【0136】
〈4〉第2実施形態において、電界変成器15の幅をλg’/4の奇数倍とするのが好ましいと記載したが、少なくとも上述した関係式を満たすように構成されていればよく、λg’/4の奇数倍に近ければ近いほど望ましい。なお、電界変成器15の幅がλg’/4の偶数倍である場合には、インピーダンス変換が行われず、その後段(終端部5a)側の電界を高める効果が発揮されない。以下、この点につき、実施例を参照して説明する。
【0137】
なお、以下の説明では、シミュレーションの都合上、加熱室5が3空間に分かれていない場合につき、電界変成器15の幅を変化させたときに電界変成器の前後でどの程度電界の強さが変化するかを比較したものを参照しながら説明するが、3空間に分けた場合においても同様の現象が生じる。
【0138】
図15A〜図15Fは、加熱室5を1空間としたときにおいて、電界変成器15の幅をそれぞれ変化させてマイクロ波発生部3から加熱室5にマイクロ波を進行させたときの加熱室5内の電界強度を示すグラフである。なお、本実施例では、短絡板の直前に同一幅の誘電体を挿入しているが、これは実験条件を揃えるために行ったものであり、本実施例が示す効果に影響を及ぼすものではない。また、グラフによっては定在波の谷の位置にける電界強度の大きさに多少のバラツキがあるが、これは計算誤差の範囲内である。
【0139】
また、図15Gは、電界変成器15の幅を変化させたときの、電界変成器15の上流側と下流側における電界強度の大きさの比の変化を示すグラフであり、図15Hはこれを表にしたものである。
【0140】
図15A、図15B、図15C、図15D、図15E及び図15Fは、それぞれ、電界変成器15の幅を、0、6mm、13mm、25mm、37mm、44mmとしたときのグラフである。
【0141】
図15Aでは電界変成器15を挿入していないため、当然に電界変成器15の前後で電界強度が変化するということはない(電界強度=4.2のままである)。
【0142】
電界変成器15の幅を6mm(これは0.06λg’に相当する)とした図15Bでは、電界変成器15の上流側において電界強度=4.2であったのが、下流側において電界強度=5.3となっており、電界変成器15の前後で電界強度は1.26倍となっている。
【0143】
電界変成器15の幅を13mm(これは0.13λg’に相当する)図15Cでは、電界変成器15の上流側において電界強度=3.8であったのが、下流側において電界強度=6.8となっており、電界変成器15の前後で電界強度は1.79倍となっている。
【0144】
電界変成器15の幅を25mm(これは0.25λg’に相当する)図15Dでは、電界変成器15の上流側において電界強度=3.4であったのが、下流側において電界強度=6.2となっており、電界変成器15の前後で電界強度は1.82倍となっている。
【0145】
電界変成器15の幅を37mm(これは0.37λg’に相当する)図15Eでは、電界変成器15の上流側において電界強度=3.5であったのが、下流側において電界強度=6.0となっており、電界変成器15の前後で電界強度は1.7倍となっている。
【0146】
電界変成器15の幅を44mm(これは0.44λg’に相当する)図15Fでは、電界変成器15の上流側において電界強度=4.2であったのが、下流側において電界強度=4.5となっており、電界変成器15の前後で電界強度は1.1倍となっている。
【0147】
なお、グラフ上には示していないが、電界変成器15の幅を50mm(これは0.50λg’に相当する)とした場合、電界変成器15の上流側端点と下流側端点が共に定在波の谷の位置となるため、電界変成器15の下流側と上流側で電界強度は変化しない。
【0148】
以上の結果によれば、電界変成器15の幅Lを、上述した関係式、すなわち自然数Nを用いて (4N−3)λg’/8 < L < (4N−1)λg’/8 を満たすように設定することで、電界変成器15の下流側の定在波の電界強度を大きくする効果が得られることが分かる。これにより、加熱室5内の電界強度が高められ、トナー定着に要する時間を大きく短縮する効果が得られる。
【0149】
上記の関係は、加熱室5を3空間に分けた場合においても、それぞれの空間内において成立するものであるため、同様の議論が可能である。この場合、繰り返しになるが、電界変成器15が移相器31及び32と異なる材料で構成される場合は、上記関係式においてλg’をλgz(電界変成器15内における定在波の波長)に置き換えた関係式が採用される。
【0150】
〈5〉第2実施形態では、3空間に分かれている領域において、各空間11,12,13内に電界変成器15を夫々挿入する態様とした。しかし、例えば、加熱室5において、入口付近においては空間が分断されておらず、入口から所定距離Dだけ下流側に進んだところから仕切板21,22が設けられることで3空間が形成される構成が想定される。かかる構成においては、d2方向に関して3空間に分断されない入口から距離Dまでの所定の領域に電界変成器15を挿入するものとしても構わない。
【0151】
〈6〉上記実施形態では、移相器を挿入しない一の空間を設けることで、位相のずれを実現したが、全ての空間内に移相器を設けて位相のずれを実現しても構わない。また、同様に、インピーダンス調整器を挿入しない一の空間を設けることで、インピーダンスの調整を行ったが、全ての空間内にインピーダンス調整器を設けてインピーダンス調整を行っても構わない。
【符号の説明】
【0152】
1 : マイクロ波加熱装置
3 : マイクロ波発生部
4 : アイソレータ
5 : 加熱室
5a: 加熱室の終端部
6 : スリット
7 : 整合器
8 : マイクロ波導入口
10 : 用紙
11,12,13 : 空間
15 : 電界変成器
20 : 定在波の節
21,22 : 仕切板
31,32 : 移相器
33,34 : インピーダンス調整器
41 : 分波部
61,62,63,64,65,66 : 定在波W1の節の位置
71,72,73,74,75,76 : 定在波W2の節の位置
81,82,83,84,85,86 : 定在波W3の節の位置
100 : マイクロ波装置
101 : 用紙
103 : 共振器チャンバ
104 : エレメント
107 : 通過部
107’: 通過部
109 : 共振器チャンバの側面
109’: 共振器チャンバの側面
110 : マグネトロン
111 : 貯水庫
112 : サーキュレータ
113 : 入力結合変換器
114 : 結合開口
115 : 終端スライダ
d1 : 用紙通過方向
d2 : マイクロ波の進入方向
W1,W2,W3 : 定在波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を出力するマイクロ波発生部と、
前記マイクロ波が導かれ、前記マイクロ波の進入方向の終端部が短絡されている導電性の加熱室と、を有し、
前記加熱室は、導電性材料で構成された障壁部によって前記進入方向に沿って前記終端部に達する位置まで複数の空間に分割されると共に、当該加熱室の内部を被加熱体が前記マイクロ波の進入方向とは非平行方向の向きに通過するための開口部を有し、
複数の前記空間のうち、全ての空間内又は一以外の空間内には、前記終端部の位置に、前記進入方向に係る長さが相互に異なる、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成された移相器が前記マイクロ波発生部の方向に向かって挿入されることで、前記各空間内に形成される定在波の節の前記進入方向に係る位置が相互に異なり、
複数の前記空間のうち、少なくとも一以外の空間内には、前記被加熱体の通過領域よりも上流側の位置に、前記マイクロ波が進入する前記加熱室の入口から前記終端部までの前記移相器を含めた前記各空間のインピーダンスの差異を減少させるように、前記進入方向に係る長さが相互に異なる、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成されたインピーダンス調整器が挿入され、
前記マイクロ波発生部のマイクロ波出力端から前記加熱室の終端部までの間は、前記被加熱体を通過させるための前記開口部の部分を除いて導電性材料で構成された筒状の導波管で連結されていることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
前記空間の数をN(Nは2以上の自然数)とし、前記加熱室を構成する前記導波管内に形成される定在波の管内波長をλgとした場合において、
前記各空間内に形成される定在波の節の前記進入方向に係る位置が相互にλg/(2N)ずれていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
前記移相器を構成する誘電体内に形成される定在波の管内波長をλg’とした場合において、
前記各空間内に挿入される前記位相器の前記進入方向に係る長さは、いずれもλg’/2の整数倍で規定されることを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
前記移相器と前記インピーダンス調整器は同一の材料で構成され、
前記加熱室の入口から前記終端部までの前記各空間内に存在する前記移相器及び前記インピーダンス調整器の前記進入方向に係る長さの合計値が相互に一致することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項5】
前記移相器及び前記インピーダンス調整器が高密度ポリエチレンで構成されていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項6】
前記各空間内に、空気よりも誘電率の高い誘電体で構成された電界変成器を有し、
前記電界変成器は、前記進入方向に関し前記インピーダンス調整器の挿入箇所よりも前記マイクロ波発生部側の位置であって、当該電界変成器を構成する誘電体内に形成される定在波の管内波長をλgz、自然数をN(N>0)とした場合に、前記進入方向に係る長さが(4N−3)λgz/8より大きく、(4N−1)λgz/8未満で、マイクロ波の定在波の節を含む位置に挿入されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項7】
前記電界変成器が、1/4λgzの奇数倍の大きさの幅で、且つ、前記加熱室の終端部側の面が前記マイクロ波の定在波の節の位置となるように設置されていることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項8】
前記電界変成器が、前記移相器及び前記インピーダンス調整器と同一の材料で構成されていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項9】
前記電界変成器、前記移相器、及び前記インピーダンス調整器が、いずれも高密度ポリエチレンで構成されていることを特徴とする請求項8に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項の記載のマイクロ波加熱装置を備え、
前記開口部を介して通過する現像剤付き記録シートが前記加熱室で加熱されることで、現像剤を記録シートに定着させることを特徴とする画像定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図15H】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2013−114835(P2013−114835A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258579(P2011−258579)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】