説明

マイコトキシン生合成阻害剤

【課題】農作物、食品、飼料の生産現場及び貯蔵中における品質および消費者に対する健康被害リスク上、重要懸念事項となっている農作物、食品、飼料のマイコトキシン汚染を抑制するマイコトキシン生合成阻害剤を提供する。
【解決手段】1種又は2種以上の第4級アンモニウム塩(例えばジアルキルジメチルアンモニウム塩)を有効成分として含有することを特徴とする、農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は2種以上の第4級アンモニウム塩を有効成分として含有する、農作物中、食品中、飼料中の真菌(糸状菌)が産生するマイコトキシンの生合成阻害剤に関するものである。
【0002】
更に、このマイコトキシン生合成阻害剤を用いて、マイコトキシンの農作物、食品、飼料への汚染量を軽減することを意図した処理方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0003】
マイコトキシンとは真菌(糸状菌)の二次代謝産物として産生される毒の総称であり、マイコトキシンに汚染された食品や飼料の摂取により、人や家畜には急性もしくは慢性の生理的あるいは病理的障害が生じる。現在、100種類以上のマイコトキシンが知られているが、代表的なものとして、デオキシニバレノールやニバレノール等のトリコテセン系マイコトキシン、天然の物質としては最も発癌性の高いアフラトキシン、その他にもフモニシン、オクラトキシン、シトリニン、パツリン、ゼアラレノン等がある。
【0004】
赤かび病菌はコムギ、オオムギ、トウモロコシなどの重要穀物に感染し、収穫に大きな打撃を与える。更に収量の減少に加え、穀粒中にトリコテセン系やゼアラレノンといったマイコトキシンを蓄積させ、食品安全性の観点からも大きな問題を起こす。欧州、北米および東アジアといった麦類栽培の盛んな地域におけるマイコトキシンに関する研究の歴史は古く、毒性・汚染量の両面から人畜への影響が最も懸念される毒物として世界的に注目を集めている。
【0005】
トリコテセン系マイコトキシンに汚染された食品の摂取は、嘔吐・下痢を中心とした消化器症状を主症状とする急性中毒を引き起こす。人畜に対する毒性面からマイコトキシンの中でもデオキシニバレノール及びニバレノールが着目され、その中でも特にデオキシニバレノールが着目されている。すでに欧州並びに北米では穀物中におけるデオキシニバレノール汚染量の自主規制値を設定し、監視強化の体制を整えつつある。
【0006】
このようにデオキシニバレノール監視の機運が国際的に高まる中で、2002年、我が国でも厚生労働省が小麦中デオキシニバレノール汚染量の暫定基準値1.1ppmを設定し、市場に流通する小麦の安全性を確保する旨通達を行った(非特許文献1)。これに関連して、飼料安全法上の指導通知として農林水産省は3ヶ月齢以上の牛に給与される飼料中のデオキシニバレノールの暫定許容値4.0ppm、それ以外の家畜には1.0ppmを設定した(非特許文献2)。マイコトキシンとしてデオキシニバレノールが注目される以前は、玄麦出荷段階における目視検査で赤かび病被害粒混入率を1%未満とする法規制を行うことで、マイコトキシンによる健康的リスクから国民を守ってきた。このため麦類生産現場では麦類赤かび病原性真菌に有効な殺菌剤を施用することで赤かび病害を軽減・抑制する努力が行われてきた。
【0007】
麦類赤かび病原性真菌に有効な薬剤としては、(RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−オール(一般名:テブコナゾール)、(1RS,5RS)−5−(4−クロロベンジル)−2,2−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンタノール(一般名:メトコナゾール)、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(一般名:プロピコナゾール)、1,2-ビス(3-メトキシカルボニル-2-チオウレイド)ベンゼン(一般名:チオファネートメチル)、メチル=(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート(一般名:アゾキシストロビン)、メチル=(E)−2−メトキシイミノ[α−(o−トリルオキシ)−o−トリル]アセテート(一般名:クレソキシムメチル)、methyl(E)-N-{2-chloro-5-[1-(6-methyl-2-pyridinyl-methoxyimino)ethyl]benzyl}carbamate(一般名:ピリベンカルブ 開発コード:KIF-7767)などが挙げられる。
【0008】
マイコトキシン、特にデオキシニバレノールへの注目に伴い、その汚染濃度の分析が進むにつれ、赤かび病罹病程度とデオキシニバレノール汚染量の間に直接的な関連性がないことが明らかになりつつある(非特許文献3)。
【0009】
これは殺菌剤施用による病害防除だけではマイコトキシン汚染を十分防ぐことはできていない。更に麦類生産現場では各種殺菌剤の複合施用による麦類赤かび病の防除を行っても1.1ppmを超えるデオキシニバレノールが検出されるといった事例が頻出し、生産者にとっては悩みの種となっている。つまり、従来の技術であるマイコトキシン産生能を有する病原性真菌類の防除だけではデオキシニバレノール汚染量を十分抑制することはできないのである。
【0010】
特許文献1には、亜リン酸及び亜リン酸エステルの、アンモニウム塩、第1〜4級アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び多価金属塩を麦類に施用することによるマイコトキシン汚染量の抑制方法が開示されている。しかし、様々な農薬を併用できる展着剤については、マイコトキシン汚染を抑制する技術はこれまで見い出されていない。
【非特許文献1】厚生労働省 食発第0521001号
【非特許文献2】プレスリリース 平成14年7月5日 農林水産省生産局畜産部飼料課
【非特許文献3】Bai,G−H,Plattner,R and Desjardins,A.:Relationship between Visual Scab Ratings and Deoxynivalenol in Wheat Cultivars,The 1998 NATIONAL FUSARIUM HEAD BLIGHT FORUM,CHAPTER 2、P.21−25
【特許文献1】特開2003?277210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記観点からなされたものであり、農作物、食品、飼料のマイコトキシン汚染、特にデオキシニバレノールによる汚染量を1.1ppm以下若しくは、可能な限り低汚染量へと抑制する効果を有する、真菌によるマイコトキシンの生合成を阻害する阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、1種又は2種以上の第4級アンモニウム塩を有効成分として含有する組成物が、農作物の赤かび病原性真菌に対する生育阻害活性はないが、農作物、食品、飼料を汚染するマイコトキシンの生合成に優れた阻害効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
また、本発明者らは、他の農園芸用殺菌剤と併用して処理することにより、基準値1.1ppmを超える高濃度のマイコトキシン汚染が観測された殺菌剤との併用においては基準値以下へマイコトキシン汚染量を低減し、また元々低い汚染レベルを示す殺菌剤との併用でもマイコトキシン汚染の更なる抑制効果を示し、農園芸殺菌剤の単独処理時に比してマイコトキシン汚染量を低減する効果をも併せて見出し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)1種又は2種以上の第4級アンモニウム塩を有効成分として含有することを特徴とする、農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(2)第4級アンモニウム塩がテトラアルキルアンモニウム塩である(1)に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(3)第4級アンモニウム塩がジアルキルジメチルアンモニウム塩である(1)に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(4)第4級アンモニウム塩がポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウム塩である(1)に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(5)ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウム及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む組成物を有効成分として含有することを特徴とする、農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(6)アルキル基が炭素数12〜20の直鎖もしくは分岐鎖である(1)〜(5のいずれか)に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(7)更に、1種又は2種以上の農園芸用殺菌活性成分を有効成分として含有することを特徴とする、(1)〜(6のいずれか)に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(8)農園芸用殺菌活性成分が、テブコナゾール、メトコナゾール、プロピコナゾール、チオファネートメチル、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、ピリベンカルブ(methyl(E)-N-{2-chloro-5-[1-(6-methyl-2-pyridinyl-methoxyimino)ethyl]benzyl}carbamate)より選択される、(7)に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(9)マイコトキシンがデオキシニバレノールである(1)〜(8)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(10)マイコトキシンがニバレノールである(1)〜(8)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(11)マイコトキシンがアフラトキシンである(1)〜(8)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(12)マイコトキシンがフモニシンである(1)〜(8)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を栽培中の農作物に施用することを特徴とする、農作物及びそれを用いた食品や飼料のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
(14)(1)〜(12)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を収穫後の農作物に施用することを特徴とする、農作物及びそれを用いた食品や飼料のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
(15)(1)〜(12)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を食品に処理することを特徴とする、食品のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
(16)(1)〜(12)のいずれかに記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を飼料に処理することを特徴とする、飼料のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイコトキシン生合成阻害剤を用いれば、農作物中、食品中、飼料中の真菌によるマイコトキシンの生合成を阻害することができる。そして、本発明のマイコトキシン生合成阻害剤を農作物、食品、飼料に処理することにより、農作物、食品、飼料のマイコトキシン汚染、特にデオキシニバレノールによる汚染量を1.1ppm以下、若しくは可能な限り低汚染量へと抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の提供する第4級アンモニウム塩を含む組成物としては、マイコトキシンによる汚染を抑制するものであれば特に限定されるものではないが、例えばモノアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等を挙げることができる。ここでいうアルキル基としては、炭素数が12〜20の直鎖もしくは分岐鎖のものが好ましい。塩の種類も特に限定されないが、例えば塩酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭素塩等を挙げることができる。本発明に利用できる好適な例としては、ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウムとポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含有する展着剤のニーズ(商品名:花王株式会社製)がある。
【0018】
本発明の農作物のマイコトキシン汚染抑制効果を検定する方法としては、農作物である市販の精白米に対し第4級アンモニウム塩を含む展着剤の単独処理及び展着剤化合物処理を行わない対照群に、赤かび病菌を接種、培養を行い、赤かび病菌によって培地(この場合は精白米)中に生産されたマイコトキシンを定量する方法を挙げることが出来る。このような方法により、第4級アンモニウム塩を含む組成物が農作物病原性真菌の防除とは無関係にマイコトキシンの生合成に対し優れた阻害効果を有することが確認された。
【0019】
更に、土壌に栽培した小麦に第4級アンモニウム塩を含む組成物と殺菌剤組成物を混用して施用したものと、殺菌剤組成物の単独施用、いずれの施用も行わない対照群に、予め培養した赤かび病菌を接種することにより、小麦赤かび病発病穂率および発病小穂率の比較、更には収穫された小麦中のマイコトキシンを定量することにより判定若しくは測定する方法を挙げることが出来る。このような方法により、第4級アンモニウム塩を含む組成物がマイコトキシン汚染に対し優れた抑制効果を有することが確認された。
【0020】
本発明において殺菌剤は、通常に使用される農園芸用殺菌活性化合物であればよく、好適には、例えば、エルゴステロール生合成阻害剤(例えば、テブコナゾール、メトコナゾール、プロピコナゾール、など)、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、トリフロキシストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピリベンカルブ、チオファネートメチル及びイミノクタジンのような、麦赤かび病に有効な殺菌活性化合物であり、更に農薬取締法上、農作物に対して使用が認められているものである。
【0021】
更に、本発明のマイコトキシン生合成阻害剤には、本発明の効果を妨げない限り、上記の組成物及び殺菌剤以外に、展着剤、界面活性剤、担体など、任意の成分を含有していてもよい。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の有効成分である化合物として第4級アンモニウム塩を含む展着剤(商品名:ニーズ)を用いた試験例を挙げ、本発明の更に具体的な説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)マイコトキシン生合成阻害試験
精白米培地(精白米50g+水15ml)に各種展着剤50mgを添加した後、500ml容の三角フラスコに入れ、シリコン栓をしてオートクレーブ滅菌を行った。これにポテトデキストロース液体培地にて前培養を行った赤かび病菌(Fusarium graminearum)の菌液5mlを、それぞれ精白米培地に接種し、27℃で7日間培養を行った。培養終了後、全培養物を60℃の恒温器にて18時間乾燥し、その後粉砕した。この全粒粉を分析用試料とした。分析用試料中のマイコトキシン濃度の定量は協和メデックス株式会社に依頼し実施された。また、培養終了時に赤かび病菌の気中菌糸の長さを測定し、本試験で使用した各種展着剤が赤かび病菌の菌体生育に与える影響を示した。本試験の結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

* A: ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウム(陽イオン系)
B: ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(非イオン系:エーテル系)
C: ポリオキシエチレンアルキルエーテル(非イオン系:エーテル系)
D: ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(非イオン系:エステル系)
E: ソルビタン脂肪酸エステル(非イオン系:エステル系)
F: ポリオキシエチレン樹脂酸エステル(非イオン系:エステル系)
G: ポリナフチルメタンスルホン酸ナトリウム(陰イオン系)
H: リグニンスルホン酸カルシウム(陰イオン系)
** マイコトキシン:デオキシニバレノール+ニバレノール(ppb)
【0025】
表1の結果から分かるように、いずれの展着剤も赤かび病菌の生育に影響を与えることがなかった。しかしながら、培養物中のマイコトキシン濃度は、第4級アンモニウム塩を含むニーズを添加したもののみ、著しく低かった。これらのことから、第4級アンモニウム塩を含むニーズは、赤かび病菌によるマイコトキシンの生合成を強力に阻害することが明らかである。
【0026】
(実施例2)農園芸用殺菌剤との混用施用による小麦収穫物中のマイコトキシン汚染量検定試験
小麦(品種:ハルユタカ)を平成17年4月27日に播種し、慣行の耕種概要に従って栽培し、1区10mの試験区(3反復)を設けた。展着剤(商品名:ニーズ)と水からなる液体混合物中に各種殺菌剤を含む懸濁液を調製した。ニーズの濃度は1000ppm、殺菌剤を0.02〜0.07%含む水溶液を調製して、10a当たり100Lを6月30日(開花始め)、7月8日、7月15日、7月22日の合計4回、葉面に散布した。比較の試験区としては、展着剤を含まない殺菌剤処理区、及び展着剤も殺菌剤も散布しない区を設けた。7月3日に赤かび病菌(Fusarium graminearum)の胞子懸濁液を噴霧接種し、7月15日に病害の発生を確認した。収穫は8月11日に試験区内の全株を刈り取り、乾燥、脱穀し、小麦粒を得た。この小麦粒を粉砕し、得られた全粒粉を分析用試料とした。この分析用試料中のマイコトキシン濃度の定量を(実施例1)と同様に協和メデックス株式会社に依頼し実施された。本試験の結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

*6月30日:クレソキシムメチル 0.02075%
7月8日:テブコナゾール 0.02%
7月15日:チオファネートメチル0.7%
7月22日:プロピコナゾール 0.025%
**発病小穂率より算出(無処理区の発病穂率65.7%、発病小穂率25.22%の甚発生条件下)
*** マイコトキシン:デオキシニバレノール+ニバレノール(ppb)
N.D.:検出限界未満
【0028】
表2の結果から分かるように、農園芸用殺菌剤のみの処理に比べて、ニーズを毎回混用して処理した試験区から収穫した小麦粒のマイコトキシンの濃度は低かった。このことからも、第4級アンモニウム塩を含むニーズは、赤かび病菌によるマイコトキシンの生合成を阻害し、農作物へのマイコトキシン汚染を抑制することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のマイコトキシン生合成阻害剤は、それ単独若しくは農園芸用殺菌剤と併用して農作物、食品、飼料に処理することにより利用することができ、食品安全性の観点から大きな問題になっている農作物、食品、飼料のマイコトキシン汚染を、抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上の第4級アンモニウム塩を有効成分として含有することを特徴とする、農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項2】
第4級アンモニウム塩がテトラアルキルアンモニウム塩である請求項1に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項3】
第4級アンモニウム塩がジアルキルジメチルアンモニウム塩である請求項1に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項4】
第4級アンモニウム塩がポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウム塩である請求項1に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項5】
ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウム及びポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む組成物を有効成分として含有することを特徴とする、農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項6】
アルキル基が炭素数12〜20の直鎖もしくは分岐鎖である請求項1〜5のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項7】
更に、1種又は2種以上の農園芸用殺菌活性成分を有効成分として含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項8】
農園芸用殺菌活性成分が、テブコナゾール、メトコナゾール、プロピコナゾール、チオファネートメチル、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、ピリベンカルブ(methyl(E)-N-{2-chloro-5-[1-(6-methyl-2-pyridinyl-methoxyimino)ethyl]benzyl}carbamate)より選択される、請求項7に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項9】
マイコトキシンがデオキシニバレノールである請求項1〜8のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項10】
マイコトキシンがニバレノールである請求項1〜8のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項11】
マイコトキシンがアフラトキシンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項12】
マイコトキシンがフモニシンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を栽培中の農作物に施用することを特徴とする、農作物及びそれを用いた食品や飼料のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を収穫後の農作物に施用することを特徴とする、農作物及びそれを用いた食品や飼料のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を食品に処理することを特徴とする、食品のマイコトキシン汚染を抑制する方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の農作物中、食品中、飼料中のマイコトキシン生合成阻害剤を飼料に処理することを特徴とする、飼料のマイコトキシン汚染を抑制する方法。

【公開番号】特開2008−19194(P2008−19194A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191308(P2006−191308)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】