説明

マルチマータンパク質およびマルチマータンパク質を作製および使用する方法

【課題】マルチマー化ポリペプチドが、分子(例えば、異種ポリペプチド配列)に連結した場合、マルチマーの形成を与え得るマルチマー化ポリペプチドを提供すること。
【解決手段】本発明は、ポリペプチド配列に結合される分子の間でのオリゴマー(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、およびより高い次元のオリゴマー形態)の形成を媒介する操作されたポリペプチド配列に関連する。1つの局面において、マルチマーの形成を与える、1つ以上の7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドを改変する工程を包含し、ここで、位置aまたはdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンで置換され、それによって、マルチマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、出願番号60/306,746(2001年7月19日出願)および出願番号60/335,425(2001年11月30日出願)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、ポリペプチド配列に結合される分子の間でのオリゴマー(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、およびより高い次元のオリゴマー形態)の形成を媒介する操作されたポリペプチド配列に関連する。
【0003】
(背景)
マルチマー組換え抗体を作製するいくつかの方法が、報告されており、それらの方法としては、ミニ抗体(Packら、Biotechnology11:1271(1993);Packら、Biochemistry31:1579(1992);Packら、J.Mol.Biol.246:28(1995);Rheinneckerら、J.Immunol.157:2989(1996);およびPluckthunおよびPack、Immunotechnology3:83(1997))、ダイアボディ(diabody)、−トリアボディ(triabody)、−テトラボディ(tetrabody(Hudson PJ、Curr.Opin.Biotech.9:395(1998);Hiadesら、FEBS Lett.409:437(1997);Korttら、Protein Engineering 10:423(1997);およびGallら、FEBS Lett.453:164(1999))、プロテインA融合タンパク質(ItoおよびKurosawa、J.Biol.Chem.268:20668(1993))、ストレプトアビジン−融合タンパク質(Kipriyanovら、Protein Engineering 9:203(1996))、ジスルフィド結合フラグメント(Carterら、Biotechnology 10:163(1992))、化学的に結合したスペーサーと連結したフラグメント(CookおよびWood、J.Immunol.Methods 171:227(1994))または変性および再生によるscFvマルチマーの精製後アセンブリ(Whitlowら、Protein Engineering 7:1017(1994)および米国特許第5,869,620号)が挙げられる。
【0004】
プロテインAおよびストレプトアビジンが、ヒトにおいて高度に免疫原性であるので、プロテインAまたはストレプトアビジンとの融合により作製されるマルチマー抗体は、ヒトへの使用に適さないようである。ジスルフィド結合による抗体フラグメントの連結は、ダイマー組換え抗体を導き得る。単鎖抗体scFv−ベースの分子は、しばしば、scFvにおけるVHドメインとVLドメインとの間のリンカーの長さを変化させることによってマルチマー形態で作製され得る。リンカーが、3アミノ酸残基より長いが、12アミノ酸残基より短い場合、scFvは、「ダイアボディー」と呼ばれるダイマーを形成し、このリンカーが、2残基より短いか、またはリンカーの残基が用いられない場合、scFvは、「トリアボティー」および「テトラボディー」と呼ばれるトリマーまたはテトラマーを形成する。これらのマルチマーscFv分子が、構造的に固定されているので、親和性の改善は、より高い原子価からほとんど生じなかった。トリアボディーは、ダイアボディと同一であるかまたはダイアボディーより低い親和性を有し、そしてテトラボディーは、ダイアボディーの1倍未満の強さの親和性を有する(Korttら、Protein Engineering 10:423(1997);およびGallら、FEBS Lett.453:164(1999))。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明は、マルチマー形成をもたらし得るポリペプチド配列を含む。1つの実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、配列番号1〜7;配列番号9〜37;および配列番号154〜163に示されるアミノ酸配列から選択される。マルチマー化ポリペプチドはまた、このポリペプチドがマルチマー化しうる限りで、本明細書中で開示される配列と種々の量の配列同一性を有する配列を含む。種々の実施形態において、ポリペプチドは、例えば、配列番号1〜7;配列番号9〜37;配列番号154〜163に示されるマルチマー化ポリペプチドに対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の同一性を有する。
【0006】
マルチマー化し得るマルチマー化ポリペプチドの部分配列、改変形態(例えば、アミノ酸の置換、付加または欠失を有する配列)もまた含まれる。1つの実施形態において、改変形態は、1つ以上のアミノ酸の置換を有し、但し、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の全てのa位またはd位は、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、この置換されたポリペプチドは、マルチマー化をもたらし得る。別の実施形態において、改変形態は、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)のうち1つ以上のa位またはd位は、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、この置換されたポリペプチドは、マルチマー化をもたらし得る。別の局面において、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)のうちの少なくとも1つのa位またはd位は、ロイシン、イソロイシンまたはバリン以外のアミノ酸である。別の局面において、このポリペプチドは、1〜5のアミノ酸置換を有する。
【0007】
なお別の実施形態において、改変形態は、b位、c位、e位、f位またはg位に1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、この置換されたポリペプチドは、マルチマー化をもたらし得る。1つの局面において、このポリペプチドは、1〜5のアミノ酸置換を有する。
【0008】
マルチマー化ポリペプチドは、種々の長さのマルチマー化ポリペプチドである。種々の実施形態において、このポリペプチドは、少なくとも11アミノ酸長、少なくとも15アミノ酸長、少なくとも18アミノ酸長、少なくとも22アミノ酸長、少なくとも27アミノ酸長、少なくとも31アミノ酸長の配列を有する。さらなる実施形態において、このポリペプチドは、ほぼ125アミノ酸長より短い配列、ほぼ100アミノ酸長より短い配列、ほぼ75アミノ酸長より短い配列、ほぼ50アミノ酸長より短い配列を有する。
【0009】
部分配列およびその改変形態を含むマルチマー化ポリペプチドは、任意の分子に融合され、それによりマルチマー形成をもたらす。1つの実施形態において、この分子は、ポリペプチド配列(例えば、異種ポリペプチド)を含む。種々の局面において、マルチマー化ポリペプチドは、異種ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に融合されて、キメラポリペプチドを形成する。キメラポリペプチドは、代表的には、ほぼ18〜30アミノ酸、ほぼ30〜50アミノ酸、ほぼ50〜75アミノ酸、ほぼ75〜100アミノ酸、ほぼ100〜150アミノ酸、ほぼ150〜200アミノ酸、ほぼ200〜250アミノ酸、ほぼ250〜500アミノ酸またはほぼ500〜1000アミノ酸の配列の長さを有するが、それより短くても長くてもよい。特定の異種ポリペプチドは、例えば、以下:結合タンパク質(例えば、抗原結合ポリペプチド)、酵素、レセプター、リガンド、核酸結合タンパク質、成長調節因子、分化因子、および走化因子からなる群より選択される。種々の局面において、この抗原結合ポリペプチドは、少なくとも1つの抗体可変ドメイン(例えば、ヒト可変ドメインまたはヒト化可変ドメイン)を含む。さらなる局面において、抗原結合ポリペプチドとしては、単鎖抗体、Fab、Fab'、(Fab')2、またはFv抗体の部分配列が挙げられる。さらなる局面において、この抗原結合ポリペプチドは、多重特異的抗体または多機能抗体を含む。1つの特定の局面において、抗原結合ポリペプチドは、ICAM−1またはそのエピトープに結合する(例えば、抗原結合ポリペプチドは、ICAM−1を発現する細胞のヒトライノウイルス感染を阻害する)。
【0010】
マルチマーは、ヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、ヘテロペンタマーもしくはホモペンタマー、またはより高次のオリゴマーを形成する。マルチマーのうちのモノマー置換基の間の結合は、モノマーの解離(すなわちKD)によって測定される。種々の例示的なKDが、1×10-7以下、1×10-8以下または1×10-9である。
【0011】
さらなる実施形態において、リンカーは、マルチマーポリペプチドとそれが結合する分子との間に含まれる。1つの実施形態において、リンカーは、ポリペプチド配列(例えば、ヒトアミノ酸配列またはヒト化アミノ酸配列)を含む。リンカーは、任意のサイズであり得る。例えば、ポリペプチドリンカーは、ほぼ5〜20アミノ酸、ほぼ10〜30アミノ酸、ほぼ25〜50アミノ酸、ほぼ30〜60アミノ酸、ほぼ50〜75アミノ酸、またはこれらより長いかもしくは短いアミノ酸配列であり得る。特定の局面において、リンカーは、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)もしくは配列番号47(D63)に示されるアミノ酸配列またはそれらの部分配列を含む。
【0012】
本発明はまた、これらのマルチマーを含む薬学的処方物を提供する。1つの実施形態において、薬学的処方物は、1つの分子に融合されたマルチマーを含む。1つの局面において、この分子は、異種ポリペプチド配列を含む。
【0013】
本発明は、単独および異種ポリペプチドと組み合わせたマルチマーポリペプチドならびに連結された配列をコードする核酸をさらに提供する。この核酸を含む発現カセット、発現ベクター、および発現細胞(例えば、細菌、真菌、動物、植物、および昆虫)が含まれる。
【0014】
本発明は、マルチマーの形成をもたらす、1つ以上の7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを産生する方法をさらに提供する。1つの実施形態において、特定の方法は、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドを改変する工程を包含し、ここで、1つ以上の位置のaまたはdは、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかで置換され、それによりマルチマー形成をもたらすマルチマー化ポリペプチドを産生する。別の実施形態において、特定の方法は、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を改変する工程を包含し、ここで、位置aまたは位置dは、バリンおよびロイシンまたはイソロイシンのいずれかで置換され、それによりマルチマー形成をもたらすマルチマー化ポリペプチドを産生する。
【0015】
種々の局面において、改変ポリペプチドは、トリマー、テトラマー、またはペンタマーを形成し、一方で、非改変ポリペプチドは、ダイマーを形成する;改変ポリペプチドは、テトラマーまたはペンタマーを形成し、一方で、非改変ポリペプチドは、ダイマーまたはトリマーを形成する;非改変ポリペプチドは、トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する。別の局面において、改変ポリペプチドは、非改変ポリペプチドと比較して増加または減少したマルチマー安定性を有する。
【0016】
本発明は、マルチマーを形成するキメラポリペプチドを産生する方法をさらに提供する。1つの実施形態において、特定の方法は、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを産生する工程を包含し、ここで、1つ以上の位置のaおよびdは、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、これらaおよびdは、異種ポリペプチドに融合されており、それによりトリマー、テトラマー、またはペンタマーを産生する。
【0017】
本発明は、マルチマーを形成する分子を産生する方法をさらに提供する。1つの実施形態において、特定の方法は、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含む分子を産生する工程を包含し、ここで、a位またはd位は、バリンおよびロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、これらのa位またはd位は、この分子に融合されており、それによりマルチマー(例えば、ダイマーまたはトリマーまたはペンタマー)を形成する。
【0018】
7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する方法が、さらに提供される。1つの実施形態において、特定の方法は、以下の工程:ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成を可能にする条件下で、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチド(ここで、a位およびd位のうちの1つ位上が、ロイシン、イソロイシン、またはバリンのいずれかである)をインキュベートする工程;このポリペプチドのホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの存在についてアッセイする工程であって、ここで、同種マルチマーまたは異種マルチマーの形成により、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する工程、を包含する。
【0019】
(例えば、被験体における)細胞のRSV感染を阻害する方法もまた提供される。1つの実施形態において、特定の方法は、RSVまたはRSV感染に対して感受性の細胞を、この細胞のRSV感染を阻害するのに有効なマルチマーを有する量のヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、ヘテロペンタマーもしくはホモペンタマー、またはより高次のオリゴマーと接触させる工程を包含する。被験体のRSV感染を阻害する方法、RSVの進行を阻害する方法、およびRSV感染を処置する方法がさらに提供される。別の実施形態において、特定の方法は、RSV感染を有するか、またはその危険性のある被験体に、その被験体のRSV感染の阻害、RSV感染の進行の阻害、またはRSV感染の処置に有効な量のマルチマー抗体(例えば、抗体のヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、またはより高次のオリゴマー)を投与する工程を包含する。種々の局面において、この被験体は、喘息を有するか、または喘息を有する危険性があり;新生児または1〜5歳、5〜10歳、もしくは10〜18歳の間であり;この細胞は、上皮細胞であり;このマルチマーは、キメラポリペプチド(例えば、ヒト化抗体のような抗体)を含む。さらなる局面において、この抗体は、吸入または鼻腔を介して局所的に投与される。
【0020】
感冒を処置する方法が、さらに提供される。1つの実施形態において、特定の方法は、感冒を有するか、またはその危険性のある被験体に、その被験体の感冒の処置に有効な量の抗体(あるいは、抗体のヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、またはより高次のオリゴマー)を投与する工程を包含する。種々の局面において、この処置としては、HRVによる感染、HRV感染の進行、もしくはHRV感染の症状を阻害する工程を包含し;この抗体は、ヒト化され;この抗体は、局所的に投与され;この抗体は、吸入または鼻腔を介して投与され;被験体は、喘息を有するか、または喘息を有する危険性を有し;そしてこの被験体は、新生児であるかまたは1〜5歳、5〜10歳、または10〜18歳の間である。
本発明は、上記に加えて、以下の手段を提供する:
(項目1)
配列番号1〜7;配列番号9〜37;および配列番号154〜163に記載のアミノ酸配列から選択される、マルチマー化ポリペプチド。
(項目2)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して70%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
(項目3)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して75%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
(項目4)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して80%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
(項目5)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して85%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
(項目6)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して90%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
(項目7)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して95%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
(項目8)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドのポリペプチド部分配列であって、該ポリペプチド部分配列が、マルチマー化可能である、ポリペプチド部分配列。
(項目9)
項目2に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aまたはdの全てが、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、該置換されたポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、マルチマー化ポリペプチド。
(項目10)
項目2に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aまたはdの1つ以上が、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、該置換されたポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、マルチマー化ポリペプチド。
(項目11)
項目10に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aまたはdの少なくとも1つが、ロイシン、イソロイシンまたはバリン以外のアミノ酸である、マルチマー化ポリペプチド。
(項目12)
項目10に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1〜5個のアミノ酸置換を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目13)
項目2に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、位置b、c、e、fまたはgの位置に、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、該置換されたポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、マルチマー化ポリペプチド。
(項目14)
項目13に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1〜5個のアミノ酸置換を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目15)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも11アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目16)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも15アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目17)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも18アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目18)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも22アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目19)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも27アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目20)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも31アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目21)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約125アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目22)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約100アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目23)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約75アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目24)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約50アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
(項目25)
異種ポリペプチドに融合された、項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドを含む、キメラポリペプチド。
(項目26)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドのアミノ末端に融合される、キメラポリペプチド。
(項目27)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドのカルボキシ末端に融合される、キメラポリペプチド。
(項目28)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して50%以上の同一性を有し、該キメラポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、キメラポリペプチド。
(項目29)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドの部分配列であり、該キメラポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、キメラポリペプチド。
(項目30)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aおよびdの1つ以上が、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、該キメラポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、キメラポリペプチド。
(項目31)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記キメラポリペプチドが、約18〜30、30〜50、50〜75、75〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜500または500〜1000のアミノ酸の配列長を有する、キメラポリペプチド。
(項目32)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記異種ポリペプチドが、結合タンパク質、酵素、レセプター、リガンド、核酸結合タンパク質、成長調節因子、分化因子、および走化性因子から選択される、キメラポリペプチド。
(項目33)
項目32に記載のキメラポリペプチドであって、前記結合タンパク質が、抗原結合ポリペプチドを含む、キメラポリペプチド。
(項目34)
項目33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む、キメラポリペプチド。
(項目35)
項目34に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗体可変ドメインが、ヒトまたはヒト化されている、キメラポリペプチド。
(項目36)
項目33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、単鎖抗体、Fab、Fab'、(Fab')2、またはFv抗体の部分配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目37)
項目33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、多特異的または多機能性の抗体を含む、キメラポリペプチド。
(項目38)
項目33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、ICAM−1またはそのエピトープに結合する、キメラポリペプチド。
(項目39)
項目33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、ICAM−1を発現するヒトライノウイルス感染を阻害する、キメラポリペプチド。
(項目40)
項目33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、ヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーを形成する、キメラポリペプチド。
(項目41)
項目40に記載のキメラポリペプチドであって、前記ホモダイマー、ホモトリマー、ホモテトラマー、またはより高次のホモオリゴマーを構成するモノマーのKDが、1×10-7以下である、キメラポリペプチド。
(項目42)
項目40に記載のキメラポリペプチドであって、前記ホモダイマー、ホモトリマー、ホモテトラマー、またはより高次のホモオリゴマーを構成するモノマーのKDが、1×10-8以下である、キメラポリペプチド。
(項目43)
項目25に記載の少なくとも1つのキメラポリペプチドを含む、ホモまたはヘテロのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のポリペプチドのオリゴマー。
(項目44)
項目25に記載のキメラポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、前記マルチマー化ポリペプチドと前記異種ポリペプチドとの間にリンカーを含む、キメラポリペプチド。
(項目45)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、ヒトアミノ酸配列またはヒト化アミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目46)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約5〜20アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目47)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約10〜30アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目48)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約25〜50アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目49)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約30〜60アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目50)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約50〜75アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目51)
項目44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目52)
異種ポリペプチドに融合された、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)のいずれかに記載のリンカーポリペプチド配列を含む、キメラポリペプチド。
(項目53)
項目52に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーポリペプチド配列が、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)のいずれかに記載の部分配列である、キメラポリペプチド。
(項目54)
項目23に記載のキメラポリペプチドを含む、薬学的処方物。
(項目55)
項目25または52に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
(項目56)
発現制御エレメントに作動可能に連結された、項目55に記載の核酸を含む、発現カセット。
(項目57)
項目56に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目58)
項目56に記載の核酸を含む、細胞。
(項目59)
項目58に記載の細胞であって、該細胞が、細菌細胞、真菌細胞、動物細胞、植物細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される、細胞。
(項目60)
項目57に記載の細胞であって、前記動物細胞が、哺乳類である、細胞。
(項目61)
項目1に記載のマルチマー化ポリペプチドをコードする配列を含む、核酸。
(項目62)
発現制御エレメントに作動可能に連結された、項目61に記載の核酸。
(項目63)
異種ポリペプチドをコードする核酸にインフレームで融合した、項目61に記載の核酸。
(項目64)
項目63に記載の核酸であって、リンカー配列をコードする核酸が、項目61に記載の核酸と異種ポリペプチドをコードする核酸との間に位置する、核酸。
(項目65)
項目61に記載の核酸配列を含む、ベクター。
(項目66)
項目65に記載のベクターであって、前記ベクターが、発現ベクターである、ベクター。
(項目67)
項目61に記載の核酸を含む、細胞。
(項目68)
項目67に記載の細胞であって、前記細胞が、細菌細胞、真菌細胞、動物細胞、植物細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される、細胞。
(項目69)
項目68に記載の細胞であって、前記動物細胞が、哺乳類である、細胞。
(項目70)
マルチマーの形成を与える、1つ以上の7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドを改変する工程を包含し、ここで、位置aまたはdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンで置換され、それによって、マルチマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する、方法。
(項目71)
項目70に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、トリマー、テトラマー、またはペンタマーを形成するが、未改変ポリペプチドが、ダイマーを形成する、方法。
(項目72)
項目70に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
(項目73)
項目70に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、テトラマーまたはペンタマーを形成するが、未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはトリマーを形成する、方法。
(項目74)
ダイマーの形成を与える、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を改変する工程を包含し、ここで、位置aまたはdが、バリンとロイシンまたはイソロイシンのいずれかとで置換され、それによって、ダイマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する、方法。
(項目75)
項目74に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する、方法。
(項目76)
項目74に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
(項目77)
トリマーを形成するキメラポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、異種ポリペプチドに融合され、それによって、トリマーを形成するキメラポリペプチドを作製する、方法。
(項目78)
項目77に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する、方法。
(項目79)
項目77に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
(項目80)
テトラマーを形成するキメラポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、異種ポリペプチドに融合され、それによって、テトラマーを形成するキメラポリペプチドを作製する、方法。
(項目81)
項目80に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはトリマーまたはペンタマーを形成する、方法。
(項目82)
項目80に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
(項目83)
ペンタマーを形成するキメラポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、異種ポリペプチドに融合され、それによって、ペンタマーを形成するキメラポリペプチドを作製する、方法。
(項目84)
項目83に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはトリマーまたはテトラマーを形成する、方法。
(項目85)
項目83に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
(項目86)
マルチマーを形成する分子を作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含む分子を作製する工程を包含し、ここで、位置aまたはdが、バリンと、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかとであり、該分子に融合され、それによって、マルチマーを形成する分子を作製する、方法。
(項目87)
項目86に記載の方法であって、前記分子が、ポリペプチドである、方法。
(項目88)
トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する分子を作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを分子に連結し、これによって、トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する分子を作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかである、方法。
(項目89)
項目88に記載の方法であって、前記分子が、ポリペプチドである、方法。
(項目90)
7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する方法であって、該方法が、以下:
a)ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成を可能にする条件下で、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドをインキュベートする工程であって、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシン、イソロイシン、またはバリンのいずれかである、工程;および
b)該ポリペプチドのホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの存在をアッセイする工程であって、ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する、工程、
を包含する、方法。
(項目91)
項目90に記載の方法であって、工程a)の前記ポリペプチドが、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドに融合された異種ポリペプチドを含む、方法。
(項目92)
項目91に記載の方法であって、前記ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドと前記7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドとの間にリンカーを含む、方法。
(項目93)
細胞のRSV感染を阻害する方法であって、該方法が、RSVを含む細胞またはRSV感染に感受性の細胞を、細胞のRSV感染を阻害するのに有効な量の、項目36に記載の抗体のヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーと接触させる工程を包含する、方法。
(項目94)
項目87に記載の方法であって、前記細胞が、被験体に存在する、方法。
(項目95)
項目88に記載の方法であって、前記被験体が、喘息を有するかまたは喘息の危険にある、方法。
(項目96)
項目87に記載の方法であって、前記細胞が、上皮細胞である、方法。
(項目97)
項目87に記載の方法であって、前記抗体が、ヒト化されている、方法。
(項目98)
項目87に記載の方法であって、前記抗体が、局所的に投与される、方法。
(項目99)
項目87に記載の方法であって、前記抗体が、吸入または鼻腔内によって投与される、方法。
(項目100)
RSV感染の阻害、RSV進行の阻害、または被験体のRSV感染の処置の方法であって、該方法が、RSV感染を有するかまたはRSV感染を有する危険がある被験体に、被験体のRSV感染の阻害、RSV進行の阻害、または被験体のRSV感染の処置に有効な量の、項目38に記載の抗体、あるいは項目38に記載の抗体のヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーを投与する工程を包含する、方法。
(項目101)
項目100に記載の方法であって、前記抗体が、ヒト化されている、方法。
(項目102)
項目100に記載の方法であって、前記抗体が、局所的に投与される、方法。
(項目103)
項目100に記載の方法であって、前記抗体が、吸入または鼻腔内によって投与される、方法。
(項目104)
項目100に記載の方法であって、前記被験体が、喘息を有するかまたは喘息の危険にある、方法。
(項目105)
項目100に記載の方法であって、前記被験体が、新生児あるいは1〜5歳、5〜10歳または10〜18歳の間である、方法。
(項目106)
感冒を処置する方法であって、該方法が、感冒を有するかまたは感冒を有する危険にある被験体に、被験体における感冒を処置するのに有効な量の、項目38に記載の抗体、あるいは項目38に記載の抗体のヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーを投与する工程を包含する、方法。
(項目107)
項目106に記載の方法であって、前記処置が、HRVによる感染、HRV感染の進行、またはHRV感染の症状を阻害する工程を包含する、方法。
(項目108)
項目106に記載の方法であって、前記抗体が、ヒト化されている、方法。
(項目109)
項目106に記載の方法であって、前記抗体が、局所的に投与される、方法。
(項目110)
項目106に記載の方法であって、前記抗体が、吸入または鼻腔内によって投与される、方法。
(項目111)
項目106に記載の方法であって、前記被験体が、喘息を有するかまたは喘息の危険にある、方法。
(項目112)
項目106に記載の方法であって、前記被験体が、新生児あるいは1〜5歳、5〜10歳または10〜18歳の間である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施例1〜3に記載されるようなマルチマー化ドメイン(ATFα)、リンカー(ED)、および抗体配列(VL、VH、CLおよびCH)を含む例示的なキメラポリペプチドを発現するための発現ベクター(「Fabベクター」)を示す。
【図2】図2A〜図2Bは、精製されたCFY196の特徴付けを示す。図2A)HPLCサイズ排除カラム上の単一のピークとしての、精製されたCFY196の電気泳動;図2B)CFY196のクマシーブルー染色されたSDS−PAGE(これは、2つの成分(軽鎖(LC)のバンドおよび複合体重鎖(CHC)バンド(レーン1))として示される)。分子量マーカーが、レーン2に示される。
【図3】図3A〜図3Cは、図3A)CFY195(5.5秒でのピーク);図3B)CFY192B;および図3C)CFY196(6.55秒でのピーク)からの加工された沈降速度を示す。CFY196についてのより狭いピークに注意のこと。
【図4】図4は、一価Fabおよび多価Fab−ATFαドメインキメラタンパク質を用いた、HRV14による感染からのHeLa細胞の保護を示す。キメラタンパク質は、以下のように示される:CFY198B、Fab−ED−ATFαLL;CFY196、Fab−ED−ATFα(1)LI+S;CFY192B、Fab−ED−ATFα(2)LI;およびCFY195、Fab−ED−ATFαII。
【図5】図5は、一価Fab19、二価モノクローナル抗体RR/1、二価CFY202、トリマーCFY193B、およびテトラマーCFY196を用いた、HRV15感染からのHeLa細胞の保護を示す。
【図6】図6A〜図6Bは、二重特異性マルチマータンパク質を示す。図6A)異なるハッチング(hatching)で示されるFab部分は、異なる特異性または機能を有する。リンカー配列は、六角形で示される。図6B)このポリペプチドは、1つのトリシストロンRNA分子から産生される。このメッセージから翻訳される第一のポリペプチド鎖についてのコード配列は、ハッチングされた囲みにより示され、抗CD3軽鎖(LC−1)を表す。第二のDNAフラグメントは、IgDから誘導されたヒンジに連結された抗CD−3重鎖(HC−1)、引き続くダイマー化ドメイン、第二のヒンジ、および抗CD−19軽鎖(LC−2)から構成される中央のキメラポリペプチドをコードする。第三のRNA(空の囲み)は、抗CD19重鎖(HC−2)をコードする。制限部位は、示されるとおりである。
【図7】図7A〜図7Bは、溶媒に曝された位置でのアミノ酸の置換によるATFαILのテトラマー化の改善を示す;図7A)CFY1971;図7B)CFY1972;およびC)CFY197。
【図8】図8は、競合ELISAの結果を示す。このデータは、ICAM−1へのトレーサー抗体結合の阻害の%として表される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
本発明は、少なくとも一部、本明細書中で「マルチマー化ポリペプチド」、「マルチマー化ドメイン」または「マルチマー化デバイス」として参照されるマルチマー化をもたらすペプチド配列の同定に基づく。本発明のマルチマー化ポリペプチドは、オリゴマー形成をもたらす。例えば、第二の分子(例えば、異種ポリペプチド配列)に融合される場合、マルチマー化ポリペプチドは、そのポリペプチドの中でのダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、もしくはそれより高次のオリゴマーまたはそれらの混合物の形成を容易にする。そのような本発明のマルチマー化ポリペプチドは、種々の診断用途または治療用途において有用である。例えば、結合タンパク質(例えば、抗体のような抗原結合タンパク質)に、マルチマー化ポリペプチドを融合することは、オリゴマー形成を介する抗原結合部位の数を増加させるために用いられ得る。抗原結合部位の数を増加させることは、次いで、抗原に対する抗体のアビディティを増加させ、このことは、任意の治療的または診断的抗体適用において、特に、抗体アビディティを増加させることが望まれるかまたはそれが有利である適用において有用である。完全なヒトマルチマー化抗体またはヒト化マルチマー化した抗体は、非ヒト化抗体と比較して減少したヒトにおける免疫原性を減少するか、または免疫原性が存在しない。
【0023】
分子に結合したマルチマー化ポリペプチドは、任意の分子間でマルチマーが形成されることを可能にする。言い換えると、このオリゴマーは、例えば、2つ以上の分子の同じタンパク質の(例えば、ホモダイマー、ホモトリマー、ホモテトラマー、またはそれ以上に高次のオリゴマー)または2つ以上の異なる(すなわち、非同一の)タンパク質の混合物(例えば、ヘテロダイマー、ヘテロトリマー、ヘテロテトラマーまたはそれ以上に多いオリゴマー)を含み得る。例えば、オリゴマー抗体は、同じ抗体を含んでも、2つ以上の異なる抗体(これらの各々は、2つ以上の(例えば、2つ以上のエピトープに結合する)機能または活性を有する)を含んでもよい。そのようなヘテロオリゴマーはまた、このオリゴマーを含むタンパク質の多機能に起因して、多機能性オリゴマー(例えば、適切な、二機能性、三機能性、四機能性など)として参照され、そして種々の診断適用および治療的適用において有用である。例えば、2つ以上の異なる抗体を含む多機能オリゴマーは、多機能抗体を使用することが所望される適用において有用である。特に、多機能抗体は、細胞表面レセプターに結合する抗体およびこのレセプターを保有する細胞が殺傷のための標的化されるように補体カスケードを媒介する抗体を含み得る。このオリゴマーの特異的な機能は、本願に基づき、当業者により決定される。
【0024】
従って、本発明によれば、マルチマー形成をもたらすマルチマー化ポリペプチドが提供される。1つの実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、配列番号1〜7;配列番号9〜37;配列番号154〜163に示されるアミノ酸配列のいずれかより選択される。他の実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、配列番号1〜7;配列番号9〜37;配列番号154〜163に示されるアミノ酸配列に対して30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い同一性を有し、ただし、このマルチマー化ポリペプチドは、マルチマー化をもたらす。さらなる実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、ヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、ヘテロペンタマーもしくはホモペンタマー、ヘテロヘキサマーもしくはホモヘキサマー、またはより高次のオリゴマーおよびこれらの混合物の形成をもたらす。なおさらなる実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、ヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマーまたはより高次のオリゴマーを形成し得るヒトペプチドの配列に基づく、完全なヒトポリペプチドまたはヒト化ポリペプチドから作製される配列である。
【0025】
マルチマー化ポリペプチドおよびマルチマー化ポリペプチドをコードする核酸は、異種ポリペプチドに融合されない場合、既知の野生型ロイシンジッパー配列とは別個である。従って、本発明のマルチマー化ポリペプチドは、当該分野において公知である野生型ロイシンジッパードメイン配列(例えば、天然に存在するGCN4、ATFa、ATF−7(ATFαにおけるコイルド−コイルドメインと100%同一である)、ATF−2、環状AMP応答エレメント結合タンパク質Pa(CREB−Pa)、JUN−DおよびC−JUN)を含まない。本発明のマルチマー化ポリペプチドはまた、WO 96/37621に記載されるマルチマー化デバイス(ヒトp53、PF4、TSP−4、COMP、トロンボスポンジン、dTAFII42、dTAFII31、dTAFII62、dTAFII80、ヒストン3およびヒストン4由来の野生型配列)とは異なる。
【0026】
本発明のマルチマー化ポリペプチドは、任意の長さのものであり得るが、ただし、これらは、マルチマー化をもたらし得る。特定の実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、少なくとも11アミノ酸長、少なくとも15アミノ酸長、少なくとも18アミノ酸長、少なくとも22アミノ酸長、少なくとも25アミノ酸長、少なくとも29アミノ酸長、少なくとも31アミノ酸長の配列を有する。さらなる特定の実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、ほぼ100アミノ酸長より短い配列、ほぼ75アミノ酸長より短い配列、およびほぼ50アミノ酸長より短い配列を有する。
【0027】
本発明はまた、異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを提供する。そのようなキメラポリペプチドは、マルチマー化ポリペプチドを介してオリゴマー(マルチマー)を形成する。1つの実施形態において、キメラポリペプチドは、配列番号1〜7;配列番号9〜37;配列番号154〜163に示されるアミノ酸配列のいずれかより選択されるマルチマー化ポリペプチドを含む。他の実施形態において、キメラポリペプチドは、配列番号1〜7;配列番号9〜37;配列番号154〜163に示されるアミノ酸配列に対して30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高い同一性を有するマルチマー化ポリペプチドを含み、ただし、このキメラポリペプチドは、マルチマーを形成する。さらなる実施形態において、キメラポリペプチドは、ヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、ヘテロペンタマーもしくはホモペンタマー、ヘテロヘキサマーもしくはホモヘキサマー、またはより高次のオリゴマーおよびこれらの混合物を形成する。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「マルチマー」およびその文法的バリエーションは、2つ以上の別個の分子間でのオリゴマー複合体の形成を示す。ポリペプチドの参照において用いられる場合(例えば、「ポリペプチドマルチマー」)、これは、それ自体を用いて(ホモマルチマー)または他の分子を用いて(ヘテロマルチマー)より高次のオリゴマーを形成することを意味する。マルチマー化をもたらすポリペプチドとは、適切な条件下で、それ自体を用いる(ホモオリゴマー)かまたは1つ以上の他の異なるタンパク質を用いる(へテロオリゴマー)、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマーまたは任意のより高次のオリゴマーの形成をもたらし得るアミノ酸配列を意味する。例えば、異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドはまた、マルチマー化ポリペプチド部分と相互作用し得るドメインを有する、それ自体または異なるタンパク質を用いて、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマーまたは任意のより高次のオリゴマーを形成し得る。従って、マルチマーは、さらに、共有結合または非共有結合を介して直接的または間接的のいずれかで結合された一価またはオリゴマー(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーなど)キメラポリペプチドを含む。
【0029】
このマルチマー化ポリペプチドは、共有結合(例えば、化学的架橋剤)を介して異種ポリペプチドに直接的に連結され得る。あるいは、マルチマー化ポリペプチドは、リンカー配列(例えば、抗体ヒンジ配列のようなペプチド配列)を介して異種ポリペプチドに結合され得る。任意ではあるが、必要に応じたリンカーの包含は、このマルチマー化ポリペプチドが、異種ポリペプチドの機能をブロックしないことおよびこの異種ポリペプチドが、マルチマー化機能をブロックしないことを確かにする。従って、リンカーにより、マルチマー中の各々の抗原結合ドメインが、抗原に結合するに十分に可撓性になる。
【0030】
リンカーの1つの特定の例は、免疫グロブリンヒンジ配列(例えば、IgGまたIgD)である。マルチマー化ドメイン同様に、リンカーアミノ酸配列は、本明細書中で示されるような、改変されていないかまたは改変された、完全なヒトアミノ酸配列、ヒト化アミノ酸配列、または非ヒトアミノ酸配列であり得る。完全なヒトリンカー配列またはヒト化リンカー配列は、特に治療目的において有用であり得る。
【0031】
異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを含む本発明の組成物は、既知のネイティブの(すなわち、天然に存在する)タンパク質およびマルチマー化ポリペプチド配列を含む組換えタンパク質とは異なる。例えば、酵母ベースのタンパク質GCN4−LIドメインに融合されたscFv(これは、四価scFvを形成する(Packら、J.Mol.Biol.246:28(1995))およびjunおよびfos由来の野生型ロイシンジッパードメインに融合されたscFv(米国特許第5,910,573号)は、異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドと異なる。本発明のキメラポリペプチドは、当該分野で公知のマルチマー化配列を含み得るが、ただし、これらのキメラポリペプチドは、マルチマーを形成し、そして当該分野において公知のマルチマー化配列を含む公知のタンパク質とは異なる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「異種」とは、ポリペプチドに対する参照において用いられる場合、このポリペプチドが、天然の環境において他のポリペプチドと通常にないように連続していることを意味する。従って、異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含む本発明のキメラポリペプチドとは、そのマルチマー化ポリペプチドが、正常な細胞において、その異種ポリペプチドと融合して存在しないことを意味する。言い換えると、異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドは、通常、天然には存在しない分子である。すなわち、そのような分子は、例えば、人工的に産生される(例えば、組換えDNA技術を介して人工的に産生される)。
【0033】
用語「融合」とは、2つ以上の分子(例えば、ポリペプチド)に関して使用される場合、これらの分子が共有結合で結合されるかまたは連結されることを意味する。分子を結合する任意の方法が、企図される。従って、このマルチマーと、これが結合される分子との間の連結の化学的性質は、限定されない。2つのタンパク質配列の連結についての特定の例は、アミド結合またはその等価物である。
【0034】
用語「キメラ」およびその文法的バリエーションは、タンパク質に関して使用される場合、そのタンパク質が2つ以上の異なるタンパク質(すなわち、非同一タンパク質)由来の、1つ以上のアミノ酸残基を含むことを意味する。2つ以上の異なるタンパク質由来のアミノ酸を含むキメラの特定の例は、マルチマー化ポリペプチド、および異種性ポリペプチドを含む。3つ以上の異なるタンパク質由来のアミノ酸残基を含むキメラの特定の例は、マルチマー化ポリペプチド、リンカー(例えば、ヒンジ)、および異種性ポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0035】
理論により束縛されることを所望しないが、マルチマー化をもたらすアミノ酸配列は、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、水素結合または電荷−電荷結合を介したタンパク質−タンパク質結合を媒介する。分子が互いに共有結合で連結される場合、これら分子はまた、オリゴマーを形成し得る。例えば、化学的に合成されるか、インビトロで翻訳されるか、または細胞もしくはサンプルから単離もしくは精製される、2つの異なるタンパク質は、非アミド結合を介して一緒に化学的に架橋されて、オリゴマーを形成し得る。従って、別個の実体として存在し、そして非共有結合性相互作用を介してはオリゴマーを形成しないが共有結合を介して一緒に合わせられた2つの分子もまた、マルチマーであるとみなされる。従って、本発明のオリゴマーまたはマルチマー(例えば、ヘテロダイマーもしくはホモダイマー、ヘテロトリマーもしくはホモトリマー、ヘテロテトラマーもしくはホモテトラマー、ヘテロペンタマーもしくはホモペンタマー、ヘテロヘキサマーもしくはホモヘキサマーなど)は、共有結合、非共有結合、またはそれらの混在を介して形成され得る。
【0036】
コイルドコイルドメインは、7残基反復配列(ヘプタッド(heptad)反復)(a.b.c.d.e.f.g)によって特徴付けられる、両親媒性αヘリックスと、位置aおよび位置d(位置1および位置4)での優勢な疎水性残基、ならびに一般的に他のいずれかの極性残基との相互作用から構成される(Harburyら、Science 262:1401(1993))。ロイシンジッパードメインは、代表的にヘプタッド反復のうちのd位置にロイシンを有する、コイルドコイルドメインである。天然に存在するコイルドコイルドメインは、代表的に、複数のヘプタッド反復、例えば、3つ以上の配列((a.b.c.d.e.f.g)1−(a.b.c.d.e.f.g)2−(a.b.c.d.e.f.g)3など)から構成される。略号「(a.b.c.d.e.f.g)n」とは、単に、半分の長さ(3〜4アミノ酸)または全長(7アミノ酸)の、2つ以上のさらなるヘプタッド反復配列をいい、ここで、各々の半分の長さの反復または全長(a.b.c.d.e.f.g.)の反復は、同一のアミノ酸配列を有する必要はない(例えば、表3Aおよび3Bを参照のこと)。
【0037】
一般的に、反復配列のa位置およびd位置での疎水性残基の性質は、その特定のマルチマー性状態を決定する。さらに、a残基およびd残基の所定の対で、このマルチマー化状態は変動し得、そしてb位置、c位置、e位置、f位置およびg位置での配列によって影響され得る。これらの規則は、酵母タンパク質GCN4中のコイルドコイルドメインと、ほんの29%から50%のみの同一性を有するコイルドコイル配列にすら、あてはまる。
【0038】
ロイシンおよびイソロイシンが、本明細書中で開示されるような位置aおよび位置dにある場合、ダイマーまたはトリマーまたはテトラマーまたはペンタマーが生じる。具体的には、テトラマーは、ATFα−LIドメイン、ATF1−LIドメイン、ATF2−LIドメイン、CJUN−LIドメイン、JUND−LIドメインおよびCREB−LIドメインによって示されるように、位置aにロイシンそして位置dにイソロイシンを有するコイルドコイル配列から生じるようである。位置aにイソロイシン、そして位置dにロイシンを有するコイルドコイル配列は、ダイマー(例えば、CREB−IL、CJUN−ILおよびATF2−IL)、ATFα−ILのようなテトラマー、またはATF1−ILのようなダイマーを形成し得る。位置aおよび位置dの両方にロイシンを有する場合、トリマーまたはテトラマーのいずれかが生じる。例えば、ATFα−LL、ATF1−LLおよびCJUN−LLはトリマーを形成し、そしてATF2−LLおよびCREB−LLの両方はテトラマーを形成する。位置aおよび位置dの両方にイソロイシンを有するコイルドコイルは、トリマーを形成する傾向を有する;例えば、ATFα−IIおよびATF1−IIはトリマーを形成する。疎水性コア(位置b、位置c、位置e、位置fおよび位置g)の外側のアミノ酸が、ヘリックス内水素結合およびヘリックス間水素結合、ならびに塩橋の網(network)を作製することによって、コイルドコイルのマルチマー化状態を調節し得るので、これらのマルチマー形態が存在する。この親水性結合の網は、これが最適な相対位置(geometry)に向かう傾向にあるように、ヘリックスの相対的な方向を変更し、結果的にマルチマー化状態に対して観察される作用を生じる。従って、マルチマー化状態を調節するために、個々のb位置、c位置、e位置、f位置およびg位置での1つまたは2〜3の残基を変更することは、文脈に依存性の様式において可能である。
【0039】
バリンがa位置およびd位置でイソロイシンまたはロイシンのいずれかと対合される場合、得られるマルチマー化ポリペプチドは、不安定である傾向にあるが、ダイマーおよびトリマーの混合物形成を与え得る。例えば、JUN−Dのコイルドコイルドメイン(アミノ酸249〜280)は、ATFαドメインと48%の同一性を有し(表3B)、これを本発明に従って改変した。JUND−LIはトリマーを形成し、そしてJUND−LLはダイマーを形成する(表8)。同様に、C−JUNのコイルドコイルドメイン(アミノ酸277〜308)はATFαドメインと39%の同一性を有する。C−JUN−LIは、テトラマーを形成し、C−JUN−LLはトリマーを形成し、そしてC−JUN−ILはダイマーを形成する(表8)。
【0040】
一般的に、2つ以上の(a.b.c.d.e.f.g.)ヘプタッド反復配列を有するマルチマー化ドメインは、a位置およびd位置に、ロイシン、イソロイシンまたはバリン以外のアミノ酸を許容する。例えば、4つのヘプタッド反復配列において、a位置およびd位置のうちの1つ以上は、ロイシン、イソロイシンまたはバリン以外のアミノ酸であり得る。例えば、1つの親水性残基が、少なくとも3つのヘプタッド反復を含む配列におけるa位置またはd位置に挿入されて、マルチマー化状態を調節し得る。従って、本発明は所定のヘプタッド反復配列中のa位置およびd位置が、ロイシン、イソロイシンまたはバリン以外のアミノ酸であり得る。マルチマー化ポリペプチドを含む。さらに、マルチマーを構成するモノマーの間の結合強度(または、本明細書中で安定性または緊密さ(tightness)とも言われる)は、(a.b.c.d.e.f.g.)ヘプタッド反復配列を改変することによって変更され得る。例えば、a残基およびd残基の全体の相互作用層を、水素結合を介して相互作用し得る残基で置き換えることであり、例えば、aおよびdはグルタミンによって置きかえられ得る:CFY196Q:
【0041】
【化1】

。従って、本発明は、a位置、b位置、c位置、d位置、e位置、f位置およびg位置がマルチマー化状態を変更するように、そしてマルチマー間の結合強度を増加または低下するように改変され得る、マルチマー化ポリペプチドを含む。
【0042】
コイルドコイル配列に由来するマルチマードメインの各々は、モノマー、ダイマー、トリマー、テトラマーまたはそれより高いマルチマーの混合物として存在し得る。主要なマルチマー形態(その質量の50%以上を構成する)は、設計されたマルチマー形態である。例えば、マルチマーが設計されたテトラマーである場合、少なくとも50%の質量がテトラマー形態をとる。
【0043】
本発明のマルチマー化ポリペプチドの特定の例としては、例えば、配列番号1〜7;配列番号9〜37;および配列番号154〜163に挙げられる。さらなるマルチマー化ポリペプチドは、推定のコイルドコイル配列をアッセイすることによって同定され得、この配列は、本明細書中に記載されるかまたは当該分野で公知のような、慣用的な検出アッセイを使用して、オリゴマー形成のために1つ以上のヘプタッド反復配列(a.b.c.d.e.f.g)からなる(実施例6を参照のこと)。ヘプタッド反復(a.b.c.d.e.f.g)を含む配列(ここで、1つ以上の位置aおよび位置dはロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかである)は、ヘテロオリゴマーまたはホモオリゴマーの形成を可能にする条件下でインキュベートされ得る。
【0044】
例えば、cAMP応答エレメント結合タンパク質−Paのロイシンジッパードメイン(CREB−Pa、アミノ酸393〜424)は、ATFαロイシンジッパードメイン配列と74%の配列同一性を有する(表3C)。CREB−Paロイシンジッパードメインの改変体のCREB−LLおよびCREB−LIは、テトラマーを形成し、そしてCREB−ILはダイマーを形成した(表8)。ATF−1ロイシンジッパードメイン(アミノ酸238〜269)は、ATFαロイシンジッパードメイン配列と29%の同一性を有する。ATF−Iロイシンジッパードメインの改変体のATF1−LIはテトラマーを形成し;ATF1−IL、ATF1−LLおよびATF1−IIはトリマーを形成する(表8)。
【0045】
さらなるマルチマー化ドメインは、野生型コイルドコイルドメインを最初に同定することによって作製され得る。例えば、5つのロイシンジッパードメインを、公的データベースを検索することによって同定した(表3B)。これらのドメインは、ATFαロイシンジッパードメインに対して32%〜77%の同一性を示し、そしてGCN4ロイシンジッパードメインに対しては50%未満の同一性を示した(表3C)。位置aおよび位置dでの野生型残基を、ロイシンまたはイソロイシンで置き換えた(表3D)。本発明に従って改変され得る、さらなるコイルドコイルドメインとしては、例えば、肺表面活性物質(lung surfactant)Dタンパク質、テトラネクチンおよびマンノース結合タンパク質のような3つおよび4つのヘリックスの束(bundle);ならびにそれぞれ、ROP、シトクロムB562、およびテトラブラキオンストーク(tetrabrachion stalk)が挙げられる。
【0046】
従って、他のマルチマー化ドメインは、配列データベースとの比較によって同定され得、そして本明細書中に記載されるように配列を変異誘発し得る。例えば、1つ以上のコイルドコイルを形成する配列は、タンパク質データベースから選択され得る(例えば、GEN−BANK、SWISS−PROT)およびイソロイシン、ロイシンまたはバリンを、その配列のマルチマー化状態を変更するために、ヘプタッド反復配列のうちの1つ以上の
a位置またはd位置に導入され得る。マルチマー化状態は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して決定され得る(実施例6)。必要に応じて、このヘプタッド反復配列は、位置b、位置c、位置e、位置fおよび位置gでの1つ以上の点変異、付加または欠失で置換され得、この場合、付加変異は、形成されるマルチマーの状態を調節または安定化するように、すなわち形成されるマルチマーの型(例えば、トリマー 対 テトラマー)を変更するようにか、またはマルチマーを形成するモノマーの間の結合強度を調節するように、選択される。従って、1つ以上の位置b、位置c、位置e、位置fおよび位置gは、単独で改変され得るか、または1つ以上のa位置またはd位置での改変と組み合わせて改変され得る。
【0047】
このような変異の特定の例としては、(例えば、4つのヘリックスの束のうちのe位置とg位置との間での)さらなるヘリックス内水素結合またはヘリックス内塩橋を作製する改変が挙げられる。これらの変異はまた、このドメイン表面上の親水性結合網に対する変更の効果を考慮することにより選択され得る。親水性結合網の調査は、一般的に予想可能であるが、マルチマー状態は、本明細書中に記載されるマルチマー化アッセイを使用して確認され得る(実施例6)。
【0048】
マルチマー化状態が改変によって増大する場合、例えば、改変された配列がダイマーの代わりにトリマーもしくはテトラマー、またはより高い数のオリゴマーを形成する場合、位置b、位置c、位置e、位置fおよび位置gでの1つ以上の疎水性残基が、適切な疎水性境界(interface)の形成を促進するように置換されて(実施例12)、マルチマーの緊密さまたは安定性を増大することが、所望され得る。ヘリックス形成は、そのヘリックスの直前および直後の残基に少なくとも部分的に依存するので、マルチマーの安定性または緊密さを改善するために、1つ以上の残基がヘリックスのN末端もしくはC末端に追加され得るか、またはヘプタッド反復配列の組のN末端もしくはC末端に追加され得る。「緊密さ」または「安定性」を増大または改善することの句は、形成されるマルチマーがその構成物質のモノマーへと解離する可能性がより少ないことを意味する。マルチマーの緊密さまたは安定性一般的な概算は、沈降速度研究において作成されたピークの幅の狭さまたは広さによって評価され得る。緊密さまたは安定性はまた、例えば、形成されたマルチマーを、同時に円偏光二色性をモニタリングしながら解離することによって、アッセイされ得る。このような改変の特定の例は、末端セリンの追加である(実施例11)。
【0049】
従って、本発明は、1つ以上の7残基コイルドコイル、またはロイシンジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含む、マルチマー化ポリペプチドを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、1つの方法は、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよび位置dはロイシンまたはイソロイシンのいずれかで置き換えられ、これによってダイマー形成、トリマー形成、テトラマー形成またはペンタマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する。別の実施形態において、1つの方法は、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を作製する工程を包含し、ここで、位置aまたは位置dは、バリンおよび、ロイシンまたはイソロイシンまたはバリンのいずれかで置き換えられ、これによってダイマー形成およびテトラマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する。なお別の実施形態において、1つの方法は、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を合成する工程を包含し、ここで、位置aおよび位置dはロイシンまたはイソロイシンまたはバリンのいずれかであって、ダイマー形成、トリマー形成またはテトラマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する。さらに別の実施形態において、1つの方法は、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を合成する工程を包含し、ここで、位置aまたは位置dは、バリンおよび、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであって、ダイマー形成およびテトラマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する。さらなる実施形態において、複数の(a.b.c.d.e.f.g)の反復がある場合、位置aまたは位置dは、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかが優勢であるように(例えば、50%より多い)置き換えられる。さらなる実施形態において、1つ以上の位置b、位置c、位置e、位置fおよび位置gは、例えば1つ以上の疎水性残基が親水性残基で置換される。なおさらなる実施形態において、1つ以上のアミノ酸が、マルチマー化ドメインのN末端またはC末端に追加されるか、またはそのドメイン内のヘプタッド反復に隣接して追加される。
【0050】
本発明はまた、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する方法を提供し、ここで、位置aまたは位置dは、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかである。1つの実施形態において、1つの方法は、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)(ここで、位置aまたは位置dは、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかである)を含むポリペプチドを、ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成を可能にする条件下でインキュベートする工程、およびこのポリペプチドのホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの存在についてアッセイする工程を包含する。ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成は、このポリペプチドを、マルチマー化ポリペプチドとして識別する。種々の局面において、複数の(a.b.c.d.e.f.g)の反復がある場合、位置aまたは位置dは、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかが優勢である。別の局面において、ポリペプチドはコイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドと融合された異種性ポリペプチドを含む。別の局面において、ポリペプチドは、異種性ポリペプチドと、コイルドコイル配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドとの間に、リンカーを含む。なお別の局面において、検出されるホモマルチマーまたはヘテロマルチマーは、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマーまたはより高い数のオリゴマーである。
【0051】
用語「タンパク質」「ポリペプチド」および「ペプチド」は、アミド結合またはその等価物を介して共有結合で連結された、2つ以上の連続するアミノ酸(または「残基」ともいわれる)を言及するために本明細書中で交換可能に使用される。タンパク質は、無制限の長さであり、そしてL−アミノ酸またはD−アミノ酸、およびその混合物からなり得る。アミノ酸は、非天然化学結合および非アミド化学結合によって連結され、これら結合は、例えば、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、またはN,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて形成される結合を含む。非アミド結合としては、例えば、ケトメチレン、アミノメチレン、オレフィン、エステル、チオエステルなどが挙げられる(例えば、Spatola(1983)Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptidesand Proteins、7巻、267−357頁「Peptide and Backbone Modifications」、Marcel Decker、NYを参照のこと)。
【0052】
ポリペプチドは、分子のアミノ末端とカルボキシ末端との間の末端対末端のアミド結合、または分子間ジスルフィド結合もしくは分子内ジスルフィド結合のような、1つ以上の環構造を有し得る。ポリペプチドは、インビトロまたはインビボで改変され得、例えば、糖残基、リン酸基、ユビキチン、脂肪酸または脂質を含むように、例えば翻訳後修飾され得る。ポリペプチドはさらに、アミノ酸構造アナログおよびアミノ酸機能アナログ、例えば、合成または非天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログを含む、ペプチド模倣物を含む。
【0053】
用語「抗体」は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)を介して、他の分子(抗原)に結合するタンパク質をいう。抗体は、IgG、IgD、IgA、IgMおよびIgEを含む。これらの抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子(2つの全長重鎖が、2つの全長の軽鎖にジスルフィド結合によって連結されている)、および抗原のエピトープに結合する免疫グロブリン分子の(定常領域を有するかまたは有さない)部分配列(subsequence)(すなわち、フラグメント)、または抗原のエピトープに結合する免疫グロブリン分子の(定常領域を有するかまたは有さない)その部分配列(すなわち、フラグメント)であり得る。抗体は、全長の重鎖可変ドメインおよび全長の軽鎖可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)を、個々にまたは任意の組み合わせで含み得る。
【0054】
ポリペプチド配列は、細胞発現またはインビトロ翻訳を介した、ポリペプチドをコードする核酸の組換えDNA技術、または当該分野で公知の方法を使用した、ポリペプチド鎖の化学合成を使用して作製され得る。抗体および部分配列は、組換え産生された、抗体をコードする核酸(例えば、ハイブリドーマ細胞から単離されたポリヌクレオチドまたは天然に存在する抗体遺伝子もしくは合成抗体遺伝子のライブラリーから選択されたポリヌクレオチド)から発現され得る(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1989;HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1999;Fitzgeraldら、J.A.C.S.117:11075(1995);Gramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576(1992)を参照のこと)。ポリペプチド配列はまた、化学合成機によって作製され得る(例えば、Applied Biosystems、Foster City、CAを参照のこと)。
【0055】
用語「多機能性」とは、2つ以上の活性または機能(例えば、二機能性、三機能性、四機能性など)を有することが言及される組成を意味する。例えば、多機能性ポリペプチドは、2つ以上の抗原結合部位、酵素活性、リガンドまたはレセプター結合、毒性などを有する。同様に、多機能性オリゴマーは、各々が少なくとも1つの機能または活性(例えば、抗原結合および酵素活性、リガンド結合またはレセプター結合、毒性など)を有する2つ以上のポリペプチドの混合物を含む。
【0056】
特定の抗原に結合し、かつ酵素活性(例えば、ルシフェラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼなど)と結合されたポリペプチドを有する抗体は、二機能性抗体の1つの具体的な例である。抗原を結合する以外、そして酵素活性に加えた多機能性オリゴマーの候補機能としては、例えば、以下が挙げられる:検出可能なドメイン(例えば、免疫グロブリン、T7配列およびポリヒスチジンアミノ酸配列)、毒性(例えば、リシン、コレラ、百日咳)、細胞表面タンパク質(例えば、レセプター)、リガンド(基質、アゴニストおよびアンタゴニスト)、接着タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、アビジン、レクチン)、増殖因子、分化因子、走化性因子、および酵素前駆体(proenzyme)。
【0057】
多機能性マルチマーはさらに、多重特異的(multispecific)構成(例えば、二重特異的構成、三重特異的構成、四重特異的構成など)を含み得る。用語「多重特異的」とは、異なる抗原性エピトープに結合する抗原結合性ポリペプチド(例えば、抗体)を意味する。これら異なるエピトープは、同一の抗原上または異なる抗原上に存在し得る。例えば、多重特異的抗体オリゴマーは、各々が異なるエピトープの結合特異性を有する、2つ以上の抗体の混合物を含む。多重特異的オリゴマーは、個々の抗原結合性ポリペプチドから構成され得、その各々のポリペプチドが異なる可変領域を有する。例えば、抗原結合性ポリペプチドのうちの1つのオリゴマーは、2つの可変領域を有し得、その各々の可変領域が異なるエピトープを認識する。
【0058】
多機能性ポリペプチドは、選択された分子(これらは、合成手段によってかまたはそのポリペプチドをコードする核酸の発現によって作製されている)の化学的架橋を介して作製され得るか、あるいはポリペプチドのインビトロ発現または細胞内発現と、それに続くオリゴマー化を組み合せた組換えDNA技術を介して、作製され得る。多重特異的抗体は、同様に、組換え技術および発現(異なるエピトープ特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマの融合、または単一細胞中で異なるエピトープを有する抗体可変鎖をコードする複合的な核酸の発現)を介して作製され得る。
【0059】
二重特異的抗体の特定の例を、図6Aおよび6Bに例示する。CREB−IL多重化ポリペプチドを、2つの異なる抗体由来のFabを連結する分子の中央に配置して、4価結合性抗体を作製する。トリマー形成またはテトラマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを使用して、それぞれ6価分子または8価分子を作製する。二重特異的タンパク質中のFab部分は、異なる特異性を有し得る。可撓性リンカー(例えば、ヒンジ)の配列を使用して、各々のタンパク質のFab部分を併せ得る。この例示の二重特異的抗体ポリペプチドは、1つのトリシストロン性(trisistronic)RNA分子から作製され得る(図6B)。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「部分配列」または「フラグメント」とは、全長の分子の一部を意味する。例えば、多重化ポリペプチドの部分配列は、1以上のアミノ酸であり全長のポリペプチド未満の長さ(例えば、1つ以上の内部アミノ酸またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端のいずれかからの末端アミノ酸の欠失)である。従って、部分配列は、全長までの任意の長さの分子であり得る。
【0061】
抗体部分配列の特定の例としては、例えば、異種性ドメインがFabフラグメント、Fab'フラグメント、(Fab')2フラグメント、Fvフラグメントまたは単鎖抗体(SCA)フラグメント(例えば、scFv)を含む、キメラポリペプチドである。部分配列は、その全長配列の機能または活性の少なくとも一部を保持する部分を含む。例えば、抗体部分配列は、この抗体部分配列の結合親和性がその全長抗体の結合親和性よりも高くてもまたは低くても、抗原に選択的に結合する能力を保持する。
【0062】
抗体部分配列のために、抗体全体のペプシン消化またはパパイン消化を使用して、抗体フラグメントを調製し得る。特に、Fabフラグメントは抗体分子の1価の抗原結合性フラグメントからなり、そして酵素パパインを用いた抗体分子全体の消化によって作製されて、インタクトな軽鎖および重鎖の一部分からなるフラグメントを生じ得る。抗体の(Fab')2フラグメントは、酵素ペプシンを用いて抗体分子全体を処理することによって(その後の還元なしに)取得され得る。抗体分子のFab'フラグメントは、チオール還元剤を用いる還元によって、(Fab')2フラグメントから取得され得、これはインタクトな軽鎖および重鎖の一部分からなる分子を生じる。この様式で処理された1つの抗体あたり2つのFab'フラグメントが取得される。
【0063】
Fvフラグメントは、2つの鎖として発現される、軽鎖VLの可変領域および重鎖VHの可変領域を含む、1つのフラグメントである。この会合は、例えば、化学的架橋剤または分子内ジスルフィド結合のような、非共有結合であっても、共有結合であっても良い(Inbarら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2659(1972);Sandhu、Crit.Rex.Biotech.12:437(1992))。
【0064】
単鎖抗体(「SCA」)は、軽鎖VLの可変領域および重鎖VHの可変領域を含む、遺伝子的に操作された抗体、または酵素的に消化された抗体であり、可撓性リンカー(例えば、ポリペプチド配列)によってVL−リンカー−VH方向、またはVH−リンカー−VL方向のいずれかで連結される。あるいは、単鎖Fvフラグメントは、2つのシステイン残基の間のジスルフィド連結を介して2つの可変ドメインを連結することによって作製され得る。scFv抗体を作製するための方法は、例えば、Whitlowら、Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:97(1991);米国特許第4,946,778号;およびPackら、Bio/Technology 11:1271(1993)によって記載される。抗体部分配列を作製する他の方法(例えば、重鎖を分離して1価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成すること、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的技術、化学的技術もしくは遺伝子的技術)もまた、この部分配列が、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する条件で、使用され得る。
【0065】
本明細書中で使用される場合、用語「結合」または「結合する」とは、組成物が互いに対して親和性を有するように言及されたことを意味する。「特異的な結合」は、その結合が2つの分子間で選択的である場合である。特異的な結合の具体例は、抗体と抗原との間に生じる結合である。代表的に、特異的な結合は、その解離定数(KD)が約1×10-5M未満または約1×10-6M未満または約1×10-7Mである場合、非特異的な結合と区別され得る。特異的な結合は、例えばELISA、免疫沈降、共沈(化学的架橋を有するかまたは有さない)、ツーハイブリッドアッセイなどによって、検出され得る。適切なコントロールを使用して、「特異的」結合と「非特異的」結合との間を区別し得る。
【0066】
全長の抗体、部分配列抗体(例えば、単鎖形態抗体)または改変形態抗体、完全ヒト抗体、ヒト化(humanized)抗体または非ヒト抗体はモノマーの抗原結合活性の少なくとも一部を保持する、ヘテロマーもしくはホモマーの、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマーまたは任意のより高い数のオリゴマーとして、存在し得る。抗体マルチマーは、異なる抗体のオリゴマー性(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーなど)の組み合せを含み、これらは多重特異的(二重特異的、三重特異的、四重特異的など)または多機能性(例えば、二機能性、三機能性、四機能性など)である、
本発明はさらに、リンカーポリペプチド配列を提供する。本発明のリンカー配列を、異種性ポリペプチドに融合してキメラポリペプチドを形成し得る。1つの実施形態において、リンカーは、免疫グロブリン由来のヒンジ領域の一部分を含み得る。1つの局面において、リンカーは、ヒト免疫グロブリンまたはヒト化免疫グロブリンに由来するか、またはこれらを基に模られる(model)。特定の局面において、リンカー配列は、以下のいずれかに記載されるアミノ酸配列から選択される、免疫グロブリンのヒンジ領域の一部分を含む:配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)。さらに特定の局面において、リンカー配列は、約2〜20アミノ酸、約5〜10アミノ酸、約10〜30アミノ酸、約25〜50アミノ酸、約30〜60アミノ酸、約50〜75アミノ酸のアミノ酸配列を含む。さらに特定の局面において、リンカー配列は、2〜20アミノ酸、約5〜10アミノ酸、約10〜30アミノ酸、約25〜50アミノ酸、約30〜60アミノ酸、約50〜75アミノ酸、約75〜100アミノ酸のアミノ酸配列を含み、そしてこれらは以下のいずれかに記載されるアミノ酸配列を含む:配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「リンカー」または「スペーサー」は、2つ以上の分子を互いに連結する分子または分子の群をいう。互いに連結された2つの分子の間の可撓性のリンカーは、1つ以上の分子の十分な自由回転を可能にし、その結果、分子は、互いの機能をブロックしない。例えば、リンカー(例えば、マルチマー化ポリペプチドとキメラポリペプチド(例えば、ヒト化抗体)の異種ポリペプチドとの間に位置するアミノ酸配列)によって、抗体は、オリゴマー中のほかのマルチマーからの有意な立体的干渉なく抗原に結合し得る。
【0068】
従って、本発明はまた、マルチマー化ポリペプチドと異種ポリペプチドとの間にリンカーポリペプチドをさらに含む異種ポリペプチドに融合されたマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを提供する。異種配列に融合されたリンカー配列を含むキメラポリペプチドもまた提供される。
【0069】
本発明のポリペプチド(マルチマー化ポリペプチド、キメラポリペプチドオリゴマーおよびリンカー)は、1つ以上のアミノ酸置換を有する配列、付加を有する配列または欠失を有する配列(すなわち、部分配列)のような改変型を含み、但し、この改変は、機能を破壊しない。従って、用語「改変」は、改変された分子の活性または機能を破壊しない分子の変更を示す。従って、形成されたオリゴマーは、親和性の減少に起因して安定性がより低く、例えば、トリマーではなくダイマー、テトラマーではなくトリマーを形成する、などの場合でさえも、改変されたマルチマー化ポリペプチドは、例えば、少なくとも部分的にオリゴマーを形成する能力を保持する。改変された異種ポリペプチドは、ポリペプチドに関連する1つ以上の機能または活性(例えば、タンパク質結合活性、酵素活性、リガンド活性、核酸結合活性、増殖制御活性、細胞分化活性、または走化性活性)の少なくとも一部を保持する。例えば、改変された抗体配列(例えば、1つ以上のアミノ酸付加または挿入を有する抗体部分配列または抗体)を含むキメラポリペプチドは、抗原結合能力を少なくとも一部保持する。
【0070】
従って、改変は、例えば、アミノ酸の付加、挿入、欠失および置換を含む。付加の例は、1つ以上のアミノ酸が、マルチマー化ポリペプチドのN末端またはC末端に付加される場合である。挿入の例としては、アミノ酸が配列に挿入される場合である。欠失の例は、1つ以上のアミノ酸が、N末端またはC末端、あるいは配列内の内側から除去される場合である。
【0071】
改変は、改変された分子の活性または機能を改善し得るかまたは異なる機能を提供し得る。例えば、マルチマー化ポリペプチドの親和性は、ヘプタッド反復配列の全て、または一部(例えば、ハーフターン)の付加によって増加され得る。ヘプタッド反復配列またはヘプタッド反復配列の一部の付加はまた、オリゴマーをダイマー形成からトリマー形成またはテトラマー形成に変化し得る。
【0072】
例示的なマルチマー化ポリペプチドは、例えば、配列番号1〜7;配列番号9〜37;および配列番号154〜163に示され、各々は、ヘプタッド反復配列の4個半を含む(表3Aを参照のこと)。従って、これらおよび他のヘプタッド含有配列が、改変され得る。例えば、全長ヘプタッド反復配列(7アミノ酸)または半分のヘプタッド反復配列(モチーフの3〜4アミノ酸)が、追加され得る。
【0073】
あるいは、マルチマー化ポリペプチドを短くすることが所望され得、この場合、1つ以上のアミノ酸残基が、マルチマー化機能を破壊することなくマルチマー化ポリペプチドから除去され得る。従って、本発明のマルチマー化ポリペプチドは、配列番号1〜7;配列番号9〜37;および配列番号154〜163に示される例示的マルチマー化ポリペプチドを含み、例えば、半分のヘプタッド反復(3〜4アミノ酸)または全長ヘプタッド反復(7アミノ酸)を除去するように改変され得る。
【0074】
例示的アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換を含む。用語「保存的置換」は、生物学的または化学的に類似する残基による1つのアミノ酸の置換を意味する。生物学的に類似とは、置換が、生物学的活性(例えば、マルチマー化ポリペプチド、オリゴマー形成)に影響を及ぼさないことを意味する。保存的置換の特定の例としては、別の残基を1つの疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン)で置換すること、別の残基を1つの極性残基で置換すること(例えば、リジンをアルギニンで置換すること、アスパラギン酸をグルタミン酸で置換すること、またはアスパラギンをグルタミンで置換すること、トレオニンをセリンで置換することなど)が挙げられる。
【0075】
1つの実施形態において、マルチマー化ポリペプチドは、1〜3、3〜5または5〜10のアミノ酸置換を有し、但し、コイルドコイルヘプタッド反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置a(1)またはd(4)は、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、そして置換ポリペプチドは、マルチマー化し得る。1つの局面において、複数のヘプタッド反復配列が存在する場合、位置aおよびdは、優先的にロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかである。別の局面において、マルチマー化ポリペプチドは、例えば、位置b,c,e,f,またはgで、1〜3、3〜5または5〜10のアミノ酸置換を有し、形成するマルチマーの型を調節するかまたは、形成されたマルチマーの安定性または剛性を維持する。なお別の局面において、1つ以上のアミノ酸置換は、保存性アミノ酸置換である。なお別の局面において、置換は、ヒトアミノ酸を有する。
【0076】
改変はまた、誘導体化された配列(例えば、遊離アミノ基が、アミン塩酸塩、アミンp−トルエンスルホニル基、アミンカルボベンゾキシ基を形成し;遊離カルボキシル基が、塩、メチルエステルおよびエチルエステルを形成し;遊離ヒドロキシル基が、O−アシル誘導体またはO−アルキル誘導体を形成するアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば、プロリンに対する4−ヒドロキシプロリン、リジンに対する5−ヒドロキシリジン、セリンに対するホモセリン、リジンに対するオルニチン、など)を含む。共有結合(例えば、それによって環状ポリペプチドを生成する、2つのシステイン残基の間のジスルフィド結合)を付与する改変もまた含まれる。改変は、当該分野で周知の種々の方法のいずれかを使用して生成され得る(例えば、PCRベースの部位特異的変異誘発、欠失変異誘発および挿入突然変異誘発、化学的改変および突然変異誘発、化学的架橋など)。
【0077】
改変はまた、タグ(例えば、ポリヒスチジン、T7、免疫グロブリンなど)、金粒子(マルチマー化ペプチド、キメラポリペプチドまたはオリゴマーに共有結合または非共有結合される)のような機能性実体の追加を含む。従って、本発明は、改変されないポリペプチドの1つ以上の活性(例えば、マルチマー活性、抗原結合活性などの少なくとも一部を保持する)を有する改変されたポリペプチドを提供する。改変は、分子に結合されるかまたは分子に組込まれた、放射性および非放射性の検出可能な標識を含む。
【0078】
用語「同一」または「同一性」は、2つ以上の参照された実体が同じであることを意味する。従って、2つのポリペプチドが同一である場合、これらは、同じアミノ酸配列を有する。「同一の領域」は、2つ以上の参照された実体の一部が同一であることを意味する。従って、2つのポリペプチド配列は、これらの配列の1つ以上の部分にわたって同一である場合、これらは、これらの領域において同一性を共有する。用語「実質的に同一」は、同一性が構造的または機能的に有意であることを意味する。すなわち、同一性は、たとえ分子が異なっていても分子が構造的に同一であるかまたは同じ機能(例えば、生物学的機能)を行うようなものである。構造的および機能的に関連するタンパク質の間の配列保存の量の変化に起因して、実質的な同一性を有する分子に対する配列同一性の量は、領域/ドメインの型およびその機能に依存する。核酸配列に対して、50%以上の配列相同性は、実質的な同一性を構成し得る。タンパク質についての実質的相同性は、有意により低くあってもよく、例えば、30%配列相同性程度に小さくてもよいが、代表的には例えば、50%、60%、75%、85%以上である。
【0079】
2つの配列間の同一性の程度は、当該分野で公知の種々のコンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズムを使用して確認され得る。%配列同一性(相同性)を計算するこのようなアルゴリズムは、一般的に、比較領域にわたる配列ギャップおよびミスマッチを説明する。例えば、BLAST(例えば、BLAST2.0)検索アルゴリズム(例えば、Altschulら、J.Mol.Biol.215:403(1990)を参照のこと、http:/www.ncbi.nlm.nih.govのNCBIを介して公的に入手可能)は、以下のような例示的検索パラメーターを有する:Mismatch −2;ギャップ開放5;ギャップ伸長2。ポリペプチド配列比較について、BLASTPアルゴリズムは、代表的にスコア付けマトリクス(例えば、PAM100、PAM250、BLOSUM62など)と共に使用される。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、本発明の組成物(例えば、マルチマー化ポリペプチド、キメラ、リンカー、抗体、部分配列、改変形態、これらをコードする核酸、細胞、ベクターなど)の改変因子として使用される場合、この組成物が、人の手によって作製され、天然に存在するインビボ環境から分離されることを意味する。一般的に、そのように分離された組成物は、例えば1つ以上のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜と、本来通常に関連する、実質的に1つ以上の物質を含まない。「単離された」ポリペプチドはまた、本来通常に関連する物質のほとんどまたは全てを含まない場合、「実質的に純粋」であり得る。従って、実質的に純粋でもある単離されたポリペプチドは、何百万もの他の配列(例えば、抗体ライブラリーの抗体またはゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリー中の核酸)の中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含まない。純度は、少なくとも約60重量%以上であり得る。純度はまた、約70%または80%以上であり得、そしてより大きく、例えば、90%以上であり得る。純度は、任意の適切な方法(例えば、UV分光法、質量分光法、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、気相)、ゲル電気泳動(例えば、銀染色またはクマシー染色)および配列分析(核酸およびペプチド))によって決定され得る。
【0081】
本発明はまた、本発明のポリペプチド(マルチマー化ポリペプチド、キメラ、リンカー、部分配列、改変形態およびこれらのマルチマーを含む)をコードする核酸を提供する。種々の実施形態において、核酸は、配列番号1〜7;配列番号9〜37;または配列番号154〜163に示されるポリペプチドをコードする。さらなる実施形態において、核酸は、(配列番号1〜36;および配列番号154〜163)のいずれかに示される配列を含むキメラポリペプチド、異種度面に融合されたキメラポリペプチドをコードする。別の実施形態において、核酸配列は、(配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63))をコードする。
【0082】
本明細書で使用される場合、「核酸」は、リン酸ジエステル結合または等価物によって結合される、少なくとも2つ以上のリボ核酸塩基対またはデオキシリボ核酸塩基対をいう。核酸は、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオシドを含む。核酸は、一本鎖、二本鎖または三本鎖の環状または線型分子を含む。核酸分子は、ヌクレオチド含有分子のいずれかの群に、排他的に属しても、またはこれらの混合物中に属してもよく、これらは、核酸分子の以下の群によって例示されるが、これらに限定されない:RNA、DNA、cDNA、ゲノム核酸、非ゲノム核酸、天然に存在する核酸および天然に存在しない核酸ならびに合成核酸。これは、例として、任意の細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)に関連する核酸、リボソームRNA、および天然に存在する成分と共に天然に存在しない1つ以上の成分から化学的に構成される核酸分子が挙げられる。
【0083】
さらに、「核酸分子」は、アミノ酸および糖によって例示されるがこれらに限定されない、1つ以上の非ヌクレオチドベースの成分を、一部含み得る。従って、例として、一部ヌクレオチドベースであり、一部タンパク質ベースであるリボザイムは、「核酸分子」と考えられるが、これらに限定されない。
【0084】
核酸は、任意の長さであり得る。核酸の長さは、代表的に、約20〜10Kb長、10〜5Kb長、1〜5Kb以下長、1000〜約500塩基対長以下の範囲にある。核酸はまた、より短くあり得、例えば、100〜約500塩基対長、または約12〜25塩基対長、25〜50塩基対長、50〜100塩基対長、100〜250塩基対長、または約250〜500塩基対長であり得る。
【0085】
遺伝コードの縮重の結果として、核酸は、(配列番号1〜7、配列番号9〜37、配列番号154〜163、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63))をコードする核酸に関する配列および部分配列縮重を含む。核酸はまた、表1、2および4に示される配列、これらに相補的である配列およびこれらの部分配列を含む。このような核酸は、サンプル(インビトロ、細胞、培養培地、組織または器官、血清、被験体において、など)中のキメラポリペプチドの存在または量を検出するためのハイブリダイゼーションに有用である。
【0086】
本発明の核酸は、種々の標準的クローニング技術および化学的合成技術を使用して産生される。このような技術としては、1)ゲノムDNA標的またはcDNA標的を用い、抗体配列にアニーリング可能なプライマー(例えば、縮重プライマー混合物)を使用する核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);2)その核酸配列が、次いで、プラスミドにクローニングされ得、増殖され増幅され得、そして精製され得る核酸配列の化学合成および;3)関連配列に対するデータベースのコンピューター検索、が挙げられるがこれらに限定されない。核酸の純度は、配列決定、ゲル電気泳動などによって決定され得る。
【0087】
本発明は、さらに、発現制御エレメントに作動可能に連結される、キメラポリペプチドをコードする核酸を含む発現カセットを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結される」は、意図された様式で作動することを可能にするようにいわれるエレメント間の物理的関係または機能的関係をいう。従って、核酸に「作動可能に連結される」発現制御エレメントは、制御エレメントが転写を、そして適切な場合、転写物の翻訳を、調節することを意味する。
【0088】
発現を制御するために、核酸に物理的に連結される必要はない。従って、物理的結合は、作動可能に連結されるエレメントに必要とされない。例えば、最小エレメントは、キメラのポリペプチドをコードする核酸に連結され得る。最小エレメントに「イントランス」で結合するように機能する、タンパク質をコードする、作動可能に連結された核酸の発現を制御する第2のエレメントは、キメラのポリペプチドの発現に影響し得る。第2のエレメントが、キメラのポリペプチドの発現を調節するので、この第2のエレメントは、キメラのポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結される。
【0089】
用語「発現制御エレメント」は、作動可能に連結された核酸の発現に影響する核酸をいう。プロモーターおよびエンハンサーは、発現制御エレメントの特に非限定的な例である。「プロモーター配列」は、コード配列の下流(3'方向)の転写を開始し得るDNA調節領域である。プロモーター配列は、転写を開始するのに必要な最少数の塩基を含む。エンハンサーは、遺伝子発現を制御するが、作動可能に連結された遺伝子の転写開始部位から離れて機能し得る。エンハンサーはまた、遺伝子の5'末端または3'末端のいずれかで、そして遺伝子の内(例えば、イントロンまたはコード配列)で機能する。
【0090】
発現制御エレメントは、「構成性」である様式で発現を付与し、その結果、作動可能に連結された核酸の転写は、シグナルまたは刺激の存在なしに生じる。発現制御エレメントは、「制御可能」である様式(つまりシグナルまたは刺激が、作動可能に連結された核酸の発現を上昇するかまたは減少する)で発現を付与し得る。シグナルまたは刺激に応じて、作動可能に連結された核酸の発現を増加する制御可能なエレメントはまた、「誘導性エレメント」といわれる。シグナルまたは刺激に応じて、作動可能に連結された核酸の発現を減少する制御可能なエレメントはまた、「抑制性エレメント」といわれる(すなわち、シグナルが、発現を減少し、その結果、シグナルが除去されるか存在しない場合、発現が増加する)。
【0091】
発現制御エレメントは、特定の組織型または細胞型において活性なエレメントを含み、本明細書中では、「組織特異的発現制御エレメント」といわれる。組織特異的発現制御エレメントは、代表的に、特定の細胞または組織において活性である。なぜなら、これらは、特定の細胞型または組織型に特有である、転写活性化因子タンパク質または他の転写制御因子によって認識されるからである。
【0092】
発現制御エレメントは、さらに、細胞周期または細胞分化の特定の段階で発現を付与するエレメントを含む。従って、本発明は、さらに、構成的、制御可能、組織特異的、細胞周期特異的、そして分化段階特異的発現を付与する、発現制御エレメントを含む。
【0093】
発現制御エレメントは、全長核酸配列(例えば、ネイティブなプロモーターおよびエンハンサーエレメント)およびその部分配列またはヌクレオチド改変体(例えば、ネイティブ配列と異なる置換形態/変異形態または他の形態)を含み、この発現エレメントは、全長配列の全てもしくは一部を保持するか、または非改変体制御エレメントの機能(調節を付与する、例えば、シグナルまたは刺激に応じていくらかの誘導性を保持する)を保持する。
【0094】
細菌系について、構成性プロモーター(例えば、T7など)および誘導性プロモーター(例えば、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター))が、使用され得る。昆虫細胞系において、構成性または誘導性プロモーター(例えば、エクジソン)が、使用され得る。酵母において、構成性または誘導性プロモーターが、使用され得る(例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,第2巻,第13章,Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience編(1988);Grantら、Methods in Enzymology,153,516−544(1987),Wu & Grossman編,31987,Acad.Press,N.Y.;Glover,DNA Cloning,第II巻,第3章,IRL Press,Wash.,D.C.(1986);Bitter:Methods in Enzymology,152,673−684(1987),Berger & Kimmel編,Acad.Press,N.Y.;ならびにStrathernら、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces Cold Spring Harbor Press,第I巻および第II巻(1982)を参照のこと)。構成性酵母プロモーター(ADHまたはLUE2)または誘導性プロモーター(例えば、GAL)が、使用され得る(R.Rothstein:DNA Cloning,A Practical Approach,第ll巻,第3章,D.M.Glover編,IRL Press,Wash.,D.C.(1986))。
【0095】
哺乳動物細胞について、ウイルスまたは他の起源の構成性プロモーターが、使用され得る。例えば、SV40、またはウイルス長い末端反復(LTR)など、あるいは哺乳動物細胞のゲノムに由来する誘導性プロモーター(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター;熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答エレメント)あるいは哺乳動物のウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;誘導性マウス乳腺癌ウイルスLTR)が、発現のために使用され得る。
【0096】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸が、インビトロ、エキソビボまたはインビボでの組換えDNA技術によって導入された、形質転換細胞およびその子孫を提供する。形質転換細胞およびその子孫は、増殖され、導入された核酸は、転写されるか、またはコードされるタンパク質が、発現される。子孫細胞が、親細胞と同一ではなくてもよいことが理解される。なぜなら、複製の間に生じる変異が存在し得るからである。形質転換細胞としては、原核生物細胞および真核生物細胞(例えば、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞(例えば、ヒトを含む哺乳動物細胞))が挙げられるが、これらに限定されない。細胞は、培地、細胞、組織または器官に、エキソビボで存在してもよいし、あるいは被験体に存在してもよい。
【0097】
用語「形質転換された」は、細胞に対して外来性である核酸(例えば、導入遺伝子)の組み込みの後での、細胞中の遺伝子的変化を意味する。従って、「形質転換細胞」は、核酸分子が、組換えDNA技術によって導入された細胞または子孫である。細胞形質転換は、本明細書中に記載されるように実施されても、当該分野で公知の技術を使用して実施されてもよい。従って、核酸を含む細胞および本発明のキメラのポリペプチドを発現する細胞を産生する方法もまた、提供される。
【0098】
代表的な細胞形質転換は、ベクターを使用する。用語「ベクター」は、例えば、プラスミド、ウイルス(例えば、ウイルスベクター)、または当該分野で公知の他のビヒクルをいい、これらは、遺伝子操作のための、核酸の挿入または組込みによって操作され得る(「クローニングベクター」)か、あるいは挿入された核酸を転写または翻訳するために使用され得る(「発現ベクター」)。このようなベクターは、核酸(発現制御エレメントに作動可能に連結されたキメラのポリペプチドをコードし、そのコードされたタンパク質をインビトロ(例えば、溶液中または固相中)、細胞中またはインビボで発現する核酸を含む)を導入するために有用である。
【0099】
ベクターは、一般的に、細胞での増殖のための複製起点を少なくとも含む。ベクター内に存在する制御エレメント(本明細書中に示されるような発現制御エレメントを含む)が、転写および翻訳を容易にするために含まれる。用語「発現制御エレメント」は、存在が発現に影響し得る1つ以上の成分を最低限含むことを意図され、そしてプロモーターまたはエンハンサー以外にまたはそれに加えて、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列、多重遺伝子の作製のための内部リボソーム結合部位(IRES)エレメント、ポリシストロン性、メッセージ、イントロンに対するスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にする、遺伝子の正しいリーティングフレームの維持、目的の遺伝子の転写物の適切なポリアデニル化を提供するためのポリアデニル化シグナル、ストップコドンなどの成分を含み得る。
【0100】
ベクターは、選択マーカーを含み得る。当該分野で公知であるように、「選択マーカー」は、遺伝子を含む細胞の選択を可能にする遺伝子を意味する。「ポジティブな選択」は、それによって、ポジティブな選択への曝露の際に、選択マーカーを含む細胞のみが、生存するプロセスをいう。薬物耐性は、ポジティブな選択マーカーの1つの例であり;このマーカーを含む細胞は、選択薬物を含む培養培地中で生存し、一方このマーカーを含まない細胞は、死滅する。このようなマーカーとしては、特に、薬物耐性遺伝子(例えば、neo(これは、G418に対する耐性を付与する)、hygr(ハイグロマイシンに対する耐性を付与する)、またはpuro(ピューロマイシンに対する耐性を付与する)が挙げられる。他のポジティグな選択マーカー遺伝子は、マーカーを含む細胞の同定またはスクリーニングを可能にする遺伝子を含む。これらの遺伝子としては、特に、蛍光タンパク質(GFP)に対する遺伝子、lacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、および表面マーカー(例えば、CD8)が挙げられる。
【0101】
ベクターは、ネガティブな選択マーカーを含み得る。「ネガティブな選択」は、それによって、適切なネガティブな選択薬剤への曝露の際に、ネガティブな選択マーカーを含む細胞が、死滅するプロセスをいう。例えば、単純疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子(Wiglerら、Cell 11:223(1977))を含む細胞は、薬物ガンシクロビル(GANC)に対して感受性である。同様に、gpt遺伝子は、細胞を6−チオキサンチンに対して感受性にする。
【0102】
さらなる選択系が、使用され得、これらとしては、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalskaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026(1962))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817(1980))遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる選択可能な遺伝子(すなわち、trpB(これは、細胞が、トリプトファンの代わりにインドールを使用することを可能にする);hisD(これは、細胞が、ヒスチジンの代わりにヒスチノールを使用することを可能にする)(Hartmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8047(1988));およびODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(オルニチンデカルボキシラーゼインヒビター(2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン(DFMO))に対する耐性を付与する))(McConlogue(1987):Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory,編)が、記載されている。
【0103】
細胞中での核酸の導入および発現のために改変されたウイルスベクターに基づくベクターとしては、レトロウイルスゲノム、アデノ随伴ウイルスゲノム、アデノウイルスゲノム、レオウイルスゲノム、レンチウイルスゲノム、ロータウイルスゲノム、シミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスなどのようなベクターが挙げられる(Coneら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6349(1984);Eukaryotic Viral Vectors,Cold Spring Harbor Laboratory,Gluzman編,1982;Sarverら、Mol.Cell.Biol.1:486(1981))。発現に有用なさらなるウイルスベクターとしては、パルボウイルス、ロータウイルス、Norwalkウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルスおよびラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス)ならびに水疱性口内炎ウイルスが挙げられる。
【0104】
哺乳動物発現系は、さらに、インビボ発現およびエキソビボ発現のために特に設計されたベクターを含む。このような系としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(米国特許第5,604,090号)(これは、ヒトおよびマウスにおいて、治療の利益に十分なレベルで、第IX因子の発現を提供することが示された)(Kayら、Nat.Genet.24:257(2000);Nakaiら、Blood 91:4600(1998))。アデノウイルスベクター(米国特許第5,700,470号、同第5,731,172号および同第5,928,944号)、単純疱疹ウイルス(米国特許第5,501,979号)およびレトロウイルス(例えば、レンチウイルスベクターは、分裂性および非分裂性の細胞および泡沫状ウイルスに感染するために有用である)ベクター(米国特許第5,624,820号、同第5,693,508号、同第5,665,577号、同第6,013,516号および同第5,674,703号ならびにWIPO公報WO92/05266およびWO92/14829)およびパピローマウイルスベクター(例えば、ヒトおよびウシパピローマウイルス)は全て、遺伝子治療において使用されてきた(米国特許第5,719,054号)。ベクターはまた、サイトメガロウイルス(CMV)ベースのベクター(米国特許第5,561,063号)を含む。胃腸管の細胞に対して遺伝子を効率的に送達するベクターが、開発されており、これらもまた、使用され得る(例えば、米国特許第5,821,235号、同第5,786,340号および同第6,110,456号を参照のこと)。
【0105】
酵母では、染色体への外来核酸配列の組込みを促進するべクター(例えば、相同組換えを介して)は、当該分野で公知であり、そして使用され得る。挿入される核酸が、より従来式のベクターに対して長すぎる(例えば、約12kbより長い)場合、酵母人工染色体(YAC)が代表的に使用される。
【0106】
ヒト化抗体をコードする核酸およびヒト化抗体の標的細胞中への導入はまた、当該分野で公知の従来法(例えば、浸透圧ショック(例えば、リン酸カルシウム)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合など)によって実施され得る。インビトロ、エキソビソおよびインビボでの核酸およびポリペプチドの導入はまた、他の技術を用いて達成され得る。例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン−ビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、あるいはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、またはエチレンビニルアセテートコポリマーのようなポリマー物質。核酸は、コアセルベーション技術によってか、または界面重合によって(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル、またはポリ(メチルメタクロレート(methacrolate))マイクロカプセルの使用によって)調製されるマイクロカプセル中にか、あるいはコロイド薬物送達系中に取り込まれ得る。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフィア、ビーズ、および脂質ベースの系(水中油乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソーム)が挙げられる。
【0107】
種々の組成物(核酸を含む)の細胞中への導入のためのリポソームの使用は、当業者に公知である(例えば、米国特許第4,844,904号、同第5,000,959号、同第4,863,740号、および同第4,975,282号を参照のこと)。WO 94/20078および米国特許第6,096,291号に記載される天然ポリマーあるいは天然ポリマーの誘導体または加水分解物を含むキャリアは、分子(例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド)の粘膜送達に適切である。遺伝子治療に有用なピペラジンベースの両親媒性(amphilic)カチオン性脂質もまた、公知である(例えば、米国特許第5,861,397号を参照のこと)。カチオン性脂質系もまた、公知である(例えば、米国特許第5,459,127号を参照のこと)。従って、インビトロ、インビボおよびエキソビソでの、細胞または組織への送達のウイルスベクター手段および非ウイルスベクター手段が包含される。
【0108】
本発明はさらに、適切な包装材料中に梱包された本発明の1つ以上の組成物(薬学的処方物を含む)を含むキットを提供する。1つの実施形態において、キットは、キメラポリペプチドあるいはそのヘテロオリゴマーまたはホモオリゴマーを含む。別の実施形態において、キットは、キメラポリペプチドをコードする核酸を含む。さらなる実施形態において、この核酸は、細胞内での発現をもたらす発現制御エレメントをさらに含む;発現ベクター;ウイルス発現ベクター;アデノ随伴ウイルス発現ベクター;アデノウイルス発現ベクター;およびレトルウイルス発現ベクター。
【0109】
さらなる実施形態において、キットは、インビトロ、インビボ、またはエキソビボで、細胞内でキメラポリペプチド(例えば、ヒト化抗体)またはキメラポリペプチドをコードする核酸を発現させるための指示書を含む標識または包装挿入物を備える。なおさらなる実施形態において、キットは、被験体(例えば、喘息を有するか、または喘息を有する危険性のある被験体)をキメラポリペプチド(例えば、ヒト化抗体)またはキメラポリペプチドをコードする核酸を用いてインビボまたはエキソビボで処置するための指示書を含む標識または装挿入物を備える。
【0110】
本明細書中で使用される場合、用語「包装材料」は、キットの成分を収容する物理的構造物をいう。包装材料は、これらの成分を無菌的に維持し、そしてこのような目的のために一般的に使用される材料(例えば、紙、段ボール繊維、ガラス、プラスチック、箔、アンプルなど)で製造され得る。標識または装挿入物は、適切な指示書(例えば、本発明の方法(例えば、HRV感染またはRSV感染あるいは風邪を処置する工程)を実施する工程)を含み得る。従って、本発明のキットは、本発明の方法においてキットの成分を使用するための指示書をさらに含み得る。
【0111】
指示書は、本明細書中に記載される本発明の任意の方法を実施するための指示書を含み得る。従って、本発明の薬学的組成物は、被験体への投与のための指示書とともに容器、パック、またはディスペンサー中に含まれ得る。指示書はさらに、満足できる臨床終末点または起こり得る任意の有害な症状、あるいはヒト被験体における使用について食品医薬品局により求められるさらなる情報の指示を含み得る。
【0112】
この指示書は、「印刷物」上(例えば、キット内の紙もしくは厚紙上、キットもしくは包装材料に貼られた標識上、またはキットの成分を含むバイアルもしくはチューブに貼られた標識上)に存在し得る。指示書は、音声録音またはビデオテープを含み得、そしてさらにコンピュータ読み取り可能媒体(例えば、ディスク(フロッピー(登録商標)ディスクまたはハードディスク)、光学的CD(例えば、CD−ROM/RAMまたはDVD−ROM/RAM)、磁気テープ、電気的記録媒体(例えば、ROMおよびRAM)ならびにこれらのハイブリッド(例えば、磁気/光学記録媒体)上に含まれ得る。
【0113】
本発明のキットはさらに、緩衝剤、保存剤、またはタンパク質/核酸安定化剤を含み得る。このキットはまた、活性についてアッセイするためのコントロール成分(例えば、コントロールサンプルまたは標準)を含み得る。このキットの各成分は、別個の容器内にか、または混合物で封入され得、そして種々の容器は全て、単一の包装または複数の包装中に存在し得る。例えば、本発明の組成物は、被験体の喉、鼻腔または副鼻腔へこの組成物をスプレーするためにハードポンプ容器または加圧(例えば、エアロゾル)容器中に梱包され得る。
【0114】
本発明の分子(マルチマー化ポリペプチド、キメラ、マルチマー形態、改変形態、およびポリペプチドをコードする核酸を含む)は、薬学的組成物中に組み込まれ得る。このような薬学的組成物は、インビボまたはエキソビボでの被験体への投与のため、および本発明のポリペプチドを用いて処置可能な生理学的障害または状態に対する治療を提供するために有用である。
【0115】
薬学的組成物は、「薬学的に受容可能」かつ「生理学的に受容可能」なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能」および「生理学的に受容可能」は、薬学的投与に適合性の、溶媒(水性または非水性)、溶液、乳濁液、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収促進剤または吸収遅延剤を含む。このような処方物は、液体;乳濁液、懸濁液、シロップまたはエリキシル、あるいは固体形態;錠剤(コーティングされるかまたはコーティングされない)、カプセル(硬質または軟質)、粉末、顆粒、結晶、またはマイクロビーズ中に含まれ得る。補助的な活性化合物(例えば、保存剤、抗菌剤、抗ウイルス剤および抗真菌剤)もまた、組成物中に組み込まれ得る。
【0116】
薬学的組成物は、特定の局所的または全身的な投与経路に適合性であるように処方され得る。従って、薬学的組成物は、特定の経路による投与に適切なキャリア、希釈剤または賦形剤を含む。
【0117】
本発明の組成物のための投与経路の特定の非限定的例は、吸入または鼻腔内送達である。さらなる経路としては、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与および直腸投与)が挙げられる。
【0118】
非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下を含み得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用の水、生理食塩水溶液、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェート)および張度の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)で調整され得る。
【0119】
注射用の薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤、および滅菌注射可能溶液または分散剤の即席調製のための滅菌散剤を含む。静脈内投与について、滅菌キャリアとしては、生理学的食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。このキャリアは、溶媒または分散媒体であり得、例えば、以下が挙げられる:水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適切な混合物。例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、そして界面活性剤の使用によって、流動性が維持され得る。抗菌剤および抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸およびチメロサールが挙げられる。等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)が、この組成物中に含まれ得る。吸収を遅延する薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含むことは、注射可能組成物の吸収を延長し得る。
【0120】
滅菌注射可能溶液は、適切な溶媒中の必要量の活性化合物を上記成分の1つまたは組み合わせて取り込み、次いで濾過滅菌することによって、調製され得る。一般に、分散剤は、ベースの分散媒体および上記のような他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製方法としては、例えば、以前に滅菌濾過されたその溶液から、活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。
【0121】
経粘膜投与または経皮投与について、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が、処方物中に使用される。このような浸透剤は、当該分野で一般に公知であり、経粘膜投与について、例えば、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレー、吸入デバイス(例えば、吸入器)または坐剤の使用を介して達成され得る。経皮投与について、活性化合物は、当該分野で一般に公知の軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリーム中に処方される。
【0122】
本発明のポリペプチドおよびこれらをコードする核酸は、身体からの迅速な排出に対して防御するキャリア(例えば、制御放出処方物または時間遅延物質(例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルステアレート))を用いて調製され得る。これらの組成物はまた、局所的または全身的な持続送達または制御放出を達成するために、移植物およびマイクロカプセル化送達システムを使用して、送達され得る。
【0123】
生物分解性の生体適合性ポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。これらの物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入され得る。リポソーム懸濁物(抗体またはウイルス被覆タンパク質を使用して細胞または組織に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、当業者に公知の方法(例えば、米国特許第4,522,811号に記載される)に従って調製され得る。
【0124】
本発明の方法における投与のための組成物に適切なさらなる薬学的処方物が、当該分野で公知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(1990)第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA;The Merck Index(1996)第12版,Merck Publishing Group,Whitehouse,NJ;およびPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.,(1993)を参照のこと)。
【0125】
薬学的処方物は、投与の容易さおよび投薬の均一性のために、投薬単位形態にパッケージされ得る。「投薬単位形態」は、本明細書中で使用する場合、処置されるべき被験体についての単一投薬として適切な物理的に別個の単位をいい;各々の単位が、薬学的なキャリアまたは賦形剤と合わせて、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。
【0126】
本発明のマルチマー抗体は、細胞のウイルス感染に対して防御する抗体を含む。例えば、マルチマー化ポリペプチドと融合された、ICAM−1を結合する抗体は、HRV感染から細胞を防御し得るマルチマーを形成する(図6および図7)。特に、CFY196(Fab−ATFα(1)LI+S),CFY197(Fab−ATFα(3)IL)およびCFY193B(Fab−ATFα(2)LL)は、HRV感染に対して、最も高い防御効力を示した。
【0127】
RSウイルス(RSV)はまた、ICAM−1を細胞感染のためのコレセプターとして利用するので、ICAM−1を結合し、そしてマルチマー化ポリペプチドと融合されてマルチマーを形成した抗体またはリガンドはまた、RSV感染から細胞を防御し得る。従って、別の実施形態において、本発明は、細胞のRSV感染に対して防御する抗体マルチマーおよびリガンドマルチマーを提供する。
【0128】
本明細書中で使用される場合、用語「防御効力」は、実験条件(例えば、実施例6を参照のこと)下で、感受性細胞の50%を感染から防御し得る抗体の量(すなわち、EC50)である。例えば、RSVについて、EC50での防御効力は、RSV感染から、50%の細胞を防御する抗体の量である。従って、別の抗体(例えば、非ヒト化抗体)よりも5倍高い防御効力を有する抗体は、感染からの同じ程度の防御をなお提供しつつ、他の抗体の5分の1の量で使用され得る。
【0129】
マルチマー抗体は、代表的には、モノマー対照物より強い防御効力を示す。1つの実施形態において、抗体マルチマーは、抗体モノマーより少なくとも2〜5倍強い防御効力を有する。別の実施形態において、抗体マルチマーは、抗体モノマーより少なくとも5〜10倍強い防御効力を有する。なお別の実施形態において、抗体マルチマーは、抗体モノマーより少なくとも10〜20倍強い防御効力を有する。さらに別の実施形態において、抗体は、抗体モノマーより少なくとも20〜30倍(例えば、30〜50倍、50〜100倍、または100〜1000倍あるいはそれ以上)強い防御効力を有する。
【0130】
本発明のキメラポリペプチドは、ICAM−1に結合する抗体に融合されたマルチマー化ポリペプチドを含む。理論に束縛されることを望まないが、ICAM−1に結合する抗体は、ウイルスの結合または細胞に感染する能力もしくは細胞に侵入する能力を阻害し、それによって、ウイルスの感染もしくは増殖を阻害すると考えられる。従って、このような抗体は、ICAM−1に結合する病原体(例えば、RSウイルスおよび他のウイルス(例えば、HRVおよびコクサッキー(coxackie)Aウイルス)、細菌、真菌および原生動物(例えば、マラリア)を阻害するために有用である。従って、マルチマー化抗体は、HRV感染およびRSV感染を阻害するため、ならびにICAM−1レセプターが関与する任意の微生物および他の病原体を阻害するために、有用である。従って、本発明は、細胞の病原体感染を阻害するマルチマー化抗体(完全にかまたは部分的にヒト化された形態を含む)(ここで、感染は、少なくとも一部、ICAM−1に結合することによって媒介される)および細胞の病原体感染を阻害するための方法(ここで、感染は、少なくとも一部、ICAM−1に結合することによって媒介される)を提供する。
【0131】
1つの実施形態において、方法は、細胞のウイルス感染を阻害するのに充分な量の、ICAM−1に結合するマルチマー化抗体と、ウイルスまたは細胞とを接触させる工程を包含する。1つの局面において、マルチマー化抗体は、ヒト化されている。別の実施形態において、方法は、被験体のウイルス感染を阻害するのに充分な量の、ICAM−1に結合するマルチマー化抗体を被験体に投与する工程を包含する。種々の局面において、このウイルスは、RSV、コクサッキーAウイルスおよびHRVである。なお別の実施形態において、方法は、病原体による被験体の感染を阻害するのに充分な量の、ICAM−1に結合するマルチマー化抗体を被験体に投与する工程を包含する。さらに別の実施形態において、方法は、感染の症状(例えば、風邪の症状)を回復させるのに充分な量の、ICAM−1に結合するマルチマー化抗体を被験体に投与する工程を包含する。
【0132】
本明細書中で使用される場合、用語「回復させる」は、状態(例えば、疾患の症状)に関して使用される場合、その状態の1つ以上の症状を低減することを意味する。例えば、風邪に伴う症状としては、発熱、頭痛、悪寒、くしゃみ、咳き、鬱血、咽頭痛、鼻水、筋肉痛、全身倦怠などが挙げられる。従って、風邪または風邪に関与する病原体(例えば、HRV)を回復させることは、発熱、頭痛、悪寒、くしゃみ、咳き、鬱血、咽頭痛、鼻水、筋肉痛、全身倦怠などのうちの1つ以上を低減することを意味する。
【0133】
直接機能するかまたはICAM−1を介して間接的に機能する病原体の症状、複製または進行を阻害することに加えて、本発明のマルチマー化抗体は、所望されない状態(例えば、ICAM−1が役割を果たす疾患または障害)を処置するために使用され得る。例えば、ICAM−1とのLFA−1の相互作用は、炎症に関与する。本発明の抗体は、この相互作用を阻害し、それによって局所的炎症または全身的炎症を調節(例えば、低減)するために使用され得る。従って、別の実施形態において、方法は、炎症を低減または予防するのに十分なマルチマー化抗体を被験体に投与する工程を包含する。
【0134】
さらに、ICAM−1は、他の免疫応答経路、癌および転移において役割を果たす。従って、本発明の抗体は、臓器移植拒絶または自己免疫疾患あるいは癌または転移を、低減または予防するために、免疫応答を調整するために使用され得る。従って、本発明は、免疫応答性(例えば、炎症)およびICAM−1が関与する他の細胞プロセスを調節するマルチマー化抗体、ならびに免疫応答経路およびICAM−1が関与する他の細胞プロセスを調節するための方法を提供する。
【0135】
本発明はまた、感染を阻害するための方法(例えば、予防)、進行を阻害するための方法、または被験体の病原性感染を処置する方法を提供する。例えば、上気道からRSVをブロックすることは、RSVの侵入を妨ぎ、従って、RSVが、下気道に侵入することを妨げる。ICAM−1結合分子は、被験体に、スプレーまたは滴剤(drop)として鼻腔内または口腔内に送達され得る。
【0136】
従って、1つの実施形態において、方法は、RSV感染を有するかまたはHRV感染を有する危険性のある被験体に、被験体のRSV感染を阻害するか、その進行を阻害するか、またはRSV感染を処置するために充分な量のマルチマー化抗体を投与する工程を包含する。別の実施形態において、方法は、コクサッキーAウイルス感染もしくはHRVウイルス感染を有するかまたはそれを有する危険性のある被験体に、被験体のコクサッキーAウイルス感染もしくはHRV感染を阻害するか、その進行を阻害するか、またはこれらを処置するために充分な量のマルチマー化抗体を投与する工程を包含する。なお別の実施形態において、方法は、マラリアを有するかまたはマラリアを有する危険性のある被験体に、被験体の感染を阻害するか、その進行を阻害するか、またはそれを処置するのに充分な量のマルチマー化抗体を投与する工程を包含する。
【0137】
本発明はさらに、(例えば、RSV、コクサッキーAウイルス、HRVまたはマラリアによって引き起こされる)病原体感染の1つ以上の症状を低減または阻害する(すなわち、回復させる)方法を提供する。1つの実施形態において、方法は、RSV、コクサッキーAウイルス、HSVまたはマラリアに関連する1つ以上の症状を有する被験体に、被験体におけるRSV、コクサッキーAウイルス、HRVまたはマラリアに関連する1つ以上の症状を低減または阻害するのに充分な量のマルチマー化抗体を投与する工程を包含する。低減または阻害される症状としては、例えば、RSVについて、肺炎、発熱、気管支炎、および上気道感染のうち1つ以上;コクサッキーAウイルスについて、発熱、頭痛、悪寒、くしゃみ、咳き、鬱血、咽頭痛などのうちの1つ以上;マラリアについて、発熱、悪寒、肝臓の肥大、貧血のうちの1つ以上が挙げられる。
【0138】
別の実施形態において、方法は、肺炎、発熱、気管支炎、または上気道感染を有する被験体に、被験体における肺炎、発熱、気管支炎、または上気道感染の1つ以上の症状を低減または阻害するのに充分な量のマルチマー化抗体を投与する工程を包含する。1つの局面において、ヒト化抗体は、局所的に投与される。別の局面において、マルチマー化抗体は、吸入を介してか、または鼻腔内に投与される。なお別の局面において、被験体は、喘息を有するかまたは喘息を有する危険性がある。
【0139】
本発明の方法は、感染前(すなわち、予防)または感染後、感染の急性の症状または慢性的な症状、もしくは生理学的状態もしくは疾患の進行の前または後に実施され得る(例えば、器官移植前)。症状の進行の前または直後に組成物を投与することは、被験体における症状の重篤度を低減する。被験体における症状の進行の前に組成物を投与することは、被験体の感染性を減少させ得、それによって、感染した被験体から他の被験体が感染する可能性を減少させる。
【0140】
用語「被験体」は、動物のことをいい、代表的には哺乳動物である(例えば、非ヒト霊長類(サル、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、マカク)、家畜(domestic animal)(イヌおよびネコ)、家畜(farm animal)(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)およびヒト)。ヒト被験体としては、成人、および小児(例えば、新生児およびそれより上の(例えば、1歳〜5歳の間、5歳〜10歳の間および10歳〜18歳の間))が挙げられる。ヒト被験体は、ウイルス(例えば、HRVまたはRSV)感染を有しているか、または有する危険性のあるヒト被験体および1種類以上の感染症状を発症するヒト被験体を含み得る。ヒト被験体としては、喘息を有しているか、または有する危険性のあるヒト被験体が挙げられ、急性喘息発作が起きる前または受けた後に、慢性的な喘息に罹患している喘息患者が含まれる。被験体は、本発明のヒト化抗体のインビボでの効果の試験ための疾患モデル動物(例えば、マウスおよび非ヒト霊長類)を含む(例えば、HRV動物モデルまたはRSV動物モデル、喘息動物モデル、器官移植モデル、自己免疫疾患モデル、癌モデルなど)。
【0141】
他に指定しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中において記載される方法および物質と類似または等価な方法および物質が、本発明の実施または試験において用いられ得るが、適切な方法および物質が、本明細書中に記載される。
【0142】
全ての刊行物、特許および本明細書中に引用した他の参考文献は、参考としてその全体が援用される。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が支配する。
【0143】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明らかに示さない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「ポリペプチド」の参照は、複数のポリペプチド(例えば、マルチマー化、キメラ、異種のポリペプチド)を含み、そして「細胞」の参照は、1つ以上のそのような細胞を含む、など。
【0144】
多くの本発明の実施形態が記載されている。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な改変がなされ得ることが理解される。従って、以下の実施例は、例証を示すが、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0145】
(実施例1)
本実施例は、マルチマー化ドメイン、リンカー配列およびキメラポリペプチドの設計を記載する。
【0146】
ATFαのアミノ酸181〜211は、4.5回の7価リピート(hepted−repaer)(31アミノ酸)を構成する。各反復のd位(位置4)の残基は、全て、ロイシンであり、この7アミノ酸繰返しはまた、ロイシンジッパードメインともいわれる。ATFαのアミノ酸181〜211は、GCN4ロイシンジッパードメインに対して45%の同一性を有する。
【0147】
ATFαのアミノ酸181〜211の変異体を、位置aおよび位置dの3つの疎水性非極性残基(ロイシン、イソロイシンおよびバリン)を各々での(表3)置換(各7価リピートにおける位置1および位置4)によって作製された。a位またはd位のいずれかにロイシンおよびイソロイシンを有するATFα変異体は、トリマーまたはテトラマーを形成する;テトラマー形成配列としては、ATFα−LIおよびATFα−ILが挙げられる;トリマー形成配列としては、ATFα−LLおよびATFα−IIが挙げられる。ATFα−VLは、ダイマーおよびテトラマーの混合物を形成する;a位またはd位にバリンを有する変異体は、全て、高いダイマー比率を示した。
【0148】
ATFα−LIドメインは、抗体Fabフラグメントまたはレポータータンパク質(チオレドキシン)と融合する場合、テトラマーを形成する。
【0149】
例示的なリンカー配列は、ヒト免疫グロブリンDヒンジ配列に基き、これは、ヒト免疫グロブリン中にある最も長い公知の可撓性のヒンジである。ヒトIgDヒンジは、全体で63アミノ酸残基を有し、そして57番目の残基は、システインである(Padlan,Mol.Immunol.31:169(1994))。
【0150】
IgDヒンジの5つの変異体を、表5に列挙する:D30、D35、ED、EDCおよびD63。D30は、IgDヒンジの始めの30残基を含み、D35は、始めの35残基を含み、EDは、システインの前の56アミノ酸の全てを含み、EDCは、ED中の56アミノ酸の全てとシステインを含み、そしてD63は、完全なヒンジの63アミノ酸を含む。
【0151】
ATFα−LIを用いて調製した精製テトラマーを比較すると、D35を有するタンパク質は、長時間にわたってテトラマー状態で維持されるD30およびEDによって形成されるテトラマーよりも安定性が低い。D35のC末端は、2つのグリシン(GRGG)で終結する。D35を、マルチマー化ドメインのN末端と融合する場合、2つのグリシンは、マルチマー化ドメインのαヘリックスを不安定化し得、なぜD35テトラマーの安定性が低いのかを説明する。
【0152】
(実施例2)
本実施例は、Mab 1A6由来の抗原結合部位を有する抗ICAMヒト化Fabフラグメントのクローニングを記載する。
【0153】
発現ベクターを構築し、ジシストロンオペロンからFab19およびマルチマーFab19を作製した。ジシストロンオペロンは、Carterら,Biotechnology 10:163(1992)で記載される(図1)。
【0154】
簡単にいうと、VHドメインおよびVLドメインは、エンテロトキシン II(stII)シグナル配列をコードする遺伝子セグメントに、5'末端で正確に融合する。ジシストロン遺伝子中の介在性配列(IVS)は、リボソーム挿入部位を含み、一方で、その遺伝子の3'末端は、バクテリオファージλt0転写終結因子(TER)を含む。唯一のSacI部位を、CH1ドメイン中の停止コドンの直前に挿入し、そして唯一のEcoRI部位を、停止コドンの直後に挿入し、ヒンジおよび重合化ドメインをコードする配列の付加を容易にした。このイソプロピル−1−チオβ−D−ガラクトピラノシド(IPTG)誘導可能なptacプロモーターを用いて、このジシストロンメッセージの発現を駆動した。
【0155】
軽鎖フラグメントについての遺伝子セグメント(SpeI〜XbaI)を、PCRを用いて合成した。PCR産物は、2つのテンプレート(ヒト化抗ICAM抗体の可変ドメインをコードするVLフラグメント、およびCLテンプレート)の融合物であり、その配列は、ヒトκ1軽鎖定常領域由来である(PalmおよびHilschmann,Z.Physiol.Chem.356:167(1975))。
【0156】
Lテンプレートを、一連の重複オリゴヌクレオチド(表1)を用いて合成した。始めに、オリゴヌクレオチドを、以下の2つのグループにおいてアニーリングした:オリゴヌクレオチド1、オリゴヌクレオチド2およびオリゴヌクレオチド3;ならびにオリゴヌクレオチド4、オリゴヌクレオチド5およびオリゴヌクレオチド6。アニーリングしたグループの各々を、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを用いて伸長した。アニーリングおよび伸長した生成物を、P1オリゴヌクレオチドおよびP2オリゴヌクレオチド(表2)を用いたPCRを介して融合させた重複テンプレートとしてプールした。このPCR産物を、pCR2.1ベクター(Invitrogen)に直接クローニングし、そして配列決定した。CLテンプレートを、4つのグループ(表1:Fab4、Fab5およびFab6;Fab7およびFab8;Fab9およびFab10;Fab11およびFab28)においてアニーリングしそしてDNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(Stratagene,ロット番号0800176)を用いて伸長したオリゴヌクレオチドから得た。次いで、このDNAプールを、ハイフィデリティーポリメラーゼ混合物(Roche Expand High Fidelity,ロット番号85610228)、および隣接するDNAプライマー(Fab29およびFab3S)を用いて増幅した。このPCR産物を、PCR2.1TOPOクローニングベクターにクローニングした。このVLドメインおよびCLドメインを、オリゴヌクレオチドFab1およびオリゴヌクレオチドFab11を用いて融合し、そして5'SpeI部位を、オリゴヌクレオチドFab26およびオリゴヌクレオチドP3を用いて付加した。最終的な軽鎖クローンを、その全体について配列決定した。
【0157】
類似のアプローチを用いて、重鎖およびXba I/Hind IIIフラグメントとしての終結因子を含む遺伝子セグメントをクローニングした。ヒトIgG1のCH1ドメインの配列に基くCHテンプレート(Ellisonら Nucl.Acids Res.10:4071(1982))を、CLを使用して4つのグループのオリゴヌクレオチド(表1、Fab16およびFab17、Fab18およびFab19、Fab25およびFab21、Fab20、Fab22およびFab23)のアニーリングおよび伸長によって作製した。ヒト化抗ICAM抗体の重鎖可変領域をコードするVHドメインは、始めに以下オリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって作製した:オリゴヌクレオチド7、オリゴヌクレオチド8およびオリゴヌクレオチド9;オリゴヌクレオチド10、オリゴヌクレオチド11およびオリゴヌクレオチド12;ならびにオリゴヌクレオチド13およびオリゴヌクレオチドp4。アニーリングしたグループを、各々、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを用いて伸長した。アニーリングおよび伸長した生成物を、N末端をFab1オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドFab13、オリゴヌクレオチドFab12A、オリゴヌクレオチドFab12S)に融合させた重複テンプレートおよびC末端を(プライマーとして、オリゴヌクレオチドFab12sおよびオリゴヌクレオチドFab24を用いた)PCRを用いてCH1ドメインに融合させた重複テンプレートとしてプールした。また、このフラグメントを完全に配列決定した。ヒト化した抗ICAMFabタンパク質(Fab19という)のための発現プラスミドを、SpeI/Xba軽鎖フラグメントおよびXbaI/Hind III重鎖フラグメントをSpeI/HindIII消化ptac/Tetにライゲーションすることによって作製し、pFab19/Tetを(図1)を産生した。
【0158】
(表1:オリゴヌクレオチド配列)
【0159】
【表1】



(実施例3)
本実施例は、ヒトATFαロイシンジッパードメイン改変体のクローニングを記載する。本実施例はまた、結合したリンカー(ヒンジ)配列を有するヒトATFαロイシンジッパードメイン改変体のクローニングを記載する。
【0160】
このATFαロイシンジッパードメイン改変体(表3A)を、テンプレートとして、3'末端が相補的である2つのDNAオリゴヌクレオチド「A」および「B」(表2)を用いたPCR増幅により作製した。このオリゴヌクレオチド対をアニーリングし、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを用いて伸長し、そしてプライマーとしてオリゴヌクレオチドP1およびオリゴヌクレオチドP2を用いたPCRにより増幅した。生じたPCR産物を精製し、PCRクローニングベクター(TOPO pCR2.1(Invitrogen))にクローニングした。クローニングした挿入物を有するプラスミドDNAを、単離および配列決定した。
【0161】
クローニングしたATFαドメイン変異体を、各々、特定のヒンジ配列に融合させるために、PCR反応において、ATFαドメイン変異体テンプレートとして、5'末端が、適切なヒンジの3'末端と相補的である連結オリゴヌクレオチドを用いた。次いで、このPCR産物を、別のPCR反応におけるヒンジテンプレートとの組合せに用い、ヒンジATFαドメインフラグメントを作製した。設計により、このヒンジATFαドメインフラグメントは、N末端にSacI部位そしてC末端にEcoRI部位を有する。配列決定の後、ヒンジATFαドメインフラグメントを、Fabフラグメントを保有し、SacIおよびEcoRIを用いて前もって消化されたベクターにクローニングし、FabのCH1ドメインのC末端とインフレームで融合した(図1)。
【0162】
(表2:ATFロイシンジッパー変異体についてのオリゴヌクレオチド)
【0163】
【表2】


(表3A:ATFαロイシンジッパードメイン変異体)
【0164】
【表3A】

(表3B:ATFαに相同なロイシンジッパードメイン)
【0165】
【表3B】

(表3C:野生型ロイシンジッパードメインの配列比較(同一%))
【0166】
【表3C】

(表3D:コイルドコイルドメインベースのマルチマー化ドメインのアミノ酸配列)
【0167】
【表3D】


(表4A:ATFαロイシンジッパードメイン変異体をコードするヌクレオチド配列)
【0168】
【表4A】

(表4B:コイルドコイルドメインベースのテトラマー化ドメインのヌクレオチド配列)
【0169】
【表4B】


(表5:設計したヒンジ配列)
【0170】
【表5】

(実施例4)
本実施例は、位置aおよび位置d以外の位置の残基が、本発明のキメラタンパク質のマルチマーの状態に影響し得ることを示す。本実施例はまた、他の配列が、本発明に従って、どのようにして生成され得るのかを示す。
【0171】
公共のデータベースの検索に基いて、5つの候補ロイシンジッパードメインを選択した(表3B)。次いで、マルチマー化ドメインを、位置aおよび位置dの野生型の残基をロイシンまたはイソロイシンに置換することによって設計した(表3D);それらを、表4Bのヌクレオチド配列に従って、PCRにより合成した。各変異体を発現させ、キメラマルチマー化融合タンパク質の成分として精製した。
【0172】
位置aのLおよび位置dのIを用いて、5つのマルチマー化ドメインメインのうち4つは、テトラマーを形成したが、5つ目(JUND−LI)は、トリマーを形成した。位置aのIおよび位置dのLを用いて、ATF−1は、トリマーを形成したが、ATF−2、CJUN、およびCREBは、ダイマーを形成した。位置aおよび位置dの両位置にLを置いた場合、ATF−2およびCREBは、テトラマーを形成し、ATF−1およびCJUNはトリマーを形成し、そしてJUNDは、ダイマー形成した。位置aおよび位置dの両位置にイソロイシンを置いた場合、トリマーまたはダイマーのいずれかを形成した。これらの結果は、ATFαを用いて得られる結果(実施例1)と対照的であり得、実施例1では位置aおよび位置d、ILおよびLIの組合せはテトラマーを形成し、一方で、IIおよびLLの組合せはトリマーを形成した。従って、このデータは、位置aおよび位置dの外側の配列が、形成されるマルチマーの型を調節し得ることを示す。
【0173】
位置b、位置c、位置e、位置fおよび位置gの残基は、ヘリックスの束の相対位置に影響を及ぼすヘリックス間相互作用およびヘリックス内相互作用の相互関連ネットワークを形成する。このヘリックス間相互作用およびヘリックス内相互作用のネットワークを、三次元モデルから分析し得る。そのようになされるように、マルチマー化ドメインのモデルを、所望のマルチマー化状態のコイルドコイルをテンプレートとして用い、相同性によって構築する。7価リピートに関連して、適切なレジスターで分析されるドメインの配列を置換した後、この構造は、エネルギーが最小化される。代替の側鎖回転異性体の可能性との兼ね合いで、次いで、表面の残基を、検査によって分析する。置換が企図される場合、ネットワーク全体に対する増強された効力が考えられる。例えば、隣接するヘリックスの位置gに塩橋形成し得る残基に位置eを変えることにより、以前に位置gと相互作用していた第3の残基にまた、その相互作用のパートナーを変更させる。
【0174】
置換の効果は、この方法により、常に首尾よく予測され得る。この予測される効果を確認するために、置換したマルチマー化ドメインを、そのマルチマー化または他の性質(例えば、安定性および密接性)についてスクリーニングし得る。例えば、マルチマー形態を、本明細書中(実施例6)に記載されるようにHPLCおよび/または超遠心アッセイ法によって決定し得る;密接性のマルチマー化に対する効果を、マルチマー化ドメインを有するポリペプチドの溶解プロファイルを決定することによってアッセイし得る。
【0175】
(実施例5)
本実施例は、マルチマーFabタンパク質の発現および精製を記載する。マルチマーFabを作製するために、EDヒンジをコードするSacI/EcoRI DNAフラグメント(表5)は、IgDおよび改変ATFαコイルドコイルドメイン(ATFα(1)−LI+S)由来であり、Fab19のCH1コード配列の31末端で、Fab19/Tetプラスミド(図1)にクローニングされる。このプラスミドを、企CFY196と名付けた。
【0176】
Fab19およびテトラマーCFY196タンパク質を作製するために、Fab19/TetプラスミドまたはCFY196プラスミドを発現するE.coli株JM83の培養物を、選択TB培地内で、OD600が2.0になるまで増殖させた。最終濃度(0.2mM)にIPTGを添加して誘導した後、室温にて8時間インキュベーションし、4℃で15分間の、4,000gでの遠心分離によって細胞を回収した。この細胞ペレットを、培養液1リットル当り50mlの洗浄緩衝液(50mM Tris,pH8.0,150mM NaCl,50μM PMSFおよび5mM EDTA)中に懸濁し、4℃で15分間の、4,000gでの遠心分離によって細胞を再ペレット化し、冷凍した。凍結細胞ペレットを、ペレットの湿重量1g当り20mlの溶解緩衝液(50mM Tris,pH8.0,200mM NaCl,5mM EDTA,5mM EGTA,50μM PMSFおよび0.1mg/ml リソゾーム)中に再懸濁し、氷上にて30分間インキュベートした後、ペレットを超音波処理し、そして溶解物を、30分間の23,000gでの遠心分離によって透明化した。この上清(可溶性タンパク質を含む)を、1M NaClに調整し、そそてProtein Aカラム(Amersham/Pharmacia)に充填した。次いで、このカラムを、2M NaCl、25mM Tris(pH 8.0)、5mM EDTAを用いて頻繁に大規模に洗浄し、そして0.1M グリシン(pH2.5)を用いて溶出した。溶出物のpHを、1/10量の1M Tris塩基(pH9.0)を用いて中和した。
【0177】
一価のFabタンパク質の精製のために、タンパク質含有画分をプールし、TBSに対して透析し、そして4℃で保存した。マルチマーFab融合タンパク質の精製のために、Protein Aカラムからの画分を、50mM Hepes(pH7.5)中の200mM KClに対して透析し、次いで、ヒドロキシアパタイトカラム(Macroprep Ceramic Hydroxyapatite TypeII,Biorad)によりさらに精製した。透析緩衝液中でこのタンパク質を結合させた後、このカラムを結合緩衝液で洗浄し、次いで、200mM KCl/10mM Kホスフェート/50mM
Hepes(pH8.0)で洗浄した。マルチマーFabタンパク質を、リン酸勾配(500mM KCl/50mM Hepes(pH8.0))で溶出した。陽性分画をプールし、TBSに対して透析した。
【0178】
収量は、振盪フラスコ中の培養液1リットル当り1〜2mgであった。タンパク質調製物の純度を、サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS−PAGEゲルにより決定した(図2)。
【0179】
(実施例6)
本実施例は、Fab−ATFαドメイン融合タンパク質のマルチマー状態の特徴付けを記載する。
【0180】
以下の2つのアッセイを示す:マルチマー化状態を決定し得、かつ、マルチマー間の異なる密接性を区別し得る、沈降速度アッセイ;および、沈降速度データで相関させた後のマルチマー化状態を区別し得る、HPLCアッセイ。沈降速度は、遠心力の影響下で溶質が溶媒を通って移動する場合、溶質境界の移動を測定する。このデータは、長時間にわたって記録された一連の境界の位置である。次いで、その生データを処理し、沈降係数の分布(図3)を得る。大きなピークは、サンプル中の主要な種についての沈降係数を表す。ピークの数は、純度の指標であり、主要なピークの幅の広さは、主要な種の均一性を示す。
【0181】
精製したマルチマーFab融合タンパク質のオリゴマー状態を、光分散データ(Wen,ら,Analytical Biochem 240:155(1996))との組合せで分析超遠心分離(Modern Analytical Ultracentrifugation,TM SchusterおよびTM Laue(編)(1994)Birkhauser,Boston)を用い、沈降速度によって決定した。トリマーFab−ATFαドメイン融合タンパク質は約5.5Sで沈降し、そしてテトラマータンパク質は6.5Sで沈降する。Fab−ATFαドメイン融合タンパク質についての沈降実験の結果を、表6にまとめる。
【0182】
沈降速度データの相関により、さらなるATFαベースのドメインのマルチマー化状態を、サイズ排除HPLCにより決定した。HPLCサイズ排除クロマトグラフィーを、ダイマーからペンタマーまでの範囲のキメラマルチマー種を分離するために選択したカラムで実施した。この選択したカラムはまた、キメラのFab部分を含む種を分離した:テトラマー(超遠心分離で6.5S)は、常に13.7±0.1分にカラムから溶出した;トリマー(5.5S)は、14.0±0.1分に溶出した;そして、ダイマーは、(4.5S)は、15.0±0.1分に溶出した。さらなるドメインについてのデータを、沈降によって決定されるデータと共に、表7に列挙する。ATF1ロイシンジッパー、ATF2ロイシンジッパー、CJUNロイシンジッパー、JUNDロイシンジッパーおよびCREBロイシンジッパー由来のドメインのマルチマー状態を、表8にまとめる。
【0183】
(表6:マルチマーの形成)
【0184】
【表6】

(表7:ATFα変異体によるマルチマーの形成)
【0185】
【表7】

沈降データはまた、テトラマー間の区別を可能にする。例えば、CFY 192B、CFY 196およびCFY484は、同じaアミノ酸およびdアミノ酸を有し、そして全てが主にテトラマーを形成する。しかし、これらのタンパク質は、配列の他の場所においてバリエーションを生じる。CFY196およびCFY192Bについてのc(s) 対
Sのプロットの調査は、前者が優勢であることを示す。CFY196について当てはめた沈降係数の分布は、CFY192Bについて当てはめた沈降係数の分布よりも狭く、このことは、CFY196について、より均一なテトラマー集団であることを示す(図5)。
【0186】
Fab19 EDは、ATF(1)α−IL(配列番号162)と融合される場合、テトラマーを形成し、その沈降速度分析は、幅の広いピークを示した(図7A)。新しい潜在的なヘリックス間の塩橋を形成する第3の反復の位置eでのセリンからアルギニンへの変更(配列番号163)では、わずかな改善しか得られなかった(図7B)。これらの変化を第3の反復の位置bでのイソロイシンからグルタミンへのさらなる変異(配列番号5)と合わせることによって、非常に狭い沈降分布が得られた(図7C)。ATFα−IL変異体の配列は:
【0187】
【化2】

である。
【0188】
(表8:他のマルチマー化ポリペプチドによるマルチマー形成)
【0189】
【表8】

沈降データは、細胞ベースの機能アッセイの結果と十分に相関する(例えば、実施例7を参照のこと)。これらのアッセイは、細胞保護能力において、テトラマー化タンパク質が、トリマーより優れていること、そしてトリマー化タンパク質およびテトラマー化タンパク質が、一価のFabよりも高い保護性を提供することを示す。最も均一なテトラマーは、最高の保護性を提供する(図4)。
【0190】
(実施例7)
本実施例は、一価のFab19抗ヒトICAM−1タンパク質および多価のFab19−EDATFαドメイン融合タンパク質の生物学的活性を示す。本実施例はまた、トリマー化Fab19−EDATFαタンパク質およびテトラマー化Fab19−EDATFαタンパク質が、一価のFab19および二価のモノクローナル抗体よりも、HRV感染からのより高い細胞の保護を提供することを示すデータを記載する。
【0191】
HRV保護アッセイを実施し、一価のFab19タンパク質と多価のFab19ベースのタンパク質の、感染から細胞を保護する能力を比較した。HeLa細胞を、アッセイの24時間前に48ウェル組織培養皿に、1ウェル当り1×105でプレートした。成長培地を除去し、示した濃度に希釈した100μlの多価タンパク質または一価タンパク質を、各ウェルに添加した。このプレートを、37℃のインキュベーター中で1時間インキュベートし、溶液を除去し、そして200μlのHRV15を(1のMOIで)添加し、次いで、33℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして1ウェル当り1mlの成長培地を添加した。感染させた細胞を、33℃で48時間インキュベートし、培地を除去し、そして残った生存細胞をクリスタルバイオレットで染色した。結合したクリスタルバイオレットを、1ウェル当り3mlのメタノールで抽出し、次いで、細胞染色の量を、A570を測定することによって定量した。
【0192】
保護アッセイの結果を、図4に示す。保護%は、以下の式を使用して三連で、各データ点について計算する:
【0193】
【化3】

保護効力は、EC50(50%保護を与える抗体の用量)として定量化される。データに基づいて、Fab19のEC50は、76nMである。テトラマータンパク質CFY192BおよびCFY196は、トリマーCFY192BおよびCFY195よりも有効である。ATFαに基づくこの群のマルチマーにおいて、CFY196(Fab19−EDATFα(1)−LI+S)は、最も高い保護(0.73nMのEC50)を示し、これは、一価Fab19タンパク質よりも104倍高い保護である。
【0194】
別の研究において、一価Fab19、二価抗ICAM−1モノクローナル抗体RR/1(Chemicon)、二価CFY202、トリマーCFY193BおよびテトラマーCFY196の保護効力を、比較した(図5)。一価Fab19が200nMより高いEC50を有し、そして二価RR/1が10nMより高いEC50を有するが、CFY202のEC50は、4.5nMであり、CFY193BのEC50は、1.35nMであり、そしてCFY196のEC50は0.97nMであった。これらのデータは、テトラマーが、最も高い保護効力を提供し、続いて、トリマー、ダイマー、およびモノマーであったことを示す。
【0195】
(実施例8)
この実施例は、本発明の非Fabキメラポリペプチド(チオレドキシン−ATFαLI融合タンパク質)の構成およびマルチマーの特徴を記載する。
【0196】
ATFαロイシンジッパードメイン改変体が、Fab以外のタンパク質と融合した場合に、テトラマー複合体を誘導し得ることを実証するために、ヒンジ−ATFα(1)−LI−+SG36フラグメントを、発現ベクターpBAD−チオ(Invitrogen)中のチオレドキシンのC末端に融合した。発現構築物(pBAD−チオ−ヒンジ−ATFα(1)−LI−+SG36)を、E.coli株TOP−10に移入し、そして0.8のOD600まで選択TB培地中で増殖させた。0.02%の最終濃度までのアラビノースの添加による誘導および室温で一晩のインキュベーション後に、4℃で15分間、4,000gでの遠心分離によって細胞を収集した。細胞ペレットを溶解緩衝液(20mMリン酸ナトリウム(pH8.0)、1%Triton X−100、500mM NACl、40mM イミダゾール、1mM β−メルカプトエタノール)、0.2mM PMSF、0.5mg/mlリゾチーム中に懸濁させ、そして20分間、氷上でインキュベートした。細胞を超音波処理し、そしてPMSFの別のアリコートを添加した。23,000gでの遠心分離によって細胞細片をペレット化し、そして清澄化された超音波処理物を濾過し、そして金属アフィニティークロマトグラフィーによって分画した。
【0197】
誘導されたヒスチジンタグ化タンパク質を、製造業者の指示に従って、Ni2+で平衡化されたHi Trap金属キレート化カラム(Amersham/Pharmacia)に結合した。次いで、カラムを、4カラム容量の緩衝液(100mM イミダゾール、20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、500mM NaClからなる)で洗浄した。タンパク質を、カラムから、20mMリン酸ナトリウム(pH7.4)、1M イミダゾールを用いて溶出し、画分で収集した。タンパク質画分をプールし、そしてリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して、4℃で透析した。
【0198】
チオレドキシン−ATFα(1)−LI融合タンパク質の分子量を、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。Superdex200カラム(7.5mm×25cm)を、0.4ml/分の流速で、TBS緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl)中で平衡化させた。カラムを、標準タンパク質(リボヌクレアーゼA、13.7:キモトリプシノーゲンA、25kDa;オボアルブミン、43kDa;ウシ血清アルブミン、66kDa;アルコールデヒドロゲナーゼ、150kDa;およびβ−アミラーゼ、200kDa)を用いて較正した。精製されたチオレドキシン−ATFαLI1融合タンパク質を、標準タンパク質と同じ条件下で別々に分析した。
【0199】
モノマーチオレドキシン−ATFα(1)−LI−+SG36融合タンパク質の計算された分子量は、19.6kDaである。しかし、精製された融合タンパク質の計算された分子量は、約78kDaである。この結果は、チオレドキシン−ATFα(1)LI+SG36融合タンパク質が、テトラマーとして存在することを実証する。
【0200】
(実施例9)
この実施例は、本発明の多価ICAM−1結合タンパク質により、RSウイルス(RSV)感染を阻害または処置することを記載する。
【0201】
RSVは、RSVの表面上のFタンパク質を介してICAM−1に結合するようであり;Fタンパク質はまた、RSVに対する中和抗体の標的である。最近公開された文献は、主張によると、ヒト上皮細胞のヒトRSウイルス(RSV)感染が、可溶性ICAM−1でのRSVの前処理、または抗ICAM−1モノクローナル抗体での細胞の前処理のいずれかによって、阻害され得たことが見出された(Beheraら、BBRC 280:188(2001))。しかし、RSV感染の明らかな阻害を達成するために、非常に高い濃度の抗体(200〜400μg/ml、>1mM)が必要とされ、これは、モノクローナル抗体が、RSVに対して有効な治療法でないようであることを示す。
【0202】
インビトロでのRSV感染の阻害のために必要とされるモノクローナル抗体の高い濃度を考えると、RSVは、ICAM−1に対して比較的高い結合親和性またはアビディティを有し得る。そうである場合、マルチマー(ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマーまたはさらに高次のオリゴマー)のICAM−1結合タンパク質が、RSV感染に対して、一価のICAM−1抗体より、より良い効率を有する。さらに、本格的なRSV感染が全身的な疾患であるものの、ウイルスは、最初に、身体の上気道(特に、鼻咽頭領域)を侵襲する。上気道からのRSVのブロックは、RSVの侵入を妨げ、従って、RSVの下気道の侵襲を妨げる。
【0203】
理論に束縛されることを望まないが、多価ICAM−1結合タンパク質は、上気道の細胞へのRSVの足場または通路をブロックするようである。結果として、浮動性RSV粒子は、通常の粘膜毛様体洗浄系によって胃腸管へと方向を変え、無害になる。
【0204】
(実施例10)
この実施例は、2つの異なる結合特異性を含むポリペプチドの構成および発現を記載する。
【0205】
ダイマー化ドメインからテトラマー化結合能力を有する分子を作製するために、マルチマー化ドメインは、2つの異なる抗体分子からのFabを連結する分子の中心であり得る(例えば、図6Aを参照のこと)。あるいは、トリマー化ドメインまたはテトラマー化ドメインは、6価および8価分子をそれぞれ作製するために使用され得る。
【0206】
二重特異的マルチマータンパク質において、異なる陰影(hatching)を用いて示されたFab部分が、異なる特異性(例えば、抗CD−3および抗CD−19)を有し得る。それぞれのタンパク質のFab部分(重鎖および軽鎖からなる)は、リンカー配列によって、図6Aにおける六角形として示される、ダイマー化ドメインに連結される。このポリペプチドは、1つのトリシストロンRNA分子から作製される。あるいは、3つのプロモーターは、3つの異なるポリペプチドの発現を駆動し得る。このメッセージから翻訳される第1のポリペプチド鎖に対するコード配列を、抗CD−3軽鎖(LC−1)を表す、図6Bの陰影を付けた囲みによって示す。第2のDNAフラグメントは、中心キメラポリペプチド(IgDから誘導される長いヒンジに連結された抗CD−3重鎖(HC−1)からなる)、続いて、ダイマー化ドメイン、第2のヒンジ、続いて、抗CD−19軽鎖(LC−2)をコードする。図6Bの白い囲みによって示される第3のRNAは、抗CD−19重鎖(HC−2)をコードする。
【0207】
HC−2配列およびLC−2配列がscFvをコードする配列に切換えられた代替的な発現構築物はまた、scFvの親和性が所望なほどに高い場合、可能である。
【0208】
トリシストロンメッセージから二重特異的な四価分子を発現させるために、3つのDNAフラグメントを調製する。第1は、Nde I/Xba Iフラグメントであり、これは、抗CD−3Fab由来の軽鎖および介在配列(IVS1)のバルク(リボソーム結合部位を含む)からなる。このフラグメントから下流に、PCRを使用して、一緒に融合された6片からなるXbaI/SpeI制限フラグメントが連結される:IVS1の残り、Fabの重鎖、IgD由来のヒンジ、CREB−ILダイマー化ドメイン、IgD由来の第2のヒンジ、抗CD−19の軽鎖、および第2の介在配列(IVS2)のバルク。第3のSpeI/HindIII制限フラグメントは、IVS2の残り、抗CD−19の重鎖、およびターミネーター配列を含む。各IVSは、リボソーム結合部位を含み、そして構築物の3'末端は、バクテリオファージλt0ターミネーター(TER)を含む。翻訳された場合、3つのポリペプチドは、各々、エンテロキシンIIシグナル配列(stII)によって先行される。
【0209】
他の二重特異的分子について、塗りつぶされた囲みによって示されるマルチマー化ドメインは、代替的なマルチマー化配列によって置換されて、4価、6価、8価またはより高次の結合アームを形成する。これらの3つのDNAコード配列は、複数のプロモーターによって駆動され得るか、または異なるベクターにコードされる。異なる特異性の2つのFab分子が共通の軽鎖を共有する場合、類似の構築物がまた、二重特異的抗体のために使用され得る。この場合、図6BにおいてHC−2をコードする配列は、LC−2をコードする配列に置換され、そしてTER配列は、IVS2を置換する。次いで、この発現ベクターは、ビスシトロンメッセージにおける2つのポリペプチド鎖を生成する。
【0210】
(実施例11)
この実施例は、本発明のマルチマー化ドメインに隣接するアミノ酸が、形成するマルチマーの安定性または緊密性(tightness)を調整するために、どのように改変され得るかを示す。
【0211】
C末端におけるコイルドコイルドメインを有する本発明のキメラタンパク質において、マルチマー化ドメインのC末端は、溶媒に曝露される。外部アミノ酸を、C末端に付加して、タンパク質に対して、より安定な疎水性の端部を作製し得る。一般的に、コイルドコイルドメインにおける少なくとも2つのアミン素案を考慮することによって、末端アミノ酸は、これらの残基が関係する相互作用を妨害しないC末端に付加されるように選択され得る。ATFα(1)−LIについて、セリンは、これらの基準を満たす。この位置におけるセリンは、コイルドコイルのC末端に親水性末端を提供する、一連の水媒介性水素結合の形成を可能にすることによって、マルチマー化ドメインの折り畳みを安定化し得る。
【0212】
ATFα(1)−LI(配列番号1)は、C末端セリンの付加によって改変された(配列番号154)。このマルチマー化ドメインが抗ICAM抗体キメラ(CFY196)において使用された場合、精製されたタンパク質マルチマー(テトラマー)は、例外的に狭い分布の沈降係数を与える(図3C、実施例6)ことが見出され、これは、マルチマーを含むサブユニットに対するより緊密なマルチマー化を示す(すなわち、KDが減少する)。ATF(1)α−LI+Sの配列:
【0213】
【化4】

(実施例12)
この実施例は、本発明の方法を用いるペンタマーの構築を記載する。
【0214】
ペンタマーを構築するために、マルチマー化ドメインATFα−II(配列番号6)(キメラ抗ICAM抗体において使用される場合、トリマーを形成し、CFY195と呼ばれる)を、選択した。この配列は、β分枝イソロイシン残基が、ペンタマーの疎水性コア中に効率的にパッキングされ得るので、選択された。疎水性コアとドメインの外部に曝される溶媒との間の界面における残基は、トリマーをペンタマーに変更するために、より疎水性になるように変更されなければならない。従って、eおよびgの位置の4つの残基を、ロイシンに変更した。ペンタマー形成を支持するために、螺旋間および螺旋内相互作用のネットワークを調節するために、1つのbの位置および1つのcの位置において、2つのさらなる変更を行った。これらの変異(疎水性残基を親水性残基に変更する)の両方ともが、相互作用する螺旋間表面の適切な配向を提供する。この配列は、ATFα−II−g(配列番号159)と指定された。
【0215】
重複するオリゴヌクレオチドを使用して、ATFα−II−gといくつかの改変体(ATFα−II−gにサブセットの変異を含む)の両方(表9)がPCRによって作製され、サブクローニングされ、そしてその全体が、配列決定された。これらの全てが、aの位置およびdの位置でイソロイシンを有するが、表9において下線で示される6個のアミノ酸が異なる。これらのドメインは、それぞれ、Fab19およびEDヒンジに融合され、そして実施例6に記載されるように、サイズ排除クロマトグラフィーによって、それらのマルチマー化状態を評価された。
【0216】
Fab 19、EDヒンジおよびマルチマー化ドメインATFα−II−a〜ATFα−II−g(配列番号155〜159)から構成されるマルチマー化ドメインは、トリマーCFY195よりも長い保持時間を示したが、a、b、およびcは、ブロードなピークとしてHPLCカラムから溶出され、実質的な不均質性を示す。ATFα−II−fのマルチマーおよびATFα−II−gのマルチマーのみが、均質な種を生成し、ペンタマーについての予期される保持時間で、テトラマーの前に溶出した。ATFα−II−gマルチマーの活性を、実施例7に記載されるように、細胞保護アッセイにおいて測定した。テトラマーCFY196に対する類似の保護能力およびトリマーCFY195に対する優れた能力を有することが見出された。
【0217】
【表9】

疎水性コアを拡大することによって、トリマーをより高次のマルチマーに変更し得ることをさらに実証するために、別のコイルドコイルドメインATF−1の文脈でペンタマーを作製した。表10において、ペンタマーを形成するために、ATF1−IIおよび改変体ATF1−IIaの配列を設計する。2つの配列は、下線を付したアミノ酸によって示される位置で異なる。これらのドメインから調製される2つのキメラタンパク質のHPLCによる比較は、このアミノ酸の変更が、ATF1−IIから調製されたトリマータンパク質をより高次のマルチマーに変更したことを示す。
【0218】
【表10】

(実施例13)
この実施例は、モノマーFab抗体およびマルチマーFab抗体の結合親和性の評価のための競合ELISAアッセイを記載する。
【0219】
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合したテトラマーFab19(196TGCと呼ばれる)を、トレーサーとして使用するために開発した。ATF(1)α−LIマルチマー化ドメインを含むキメラFab19−EDのC末端に配列TGCを付加する(196TGC)ことによって、テトラマー抗ICAM抗体に1つのシステイン導入した。HRPを、EZ−Linkマレイミド活性化HRP(Pierce)を使用して、196TGCに化学的に結合した。196TGCマルチマー化ドメインの配列:
【0220】
【化5】

96ウェルEIAプレート(Corning,Inc.)を、0.1M NaHCO3中で、0.1μg/mlで、100μl/ウェルの可溶性ICAM−1(Bender MedSystems)を用いてコーティングした。TBST(50mM Tris(pH8.0)、150mM NaCl、0.05% Tween−20)を用いて洗浄した後、プレートを、1時間、室温で、TBST中の3%無脂肪乳を用いてブロッキングした。TBSTを用いて洗浄した後に、1%無脂肪乳/TBST溶液中に連続的に希釈した抗ICAM−1 Fabサンプル(モノマーまたはマルチマー)を添加し、そして室温で1時間インキュベートした。TBST用いて洗浄した後に、プレートを、2時間、室温で、1%無脂肪乳/TBST中で、1:50,000に希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ICAM−1テトラマー抗体(196TGC−HRP)とともにインキュベートした。プレートをTBSTを用いて徹底的に洗浄し、そして100μl/ウェルの3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン基質溶液(Kirkegaard and Perry Laboratories)を添加した。15分のインキュベーション後、100ml/ウェルの0.12N HClを添加することによって、色の発色を停止させ、そして450nmでウェルの吸光度を、プレートリーダー(ICN)によって測定した。
【0221】
トレーサー抗体(196TGC−HRP)結合の阻害%は、以下のように計算された:
阻害%=100×(A0−As)/A0
ここで、A0は、サンプルのない参照ウェル(196TGC−HRPのみ)のOD450であり;Asは、希釈されたサンプルからのOD450の読み取り値である。抗ICAM−1抗体の相対的な結合親和性は、トレーサー抗体(TGC−HRP)を50%でブロックするタンパク質の濃度(IC50)によって表された。
【0222】
図8は、モノマーFab(Fab19)のみが、試験された最も高い濃度で、25%トレーサー抗体(TGC−HRP)結合を阻害することを示す。しかし、そのトリマー(Fab19−EDATFα−II)またはそのテトラマー(Fab19−EDATFα−LI)は、ずっと高い阻害%を与えた。これら3つの分子についてのIC50は、以下の通りである:
【0223】
【化6】

(実施例14)
この実施例は、本発明のマルチマーポリペプチドのさらなる適用を記載する。
【0224】
マルチマーは、より大きな結合親和性または多価の結合が所望される任意の状況において使用され得る。唯一の要件は、本発明のキメラタンパク質の構築における使用に適合され得る部分の有効性である。この部分は、結合タンパク質または任意の合成分子もしくは天然の分子であり得、キメラ抗体を形成するために化学結合によって結合され得る。このような部分の例としては、キレーター、結合ペプチド、結合タンパク質などが挙げられる。
【0225】
本発明のマルチマー分子は、種々の環境的適用について使用され得る。例えば、重金属または毒素に結合した本発明のマルチマーは、バイオレメディエーションにおいて使用され得る。病原体の表面上のタンパク質に結合するマルチマーは、環境(例えば、ウシを放牧する場所)において、その病原体を中和するために使用され得る。本発明のマルチマーはまた、多くの小分子の意図しない毒性のない殺虫剤または除草剤として作用すると解釈され得る。
【0226】
本発明のマルチマー分子はまた、工業的適用を有し得る。例えば、マルチマーは、反応の生成物を除き、従って、反応を加速するかまたは反応を完了に駆動するか、あるいは反応物または触媒を除き、従って、反応を停止させるかのいずれかのために、工業化学において使用され得る。さらに、マルチマー分子は、希釈溶液から物質を回収するために使用され得る。さらに、二重特異的分子は、組み合わせた工程について反応速度を増加させるために、合成経路において2つの連続した酵素から構築され得る。
【0227】
(実施例15)
この実施例は、本発明に従ってなされ得るさらなる種類のマルチマーペプチドベースの薬物を記載する。
【0228】
結合分子(例えば、標的に対する抗体)は、当該分野において公知の任意の手段によって同定され得る。例えば、目的の標的に結合する抗体のCDR領域は、当該分野において公知の方法を使用して、ヒト化フレームワークに移され得る。ヒト化抗体は、必要に応じて、キメラマルチマータンパク質の一部としてScFvまたはFabフラグメントのいずれかとして発現され得る。目的の標的タンパク質の特定の非制限的な例(標的に対するマルチマータンパク質の結合によって処置され得る医学的状態の徴候とともに):
*βトリプターゼ(アレルギー、炎症)
*LFA−1(移植片拒絶)
*CD105、VEGF(黄斑変性、癌)
*IgE(喘息)
*CD154(狼瘡、移植片拒絶)
*CD14(敗血症)
*葉酸レセプターα(フィロウイルス感染、例えば、EbolaウイルスおよびMarburgウイルス)
*ネクチン−1(CD111としても公知)−(ヒトヘルペスウイルス)
*gp120(HIV−1/AIDS)
*IL−6(関節炎)
*IL−5(喘息)
*IL−8(一般的な炎症)
*または任意の他のインターロイキン(一般的な炎症)
*任意の成長因子レセプター(癌)
さらに、すでに開発された治療抗体は、本発明の適用によって増強され得る。例えば、以下が挙げられる:
*抗von Willebrand因子(冠状動脈血栓症)
*抗TNFα(クローン病)
*抗Her−2(乳癌)
*抗CD−3(移植片拒絶)
*抗CD−20(非ホジキンリンパ腫)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜7;配列番号9〜37;および配列番号154〜163に記載のアミノ酸配列から選択される、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して70%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して75%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して80%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して85%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して90%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して95%以上の同一性を有するポリペプチドであって、該ポリペプチドが、マルチマー化可能である、ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドのポリペプチド部分配列であって、該ポリペプチド部分配列が、マルチマー化可能である、ポリペプチド部分配列。
【請求項9】
請求項2に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aまたはdの全てが、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、該置換されたポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項10】
請求項2に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aまたはdの1つ以上が、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、該置換されたポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aまたはdの少なくとも1つが、ロイシン、イソロイシンまたはバリン以外のアミノ酸である、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項12】
請求項10に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1〜5個のアミノ酸置換を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項13】
請求項2に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、位置b、c、e、fまたはgの位置に、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、該置換されたポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項14】
請求項13に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、1〜5個のアミノ酸置換を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項15】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも11アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項16】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも15アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項17】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも18アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも22アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項19】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも27アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項20】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、少なくとも31アミノ酸長の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項21】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約125アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項22】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約100アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項23】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約75アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項24】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、約50アミノ酸長未満の配列を有する、マルチマー化ポリペプチド。
【請求項25】
異種ポリペプチドに融合された、請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドを含む、キメラポリペプチド。
【請求項26】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドのアミノ末端に融合される、キメラポリペプチド。
【請求項27】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドのカルボキシ末端に融合される、キメラポリペプチド。
【請求項28】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドに対して50%以上の同一性を有し、該キメラポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、キメラポリペプチド。
【請求項29】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドの部分配列であり、該キメラポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、キメラポリペプチド。
【請求項30】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記マルチマー化ポリペプチドが、1つ以上のアミノ酸置換を有し、但し、7残基ジッパー反復配列(a.b.c.d.e.f.g)の位置aおよびdの1つ以上が、ロイシン、イソロイシンまたはバリンのいずれかであり、該キメラポリペプチドが、マルチマー化を与え得る、キメラポリペプチド。
【請求項31】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記キメラポリペプチドが、約18〜30、30〜50、50〜75、75〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜500または500〜1000のアミノ酸の配列長を有する、キメラポリペプチド。
【請求項32】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記異種ポリペプチドが、結合タンパク質、酵素、レセプター、リガンド、核酸結合タンパク質、成長調節因子、分化因子、および走化性因子から選択される、キメラポリペプチド。
【請求項33】
請求項32に記載のキメラポリペプチドであって、前記結合タンパク質が、抗原結合ポリペプチドを含む、キメラポリペプチド。
【請求項34】
請求項33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む、キメラポリペプチド。
【請求項35】
請求項34に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗体可変ドメインが、ヒトまたはヒト化されている、キメラポリペプチド。
【請求項36】
請求項33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、単鎖抗体、Fab、Fab'、(Fab')2、またはFv抗体の部分配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項37】
請求項33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、多特異的または多機能性の抗体を含む、キメラポリペプチド。
【請求項38】
請求項33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、ICAM−1またはそのエピトープに結合する、キメラポリペプチド。
【請求項39】
請求項33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、ICAM−1を発現するヒトライノウイルス感染を阻害する、キメラポリペプチド。
【請求項40】
請求項33に記載のキメラポリペプチドであって、前記抗原結合ポリペプチドが、ヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーを形成する、キメラポリペプチド。
【請求項41】
請求項40に記載のキメラポリペプチドであって、前記ホモダイマー、ホモトリマー、ホモテトラマー、またはより高次のホモオリゴマーを構成するモノマーのKDが、1×10-7以下である、キメラポリペプチド。
【請求項42】
請求項40に記載のキメラポリペプチドであって、前記ホモダイマー、ホモトリマー、ホモテトラマー、またはより高次のホモオリゴマーを構成するモノマーのKDが、1×10-8以下である、キメラポリペプチド。
【請求項43】
請求項25に記載の少なくとも1つのキメラポリペプチドを含む、ホモまたはヘテロのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のポリペプチドのオリゴマー。
【請求項44】
請求項25に記載のキメラポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、前記マルチマー化ポリペプチドと前記異種ポリペプチドとの間にリンカーを含む、キメラポリペプチド。
【請求項45】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、ヒトアミノ酸配列またはヒト化アミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項46】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約5〜20アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項47】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約10〜30アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項48】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約25〜50アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項49】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約30〜60アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項50】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、約50〜75アミノ酸のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項51】
請求項44に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーが、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項52】
異種ポリペプチドに融合された、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)のいずれかに記載のリンカーポリペプチド配列を含む、キメラポリペプチド。
【請求項53】
請求項52に記載のキメラポリペプチドであって、前記リンカーポリペプチド配列が、配列番号43(D30)、配列番号44(D35)、配列番号45(ED)、配列番号46(EDC)、または配列番号47(D63)のいずれかに記載の部分配列である、キメラポリペプチド。
【請求項54】
請求項23に記載のキメラポリペプチドを含む、薬学的処方物。
【請求項55】
請求項25または52に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項56】
発現制御エレメントに作動可能に連結された、請求項55に記載の核酸を含む、発現カセット。
【請求項57】
請求項56に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項58】
請求項56に記載の核酸を含む、細胞。
【請求項59】
請求項58に記載の細胞であって、該細胞が、細菌細胞、真菌細胞、動物細胞、植物細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される、細胞。
【請求項60】
請求項57に記載の細胞であって、前記動物細胞が、哺乳類である、細胞。
【請求項61】
請求項1に記載のマルチマー化ポリペプチドをコードする配列を含む、核酸。
【請求項62】
発現制御エレメントに作動可能に連結された、請求項61に記載の核酸。
【請求項63】
異種ポリペプチドをコードする核酸にインフレームで融合した、請求項61に記載の核酸。
【請求項64】
請求項63に記載の核酸であって、リンカー配列をコードする核酸が、請求項61に記載の核酸と異種ポリペプチドをコードする核酸との間に位置する、核酸。
【請求項65】
請求項61に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項66】
請求項65に記載のベクターであって、前記ベクターが、発現ベクターである、ベクター。
【請求項67】
請求項61に記載の核酸を含む、細胞。
【請求項68】
請求項67に記載の細胞であって、前記細胞が、細菌細胞、真菌細胞、動物細胞、植物細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される、細胞。
【請求項69】
請求項68に記載の細胞であって、前記動物細胞が、哺乳類である、細胞。
【請求項70】
マルチマーの形成を与える、1つ以上の7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドを改変する工程を包含し、ここで、位置aまたはdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンで置換され、それによって、マルチマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する、方法。
【請求項71】
請求項70に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、トリマー、テトラマー、またはペンタマーを形成するが、未改変ポリペプチドが、ダイマーを形成する、方法。
【請求項72】
請求項70に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
【請求項73】
請求項70に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、テトラマーまたはペンタマーを形成するが、未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはトリマーを形成する、方法。
【請求項74】
ダイマーの形成を与える、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を改変する工程を包含し、ここで、位置aまたはdが、バリンとロイシンまたはイソロイシンのいずれかとで置換され、それによって、ダイマー形成を与えるマルチマー化ポリペプチドを作製する、方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する、方法。
【請求項76】
請求項74に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
【請求項77】
トリマーを形成するキメラポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、異種ポリペプチドに融合され、それによって、トリマーを形成するキメラポリペプチドを作製する、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する、方法。
【請求項79】
請求項77に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
【請求項80】
テトラマーを形成するキメラポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、異種ポリペプチドに融合され、それによって、テトラマーを形成するキメラポリペプチドを作製する、方法。
【請求項81】
請求項80に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはトリマーまたはペンタマーを形成する、方法。
【請求項82】
請求項80に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
【請求項83】
ペンタマーを形成するキメラポリペプチドを作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含むキメラポリペプチドを作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかであり、異種ポリペプチドに融合され、それによって、ペンタマーを形成するキメラポリペプチドを作製する、方法。
【請求項84】
請求項83に記載の方法であって、前記未改変ポリペプチドが、ダイマーまたはトリマーまたはテトラマーを形成する、方法。
【請求項85】
請求項83に記載の方法であって、前記改変ポリペプチドが、未改変ポリペプチドと比較して、マルチマーにおける増加または減少した安定性を有する、方法。
【請求項86】
マルチマーを形成する分子を作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを含む分子を作製する工程を包含し、ここで、位置aまたはdが、バリンと、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかとであり、該分子に融合され、それによって、マルチマーを形成する分子を作製する、方法。
【請求項87】
請求項86に記載の方法であって、前記分子が、ポリペプチドである、方法。
【請求項88】
トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する分子を作製する方法であって、該方法が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを分子に連結し、これによって、トリマーまたはテトラマーまたはペンタマーを形成する分子を作製する工程を包含し、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシンまたはイソロイシンのいずれかである、方法。
【請求項89】
請求項88に記載の方法であって、前記分子が、ポリペプチドである、方法。
【請求項90】
7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する方法であって、該方法が、以下:
a)ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成を可能にする条件下で、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドをインキュベートする工程であって、ここで、位置aおよびdの1つ以上が、ロイシン、イソロイシン、またはバリンのいずれかである、工程;および
b)該ポリペプチドのホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの存在をアッセイする工程であって、ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの形成が、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むマルチマー化ポリペプチドを同定する、工程、
を包含する、方法。
【請求項91】
請求項90に記載の方法であって、工程a)の前記ポリペプチドが、7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドに融合された異種ポリペプチドを含む、方法。
【請求項92】
請求項91に記載の方法であって、前記ポリペプチドが、前記異種ポリペプチドと前記7残基反復配列(a.b.c.d.e.f.g)を含むポリペプチドとの間にリンカーを含む、方法。
【請求項93】
細胞のRSV感染を阻害する方法であって、該方法が、RSVを含む細胞またはRSV感染に感受性の細胞を、細胞のRSV感染を阻害するのに有効な量の、請求項36に記載の抗体のヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーと接触させる工程を包含する、方法。
【請求項94】
請求項87に記載の方法であって、前記細胞が、被験体に存在する、方法。
【請求項95】
請求項88に記載の方法であって、前記被験体が、喘息を有するかまたは喘息の危険にある、方法。
【請求項96】
請求項87に記載の方法であって、前記細胞が、上皮細胞である、方法。
【請求項97】
請求項87に記載の方法であって、前記抗体が、ヒト化されている、方法。
【請求項98】
請求項87に記載の方法であって、前記抗体が、局所的に投与される、方法。
【請求項99】
請求項87に記載の方法であって、前記抗体が、吸入または鼻腔内によって投与される、方法。
【請求項100】
RSV感染の阻害、RSV進行の阻害、または被験体のRSV感染の処置の方法であって、該方法が、RSV感染を有するかまたはRSV感染を有する危険がある被験体に、被験体のRSV感染の阻害、RSV進行の阻害、または被験体のRSV感染の処置に有効な量の、請求項38に記載の抗体、あるいは請求項38に記載の抗体のヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーを投与する工程を包含する、方法。
【請求項101】
請求項100に記載の方法であって、前記抗体が、ヒト化されている、方法。
【請求項102】
請求項100に記載の方法であって、前記抗体が、局所的に投与される、方法。
【請求項103】
請求項100に記載の方法であって、前記抗体が、吸入または鼻腔内によって投与される、方法。
【請求項104】
請求項100に記載の方法であって、前記被験体が、喘息を有するかまたは喘息の危険にある、方法。
【請求項105】
請求項100に記載の方法であって、前記被験体が、新生児あるいは1〜5歳、5〜10歳または10〜18歳の間である、方法。
【請求項106】
感冒を処置する方法であって、該方法が、感冒を有するかまたは感冒を有する危険にある被験体に、被験体における感冒を処置するのに有効な量の、請求項38に記載の抗体、あるいは請求項38に記載の抗体のヘテロまたはホモのダイマー、トリマー、テトラマーまたはより高次のオリゴマーを投与する工程を包含する、方法。
【請求項107】
請求項106に記載の方法であって、前記処置が、HRVによる感染、HRV感染の進行、またはHRV感染の症状を阻害する工程を包含する、方法。
【請求項108】
請求項106に記載の方法であって、前記抗体が、ヒト化されている、方法。
【請求項109】
請求項106に記載の方法であって、前記抗体が、局所的に投与される、方法。
【請求項110】
請求項106に記載の方法であって、前記抗体が、吸入または鼻腔内によって投与される、方法。
【請求項111】
請求項106に記載の方法であって、前記被験体が、喘息を有するかまたは喘息の危険にある、方法。
【請求項112】
請求項106に記載の方法であって、前記被験体が、新生児あるいは1〜5歳、5〜10歳または10〜18歳の間である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13417(P2013−13417A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−212111(P2012−212111)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2009−4029(P2009−4029)の分割
【原出願日】平成14年7月19日(2002.7.19)
【出願人】(504022065)パーラン セラピューティクス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】