説明

マルチパワーコンディショナシステム

【課題】出力抑制時においても太陽光発電システムの発電電力を有効に活用することができるマルチパワーコンディショナシステムを提供する。
【解決手段】本発明に係るマルチパワーコンディショナシステム10Aは、系統Gと負荷Rとを繋ぐ基幹電力線L1から分岐した電力線L2、L3にそれぞれ接続された太陽光発電システム20および蓄電システム30と、発電側直流電力線L4と蓄電側直流電力線L5とを繋ぐバイパス電力線LBと、予め定められた出力抑制条件を満たすか否かを判定する抑制条件判定部26Aとを備えている。抑制条件判定部26Aにおいて出力抑制条件を満たすとの判定がなされると、バイパス電力線LBを介して太陽光発電システム20で得られた直流電力が蓄電システム30に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムと蓄電システムとからなるセパレート型のマルチパワーコンディショナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、化石燃料に頼らない新たなエネルギー源、特に自然エネルギー源を利用した発電システムの検討が盛んに行われている。その中でも、太陽光発電システムは、その発電コストが既存の発電システムの発電コストと同等レベルに近付きつつあることから、今後より一層の普及が見込まれている。
【0003】
また、近年では、安価な深夜電力で充電しておいた蓄電池を電力需要が大きい昼間に放電させることで、電力需要の平準化と電気料金の低減とを図った蓄電システムも普及しつつある。蓄電システムには、既設の太陽光発電システムに後付けされることを意図して設計されたものと、最初から太陽光発電システムと一体不可分に設計され、太陽光発電システムと同時に導入されることを意図して設計されたものとがある。
【0004】
後者の蓄電システムおよび太陽光発電システム(以下、これらをまとめて「一体型マルチパワーコンディショナシステム」と称する)は、蓄電システムと太陽光発電システムとを高度に連携制御することができるというメリットがある。例えば、図6に示す特許文献1に記載の一体型マルチパワーコンディショナシステム100は、太陽電池101の発電電力が負荷Rの使用電力よりも大きい場合は、余剰分を系統Gに逆潮流(電力会社に売電)させることができるほか、売電された電力量が多すぎて系統電圧が上昇したときには、太陽電池101の発電電力をDC/DCコンバータ102および双方向DC/DCコンバータ103経由で蓄電池104に供給し、該蓄電池104を充電させることも可能とされている。
【0005】
一方、前者の蓄電システムおよび太陽光発電システム(以下、これらをまとめて「セパレート型マルチパワーコンディショナシステム」と称する)は、既設の太陽光発電システムを交換することなく、必要に応じて小規模な改造を施すだけで済むので、導入コストが非常に安くつくというメリットがある。このため、太陽光発電システムの普及がある程度進んだ今日においては、一体型よりもむしろセパレート型のマルチパワーコンディショナシステムが望まれる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−180467号公報(特に、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽光発電システムの普及が進んで売電される電力量が増加すると、上記系統電圧の上昇の問題はさらに顕在化することが予想される。そこで、電力業界では、系統電圧が規定電圧を超えて上昇した際に売電を停止させる機能(以下、「出力抑制機能」という)を、必須機能として各家庭の太陽光発電システムに備えることを検討している。
【0008】
出力抑制機能自体は、技術的には比較的容易に実現することができる。例えば、図6に示す一体型マルチパワーコンディショナシステム100では、DC/DCコンバータ102によって適当な電圧に昇圧/降圧された後の直流電力を交流電力に変換する双方向AC/DCインバータ105を停止させることで、太陽電池101から系統Gに至る経路を遮断し、系統電圧がさらに上昇するのを防ぐことができる。セパレート型マルチパワーコンディショナシステムにおいても、同様の手法により出力抑制機能を実現することができる。
【0009】
しかしながら、従来のセパレート型マルチパワーコンディショナシステムは、太陽光発電システムと蓄電システムとが高度に連携できるよう構成されていないので、上記経路を遮断すると、太陽電池が発電しているにもかかわらず、それにより得られた発電電力をどこにも供給することができないという問題があった。すなわち、従来のセパレート型マルチパワーコンディショナシステムは、出力抑制時に太陽光発電システムの発電電力を有効に活用することができず、ユーザの立場からすると、セパレート型マルチパワーコンディショナシステムを導入するメリットが損なわれる結果となっていた。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、出力抑制時においても太陽光発電システムの発電電力を有効に活用することができるセパレート型のマルチパワーコンディショナシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムは、系統と負荷とを繋ぐ基幹電力線からそれぞれ分岐した電力線に接続された太陽光発電システムと蓄電システムとを備えたマルチパワーコンディショナシステムであって、太陽光発電システムは、太陽電池と、太陽電池からの電力を基幹電力線に供給する発電パワーコンディショナとを有し、蓄電システムは、蓄電池と、蓄電池に対して電力の供受給を行うとともに、負荷に対して電力を供給する蓄電パワーコンディショナとを有し、発電パワーコンディショナと蓄電パワーコンディショナとはそれぞれに互いに通信可能な通信手段を含むとともに、発電パワーコンディショナから蓄電パワーコンディショナに直流電力を供給可能なバイパス電力線で接続され、系統の電圧上昇を抑制する出力抑制時になると、通信手段間の通信により発電パワーコンディショナおよび蓄電パワーコンディショナにおいて出力抑制情報が共有され、出力抑制動作として、発電パワーコンディショナから基幹電力線への電力供給が停止されるとともに、発電パワーコンディショナから蓄電パワーコンディショナにバイパス電力線を介して直流電力が供給されることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、出力抑制時に、発電パワーコンディショナが基幹電力線への電力供給を停止して系統の電圧上昇が抑制される。また、通信手段が通信を行うことにより、出力抑制情報が発電パワーコンディショナおよび蓄電パワーコンディショナの双方において共有される。これにより、蓄電パワーコンディショナ側での電力供給受け入れが可能となり、発電パワーコンディショナから蓄電パワーコンディショナにバイパス電力線を介して直流電力が供給される。このため、蓄電パワーコンディショナでは、供給を受けた電力を負荷に給電したり蓄電池に蓄える等して、出力抑制時に太陽光発電システムの発電電力を有効に活用することができる。
【0013】
上記マルチパワーコンディショナシステムは、例えば、発電パワーコンディショナが、太陽電池に入力端が接続されたDC/DCコンバータと、発電側直流電力線を介してDC/DCコンバータの出力端に入力端が接続されるとともに基幹電力線に出力端が接続されたDC/ACインバータと、DC/DCコンバータおよびDC/ACインバータを制御する発電側制御部とをさらに含み、蓄電パワーコンディショナが、蓄電池に一方の入出力端が接続された双方向DC/DCコンバータと、蓄電側直流電力線を介して双方向DC/DCコンバータの他方の入出力端に一方の入出力端が接続されるとともに基幹電力線に他方の入出力端が接続された双方向DC/ACインバータと、双方向DC/DCコンバータおよび双方向DC/ACインバータを制御する蓄電側制御部とをさらに含み、発電側直流電力線と蓄電側直流電力線とがバイパス電力線により接続され、発電側制御部および蓄電側制御部のいずれかに出力抑制条件を満たすか否かを判定する抑制条件判定部が設けられ、該抑制条件判定部が出力抑制条件を満たすと判定すると、上記の出力抑制動作が実行される構成とすることができる。
【0014】
上記出力抑制条件判定部による出力抑制条件の判定方法は、例えば、以下の2つが考えられる。
(1)発電パワーコンディショナおよび蓄電パワーコンディショナの少なくとも一方に出力抑制を要する出力抑制日時を予め記憶する記憶部が設けられている場合は、前記記憶部に記憶された出力抑制日時と現在日時とを比較して、出力抑制日時に現在日時が含まれるか否かによって判定をする。
(2)発電パワーコンディショナおよび蓄電パワーコンディショナが有する通信手段の少なくともいずれか1つが外部からの出力抑制指令を受付け可能となっている場合は、通信手段が出力抑制指令を受付けた場合に出力抑制条件を満たすとの判定をする。
【0015】
出力抑制時に、発電パワーコンディショナから基幹電力線への電力供給を停止させるためには、DC/ACインバータを停止させるか、またはDC/ACインバータの出力端と基幹電力線との間に介装されたリレーを切断すればよい。
【0016】
また、出力抑制時にのみバイパス電力線を介して直流電力の供給が行われるようにする構成は、例えば、以下の2つが考えられる。
(1)発電側直流電力線とバイパス電力線との間、またはバイパス電力線と蓄電側電力線との間に、発電側直流電力線側に入力端が接続されるとともに蓄電側直流電力線側に出力端が接続されたバイパス用DC/DCコンバータが介装されている場合は、抑制条件判定部において出力抑制条件を満たすとの判定がなされると、発電側制御部または蓄電側制御部の制御下でバイパス用DC/DCコンバータが動作して発電パワーコンディショナから蓄電パワーコンディショナに直流電力が供給されるよう構成する。
(2)発電側直流電力線とバイパス電力線との間、またはバイパス電力線と蓄電側電力線との間に、発電側直流電力線側にアノードが接続されるとともに蓄電側直流電力線側にカソードが接続されたダイオードが介装されている場合は、抑制条件判定部において出力抑制条件を満たすとの判定がなされると、発電側制御部の制御下でDC/DCコンバータが発電側直流電力線の電位を上げる第1電位調整動作、および/または蓄電側制御部の制御下で双方向DC/DCインバータまたは双方向DC/ACインバータが蓄電側直流電力線の電位を下げる第2電位調整動作が行われ、これによりダイオードが導通状態となって発電パワーコンディショナから前記蓄電パワーコンディショナに直流電力が供給されるよう構成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、出力抑制時においても太陽光発電システムの発電電力を有効に活用することができるセパレート型のマルチパワーコンディショナシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムの基本構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るマルチパワーコンディショナシステムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るマルチパワーコンディショナシステムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るマルチパワーコンディショナシステムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】バイパス用DC/DCコンバータの変形例を示す図である。
【図6】従来の一体型マルチパワーコンディショナシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムの好ましい実施形態について説明する。なお、以下では、系統電圧が実際に上昇しているか、またはそのおそれがあるために売電が禁止されている時を「出力抑制時」、それ以外の時を「通常時」と呼ぶこととする。
【0020】
[基本構成および動作]
図1に、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムの基本構成を示す。同図に示すように、マルチパワーコンディショナシステム10は、主に太陽光発電システム20と蓄電システム30とから構成されている。また、太陽光発電システム20は、太陽電池21および発電パワーコンディショナ22を備え、蓄電システム30は、蓄電池31および蓄電パワーコンディショナ32を備えている。
【0021】
太陽光発電システム20および蓄電システム30は、それぞれ系統Gから分岐した基幹電力線L1に電力線L2および電力線L3を介して接続されている。系統G側を上流、負荷R側を下流とした場合、太陽光発電システム20は蓄電システム30よりも上流において基幹電力線L1に接続されている。
【0022】
基幹電力線L1には、カレントトランスCT1およびCT2が設けられている。カレントトランスCT1およびCT2は、基幹電力線L1を流れる電流の量を検出するためのもので、カレントトランスCT1の出力信号、すなわち基幹電力線L1と電力線L2の接続点よりも上流における電流量に関する信号は、発電パワーコンディショナ22に入力される。一方、カレントトランスCT2の出力信号、すなわち基幹電力線L1と電力線L3の接続点よりも上流(基幹電力線L1と電力線L2の接続点よりは下流)における電流量に関する信号は、蓄電パワーコンディショナ32に入力される。
【0023】
また、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステム10では、太陽光発電システム20と蓄電システム30とがバイパス電力線LBで接続されている。バイパス電力線LBは、太陽光発電システム20から蓄電システム30に向かう一方向にのみ電力の供給が可能となるよう構成されている。これについては、後で詳細に説明する。
【0024】
続いて、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステム10の基本動作を、太陽光発電システム20の動作と蓄電システム30の動作とに分けて説明する。
【0025】
図1中に矢印で示されているように、太陽光発電システム20は、太陽電池21の発電電力を電力線L2を介して基幹電力線L1に供給するか、またはバイパス電力線LBを介して蓄電システム30に供給する。基幹電力線L1に供給された電力は、負荷Rによって消費されるか、または系統Gに逆潮流(売電)される。蓄電システム30への電力供給は、出力抑制時にのみ行われ、通常時は行われない。
【0026】
蓄電システム30は、系統Gから供給される比較的安価な深夜電力等を用いて蓄電池31を充電するほか、蓄電池31の蓄電力を電力線L3を介して基幹電力線L1に供給する。蓄電システム30から基幹電力線L1に供給された電力は、負荷Rにのみ供給され、売電されることはない。これは、蓄電システム30がいわゆる逆潮流防止制御を行っているからである。なお、逆潮流防止制御においては、蓄電システム30の出力電圧(=電力線L3の電圧)とカレントトランスCT2で検出される上流から下流に向かって流れる電流との積、すなわち系統有効電力が負にならないように、蓄電システム30の出力電圧が制御される。
【0027】
また、蓄電システム30は、出力抑制時に太陽光発電システム20から供給される電力を用いて蓄電池31を充電したり、該電力を電力線L3を介して基幹電力線L1に供給したりもする。すなわち、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステム10では、出力抑制時においても、太陽電池21の発電電力が蓄電池31または負荷Rに供給され、有効に活用される。なお、出力抑制時においても蓄電システム30は逆潮流防止制御を行うので、太陽光発電システム20から供給された電力が売電されることはない。
【0028】
[第1実施形態]
図2を参照し、本発明の第1実施形態に係るマルチパワーコンディショナシステム10Aの構成について説明する。同図に示すように、本実施形態では、太陽光発電システム20が太陽電池21と発電パワーコンディショナ22Aから構成され、蓄電システム30が蓄電池31と蓄電パワーコンディショナ32Aから構成されている。
【0029】
発電パワーコンディショナ22Aは、太陽電池21に入力端が接続されたDC/DCコンバータ23と、該DC/DCコンバータ23の出力端に入力端が接続されたDC/ACインバータ24とを備えている。DC/DCコンバータ23の出力端とDC/ACインバータ24の入力端は発電側直流電力線L4を介して接続されている。また、DC/ACインバータ24の出力端は電力線L2を介して基幹電力線L1に接続され、DC/ACインバータ24と電力線L2との間には、太陽光発電システム20を系統Gから解列させるためのリレーRLが介装されている。
【0030】
DC/DCコンバータ23は、入力端から入力された太陽電池21の直流発電電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換し、該直流電力を出力端から出力する。DC/DCコンバータ23は、最大電力点追従制御(MPPT制御)が可能なタイプであることが好ましい。DC/ACインバータ24は、入力端から入力された直流電力を系統Gの位相に同期した交流電力に変換し、該交流電力を出力端から出力する。
【0031】
発電パワーコンディショナ22Aは、カレントトランスCT1から出力された電流量に関する信号に基づいてDC/DCコンバータ23およびDC/ACインバータ24を制御する発電側制御部25と、記憶部27と、通信部28とをさらに備えている。また、発電側制御部25は抑制条件判定部26Aを有し、抑制条件判定部26Aは出力抑制時であるか否かを判定する。
【0032】
記憶部27には、出力抑制日時が予め格納されている。ここで、出力抑制日時とは、売電量が増加して系統電圧が高くなると予想される日および時刻、すなわち出力抑制が必要となる期間をいう。この予想は、過去の系統電圧の推移、日照時間、太陽光発電システム(マルチパワーコンディショナシステム)の普及状況等に基づいて行われる。例えば、5月初旬の大型連休の昼間は、外出により負荷Rがほとんど電力を必要としていないにもかかわらず、太陽電池21による発電電力が比較的多いので、余剰分がすべて売電されると系統電圧が上昇してしまうことが予想される。この場合、記憶部27には、出力抑制日時として「5月3日、12:00−15:00」が格納される。
【0033】
抑制条件判定部26Aは、現在日時が出力抑制日時に含まれているか否かを判定する。そして、現在日時が出力抑制日時に含まれていると判定した場合、すなわち出力抑制時である場合は、出力抑制が必要である旨の信号(以下、「出力抑制情報」という)を発信する。一方、現在日時が出力抑制日時に含まれていないと判定した場合、すなわち通常時である場合は、出力抑制が不要である旨の信号を発信する。
【0034】
抑制条件判定部26Aから出力抑制情報が発信されると、該情報は通信部28を介して蓄電パワーコンディショナ32A側にも伝達される。これにより、発電パワーコンディショナ22Aおよび蓄電パワーコンディショナ32Aの双方で出力抑制情報が共有される。
【0035】
通常時の発電側制御部25は、DC/DCコンバータ23およびDC/ACインバータ24に上記の動作をさせるべく、これらに含まれるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の電力用半導体スイッチング素子を開閉制御する。
【0036】
一方、出力抑制時の発電側制御部25は、出力抑制情報に基づき、DC/ACインバータ24の制御を停止して該DC/ACインバータ24の動作を停止させるか、またはDC/ACインバータ24と電力線L2との間に介装されたリレーRLを切断状態にするか、またはこれら2つの動作を行うことにより、電力線L2を介して太陽光発電システム20から基幹電力線L1に電力が供給されるのを停止させる。なお、発電側制御部25は、出力抑制時にバイパス用DC/DCコンバータ29の制御も行うが、これについては後で説明する。
【0037】
蓄電パワーコンディショナ32Aは、蓄電池31に一方の入出力端が接続された双方向DC/DCコンバータ33と、該双方向DC/DCコンバータ33の他方の入出力端に一方の入出力端が接続された双方向DC/ACインバータ34とを備えている。双方向DC/DCコンバータ33の他方の入出力端と双方向DC/ACインバータ34の一方の入出力端は蓄電側直流電力線L5を介して接続されている。また、双方向DC/ACインバータ34の他方の入出力端は電力線L3を介して基幹電力線L1に接続されている。
【0038】
蓄電池31の放電時において、双方向DC/DCコンバータ33は、一方の入出力端から入力された蓄電池31の蓄電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換し、該直流電力を他方の入出力端から出力する。双方向DC/ACインバータ34は、一方の入出力端から入力された直流電力を系統Gの位相に同期した交流電力に変換し、該交流電力を他方の入出力端から出力する。
【0039】
蓄電池31の充電時において、双方向DC/ACインバータ34は、他方の入出力端から入力された系統Gの交流電力を所定の電圧値を有する直流電力に変換し、該直流電力を一方の入出力端から出力する。双方向DC/DCコンバータ33は、他方の入出力端から入力された直流電力を適当な電圧値を有する直流電力に変換し、該直流電力を一方の入出力端から出力する。
【0040】
蓄電パワーコンディショナ32Aは、カレントトランスCT2から出力された電流量に関する信号に基づいて双方向DC/DCコンバータ33および双方向DC/ACインバータ34を制御する蓄電側制御部35と、通信部38とをさらに備えている。蓄電側制御部35は、双方向DC/DCコンバータ33および双方向DC/ACインバータ34に上記の動作をさせるべく、これらに含まれるIGBT等の電力用半導体スイッチング素子を開閉制御する。
【0041】
通信部38は、発電パワーコンディショナ22Aの通信部28と相互に通信可能となっており、抑制条件判定部26Aから発信された出力抑制情報を受信する。通信部38が出力抑制情報を受信すると、蓄電側制御部35は、発電システム20側から供給される電力を受電することができるよう、必要に応じて双方向DC/DCコンバータ33および双方向DC/ACインバータ34の制御を変更する。
【0042】
図2に示すように、発電パワーコンディショナ22Aの発電側直流電力線L4はバイパス電力線LBの一端に接続され、バイパス電力線LBの他端は蓄電パワーコンディショナ32Aの蓄電側直流電力線L5に接続されている。また、発電側直流電力線L4とバイパス電力線LBとの間には、入力端が発電側直流電力線L4側に接続され、かつ出力端が蓄電側直流電力線L5側に接続されたバイパス用DC/DCコンバータ29が介装されている。バイパス用DC/DCコンバータ29は、絶縁型のものでも非絶縁型のものでもよい。
【0043】
他のコンバータおよびインバータと同様、バイパス用DC/DCコンバータ29は、発電側制御部25によって開閉制御される少なくとも1つの電力用半導体スイッチング素子から構成されている。
【0044】
通常時において、バイパス用DC/DCコンバータ29は発電側制御部25の制御下で停止状態とされる。したがって、発電側直流電力線L4の直流電力がバイパス電力線LBを介して蓄電側直流電力線L5に供給されることはない。一方、出力抑制時において、バイパス用DC/DCコンバータ29は発電側制御部25の制御下で動作状態とされる。したがって、発電側直流電力線L4の直流電力は、所定の電圧値を有する直流電力に変換された後、蓄電側直流電力線L5に供給される。
【0045】
蓄電池31の充電が行われている場合、蓄電側直流電力線L5に供給された直流電力は双方向DC/DCコンバータ33を介して蓄電池31に供給される。これにより、太陽電池21の発電電力を蓄電池31に充電させ、該発電電力を有効に活用することができる。一方、それ以外の場合、蓄電側直流電力線L5に供給された直流電力は双方向DC/ACインバータ34、電力線L3および基幹電力線L1を介して負荷Rに供給される。これにより、系統Gから負荷Rへの電力供給、すなわち電力会社から購入する電力の量を低減し、電気料金を低減させることができる。
【0046】
[第2実施形態]
図3に示すように、本発明の第2実施形態に係るマルチパワーコンディショナシステム10Bは、発電側制御部25が抑制条件判定部26Bを有している点、発電パワーコンディショナ22Bに記憶部27が備えられていない点、通信部28がインターネット等のネットワークNTに接続されている点において第1実施形態と異なっているが、その他の点については共通している。
【0047】
通信部28は、ネットワークNTを介して各種指令を受信可能となっている。また、ネットワークNTには、電力会社側に設置された系統電圧監視端末(不図示)も接続されている。系統電圧監視端末は、例えば地域毎に系統電圧を監視している。そして、出力抑制が必要なほど系統電圧が上昇した場合は、当該地域に設置されているマルチパワーコンディショナシステム10Bの通信部28に対して、出力抑制指令を送信する。該指令を受けた通信部28はその旨の信号を抑制条件判定部26Bに送信する。そして、抑制条件判定部26Bは出力抑制情報を発信する。
【0048】
[第3実施形態]
図4に示すように、本発明の第3実施形態に係るマルチパワーコンディショナシステム10Cは、抑制条件判定部36が蓄電側制御部35内に設けられている点、蓄電パワーコンディショナ32Cに記憶部37およびバイパス用DC/DCコンバータ39が備えられている点において第1実施形態と異なっているが、その他の点については共通している。
【0049】
抑制条件判定部36は、記憶部37に格納された出力抑制日時を参照して出力抑制時であるか否かを判定するが、通信部38を介して入力される外部からの指令に基づいて同判定を行ってもよい。出力抑制時になると、抑制条件判定部36は出力抑制情報を発信する。これに伴い、蓄電側制御部35は、バイパス用DC/DCコンバータ39を動作状態とするほか、出力抑制情報を通信部38および通信部28を介して発電側制御部25に送信する。これにより、発電パワーコンディショナ22Cおよび蓄電パワーコンディショナ32Cの双方で出力抑制情報が共有され、発電側制御部25は、DC/ACインバータ24を停止させたり、リレーRLを切断状態にしたりする。
【0050】
以上、本発明に係るマルチパワーコンディショナシステムの好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0051】
例えば、上記各実施形態では、発電側直流電力線L4とバイパス電力線LBとの間、またはバイパス電力線LBと蓄電側直流電力線L5との間にバイパス用DC/DCコンバータ29(39)を介装したが、図5(A)(B)に示すように、バイパス用DC/DCコンバータ29(39)は単なるダイオードに置き換えることができる。ただし、このような構成とした場合は、出力抑制時に、発電側制御部25がDC/DCコンバータ23を制御して発電側直流電力線L4の電位を上昇させる第1電位調整動作、および/または蓄電側制御部35が双方向DC/DCコンバータ33または双方向DC/ACインバータ34を制御して蓄電側直流電力線L5の電位を下降させる第2電位調整動作を行う必要がある。すなわち、出力抑制時にのみダイオードが導通状態となるように、発電側直流電力線L4の電位と蓄電側直流電力線L5の電位の大小関係を調整する必要がある。
【符号の説明】
【0052】
10、10A、10B、10C マルチパワーコンディショナシステム
20 太陽光発電システム
21 太陽電池
22、22A、22B、22C 発電パワーコンディショナ
23 DC/DCコンバータ
24 DC/ACインバータ
25 発電側制御部
26A、26B 抑制条件判定部
27 記憶部
28 通信部
29 バイパス用DC/DCコンバータ
30 蓄電システム
31 蓄電池
32、32A、32C 蓄電パワーコンディショナ
33 双方向DC/DCコンバータ
34 双方向DC/ACインバータ
35 蓄電側制御部
36 抑制条件判定部
37 記憶部
38 通信部
39 バイパス用DC/DCコンバータ
G 系統
L1 基幹電力線
L4 発電側直流電力線
L5 蓄電側直流電力線
LB バイパス電力線
R 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統と負荷とを繋ぐ基幹電力線からそれぞれ分岐した電力線に接続された太陽光発電システムと蓄電システムとを備えたマルチパワーコンディショナシステムであって、
前記太陽光発電システムは、太陽電池と、前記太陽電池からの電力を前記基幹電力線に供給する発電パワーコンディショナとを有し、
前記蓄電システムは、蓄電池と、前記蓄電池に対して電力の供受給を行うとともに、前記負荷に対して電力を供給する蓄電パワーコンディショナとを有し、
前記発電パワーコンディショナと前記蓄電パワーコンディショナとはそれぞれに互いに通信可能な通信手段を含むとともに、前記発電パワーコンディショナから前記蓄電パワーコンディショナに直流電力を供給可能なバイパス電力線で接続され、
前記系統の電圧上昇を抑制する出力抑制時になると、前記通信手段間の通信により前記発電パワーコンディショナおよび前記蓄電パワーコンディショナにおいて出力抑制情報が共有され、出力抑制動作として、前記発電パワーコンディショナから前記基幹電力線への電力供給が停止されるとともに、前記発電パワーコンディショナから前記蓄電パワーコンディショナに前記バイパス電力線を介して直流電力が供給されることを特徴とするマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項2】
前記発電パワーコンディショナは、前記太陽電池に入力端が接続されたDC/DCコンバータと、発電側直流電力線を介して前記DC/DCコンバータの出力端に入力端が接続されるとともに前記基幹電力線に出力端が接続されたDC/ACインバータと、前記DC/DCコンバータおよび前記DC/ACインバータを制御する発電側制御部とをさらに含み、
前記蓄電パワーコンディショナは、前記蓄電池に一方の入出力端が接続された双方向DC/DCコンバータと、蓄電側直流電力線を介して前記双方向DC/DCコンバータの他方の入出力端に一方の入出力端が接続されるとともに前記基幹電力線に他方の入出力端が接続された双方向DC/ACインバータと、前記双方向DC/DCコンバータおよび前記双方向DC/ACインバータを制御する蓄電側制御部とをさらに含み、
前記発電側直流電力線と前記蓄電側直流電力線とが前記バイパス電力線により接続され、
前記発電側制御部および前記蓄電側制御部のいずれかに、出力抑制条件を満たすか否かを判定する抑制条件判定部が設けられ、該抑制条件判定部が前記出力抑制条件を満たすと判定すると、前記出力抑制動作が実行されることを特徴とする請求項1記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項3】
前記発電パワーコンディショナおよび前記蓄電パワーコンディショナの少なくとも一方に、前記出力抑制を要する出力抑制日時を予め記憶する記憶部が設けられ、
前記抑制条件判定部は、前記記憶部に記憶された前記出力抑制日時と現在日時とを比較して、前記出力抑制日時に現在日時が含まれるか否かによって前記出力抑制条件を満たすか否かを判定することを特徴とする請求項2記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項4】
前記発電パワーコンディショナおよび前記蓄電パワーコンディショナが有する通信手段の少なくともいずれか1つは、外部からの出力抑制指令を受付け可能となっており、
前記抑制条件判定部は、前記通信手段が前記出力抑制指令を受付けた場合に前記出力抑制条件を満たすと判定をすることを特徴とする請求項2記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項5】
前記出力抑制時に、前記発電側制御部は、前記DC/ACインバータを停止させるか、または前記DC/ACインバータの出力端と前記基幹電力線との間に介装されたリレーを切断することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項6】
前記発電側直流電力線と前記バイパス電力線との間、または前記バイパス電力線と前記蓄電側電力線との間に、前記発電側直流電力線側に入力端が接続されるとともに前記蓄電側直流電力線側に出力端が接続されたバイパス用DC/DCコンバータが介装され、
前記抑制条件判定部において前記出力抑制条件を満たすとの判定がなされると、前記発電側制御部または前記蓄電側制御部の制御下で前記バイパス用DC/DCコンバータが動作して前記発電パワーコンディショナから前記蓄電パワーコンディショナに直流電力が供給されることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のマルチパワーコンディショナシステム。
【請求項7】
前記発電側直流電力線と前記バイパス電力線との間、または前記バイパス電力線と前記蓄電側電力線との間に、前記発電側直流電力線側にアノードが接続されるとともに前記蓄電側直流電力線側にカソードが接続されたダイオードが介装され、
前記抑制条件判定部において前記出力抑制条件を満たすとの判定がなされると、前記発電側制御部の制御下で前記DC/DCコンバータが前記発電側直流電力線の電位を上げる第1電位調整動作、および/または前記蓄電側制御部の制御下で前記双方向DC/DCインバータまたは前記双方向DC/ACインバータが前記蓄電側直流電力線の電位を下げる第2電位調整動作が行われ、これにより前記ダイオードが導通状態となって前記発電パワーコンディショナから前記蓄電パワーコンディショナに直流電力が供給されることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のマルチパワーコンディショナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51833(P2013−51833A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188810(P2011−188810)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】