説明

マイコトキシンのスクリーニング法

【課題】 食品や環境試料中のマイコトキシン(カビ毒)類の定量を行う化学分析法において、高度な分析機器を用いることなく、被検試料中に微量に存在するマイコトキシンを高感度で、迅速かつ簡便に測定しうる選択性に優れたスクリーニング分析法を提供する。
【解決手段】 マイコトキシンに対して選択的な親和性を示す吸着剤が充てんされた小容量のカラムに、被検溶液を通過させ、当該吸着剤表面にマイコトキシンを吸着・濃縮・固定し、不要な夾雑成分を洗浄後、マイコトキシンを吸着剤表面に吸着・固定した状態のまま、マイコトキシンに対応する波長を持つ励起光を照射し、マイコトキシンが発する蛍光を検出することにより食品や環境試料などに存在するマイコトキシンを簡便に定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や環境試料中のマイコトキシン(カビ毒)の定量を行うスクリーニング法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコトキシン(mycotoxin)はカビの二次代謝産物として産生される毒物で、現在300種類以上が知られている。代表的なマイコトキシンとしては、アフラトキシン、オクラトキシン、トリコテセン系、パツリン、フモニシンなどがある。例えば、アフラトキシンはピーナッツやピスタチオなどの豆類や、多くの穀物、乾燥果実、香辛料などを汚染する。また、オクラトキシンは、トウモロコシをはじめとする穀類、コーヒー豆、ブドウ加工品などでの汚染例が報告されている。これらのマイコトキシンは熱分解され難いものも多く、加工食品中にも残存することもある。ヒトや動物がマイコトキシンを摂取した場合、肝臓、腎臓、胃腸などに重篤な健康傷害が生じ、深刻な場合には死亡に至ることがある。また、発がん性、催奇形性などを示すものもあり、中でもアフラトキシンは極めて高い発がん性を示すことが広く知られている。食品中に残留するマイコトキシンによる健康被害防止のため、世界各国で厳しい規制値が設けられているが、各国の都合に合わせた規制値が採用されている。例えば、日本では、アフラトキシンに関しては、アフラトキシンBのみが規定されており、0.010ppmという基準値が設けられている。オクラトキシンに関しては日本の基準値はないが、オクラトキシンAに対して0.003〜0.05ppmと国によって大きく異なっている。従って、穀倉、穀粒取引関連事業、製粉所、飼料製造所、農耕事業、食品加工事業及び食品分析関連機関などでは、これらマイコトキシンの測定・検定が必要となる。
【0003】
マイコトキシンの分析法としては既に多くの方法が先行技術で開示されており、総説も出されている(非特許文献1)。液体クロマトグラフィ(HPLC)やガスクロマトグラフィ(GC)を用いる分析法が主に用いられている。マイコトキシンは、被検試料である穀物や果実から抽出され、前処理カラムなどを用いて夾雑成分と分離された後、適切な検出器を備えたHPLCまたはGCにより分離分析される。例えば、発ガン性の高いとされるアフラトキシンBは強い蛍光を発するため、多機能カラムまたはイムノアフィニティーカラム(特許文献1)で夾雑物質と分離した後、HPLC−蛍光検出法により検出・定量する、また、その確認試験としてLC/MS法を用いることが厚生労働省により通知されている(非特許文献2)。一方、オクラトキシンについては日本では規制されていないが、アフラトキシン同様に発蛍光性であるため、HPLC−蛍光検出法により検出・定量することが可能である(非特許文献1)。HPLCを用いる手法は精密分析において有用な方法であるが、使用機器が高価であると共に、比較的煩雑な試料処理及び分析時間が長いといった欠点を有する。従って、HPLCを用いる手法は特定の分析機関で実施されるものであり、試験結果が得られるまでには検体採取後、数日間を要するという問題がある。そのため、生産や取引事業の現場において行われる迅速・安価、かつ簡便な分析(オンサイト分析)には適さない。
【0004】
マイコトキシンを検出する別の方法としては免疫反応を利用したELISA法はある。ELISA法に用いられるウエルには、例えば、特定のマイコトキシンに特異的に結合する抗体がコーティングされている。マイコトキシンに特異性を示す抗体に関しては既に幾つかの先行技術が開示されている(特許文献2〜特許文献5)。ELISA法は、検体を溶液化するなどの予備処理を行う器具を持ち込むことができれば、測定すべき現場においてマイコトキシンによる汚染を比較的容易に知ることが可能である。ELISAの欠点としては、多くの滴下、洗浄、インキュベーション工程があり、測定時間だけで30分以上も要する点である。また、価格的にも安価とはいえない。
【0005】
一方、マイコトキシンを含む試料溶液を固体吸着剤上に抽出し、蛍光分光光度法によりマイコトキシンを測定するという方法が報告されている(非特許文献3、特許文献6及び特許文献7)。この方法では、コンピュータモデリングにより設計したマイコトキシンに対して親和性の高い合成固体吸着剤が用いられる。この吸着剤を用いて、試料溶液中のアフラトキシンまたはオクラトキシンを抽出した後、蛍光分光光度計を用いて吸着剤に保持されたアフラトキシンまたはオクラトキシンの蛍光スペクトルを採取するというものである。アフラトキシンまたはオクラトキシンの定量は、得られた蛍光スペクトルから、事前に測定した吸着剤の蛍光スペクトルを差し引くことにより行う。この方法により、吸着剤に依存する蛍光を除去して、差スペクトルから定性・定量することが可能であるが、吸着剤の蛍光強度が強い場合には差スペクトルのノイズが高くなり、定量精度が低下してしまう恐れがある。また、本法は、試験室内の試験操作の省力化という点において有効な手法であるが、使用機器が高機能な蛍光分光光度計であるため、種々の測定現場に可搬され、過酷な条件下で測定が行われるオンサイト分析に適用するのは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2008−143888号公報
【特許文献2】特許公開平4−360695号公報
【特許文献3】特許公開2009−520956号公報
【特許文献4】特許2551406号
【特許文献5】特許2787767号
【特許文献6】WO 2008/096179
【特許文献7】WO 2008/125887
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】田端節子、「カビ毒の分析法」、ぶんせき、2008、No.10、p.531(2008)。
【非特許文献2】厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課、食安監発第0728004号、平成20年7月28日付通知.「カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取り扱いについて」
【非特許文献3】E. Piletska、K. Karim、R. Coker、S. Piletsky、Journal of Chromatography A、vol.1217、p.2543(2010).
【非特許文献4】Yoshinori Inoue, Waka Kamichatani, Mitsuru Saito, Yasuyuki Kobayashi and Atsushi Yamamoto:Extraction and Separation Properties of Hydrophilic Compounds using Novel Water−Holding Adsorbents Bonded with a Zwitter−ionic Polymer、Chromatographia、vol.73、Number9−10、849−855(2011).
【非特許文献5】A.J. Alpert:Journal of Chromatography、vol.499、p.177(1990).
【非特許文献6】T. Tsukamoto、A. Yamamoto、W. Kamichatani and Y. Inoue:Chromatographia、vol.70、p.1525(2009)
【非特許文献7】T. Tsukamoto、M. Yasuma、A. Yamamoto、K. Hirayama、T. Kihou、S. Kodama and Y. Inoue:Journal of Separation Science、vol.32、p.3591(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたもので、マイコトキシンに汚染された食品などの中に存在するマイコトキシンのオンサイト分析において使用される、迅速、安価、かつ簡便なマイコトキシンのスクリーニング法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、マイコトキシン、特に、毒性の高いオクラトキシン及びアフラトキシンを迅速、安価、簡便、かつ高感度に検出可能なオンサイト分析手法提供すべく鋭意研究を行った結果、オクラトキシン及びアフラトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤に抽出し、その吸着剤上でオクラトキシン及びアフラトキシンを特異的に検出可能とする蛍光検出法を見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、マイコトキシンを含む試料溶液を、親水性基材に両性イオン性の官能基が導入されマイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤が充填されたカラムに通液し、当該吸着剤上にマイコトキシンを吸着させ、その後、洗浄液を通液して不要の夾雑成分を溶出させた後、マイコトキシンに対応する波長を持つ励起光を当該吸着剤上に保持されたマイコトキシンに照射し、マイコトキシンが発する蛍光を検出することによりマイコトキシンの濃度を測定するというマイコトキシンのスクリーニング法である。
【0011】
本発明においては、測定対象となるマイコトキシンをオクラトキシンとすることができる。
【0012】
また、本発明においては、測定対象となるマイコトキシンをアフラトキシンとすることができる。
【0013】
本発明において、マイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤には、親水性基材に両性イオン性の高分子または化合物が導入された親水性相互作用型の吸着剤が使用される。
【0014】
本発明において、両性イオン性の高分子が導入された吸着剤の一つの形態は、下記式(1)で示される両性イオン性の高分子が親水性基材に導入されている吸着剤である。
【0015】
【化1】

【0016】
本発明において、両性イオン性の高分子が導入された吸着剤のもう一つの形態は、下記式(2)で示される両性イオン性の高分子が親水性基材に導入されている吸着剤である。
【0017】
【化2】

【0018】
さらに、本発明においてマイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤としては、下記式(3)で示される両性イオン性の化合物が親水性基材に導入されている吸着剤も使用することができる。
【0019】
【化3】

【0020】
本発明において、親水性基材としては前記式(1)ないし式(3)の化合物が導入可能な官能基を有する多孔質の非芳香族系の親水性高分子ゲルまたはシリカゲルを用いることができる。
【0021】
本発明において、前記マイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤が充填されるカラムは、励起光を照射する照射領域及びカラム外部から蛍光を検出するための検出領域が、使用する励起光に対して発蛍光性を持たない光透過性材料により構成され、または、励起光または蛍光を透過可能とするための光透過構造を有しており、試料溶液の導入及び洗浄液の排出が可能に構成されているものである。
【発明の効果】
【0022】
マイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤上に吸着させたマイコトキシンに、被検マイコトキシンに対応する励起光を直接照射して、マイコトキシンから発せられる蛍光を測定するという本発明のマイコトキシンのスクリーニング法は、両性イオン性の高分子の水和力に基づいて吸着剤表面に形成される保水層に水溶性の高いマイコトキシンを親水性相互作用によって捕捉するため、微量のマイコトキシンを迅速、安価かつ簡便に測定することができる。また、使用する機器類が簡易で可動部もないため、種々の測定現場に可搬され、過酷な条件下で測定が行われるオンサイト分析に有効なマイコトキシンのスクリーニング法として有効な手法となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に用いられる吸着剤が充填された小容量のカラムの構成の一例を示した説明図である。
【図2】図2は、本発明のマイコトキシンのスクリーニング法における測定操作フローの一例を示した説明図である。
【図3】図3は、本発明のマイコトキシンのスクリーニング法における検出部の基本構成の一例を示した説明図である。
【図4】図4は、本発明のマイコトキシンのスクリーニング法によりオクラトキシンAを測定した時の蛍光プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において対象となるマイコトキシンとは、オクラトキシン及びアフラトキシンである。オクラトキシンには、オクラトキシンA、オクラトキシンB及びオクラトキシンCがあり、これらの内1種または2種以上が分析対象となる。また、アフラトキシンには、アフラトキシンB、B、G、G、M及びMがあり、これらの内1種または2種以上が分析対象となる。
【0025】
本発明は、マイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤上にマイコトキシンを吸着させ、吸着剤上で直接蛍光検出する分析手法である。本実施形態において使用されるマイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤としては、親水性基材に両性イオン性の官能基が導入されたものである。
【0026】
本実施形態において、マイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤には、親水性基材に両性イオン性の高分子または化合物が導入された親水性相互作用型の吸着剤が使用される。
【0027】
本発明において親水性基材に導入される両性イオン性の高分子の第1及び第2の形態としては、下記式(1)に示されるジアリルアミン−マレイン酸共重合体または下記式(2)に示されるアリルアミン−マレイン酸共重合体であり、これらの官能基が親水性基材に導入される。また、これら共重合体を混合して親水性基材に導入してもよい。これらの両性イオン性高分子は、例えば、ジアリルアミン誘導体またはアリルアミン誘導体と無水マレイン酸との共重合により得られる共重合体を加水分解することにより得ることができる。ジアリルアミン誘導体またはアリルアミン誘導体と無水マレイン酸との存在比(式(1)及び式(2)におけるmとnの比)は概ね1〜2:1であるものが用いられる。これらの両性イオン性高分子の分子量を正確に求めることは難しいが、大凡の平均分子量として5,000〜100,000のものが本発明に用いられる。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
前記両性イオン性の高分子は水溶性であり、それぞれのイオン性基の周りに多数の水分子が水和しているため、親水性基材にこれらの高分子が導入された吸着剤は高い保水性を示す。ジアリルアミン−マレイン酸共重合体を導入した吸着剤の保水性に関しては既に報告があり、親水性化合物が親水性相互作用に基づき捕捉されるとされている(非特許文献4)。本発明では、両性イオン性の高分子の水和力に基づいて吸着剤表面に形成される保水層に水溶性の高いマイコトキシンを親水性相互作用によって捕捉する。親水性相互作用とは、吸着剤の親水基に基づく極性や水素結合などの相互作用や、吸着剤に保持された水相への分配などの複合的な相互作用であり、親水性化合物のクロマトグラフィック分離に用いられている(非特許文献5)。この分離系は極性固定相とアセトニトリルなどの極性移動相とにより構成され、極性固定相への親和性を利用して極性化合物の分離を行うものである。厚生労働省通知食安監発第0728004号(非特許文献2)に記載の通知法におけるアフラトキシンの試験溶液の調製法ではアセトニトリル:水(9:1)でアフラトキシンBを抽出することとなっているため、通知法により調製された試験溶液の溶媒を変更することなく本発明で用いられる親水性相互作用を発現する吸着剤にマイコトキシンを吸着させることが可能である。また、オクラトキシンA及びオクラトキシンBに関しては、これら両性イオン性官能基の陽イオン性部位とオクラトキシンのカルボキシル基との間の静電的相互作用も加わり、本発明で用いられる吸着剤にさらに強固に吸着されることとなる。
【0031】
本発明において親水性基材に導入される両性イオン性官能基を有する吸着剤のさらなる形態としては、下記式(3)に示されるスルホベタイン型の両性化合物である。このような両性化合物を親水性基材に導入したスルホベタイン型吸着剤における親水性相互作用の発現に関しても報告がなされている(非特許文献5及び非特許文献6)。本発明では、スルホベタインが導入された吸着剤表面に形成される保水層に水溶性の高いマイコトキシンを親水性相互作用によって捕捉する。また、オクラトキシンA及びオクラトキシンBに関しては、スルホベタイン基の陽イオン性部位(アンモニウム基)とオクラトキシンのカルボキシル基との間の静電的相互作用により、本発明で用いられる吸着剤にさらに強固に吸着されることとなる。
【0032】
【化3】

【0033】
本発明においては、親水性相互作用を明確に発現させるため、前記両性イオン性の高分子またはスルホベタイン基を導入する基材にも親水性のものが使用される。親水性基材の一つの形態としては、公知の親水性モノマーと親水性架橋性モノマーとの共重合により得られる多孔質の親水性の高分子ゲルを使用することが可能であるが、前記両性イオン性の高分子またはスルホベタイン化合物を化学的に導入させるため、反応性官能基を有する必要がある。このような反応性基材は、反応性官能基を有する反応性モノマーと架橋性モノマーとの共重合、または親水性基材に後反応により反応性官能基を導入することにより得られる。前記両性イオン性高分子またはスルホベタイン化合物の導入においては、アンモニウム基との反応、またはカルボキシル基またはスルホ基との反応により行うことが可能であるが、導入反応の容易さ及び反応生成物の安定性の点を考えると、アンモニウム基との反応を利用するのが有利である。従って、本発明においては、反応性官能基としてアンモニウム基と反応可能なエポキシ基、ハロゲン化アルキル基などの官能基を有する多孔質の親水性高分子ゲルを基材として用いる。
【0034】
本発明においてはマイコトキシンを蛍光検出法で測定するため、基材の発蛍光性が測定精度に大きく影響する。事前に試料負荷前の吸着剤の蛍光強度を測定しておき、試料負荷後の蛍光強度から差し引くことでマイコトキシンの量を測定することも可能であるが、吸着剤の蛍光強度が高い場合にはノイズが高くなり、測定精度が低下すると共に、検出下限も悪化してしまう。そのため、非発蛍光性の基材を用いるのが好ましい。一般に、固相抽出に広く使用されている市販の吸着剤はジビニルベンゼン系樹脂であるため、例えアンモニウム基と反応可能な官能基が導入されていたとしても、これらは疎水性が強いだけでなく、比較的高い発蛍光性も示す。これらの吸着剤は、水溶性の高いマイコトキシンの吸着には不向きであり、直性蛍光検出を行うことができないため、本発明において使用することは好ましくない。実際には、完全な非発蛍光性の基材樹脂を得ることは困難であるが、本発明においては発蛍光性の低い、非芳香族系であるアクリレート系、メタクリレート系、ポリビニルアルコール系などの親水性高分子ゲルを用いる。また、セルロースやデキストランなどの多糖類系の親水性担体も用いることも可能である。
【0035】
アンモニウム基と反応可能な官能基を有する親水性高分子ゲルの一つの形態は、アンモニウム基と反応可能な官能基を有する親水性のビニルモノマーと、2個以上のビニル基を有する親水性の架橋性モノマーとの共重合によって得られる架橋性高分子である。アンモニウム基と反応する官能基を有する親水性のビニルモノマーの官能基としては、ハロゲン化アルキル基、エポキシ基などがあげられる。ハロゲン化アルキル基を有する反応性モノマーとしては、例えば、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−クロロエチルアクリレートなどがあげられる。エポキシ基を有する官能性モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどがあげられる。これらモノマーと共重合が可能なビニル基を2個以上有する親水性の架橋性モノマーとしては、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールトリメタクリレートなどの多官能メタクリレート系モノマーなどがあげられる。
【0036】
アンモニウム基と反応可能な官能基を有する親水性基材のもう一つの形態は、水酸基を多数有する親水性担体に、アンモニウム基と反応可能な官能基を化学反応によって導入することにより得られる。水酸基を多数有する親水性担体としては、ポリビニルアルコール系架橋性樹脂、ヒドロキシメタクリレート系架橋性樹脂などの合成高分子系の親水性担体、さらにはセルロース、デキストランなどの多糖類を原料とする親水性担体などを使用することができる。これらの親水性担体の水酸基に公知の方法により、ハロゲン化アルキル基、エポキシ基などのアンモニウム基と反応可能な官能基を導入することが可能である。
【0037】
本発明において用いられる親水性基材のさらなる形態としては、公知の方法により得られる多孔質のシリカゲルを使用することが可能であるが、前記両性イオン性高分子またはスルホベタイン化合物を化学的に導入させるため、事前に反応性官能基を導入しておく必要がある。この場合も、導入反応の容易さ及び反応生成物の安定性からアンモニウム基と反応可能な官能基を導入することが好ましい。アンモニウム基と反応が可能な反応性官能基の導入方法としては、反応性官能基を有するシランカップリング剤を公知の方法によりシリカゲル表面のシラノール基に反応させればよい。例えば、シリカゲルにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを反応させることで、シリカゲル表面にアンモニウム基と反応可能なエポキシ基を導入することが可能である。
【0038】
本発明においては、高い吸着能が要求されるため、十分な比表面積を有する多孔質の親水性基材が必要となる。そのため、本発明においては、非膨潤時の細孔物性として、平均細孔径6〜50nm、比表面積10〜800m/gのものを用いるのが好ましい。また、本発明において使用される親水性基材の粒子径は任意に設定することができるが、一般に、平均粒子径で25〜200μmのものを用いる。また、親水性基材の形状に関しては、不定形の破砕型であっても、球形であってもかまわない。このような親水性の基材の反応性官能基に、両性イオン性官能基が導入される。
【0039】
上記両性イオン性官能基が導入された吸着剤は、小容量、例えば、吸着剤を充填可能な空間の容積が2mL以下のカラムに充填され使用される。小容量のカラムの形状は、円筒状であっても角形の筒状であってもかまわない。図1に本発明に用いられる小容量のカラムの構造の一例を示す。両性イオン性官能基が導入された吸着剤12は、下部フリット13が挿入されているエンプティカートリッジ11に充てんされる。金属スクリーン(金網)からなる上部フリット14を挿入した後、上部フリット固定リング15を挿入して固定する。このようにして作製された小容量のカラム10が、マイコトキシンの吸着・検出に用いられる。ここで、エンプティカートリッジ11は、励起光、または、吸着剤12に抽出・吸着されたマイコトキシンからの蛍光を透過させる必要があるため、励起光、または、蛍光を透過する光透過性の材質でなければならない。材質そのものは特に限定しないが、使用可能な材質としては、ガラス、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、透明塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂などを使用することができる。実際には、検出する光の波長や使用溶媒への耐性、さらには製造コストなどを考慮して選択する。低蛍光性と光透過性を重視して選択するならば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)が好ましい。一般に固相抽出カートリッジのフリットには、ポリエチレンやポリプロピレンなどの焼結多孔質材料が使用されている。本発明においても下部フリット13にはこのような材料を使用することができる。しかし、このような材料は発蛍光性があるため、励起光が照射される上部フリットとしては使用することができない。これらの代わりにガラス焼結体の使用も考えられるが、散乱光が増加するため好ましくはない。そこで、金属スクリーン(金網)を上部フリット14として使用することが好ましい。吸着剤の低蛍光化と共にこれらの対策により、バックグランド蛍光の低減を図る。
【0040】
ここで、本発明におけるマイコトキシンの分析手順を図2のフロー図を用いて説明する。検体(測定対象となる食品など)は、厚生労働省通知食安監発第0728004号(非特許文献2)に準じて調製を行う。即ち、検体を粉砕均一化し、その一部をブレンダー容器に採り、アセトニトリル・水(9:1)を加え、5分間ブレンド後、ろ過又は遠心分離をし、そのろ液または上澄を試験溶液とする。図2において予備処理工程が記載されているが、脂肪、色素、タンパク質などが少ない試料であれば、直接両性イオン性官能基導入吸着剤が充填された小容量のカラムに通液し、マイコトキシンを吸着剤に抽出・吸着させる。脂肪、色素、タンパク質などが多い試料の場合には、逆相型固相抽出剤を充填した市販固相抽出カートリッジ、または厚生労働省通知食安監発第0728004号(非特許文献2)に記載の多機能カラムまたはイムノアフィニティーカラムを通過させ、その流出液を両性イオン性官能基が導入された吸着剤が充填された小容量のカラムに通液する。マイコトキシンを吸着させた後、適切な洗浄溶媒、例えば90〜100%アセトニトリル−水を用いて吸着剤を洗浄後、過剰の溶媒を押し流出し、検出工程に入る。
【0041】
次いで、吸着剤に吸着されたマイコトキシンに励起光を照射し、発する蛍光光量からマイコトキシンの量を求める。蛍光測定によりマイコトキシンの量を求めるため、従来のクロマトグラフィーなどによる測定よりも短時間に測定を完了することができる。
マイコトキシンが吸着された吸着剤への励起光の照射方法は特に限定するものではないが、マイコトキシンが吸着した吸着剤に対して可能な限り励起光が当たるようにすることが好ましい。励起光の照射及び蛍光検出の一例を図3に示す。本発明のスクリーニングを行うスクリーニング装置は、励起光を照射する励起光照射部20、蛍光を検出する蛍光検出部30及び蛍光強度を濃度に換算する演算器(図示せず)を備えている。励起光照射部20は、LEDや水銀ランプなどの励起光源21の前方にホルダ23により可視光カットフィルタ22を配置してなる。本実施形態では、励起光源21としてLEDを採用した。蛍光検出部30は、フォトダイオードやフォトマルチプライアからなる検出器31の前方にホルダ34により励起光カットフィルタ32と長波長側カットフィルタ33とを配置してなる。励起光照射部20はエンプティカートリッジ11に挿入し、カラム10の上部フリット14側から励起光を照射し、蛍光検出部30により発する蛍光を光透過性材料で作成されたエンプティカートリッジ11を通して直角方向から検出を行う。検出された蛍光は、演算器に送られ強度から濃度に換算される。ここで、上部フリット14がカラム10において励起光を照射する照射領域、エンプティカートリッジ11の円筒側面部11aがカラム10の外部から蛍光を検出するための検出領域となる。なお、図3において励起光は上部より照射されているが、蛍光検出に支障がなければ、横方向からエンプティカートリッジを通して励起光を吸着剤に吸着したマイコトキシンに照射し、発蛍光させることも可能である。この場合、蛍光は励起光に対して直角の方向から検出することが好ましい。このような方法を取ることが可能となれば、上部フリット14は光透過構造のものでなくても良い。
【0042】
一般的な蛍光分光光度計では、励起光源にキセノンランプやメタルハライドランプなどが用いられ、回折格子などで分光された光が励起光として用いられる。また、蛍光の受光においても分光した後、フォトマルチプライヤなどで検出されている。これらは高感度検出に有効ではあるが、振動に弱く、高価であり、また可搬可能とするために小型化することも難しい。本発明のマイコトキシン分析法は、オンサイト分析においても用いるため、可搬可能であり、過酷な条件下での使用にも耐えられるものでなければならない。そこで、本発明では、分光器(モノクロメーター)を使用しない光学系を用いる。励起光源には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー、さらにはハロゲンランプなどの小型化が可能なものを用いる。価格の点ではLEDやハロゲンランプが、波長特性としては半導体レーザーやLEDが有利となる。また、蛍光の受光にはシリコンフォトダイオードを用いる。図3において、励起光源からの光は分光することなく吸着剤に照射するが、LEDやハロゲンランプは可視領域の光成分も発光しているため、可視光カットフィルタ22を取り付けて可視光成分を除去する。一方、受光側は、励起光成分を除去するための励起光カットフィルタ32と赤外領域の光を除去するための長波長側カットフィルタ33を取り付ける。このようにすることにより、検出能力を損なうことなく、可動部を無くし、小型化、可搬化、低コスト化を行うことが可能となる。
【0043】
一般に、アフラトキシン及びオクラトキシンの蛍光検出時の設定波長は、アフラトキシンBについては励起波長:365nm、蛍光波長:450nm、オクラトキシンAについては励起波長:330nmまたは370nm、蛍光波長:460nmまたは420nmである。従って、370nmに極大発光を持つ市販の紫外発光LEDを励起光源として使用することができる。この紫外発光LEDに300〜400nmの光を透過する可視光カットフィルタ22を組み合わせて用いることによりアフラトキシン及びオクラトキシンの励起に有効な波長を得ることができる。一方、受光側には400nm以下の光を除去する励起光カットフィルタ32と、長波長光をカットする長波長側カットフィルタ33の2枚をシリコンフォトダイオードの前に設置する。これにより、励起光の影響を受けずにアフラトキシン及びオクラトキシンに基づく蛍光を確実に受光することが可能となる。このように調整された励起光を照射することにより、アフラトキシン及びオクラトキシンに基づく蛍光を検出することが可能であるが、検出器の応答遅れなどがあるため、検出器において蛍光光量が一定となった点の強度、または一定時間(例えば、10〜100ms間)の積算値を求め、この値をアフラトキシンまたはオクラトキシンの濃度に換算する。
【0044】
上述の通り、本発明の分析法を用いることにより、アフラトキシン及びオクラトキシンをオンサイトで簡便かつ迅速に測定することが可能となるが、本発明のスクリーニング法により測定し終えたマイコトキシンが吸着されているカラムを精密分析が可能な試験室に持ち帰り、適切な溶液を用いて吸着剤から溶出させることにより、厚生労働省通知食安監発第0728004号(非特許文献2)に記載されているようなHPLC−蛍光検出法、HPLC−質量分析法で確認試験を行うことが可能である。本発明の吸着剤からのアフラトキシン及びオクラトキシンの溶出には、吸着剤−溶質間の親水性相互作用及び静電的相互作用を切るまたは低減させる溶液を用いることで可能である。これらの相互作用を切るまたは低減させる溶液としては、例えば、トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルやメタノール、またはこれらに水を混合した溶液などがあげられる。このような溶液を用いることで90%以上の回収率をもって、両性イオン性官能基が導入された吸着剤から溶出させることができる。
【0045】
以上のように、本発明のマイコトキシンのスクリーニング法を用いることで、食品や飼料、食品原料などに残存するアフラトキシン及びオクラトキシンをオンサイトで簡便かつ迅速に測定することが可能となる。次に実施例によって本発明を説明するが、この実施例によって本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0046】
(実施例1) 両性イオン性官能基導入吸着剤の合成
(1) 親水性基材の合成
親水性基材は、水系懸濁重合法により作製した。グリシジルメタクリレート160g、エチレンジメタクリレート40g、酢酸ブチル200gの混合溶液に2、2’−アゾビスイソブチロニトリル2gを溶解した混合物を、0.1%メチルセルロース水溶液1,000mL中に加え、攪拌機を用いて攪拌羽根を400rpmで回転させ、油層を分散した。その後、分散液(懸濁液)を加温し、80℃で6時間重合反応を行った。生成した共重合体粒子を濾取し、水、メタノールの順で洗浄した。一日風乾後、分級を行い、45〜90μmの親水性基材75gを得た。この親水性基材の平均粒子径と分散度(d75/d25)をBeckman Coulter Multisizer 3 Coulter Counterで測定したところ、平均粒子径は64.5μm、分散度は1.26であった。また、比表面積と平均細孔径をBeckman Coulter SA3100 Surface Area Analyzerで測定したところ、比表面積は31m/g、平均細孔径は20nmであった。
【0047】
(2) 両性イオン性高分子の導入
ジアリルアミン−マレイン酸共重合体(日東紡績製PSA−410C、濃度40%)50mLを、水250mL、2−プロパノール100mLの混合溶媒中に加え、均一な溶液とした後、実施例1の(1)で得られた親水性基材50gを加え、攪拌して均一なスラリーとした。さらに、5M NaOH 50mLを加えて、攪拌しながら60℃で20時間反応をさせた。反応終了後、2−プロパノール、水、メタノールの順で洗浄し、一晩風乾させ、両性イオン性官能基導入吸着剤を得た。導入された両性イオン性高分子の量を求めるため、Perkin Elmar 2400 Series II CHNS/O Elemental Analyzerで測定したところ、窒素量は0.64N%であった。
【0048】
(実施例2) オクラトキシンAの抽出・検出
(1) 両性イオン性官能基導入吸着剤によるオクラトキシンの抽出
実施例1で得られた両性イオン性官能基導入吸着剤50mgをとり、下部に孔径20μmのポリエチレン焼結多孔体からなる下部フリットを挿入したシクロオレフィンコポリマー(COC)製のシリンジ型の固相抽出用カートリッジ(自作)に充填し、さらに上部に開孔径25μmのステンレススクリーンメッシュ(関西金網製)を円形に打ち抜いたものを挿入し、フッ素樹脂製の上部フリット固定リングで固定し、小容量のカラムを作製した。この小容量のカラムに、純水10mL、アセトニトリル10mLを順に通液して、吸着剤のコンディショニングを行った。その後、オクラトキシンA(OTA)をアセトニトリル−水(9:1)で溶解した溶液(濃度:0.1ppm)10mLを通液してオクラトキシンAを吸着剤に吸着させ、その後、アセトニトリル5mLで洗浄した。
【0049】
(2) オクラトキシンAの検出
日亜化学製の紫外発光LED(NSHU591B)を筒状のLEDホルダに挿入・固定し、全面に可視光カットフィルタ(HOYA製U360)を固定し、励起光ユニットを作製した。受光ユニットは、浜松ホトニクス製シリコンフォトダイオード(S1337−1010BR)に、東海光学製の励起光カットフィルタと長波長側カットフィルタ(共に自作)を取り付けて作製した。これらの励起光ユニットと受光ユニットを図3に示すように配置し、励起光を照射して蛍光検出を行った。検出された蛍光プロファイルを図4に示す。1μgのオクラトキシンAを良好に検出することができた。同様な方法によりオクラトキシンAの0.2ppm溶液及び0.3ppm溶液各10mLを抽出・検出した。図4にその時の蛍光プロファイルを示した。蛍光強度は、試料濃度に比例した強度であった。この結果を基に、ブランクのノイズから計算したオクラトキシンAの検出下限(S/N=3)は約0.01μgであった。
【0050】
(3) 両性イオン性官能基導入吸着剤からのオクラトキシンAの溶出
実施例2(2)で使用した0.1ppmのオクラトキシンAを通液した後の小容量のカラムからのオクラトキシンAの回収を行った。溶離液には2%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルを用い、溶出液を蛍光分光光度法で測定した。その結果、オクラトキシンAの回収率は94%であった。このことから、本発明の分析法で陽性または擬陽性となった場合、吸着剤から溶出させることで、HPLC−質量分析法を用いた精密な確認試験を行うことが可能であると判断された。
【0051】
(実施例3) アフラトキシンBの抽出・検出
実施例2と同様の方法を用いてアフラトキシンBの抽出・検出を試みた。アフラトキシンB溶液の濃度は0.1ppmとした。図4に示したオクラトキシンAと同様のプロファイルが得られ、この時の検出下限(S/N=3)は約0.01μgであった。また、1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルを用いて小容量カラムから溶出させた時の回収率は96%であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、高価で専門的知識が必要な分析機器を用いることなく、簡便かつ迅速な方法で、食品や飼料または環境中のマイコトキシンを高感度に測定することが可能である。本発明のマイコトキシンのスクリーニング法を用いることにより、オンサイトで微量のマイコトキシンの測定が可能となるため、流通サイクルに適応した分析時間で、多検体を測定するが可能となる。本発明のマイコトキシンのスクリーニング法は、既知のマイコトキシンすべてに適応できるわけではないが、アフラトキシンまたはオクラトキシンとしてグルーピングされた結果が得られるため、これらマイコトキシンのスクリーニングに有効である。さらには、適切な溶出条件を設定することで吸着剤からの溶出も可能であるため、一回のサンプリングで簡易分析の後にLC/MSを用いる確認試験も行うことが可能である。また、本発明のマイコトキシンのスクリーニング法は、精密分析法の予備試験法と位置付けることができる分析法であり、総合的な分析時間の短縮、コストダウンと共に、食の安全の確保に貢献することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:カラム(吸着剤充填カートリッジ)
11:エンプティカートリッジ(シリンジ型)
12:吸着剤
13:下部フリット
14:上部フリット(スクリーン)
15:上部フリット固定リング
20:励起光照射部
21:励起光源
22:可視光カットフィルタ
23:ホルダ
30:蛍光検出部
31:検出器
32:励起光カットフィルタ
33:長波長側カットフィルタ
34:ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコトキシンを含む試料溶液を、親水性基材に両性イオン性の官能基が導入されマイコトキシンに対して選択的な親和性を有する吸着剤が充填されたカラムに通液し、当該吸着剤上にマイコトキシンを吸着させ、その後、洗浄液を通液して不要の夾雑成分を溶出させた後、マイコトキシンに対応する波長を持つ励起光を当該吸着剤上に保持されたマイコトキシンに照射し、マイコトキシンが発する蛍光を検出することによりマイコトキシンの濃度を測定することを特徴とするマイコトキシンのスクリーニング法。
【請求項2】
前記マイコトキシンがオクラトキシンであることを特徴とする請求項1に記載のマイコトキシンのスクリーニング法。
【請求項3】
前記マイコトキシンがアフラトキシンであることを特徴とする請求項1に記載のマイコトキシンのスクリーニング法。
【請求項4】
前記吸着剤が、下記式(1)で示される両性イオン性の高分子が親水性基材に導入されている吸着剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のマイコトキシンのスクリーニング法。
【化1】

【請求項5】
前記吸着剤が、下記式(2)で示される両性イオン性の高分子が親水性基材に導入されている吸着剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のマイコトキシンのスクリーニング法。
【化2】

【請求項6】
前記吸着剤が、下記式(3)で示される両性イオン性の化合物が親水性基材に導入されている吸着剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のマイコトキシンのスクリーニング法。
【化3】

【請求項7】
前記親水性基材は、前記式(1)ないし式(3)の化合物が導入可能な官能基を有する多孔質の非芳香族系の親水性高分子ゲルまたはシリカゲルからなることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載のマイコトキシンのスクリーニング法。
【請求項8】
前記カラムにおいて励起光を照射する照射領域及びカラム外部から蛍光を検出するための検出領域が、使用する励起光に対して発蛍光性を持たない光透過性材料により構成され、または、励起光または蛍光を透過可能とするための光透過構造を有しており、試料溶液の導入及び洗浄液の排出が可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載のマイコトキシンのスクリーニング法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220401(P2012−220401A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88117(P2011−88117)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【出願人】(000229818)日本フイルコン株式会社 (58)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】