説明

マスク

【課題】個人に合わせた形状を保持することができ、マスクをかけたときに発生する息苦しさや、眼鏡装着時の眼鏡の曇り、マスクへの口紅の付着を防止し得るマスクを提供すること。
【解決手段】顔面に装着して使用されるマスク20であって、マスク本体11と、このマスク本体11を顔面に対し固定する紐(固定手段)12と、マスク本体11の上下方向に沿って設けられ、マスク本体11の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する複数の帯状または線状の形状保持部材13とを備えることを特徴とする。また、マスク20は、さらに、左右方向に沿って設けられ、該マスク本体11の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する帯状または線状の第2の形状保持部材21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に市販されているガーゼマスクは、長方形にカットされたガーゼ(布帛)を複数枚重ね合わせたマスク本体と、このマスク本体の長さ方向の両端部にそれぞれ取り付けられた紐またはゴム紐(支持体)とにより構成されている。このマスクの着用時には、一対の紐またはゴム紐を両耳に引っかけ、マスク本体で使用者の口や鼻を覆うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これまで、マスクは、ノーズフィット等を入れてマスク上部から抜ける空気を予防したりして眼鏡着用時の曇り防止を行ってきた。また、マスク内部に形状を保持する部材を入れて、口紅のマスクへの付着防止等を行ってきた。
【0004】
しかしながら、ノーズフィットだけでは眼鏡の曇りを防止することができない。また、口紅の付着防止も単一形状では個人差があり、調節が望まれる。さらに、息苦しさの調整等も望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−357871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、個人に合わせた形状を保持することができ、マスクをかけたときに発生する息苦しさや、眼鏡装着時の眼鏡の曇り、マスクへの口紅の付着を防止し得るマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(17)の本発明により達成される。
(1) 顔面に装着して使用されるマスクであって、
マスク本体と、該マスク本体を顔面に対し固定する固定手段と、前記マスク本体の上下方向に沿って設けられ、該マスク本体の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する複数の帯状または線状の形状保持部材とを備えることを特徴とするマスク。
【0008】
これにより、個人に合わせた形状を保持することができ、マスクをかけたときに発生する息苦しさや、眼鏡装着時の眼鏡の曇り、マスクへの口紅の付着を防止し得るマスクを得ることができる。
【0009】
(2) 前記形状保持部材は、前記マスク本体の少なくとも左右方向の両端部に配されている上記(1)に記載のマスク。
【0010】
これにより、マスク本体の両端部の形状を部分的に変形させて、その状態を保持することができる。その結果、呼吸による空気の流れの向きを左右方向に制御して、眼鏡の曇りや息苦しさを防止することができる。
【0011】
(3) 前記形状保持部材は、樹脂材料または金属材料を主材料として構成されている上記(1)または(2)に記載のマスク。
【0012】
これにより、形状保持部材の形状を比較的容易に変えて、その状態を保持し得るマスクが得られる。
【0013】
(4) 前記樹脂材料は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするものである上記(3)に記載のマスク。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂で構成された形状保持部材は、柔軟性が高いため、比較的容易にその形状を変化させることができる。また、廃棄して燃焼処理されてもダイオキシン等が発生せず環境付加が少ない。
【0015】
(5) 前記金属材料は、Cu、Fe、Niまたはこれらを含む合金を主成分とするものである上記(4)に記載のマスク。
【0016】
これらの金属材料は、降伏応力が比較的小さいため、形状保持部材の形状にもよるが、形状保持部材の形状を比較的容易に変えて、その状態を保持するように調整することができる。
【0017】
(6) 前記形状保持部材は、塑性変形可能なものである上記(3)ないし(5)のいずれかに記載のマスク。
【0018】
これにより、形状保持部材は、マスク本体を所望の形状に変形させて、その状態を維持することができる。
【0019】
(7) 前記形状保持部材は、前記マスク本体の内部に設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のマスク。
これにより、形状保持部材がマスク本体から露出するのを防止することができる。
【0020】
(8) 前記形状保持部材は、前記マスク本体に固定されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のマスク。
【0021】
これにより、形状保持部材が、マスク本体に対して位置がずれてしまうのを防止することができる。
【0022】
(9) 前記マスク本体は、その左右方向に沿って設けられ、前記マスク本体の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する帯状または線状の第2の形状保持部材を有している上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のマスク。
【0023】
これにより、個人の顔面の形状やマスクの使用目的に応じて、より自由に変形が可能なマスクを提供することができる。また、マスク本体を変形させた状態を安定して維持し、顔面に確実にフィットさせることができるため、歩行や運動等による外部からの負荷に対してマスク本体がずれてしまうのを確実に防止するマスクとなる。
【0024】
(10) 前記第2の形状保持部材は、複数の前記形状保持部材のうちの少なくとも1つと接続されている上記(9)に記載のマスク。
【0025】
これにより、マスク本体がねじれたり、巻き付いたりするのをより確実に防止することができる。
【0026】
(11) 前記第2の形状保持部材は、前記マスク本体の少なくとも上下方向の一端部に配されている上記(9)または(10)に記載のマスク。
【0027】
これにより、マスク本体の一端部を顔面の輪郭に沿わせることができ、マスクのずれを防止することができる。
【0028】
(12) 前記形状保持部材と前記第2の形状保持部材とが一体的に形成されている上記(9)ないし(11)のいずれかに記載のマスク。
【0029】
これにより、マスク本体のねじれや巻き付きをより確実に防止することができる。さらに、形状保持部材と第2の形状保持部材とを接続する手間を省略することができ、容易に製造し得るマスクとなる。
【0030】
(13) 前記マスク本体は、その内部に空間が形成され、該空間に吸水性を有する担体が収納されている上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のマスク。
【0031】
マスク使用者の呼気に含まれる湿気を担体に回避させることができる。その結果、マスクの着用者はドライ感を得ることができる。
【0032】
(14) 前記担体は、粉状または粒状をなしている上記(13)に記載のマスク。
これにより、担体の表面積が増大し、担体の吸水(吸湿)性能の向上を図ることができる。
【0033】
(15) 前記担体は、多孔質体である上記(13)または(14)に記載のマスク。
これにより、担体の表面積が増大し、担体の吸水(吸湿)性能の向上を図ることができる。
【0034】
(16) 前記担体は、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成されている上記(13)ないし(15)のいずれかに記載のマスク。
【0035】
リン酸カルシウム系化合物は、吸湿性に加え、ウイルスや菌類の吸着性に優れることから、このような効果をマスクに付加することができる。
【0036】
(17) 前記担体は、主として吸水性ポリマーで構成されている上記(13)ないし(15)のいずれかに記載のマスク。
【0037】
吸水性ポリマーは、吸水性能が特に高く、顔面側から特に効率よく湿気を回避させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、マスク本体にて顔の一部を覆った際に、形状保持部材が顔の凹凸、特に鼻や口部の凹凸に合わせて変形し、個人の顔の形状や目的に応じて自由に変形が可能なマスクを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明のマスクを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のマスクの第1実施形態を示す平面図および断面図である。以下、図1(a)中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0040】
マスク10は、図1(a)に示すように、マスク本体11と、このマスク本体11を顔面に対し固定する紐(固定手段)12とを備えている。
【0041】
以下、マスク10の構成を順次説明する。
マスク本体11は、マスク使用者の口と鼻を覆える程度の大きさを有するシート材で構成されている。
【0042】
このマスク本体11を構成するシート材としては、織布、不織布、編布のような布帛、通気性を有するフィルムまたは紙等が挙げられる。これらのうち、織布または不織布が好ましく用いられる。
織布の具体例としては、ガーゼ等が挙げられる。
【0043】
また、不織布とは、繊維を織布工程を経ることなしに、不定方向に配列させ、絡ませたり、溶着・接着させて布状にした被服材料・包装材料等である。
【0044】
不織布では繊維が絡んでいるため縦横の方向性がなく、裁ち目もほつれ難いので、種々の用途に向けられている。
【0045】
このような不織布の製造方法は、従来用いられている不織布製造方法、例えばカード機を用いて得られたウエッブを熱処理するサクションヒートボンド法、機械的に交絡されるニードルパンチ法、水流交絡させるスパンレース法等や、スパンボンド法、メルトブローン法、SMS法(スパンボンド不織布とメルトブローン不織布との貼り合わせ)等により製造することができる。これらの中で、生産性が良く、低コストであるスパンボンド法が好ましい。
【0046】
マスク本体11を構成する繊維としては、例えば、羊毛、絹糸、リネンおよび綿糸のような天然繊維、レイヨン、アセテートのような再生繊維、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、スパンデックスのような合成繊維等の各種繊維で構成することができる。また、より好ましくはポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドである。
【0047】
ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、およびこれらのランダムまたはブロック共重合体、あるいは、更にメタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、およびそれらのエステル、酸無水物等の誘導体から選択される少なくとも1種類以上を共重合したポリオレフィン系重合体を挙げることができる。更には上記ポリオレフィン系重合体に上記不飽和カルボン酸またはその誘導体の少なくとも1種をグラフトしたグラフト共重合体を挙げることができる。
【0048】
なお、ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等が、ポリアミドとしては、例えば、ナイロン−6やナイロン−66等が挙げられる。
【0049】
紐(固定手段)12は、マスク本体11の左右方向の両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0050】
紐12は、環状の耳にかけることにより、マスク本体11を顔面に対し固定するものである。
【0051】
なお、固定手段は、図1(a)に示す紐12に代えて、例えば、耳に引っかける環状の帯またはゴム紐、頭にしばりつけられる帯または紐、耳の上部にかける眼鏡のツル状のもの等で構成することができる。
【0052】
本発明のマスク10は、マスク本体11の上下方向に沿って設けられ、マスク本体11の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する複数の形状保持部材13を設けたことに特徴を有する。これにより、個人の顔面の形状やマスク10の使用目的に応じて、マスク本体11を所望の形状に変形させることが可能なマスク10を提供することができる。
【0053】
本実施形態では、図1に示すように、長方形のマスク本体11の左右方向の両端部と中央部に、それぞれ上下方向に沿って、3つの形状保持部材13が配されている。
【0054】
ここで、マスク本体11の上下方向および左右方向とは、それぞれ、マスク10を顔面に装着した状態における方向を言う。
【0055】
形状保持部材13をマスク本体11の左右方向の両端部に設けたことにより、マスク本体11の両端部の形状を部分的に変形させて、その状態を保持することができる。その結果、呼吸による空気の流れの向きを左右方向に制御して、眼鏡の曇りや息苦しさを防止することができる。
【0056】
また、形状保持部材13を中央部に設けたことにより、マスク本体11と口との間に間隙が形成されることから、口紅等がマスク本体11に付着するのを防止することができる。
【0057】
この形状保持部材13は、塑性変形可能な帯状(帯板状)または線状(棒状)の部材で構成される。
【0058】
塑性変形可能(塑性変形性)とは、物体(形状保持部材13)を任意の形状に屈曲させた後に、屈曲力を解除しても、この強制変形の状態を維持し続ける性質のことを言う。したがって、このような塑性変形可能な部材で構成された形状保持部材13は、マスク本体11を所望の形状に変形させて、その状態を維持することができる。
【0059】
なお、形状保持部材13は、その数が多いほど、個人の顔の形状や目的に応じてマスクをより自由に変形させて調節することが可能となるが、多すぎると、調節作業が煩雑となったり、着用感を損ねてしまうので、形状保持部材13の数としては、2〜5本程度とするのが好ましい。
【0060】
また、形状保持部材13の配置としては特に限定されるものではなく、マスク10の形状や目的に応じて適宜配置されてよいが、顔の形状の左右対称性を考えると、左右対称的に配置されるのが好ましい。
【0061】
形状保持部材13を構成する材料としては、樹脂材料を主材料とするものが好ましい。樹脂材料は、その組成にもよるが、可撓性および可塑性に優れ、指の力で比較的容易にその形状を変えて、その状態を保持することができる。また、樹脂材料は比重が小さいため、形状保持部材13を軽くすることができ、マスク10の軽量化を図ることができる。
【0062】
また、形状保持部材13としては、樹脂材料を延伸させたものが好ましい。これにより、樹脂材料の弾性が低下するため、形状保持部材13の形状保持性の向上を図ることができる。
【0063】
さらに、樹脂材料の延伸に際しては、その総延伸倍率が10〜40倍程度であるのが好ましく、15〜35倍程度であるのが好ましい。総延伸倍率が前記範囲内であることにより、樹脂材料が破断することなく、その形状保持性を十分に引き出すことができる。
【0064】
ここで、樹脂材料の延伸させる方法としては、圧延、引張等の方法が挙げられる。このうち、圧延の場合、樹脂材料を圧延し、延伸することにより得られるが、総延伸倍率とは、圧延倍率と延伸倍率との積であり、圧延倍率は5〜16倍、延伸倍率は1.3〜2.5倍とされ、そして総延伸倍率が10〜40倍とされる。
【0065】
また、形状保持部材13の厚さや外径によって異なるが、樹脂材料は、指の力で比較的容易にその形状を変えて、その状態を保持することができるため、形状保持部材13の構成材料として好適である。
【0066】
樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、メタクリル系樹脂等が挙げられるが、これらの中でもポリオレフィン系樹脂を主成分とするものが好ましい。ポリオレフィン系樹脂で構成された形状保持部材13は、柔軟性が高いため、比較的容易にその形状を変化させることができる。また、ポリオレフィン系樹脂は、焼却してもダイオキシン類の発生がなく環境負荷が少ない。
【0067】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂のようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ペンテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられるが、これらの中でも、高密度ポリエチレン樹脂が好適に使用される。
【0068】
ポリエチレン系樹脂としては、その密度が0.94g/cm以上であるのが好ましく、0.96g/cm以上であるのがより好ましい。密度が前記範囲内であれば、ポリエチレン樹脂を延伸させた後の形状保持性が向上する。
【0069】
また、ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量は、5万〜50万程度であるのが好ましく、20万〜50万程度であるのがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であれば、ポリエチレン樹脂は、延伸させた後の形状保持性が高くなるとともに、成形や延伸がより容易になる。
【0070】
さらに、ポリエチレン系樹脂のメルトインデックス(MI)は、0.1〜20程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜10程度である。これにより、形状保持部材13の成形がより容易になる。
【0071】
また、高密度ポリエチレンは、単独で用いてもよいが、他のポリオレフィン系樹脂を混合したものを用いていもよい。
【0072】
具体的には、高密度ポリエチレン100重量部に対し、他のポリオレフィン系樹脂を30重量部以下の割合で混合したものを用いることができる。併用される他のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニルなどを挙げることができる。更に上記高密度ポリエチレン樹脂は架橋されたものが用いられてもよい。
【0073】
なお、形状保持部材13は、帯板状の場合の平均厚さが、好ましくは0.05〜1.5mm程度であり、より好ましくは0.15〜1.0mm程度である。形状保持部材13は、薄くなると形状保持力が低下し、マスク本体に追随して形状が復元してしまい易くなることがあり、厚くなると所望の形状に成形することが困難となる。
【0074】
また、形状保持部材13を構成する材料としては、金属材料を主材料とするものであってもよい。金属材料は、降伏応力以上の応力を付与されることにより、容易に塑性変形するようになることから、形状保持部材13の寸法(厚さ、幅、外径等)を設定することにより、指の力で比較的容易にその形状を変えて、その状態を保持するように調整することができる。
【0075】
このことから、形状保持部材13を構成する金属材料としては、降伏応力が小さいものが好ましい。
【0076】
具体的には、Cu、Ni、Feまたはこれらを含む合金を主成分とするもの等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの金属材料は、降伏応力が比較的小さいため、形状保持部材13の形状にもよるが、形状保持部材13の形状を比較的容易に変えて、その状態を保持するように調整することができる。
【0077】
このような形状保持部材13は、マスク本体11の内部に設けられているのが好ましい。これにより、形状保持部材13がマスク本体11から露出するのを防止することができる。その結果、マスク10の安全性を高めることができる。
【0078】
上記のようなことから、形状保持部材13の端部は、丸みを帯びているのが好ましい。これにより、形状保持部材13の安全性がより高まるとともに、形状保持部材13がマスク本体11を突き破って、外部に露出するのをより確実に防止することができる。
【0079】
また、形状保持部材13は、マスク本体11に固定されているのが好ましい。これにより、形状保持部材13が、マスク本体11に対して位置がずれてしまうのを防止することができる。
【0080】
本発明のマスク10において、形状保持部材13をマスク本体11に固定する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、縫い付け、ホットメルト接着剤による接着、超音波融着等が挙げられる。このうち、樹脂材料で構成された形状保持部材13のマスク本体11への取り付けには、ホットメルト接着剤または超音波融着が、金属材料で構成された形状保持部材13のマスク本体11への取り付けには、縫い付けが、それぞれ互いを強固に取り付けられる点で好ましい。
【0081】
図1(b)は、図1(a)に示すマスク10を線Aで切った断面を示しており、形状保持部材13をマスク本体11に糸14で縫い付けた状態を示している。
糸14を構成する繊維は、特に限定されず、いかなるものであってもよい。
【0082】
上記ホットメルト接着剤としては、特に限定されず従来公知のものが使用可能である。このようなホットメルト接着剤としては、例えば、非晶性ポリオレフィンを主成分とする、エチレン−プロピレン共重合体系、プロピレン−1−ブテン共重合体系、エチレン−1−ブテン共重合体系、ホモポリプロピレン共重合体系や、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)系、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)系などのオレフィン共重合体系などのホットメルト接着剤が挙げられる。
【0083】
さらに、上記ホットメルト接着剤は、必要に応じて他の熱可塑性樹脂、ワックスなどの低分子量成分が含有されているものであっても良い。
【0084】
接着方法としては、例えば、形状保持部材13にホットメルトガンやホットメルトアプリケータなどを用いて加熱したホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面をマスク本体11の必要な部分の表面に接するように貼り付ける方法などが好適である。
【0085】
また、上記超音波融着は、形状保持部材13のどの部分においてなされてもよいが、形状保持部材13の両端部のみをマスク本体11に融着させることにより、形状保持部材13の形状保持性をほとんど失うことなく、融着させることができる。超音波融着の方法は特に限定されるものではないが、通常は、10kHz以上の振動を融着部分に印加するのが好ましい。
【0086】
このようなマスク本体11は、その平均厚さが0.1〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜5mm程度であるのがより好ましい。マスク本体11の平均厚さが前記範囲内であることにより、マスク本体11は、防塵等のマスク本来の機能を確実に発揮するとともに、呼吸に支障ない程度の通気性を得ることができる。
【0087】
また、マスクに特定の付加価値を与える付加価値部材を、このマスク本体11に設けてもよい。この付加価値部材としては、例えば呼吸中の空気をろ過するろ過部材、ハーブ等の心地よい香りを放つ芳香部材等が挙げられる。なお、付加価値部材によりマスクに与えられる付加価値は、特に限定されない。
【0088】
以上、本実施形態によれば、上下方向に沿って設けられ、マスク本体11の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する形状保持部材13が複数配されているため、個々の顔面の形状に応じて形状変形可能なマスク10を提供することができる。
【0089】
また、このようなマスク10は、空気の抜け道を任意に作ることができるので、息苦しくなるようなことがなく、また眼鏡をかけた人などにとっては、マスク10と鼻の間から漏れる息によって眼鏡が曇るのを防止することができる。
【0090】
<第2実施形態>
図2および図3は、本発明のマスクの第2実施形態を示す平面図である。以下、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0091】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項について、その説明を省略する。
【0092】
本実施形態のマスク20では、上述した上下方向に沿って設けられた複数の形状保持部材13に加えて、左右方向に沿って設けられ、マスク本体11の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する帯状(帯板状)または線状(棒状)の第2の形状保持部材21を有している以外は、前記第1実施形態と同様である。これにより、個人の顔面の形状やマスク20の使用目的に応じて、より自由に変形が可能なマスク20を提供することができる。また、マスク本体11を変形させた状態を安定して維持し、顔面に確実にフィットさせることができるため、歩行や運動等による外部からの負荷に対してマスク本体11がずれてしまうのを確実に防止するマスク20となる。
【0093】
また、第2の形状保持部材21は、前記複数の形状保持部材13のうちの少なくとも1つ接続されている。これにより、マスク本体11がねじれたり、巻き付いたりするのをより確実に防止することができる。
【0094】
さらに、第2の形状保持部材21は、2つ以上の形状保持部材13同士を連結していてもよい。これにより、マスク本体11のねじれおよび巻き付きの防止の効果がより顕著なものとなる。
【0095】
形状保持部材21の配置部位としては、特に限定されるものではなく、マスク20の形状や目的に応じて適宜配置される。
【0096】
本実施形態のマスク20は、マスク本体11の上端部と中央部に、2本の第2の形状保持部材21を有する。これにより、第2の形状保持部材21がマスク本体11の上端部(上下方向の一端部)に配されていることにより、マスク本体11の上端部を鼻(顔面の輪郭)に沿わせることができ、マスク20のずれを防止することができる。
【0097】
また、マスク本体11の中央部に配された第2の形状保持部材21により、マスク使用者の口とマスク本体11との間に間隙を形成することができるため、口紅等がマスク本体11に付着するのを防止することができる。
【0098】
このようなマスク20によれば、形状保持部材が上下方向に加えて左右方向にも配されているので、マスク本体11にて顔面の一部を覆った際に、形状保持部材13、21を顔の凹凸、特に鼻や口部の凹凸に合わせてより細かく変形させ、個人の顔の形状や目的に応じてより自由に変形、調節することが可能となる。
【0099】
なお、形状保持部材13および第2の形状保持部材21は、両者を一体的に形成したものであるのが好ましい。
【0100】
図3のマスク20では、形状保持部材13の両端部と第2の形状保持部材21の両端部とを、それぞれ接続している。
【0101】
このような形状保持部材は、例えば、長方形のシート材の中央部を切り抜いて、周縁部のみを残すこと等により作製することができる。このような形態によれば、形状保持部材13と第2の形状保持部材21とが一体化しているため、マスク本体11のねじれや巻き付きをより確実に防止することができる。さらに、両者を接続する手間を省略することができ、容易に製造し得るマスク20となる。
【0102】
<第3実施形態>
図4は、本発明のマスクの第3実施形態を示す平面図である。以下、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0103】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1および第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項について、その説明を省略する。
【0104】
本実施形態のマスク30は、図4に示すように、マスク本体11の内部に形成された空間に、吸水性を有する担体40が収納されている以外は、前記第1実施形態と同様である。これにより、マスク使用者の呼気に含まれる湿気を担体40に回避させることができる。その結果、マスク30の着用者はドライ感を得ることができる。
【0105】
担体40は、多孔質および緻密質のいずれであってもよいが、多孔質であるのが好ましい。これにより、担体40の表面積が増大し、その吸水(吸湿)性能の向上を図ることができる。
【0106】
また、担体40は、粉状、粒状、塊状(ペレット状)およびブロック状のいずれの形態でもよいが、粉状または粒状であるのが好ましい。これにより、担体40の表面積が増大し、その吸水(吸湿)性能の向上を図ることができる。
【0107】
さらに、担体40は、粉状または粒状で、かつ、多孔質であるのが特に好ましい。このような担体40では、前記効果がより増大する。
【0108】
担体40としては、例えば、ハイドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウム系化合物、ゼオライト、シリカゲルのようなシリコン系化合物等が挙げられるが、この中でも特にリン酸カルシウム系化合物を主として構成されるものが好ましい。リン酸カルシウム系化合物は、吸湿性に加え、ウイルスや菌類の吸着性に優れることから、このような効果をマスク30に付加することができる。
【0109】
また、担体40としては、主として吸水性ポリマーで構成されていてもよい。吸水性ポリマーは、吸水性能が特に高く、顔面側から特に効率よく湿気を回避させることができる。このような吸水性ポリマーとしては、例えば、デンプン系、セルロース系および合成ポリマーの各種吸水性ポリマーが挙げられ、特にデンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物およびアクリル酸(塩)重合体が好ましく用いられる。
【0110】
以上、本発明のマスクを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【0111】
例えば、マスク本体11の内側面に、顔面に当接される当て布が配されていてもよい。この当て布自体は、例えば顔面にしっくりと当接するガーゼ、不織布等を素材として形成され、汚損された場合には、そのまま廃棄してもよいものとされる。顔面に当接される当て布部分は、適当な肉厚のものとなるよう複数層に重ね合せられたり、折り重ねられたりすることもある。
【0112】
また、上記の各実施形態では、マスク本体の形状がほぼ平面であるが、このマスク本体は立体的な形状のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明のマスクの第1実施形態を示す平面図および断面図である。
【図2】本発明のマスクの第2実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明のマスクの第2実施形態を示す平面図である。
【図4】本発明のマスクの第3実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0114】
10、20、30 マスク
11 マスク本体
12 紐
13 形状保持部材
14 糸
21 第2の形状保持部材
40 担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面に装着して使用されるマスクであって、
マスク本体と、該マスク本体を顔面に対し固定する固定手段と、前記マスク本体の上下方向に沿って設けられ、該マスク本体の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する複数の帯状または線状の形状保持部材とを備えることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記形状保持部材は、前記マスク本体の少なくとも左右方向の両端部に配されている請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記形状保持部材は、樹脂材料または金属材料を主材料として構成されている請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記樹脂材料は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするものである請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記金属材料は、Cu、Fe、Niまたはこれらを含む合金を主成分とするものである請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記形状保持部材は、塑性変形可能なものである請求項3ないし5のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
前記形状保持部材は、前記マスク本体の内部に設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載のマスク。
【請求項8】
前記形状保持部材は、前記マスク本体に固定されている請求項1ないし7のいずれかに記載のマスク。
【請求項9】
前記マスク本体は、その左右方向に沿って設けられ、前記マスク本体の形状を部分的に変形させて、その状態を保持する帯状または線状の第2の形状保持部材を有している請求項1ないし8のいずれかに記載のマスク。
【請求項10】
前記第2の形状保持部材は、複数の前記形状保持部材のうちの少なくとも1つと接続されている請求項9に記載のマスク。
【請求項11】
前記第2の形状保持部材は、前記マスク本体の少なくとも上下方向の一端部に配されている請求項9または10に記載のマスク。
【請求項12】
前記形状保持部材と前記第2の形状保持部材とが一体的に形成されている請求項9ないし11のいずれかに記載のマスク。
【請求項13】
前記マスク本体は、その内部に空間が形成され、該空間に吸水性を有する担体が収納されている請求項1ないし12のいずれかに記載のマスク。
【請求項14】
前記担体は、粉状または粒状をなしている請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
前記担体は、多孔質体である請求項13または14に記載のマスク。
【請求項16】
前記担体は、主としてリン酸カルシウム系化合物で構成されている請求項13ないし15のいずれかに記載のマスク。
【請求項17】
前記担体は、主として吸水性ポリマーで構成されている請求項13ないし15のいずれかに記載のマスク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−333972(P2006−333972A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159824(P2005−159824)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(301000871)株式会社メディテック ジャパン (3)
【Fターム(参考)】